特許第5730412号(P5730412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5730412-ガスタービンの調節方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730412
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】ガスタービンの調節方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/00 20060101AFI20150521BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20150521BHJP
   F23R 3/00 20060101ALI20150521BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   F02C9/00 B
   G05B23/02 V
   F23R3/00 E
   F01D25/00 V
   F01D25/00 W
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-552944(P2013-552944)
(86)(22)【出願日】2012年2月8日
(65)【公表番号】特表2014-510223(P2014-510223A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2012052094
(87)【国際公開番号】WO2012107467
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2013年12月19日
(31)【優先権主張番号】11154149.6
(32)【優先日】2011年2月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ドイカー、エバーハルト
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0120074(US,A1)
【文献】 特開2006−105142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 9/00
F01D 25/00
F23R 3/00
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定値(Mn1、Mn2)が異なる時点(n1、n2)で、すなわち少なくとも第1の時点(n1)および第2の時点(n2)で測定され、その際第1の時点(n1)は第2の時点(n2)の前にあり、測定された測定信号値(Mn1、Mn2)が減衰ファクタ(λ)により平滑処理されることによって、減衰された信号値(Sn1,Sn2)が測定値(Mn1、Mn2)から作られるガスタービンの調節方法において、
第2の時点(n2)で測定された測定信号値(Mn2第1の時点(n1)の減衰信号値(Sn1より大きいかそれと等しいときは、第2の時点(n2)で測定された測定信号値(Mn2)が第1の時点(n1)の減衰信号値(Sn1)より小さいときよりも、より高い減衰ファクタ(λ)が調節に利用され、
平滑が指数的平滑であることを特徴とするガスタービンの調節方法。
【請求項2】
減衰信号値(Sn2が2つの積(P1)、(P2)の和からなり、第1の積(P1)が減衰ファクタ(λ)と第2の時点で測定された測定信号値(Mn2)とを乗算したものであり、第2の積(P2)が1から減衰ファクタ(λ)を引いた差値と第1の時点(n1)の減衰信号値(Sn1)とを乗算したものであることを特徴とする請求項1記載の調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定信号値が異なる時点で、すなわち少なくとも1つの第1の時点と1つの第2の時点で測定され、第1の時点が第2の時点の前にあり、測定された測定信号値が減衰ファクタで平滑処理されることにより減衰された信号値が測定信号値から作られるようにした、ガスタービンの調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、一般に圧縮機、タービンおよび燃焼室部分を有する流体機械である。圧縮機では吸引された周囲空気が圧縮され、圧縮された空気が最終的に燃焼室部分に導かれる。燃焼室部分には多くの場合複数のバーナを備えた少なくとも1つの燃焼室が配置され、これらのバーナに圧縮空気が導かれる。圧縮空気のほかにバーナにはさらに燃料が導かれ、この燃料は空気と混合されて燃焼される。この場合燃焼室に発生する高温の燃焼排ガスはタービンに導かれ、そこで膨張および冷却されてタービンが回転させられる。このようにして燃焼排ガスの熱エネルギーが機械的な仕事に変換され、一方では圧縮機の駆動に、他方ではたとえば電流発生用の発電機などの負荷の駆動に利用される。
【0003】
燃焼室での燃焼に際しては、安定した炎が得られるように注意しなければならない。炎の不安定性は特に燃焼排ガスにおける共鳴燃焼振動により生じ、これは一方では有害物質の排出を高め、他方では燃焼室の震動ないし振動を招き、燃焼室の寿命を減少させ、保守点検間隔を短縮する。
【0004】
ガスタービンおよびほかの燃焼設備の燃焼安定性は一般に時間的に著しく変動する測定信号により判断される。これはたとえば燃焼室における加速または圧力振幅の測定による測定信号でありうる。不所望な高周波成分を抑制するため測定信号は通常は減衰される。しかし測定の高さ経過においては一定の時間間隔で再三にわたって以下においてピークと称する頂点が生じる。これは「木の柵」現象とも呼ぶことができる。ピーク間において高さは完全に非臨界的な値に低下する。個々のピークはしかしまだ非臨界的ではない。しかしピークが繰り返され、ピークの高さが増大するかピークの連続性が密になると、これは不安定性の開始を示唆する。
【0005】
従来は調節のため大抵はいわゆるピーク保持値信号(ピークホールド信号とも呼ばれる)が利用されている。この場合所定の時間にわたって最大値として現れた高さだけが信号値として再現される。この信号はしかしピークの繰り返し周波数に関する情報を提供するものではない。時間窓が大きければ、場合によっては個々の危険のないピークだけが存在したにも拘わらず調節に臨界的な高い振幅値が伝達される。時間窓がごく小さく時間窓毎に最大1つのピークが予期される場合は、高い信号と低い信号が急速に交番し、調節は不安定でしばしば極めて非効率的になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上述の欠点を回避したガスタービンの調節方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によればこの課題は、測定信号値が異なる時点で、すなわち少なくとも1つの第1の時点および1つの第2の時点で測定されるガスタービンの調節方法を提供することで解決される。この場合第1の時点は第2の時点の前にある。測定された測定信号値が減衰ファクタにより平滑処理されることによって、減衰された信号値が測定信号値から作られる。第2の時点での測定信号値と第1の時点での減衰信号値との差に関係して異なる減衰ファクタが利用される。これによりピークの振幅高さ並びに繰り返し周波数に反応する信号値が形成される。これにより効率的な平滑が可能となる。平滑は指数的平滑である。従って体系化では識別できない特に良好な時間列値を平滑することができる。
【0008】
本発明の有利な実施態様は従属請求項に記載されている。
【0009】
減衰信号値は2つの積の和から形成されると有利であり、第1の積は減衰ファクタを第2の時点で測定された測定信号値で乗算したものであり、第2の積は1から減衰信号値を引いた差値を第1の時点での減衰信号値で乗算したものである。これは特に簡単に実現できる。
【0010】
特に有利な実施態様では、第2の時点で測定された信号値が第1の時点での減衰信号値より大きいか等しいときは、第2の時点で測定された信号値が第1の時点での減衰信号値より小さいときよりも、より高い減衰ファクタ(弱い減衰)が使用される。
【0011】
突然生じるピークはその上昇においてそれゆえ弱い減衰用であり、すなわち減衰ファクタは高いので、減衰信号値はピーク上昇中に急速に上昇する。ピークの降下時には強い減衰ファクタへの切換が行われ、すなわち減衰ファクタは低い。減衰された信号値はそれゆえごく緩慢に降下する。
【0012】
本発明の特徴、特性および利点を以下添付の図面を参照して一実施例に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は時間tを横軸にして測定信号、従来技術により減衰された信号値並びに本発明により減衰された信号値を示したダイアグラムである。
【0014】
図1は時間tを横軸とした測定信号値を持つ曲線1を示す。測定信号1の曲線は以下ピーク4と称する頂点を有し、これらのピークは差し当たり約2秒から3秒ごとに現れる。約2.0以上の測定信号値はここでは臨界とみなされる。これらのピーク4の繰り返し周波数が相応して高ければ、調節器による介入が行われるべきである。時間t=14と時間t=19の間でピーク4の数は増大する。時間t=19では運転状態の変化が生じる。測定信号値を有する曲線1は続いて十分に安定した経過を辿る。
【0015】
曲線2では曲線1の測定信号値から従来技術により減衰された信号値が作られる。これらは時間tを横軸として示されている。従来技術による減衰により高周波成分が回避される。しかし曲線2はピーク間において再三にわたり著しく降下する。従来技術により減衰された曲線2の信号値に対してはしかし明確に臨界と非臨界とを区別する値は示されない。0.95と1.15の間の値は時間t=19までの臨界相でもその後の安定相でも発生する。従って、効率的な調節は不可能である。
【0016】
曲線3は本発明による方法により作られたものである。ここで測定信号値Mn1、Mn2は異なる時点n1、n2で、すなわち少なくとも第1の時点n1と第2の時点n2で測定され、その際第1の時点n1は第2の時点n2より前にある。測定された測定信号Mn1、Mn2は減衰ファクタλで指数的に平滑処理される。これにより信号値Sn1、Sn2が作られる。この場合第2の時点n2で測定された測定信号値Mn2が第1の時点n1の減衰信号値Sn1より大きいか等しいときは、第2の時点n2で測定された測定信号値Mn2が第1の時点n1の減衰信号値Sn1より小さいときよりも、より高い減衰ファクタλが使用される。
【0017】
この指数的平滑は次式により与えられる。
【0018】
n2=λx×Mn2+(1−λx)×Sn1 ただし x=1,2
ここで
n2 ≧ Sn1のときx=2
n2 < Sn1のときx=1
ただし λ2 > λ1
【0019】
ここでλx、x=1,2は減衰ファクタ、Mn2は時点n2で測定された測定信号値、Mn1は時点n1で測定された測定信号値、Sn1は時点n1で減衰された信号値、Sn2は時点n1で減衰された信号値である。
【0020】
実施例において本発明により減衰された信号値ではたとえばλ2=0.3、λ1=0.05が選ばれた。ピーク4の後で曲線3に示す本発明により減衰された信号値は、従来技術により減衰された曲線2の信号値の場合よりも著しく緩慢に降下する。その結果時間的に後続するピーク4では本発明により減衰された信号値は従来技術により減衰された信号値よりも高い値に到達する。これは調節目的にとってしばしば所望の効果である。時点t=14と時点t=19の間ではピーク4の周波数は増大する。ここで観察できることは、本発明により減衰された信号値はこの臨界的時間窓では1.5以上に留まるのに対し、曲線2の従来技術により減衰された信号値は再三にわたってほぼ1.0に降下することである。これに対し本発明により減衰された信号値はt=0とt=19の間の臨界時間において決して1.3以下には降下せず、これにつづく非臨界時間では決して1.16以上に上昇しない。突然発生するピーク4はそれゆえその上昇において弱い減衰を考慮する、すなわち減衰ファクタλは高く、減衰された信号値はピーク上昇中にそれゆえ迅速に上昇する。ピーク4の降下時には強い減衰への切換が行われる、すなわち減衰ファクタλは低い。減衰された信号値はそれゆえごく緩慢に降下する。
【0021】
従って本発明による方法により、迅速にピークに(弱い減衰への切換により)反応するが細分化されたピークよりもより臨界的に迅速な連続ピークを評価するガスタービンの効率的な調節が実現される。
【符号の説明】
【0022】
1 測定信号値曲線
2 従来技術により減衰された信号値曲線
3 本発明により減衰された信号値曲線
4 ピーク
図1