特許第5730405号(P5730405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5730405タンデムマスタシリンダのセカンダリピストンと、このようなセカンダリピストンを備えたマスタシリンダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730405
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】タンデムマスタシリンダのセカンダリピストンと、このようなセカンダリピストンを備えたマスタシリンダ
(51)【国際特許分類】
   B60T 11/20 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
   B60T11/20
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-545159(P2013-545159)
(86)(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公表番号】特表2014-500193(P2014-500193A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2011071724
(87)【国際公開番号】WO2012084468
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2013年8月7日
(31)【優先権主張番号】1005008
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】キャロル・シャルパンティエ
(72)【発明者】
【氏名】アントニー・オギュスト
(72)【発明者】
【氏名】ロラン・リュイリエー
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ・ベルナダ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ロドリゲス
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−053349(JP,U)
【文献】 特開平11−115725(JP,A)
【文献】 特開2008−285153(JP,A)
【文献】 米国特許第05878575(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンデムマスタシリンダのセカンダリピストンであって、
プライマリピストン(130)のプッシュロッドによって作動される底部と、リターンスプリング(273)によって作動される前方自由端を有する円筒形のスカートと
− マスタシリンダ内で圧力室を画定するピストンとを含み、
− ピストンの前縁が、マスタシリンダの本体の溝に収容されていて圧力室と供給室とを隔てるシールと休止位置で協働し、ブレーキシステムがESPモードにあるとき、あるいは再供給のために、スカートの通路を介して作動液を通過させ、
− スカート(232)の縁が、前方で開放されたスロット(233)からなる鋸歯状の輪郭を有し、
圧力室と供給室は休止位置でスロットを介して接続されている、
ことを特徴とするセカンダリピストン(230)。
【請求項2】
前記スロットが、半径方向にあって、ピストン(230)の軸線(xx)に平行であることを特徴とする請求項1に記載のタンデムマスタシリンダのセカンダリピストン。
【請求項3】
半径方向のスロット(233)が、垂直な底部(2332)と、半径方向に向いた面により画定される側面(2331)とを有することを特徴とする請求項2に記載のタンデムマスタシリンダのセカンダリピストン。
【請求項4】
スロットがヘリカル状であることを特徴とする請求項1に記載のタンデムマスタシリンダのセカンダリピストン。
【請求項5】
プラスチック材料の射出成形により構成されることを特徴とする請求項1に記載のタンデムマスタシリンダのセカンダリピストン。
【請求項6】
− マスタシリンダ(100)内で圧力室(240)を画定するセカンダリピストン(230)と、
プライマリピストン(130)のプッシュロッドによって作動されるセカンダリピストンの底部と、リターンスプリング(273)によって作動される前方自由端を有するセカンダリピストンの円筒形のスカートと
− マスタシリンダ(100)の本体(110)の溝(251)に収容されていて圧力室(240)と供給室(250)とを隔てるシール(253)と休止位置で協働し、ブレーキシステムがESPモードにあるとき、スカートのスロット(233)を介して作動液を通過させる、セカンダリピストンの前縁とを含んでおり、
− スカートの縁が、前方で開放されたスロット(233)からなる鋸歯状の輪郭を有し、
圧力室と供給室は休止位置でスロットを介して接続されており、
− セカンダリピストンが、プラスチック材料の成形/射出により構成されることを特徴とするタンデムマスタシリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンデムマスタシリンダのセカンダリピストンに関し、このセカンダリピストンは、
− 前方自由端と底部とを有して、プライマリピストンのプッシュロッドにより片面で作動し、リターンスプリングにより反対面で作動する円筒形のスカートと、
− マスタシリンダ内で圧力室を画定するピストンとを含み、
− ピストンの前縁が、マスタシリンダの本体の溝に収容されていて圧力室と供給室とを隔てるシールと休止位置で協働し、ブレーキシステムがESP型の自動軌道制御モードにあるとき、スカートの通路を介して作動液を通過させる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、また、上記のようなセカンダリピストンを備えたタンデムマスタシリンダに関する。
【0003】
図6図7は、従来技術によるタンデムマスタシリンダを示している。マスタシリンダ300は、セカンダリピストン330に関する部分だけが図示されており、ボア320を有する本体310からなり、このボアにセカンダリピストン330が収容され、マスタシリンダ300がタンデムマスタシリンダの場合は、プライマリピストン(図示せず)が収容される。マスタシリンダの作動は、矢印AFの方向に行われる。ボア320において、セカンダリピストン330は、セカンダリブレーキ回路に接続される圧力室340を画定する。圧力室340は、供給室350からブレーキ液を供給される。圧力室340は、本体310の溝351に配置された再供給シール353によって供給室350から隔てられている。供給室350の反対側では、本体310の溝352に収容されてセカンダリピストン330に当接する隔離シール380により、外部付近のシールが実施される。セカンダリピストン330は、底部331からなり、その背面331bが、倍力装置のプッシュロッドを受容する。背面331bは、また、スプリング373により離隔保持される2個の部分からなる伸縮式のロッド370を収容する。このロッド370が、プライマリピストンに接続される。
【0004】
セカンダリピストン330は、アルミニウム製の加工部品であり、底部331を備えた円筒形のスカート332を含み、底部の片面331bが、円錐台形のハウジングを備えて、プライマリピストン132に接続されるプッシュロッド370の端部を収容し、反対面331aは、リターンスプリング373を支持する役割を果たす。スカート332の前縁は、リング状に配置された穴333が通る円錐台形の表面334を有する。セカンダリピストン330は、マスタシリンダ内でセカンダリ回路C2のセカンダリ圧力室340を画定し、ボア320内に加工された溝351に収容される再供給シール353と協働する。この溝351は、作動液供給管路に接続される供給室350を超えて配置される。再供給シール353は、セカンダリピストン330の外面と協働し、それによって、供給室350と圧力室340との密封性を確保する。しかし、セカンダリピストン330が休止位置にあるとき、その前縁が供給室350のちょうど上流に配置されるので、ブレーキ液が、セカンダリピストン330のスカート332の前方の穴333を介してシールの下を通過し、圧力室340に達する可能性がある。
【0005】
このようなピストンとマスタシリンダは、特許文献1に記載されている。
【0006】
図7は、公知のセカンダリピストン330の軸方向断面図であり、円錐台形の前方部分334とリング状に配置された穴333とを有するスカート332の形状ならびに底部331の形状を示している。底部の面331aは、スプリング373をセンタリングするためのボスを有し(図6)、反対面331bは、プライマリピストンに接続される伸縮式のロッド370を収容するための円錐台形のハウジングを有する。
【0007】
図6Aは、マスタシリンダの本体310の溝351における再供給シール353の休止位置ならびに、セカンダリピストン330の供給室350とスカート332をリング状に配置された穴とともに示す非常に概略的な図であり、リング状に配置された穴は、この図では再供給シール353の下に配置された単一の穴333により示されている。矢印は、再供給段階における作動液の通過を示しており、作動液は、供給室350、穴333、セカンダリピストン330の内部、セカンダリピストンの前方、圧力室340の間を通過する。この図は、テーパ形状にする必要性を強調しているが、その理由は、ブレーキシステムのESP動作モードに対する休止位置の流量が、穴の断面と、マスタシリンダのピストンと本体310との間のスペースとによって決まるからである。
【0008】
このようなセカンダリピストン330には、製造および使用において幾つかの欠点がある。
【0009】
製造コストは比較的高く、これは、一方では、リング状に配置された穴333をスカート332の前縁に設けなければならず、他方では、スカートの縁をテーパ形状334にしなければならないことによる。しかも、スカートの縁に形成される穴333は、セカンダリピストン330と協働するシール353の摩耗を早める鋳バリをしばしば有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2006 000341A1号明細書
【特許文献2】仏国特許第2916405号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、密封シールの摩耗問題を回避してピストンの製造を容易にするとともに、製造コストを削減し、ESPモードに対して流量性能を保証する、マスタシリンダのセカンダリピストンと、このように装備されたマスタシリンダとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明は、上記のタイプのマスタシリンダのセカンダリピストンを目的とし、このピストンは、スカートの前縁が、マスタシリンダの供給室と協働するために前方で開放されている半径方向のスロットからなる鋸歯状の輪郭を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によるセカンダリピストンは、公知のピストンの穴と円錐台形の前方部分とを単なるスロットに代えているので、製造が簡単であるという長所を提供する。そのため、ピストンの外装表面がその全長にわたって円筒形にされている。スロットの形状は、ESPモードによる流量を保証しながら、穴を介した場合よりも有効に圧力室の再供給を実施し、再供給が簡単であるという長所を同様に有する。
【0014】
別の有利な特徴によれば、スロットが半径方向にあって、ピストンの軸線xxに平行である。
【0015】
本発明によるセカンダリピストンは、有利には、射出成形によりプラスチック材料から構成され、特にスカートと底部が単一部品から構成される。
【0016】
別の有利な特徴によれば、半径方向のスロットが、垂直な底部と、半径方向に向いた面により画定される側面とを有する。スロットにより閉鎖される底部または後方端部は、好適には横方向に配向されて直角であり、特に、平らな表面から構成される。この表面は、ピストンの軸線に対して傾斜していてもよいし、ピストンに対して垂直であってもよい。
【0017】
半径方向のスロットの形状により、射出成形を非常に簡単に実施することができ、型抜きが容易にされる。
【0018】
別の有利な特徴によれば、半径方向のスロットが、セカンダリピストンの軸線に平行である。
【0019】
別の有利な特徴によれば、半径方向のスロットがヘリカル状を呈し、これは、各地点において、スロットの壁が半径方向に配向される一方で、全体の軌道がヘリカル状であることを意味する。このようなヘリカル状の形状によって、再供給シールとスロットの空洞部またはスロットの非空洞部との常時接触を回避しながら、再供給シールと接触しやすいようにされる。
【0020】
スロットの底部は、好適には垂直であり、すなわちセカンダリピストンの軸線に対して垂直な面にある。
【0021】
本発明は、また、セカンダリピストンを備えたタンデムマスタシリンダに関し、
− 前方自由端と底部とを有して、プライマリピストンのプッシュロッドより片面で作動し、リターンスプリングにより反対面で作動する円筒形のスカートと、
− マスタシリンダ内で圧力室を画定するピストンとを含み、
− ピストンの前縁が、マスタシリンダの本体の溝に収容されていて圧力室と供給室とを隔てるシールと休止位置で協働し、ブレーキシステムがESPモードにあるとき、スカートの通路を介して作動液を通過させ、
− スカートの縁が、前方で開放された半径方向のスロットからなる鋸歯状の輪郭を有しており、
このセカンダリピストンが、プラスチック材料の成形/射出により構成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下、添付図面で概略的に示した実施形態により、本発明について詳しく説明する。
図1】本発明によるセカンダリピストンを備えたタンデムマスタシリンダを示す概略断面図である。
図2】本発明によるセカンダリピストンを示す側面図である。
図3図2のセカンダリピストンを示す軸方向断面図である。
図4】セカンダリピストンのスカートを示す一部斜視図である。
図5】セカンダリピストンの1つのスロットを示す展開図である。
図6】セカンダリピストンを備えた公知のマスタシリンダを示す一部断面図である。
図6A】従来技術によるキャリパの溝に収容される再供給シールと、セカンダリピストンの前縁との協働を示す詳細図である。
図7】公知のセカンダリピストンを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明によるタンデムマスタシリンダ100を示しており、以下、そのセカンダリ部分について説明するが、この説明は、2個の独立したブレーキ回路C1、C2を制御可能な2つに分けられるあらゆる部材に対し、実質的にはプライマリ部分にも適用されることを前提とする。
【0024】
マスタシリンダ100は、軸線(xx)を有するボア120が通る本体110から構成され、このボアにプライマリピストン130が収容される。
【0025】
プライマリピストン130があり、ボア220には、セカンダリピストン230が収容される。
【0026】
ピストン130、230の移動方向は、ブレーキ作用に対応する矢印AFにより示されている。
【0027】
マスタシリンダの上部には、アウトラインで簡単に示したブレーキ液リザーバ190の送出口の端部品のための2個のインレットポート101、201が備えられている。
【0028】
セカンダリピストン230は、ボア220内で圧力室240を画定し、圧力室は、この圧力室240に通じる穴241によりブレーキ回路C2に接続されている。圧力室240は、マスタシリンダ100の本体110内でボア220とセカンダリピストン230の外面との間に形成された供給室250から、中空のセカンダリピストン230により隔てられており、供給室は、ボア内の周辺溝から形成されている。供給室250は、このボアに通じる周辺溝251、252により両側で囲まれている。前方の溝251は、周辺部の再供給シール253を収容し、後方の溝252は、隔離シールとも呼ばれる周辺部の密封シール280を収容している。
【0029】
再供給シール253は、ブレーキ液の不足時またはブレーキが急作動した場合に、圧力室240にブレーキ液を供給することができる。この再供給シール253の開放および閉鎖運動については、特許文献2に記載されている。供給室250を他方の圧力室140から隔てる密封シール280は、ボア220とセカンダリピストン230の表面との間の密封性を確保する役割を果たす。
【0030】
2個のピストン130、230は、スプリング173により離隔保持された2個の部分171、172からなる伸縮式のロッド170により結合されており、両端のうちの一方が、プライマリピストン130の底部131に当接し、他方が、セカンダリピストン230の底部231に当接している。
【0031】
上記のマスタシリンダ100のセカンダリ部分の説明は、プライマリ部分にも置き換えられる。2個のブレーキ回路C1、C2の加圧手段は2つに分けられる。上記の説明は、本発明が関与する部材に同じ条件で適用され、これらの部材には、100を差し引いた同じ参照符号が付されている。
【0032】
図2と3では、セカンダリピストン230が、底部231を備えた円筒形のスカート232から構成されており、プライマリピストン側に向いた底部の背面231bが、プライマリピストン130に接続されるプッシュロッド170の端部を収容する円錐台形のハウジング280を含み、反対面231aが、ピストンのヘリカルリターンスプリング273を収容するための溝281を備える。ヘリカルリターンスプリング273は、マスタシリンダのボア220の底部111に当接している。
【0033】
スカート232の前縁すなわち、プライマリピストン側に向いていない縁は、軸方向の一定の長さLにわたって鋸歯状にされており、長方形の断面を有するスロット233が軸線xxに沿って並べられている。これらの半径方向スロット233は、スカートの前縁に向かって開放されている。その形状は長方形である。スロット233の縁2331は、半径方向の面により画定され、後部2332は直角である。後縁は直角であり、すなわち横方向にあって、この実施例では、すべての後縁が同一円上に配置されている。後縁は、平坦な表面、あるいは軸線xxに対する傾斜面、またはこの軸線に対して垂直な面から構成可能である。
【0034】
鋸歯状の前縁の形状は、図3の斜視図でいっそう明確に示されている。
【0035】
背面は、リブから構成されており、リブには次の2つの役割がある。
− セカンダリピストンの剛性が増す。正確な仕様は、構造計算によって決められる。
− 射出時にピストンのプラスチック充填を容易にする。
【0036】
図示されていない1つの実施形態によれば、スロット233がヘリカル状である。
【0037】
図5は、比較として、図3図5のセカンダリシリンダのスロット233と、公知のセカンダリピストン330の穴333との展開形状を示している。
【0038】
2つの実施形態の通路を重ねると、本発明によるピストン内で作動液のための通路の代わりをするスロット233は、穴の付近で断面差があり、この断面差によって、図6と7で示したようにESPモードでの流量通過のためのテーパが不要になる。この重ね図は、スロット233の後縁2331と穴333の輪郭とを示しており、本発明によるセカンダリピストンのスロット233の通過断面が有利であって、穴233の丸みを帯びた輪郭を補償し、また、ESPモードにおける作動液流量のための従来技術による円錐台形の形状を補償することを示している。
【0039】
本発明によるセカンダリピストンは、プラスチック材料の射出成形により構成されるので、前縁の歯のエッジまたはスロットのエッジが、成形においてアールをなしていて鋭角ではなく、個別の加工をする必要がない。
【0040】
本発明によるセカンダリピストンは、直角の半径方向スロットを有しており、特別な金型を必要とせずに型から取り出すことができる。型抜きは、セカンダリピストンの軸線xxの方向に行われる。
【0041】
直線でなくヘリカル状のスロットの場合、型から外すときに、部品と金型の間で相対回転運動が必要になることがある。
【0042】
本発明によるセカンダリピストンは、好適には、以下を含む群から選択されるプラスチック材料からなる。
【0043】
熱硬化性材料の中のベークライトおよび熱可塑性材料の中のポリプロピレン。
【0044】
本発明によるセカンダリピストンを備えたタンデムマスタシリンダの組立は、特別な困難なしに、また組立ラインを変更する必要なしに実施される。セカンダリピストンの形状が簡素化されるので、製造方法も簡素化され、製造コストが安価になる。
【0045】
使用に際しては、特にESPモードで作動する場合、マスタシリンダは、良好な流量性能で動作する。
【0046】
さらに、加工をなくし、したがって、加工時の鋳バリがなくなるので、それだけ製造が簡素化されてコストもいっそう抑えられる。
【0047】
スロット数および、セカンダリピストン230の前縁の周辺部に規則正しく配置することが好ましいスロット配分については、作動液に関する研究および数々の試験により決定される。スロット233の長さ(L)は、再供給シール253に対してセカンダリピストンの休止位置を有するように、また、この再供給とESPモードでの動作とを可能にするように、タンデムマスタシリンダの幾何学的形状に応じて決定される。
【符号の説明】
【0048】
100 本発明によるタンデムマスタシリンダ
101、201 インレットポート
110 本体
111 セカンダリ圧力室の底部
120 ボア
130 プライマリピストン
131 プライマリピストンの底部
133 穴
134 円錐台形状部
140、240 プライマリ圧力室/セカンダリ圧力室
141、241 穴
150、250 供給室
153、253 再供給シール
170 伸縮式ロッド
171、172 ロッド部分
173 スプリング
180、280 密封シール
190 リザーバ
230 セカンダリピストン
231 セカンダリピストンの底部
231a 前面
231b 背面
232 スカート
233 スロット
2331 スロット233の側面
2332 スロットの底部
273 スプリング
281 溝
300 公知のタンデムマスタシリンダ
320 ボア
310 マスタシリンダの本体
330 セカンダリピストンの底部
331a 前面
331b 背面
340 セカンダリ圧力室
341 穴
350 供給室
351 環状溝
352 隔離シール
353 再供給シール
370 伸縮式ロッド
373 スプリング
380 隔離シール
C1、C2 ブレーキ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6A
図7