特許第5730411号(P5730411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730411
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】広帯域SAWフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20150521BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   H03H9/145 Z
   H03H9/145 B
   H03H9/25 C
   H03H9/25 D
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-552115(P2013-552115)
(86)(22)【出願日】2011年2月4日
(65)【公表番号】特表2014-505441(P2014-505441A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2011051670
(87)【国際公開番号】WO2012103958
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2013年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】エプコス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルハキキ,モハメド
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン,ヘイコー
(72)【発明者】
【氏名】ダミ,ジャック・アントワーヌ
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−500593(JP,A)
【文献】 特開平08−316781(JP,A)
【文献】 特開2009−284474(JP,A)
【文献】 特開2000−091869(JP,A)
【文献】 特開平09−167936(JP,A)
【文献】 特開2010−103849(JP,A)
【文献】 特開2010−239511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145
H03H 9/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PSAWタイプの音響波で動作するフィルタであって、
PSAWに結合しPSAWを伝搬するように選ばれたカットを有する圧電基板と、
前記基板に配置され、少なくとも4つの電極フィンガのそれぞれ電極フィンガの組み合わせを有する波長λの多数のセルを含む第1のトランスデューサとを備え、前記セルは縦方向に交互に配置され、前記セルの少なくとも一部はSPUDTセルであり、
前記第1のトランスデューサと同じ音響トラックに配置された第2のトランスデューサをさらに備え、
前記第1のトランスデューサは、トランスデューサフィンガのグループを有するファンタイプのトランスデューサであって、前記グループの各トランスデューサフィンガの幅と、前記グループの隣り合う一対のトランスデューサフィンガのそれぞれの間隔とが交差方向に増加しており、
前記ファンタイプのセルは、少なくとも8%の前記トランスデューサの相対帯域幅を与え、
前記PSAWをサポートする基板は、41±30°回転Yカットを有するニオブ酸リチウムと36±5°回転XYカットを有するタンタル酸リチウムとから選ばれ、
前記SPUDTセルのセルタイプおよびメタライゼーション高さは、セル当たり1%から3%の反射係数が得られるように適合される、フィルタ。
【請求項2】
前記SPUDTセルは、Hanma HunsingerタイプとFeudtタイプとから選ばれる、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記トランスデューサは、少なくとも0.6のメタライゼーション比ηを有する、請求項1または請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記トランスデューサは、1〜4%の相対メタライゼーション高さを有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記第2のトランスデューサはファンタイプであり、
両トランスデューサは同じ音響トラック内の縦方向に沿って配置され、
前記第1および第2のトランスデューサの間の自由表面伝搬を最小化するシールディング構造を備え、
前記シールディング構造は、完全にメタライズされた領域または非反射フィンガ格子を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記シールディング構造は、前記トランスデューサの増加幅とは反対の横断方向に増加している幅を有する台形領域を有する、請求項5に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記基板の表面の前記音響トラックの縦方向における両端にダンピング構造が配置されている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記トランスデューサは、縦方向に沿って延びているn個の数の並列チャネルを含み、
前記PSAWは、各チャネルで同じ遅延時間を有し、
nは5<n<50の整数である、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項9】
各チャネルは、横断方向において所定の横断方向の広がりを有し、それぞれのチャネルの前記フィンガの幅とフィンガの間隔とは横断方向の広がりに沿って一定であるが、隣り合うチャネルの方向には増加する、請求項8に記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、携帯電話、ワイヤレス端末あるいは基地局のモバイル通信に有用な広帯域SAWフィルタ(SAW:surface acoustic wave)に関する。
【背景技術】
【0002】
8%あるいはそれ以上の非常に広い相対帯域幅を有するフィルタを提供しようとする試みがなされている。セラミックフィルタは、たとえば、損失の小さい非常に広い帯域幅のフィルタとして利用されるが、非常に高価である。さらに、通過帯域のスカートの急峻さは、SAWフィルタの観点からは悪い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に利用されるSAWフィルタは、レイリー波で動作する。しかし、このタイプのSAW波は小さい結合を示すだけで、それゆえ、損失の大きい、20%以上の帯域幅のフィルタをもたらす。このことはすべてのレイリー波を利用しているSAWフィルタについて言える。特定の結合において、より広い帯域幅はより大きな損失を生みだす。所与の帯域幅において、より高い結合は、より小さい損失を生みだす。
【0004】
それゆえに本発明の目的は、セラミックフィルタよりも安価で、損失の小さい、たとえば、通過帯域における挿入損失の小さい、広い帯域幅のフィルタを提供することである。
【0005】
この目的は、請求項1のフィルタによって解決される。フィルタの実施例および改善は、従属請求項で与えられる。
【0006】
発明者らは、PSAW(PSAW:疑似SAW)タイプのSAW波で動作するトランスデューサは、広帯域フィルタを作るための問題を解決する候補として有望であること、を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、PSAWタイプの音響波で動作するSAWフィルタであって、PSAWを伝搬するように選ばれた圧電基板を備える。少なくとも第1のトランスデューサはそれぞれ電極フィンガの組み合わせを有する多数のセルを含み、基板に配置される。セルは、SAWの伝搬方向である縦方向に交互に配置され、セルの少なくとも一部はSPUDTセルである。トランスデューサの広い相対帯域幅は、ファンタイプまたはファン形状のトランスデューサを選ぶことで実現される。そのようなトランスデューサは、一対のトランスデューサフィンガのそれぞれの中央の間の距離が横断方向において増加する電極フィンガパターンを含む。それによって、トランスデューサフィンガの幅と、隣り合う一対のトランスデューサフィンガの間隔のそれぞれは、同じ広がりで増加する。そのため、フィンガパターンは横断方向においてスケールアップされる。しかし、これらのパラメータの1つを一定にし、他を不均衡に増加することもできる。この増加は、そのため、距離のみあるいは幅のみのスケーリングによってなされる。両方のパラメータを非対象的に増加することもできる。有利なフィンガパターンの寸法のスケーリングは、少なくとも8%から50%以上までの広いトランスデューサの相対帯域幅に達するように選択される。
【0008】
PSAWタイプの音響波はこの分野でよく知られている。それらは、PSAWの発生をサポートするように選ばれたカットを有する基板を伝搬することができる。好ましい圧電基板は、高い結合を有する圧電材料から選ばれる。発明者らは、2つの異なる圧電素子の特定のカットが、この目的に有利であることを見出した。41°回転Yカットのニオブ酸リチウム(LN41rotY)。もう一つの好ましい基板は、36°回転カットのタンタル酸リチウム(LT36rotXY)である。PSAWの高い結合と、低い伝搬損失とに最適化されたこれらのカットとは別に、他の材料のカットアングルは上記の値を変えることもできる。LNに対して±30°、LTに対して±5°の変化量は、結果として、より高いPSAWの結合しかし同時に伝搬損失の小さい基板材料のためのリーゾナブルなトレードオフを与える。
【0009】
LTと比較して、LNは、低いメタライゼーション高さにおいて、PSAWの高い結合および低い伝搬損失のために最適な、大きいカットアングルレンジを示す。
【0010】
ファン形状のトランスデューサを備えるフィルタは、SPUDTセルを備える構造を必要とする。独創的な広帯域幅のフィルタを生み出すのに好ましいSPUDTセルは、Hanma HunsingerおよびFeudtタイプから選ばれる。これらのSPUDTセルタイプは、波長毎に2つの電極フィンガを有しトリプルトランジットシグナルの補償のために大きすぎる反射を有するセルと比較して、比較的低い反射率を示すためである。好ましいSPUDTセルタイプは、波長毎に少なくとも4本の電極フィンガの構造と、1〜2%程度の反射を有する。セルは、PSAWを生成するため、および、依然として生成、伝搬しているレイリー波の効果を最小化するために、最適化されている。
【0011】
本発明の実施例によると、トランスデューサは、下記のために選ばれた相対メタライゼーション高さ(波長に対する)を有しする。
【0012】
−伝搬損失を最小化し、
−4フィンガセルに対してたとえば1〜3%の間の反射係数を生み出し、
−この場合に好ましくないレイリー波を抑制する。
【0013】
LN41rotYを使用する実施例では、伝搬損失および反射係数の観点における最適条件は、1〜3%の間の相対的メタライゼーション高さに対応する。
【0014】
トランスデューサは、RF電気信号を音響波におよびその逆に変換するために使用される。そのようなトランスデューサの相対帯域幅は、高い有効性すなわち低い減衰量で変換された波長レンジに依存する。PSAWに対して大きい結合を示すカットを有する圧電基板を使用し、低い反射を有するセルタイプおよび相対的メタライゼーション高さを使用し、伝搬損失を制限する高いメタライゼーション比を与えることにより、50%以上の相対帯域幅を有するトランスデューサを製造することが可能である。
【0015】
本発明のフィルタは、第2のファン形状のトランスデューサを備えることができる。第1および第2のトランスデューサは、同じ音響トラック内の縦方向に沿って配置される。シールディング構造は、第1のトランスデューサと第2のトランスデューサとの間に配置される。シールディング構造は、完全にメタライズされた領域またはトランスデューサとシールディング構造との間の自由伝搬領域を最小化するように適合された非反射フィンガ格子を含み、それによって自由表面領域から生じるPSAWの伝搬ロスを最小化する。
【0016】
シールディング構造は、トランスデューサ電極フィンガの増加幅とは反対の横断方向に増加している幅を有する台形領域を覆う。第2のトランスデューサは、通常のトランスデューサでもよいが、ファンタイプのトランスデューサが第2のトランスデューサとして最も好ましい。
【0017】
フィルタの両トランスデューサはSPUDTセルを備え、第2のトランスデューサの単方向性は、第1のトランスデューサの単方向性と逆である。第2のトランスデューサは、第1のトランスデューサと同じ帯域幅を有する。好ましい実施例では、第2のトランスデューサは、第1のトランスデューサの構造の観点から水平にフリップされた構造を有する。2つのトランスデューサの単方向性によって、縦方向において非常に少量の波しか音響トラックを離れない。有害な信号を生み出すこれらの不所望の波は、音響トラックの両端にダンピングマスを配置することにより吸収される。ダンピングマスは、音響トラックの全ての開口、つまり横断方向に沿ってオーバーラップする電極フィンガの全ての広がりの上に配置されている。ダンピング構造は、好ましくは、PSAWが容易に入り込むのに適した音響特性を有しPSAWが非弾性たわみや発信によって吸収される樹脂であるダンピングマスを備える。
【0018】
シールディング構造は、フィンガ幅およびフィンガ間隔を変えることによって生じる異なる遅延時間を補償するのに有用である。もっとも好ましいシールディング構造の構造は、シールディング構造内においてそれぞれより高い遅延時間を与えることによって、2つのトランスデューサのうちのいずれかの低い方の遅延時間を完全に補償する。完全にメタライズされているまたはフィンガ格子を有するメタライズされた領域を備える音響パス内の遅延時間は、音響波の伝搬速度を決定するメタライゼーション比に依存する。メタライゼーション比が高いほど、音響速度は遅い。シールディング構造がフィンガ格子で実現されている限り、シールディング構造のフィンガは、音響波の励振あるいはそれらの波のアウトカップリングを避けるために電気的にショートされている。
【0019】
ファンタイプのトランスデューサは、各チャネルが全てのチャネルで異なる個別の中間周波数を有する多数の並列チャネルを備えるため、広い帯域幅を有する。チャネル内において、全てのフィンガ幅および/またはフィンガ間隔は一定でもよい。そのような実施例において、ファン構造はステップ構造を有する。n個の異なるチャネル有するステップ構造においては、nは5<n<50の整数とし選択され得る。
【0020】
しかし、ファンタイプトランスデューサは、異なるチャネルへのフラグメンテーションが仮想の連続構造を有することも可能である。そのような仮想チャネルは、チャネルの与えられた帯域幅によって定められる。チャネルの所望の帯域幅は、断面におけるフィンガ幅の変化量に応じて定められる横断面を選択することによって選択される。
【0021】
本発明のさらに詳細な説明は、添付の図面に示された実施例によってなされる。図面は概略のみであり、スケールするものでない。特定の詳細は、より良い理解のため、拡大して示され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施例の電極パターンの一部を示す図である。
図2】音響トラック内の、吸収材と、第1のトランスデューサと、シールディング構造と、さらなる音響吸収材との配置を示す図である。
図3A】トランスデューサ内の電極フィンガの拡大を示す図である。
図3B】シールディング構造内のフィンガ格子を示す図である。
図4】LT36rotXYについて作られた2つのフィルタの伝達関数を示す図である。第1のカーブは最小のレイリー波伝搬に最適化されたセルのフィルタに関し、第2のカーブは最適化がされていないフィルタに関する。
図5A】LN41rotYについて作られたフィルタの伝達関数を示す図であり、55%の相対帯域幅を示す。
図5B】同じ伝達関数の通過帯域を示す図である。
図5C】同じ実施例の入力リターンロスを示す図である。
図6】LN41RYに設けられた新しいフィルタとLNYZに設けられた第2のフィルタとの2つの伝達関数S21の比較を示す図である。
図7A】同じ相対帯域幅の、LN41RYについて作られたフィルタとLNYZについて作られたフィルタとのS11の実測の比較を示す図である。
図7B】同じ相対帯域幅の、LN41RYについて作られたフィルタとLNYZについて作られたフィルタとのS22の実測の比較を示す図である。
図8図6と同様の比較を示す図である。ただし、セラミックフィルタとして実現された最先端のフィルタの伝達関数S21との比較をさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、第1の実施例のファン形状のトランスデューサFTの電極フィンガパターンの断面を示す図である。示されているのは、バスバーBBの近くのトランスデューサ領域の断面である。トランスデューサは、所望の伝送関数に応じて選ばれた25から150の間の多数のセルを備える。セルはX軸に沿った縦方向において、たとえば1波長の長さを有し、望ましくはすべてのセルが同様である。セルは、音響波を反射も励起もしない4本のフィンガのスプリットフィンガのグループと、少なくとも4本のHanma HunsingerタイプのフィンガのSPUDTセルと、少なくとも4本のFeudtタイプのフィンガのSPUDTセルとから選ばれる。実施例では、4本のSPUDTフィンガを含むHanma HunsigerのSPUDTセルUTCは、セル毎に4本のスプリットフィンガSFを有する2つのスプリットフィンガセルSFCの間に配置される。異なるセルの数および配列は、通過帯域の振る舞いおよび阻止の観点によるベストパフォーマンスに最適化される。
【0024】
トランスデューサは、フィンガおよび/またはそれらの間の距離が、y軸に沿った方向である横断方向に増加しているようなファン形状である。点線は、トランスデューサが、示された断面の外にも延びていることを示す。横断方向に寸法を増加することによって、励起されたSAW(PSAW)の波長は同時に増加する。横断方向のトランスデューサFTを、所与の帯域幅および中間周波数のチャネルに分けることによって、全トランスデューサFTは、最短波長の第1チャネルの中間周波数から最も広い帯域幅を有する反対側のチャネルの中間周波数に到達する。
【0025】
図2は、2つのファン形状のトランスデューサFT1およびFT2と、間に配置されたシールディング構造SHとを示す図である。第1のトランスデューサFT1は、フィルタの入力トランスデューサであってもよく、第2のトランスデューサは出力トランスデューサであってもよい。トランスデューサは、同じフィンガパターンを有し得るが、フィンガの並びは互いにミラーリングされる。両トランスデューサは、y方向に増加している寸法を有し、そのため、台形形状である。シールディング構造SHも、台形形状を有するが、その寸法はy方向に減少している。縦方向のフィルタの両端には、吸収材ABSがそれぞれ配置されている。
【0026】
図3Aは、ファン形状のトランスデューサにおけるフィンガパターンの増加している寸法を概略的に示す図である。
【0027】
図3Bは、ファン構造によって生み出されたフィルタの異なるチャネルの異なる遅延時間を補償するための、シールディング構造SHに使用されるフィンガ格子を概略的に示す図である。この図に示されるように、シールディング構造SHのフィンガ格子も、同様に増加し得る。遅延時間の差の良好な補償を達成するために、シールディング構造は、遅延時間がそれぞれのチャネルのメタライズ領域のみに依存するような、完全にメタライズされた領域を含み得る。そのため、シールディング構造SHのメタライズ領域の形状は、傾いた角度にそれる。
【0028】
シールディング構造は、さらに、金属の自由表面の伝搬損失を最小化するように設計され、そうでなければ大きな損失が見込まれる。実施例では、シールディング構造とトランスデューサとの間のギャップは、トランスデューサの隣り合う電極フィンガの間のギャップとほぼ同じである。
【0029】
特定のフィルタの実施例では、フィルタは、図1に示すフィンガパターンに似ているが、FEUDTタイプのSPUDTセルも備える構造のセルタイプを有するように製造される。タンタル酸リチウム基板は、LT36rotYXカット角を有するように選ばれる。主にAlから成るメタライゼーションは、350nmの厚みでなされる。フィルタは、7mm×5mmのような小さい寸法を有するパッケージにマウントされ得る。
【0030】
LT36rotYX基板材料へのPSAWの中位の結合(5%)にもかかわらず、フィルタは、低い損失と10%の幅を有する通過帯域と、レイリー波に対してさらに大きい結合を有するLNYZ材料に作られたフィルタのそれぞれのTCFより3倍以上小さい周波数の温度係数とを示す。
【0031】
このことは、通過帯域と阻止帯域との間のさらなるソフトな移行の特定を可能とする。
図4Aは、205と225MHzとの間の通過帯域を示す実測の伝達関数S21を示す図である。
【0032】
第2の特定フィルタ実施例について、フィルタは、Hanma HunsingerセルのみをSPUDZセルとして使用し、図1に示されるフィンガパターンに似たセルタイプ構造を有するように製造される。ニオブ酸リチウム基板が、LN41RYカット角を有するように選ばれる。主にAlから成るメタライズは、470nmの厚みでなされる。このフィルタも、7mm×5mmのような小さい寸法を有するパッケージにマウントされる得る。
【0033】
図5Aおよび5Bは、55%の相対帯域幅による、100MHzと175MHzとの間の通過帯域を示す実測の伝達関数S21を示す図である。それぞれの関数S11とS22とは、図5Cに示される。
【0034】
この基板および選ばれたメタライゼーションでは、11%のPSAWの結合が達成される。そのため、このフィルタによって、SAWフィルタとしては記録的な値である55%という非常に広い帯域幅が達成される。挿入損失は、約−13dBである。それにもかかわらず、通過帯域のスカートは十分急峻であり、かつ、低域側の阻止帯域では、40dBよりも大きい減衰量が達成される。高域側の阻止帯域では、減衰量は35dBに達する。
【0035】
さらに、LN41rotYの温度係数は、64ppm/℃しかなく、LNYZ基板材料に設けられ遷移についてより多くのマージンを可能とするレイリーのもの(87ppm/℃)よりも小さい。
【0036】
拡大したy軸を有する、通過帯域のより正確な図が、図5Bにより与えられる。この図は、フィルタが1.5dBしかない低振幅のリップル変動を有することを示す。さらに、フィルタのS11およびS22パラメータが、図5Cで与えられ、−9dBよりも小さいリターンロスを示す。
【0037】
図6は、第2の特定の実施例であるLN41RYに設けられた新しいフィルタ(上側の曲線)と、ファンタイプのフィルタとしてLNYZに設けられ、レイリー基板のレイリー波を使用している第2のフィルタ(下側の曲線)との2つの伝達関数S21の比較を示す図である。この図より、新しいフィルタの利点およびその突出した広い帯域幅が、明らかになる。新しいフィルタは、入力損失においてもさらに改善される。
【0038】
LN41RY(上側の曲線)に設けられたフィルタのS21と、LNYZ(下側の曲線)に設けられたフィルタのS21との比較は、ほぼ同じ相対帯域幅でなされる。LN41RYに設けられたフィルタは、より小さい挿入損失および急峻なスカートを示す。
【0039】
図7Aおよび7Bは、同じ相対帯域幅での、LN41RY(上側の曲線)に設けられたフィルタと、LNYZ(下側の曲線)に設けられたフィルタとの実測のS11(図7A)およびS21(図7B)の測定の比較を示す。
【0040】
下記の表は、これらのフィルタの測定データを示す。
【0041】
【表1】
【0042】
もっともリーゾナブルなのは、新しい部材LN41RYの低いTFC(周波数の温度係数)が、レイリー波を使用したLNYZのTCFよりも低いことである。このことはさらに容易に、通過帯域と阻止帯域との間のさらなるソフトな遷移を特定することを可能とする。
【0043】
図8は、図6と同じ比較を示す図であるが、セラミックフィルタとして実現された最先端のフィルタの伝達関数S21をさらに含む。ほとんど同じ帯域幅が得られるのに、新しいフィルタの通過帯域のスカートおよび阻止帯域の減衰は明確に改善されることが顕著であり、従来のフィルタに対する新しいフィルタの優位を示している。
【0044】
本発明は、特定の実施例および対応する図面によって限定されてはならず、請求項および上記のそれぞれの記述によってのみ定められるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8