(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730394
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】遠隔制御の乗客コンベヤおよび乗客コンベヤの遠隔制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 27/00 20060101AFI20150521BHJP
B66B 25/00 20060101ALI20150521BHJP
B66B 31/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
B66B27/00 C
B66B25/00 B
B66B25/00 Z
B66B31/00 C
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-524826(P2013-524826)
(86)(22)【出願日】2010年8月20日
(65)【公表番号】特表2013-534199(P2013-534199A)
(43)【公表日】2013年9月2日
(86)【国際出願番号】US2010046065
(87)【国際公開番号】WO2012023943
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2013年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ゼンガー,アロイス
(72)【発明者】
【氏名】エルカン,アブドゥラ
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−074527(JP,A)
【文献】
特開平11−021059(JP,A)
【文献】
特開2007−131411(JP,A)
【文献】
特開2002−068656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部にプラットフォームを備える乗客コンベヤ(10)の遠隔制御方法であって、
視覚的に確認できる状態が変化する状態変化オブジェクト(104)を設け、
カメラ(102)を使用して乗客コンベヤ(10)と状態変化オブジェクト(104)の画像を捕らえ、
カメラ(102)から受信した乗客コンベヤ(10)および状態変化オブジェクト(104)の画像を表示可能で、かつ状態変化オブジェクト(104)を制御可能な遠隔制御センター(106)にカメラ(102)で捕らえた画像を送信し、
遠隔制御センター(106)から状態変化オブジェクト(104)に始動指令(108)を送信し、
乗客コンベヤ(10)および始動指令(108)に応答する状態変化オブジェクト(104)の画像を受信し、
始動指令(108)が送信された時間に対する、遠隔制御センター(106)がカメラ(102)から受信した状態変化オブジェクト(104)の画像によって状態変化オブジェクト(104)が始動指令(108)に応答していることが確認された時間に基づいて時間遅れを計算し、
前記計算された時間遅れに基づいて、乗客コンベヤ(10)の遠隔制御を制限された時間にわたって可能にすることを含むことを特徴とする乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項2】
乗客コンベヤ(10)の遠隔制御を制限された時間にわたって可能にするステップは、遠隔制御センター(106)において、前記計算された時間遅れに基づく制限された時間にわたって乗客コンベヤ(10)の動作の遠隔制御を可能にするように、少なくとも1つのボタン(110)の状態を無効から有効に変更することによって実行されることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項3】
時間遅れを計算するステップは、遠隔制御センター(106)によって実行されることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項4】
時間遅れを計算するステップは、遠隔制御センター(106)が状態変化オブジェクト(104)に始動指令(108)を送信した時間を記録し、状態変化オブジェクト(104)が始動指令(108)に応答していることを確認した時間を記録することを含むことを特徴とする請求項1記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項5】
遠隔制御センター(106)から状態変化オブジェクト(104)に始動指令(108)を送信するステップは、状態変化オブジェクト(104)にパターンを送信することによって実行され、状態変化オブジェクト(104)は、このパターンに基づいて視覚的に確認できる状態を変化させることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項6】
状態変化オブジェクトは、交通流れ灯などのあらゆる種類のランプであり、遠隔制御センター(106)から状態変化オブジェクト(104)に始動指令(108)を送信するステップは、交通流れ灯に光点滅パターンからなる指令を送信することによって実行され、交通流れ灯は、受信したパターンに従って光を点滅させることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項7】
乗客コンベヤ(10)の画像を捕らえるステップと、乗客コンベヤ(10)の遠隔制御を制限された時間にわたって可能にするステップと、は、前記計算された時間遅れに依存することを特徴とする請求項1記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項8】
遠隔制御センター(106)に表示された乗客コンベヤ(10)の画像の目視検査によって乗客コンベヤ(10)上に乗客がいないことを確認するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項9】
カメラ(102)は、市販のカメラであることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項10】
手動操作または自動操作のいずれかによって乗客コンベヤ(10)を遠隔制御するステップをさらに含み、手動操作は、オペレータによって実行され、自動操作は、遠隔制御センター(106)によって実行されることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項11】
乗客コンベヤ(10)の遠隔制御方法であって、
視覚的に確認できる状態が変化する状態変化オブジェクト(104)を設け、
カメラ(102)を使用して乗客コンベヤ(10)と状態変化オブジェクト(104)の画像を連続的に捕らえ、
カメラ(102)から受信した状態変化オブジェクト(104)および乗客コンベヤ(10)の画像を表示可能な遠隔制御センター(106)に捕らえた画像を送信し、
状態変化オブジェクト(104)にパターンからなる始動指令(108)を連続的に送信し、状態変化オブジェクト(104)は、このパターンに応じて視覚的に確認できる状態を変化させ、
始動指令(108)に応答する状態変化オブジェクト(104)の画像を連続的に受信し、
始動指令(108)が状態変化オブジェクト(104)に送信された時間と、遠隔制御センター(106)がカメラ(102)から受信した状態変化オブジェクト(104)の画像によって状態変化オブジェクトが始動指令(108)に応答していることが確認された時間と、の間の時間遅れを連続的に計算し、
前記計算された時間遅れに基づいて、乗客コンベヤ(10)の遠隔制御を制限された時間にわたって可能にし、
前記計算された時間遅れに基づいて、捕らえた乗客コンベヤ(10)の画像を調整することを含むことを特徴とする乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項12】
乗客コンベヤ(10)の遠隔制御を制限された時間にわたって可能にするステップは、遠隔制御センター(106)において、前記制限された時間にわたって乗客コンベヤ(10)の動作の遠隔制御を可能にするように、少なくとも1つのボタン(110)の状態を無効状態から有効状態に変更することによって実行されることを特徴とする請求項11記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項13】
画像を連続的に捕らえ、捕らえた画像を送信し、時間遅れを連続的に計算するステップによって、遠隔制御センター(106)、状態変化オブジェクト(104)およびカメラ(102)の間のリアルタイムの通信が連続的に確認され、カメラ(102)、状態変化オブジェクト(104)および遠隔制御センター(106)のいずれかが連続的に通信することができなくなると、乗客コンベヤ(10)の前記制限された時間にわたる遠隔制御が中断されることを特徴とする請求項11記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項14】
状態変化オブジェクトは、交通流れ灯であり、状態変化オブジェクト(104)にパターンからなる始動指令(108)を連続的に送信するステップは、交通流れ灯に光点滅パターンからなる指令を送信することによって実行され、交通流れ灯は、前記パターンに従って光を点滅させることを特徴とする請求項11記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項15】
手動操作または自動操作のいずれかによって乗客コンベヤ(10)を遠隔制御するステップをさらに含み、手動操作は、オペレータによって実行され、自動操作は、遠隔制御センター(106)によって実行されることを特徴とする請求項11記載の乗客コンベヤの遠隔制御方法。
【請求項16】
遠隔制御装置(100)を備える乗客コンベヤ(10)であって、
乗客コンベヤ(10)と関連して設けられ、状態が変化する状態変化オブジェクト(104)と、
乗客コンベヤ(10)と関連して設けられ、乗客コンベヤ(10)および状態変化オブジェクト(104)の全体の画像を捕らえるカメラ(102)と、
乗客コンベヤ(10)から遠隔に位置し、カメラ(102)から画像を受信し、状態変化オブジェクト(104)を制御するとともに、乗客コンベヤ(10)を制限された時間にわたって制御することができる遠隔制御センター(106)と、を有し、
前記制限された時間は、遠隔制御センター(106)が計算した時間遅れに依存し、この時間遅れは、遠隔制御センター(106)が状態変化オブジェクト(104)に始動指令(108)を送信してから状態変化オブジェクト(104)が始動指令(108)に応答するまでの時間を計測したものであることを特徴とする乗客コンベヤ。
【請求項17】
カメラ(102)が捕らえた画像の視野は、前記計算された時間遅れに依存することを特徴とする請求項16記載の乗客コンベヤ。
【請求項18】
カメラ(102)は、市販のカメラであることを特徴とする請求項16記載の乗客コンベヤ。
【請求項19】
状態変化オブジェクト(104)は、交通流れ灯、閃光灯およびデジタル時計からなる群から選択されることを特徴とする請求項16記載の乗客コンベヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、乗客コンベヤに関し、特に、乗客コンベヤの遠隔制御装置および遠隔制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベヤは、乗客を1つの目的地から他の目的地まで速やかに搬送するために広く使用されている。例えば、エレベータは、乗客をビル内で垂直に運び、エスカレータは、階段を上るよりも便利に乗客を1つの階から他の階に運ぶように設計されている。動く歩道も、乗客を1つの位置から他の位置へと水平により便利に運ぶことで歩く過程を速める。乗客コンベヤは、オフィスビル、空港およびショッピングセンターなどの公共の場所で使用される。
【0003】
乗客コンベヤは、非常に多くの乗客を1つの目的地から他の目的地まで速やかに搬送することで公共の場所を便利にしてきたが、乗客コンベヤは常に保守を必要とする。適切な使用による通常の損耗の保守時や不適切な使用による事故などの特定の状況では、乗客コンベヤを停止することがある。
【0004】
さらに、乗客コンベヤは、安全規則や安全規定に従って動作することが要求される。例えば、乗客コンベヤの制御ユニットに制御信号を送信する前に、乗客がいないことを確認する安全装置を備える必要がある。このような安全装置は、安全規則や安全規定を満たすという認証が必要である。認証された安全装置は、高価で1つのユニットに限られ、かつ変化する乗客コンベヤの条件に従って容易に更新できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、アップグレード可能でコスト効率のよい汎用の乗客コンベヤ安全制御装置/システムが今もなお求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態では、乗客コンベヤの遠隔制御方法が開示される。この方法は、視覚的に確認できる状態が変化する状態変化オブジェクトを設け、カメラを使用して乗客コンベヤと状態変化オブジェクトの画像を捕らえ、カメラから受信した画像を表示可能な遠隔制御センターにカメラが捕らえた画像を送信して状態変化オブジェクトと乗客コンベヤを制御し、遠隔制御センターから状態変化オブジェクトに始動指令を送信し、始動指令に応答する状態変化オブジェクトの画像を受信し、始動指令が送信された時間に対する、遠隔制御センターがカメラから受信した状態変化オブジェクトの画像によって状態変化オブジェクトが始動指令に応答していることが確認された時間に基づいて時間遅れを計算し、計算された時間遅れに基づいて乗客コンベヤの遠隔制御の制限時間を開始することを含みうる。
【0007】
本発明の他の形態では、乗客コンベヤの遠隔制御方法が開示される。この方法は、視覚的に確認できる状態が変化する状態変化オブジェクトを設け、カメラを使用して乗客コンベヤと状態変化オブジェクトの画像を連続的に捕らえ、カメラから受信した画像を表示可能な遠隔制御センターに捕らえた画像を送信して状態変化オブジェクトと乗客コンベヤを制御し、状態変化オブジェクトにパターンからなる始動指令を連続的に送信し、状態変化オブジェクトはパターンに応じて視覚的に確認可能な状態を変化させ、始動指令に応答する状態変化オブジェクトの画像を連続的に受信し、状態変化オブジェクトに始動指令が送信された時間と、遠隔制御センターがカメラから受信した状態変化オブジェクトの画像によって状態変化オブジェクトが始動指令に応答していることが確認された時間と、の間の時間遅れを連続的に計算し、計算された時間遅れに基づいて乗客コンベヤの遠隔制御の制限時間を開始し、計算された時間遅れに基づいて捕らえた乗客コンベヤの画像を調整することを含みうる。
【0008】
本発明のさらに他の形態では、遠隔制御装置を有する乗客コンベヤが開示される。乗客コンベヤは、乗客コンベヤと関連して設けられるとともに状態が変化する状態変化オブジェクトと、乗客コンベヤと状態変化オブジェクトの全体の画像を捕らえるように乗客コンベヤと関連して設けられたカメラと、乗客コンベヤの遠隔に位置し、カメラから画像を受信して制限時間内で状態変化オブジェクトと乗客コンベヤを制御する遠隔制御センターと、を含みうる。
【0009】
他の利点や特徴は、以下の詳細な説明および添付された図面により明らかになる。
【0010】
開示された装置および方法のより完全な理解のために、添付の図面により詳細に示した実施例を参照されたい。
【0011】
図面は、必ずしも縮尺に従っておらず、開示された実施例は時には概略的および部分的に示されている。開示された方法および装置の理解に必要のない細部または他の部分の理解を妨げる細部は、省略されている場合がある。本発明は、当然ながら、本明細書に記載した特定の実施例に限定されるものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の教示に従って構成されたエスカレータの一実施例の説明図である。
【
図2】本発明の教示に従って構成された遠隔制御装置の一実施例の説明図である。
【
図3】本発明の教示に従って実施可能なステップの例示的なシーケンスを図で表した説明図である。
【
図4】本発明の方法に従って実施可能なステップの例示的なシーケンスを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の方法に従って実施可能なステップの他の例示的なシーケンスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面、特に
図1を参照すると、本発明の教示に従って構成された乗客コンベヤの全体が参照符号10として示されている。より詳細には、乗客コンベヤを説明する例示的な実施例として、以下ではエスカレータ10を使用する。本発明はエスカレータに限定されるものではなく、本明細書ではエスカレータに代えて動く歩道などの他の例示的な実施例も乗客コンベヤと呼ぶことができることを理解されたい。
【0014】
図1に示すように、エスカレータなどの例示的な乗客コンベヤ10は、第1のプラットフォーム12、第2のプラットフォーム14、第1のプラットフォーム12と第2のプラットフォーム14の間に延在する複数の移動パレットまたは踏段16を備える踏段バンド15および複数の踏段16に沿って設けられた移動手摺り18を有する。コンベヤ10の踏段16は、電気モータなどの主駆動源17によって駆動可能であり、プラットフォーム12,14の間で移動可能となっている。主駆動源17は、駆動シャフトおよび関連するギアを回転させることにより、コンベヤ10の内部で踏段16の内側面に機械的に連結される閉ループの踏段チェーンを回転させる。2つの乗場プラットフォーム12,14のそれぞれの内部において、スプロケットが踏段チェーンおよび連結された踏段16を弧に沿って案内し、踏段の移動方向を逆転させて循環させるように戻り経路を形成する。手摺り18は、踏段16と同様の手段によって踏段16と同等の速度で移動可能である。
【0015】
エスカレータ10は、乗客によって使用されるので、踏段16を含むがこれに限定されないエスカレータ10の構成要素は、時間が経つにつれて損耗および動作不良を生じうる。安全規則や安全規定は、エスカレータ10の機能により乗客による危険な使用が防止されることを要求する。エスカレータが適切に機能していることを確認する方法の1つは、エスカレータを遠隔で監視、試験および制御することである。
【0016】
続いて、
図2を参照すると、乗客コンベヤの遠隔制御装置100が開示されている。遠隔制御装置100は、カメラ102、状態変化オブジェクト104および遠隔制御センター106を含みうる。例示的な一実施例では、カメラ102は、市販のカメラである。現在、乗客コンベヤの監視装置は、認証されたカメラを使用する。認証されたカメラは、乗客コンベヤの監視のための規定や規則に準拠していることを保証する認証を得るために厳しい試験を通っている。この認証プロセスにより、特にカメラのアップグレードが必要で再認証を要する場合に、認証カメラはかなり高価になるおそれがある。しかし、今日業界で使用されている現行の乗客コンベヤの監視装置とは異なり、遠隔制御装置100は、カメラやインターフェイスボードを含むがこれらに限定されない市販の構成要素を組み込むように設計することができる。市販のカメラは、特定の基準、すなわち規定や規則を満たす必要なく設計された既製品とすることができる。このような市販のカメラは、認証されたカメラよりもはるかに経済的で適応性がある。本明細書でさらに詳細に説明するように、遠隔制御装置100は、低コストの市販カメラを使用するとともに、乗客コンベヤで要求される規定や規則に準拠する信頼性がある監視/制御装置を今まで通り提供することができる。
【0017】
例示的な一実施例では、状態変化オブジェクト104は、交通流れ灯とすることができる。交通流れ灯は、エスカレータの移動方向を示すようにエスカレータの近傍に設けられる。状態変化オブジェクト104は、交通流れ灯に限定されるものではなく、視覚的な表示器を提供し、状態が変化するものであれば、閃光灯やデジタル時計を含むがこれらに限定されない他の装置とすることができる。状態変化オブジェクト104は、カメラ102が踏段バンド15および第1、第2のプラットフォーム12,14の画像を捕らえたときに、その画像に状態変化オブジェクト104も含まれるようにエスカレータ10と関連して設ける必要がある。
【0018】
遠隔制御センター106は、乗客コンベヤ10から遠隔に位置し、乗客コンベヤ10の制御装置、カメラ102、および状態変化オブジェクト104と電気通信可能に設けることができる。例示的な一実施例では、遠隔制御センター106は、乗客コンベヤ10、カメラ102および状態変化オブジェクト104と無線通信可能なラップトップ型などのパソコン(PC)とすることができる。遠隔制御センター106は、PCや無線通信に限定されるものではなく、当業者であればわかるように、乗客コンベヤ10、カメラ102および状態変化オブジェクト104と通信可能でこれらを制御できるあらゆる他の形式の装置や通信形態としてもよい。遠隔制御センター106は、乗客コンベヤ10と状態変化オブジェクト104の画像を単一の画面に表示するとともに、始動指令108と、オペレータが乗客コンベヤ10を遠隔制御するときに使用する少なくとも1つのボタン110と、を表示しうる。例示的な一実施例では、始動指令108は、状態変化オブジェクト104に指令を送信して状態変化オブジェクト104に状態を変化させるよう要求することができる。少なくとも1つのボタン110により、エスカレータ10、特に踏段バンド15が遠隔制御可能となる。例示的な一実施例では、乗客コンベヤ10を起動および停止できる“起動(上昇,下降)”および“停止”の少なくとも2つのボタン110を設けることができる。他の実施例では、始動指令108、起動(上昇,下降)および停止ボタン110は、図示した画面とは異なる独立したスイッチとすることができる。
【0019】
エスカレータ10を遠隔制御するには、特定の規定や規則を満たす必要がある。特定の必要条件の1つは、エスカレータ10の遠隔操作中にエスカレータ10の上または近傍に乗客が確実にいないことである。カメラなどの認証設備は、エスカレータ10の遠隔制御中に捕らえられるエスカレータ10の画像の信頼性を確保するために繰り返し試験がなされている。しかし、遠隔制御装置100は、非認証設備を使用しつつ、選択された正しいエスカレータの現在の更新された画像を遠隔操作の実行中に確実に表示することができる。
【0020】
図3は、遠隔制御装置100が乗客コンベヤ10をリアルタイムで制御することができるステップのシーケンスを図で表した説明図である。第1のステップ200は、カメラ102が捕らえた乗客コンベヤ10およびこの例では交通流れ灯である状態変化オブジェクト104の画像を、この例ではラップトップである遠隔制御センター106の画面で見ることである。第3のステップ204は、始動指令108を送信し、交通流れ灯104の状態変化を要求することである。始動指令108を送信する前および確認時間中は、第2のステップ202において起動および停止ボタン110は無効状態でありうる。第3のステップ204で始動指令108が送信されると、交通流れ灯104の画像が始動指令108に応答して状態を変化させ、第4のステップ206でラップトップ106の画像によりこれが確認される。ステップ206では、この時点でも乗客コンベヤ10に乗客が確実にいないことが確認される。始動指令108の送信と、始動指令108に応答する交通流れ灯104の画像の確認と、の時間遅れが計算される。計算された時間遅れの値および計算された時間遅れが規定範囲内にあるかどうかによって、起動および停止ボタン110が有効になる。しかし、計算された時間遅れが範囲外であれば、ボタンは無効のままとなり、プログラムは再度押さなくても始動ステップ204に戻る。これにより、
図4を参照して本明細書でさらに詳細に説明するように、時間遅れが連続的に計算され、所定範囲となるまで再度チェックされる。時間遅れが所定範囲内にある限り、プログラムは次のステップ210に進み、ステップ208でユーザがボタン110を操作することによって乗客コンベヤ10を制御することを許可する。
【0021】
カメラ102は、計算された時間遅れに従って、画面の拡大または縮小などによって乗客コンベヤ10の画像(focal view)を調整することもできる。例えば、計算された時間遅れが許容される上限に近ければ、カメラは乗客コンベヤ10および周囲のプラットフォーム12,14のより広い視野を得るために画像を拡大する。リアルタイム応答が遅いために画像がそれほど頻繁に更新されないおそれがあるので、視野が広いことによって乗客コンベヤ10に接近している乗客がいないことを確認する追加の時間が得られる。反対に、計算された時間遅れが許容される下限とすることができるゼロに近ければ、安定したリアルタイム応答によって画像が頻繁に更新されていることがわかっているため、カメラ102は乗客コンベヤ10に集中するように画像を縮小することができる。ボタン110が有効になると、遠隔制御センター106は、ステップ210でボタン110が有効である限り乗客コンベヤ10を遠隔制御することができる。遠隔制御プロセス中に、遠隔制御センター106が計算された時間遅れが長いことによって通信不良になったり、例えば、交通流れ灯104が始動指令に応答しない、またはカメラ102の画像が更新されないなど、カメラ102や交通流れ灯104との通信が切れたりすると、ボタン110が無効となり、乗客コンベヤ10の遠隔操作が終了する。上述のプロセスは、人の目視検査や画像比較に頼っているが、自動化されたコンピュータベースの画像比較も考えられ、自動化された画像比較も、本発明と一致するとともに当然ながら本発明の範囲に含まれる。
【0022】
図3はエスカレータ遠隔制御プロセスを図で表した説明図であり、一方、
図4はエスカレータ10を手動で遠隔制御するステップ300の例示的なシーケンスを含むプロセスをフローチャートとして示している。ステップ302では、手動モードが開始される。ステップ304では、遠隔制御するエスカレータが選択されるとともに、始動指令108が状態変化オブジェクト104に送られ、タイマが起動されて開始時間T
1が記録される。例示的な一実施例では、始動指令108は、例えば、0.5秒オン、0.7秒オフ、1.2秒オン、0.3秒オフなど、状態変化オブジェクト104に送信される連続的な非周期点滅パターンの指令であり、状態変化オブジェクト104は受信したパターンに基づいて状態を変化させる。以下でより詳細に説明するように、状態変化オブジェクト104の状態を変化させ、状態変化オブジェクトの指令に対する応答を確認するために多くの他のパターンも実行可能である。
【0023】
始動指令108が送信されると、ステップ306で状態変化オブジェクト104が受け取ったパターンに基づいて状態を変化させたかを確認するために状態変化オブジェクト104の画像がチェックされる。遠隔制御センター106が、状態変化オブジェクト104が始動指令108に応答した画像を検出すると、ステップ308でタイマが停止されて確認時間T
2が記録される。ステップ310で、記録された時間T
1,T
2に基づいて、始動指令と、始動指令に応答する状態変化オブジェクト104(例えば、交通流れ灯)の変化の確認と、の間の時間遅れが計算される。ステップ312では、計算された時間遅れが許容される範囲内にあるかが判断される。同時に、プログラムはステップ304に飛んで、非周期パターンを送信することによって別に始動プロセスを開始する。時間遅れの計算が確認されると、遠隔制御センター106の画像を調整することができる。例えば、時間遅れ値の許容範囲が0〜1.0秒に設定されており、計算された時間遅れが0.8秒である場合、ステップ314で計算された時間遅れに基づいて乗客コンベヤ10の画像の視野(focal perspective)が再調整される。計算された時間遅れが許容範囲内であれば、エスカレータ10を遠隔制御するために、ステップ316で制限された時間にわたってボタン110が有効にされる。次に、オペレータは、ステップ318でカメラ画像をチェックして、乗客コンベア10やプラットフォーム領域12,14に乗客がいないことを確認する。ステップ320で選択された領域に乗客がいないことが確認されると、オペレータはステップ322で有効なボタン110を起動してエスカレータ10の遠隔制御を行うことができる。
【0024】
ステップ312に戻ると、時間遅れが許容される制限時間内でない場合には、ステップ324でカウンタがインクリメントされる。続いて、ステップ326でカウンタをチェックし、所定限度を超えていないかを確認する。カウンタがこの限度を超えていれば、許容範囲を超える時間遅れの繰り返しや状態変化オブジェクト104が始動指令108に応答したかを確認できないという事態を生じさせる接続不良により、ステップ328でアルゴリズムをアボートすることができ、プロセスのフローはアルゴリズムの開始点であるステップ302に戻る。カウンタが所定限度を超えていなければ、アルゴリズムはステップ304に戻り、この点から遠隔制御プロセスを続ける。
【0025】
図5は、エスカレータ10を自動的に遠隔制御するステップ400の例示的なシーケンスを含むフローチャートを示している。自動モードは、ステップ402で開始することができる。ステップ404では、自動制御するエスカレータが選択される。ステップ406では、始動指令108が状態変化オブジェクト104に送信されるとともに、タイマが起動されて開始時間T
1が記録される。例示的な一実施例では、始動指令108は、例えば、0.5秒オン、0.7秒オフ、1.2秒オン、0.3秒オフなど、状態変化オブジェクト104に送信される連続的な非周期点滅パターンの指令であり、状態変化オブジェクト104は受信したパターンに基づいて状態を変化させる。状態変化オブジェクト104の状態を変化させ、状態変化オブジェクト104の指令に対する応答を確認するために多くの他のパターンも実行可能である。
【0026】
始動指令108が送信されると、ステップ408で状態変化オブジェクト104が受け取ったパターンに基づいて状態を変化させたかを確認するために状態変化オブジェクト104の画像がチェックされる。例示的な一実施例では、遠隔制御センター106は、画像内のオブジェクトを検出する画像識別装置を有しうる。遠隔制御センター106が、状態変化オブジェクト104が始動指令108に応答した画像を検出すると、ステップ410でタイマが停止されて確認時間T
2が記録される。ステップ412で、記録された時間T
1,T
2に基づいて、始動指令108と、始動指令108に応答する状態変化オブジェクト104(例えば、交通流れ灯)の変化の確認と、の間の時間遅れが計算される。ステップ414では、計算された時間遅れが許容される範囲内にあるかが判断される。同時に、プログラムはステップ406に飛んで、非周期パターンを送信することによって別に始動プロセスを開始する。時間遅れの計算が確認されると、遠隔制御センター106の画像を調整することができる。例えば、時間遅れ値の許容範囲が0〜1.0秒に設定されており、計算された時間遅れが0.8秒である場合、ステップ416で計算された時間遅れに基づいて乗客コンベヤ10の画像の視野が再調整される。続いて、ステップ418で乗客コンベア10やプラットフォームの領域12,14に乗客がいないことを確認するために画像処理を行うことができる。ステップ420で選択された領域に乗客がいないことが確認されると、遠隔制御センター106は、ステップ422で有効なボタンを起動してエスカレータ10の遠隔制御を行うことができる。
【0027】
ステップ414に戻ると、時間遅れが許容される制限時間内でない場合には、ステップ424でカウンタがインクリメントされる。続いて、ステップ426でカウンタをチェックし、所定限度を超えていないかを確認する。カウンタがこの限度を超えていれば、ステップ428で
図4を参照して上述した手動モードを開始することができる。カウンタが所定限度を超えていなければ、アルゴリズムはステップ406に戻り、自動遠隔制御プロセスを続ける。
【0028】
許容可能な時間は、装置100の必要条件に基づいて調整可能である。さらに、カメラ102は、計算された時間遅れおよび装置100の必要条件に基づいて視野を再調整可能とすることもできる。また、遠隔制御装置100は、オペレータによって手動で操作するか、遠隔制御センター106によって自動で操作することができる。例えば、手動モードでは、オペレータが乗客コンベヤ10および状態変化オブジェクト104の画像を確認し、ボタン110が有効になり次第ボタンを制御することができる。自動モードでは、遠隔制御センター106は、乗客コンベヤ10および状態変化オブジェクト104の画像の変化を検出するために画像識別装置を使用することができ、ボタン110が有効になり次第ボタンを制御することができる。本明細書では、単一のエスカレータ/乗客コンベヤの実施例を説明しているが、遠隔制御装置100は、特に自動モードにおいて複数の乗客コンベヤを同時に監視、試験および制御することが可能である。
【0029】
上述のように、本発明はリアルタイムで乗客コンベヤを遠隔制御する装置および方法を開示している。このような乗客コンベヤは、エレベータ、エスカレータ、動く歩道などを含むがこれらに限定されない形態で設けることができる。乗客コンベヤの遠隔制御装置は、非認証設備を使用しつつ、乗客コンベヤおよび状態変化オブジェクトの現在の画像を連続的に確認し、制限された時間にわたって乗客コンベヤの遠隔制御を可能にする。遠隔制御装置は、状態変化オブジェクトにパターンに基づいて状態を変化させるよう指示する状態変化オブジェクトへのパターンからなる始動指令を連続的に送信可能なラップトップなどの遠隔制御センターを含むことができる。遠隔制御センターは、続いて、始動指令が送信された時間から状態変化オブジェクトの画像によって状態変化オブジェクトが始動指令に応答していることが確認された時間までの時間遅れを計算する。遠隔制御センターは、計算された時間遅れに基づいて、乗客コンベヤを遠隔制御する制限時間を定めることができる。時間遅れは、さらに、乗客コンベヤを遠隔制御する制限時間を決定するための遠隔制御センターへのフィードバックとなり、また、捕らえられる乗客コンベヤの視野を調整するためのカメラへのフィートバックとなる。遠隔制御センター、状態変化オブジェクトおよびカメラの間の通信の連続的な確認により、遠隔制御装置の動作をリアルタイムで確認することができる。遠隔制御装置は、非認証の市販設備を使用しつつ、リアルタイムで動作を確認することで、遠隔で乗客コンベヤの監視、試験および制御を行うアップグレード可能な低コストの装置を提供する。
【0030】
特定の実施例を開示したが、当業者には上述の説明から変更や改良は明らかである。このような変更および他の変更は、同等物とみなされ、本開示内容および請求項の趣旨および範囲内に含まれる。