【実施例】
【0016】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
実施例1 増粘用組成物の溶解性に及ぼす金属塩と増粘多糖類の質量比の影響
300gのイオン交換水に100gのデキストリン(TK−16(DE18):松谷化学工業社製)を溶解した水溶液に、封入物中の金属塩(硫酸マグネシウム)濃度が表3に示した濃度になるようにそれぞれ溶解させた後、スプレードライヤーで噴霧乾燥して、金属塩を封入したデキストリン(封入物)を調製した。次に、これらの封入物と増粘多糖類(キサンタンガム(ノヴァザン(造粒品):松谷化学工業社製))をそれぞれ表3に示した質量比で粉体混合して増粘用組成物を調製した。このような比率で調製した増粘用組成物の、増粘多糖類100質量部に対する金属塩の質量部(比率)をそれぞれ算出した(表3)。また、これらの増粘用組成物の溶解性を表1に示す方法と表2に示す評価基準で評価した。溶解性の判定は、分散性及び粘度の立ち上がりの得点の両方が3点以上の場合を○とし、得点がどちらか片方でも低い場合を×とした。
【0018】
その結果、増粘多糖類と封入物との質量比が46:54〜70:30の範囲で、増粘用組成物の溶解性が○となる試作品は、増粘多糖類100質量部に対する金属塩の質量部が3.5〜12.8質量部のものであることがわかった(表3)。
【0019】
表1 溶解性の評価方法
【0020】
表2 溶解性の評価基準
【0021】
表3 封入物と増粘多糖類の質量比と増粘用組成物の溶解性の関係
*金属塩のデキストリンへの封入は、可能であるが、封入物の吸湿性が高まり、保存安定性及び噴霧乾燥における回収率が大幅に低下した。
【0022】
実施例2 増粘用組成物の溶解性に及ぼすデキストリンのDEの影響
金属塩を乳酸カルシウムとし、デキストリンを表4に示すDEのデキストリン(すべて松谷化学工業社製)とし、封入物中の金属塩の割合が5.2質量%になるように、実施例1と同様の方法で封入物を調製した。次に、これらの増粘多糖類のキサンタンガムと封入物を50:50の質量比になるように粉体混合して、増粘多糖類100質量部に対する金属塩の質量部が5.2質量部の増粘用組成物を調製した。これらの増粘用組成物の溶解性を実施例1と同様の方法で評価した。その結果、増粘用組成物の溶解性の判定が○となるデキストリンのDEは8以上であることが認められた(表4)。ただし、DEが25を超えると、封入物を製造する際の歩留りが著しく低下するため非実用的であった。また、DEが18を越えると特に粘度の立ち上がりが非常に良好になるため好ましい。
【0023】
表4 増粘用組成物の溶解性に及ぼすデキストリンのDEの影響
【0024】
実施例3 増粘用組成物の溶解性に及ぼす金属塩の種類の影響
金属塩を表5に示した金属塩とし、デキストリンをTK−16(DE18)(松谷化学工業社製)として、封入物中の金属塩の割合が5.2質量%になるように、実施例1と同様の方法で封入物を調製した。次に、増粘多糖類のキサンタンガムとこれらの封入物とを50:50の質量比になるように粉体混合して、増粘多糖類100質量部に対する金属塩の質量部が5.2質量部の増粘用組成物を調製した。これらの増粘用組成物の溶解性を実施例1と同様の方法で評価した。その結果、溶解性の判定が○となる金属塩は試作品32〜39の金属塩であった(表5)。
【0025】
表5 増粘用組成物の溶解性に及ぼす金属塩の種類の影響
【0026】
実施例4 増粘用組成物の溶解性に及ぼす増粘多糖類の種類の影響
金属塩を硫酸マグネシウムとし、デキストリンをTK−16(DE18)(松谷化学工業社製)とし、封入物中の金属塩の割合が5.2質量%になるように、実施例1と同様の方法で封入物を調製した。次に、表6に示す増粘多糖類とこれらの封入物あるいはTK−16(DE18)とをそれぞれ50:50の質量比で粉体混合して、増粘多糖類100質量部に対する金属塩の質量部が5.2質量部の増粘用組成物を調製した。これらの増粘用組成物の溶解性を実施例1と同様の方法で評価した。その結果、κ−カラギーナンはキサンタンガムと同様に溶解性が向上することが認められた。
【0027】
表6 増粘用組成物の溶解性に及ぼす増粘多糖類の種類の影響
【0028】
実施例5 増粘用組成物の分散性に及ぼす増粘多糖類の組み合わせの影響
金属塩を硫酸マグネシウムとし、デキストリンをTK−16(DE18)(松谷化学工業社製)とし、封入物中の金属塩の割合が5.2質量%になるように、実施例1と同様の方法で封入物を調製した。増粘多糖類は表7に示す増粘多糖類1と増粘多糖類2の組み合わせが2:1の質量比になるよう調製したものを用いた。次に増粘多糖類の混合物と封入物とをそれぞれ50:50の質量比で粉体混合して、増粘多糖類100質量部に対する金属塩の質量部が5.2質量部の増粘用組成物を調製した。これらの増粘用組成物の溶解性を実施例1と同様の方法で評価した。その結果、様々な増粘多糖類を組み合わせることによって、増粘用組成物の分散性に影響を与えることなく、かつ、単独で用いた場合とは異なるゾル/ゲル特性を示す増粘用組成物が得られた。このことは、増粘多糖類の組み合わせや比率を変えることによって、用途に応じた様々なゾル/ゲル特性を示す、分散性に優れた増粘用組成物が得ることを示している。
【0029】
表7 増粘用組成物の分散性に及ぼす増粘多糖類の組み合わせの影響(増粘多糖類1と増粘多糖類2の比率はすべて2:1)
【0030】
実施例6 増粘用組成物の分散性に及ぼす造粒の影響
金属塩を硫酸マグネシウムとし、デキストリンをTK−16(DE18)(松谷化学工業社製)とし、封入物中の金属塩が表8に示した割合になるように、実施例1と同様の方法で封入物を調製した。次に、これらの封入物と増粘多糖類のキサンタンガム(ノヴァザン(透明タイプ)80メッシュ:松谷化学工業社製)を、それぞれ表9に示した質量比になるように流動層造粒装置(フローコーター(FLO−5):フロイント産業社製)に投入して造粒した。なお、増粘多糖類100質量部に対する金属塩の質量部はすべて12.8質量部となるように調整した。このようにして造粒調製した増粘用組成物(造粒品)の溶解性を実施例1と同様の方法で評価し、対応する粉体混合品(非造粒品)と比較した。その結果、造粒品は非造粒品以上に分散性が向上することが認められた。
【0031】
表8 増粘用組成物の分散性に及ぼす造粒の影響(増粘多糖類100質量部に対する金属塩の質量部は全て12.8質量部)
【0032】
実施例7 増粘用組成物を含有する飲料の調製
(お茶)
お茶(商品名「お〜いお茶」、(株)伊藤園)100gに、実施例3で調製した乳酸カルシウムを含む増粘用組成物(試作品36)2gを添加し、スパーテルで撹拌したところ、直ちに液中全体に分散し、ダマの発生がなく、粘度発現も良好であった。このトロミを付加したお茶は風味も良好であり、咀嚼・嚥下困難者向けのお茶として使用できるものであった。
【0033】
(清涼飲料)
清涼飲料(商品名「アクエリアス/AQUARIUS」、日本コカ・コーラ株式会社)100gに、増粘多糖類と封入物との混合比が50:50の造粒品(試作品56)2gを添加し、スパーテルで撹拌したところ、直ちに液中全体に分散し、ダマの発生がなく、粘度発現も良好であった。このトロミを付加した清涼飲料は風味も良好であり、咀嚼・嚥下困難者向けの清涼飲料として使用できるものであった。
【0034】
実施例8 飲食物の風味に及ぼす封入物と増粘多糖類の質量比の影響
金属塩を硫酸マグネシウムとし、デキストリンをTK−16(松谷化学工業社製)とし、封入物中の金属塩が表10に示した割合になるように、実施例1と同様の方法で封入物を調製した。次に、これらの封入物と増粘多糖類のキサンタンガムを、それぞれ表10に示す質量比で粉体混合し、増粘多糖類100質量部に対する金属塩の質量部が5.2質量部の増粘用組成物を調製した。
次いで、1.5gのコーヒー粉末を含む100gのインスタントコーヒー(ネスカフェ・ゴールドブレンド(ネスレ日本株式会社))に、増粘多糖類として1gとなる量の増粘用組成物を添加し、増粘用組成物を含有するコーヒー飲料を得た。得られた飲料を表9に示す基準で5名のパネラーで風味の官能試験(N=5)を行い、最頻値を得点とした。得点が2点以下を×(風味が感じられない)、3点を△(風味がやや悪い)、4点以上を○(風味が変わらない)とした。その結果、封入物の質量比が高まるに従って風味が低下し、増粘多糖類と封入物の質量比が、40:60以下では風味が低下又は悪化することが分かった。
【0035】
表9 官能試験の評価基準
【0036】
表10 コーヒーの風味に及ぼす封入物と増粘多糖類の質量比の影響(増粘多糖類100質量部に対する金属塩の質量部は全て5.2質量部)