(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
凹面状の正圧面と凸面状の負圧面とが前縁と後縁とを介して連続してなる翼型断面を有し、この翼型断面に交差する翼高さ方向に延在し、冷却流体の流路となる冷却孔が前記前縁から前記後縁に向けて複数配列された翼体であって、
前記複数の冷却孔は、必要な肉厚を確保可能な範囲において最も前記前縁側に形成された第一の基準冷却孔と最も前記後縁側に形成された第二の基準冷却孔とを有し、
前記負圧面側よりも前記正圧面側のほうが冷却されるように、
前記第一の基準冷却孔と第二の基準冷却孔との間において、他の前記冷却孔が形成されており、
前記他の冷却孔の全てが、基端から先端まで前記翼高さ方向の全てにおいてキャンバーラインよりも前記正圧面側にのみ形成されていることを特徴とする翼体。
凹面状の正圧面と凸面状の負圧面とが前縁と後縁とを介して連続してなる翼型断面を有し、この翼型断面に交差する翼高さ方向に延在し、冷却流体の流路となる複数の冷却孔が前記前縁から前記後縁に向けて一列に配列された翼体であって、
前記複数の冷却孔は、必要な肉厚を確保可能な範囲において最も前記前縁側に形成された第一の基準冷却孔と最も前記後縁側に形成された第二の基準冷却孔とを有し、
前記負圧面側よりも前記正圧面側のほうが冷却されるように、
前記第一の基準冷却孔と第二の基準冷却孔との間において、他の前記冷却孔が形成されており、
前記他の冷却孔の全てが、基端から先端まで前記翼高さ方向の全てにおいてキャンバーラインよりも前記正圧面側に形成されていることを特徴とする翼体。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るガスタービン1の概略構成を示す半断面図である。
図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮空気cを生成する圧縮機2と、圧縮機2から供給される圧縮空気cに燃料を供給して作動流体である燃焼ガスG1を生成する複数の燃焼器3と、一組一段となったタービン静翼10及びタービン動翼6を四段有し、燃焼器3から供給される燃焼ガスG1により回転動力を発生させるタービン4とを備えている。
【0018】
また、ガスタービン1には、軸線方向Dに延びるロータ7が、圧縮機2からタービン4まで一体的に取り付けられており、このロータ7は、一端が圧縮機2の上流側に設けられた軸受部7aによって軸線O回りであるタービン4の周方向Rに回転可能に支持されると共に、他端がタービン4の下流側に設けられた軸受部7bによってタービン4の周方向Rに回転可能に支持されている。以下、ロータ7の軸線方向Dにおいて圧縮機2側を前側とし、タービン4側を後側とする。
【0019】
圧縮機2は、空気を取り込む空気取入口2aを前側に配設した圧縮機ケーシング2bと、この圧縮機ケーシング2b内に配設された複数の圧縮機静翼2c及び複数の圧縮機動翼2dとを備えている。圧縮機静翼2cは、それぞれ圧縮機ケーシング2bの内周面に固定されると共にロータ7側に向けて延設され、タービン4の周方向Rに互いに等しい間隔をあけて配列している。また、圧縮機動翼2dは、ロータ7の外周面に固定されると共に圧縮機ケーシング2bの内周面に向けて延設され、タービン4の周方向Rに互いに等しい間隔をあけて配列している。そして、これら圧縮機静翼2cと圧縮機動翼2dとは、軸線方向Dに沿って交互になるように多段に配置されている。
【0020】
燃焼器3は、内部に図示しないバーナを有する内筒3aと、圧縮機2から供給される圧縮空気cを内筒3aに導く外筒3bと、内筒3aに燃料を供給する図示しない燃料噴射器と、内筒3aからの燃焼ガスG1をタービン4に導く尾筒3cとを備えている。複数の燃焼器3は、タービン4の周方向Rに配置されると共に、前端部が圧縮機ケーシング2bの後端部に連結された燃焼器ケーシング3dの内部に配設されている。
【0021】
タービン4は、前端部が燃焼器ケーシング3dの後端部に連結されたタービンケーシング5と、タービンケーシング5内に軸方向に交互に四段に配設されたタービン静翼10及びタービン動翼6とを備えている。各段のタービン静翼10は、周方向Rに環状に等しい間隔をあけて配列され、それぞれタービンケーシング5側に固定されると共にロータ7側に向けて放射状に複数延設されている。同様に、各段のタービン動翼6も、周方向Rに環状に等しい間隔をあけて配列され、ロータ7側に固定されると共にタービンケーシング5側に向けて放射状に延設されている。
このタービン4のタービンケーシング5の後端部には、後側に向けて開口した排気室8が連結されている。この排気室8には、タービン静翼10及びタービン動翼6を通過した燃焼ガスG1の動圧を静圧に変換する排気ディフューザ8aが備えられている。
【0022】
以上のように構成されたガスタービン1においては、まず、圧縮機2の空気取入口2aから取り込まれた空気が、多段に配置された圧縮機静翼2c及び圧縮機動翼2dを通過して圧縮空気cが生成される。次いで、燃焼器3にて、前述したように圧縮空気cに燃料を供給して燃焼させることにより燃焼ガスG1が生成され、この燃焼ガスG1がタービン4に導かれる。そして、この燃焼ガスG1がタービン静翼10及びタービン動翼6が配列する範囲を燃焼ガス流路として通過することでロータ7が回転駆動される。そして、ロータ7を回転駆動した後の排気ガスは、排気室8の排気ディフューザ8aで静圧に変換された後、大気に放出される。
【0023】
図2は、ガスタービン1の要部拡大断面図である。
図2に示すように、ロータ7は、その外周に第1段〜第4段のタービン動翼6A〜6Dを固定するロータディスク7A〜7Dを備えている。そして、この第1段のロータディスク7Aの上流側には、シールディスク11が同軸に接続されている。このシールディスク11には、上流側からの圧縮空気cの一部を、各タービン動翼6A〜6Dに向かって供給するために貫通したディスクホール11aが、その軸線を中心として互いに等角度間隔をおいて複数形成されている。
【0024】
また、第1段のロータディスク7Aには、各ディスクホール11aを通って流れ込んできた圧縮空気cのうち一部を取り込んで、各タービン動翼6Aの内部に形成された冷却流路へと導くラジアルホール7A1が、互いに等角度間隔をおいて複数形成されている。さらに、ロータディスク7Aには、残りの圧縮空気cを第2段に向かって供給するためのディスクホール7A2が、互いに等角度間隔をおいて複数形成されている。
【0025】
ロータディスク7Aと同様に、各ロータディスク7B,7Cのそれぞれにも、ラジアルホール7B1,7C1と、ディスクホール7B2,7C2がそれぞれ複数形成されている。ロータディスク7Dには、ラジアルホール7D1のみが複数形成されている。
【0026】
図3は、タービン動翼6Dの要部拡大断面図であり、
図2におけるI−I線断面図である。
図3に示すように、タービン動翼6Dは、凹面状の正圧面21と凸面状の負圧面22とが前縁20aと後縁20bとを介して連続してなる翼型断面となっており、翼高さHが比較的に大きく形成されたものである。このタービン動翼6Dには、上記翼型断面に交差する翼高さ方向に延在し、圧縮空気cの流路となる冷却孔25が複数形成されている。
【0027】
冷却孔25(25a〜25k)は、ラジアルホール7D1に連通しており、翼根底面6dから基端6aを介して先端6bまで穿孔されたものである(
図2及び
図9参照)。冷却孔25(25a〜25k)は、同一の孔径d1で合計11個形成されており、前縁20aから後縁20bに向けて一列に配列されている。
【0028】
これら複数の冷却孔25(25a〜25k)は、両端に基準冷却孔(第一の基準冷却孔)25a、基準冷却孔(第二の基準冷却孔)25kを有しており、これら基準冷却孔25a,25kに挟まれるようにして他の冷却孔25b〜25jが形成されている。
【0029】
基準冷却孔25aは、最も前縁20a側に形成されており、基準冷却孔25kは、最も後縁20b側に形成されている。
これら基準冷却孔25aと基準冷却孔25kとは、正圧面21及び負圧面22までの肉厚が所定の厚み以上となる範囲において、それぞれ前縁20aと後縁20bとに最も近接する位置に形成されている。
なお、所定の厚みとは、遠心力やガス圧等に対する必要強度、放電加工や鋳造、鍛造、機械加工等の加工精度、燃焼ガスG1や冷却空気による熱負荷等の設計条件によって定められたものである。
【0030】
冷却孔25b〜25jは、基準冷却孔25aが含まれる前領域T1及び基準冷却孔25kが含まれる後領域T2に対し、前領域T1と後領域T2との間に位置する中央領域T3の温度差が小さくなるように、配設されている。
具体的には、冷却孔25は、相互に隣接する冷却孔25(25a〜25k)の密度が中央領域T3で疎(冷却孔の間隔が大)となり、前領域T1及び後領域T2で密(間隔が小)となるように形成されている。
【0031】
図4は、冷却孔25(25a〜25k)の疎密比を示した第一のグラフであって、相互に隣接する冷却孔25(25a〜25k)の各間隔位置を横軸に、等間隔中心間距離LEに対する実際の中心間距離Lの比率(L/LE)を縦軸に示したものである。なお、等間隔中心間距離LEは、相互に隣接する冷却孔25(25a〜25k)の各間隔を等間隔に形成した仮定における中心間距離をいう。
【0032】
図4に示すように、前領域T1に含まれる一番目の冷却孔25a(第一の基準冷却孔25a)から五番目の冷却孔25eまでの各中心間距離L、及び、七番目の冷却孔25gから十一番目の冷却孔25k(第二の基準冷却孔25k)までの各中心間距離Lが、等間隔中心間距離LEに対して、0.5以上1以下となるように設定されている(0.5≦L/LE≦1)。また、中央領域T3に含まれる五番目の冷却孔25eから七番目の冷却孔25gまでの各中心間距離Lが、等間隔中心間距離LEに対して、1以上3以下に設定されている(1≦L/LE≦3)。
なお、前領域T1,後領域T2におけるL/LEは、0.5よりも小さく設定することが可能であるが、相互に隣接する冷却孔25eが連通しないように(L/LE=0)、0よりも大きくすることが望ましい。
また、中央領域T3におけるL/LEは、3よりも大きくすることが可能であるが、中央領域T3が過熱状態となることを防ぐために、10以下に設定することが望ましい。
【0033】
図5は、冷却孔25(25a〜25k)の疎密比を示した第二のグラフであって、相互に隣接する冷却孔25(25a〜25k)の各間隔位置を横軸に、冷却孔25(25a〜25k)の孔径dに対する中心間距離Lの比率(L/d)を縦軸に示したグラフである。
図5に示すように、前領域T1に含まれる一番目の冷却孔25a(第一の基準冷却孔25a)から五番目の冷却孔25eまでの各中心間距離L、及び、七番目の冷却孔25gから十一番目の冷却孔25k(第二の基準冷却孔25k)までの各中心間距離Lが、孔径d1に対して、3〜8に設定されている(3≦L/d≦8)。また、中央領域T3に含まれる五番目の冷却孔25eから七番目の冷却孔25gまでの各中心間距離Lが、孔径d1に対して、9〜20に設定されている(9≦L/d≦20)。
なお、前領域T1,後領域T2におけるL/dは、3よりも小さく設定することが可能であるが、相互に隣接する冷却孔25eが連通しないように(L/d=1)、2以上とすることが望ましい。
また、中央領域T3におけるL/dは、20よりも大きくすることが可能であるが、中央領域T3が過熱状態となることを防ぐために、50以下に設定することが望ましい。
【0034】
次に、ガスタービン1の動作について、図を用いて説明する。
まず、
図2に示すように、圧縮機2から抽気されて供給される圧縮空気cのうち一部が、回転するシールディスク11に向かって供給され、各ディスクホール11aを通り抜けてから第1段のロータディスク7Aへと供給される。そして、この供給された圧縮空気cは、順次ディスクホール7A2〜7C2を経て、ロータディスク7Dのラジアルホール7D1に到達する。
【0035】
ラジアルホール7D1に到達した圧縮空気cは、冷却孔25(25a〜25k)を翼根底面6d側から基端6a側を介して先端6b側に向けて流れる。この際、冷却孔25(25a〜25k)を流れる圧縮空気cは、冷却孔25(25a〜25k)の各内周面からタービン動翼6Dと熱交換を行う。
【0036】
図3に示すように、前領域T1及び後領域T2においては、冷却孔25の密度が大きく単位面積当たりにおいて、冷却孔25の開口面積が多く、圧縮空気cの流量が多くなる。
一方、中央領域T3においては、冷却孔25の密度が小さく単位面積当たりにおいて、冷却孔25の開口面積が少なく、圧縮空気cの流量が少なくなる。タービン動翼6Dから熱を吸熱した圧縮空気cは、先端6bから流出して燃焼ガスG1に合流する。
【0037】
図6は、タービン動翼6Dのある翼高さ位置における翼表面の温度分布図であり、横軸に翼表面周り上の位置を示し、縦軸に温度を示したものである。なお、比較対象として冷却孔25の中心間距離Lを等間隔中心間距離LEとした場合おけるタービン動翼6D´の翼表面の温度分布図を破線で示している。
また、
図6の横軸において、0が前縁(20a)を、1及び−1が後縁(20b)を、+が正圧面21を、−が負圧面22をそれぞれ示している。
【0038】
図6に示すように、タービン動翼6D,6D´の双方とも、前縁(20a)及び後縁(20b)が高温となっている。これは、必要な肉厚を確保するには第一の基準冷却孔(25a)及び第二の基準冷却孔(25k)をそれぞれ肉厚の薄い前縁(20a)及び後縁(20b)に近接させることができないためであり、冷却効果が小さくなるためである。
ここで、
図6に示すように、タービン動翼6D´においては、正圧面及び負圧面において温度が上昇せずに、概略一定であり、翼表面周りにおける前縁及び後縁の高温部と中央部との温度差がΔT2となっている。
一方、
図6に示すように、タービン動翼6Dの正圧面21及び負圧面22においては、温度が上昇しており、翼表面周りにおける前縁及び後縁の高温部と中央部との温度差がΔT1となっており、ΔT2と比較して、温度差が小さくなっている。
【0039】
すなわち、動翼6Dのコード長方向における温度分布がタービン動翼6D´よりも均一的なものとなって、前領域T1及び後領域T2と、中央領域T3との熱変形の差分が小さくなり、負圧面22の法線方向への曲げ変形が小さなものとなる。つまり、翼高さ方向の基端6a側から先端6b側に向かって、曲げ変形が積み重なって次第に大きくなることがなく、発生する曲げ応力が微小なものとなる。
【0040】
このようにして、タービン動翼6Dの翼高さが大きくなっても要求される強度を満足することができる。このようなガスタービン1は、タービン動翼6Dの翼高さが大きくなっているために、燃焼ガスG1のエネルギーを高効率で回収する。
【0041】
以上説明したように、ガスタービン1によれば、複数の冷却孔25が、必要な肉厚を確保可能な範囲において前縁20a側に形成された基準冷却孔25aと後縁20b側に形成された基準冷却孔25kとを有し、前領域T1及び後領域T2に対し、前領域T1と後領域T2との間に位置する中央領域T3の温度差が小さくなるように、他の冷却孔25b〜25jが形成されているので、熱変形に起因する曲げ応力を効果的に抑止することができる。
【0042】
すなわち、動翼6Dの温度分布がより均一的なものとなって、前領域T1及び後領域T2と、中央領域T3との熱変形の差分が小さくなり、負圧面22の法線方向への曲げ変形が小さなものとなる。つまり、曲げ変形が翼高さ方向の基端6a側から先端6b側に向かって積み重なって次第に大きくなることがなく、発生する曲げ応力が微小なものとなる。
従って、熱変形に起因する曲げ応力を効果的に抑止することができる。
【0043】
また、複数の冷却孔25が、冷却孔25の密度が中央領域T3で疎となり、前領域T1及び後領域T2で密となるように形成されているので、中央領域T3における冷却効果が小さなものとなり、前領域T1及び後領域T2における冷却効果が大きなものとなる。これにより、局所的に冷却効果を得ることができる。すなわち、様々な使用条件に対応させることができ、タービン動翼6Dのコード長方向における温度分布を均一化させることが可能となる。
【0044】
また、冷却孔25a〜25kの孔径d1に対して、冷却孔25a〜25kの各中心間距離Lが、前領域T1及び後領域T2において3〜8、中央領域T3において9〜20の比率で形成されている。
また、等間隔中心間距離LEに対して、実際の中心間距離Lが、前領域T1及び後領域T2において0.5以上1以下、中央領域T3において1以上3以下の比率で形成されているので、前領域T1及び後領域T2において強度等に影響を与えない範囲で効果的に冷却効果を高めることができる一方、中央領域T3の冷却効果を適度に確保する。これにより、タービン動翼6Dのコード長方向における温度分布を容易に均一化させることが可能となる。
【0045】
なお、この第一実施形態では、各領域T1,T2,T3内における各々の冷却孔は不等間隔で形成したが、同じ領域内であれば、そのうちの一部または全ての冷却孔が等間隔に形成された領域があってもよい。
【0046】
また、第一実施形態では、冷却孔25の数を11個としたが、他の数であってもよいのは勿論である。
また、第一実施形態では、圧縮空気cを冷却空気としたが、この圧縮空気cを冷却する機構を介して冷却孔25に供給する構成としてもよいし、圧縮機2に代えて外部から冷却空気を供給する構成にしてもよい。
また、第一実施形態では、タービン動翼6Dに本発明を適用したが、タービン動翼6A〜6Cに適用してもよく、タービン静翼10に適用してもよい。また、圧縮機静翼2c及び圧縮機動翼2dに本発明を適用してもよい。
また、第一実施形態では、L/d及びL/LEに関する望ましい数値について述べたが、上述した数値に限定する趣旨ではない。例えば、翼の翼高さが大きくなるに従って中央領域T3におけるL/d及びL/LEの上限の数値は大きくなる。
【0047】
(第二実施形態)
図7は、本発明の第二実施形態に係るタービン動翼6Eの要部断面図であって、第一実施形態の
図3に相当する図である。なお、
図1から
図6と同様の構成要素を示すものには同一の符号を付して、説明を省略する。
【0048】
図7に示すように、タービン動翼6Eは、冷却孔25a〜25kのうち、前領域T1に含まれる冷却孔25b,25cと、後領域T2に含まれる冷却孔25i,25jとが、基準冷却孔25a,25kの孔形d1よりも大きい孔径d2で形成されている。
【0049】
この構成によれば、冷却孔25b,25c,25i,25jに流れる圧縮空気cの流量が増加すると共に、圧縮空気cの伝熱面積が増加するので、タービン動翼6Eと圧縮空気cとの間における伝熱量が大きくなる。これにより、前領域T1及び後領域T2の冷却効果を大きくすることができ、前領域T1及び後領域T2と、中央領域T3との温度差をさらに小さくすることができる。これにより、タービン動翼6Eのコード長方向における温度分布を、さらに容易に均一化することができる。
【0050】
なお、本第二実施形態のように、前領域T1と後領域T2とに含まれる基準冷却孔25a,25kを除く冷却孔25b〜25e及び冷却孔25g〜25jの全てについて、孔径d2で形成される必要はなく、例えば、冷却孔25d,25hのみを孔径d2に形成しても前領域T1と後領域T2とのそれぞれの冷却効果を高めることができる。
また、本第二実施形態のように、冷却孔25b,25c,25i,25jの全てが同じ孔径d2で形成される必要はなく、例えば、冷却孔25b,25jを孔径d2とし、冷却孔25c,25iの孔径は孔径d2より大きくしてもよい。
【0051】
(第三実施形態)
図8は、本発明の第三実施形態に係るタービン動翼6Fの要部断面図であって、第一実施形態の
図3に相当する図である。なお、
図1から
図7と同様の構成要素を示すものには同一の符号を付して、説明を省略する。
【0052】
図8に示すように、タービン動翼6Fは、冷却孔25a〜25kのうち、中央領域T3に含まれる冷却孔25e,25f,25gが、基準冷却孔25a,25kよりも小さい孔径d3で形成されている。
【0053】
これらの冷却孔25e,25f,25gは、冷却孔25fが温度を相対的に高く設定した中央領域T3内部に位置し、冷却孔25e,25gが前領域T1及び後領域T2との領域境界において中央領域T3に属している。
【0054】
この構成によれば、冷却孔25e,25f,25gに流れる圧縮空気cの流量が減少すると共に、圧縮空気cの伝熱面積が減少するので、タービン動翼6Fと圧縮空気cとの間における伝熱量が小さくなる。これにより、中央領域T3の冷却効果を小さくすることができ中央領域T3の温度を相対的に高くすることができる。
従って、前領域T1及び後領域T2と、中央領域T3との温度差をさらに小さくすることができ、タービン動翼6Fのコード長方向における温度分布をさらに容易に均一化することができる。
【0055】
なお、この第三実施形態のように、他の冷却孔25b〜25jのうち中央領域T3に含まれる冷却孔25e〜25gの全てが小径である必要はなく、例えば、冷却孔25fの孔径のみ、又は、冷却孔25fと25gとの孔径を小さくしても、上記と同様に、中央領域T3の温度を相対的に高くすることができる。
また、冷却孔25e〜25gの全てが同じ孔径d3で形成される必要はなく、例えば、冷却孔25e,25gを孔径d3とし、冷却孔25fの孔径は孔径d3より小さくてもよい。
【0056】
(第四実施形態)
図9は、本発明の第四実施形態に係るタービン動翼6Gの外観構成図である。なお、
図1から
図8と同様の構成要素を示すものには同一の符号を付して、説明を省略する。
【0057】
図9に示すように、タービン動翼6Gは、基端6aから先端6bに向かうに従って、コード長(翼弦)が次第に小さくなっている。
このタービン動翼6Gは、冷却孔25b〜25jが、基端6aから先端6bまでの翼高さH(径方向)の全てにおいて延在している。
【0058】
一方、基準冷却孔25a,25kは、前縁20a及び後縁20bにそれぞれ近接しており、基端6aから正圧面21に貫通している。この基準冷却孔25a,25kは、翼高さ方向において1/3H程度、延在している。
なお、各冷却孔25は、
図9に示すように、翼根底面6dから基端6aまでは、径方向に略平行に延在し、基端6aから先端6bに向かってコード長方向の中央側に向かうようにそれぞれ傾きを持って延在している。
【0059】
この構成によれば、上述した基準冷却孔25a,25kから正圧面21及び負圧面22までの肉厚を薄くすることが可能である。すなわち、基準冷却孔25a,25kが途中で正圧面21に貫通し、翼高さ方向において1/3H程度のみ延在するだけであるので、放電加工の加工誤差による基準冷却孔25a,25kの形成位置の振れ幅が小さくなり、必用肉厚を大きく取る必要がなくなる。これにより、基準冷却孔25a,25kを前縁20aと、後縁20bとに近接させることができる。
【0060】
また、この構成によれば、少なくとも基端6aから1/3Hは、前領域T1及び後領域T2の冷却効果を高めることができ、相対的に温度を低くすることができる。これにより、少なくとも基端6aから1/3Hは、さらにタービン動翼6Gのコード長方向における温度分布が均一的なものとなって、前領域T1及び後領域T2と、中央領域T3との熱変形の差分が小さくなる。そして、負圧面22の法線方向への曲げ変形が微小なものとなる。つまり、少なくとも基端6aから1/3Hは、曲げ変形が効果的に抑止されるので、翼高さ方向の基端6a側から先端6b側に向かって積み重なって次第に大きくなる曲げ変形が緩和され、発生する曲げ応力を非常に小さくすることができる。
また、この構成によれば、コード長が翼高さ方向の基端6a側から先端6b側に向かって次第に小さくなるタービン動翼6Gにおいて、全ての冷却孔25を先端6bまで貫通した場合に先端6b側において隣接する冷却孔25が接近しすぎて必要な肉厚の確保が困難となったり、冷却孔25の孔径を十分大きくすることができなくなったりすることを回避することができる。よって、各翼高さのコード長に合わせて冷却孔25の数や孔径を最適化して必要な肉厚を確保しつつ、熱変形や熱応力、曲げ応力を緩和することができる。
従って、熱変形に起因する曲げ応力を効果的に抑止することができる。
【0061】
なお、この第四実施形態では、冷却孔25a,25kを、正圧面21に貫通させる構成としたが、負圧面22に貫通させてもよい。また、必ずしも冷却孔25a,25kの双方を貫通させる必要はないし、一方を正圧面21に他方を負圧面22に貫通させる構成としてもよい。
また、冷却孔25a,25kに限定されることはなく、他の冷却孔25b〜25jのうち少なくとも一部を正圧面21及び/または負圧面22に貫通させてもよい。
また、この第四実施形態では、翼高さ方向における貫通孔の位置を1/3程度としたが、1/3〜1/2程度とすると、放電加工の加工誤差による振れ幅を小さいものとし、かつ、熱変形を効果的に抑止することができる。
【0062】
(第五実施形態)
図10は、本発明の第五実施形態に係るタービン動翼6Hの要部断面図であって、第一実施形態の
図3に相当する図である。なお、
図1から
図9と同様の構成要素を示すものには同一の符号を付して、説明を省略する。
【0063】
図10に示すように、タービン動翼6Hは、冷却孔25b〜25jが、翼型断面において内接円の中心を結んだキャンバー線Pよりも正圧面21側に位置している。また、冷却孔25b〜25jは、前領域T1及び後領域T2においては、中央領域T3に近いものほどキャンバー線Pから離間して正圧面21側に寄っており、中央領域T3内に含まれる冷却孔25e,25fがキャンバー線Pから最も離間して正圧面21に近接している。
【0064】
この構成によれば、冷却孔25b〜25jは、キャンバーラインPよりも正圧面21側に形成されているので、負圧面22側よりも正圧面21側が冷却され、正圧面側がより熱収縮し、負圧面側がより熱膨張する。これにより、負圧面22の法線方向への曲げ変形が小さなものとなる。従って、翼高さ方向の基端6a側から先端6b側に向かって積み重なって次第に大きくなる曲げ変形が抑止され、発生する曲げ応力が微小なものとなる。
従って、熱変形に起因する曲げ応力をより効果的に抑止することができる。
【0065】
なお、この第五実施形態では、冷却孔25b〜25jの全てを、一列に配置させる構成としたが、散在的に配置させる構成でもよい。
また、第五実施形態では、冷却孔25b〜25jを、キャンバーラインPよりも正圧面21側に形成したが、一部のみをキャンバーラインPよりも正圧面21側に形成してもよい。
【0066】
(第六実施形態)
図11は、本発明の第六実施形態に係るタービン動翼6Iの概略構成斜視図であり、
図12は、
図11におけるII矢視図である。なお、
図1から
図10と同様の構成要素を示すものには同一の符号を付して、説明を省略する。
【0067】
図11に示すように、タービン動翼6Iは、ロータディスク7A〜7Dに固定するための取付部6cを有している。この取付部6cの中心軸線(取付基準線)Q1は、ロータディスク7A〜7Dの固定時において径方向に向くように設定されている。
図12に示すように、このようなタービン動翼6Iは、取付基準線Q1に対して翼高さ方向が正圧面21側に角度α傾いている(一点鎖線Q2に沿った方向)。
【0068】
この構成によれば、径方向に対して翼高さ方向が正圧面21側に傾いているので、仮にタービン動翼6Iに負圧面22の法線方向への曲げ変形が生じたとしても、翼高さ方向が径方向に向く。すなわち、タービン動翼6Iの曲げ変形を打ち消すことができる。
換言すると、タービン動翼6Iの各断面毎の曲げ変形量、および、各曲げ変形量を翼高さ方向に積み重ねた結果、負圧面22側に倒れるタービン動翼6Iの傾斜角を予め計算や実験によって求めておき、この傾斜角をαとして取付基準線Q1に対してタービン動翼6Iを逆の正圧面21側に傾斜させる(一点鎖線Q2に沿った方向)。これにより、運転中のタービン動翼6Iに生じる負圧面22側への曲げ変形により、傾斜角αは略0度、すなわち、タービン動翼6Iは取付基準線Q1に沿った方向に戻る。よって、運転中の遠心力の働く方向にタービン動翼6Iは略一致するため、遠心力により動翼6Iの基端6a近傍に主に生じる曲げ応力を緩和できると共に、所望の性能を発揮できる設計点での所定の位置(取付基準線Q1方向に沿った位置)にタービン動翼6Iを配置することができる。
【0069】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。