(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730409
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】ダイヤフラムポンプおよびダイヤフラムポンプを備えた排ガス後処理システム
(51)【国際特許分類】
F04B 43/02 20060101AFI20150521BHJP
F04B 43/04 20060101ALI20150521BHJP
F04B 53/10 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
F04B43/02 D
F04B43/04 A
F04B21/02 G
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-550793(P2013-550793)
(86)(22)【出願日】2011年12月30日
(65)【公表番号】特表2014-507590(P2014-507590A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】EP2011074323
(87)【国際公開番号】WO2012104001
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2013年7月29日
(31)【優先権主張番号】102011003461.7
(32)【優先日】2011年2月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ヘーベラー
【審査官】
佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−247777(JP,A)
【文献】
実公昭42−002918(JP,Y1)
【文献】
実公昭54−31364(JP,Y2)
【文献】
特開2010−223218(JP,A)
【文献】
特開2009−185736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
F04B 43/04
F04B 53/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を搬送するためのダイヤフラムポンプであって、作業ダイヤフラム(2)によって画成され、第1の弁(3)を介して供給部(4)と連通可能で且つ第2の弁(5)を介して排出部(6)と連通可能な作業室(1)と、電磁石(7)とを含み、該電磁石が、コイル装置(8)と、該コイル装置(8)と協働し且つ前記作業ダイヤフラム(2)と作用結合されている電機子(9)とを含んでいる前記ダイヤフラムポンプにおいて、
前記弁(3,5)が、前記コイル装置(8)と前記電機子(9)との間に配置されている弁プレート(10)内に形成され、前記電機子(9)が、前記弁プレート(10)および/または1つのばね(15)を少なくとも部分的に受容するための少なくとも1つのカップ状の受容室(16,17)を形成していることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
前記弁プレート(10)が、少なくとも部分的に、前記電磁石(7)のハウジング(11)または前記電機子(9)に嵌め込まれていることを特徴とする、請求項1に記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
前記弁プレート(10)および/または前記作業ダイヤフラム(2)が、周回するように延在して配置されている緩衝条溝(12)を有していることを特徴とする、請求項1または2に記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項4】
前記弁プレート(10)が、少なくとも部分的に、片側または両側を少なくとも1つの他のプレート(13,14)によって覆われ、該他のプレートが、非磁性材料から成り、および/または、前記電磁石(7)の前記ハウジング(11)と溶接されていることを特徴とする、上記請求項1〜3のいずれか一つに記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項5】
前記電機子(9)が、半径方向において、前記コイル装置(8)の通電終了後に前記電機子(9)を復帰させるために用いる少なくとも1つのばね(15)によって案内されることを特徴とする、上記請求項1〜4のいずれか一つに記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのばね(15)が前記電機子(9)を段階的に復帰させるように構成されていることを特徴とする、上記請求項5に記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項7】
前記電機子(9)が押し抜き/曲げ部材であることを特徴とする、上記請求項1〜6のいずれか一つに記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項8】
前記電磁石(7)が、直流磁石であり、および/または、2つの内径を備えたコイル(8)を含んでいることを特徴とする、上記請求項1〜7のいずれか一つに記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項9】
前記液体が、排ガス後処理媒体であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載のダイヤフラムポンプ。
【請求項10】
排ガス後処理媒体を搬送するための、請求項1〜9のいずれか一つに記載のダイヤフラムポンプを備えた排ガス後処理システム。
【請求項11】
前記排ガス後処理媒体が尿素水溶液であることを特徴とする、請求項10に記載の排ガス後処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の構成を備えた、液体を、特にたとえば尿素水溶液のような排ガス後処理媒体を搬送するためのダイヤフラムポンプに関するものである。本発明は、さらに、このようなダイヤフラムポンプを備えた排ガス後処理システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤフラムポンプ、特に排ガス後処理システムで使用可能なダイヤフラムポンプは、技術水準からすでに公知である。複数の部分から成るポンプハウジングを備えたダイヤフラムポンプは特許文献1に開示されている。その作業ダイヤフラムは2つのハウジング部分の間に張設され、偏心体と連結ロッドとを介して電動機により軸線方向に操作可能である。作業ダイヤフラムを固定するため、ハウジング部分は軸線方向において互いに締め付け固定されている。
【0003】
他のダイヤフラムポンプは特許文献2に開示されている。ここでは作業ダイヤフラムは偏心体を備えた連結ロッドを介して操作されるのではなく、電磁石の電機子と作用結合されているピストンを介して操作される。電磁石のコイル装置を通電すると、電機子がコイル装置の方向へ引っ張られ、その際作業ダイヤフラムは電機子と結合されているピストンを介して加圧力の作用を受ける。加圧力によりポンプ作業室内でダイヤフラムが拡大し、すなわちその中にある媒体が圧縮され、その結果媒体は排出弁を介して排出される。コイル装置の通電が終了すると、電機子で支持されているばねが電機子およびピストンの復帰を保証する。作業ダイヤフラムは収縮してポンプ作業室内に負圧を生じさせ、その結果新鮮な媒体が吸い込まれる。作業ダイヤフラムに加圧力を作用させるため、ピストンはコイル装置によって案内されている。このためには、ピストンおよび/または電機子の製造の際に小さな形状公差および位置公差を厳守する必要がある。さらに、ピストンおよび/または電機子の案内領域は摩擦によって高い摩耗に曝されている。加えて、ピストンはその長さのために固着することがあり、それによって摩擦力が増大し、よって摩耗が増大する。
【0004】
駆動部として昇降磁石を備えた他のダイヤフラムポンプは特許文献3に開示されている。作業ダイヤフラムは、中空シリンダとして実施された、ソレノイドの電機子とダイレクトに結合されている。従って作業ダイヤフラムを操作するためのピストンは省略できる。電機子を案内するため、該電機子はスリーブ状の滑り軸受に受容されている。電機子の昇降運動は電磁石のハウジングによって制限されるが、電機子がハウジングに当接すると、望ましくない騒音が発生することがある。
【0005】
特許文献4では、作業ダイヤフラムを操作するための電磁石を備えたダイヤフラムポンプが提案される。弾性要素は、電磁石と協働するフラットアーマチュアと復帰ばねとを同時に形成している。弾性要素は、作業ダイヤフラムとの結合のために作業ダイヤフラムのプラスチックでオーバーモールド(umspritzt)されている。従って電機子の半径方向のガイドは省略でき、それによって可動部品領域の摩耗が減少する。さらに、フラットアーマチュアとしての構成によりコンパクトな装置が提供され、わずかな構成空間を必要とするにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008043309A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102005003583A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102004011123A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102008054686A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記技術水準から出発して、コンパクトで、騒音および摩擦が少なく、さらに高作業効率を有する、電磁石を介して操作可能なダイヤフラムポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の構成を備えたダイヤフラムポンプによって解決される。本発明の有利な他の構成は従属項に記載される。
【0009】
液体を、特にたとえば尿素水溶液のような排ガス後処理媒体を搬送するために提案されるダイヤフラムポンプは、作業ダイヤフラムによって画成され、第1の弁を介して供給部と連通可能で且つ第2の弁を介して排出部と連通可能な作業室を含んでいる。ダイヤフラムポンプはさらに電磁石を含み、該電磁石は、コイル装置と、該コイル装置と協働し且つ作業ダイヤフラムと作用結合されている電機子とを含んでいる。本発明によれば、弁は、コイル装置と電機子との間に配置されている弁プレート内に形成されている。好ましくは、弁プレートは作業ダイヤフラムとともに作業室を画成し、その結果これらポンプ構成部材もコイル装置と電機子との間に配置される。従って、ポンプの主要構成要素は電磁石内に組み込まれている。このようにして非常にコンパクトなポンプ装置が生じ、加えて、電機子とコイル装置とが分離しているので、騒音および摩擦の少ない作動が可能である。さらに、電機子の半径方向ガイドが設けられていないために、摩耗が少なくなる。さらに、形状公差および位置公差を決める必要がない。電機子と作業ダイヤフラムとの作用結合はダイレクトな動力伝達を保証し、よってポンプの高作業効率を保証している。好ましくは、電機子は作業ダイヤフラムと摩擦でおよび/または形状拘束的に、たとえばねじ結合を介して作用結合されている。これとは択一的にクランプ結合またはロック結合を設けてもよい。さらに、作業ダイヤフラムの端部は弁プレートに固定されている。固定のため、たとえば弁プレートに設けた適当な受容溝に係合しているリングを使用することができる。
【0010】
本発明の1実施態様によれば、弁プレートは、少なくとも部分的に、電磁石のハウジングまたは電機子に嵌め込まれている。これによりさらにコンパクトな構成を実現させることができる。また、嵌め込まれた弁プレートは同時に位置固定されている。
【0011】
他の構成によれば、弁プレートおよび/または作業ダイヤフラムは、好ましくは周回するように延在して配置されている緩衝条溝を有している。作業室の基本輪郭が円形である場合には、これら緩衝条溝は有利には互いに同心の複数の円内に配置される。作業室内に圧力を生成するには媒体を緩衝条溝から排出させねばならないので、緩衝条溝は電機子の運動を緩衝させる。
【0012】
さらに、弁プレートが、少なくとも部分的に、片側または両側を少なくとも1つの他のプレートによって覆われ、該他のプレートが、好ましくは、非磁性材料から成っていることが提案される。弁プレートと少なくとも1つの他のプレートとは協働して弁ヘッドを形成し、この場合個々のプレートは好ましくはレーザー溶接を介して互いに結合されている。少なくとも1つの他のプレートを非磁性材料から形成することで、コイル装置の通電を終了させたときに電機子が磁石ハウジングに磁気で付着するのを阻止する。少なくとも1つの他のプレートは好ましくは電磁石のハウジングに溶接されている。
【0013】
コイル装置とは別個に配置される電機子は、有利には、半径方向において少なくとも1つのばねによって案内される。ばねは、コイル装置の通電終了後に電機子を復帰させるために用いる。ばねはたとえばコイル圧縮ばねとして形成されていてよく、片側を弁プレートで、または、弁プレートを少なくとも部分的に覆っている前記他のプレートで支持され、他側を電機子で支持されていてよい。電機子の半径方向での案内を保証するため、ばねは、有利には、電機子の、周回するように延在している溝に係合している。電機子の周方向に均等に配分して配置されている複数の圧縮ばねを介して電機子の復帰を行なうと、これらの圧縮ばねは有利にはそれぞれ電機子のカップ状の繰り抜き部に侵入する。複数のばねを配置する場合、その数量は少なくとも3個、好ましくは4個またはそれ以上である。有利には、複数のばねは互いに同じ角度間隔で配置されている。これらのばねを弁プレートまたは前記他のプレートで半径方向に位置固定するため、それぞれのプレートには有利には隆起部がたとえばピンの形態で形成され、この隆起部のまわりにばね端を設置することができる。ばねを両側で案内することにより、電機子の十分な案内も確保されている。電機子の運動を緩衝させたるめ、ばねは段階的に構成されていてもよい。
【0014】
さらに、有利には、電機子は、弁プレートおよび/または1つのばねを少なくとも部分的に受容するための少なくとも1つのカップ状の受容室を形成している。中央に配置されるカップ状の受容室は、たとえば弁プレートを受容するために用いることができる。アーマチュアプレートを適当に成形することにより、作業室内での圧力生成の間に作業ダイヤフラムが支持され、これは作業ダイヤフラムの寿命に好ましい影響を与える。これとは択一的に、または、これに加えて、複数の復帰ばねを少なくとも部分的に受容するために用いる他の複数のカップ状の受容室を周方向に配分して配置してよい。
【0015】
カップ状の受容室は、成形加工によって平らなアーマチュアプレートに加工されていてよい。好ましくは、電機子は押し抜き/曲げ部材であり、特に簡単に適正価格で製造可能である。
【0016】
さらに、電磁石が直流磁石であることが提案される。これとは択一的に、または、これに加えて、電磁石は2つの内径を備えたコイルを含んでいることが提案される。これにより可能な限り多い巻き数を達成できる。
【0017】
上に挙げた本発明によるダイヤフラムポンプの利点により、このようなダイヤフラムポンプは、排ガス後処理媒体、特に尿素水溶液を搬送するための排ガス後処理システムで使用するのに特に適している。というのは、このようなダイヤフラムポンプは、電磁石が被搬送媒体と接触するのを阻止し、その結果電磁石が腐食から保護されているからである。それ故、さらに、排ガス後処理媒体、特に尿素水溶液を搬送するための本発明によるダイヤフラムポンプを備えた排ガス後処理システムが提案される。また、すでに挙げた利点以外にも、騒音および摩擦の少ないポンプ作動とコンパクトな構成とは排ガス後処理システムにとって有利に作用する。
【0018】
次に、本発明の有利な実施形態を添付の図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】技術水準から公知のダイヤフラムポンプの断面図である。
【
図2】本発明によるダイヤフラムポンプの断面図である。
【
図4】
図2のダイヤフラム装置の弁プレートの下面図である。
【
図5a】
図2のダイヤフラムポンプのハウジングの部分断面図である。
【
図5b】
図2のダイヤフラムポンプのハウジングの部分断面図である。
【
図6b】
図2のダイヤフラムポンプの作業ダイヤフラムの断面図である。
【
図7】本発明による他のダイヤフラムポンプの断面図である。
【
図8】
図7のダイヤフラムポンプの電機子の平面図である。
【
図9】
図7のダイヤフラムポンプの電機子の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
技術水準から公知のダイヤフラムポンプの断面図を用いて、すでに冒頭で述べたこのようなダイヤフラムの欠点をもう一度明らかにする。
図1に示された
公知のポンプは作業室1を有し、該作業室は作業ダイヤフラム2と弁プレート10とによって画成される。弁プレート10は、作業室1を供給部4と連通させる第1の弁
3と、作業室1を排出部6と結合させる第2の弁5とを有している。弁プレート10は板状の支持要素に固定され、該支持要素は、弁プレート10とは逆の側に、ポンプの駆動部としての電磁石7を担持している。電磁石7は、コイル装置8と、該コイル装置8と協働する電機子9とを有し、該電機子は、電磁石7の、弁プレート10とは逆の側に配置されている。作業ダイヤフラム2を操作するため、電機子9はアーマチュアボルト19を有し、該アーマチュアボルトはコイル装置8を貫通するように案内され、ガイド18を介して軸線方向に変位可能に支持されている。電磁石7のコイル装置8を通電すると、電機子9はコイル装置8の方向へ引っ張られ、アーマチュアボルト19が連行される。その際アーマチュアボルト19が作業ダイヤフラム2に加圧力を作用させ、該加圧力により作業室1の容積が小さくなり、よって圧力が上昇し、その結果弁5が開き、作業室1内にある媒体は排出部6を介して流出することができる。コイル装置8の通電を終了させると、電機子9で支持されているばね15のばね力が電機子を復帰させ、その際アーマチュアボルト19も復帰する。アーマチュアボルト19の復帰により作業室1の容積を大きくさせることができ、この容積の拡大で作業室1内に負圧が発生する。このため、新鮮な媒体が供給部4と弁3とを介して作業室1内へ吸い込まれる。欠点はアーマチュアボルト19の構成長さである。というのは、アーマチュアボルトは軸線方向の運動を実施する際に固着しやすいからである。また、ガイド18の領域の接触面は摩擦のために高い摩耗を被り、ポンプの寿命を短くする。さらに、コイル装置8を通電し電機子9がコイル装置8の方向へ移動したときに電機子9が電磁石7に当接し、望ましくない騒音が発生する。
【0021】
上記の欠点は、以下の図面に図示した本発明によるダイヤフラムポンプのいくつかの実施形態によって解消され、或いは、少なくともかなり低減される。
【0022】
本発明によるダイヤフラムポンプの第1実施形態が
図2に図示されている。駆動は、コイル装置8と電機子9とを含んでいる電磁石7を介して行われる。コイル装置8はハウジング11内に受容され、該ハウジングは電機子9側で弁プレート10によって閉鎖される。弁プレート10は、供給部4と連通している第1の弁3と、排出部6と連通している第2の弁5とを受容し、この場合両弁3,5(
図3を参照)と供給部4と排出部6とはそれぞれ1つの共通のラジアル面内に配置されている。弁プレート10は、本実施形態では、弁3,5の形成を容易にするために複数のプレートから組み立てられている。さらに、弁プレート10は他のプレート13によって覆われ、該プレートは非磁性材料から成り、周回するように延在する溶接溝20を介して弁プレート10と結合されている。加えて他のプレート13は隆起部23を有し、該隆起部は電機子9を復帰させるためのばね15のガイドに用いられる。本実施形態ではコイル圧縮ばねとして形成されているばね15の他端は、電機子9の受容室17内に侵入しており、該受容室は、電機子9のコイル装置8側に、周回するように延在する溝として形成されている。電機子9の他の受容室16は、電機子9がコイル装置8の方向へ移動したときに作業ダイヤフラム2を受容するために用いる。受容室16のカップ状構成は、加圧が発生している間中作業ダイヤフラム2を支持する。これにより作業ダイヤフラム2の寿命が長くなる。作業ダイヤフラム2と電機子9との作用結合は、本実施形態の場合、ねじ結合部を介して行われる。作業ダイヤフラム2はねじ結合部の領域に材料肉厚部の形態の緩衝用円錐を有し、該緩衝用円錐により、電機子9が弁プレート10に当接する前に、電機子9の運動を制動することができる。他のストッパ部21は、電機子9のストロークを復帰方向において制限する。作業ダイヤフラム2の端部はリング25を介して弁プレート10に固定され、リング25は弁プレート10に設けた適当な受容部に係合している。リング25を介して作業ダイヤフラム2を張設することができる。
【0023】
図2に図示したダイヤフラムポンプは、デッドボリュームが非常に小さいことを特徴としている。作業空間1のほぼ全容積は作業ダイヤフラム2によって排出され、これによってポンプの高作業効率が一層増大する。加えて、高精度の搬送量を特定可能である。
【0024】
さらに、ポンプの構成要素を電磁石7の中に組み込むことにより、構成空間を著しく小さくすることができる。これには、
図2に図示したように、弁プレート10が電磁石7のハウジング11内に嵌め込まれていることが寄与している。このためハウジング11は繰り抜き部22を有し(
図5aと
図5bを参照)、該繰り抜き部は弁プレート10の形状に対応するように形成されている(
図4を参照)。ハウジング11に嵌め込まれている弁プレートは、さらに、本実施形態ではリングディスクとして形成されている他のプレート13によって繰り抜き部22に固定される。このため、リングディスクまたは他のプレート13は溶接継目20を介して弁プレート10およびハウジング11と溶接されている。リングディスクは0.2mm以下の厚さを有していてよい。
【0025】
本発明によるダイヤフラムポンプの択一的な実施形態が
図7に図示されている。この実施形態が
図2のものと異なっているのは、主要なポンプ要素、すなわち作業ダイヤフラムと弁3,5とが電機子9の受容室16内に配置されていることである。従って、電磁石7のハウジング11の、磁極面として用いられる上面は、平面に形成されていてよく、このことは電磁石7の製造を容易にする。受容室16と複数の復帰ばね15のための他の受容室17とを形成するため、電機子9は押し抜き/曲げ部材として実施されている。これにより製造コストをさらに低減させることができる。プレート13は省略され、その代わり非磁性材料から成るプレート14が弁プレート10とハウジング11との間に配置されている。ハウジング11を経て電機子9へ向かう磁束24はそのまま確保されている。プレート14で支持されているばね15を案内するため、プレート14は隆起部23を有し、該隆起部は一体成形されている(
図9を参照)か、或いは、追加的に装着されていてよい(
図7を参照)。
図8からわかるように、電機子9は受容室16,17以外に、弁プレート10が嵌め込まれている繰り抜き部22を有している。
【0026】
図2のダイヤフラムポンプと
図7のダイヤフラムポンプの作用はほとんど相違しない。コイル装置8を通電すると、電機子9はコイル装置8の方向に移動する。その際作業ダイヤフラム2が作業室1内へ移動し、それによって作業室1の容積が小さくなる。このため作業室1内の圧力が上昇し、弁5を開き、該弁を介して、作業室1内にある媒体は排出部6へ達する。コイル装置8の通電を終了させると、ばね15のばね力により、電機子9はその出発位置へ復帰する。同じことは作業ダイヤフラム2に対しても適用され、作業室1の容積拡大により負圧が発生して弁3を開き、よって新鮮な媒体が吸い込まれる。
【0027】
作業ダイヤフラム2と少なくとも1つのばね15とを介して電磁石7に対し半径方向に案内される電機子9は2つの終端ストッパ部材を有しており、すなわち弁プレート10またはその上に装着されている前記他のプレート13または14と、ストッパ部21とを有している。原理的に電機子9は半径方向の力を受けないので、電機子9の半径方向のガイドは不要である。しかしながら、少なくとも1つのばね15を介して電機子9はある程度の半径方向の案内を受ける。
【0028】
上述した2つの実施形態には、望ましくない騒音の発生が阻止され、或いは、少なくともかなり低減されるという利点がある。騒音を伴う電機子9の衝突は、たとえば、作業ダイヤフラム2が緩衝円錐を有している(
図2および
図7を参照)ことによって阻止される。これとは択一的に、或いは、これに加えて、作業ダイヤフラム2は緩衝条溝12を備えていてよい。緩衝条溝は、衝突前に媒体が該条溝12から排出されねばならないことによって補助的な緩衝を生じさせる(
図6bを参照)。緩衝条溝12は、有利には、作業ダイヤフラムと同じ材料から成る。作業ダイヤフラムは有利にはエラストマーダイヤフラムである。これとは択一的に、或いは、これに加えて、弁プレート10も緩衝条溝12を備えていてよい(
図6aを参照)。
【符号の説明】
【0029】
1 作業室
2 作業ダイヤフラム
3 第1の弁
4 供給部
5 第2の弁
6 排出部
7 電磁石
8 コイル装置
9 電機子
10 弁プレート
11 ハウジング
12 緩衝条溝
13,14 プレート
15 ばね
16,17 カップ状の受容室
18 ガイド
19 アーマチュアボルト
20 溶接溝
21 ストッパ部
22 繰り抜き部
23 隆起部
24 磁束
25 リング