特許第5730406号(P5730406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5730406内部で通気されるブレーキディスクロータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730406
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】内部で通気されるブレーキディスクロータ
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/12 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
   F16D65/12 U
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-545429(P2013-545429)
(86)(22)【出願日】2011年12月23日
(65)【公表番号】特表2014-501367(P2014-501367A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】EP2011073956
(87)【国際公開番号】WO2012085272
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2013年8月26日
(31)【優先権主張番号】10196953.3
(32)【優先日】2010年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513159251
【氏名又は名称】ブレンボ エスジーエル カーボン セラミック ブレイクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Brembo SGL Carbon Ceramic Brakes GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ピピリス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴィトケ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー クリンゲルヘーファー
(72)【発明者】
【氏名】ヤニック ヴィレミン
【審査官】 城臺 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−526257(JP,A)
【文献】 特表2003−512580(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0166738(US,A1)
【文献】 特公昭29−007366(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
状の形状を有しかつ外周および内周のための円対称の軸線を有する円筒状平板の形態を有し、前記軸線に関して対称的な中心孔を備え、対称性は、周期的対称グループCiのものであり、iは、自然数から選択された周期的対称グループCiのオーダでありかつ少なくとも2であり、リブ(F10,F11a−F15a,F11b−F15b,F1L)の反復するシリーズによって互いに結合された少なくとも2つの平行なリングディスク(2)を備え、ブレーキディスクロータの設計は、該ブレーキディスクの異なる回転方向に関して対称的である、すなわち、ブレーキディスクの回転軸線と、円筒状のブレーキディスクの1つの半径(R)とによって形成される少なくとも1つの平面に関して対称的であ内部で通気されるブレーキディスクロータ(1)であって、
前記リブの数の少なくとも50%は長円形(F11a−F13a,F11b−F13b)を有さなければならず、
丸みづけられた三角形を有する少なくとも1つのリブFj0(F10)が設けられており、丸みづけられた角のうちの1つは前記ブレーキディスクの外周に向けられており、丸みづけられた三角形のこの角と反対側の辺は凹面状であり、
jは、自然数のグループ{1;...,i}のエレメントであり、iは、自然数から選択された周期的対称グループCiのオーダでありかつ少なくとも2であることを特徴とする、内部で通気されるブレーキディスクロータ。
【請求項2】
前記ブレーキディスクロータは、環状のブレーキディスクの内側円に隣接して配置された、丸みづけられた三角形を有する少なくとも2つのリブFj0と、少なくとも4つの別のフィン状のリブFjmaおよびFjmb(F11a−F15a,F11b−F15b)とを有し、mは、少なくとも1の自然数である、請求項1記載の内部で通気されるブレーキディスクロータ。
【請求項3】
以下の付加的な条件のうちの少なくとも1つが満たされる:
(a)iは偶数であり、少なくとも4である
(b)mは少なくとも2である
(c)ブレーキディスクの外周に近い方の冷却ダクトの端部の数の少なくとも50%は、前記冷却ダクトの中心を通る半径に対して10°未満の角度を形成している
(d)三角形の3つの辺のうちの少なくとも2つにおいて凹面状である丸みづけられた三角形を有する少なくとも1つのリブFj0が設けられている
)あらゆる2つの長円形のリブE1'およびE2'の場合、回転軸線からのその中心のより大きな距離R2’を備えた長円形のリブE2’の短軸に対する長軸の比は、回転軸線からのその中心のより小さな距離R1’を備えた長円形のリブE1’の短軸に対する長軸の比と等しいかまたはそれよりも小さい
)あらゆる2つの長円形のリブE1およびE2の場合、R1がR2よりも小さい場合、長円形のリブE1の長軸と、回転軸線から前記リブE1の中心までの半径R1との間に形成されたより小さな角度α1は、長円形のリブE2の長軸と、回転軸線から前記リブE2の中心までの半径R2との間に形成されたより小さな角度α2よりも大きい
jの同じ値を有するリブのそれぞれのセットにおける1つのリブFjL(F1L)が設けられており、該リブFjL(F1L)は、ブレーキディスクの回転対称軸線と前記リブFjLの中心を通る前記ブレーキディスクの半径(R)とによって形成される平面に関して鏡面対称の2つの半部に分割されている、請求項2記載の内部で通気されるブレーキディスクロータ。
【請求項4】
iは少なくとも6であり、mは少なくとも4である、請求項2記載の内部で通気されるブレーキディスクロータ。
【請求項5】
ブレーキディスクの外周に近い方の冷却ダクトの端部の数の少なくとも50%は、前記冷却ダクトの中心を通る半径に対して10°未満の角度を形成している、請求項2から4までのいずれか1項記載の内部で通気されるブレーキディスクロータ。
【請求項6】
あらゆる2つの長円形のリブの場合、回転軸線からのその中心のより大きな距離を有する長円形のリブの短軸に対する長軸の比は、回転軸線からのその中心のより小さな距離を有する長円形のリブの短軸に対する長軸の比と等しいか、またはそれよりも小さい、請求項1または2または4記載の内部で通気されるブレーキディスクロータ。
【請求項7】
三角形の3つの辺のうちの少なくとも2つにおいて凹面状である丸みづけられた三角形を有する少なくとも1つのリブFj0が設けられており、jは、自然数のグループ{1;...,i}のエレメントであり、iは、自然数から選択された、ブレーキディスクロータの対称性と同じである周期的対称性グループCiのオーダでありかつ少なくとも2である、請求項1または2または4記載の内部で通気されるブレーキディスクロータ。
【請求項8】
jの同じ値を有するリブのそれぞれのセットにおける1つのリブFjL(F1L)が設けられており、該リブFjL(F1L)は、ブレーキディスクの回転対称軸線と、前記リブFjLの中心を通る前記ブレーキディスクの半径とによって形成される平面に関して鏡面対称の2つの半部に分割されている、請求項2または4記載の内部で通気されるブレーキディスクロータ。
【請求項9】
あらゆる2つの長円形のリブE1およびE2の場合、R1がR2よりも小さいならば、長円形のリブE1の長軸と、回転軸線から前記リブE1の中心までの半径R1との間に形成されたより小さな角度α1は、長円形のリブE2の長軸と、回転軸線から前記リブE2の中心までの半径R2との間に形成されたより小さな角度α2よりも大きい、請求項1または2または4記載の内部で通気されるブレーキディスクロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状の形状の円筒状平板の形態を有しかつ外周および内周のための円対称の軸線を有し、該軸線に関して対称の中央孔を備える、内部で通気されるブレーキディスクロータであって、互いに平行に整合させられておりかつリブの反復するシリーズによって互いに結合された少なくとも2つのディスクを有する、内部で通気されるブレーキディスクロータに関する。
【0002】
内部で通気されるブレーキディスクは、独国特許出願公開第2257176号明細書および米国特許第7100748号明細書から公知である。これらの後者は、ウェブまたはリブによって互いに結合された2つのディスクもしくは摩擦リングと、ウェブまたはリブの間に形成されたダクトとを有し、前記ダクトは冷却空気を案内する。リブは、それらの端部領域の間で湾曲した形式で延びており、外周におけるリブはブレーキディスクに関して半径方向で整合させられており、内周に隣接する端部領域は、前記リブまたはウェブの最も内側の箇所に接する円に対する接線に対して20〜70°の角度で設定されている。これによって規定されたダクトの開口は、ブレーキディスクの回転方向と反対に向いている。
【0003】
米国特許第7100748号明細書による冷却チャネルおよびリブの設計は、独国特許出願公開第2257176号明細書と比較して改良された熱除去につながるが、特にブレーキディスク表面の温度均一性に関して、さらなる改良を見つけることがさらに望まれた。米国特許第7100748号明細書および同時係属中の欧州出願番号EP10160307.4の別の欠点は、回転方向に関して対称的ではないということである。したがって、自動車またはその他の車両の右側の車輪と左側の車輪のために異なるブレーキディスクが必要とされる。回転方向に関して対称的な設計は、国際公開第2001/027490号およびカナダ特許出願公開第2352714号明細書から公知である。前者は、ブレーキディスクの外周においてまたはその近くにおいて冷却空気用の入口および出口ならびにダクトを有し、これにより、ハブの近くにおけるブレーキディスクの中央部分の機械的強度を高める。これは、半径方向でのディスク表面ゾーンにおける温度の不均一性、ひいては、反りを生じる熱膨張の不均一性につながる。
【0004】
カナダ特許出願公開第2352714号明細書において、ここで称されるようにフィンもしくはピラーの分配は、ブレーキロータ表面にわたって均一ではない。これは、不均一な伝熱につながり、その結果、温度不均一につながり、これは、熱膨張の差によるブレーキディスクロータの反りにつながる。
【0005】
したがって、本発明の課題は、自動車またはその他の車両の左側および右側のために使用することができ、効率的な伝熱、およびブレーキディスクロータ表面にわたる均一な温度分布をも有する、内部で通気されるブレーキディスクロータを提供することである。
【0006】
前記課題は、請求項1記載の主体によって達成される。好適な実施の形態は従属請求項2〜10に記載されている。環状のジオメトリの形状を有しかつ外周および内周のための円対称の軸線を有する円筒状平板の形態を有し、前記軸線に関して対称的な中心孔を備えた、内部で通気されるブレーキディスクロータであって、対称性は、周期的な対称グループCiのものであり、iは、自然数から選択された周期的な対称グループCiのオーダ(数)であり、少なくとも2であり、リブの反復するシリーズによって互いに結合された少なくとも2つの平行なリングディスクを備え、リブを有する前記ブレーキディスクロータの設計は、前記ブレーキディスクの異なる回転方向に関して対称的である、すなわち、ブレーキディスクの回転軸線と円筒状のブレーキディスクの1つの半径とによって形成された少なくとも1つの平面に関して対称的である、内部で通気されるブレーキディスクが提供される。少なくとも2つの平行なリングディスクおよびリブは、一緒にブレーキディスクロータを形成している。ブレーキディスクロータは、少なくとも2つのリブによって囲まれた冷却ダクトを有する。リブは、少なくとも2つの平行なリングディスクを結合する材料の大きな片であり、これらのリブは、好適には、リングディスクと同じ材料または類似の材料から成ってよく、好適には、円形、長円形、三角形または長形を有してよい。リブのうちの少なくとも50%は、本発明による好適な特性を達成するために長円形を有さなければならない。"長円形"は、本発明に関して用いられる場合には、2つの半軸線R1およびR2によって規定された、数学的意味における長円の形状を有することを意味し、この場合、R1がR2と異なり、2つの半軸線のより小さい方の長さが2つの半軸線のより大きい方の長さの90%以下、好適には80%以下、特に好適には75%以下である。丸みづけられた角を備えた菱形の形状は、もちろん長円ではない。本発明の目的のために、2つの材料が、同じ化学元素の少なくとも20%、好適には少なくとも30%、特に好適には少なくとも40%の質量割合を有するならば、同じであると考えられる。
【0007】
好適には、前記ブレーキディスクロータは、環状のブレーキディスクの内側円に隣接して配置された、丸みづけられた三角形の形状を有する少なくとも2つのリブFj0と、少なくとも4つの別のフィン状のリブFjmaおよびFjmbとを有し、jは、自然数のグループ{1;...;i}のエレメントであり、iは、自然数から選択された周期的対称グループCiのオーダ(数)でありかつ少なくとも2であり、mは、少なくとも1つの自然数である。したがって前記ブレーキディスクロータの内周により近い同じリブの内側端部と称される他方の端部よりも、ブレーキディスクロータを形成する環状の円筒状平板の外周により近い外側端部と称される端部を有するあらゆるフィン状のリブFjmbまたはFjmaのために、mのより大きな値は、少なくとも1つの端部、外側端部または内側端部が、mのより小さな値を有するフィンの対応する外側又は内側の端部よりも外周により近いことを意味する。さらに、jおよびmの同じ値のためのリブFjmaおよびFjmbのあらゆる対は、回転軸線と同じ対称軸線と、jの同じ値を有するリブFj0の中心を通る半径とによって形成された平面に関して対称的である。jの同じ値およびmの異なる値を有するリブFjmaおよびFjmbのシリーズにおいては、mのより大きな値を有するリブは、ブレーキディスクロータの外周のより近くに配置されている。jおよびmの同じ値のためのリブFjmaおよびFjmbは、周期対称の軸線と同じである回転軸線と、これらの2つのリブの全ての等しい箇所とを接続する半径とによって形成された平面に関する、互いの鏡像である。ブレーキディスクロータは、対称グループCiに従う周期的対称性を有する。
【0008】
好適には、以下の条件のうちの少なくとも1つが付加的に満たされる:
(a)iは偶数であり、少なくとも4、より好適には少なくとも6、特に好適には少なくとも8である
(b)mは少なくとも2であり、より好適には少なくとも3、さらに好適には、mは6以下である
(c)ブレーキディスクの外周により近い冷却ダクトの端部の少なくとも50%は、前記冷却ダクトの中心を通る半径に対して10°未満の角度を形成している
(d)丸みづけられた三角形の形状を有する少なくとも1つのリブFj0が設けられており、丸みづけられた角のうちの1つはブレーキディスクの外周に向けられており、丸みづけられた三角形のこの角と反対側の辺は凹面状である
(e)三角形の3つの辺のうちの少なくとも2つにおいて凹面状である丸みづけられた三角形を有する1つのリブFj0が設けられている
(f)あらゆる2つの長円形のリブE1'およびE2'のために、回転軸線からその中心のより大きな距離R2’を備えた長円形のリブE2’の短軸に対する長軸の比は、回転軸線からその中心のより小さな距離R1’を備えた長円形のリブE1’の短軸に対する長軸の比と等しいかまたはそれよりも小さい
(g)R1がR2よりも小さい場合、あらゆる2つの長円形のリブE1およびE2'のために、長円形のリブE1の長軸と、回転軸線から前記リブE1の中心までの半径R1との間に形成されたより小さな角度α1は、長円形のリブE2の長軸と、回転軸線から前記リブE2の中心までの半径R2との間に形成されたより小さな角度α2よりも大きい
(h)ブレーキディスクの回転対称軸線と、前記リブFjLの中心を通る前記ブレーキディスクの半径とによって形成される平面に関して鏡面対称の2つの半部に分割された、jの同じ値を有するリブのそれぞれのセットにおける1つのリブFjLが設けられている。
【0009】
ここで使用されるシンボルは、jおよびmの特定の値のために、図面およびそれに対する説明において説明される。
【0010】
同じブレーキディスクにおいてこれらの条件のうちの2つ以上が満たされることが好ましい。
【0011】
1つの複雑な形状において好適な実施の形態のうちの2つ以上が組み合わされた場合に伝熱のための特に良好な結果が得られ、2つ以上とは、条件(a)〜(g)のうちの2つのあらゆる組み合わせ、すなわち(a)+(b)、(a)+(c)、(a)+(d)、(a)+(e)、(a)+(f)、(a)+(g)および(a)+(h);(b)+(c)、(b)+(d)、(b)+(e)、(b)+(f)、(b)+(g)および(b)+(h)、(c)+(d)、(c)+(e)、(c)+(f)、(c)+(g)および(c)+(h)、(d)+(e)、(d)+(f)、(d)+(g)および(d)+(h)、(e)+(f)、(e)+(g)および(e)+(h)、(f)+(g)および(f)+(h)、および(g)+(h)、ならびに(a)〜(g)のうちの3つのあらゆる組み合わせ、すなわち(a)+(b)+(c)、(a)+(b)+(d)、(a)+(b)+(e)、(a)+(b)+(f)、(a)+(b)+(g)および(a)+(b)+(h)など、ならびに(a)〜(h)のうちの4つのあらゆる組み合わせ、すなわち(a)+(b)+(c)+(d)、(a)+(b)+(c)+(e)、(a)+(b)+(c)+(f)、(a)+(b)+(c)+(g)および(a)+(b)+(c)+(h)など、ならびに(a)〜(h)のうちの5つのあらゆる組み合わせ、すなわち(a)+(b)+(c)+(d)+(e)、(a)+(b)+(c)+(d)+(f)、(a)+(c)+(d)+(e)+(f)、(a)+(b)+(d)+(e)+(f)、(a)+(b)+(c)+(e)+(f)、(a)+(b)+(c)+(d)+(f)および(b)+(c)+(d)+(e)+(f)など、ならびに(a)〜(h)のうちの6つのあらゆる組み合わせ、すなわち(a)+(b)+(c)+(d)+(e)+(f)、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)+(g)、(a)+(b)+(c)+(d)+(f)+(g)、(a)+(b)+(c)+(e)+(f)+(g)など、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)+(f)+(g)+(h)である全ての8つの付加的な条件の組み合わせまで意味する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】リブおよびリブに囲まれた冷却ダクトの設計を示す図である。
図2】リブおよびリブに囲まれた冷却ダクトの設計を示す図である
図3】リブおよびリブに囲まれた冷却ダクトの設計を示す図である。
図4】設計の有利な効果を示す図である。
【0013】
本発明はさらに、リブおよびリブに囲まれた冷却ダクトの設計を示す図1図2および図3において、またこの設計の有利な効果を示す図4によって、さらに説明される。
【0014】
図1は、10個のシリーズのリブを有するブレーキディスクロータの図を示しており、同じ一次インデックスj(ここではjは1〜10の範囲である)および二次インデックスm(ここではmは1〜5の範囲である)を有する全てのリブはそれぞれ、同じ一次および二次インデックスを有する他のリブに関して鏡面対称であり、値"a"(mの範囲が1〜5の全てのリブF1maがこの図において記号で示されている)および"b"として示された三次インデックスによって区別される。さらに、半径R上に位置する2つのリブF10およびF1Lが存在する。
【0015】
図2は、リブの幾何学的配置を明瞭に見ることができるように、リブによって結合されたリングディスク2のうちの一方の4分の1が排除された、同じブレーキディスクロータ1の等角図である。ナットおよびボルトによってブレーキディスクロータ1に結合されたハブもしくはベル3が示されている。
【0016】
図3は、以下の好適な条件が満たされた場合の図1のセクションを示す:
(a)iは10、したがって偶数であり、少なくとも4、より好適には少なくとも6、特に好適には少なくとも8である
(b)mは5、したがって少なくとも2であり、また少なくとも3、さらにmは6以下である
(c)ブレーキディスクの外周に近い方の、冷却ダクトの端部の少なくとも50%である全ての冷却ダクトは、前記冷却ダクトの中心を通る半径に対して10°未満の角度を形成している
(d)jの同じ値を備えるリブのそれぞれのシリーズにおいて、丸みづけられた三角形を有する1つのリブFj0が設けられており、丸みづけられた角のうちの1つはブレーキディスクの外周に向けられており、丸みづけられた三角形のこの角と反対側の辺は凹面状である
(e)jの同じ値を備えるリブのそれぞれのシリーズにおいて、三角形の3つの辺のうちの少なくとも2つにおいて凹面状である丸みづけられた三角形を有する1つのリブFj0が設けられている
(f)あらゆる2つの長円形のリブE1'およびE2'の場合、回転軸線からのその中心のより大きな距離R2’を備えた長円形のリブE2’の短軸に対する長軸の比は、回転軸線からのその中心のより小さな距離R1’を備えた長円形のリブE1’の短軸に対する長軸の比と等しいかまたはそれよりも小さい
(g)あらゆる2つの長円形のリブE1およびE2の場合、R1がR2よりも小さい場合、長円形のリブE1の長軸と、回転軸線から前記リブE1の中心までの半径R1との間に形成されたより小さな角度α1は、長円形のリブE2の長軸と、回転軸線から前記リブE2の中心までの半径R2との間に形成されたより小さな角度α2よりも大きい
(h)jの同じ値を有するリブのそれぞれのセットにおける1つのリブFjLが設けられており、このリブFjLは、ブレーキディスクの回転対称軸線と、前記リブFjLの中心を通る前記ブレーキディスクの半径とによって形成される平面に関して鏡面対称の2つの半部に分割される。
【0017】
より見やすくするために、R1'およびR2'は図3に示されていない。R1'およびR2'は、楕円形のリブE1'およびE2'の中心から、回転軸線と図平面との交差箇所と同じでありかつ図3に示したようにR1およびR2の交差箇所である対称中心Mまでの距離である。
【0018】
図4は、実施例のセクションにおいて詳細に説明するように、一方向で回転するように最適化された同じ寸法(円筒状リングの内側および外側のリングの直径)を備えたブレーキディスクロータ("比較例")と、本発明によるブレーキディスクロータ("本発明")との冷却時間(図4a)および伝熱(図4b)の比較を示している。
【0019】
伝熱効率の改善は、セラミック複合材料、すなわち炭素繊維で強化された炭化ケイ素から形成されたブレーキディスクロータを使用した以下の実験において示される。伝熱効率の同じ改善を、ねずみ鋳鉄から形成された慣用のブレーキディスクロータを使用して実現することができる。
【実施例】
【0020】
実施例1
回転方向と無関係に従来技術と比較して本発明によるブレーキディスクリングの性能の向上を示すために、図1に示された本発明による設計と、同時係属中の出願EP10160307.4に記載された設計とを区別するために実験が行われた。両方の場合において、通気されるブレーキディスクの材料は、同じ炭素繊維強化炭化ケイ素であり、20mmの冷却チャネルの高さと、40mmの全厚さと、400mmの外径と、200mmの内径とを有していた。両設計は、ブレーキディスクロータの表面における伝熱の良好な均一性のために最適化されていた。これは、ブレーキディスクの摩擦表面積にわたる均一な温度分布、およびブレーキディスク内に熱により生ぜしめられる張力の減少につながる。
【0021】
EP10160307.4("比較例")による、および本発明の図1("本発明")による冷却チャネルおよびリブ設計を備えたブレーキディスクが、連続的なランにおいて同じ自動車に固定され、ブレーキングによって、500℃の、表面において測定された初期温度にもたらされ、その後ブレーキは解放され、車両は次いで、80km/h、120km/h、160km/hおよび200km/hの一定の速度における4つの異なる測定条件において運転され、ブレーキキャリパに関して常に同じ位置において測定された、ブレーキディスク表面における温度が150℃に低下するまでに要した時間を記録した。
【0022】
以下の冷却時間が記録された。
【0023】
【表1】
【0024】
実験誤差の範囲において、本発明によるブレーキディスクの冷却性能は、比較例のブレーキディスク(EP10160307.4)のものとほぼ同じであるが、結果は、本発明による冷却チャネルおよびリブ設計を備えたブレーキディスクの場合に、常に僅かに良好であったということが見て取れる。
【0025】
実施例2
別の実験において、異なる回転方向における加熱されたブレーキディスクから冷却空気への伝熱が評価された。500℃の同じ初期温度において実施例1と同じブレーキディスクが使用され、冷却ダクトを通過する前および後における冷却空気温度と、冷却空気の質量流速(mass flux)とから、伝熱が評価された。
【0026】
以下のデータが見られた(回転方向:ccw=反時計回り、cw=時計回り)。
【0027】
【表2】
【0028】
見て取れるように、間違った方向でのブレーキディスクロータ"Comp"("比較例")の作動は、正しい回転方向でこのディスクを回転させた場合に達することができる伝熱の22%だけ伝熱効率を顕著に低下させる。本発明によるブレーキディスク"Inv"("本発明")は、意図した方向にディスクロータ"Comp"を回転させるのと比較して僅かに高い伝熱効率(+4%)を有する。本発明によるブレーキディスクロータの場合の伝熱効率は、反時計回りおよび時計回りの回転の場合の結果が同じであるので、回転方向とは無関係であり、実験の誤差の範囲である。
図1
図2
図3
図4