(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730449
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】ナノ構造スタンプ、型押しロール、ナノ構造部を連続型押しする装置および方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20150521BHJP
B29C 59/04 20060101ALI20150521BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/04 CZNM
B29C33/38
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-539249(P2014-539249)
(86)(22)【出願日】2011年12月6日
(65)【公表番号】特表2015-501550(P2015-501550A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】EP2011071912
(87)【国際公開番号】WO2013083184
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2014年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト クラインドル
(72)【発明者】
【氏名】マークス ヴィンプリンガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス グリンスナー
【審査官】
関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−006302(JP,A)
【文献】
特開平02−134229(JP,A)
【文献】
特開平11−156484(JP,A)
【文献】
米国特許第5327825(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 33/00−33/76、39/26−39/36、
41/38−41/44、43/36−43/42、43/50、
45/26−45/44、45/64−45/68、45/73、
49/48−49/56、49/70、51/30−51/40、
51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面(13o)に少なくとも1つの周方向リング(15,15’)を継ぎ目なしに型押しするための凹状に湾曲された、ナノ構造化されスタンプ面(7f)を備えるナノ構造スタンプ(1)を製造するための、型押しロール(16)の回転体(5)の使用であって、前記ナノ構造スタンプ(1)は、スタンプ支持体(11)を有し、該スタンプ支持体(11)に前記スタンプ面(7f)を含むスタンプ型(7)が結合されていることを特徴とする、型押しロール(16)の回転体(5)の使用。
【請求項2】
ナノ構造部を連続型押しするための型押しロール(16)を製造するナノ構造スタンプ(1)の製造方法であって、以下のステップ、特に以下の経過を有している、すなわち、
回転体(5)の外周面(5o)の所定の周方向区分に、湾曲された、または湾曲可能な、ナノ構造スタンプ(1)のスタンプネガ型(9)を位置固定するステップと、
前記湾曲されたスタンプネガ型(9)に成形可能なスタンプ型材料(10)を被着させるステップと、
凹状に湾曲された、ナノ構造化されたスタンプ面(7f)を形成するために、前記スタンプ型材料(10)をスタンプ支持体(11)に固着するように成形するステップと、
前記スタンプ型材料(10)を硬化させるステップと
を有する、ナノ構造スタンプ(1)の製造方法。
【請求項3】
前記周方向区分は、前記外周面(5o)の周面の半分よりも短く、特に3分の1よりも短く、有利には4分の1よりも短く延びている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
回転体(5)として、前記型押しロール(16)を使用する、請求項2または3記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、型押しロールに型押しするためのナノ構造スタンプと、請求項4に記載のナノ構造部を連続型押しするための型押しロールと、請求項7に記載のナノ構造部を連続型押しする型押しロールの製造装置と、請求項11に記載の型押しロールを製造するためのナノ構造スタンプの製造方法と、請求項14に記載のナノ構造部を連続型押しする型押しロールの製造方法とに関する。さらに本発明は、請求項18に記載のナノ構造部を有する型押し基板の製造方法に関する。
【0002】
たとえばフィルムのような大面積用途のためのナノ構造化された表面および半導体構造体の大量生産技術の発展において、連続的なナノ構造化された表面および/または半導体構造体をロールを介して走行ベルトまたは長尺の材料に型押しすることができるように機能するロールtoロール機械に対する需要が生じている。この場合、特にインプリントリソグラフィのための使用時に重大な問題が生じ、このことはこれまでに満足できるようには解決されていない。特に、サブミクロン、もしくはナノメートル範囲である連続的なパターンを形成する場合に問題が生じる。型押し構造部がますます小型化することに伴って、連続加工の実施時の技術的な問題が平均以上に増加することは容易に想像可能である。
【0003】
本発明の課題は、ナノ構造スタンプならびに型押しロール、該型押しロールの製造方法および製造装置を提供し、該型押しロールによって、特に型押しロールのサイズまたは直径に対してナノ構造部の寸法が極めて小さな場合にも、ナノ構造部の連続型押しが可能であり、この場合に確実かつ再現可能な結果が得られるようにすることである。現行の型押しロールの直径は、当業者にとって公知である。しかし、本発明の実施の形態は、あらゆる直径に適している。
【0004】
上記課題は、請求項1,4,7,11,14および18に記載の特徴により解決される。本発明の有利な態様は、従属請求項に記載されている。本発明の枠内には、明細書、特許請求の範囲および/または図面に記載された特徴のうち少なくとも2つから成る全ての組合せが含まれる。また、記載された数値範囲において、挙げられた極限内にある値も、極限値として示されるものであり、それらの値は任意の組み合わせでも権利として請求可能である。
【0005】
本発明の根底を成す思想は、型押しロールに設けられるべき型押し構造部を、継ぎ目のない型押しが全外周面に設けられているように、ステップ&リピート法で設けることにある。このためには、本発明によれば、新規のナノ構造スタンプが開示される。このナノ構造スタンプは、ステップ&リピート工程に適していて、これにより繰り返される構造部を型押しロールの外周面に設けることができる。
【0006】
本発明によれば、構造部を、型押しロールの回転体の回転軸線に沿ってステップ&リピート法で設けることも考えられる。本発明によれば、複数回のステップの型押しによって、継ぎ目のないマイクロ構造部もしくはナノ構造部を形成することが特に重要である。これにより、型押しロールは、工作物上での後続の転動プロセス(型押し基板および型押し製品の製造)の際に、いわば連続的にもしくは不断に、つまり複数回の完全な回転によってマイクロ構造部もしくはナノ構造部を転写することができる。ステップ&リピート法で形成可能な高対称性かつ並進的なパターンの繰返しは、独特の表面特性、特に周期的に繰り返す構造部を有する材料を形成することを可能にする。光学分野、たとえばガラスプレートのインプリント加工時に使用すると特に有利である。特に高対称性の構造部によって所望の光学効果が極めて正確に達成され得る場合、対称性は、光学分野において極めて重要である。この場合、「継ぎ目なし」とは、ステップ&リピート工程の公差の範囲内で全外周面にわたって均一な構造部が型押しされ、特に型押しロールの全周にわたる型押しの最初の型押しステップに対する最後の型押しステップの移行部においても均一な構造部が型押しされ得ることを意味している。
【0007】
したがって、独立した発明として、ステップ&リピート法で型押しロールの外周面に少なくとも1つの周面リングを継ぎ目なしに型押しするための、たとえば凹状に湾曲され、ナノ構造化されたスタンプ面を備えるナノ構造スタンプが設けられている。したがって、ナノ構造スタンプのスタンプ面は、型押しロールの外周面に適合されているので、唯1つのナノ構造スタンプにより型押しロールの全外周面が型押しされ得る。1つの型押しロールの型押し時に複数のナノ構造スタンプを同時に使用することも、本発明によれば同様に考えられる。
【0008】
ナノ構造スタンプがスタンプ支持体を有していて、該スタンプ支持体にスタンプ面を有するスタンプ型が特に永続的に結合されている限り、型押しロールに型押しするための相応する装置内におけるナノ構造スタンプの取扱いが簡単にされる。
【0009】
この場合、スタンプ型が、型押しされるべき型押しロールによって直接に形成されると特に有利である。これによって、ナノ構造スタンプもしくはナノ構造スタンプのスタンプ面の湾曲が、型押しされるべき型押しロールに正確に一致する。
【0010】
本発明の有利な態様によれば、スタンプ支持体は、電磁波、特にUV光に対して透過性であり、これにより、スタンプ型および/または型押しロールに設けられた型押しされるべき型押し層の硬化を行うことができる。
【0011】
電磁波用の放射線源、特にUV源が、特に中空筒体の形態の型押しロールの内部の位置している場合、型押しロールの照射されるべきではない領域、特に型押しロールの内周面に電磁波に対する遮蔽手段が設けられていると有利である。この遮蔽手段は、有利にはUV非透過性の保護周面である。保護周面は、照射されるべきではない全ての箇所を保護し、かつUV硬化可能な型押し層を硬化するためにUV光が進入すべき領域においてのみ中断されている。
【0012】
有利には、本発明に係るナノ構造スタンプのスタンプ面の、型押しロールにおける転動方向でのラジアンは、型押しされるべき型押し層の対応する円周に関して整数部分であるので、型押しロールの転動方向で型押し層の円周に完全に型押しした場合、継ぎ目のない型押しが行われる。本発明により個々の型押しステップのオーバラップ区分が設けられている場合、ラジアンは、オーバラップ区分の分だけ拡大され得る。
【0013】
付加的には本発明により、スタンプを変形手段、特に外部の影響により、動的にマイクロメートル範囲および/またはナノメートル範囲で、特に転動方向に変形させる、特に伸張させかつ/または圧縮させることができる。
【0014】
変形手段の1態様では、このことは、加熱および/または冷却によるスタンプの熱膨張により達成される。別の態様ではピエゾ材料が使用される。当業者であれば、型押し構造部が表面の完成時に継ぎ目なしに互いに移行し合うことが保証される限り、スタンプの伸張が任意の形式で達成され得ることは明らかである。このためには、型押しロールの円周に対するスタンプ面の比を測定し、特に加工(型押し)中に検出する測定手段が設けられていてよい。択一的には、変形の程度を、特に周面への型押しによる較正により求めることができる。本発明によれば、一方では型押し層を有するか型押し層を有しない型押しロールの周面を測定し、他方ではスタンプ面の寸法を測定し、次いで特に計算によって変形を求めることも考えられる。測定方法として、本発明によれば特に原子間力顕微鏡および/または光学的なマイクロスコープおよび/または走査電子顕微鏡が適している。
【0015】
独立した発明として、ナノ構造部を連続型押しするための、特に本発明に係るナノ構造スタンプにより製造された型押しロールであって、回転体に被着された型押し層を備え、該型押し層は、少なくとも周方向で継ぎ目なしに形成され、ステップ&リピート法で型押しされた少なくとも1つの周面リングを備える外周面を有している、型押しロールが規定されている。この型押しロールにより、周期的に繰り返す構造部が工作物に設けられ得る。
【0016】
外周面が本発明に係るナノ構造スタンプによって型押しされることにより、型押しロールは有利な形式で製造可能である。
【0017】
回転体が筒体、特に円筒体として形成されていると特に有利である。したがって、型押しロールは、型押しロール自体の製造時にも、ナノ構造部の連続型押し(インプリント)時における型押しロールの機能的な使用時にも、有利な形態で使用され得る。
【0018】
さらに独立した発明として、ナノ構造部を連続型押しするための本発明に係る型押しロールの製造装置が設けられている。この装置は、型押しロールの回転体を収容しかつ作業室内で型押しロール軸線を中心として制御可能に回転させる型押しロール収容部を有している。制御は、特に中央制御装置を介して行われる。さらに、本発明に係る装置は、特に本発明に係るナノ構造スタンプを収容しかつ型押しロールの外周面に対して相対的に制御可能に移動させるスタンプ収容部を有している。制御は、同様に中央制御装置により行われる。この場合、型押しロール収容部およびスタンプ収容部の制御により、外周面の少なくとも周方向で継ぎ目なしに形成された、ステップ&リピート法で型押しされた少なくとも1つの周面リングが製造可能である。装置の好適な態様では、作業室が、真空チャンバにより形成されていて、作業室には真空、つまり負圧を供給可能であるので、型押しロールの製造中に製造に適した雰囲気が調節可能である。
【0019】
本発明の別の態様によれば、外周面を形成する型押し層を型押しロールの回転体に被着させる手段が設けられていると有利である。この態様は、さらなる統合をもたらす。
【0020】
本発明の有利な別の態様では、装置が、型押しされた周面リングを、特に部分的に、有利にはステップ&リピート法に対応する、特にナノ構造スタンプのスタンプ面に対応する区分で硬化する硬化手段を有している。
【0021】
さらに、独立した発明は、ナノ構造部を連続型押しするための型押しロールを製造するためのナノ構造スタンプの製造方法に関し、該方法は以下のステップ、特に以下の経過を有している:すなわち、
回転体の外周面の所定の周方向区分に、湾曲された、または湾曲可能な、ナノ構造スタンプのスタンプネガ型(スタンプの反転型)を位置固定するステップ、
湾曲されたスタンプネガ型に成形可能なスタンプ型材料を被着させるステップ、
凹状に湾曲され、ナノ構造化されたスタンプ面を形成するためにスタンプ型材料をスタンプ支持体に固着するように成形するステップ、および
スタンプ型材料を硬化させるステップ
を有している。
【0022】
この場合、本発明の好適な態様によれば、周方向区分は外周面の周面の半分よりも短く、特に1/3よりも短く、有利には1/4よりも短く延びている。この手段により、型押し力が均一に付与される。
【0023】
回転体として、型押しロールの回転体が使用される場合、スタンプ面の湾曲は、特にスタンプネガ型の厚さが型押しロールの型押し層の厚さにほぼ一致している場合に、型押しロールの形状に型押し時に正確に一致する。
【0024】
本発明の別の独立した態様によれば、ナノ構造部を連続型押しする型押しロールの製造法は以下のステップ、特に以下の経過を有している。
作業室内に配置された型押しロール収容部に、外周面を有する型押し層を備えた回転体を収容するステップ、および
スタンプ収容部に収容されたナノ構造スタンプを用いて、外周面の周方向で継ぎ目のなしに形成された周面リングをステップ&リピート法で型押しするステップ。
【0025】
回転体の回転により、複数回の、特に順次に行われるスタンプステップで型押しが行われるように、周面リングの配置は、型押しロールの回転体の回転軸線に正確に一致する。
【0026】
本発明の別の有利な態様では、複数のスタンプステップは、それぞれ先に型押しされた構造部において位置調整するために、部分的にオーバラップするように実施され得る。これによって、本発明によれば先に型押しされ硬化された構造部におけるナノ構造スタンプの位置調整が考えられるので、高精度の調整が、種々のスタンプステップにより型押しされた構造部を用いて行われる。
【0027】
複数のスタンプステップが、各回転位置において回転軸線に対して平行に設けられていることによって、型押しロールは、回転軸線を中心とした唯1回の完全な回転後(約360度、場合によっては小さなオーバラップを伴う)に、最後まで型押しされている。
【0028】
装置に関して開示された特徴は、方法の特徴としても開示され、方法に関して開示された特徴は装置の特徴としても開示されているものと見なされる。
【0029】
本発明の別の利点、特徴および細部は、好適な実施の形態の以下の説明ならびに図面につき明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1a】ナノ構造部を連続型押しする型押しロールを製造する本発明に係る装置の第1の実施の形態を示す図である。
【
図1b】ナノ構造部を連続型押しする型押しロールを製造する本発明に係る装置の第2の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図2a〜
図2fは、ナノ構造部を連続型押しする型押しロールを製造するためのナノ構造スタンプの本発明に係る製造方法の実施の形態を示す図である。
【
図3】
図3a〜
図3gは、ナノ構造部を連続型押しする型押しロールの本発明に係る製造方法の実施の形態を示す図である。
【
図4a】ステップ&リピート法の第1の実施の形態で部分的に型押しされた型押しロールを上から見た図である。
【
図4b】ステップ&リピート法の第2の実施の形態で部分的に型押しされた型押しロールを上から見た図である。
【
図5】エンドレスもしくは連続的に型押しされた型押し基板を製造する本発明に係る型押しロールを用いた連続型押しの経過を示す図である。
【0031】
図面には、本発明の利点および特徴が、これらの利点および特徴をそれぞれ特定する符号を伴って本発明の複数の実施の形態につき示されている。同一の機能または同じような作用を有する構成部材もしくは特徴は、同一の符号で示されている。
【0032】
図面において、個々の特徴の機能を概略的に示すことができるように、本発明の特徴は正しい縮尺では示されていない。個々の構成部材同士の関係も、部分的に比例しておらず、このことは、特に大幅に拡大して示されたナノ構造部14に帰せられる。本発明により型押しされた、もしくは材料に対応するナノ構造部を型押しするために使用されるナノ構造部14は、ナノメートルおよび/またはマイクロメートルの範囲にあるのに対して、機械構成部材のサイズオーダはセンチメートル範囲にある。
【0033】
図1には、真空チャンバ2が概略的に示されている。真空チャンバ2は、作業室6を取り囲んでいる。作業室6には真空もしくは低圧が供給可能である。真空チャンバ2には、密閉されたドアまたはロック室(図示せず)を介して材料を装填することができる。
【0034】
作業室6内で、真空チャンバ2の底部2bには、回転体5を収容しかつ制御可能に回転させる型押しロール収容部4が配置されている。回転体5は、ナノ構造部14を連続型押しするための型押しロール16の構成部材である。この場合、型押しロール16は、
図1に示された装置により製造される。回転体5の回転は、型押しロール軸線5aを中心として行われ、型押しロール回転軸線5aは、円筒の形態の回転体5に対して同心的に延びている。少なくとも回転方向で回転体5を正確に制御可能に駆動する相応の駆動手段は既知であることを前提とする。
【0035】
回転体5の上方には、スタンプ収容部3によりナノ構造スタンプ1が配置可能である。この場合、ナノ構造スタンプ1を収容しかつ回転体5もしくは型押しロール16の外周面5oに対して相対的に制御可能に移動させるスタンプ収容部3は、少なくともX,YおよびZ方向に可動である。X方向および/またはY方向および/またはZ方向の相対移動は、スタンプ収容部3によるナノ構造スタンプ1の移動によりかつ/または型押しロール収容部4による回転体5の移動により行われ得る。したがって、図示の装置は、ステップ&リピートプロセスを実施するために適している。
【0036】
換言すれば、ナノ構造スタンプ1は、少なくとも3つの並進自由度(X,YおよびZ方向)と、特に付加的に回転体5に対して相対的な回転自由度を有している。回転体5は、型押しロール軸線5aを中心とした回転方向の自由度を有しており、特に付加的に2つの並進自由度(XおよびY方向)を有している。回転体5の回転自由度は、回転体5を1回の型押しステップ後に、もしくは複数回の型押しステップの型押し後に、型押しロール軸線5aを中心としてさらに回転させるために設けられている。
【0037】
図1によればナノ構造スタンプ1によって外周面5o(詳しい説明は下記の
図3a〜3gを参照)に型押しされたナノ構造部14を硬化させるために、さらにUV源8および/または加熱システム12の形態の硬化手段が設けられている。UV源8および/または加熱システム12は、ナノ構造スタンプ1に対して相対的に位置決めされていてよく、たった今新たに形成されたナノ構造部14の硬化が、ある程度の時間間隔後に、有利にはできるだけ迅速に、さらに有利には直ちに行われる。したがって、ナノ構造スタンプ1に対する、
図1aに示した加熱システム12の位置決めは、最適ではないが、最も判りやすい実施の形態である。特別な実施の形態では、
図1bに示すように、UV源8が(中空)円筒体(回転体5)の内部に位置している。この構成では、UV源8は、特に回転体に対してもしくは回転体に対して相対的に回転する保護周面17(シールド手段)によって取り囲まれていてよく、これによって、UV光が型押し層13の硬化されるべき領域にのみ照射されることを確実にすることができる。
【0038】
まず、ナノ構造スタンプ1の製造が
図2a〜
図2fにつき説明される。ナノ構造スタンプ1の製造は、特に複数の型押しロール16の製造のために唯1回しか実施する必要がない。なぜならば、有利には1つのナノ構造スタンプ1で複数の型押しロール16が製造され得るからである。
【0039】
まず、スタンプネガ型9(ナノ構造スタンプ1の反転型)が、平坦な平面状の基板に形成される(
図2aを参照)。平面状の基板は、有利にはポリマ、構造化された(つまり構造を付与された)薄い金属フィルム、または曲げられて湾曲した表面(この場合は、型押しロール16の製造に役立つ回転体5の外周面5o)に適合可能である材料から成っている。したがって、
図2bに示すように外周面5oに被着した後のスタンプネガ型9の形状は、特にスタンプネガ型9の厚さが外周面5oに設けられるべき型押し層13の厚さに一致している場合(
図3aを参照)、型押しされるべきナノ構造部14の形状に正確に一致する。型押し層13は、1mmよりも薄く、有利には0.1mmよりも薄く、さらに有利には1μmよりも薄く、より有利には0.1μmよりも薄く、極めて有利には100nmよりも薄く、最も有利には10nmよりも薄く形成されている。
【0040】
次いでスタンプ型材料10が、該スタンプ型材料10を被着させる手段(図示せず)によってスタンプネガ型9に被着される(
図2c参照)。スタンプ型材料10の被着は、半自動または全自動で行われ得るが、手動で被着させることも本願発明では考えられる。
【0041】
次いで、スタンプ支持体11が、スタンプネガ型9に対して位置決めされるので、スタンプ型材料10は、スタンプネガ型9とスタンプ支持体11との間に配置されている(
図2d参照)。スタンプ支持体11の位置決め/位置調整/保持のためには、相応する手段、特にロボットアームが設けられている。
【0042】
図2eに示された方法ステップでは、スタンプ支持体11が、回転体5もしくは型押しロール軸線5aもしくはスタンプネガ型9の方向に移動させられ、これにより、スタンプ型材料10は、スタンプネガ型9とスタンプ支持体11との間で分配される。これにより、スタンプネガ型9の構造部(凹部および凸部)に、スタンプ型材料10が、スタンプネガ型9の縁部9rにまで、または縁部9rを越えるまで充填される。
【0043】
図示しない硬化手段(
図1に類似)によってスタンプ型材料10が硬化され、これにより形成されたスタンプ型7のスタンプ面7fに、スタンプポジ型(正の形状)が形成される。同時に、スタンプ型7はスタンプ支持体11に、特に永続的に結合する。硬化手段として、特にUV放射器、赤外線放射器または加熱体が働く。さらに、回転体5自体を、特に電子線放射器を回転体5の内部に配置することによって加熱することも考えられる。
【0044】
硬化後に、完成したナノ構造スタンプ1は、回転体5もしくはスタンプネガ型9から離間される。
【0045】
前述のナノ構造スタンプに対して択一的に、本発明によれば、硬いスタンプの製造も考えられる。硬いスタンプは、公知の方法では著しく手間をかけて製造されるが、ロールを製造する本発明の別の態様を使用することができる。しかし、このような硬いスタンプは、手間がかかりコストも高く、特にリソグラフィ法および/または電子線放射法および/またはフライス法で製造される。このことは湾曲されたスタンプトポグラフィおよび極めて小さな構造部では、本発明に係る解決手段と比較して極めて困難にしか実現され得ない。
【0046】
図3では、ナノ構造スタンプ1が、
図1に示した装置内で使用されている。まず、回転体5は、その特に全体的な外周面5oに型押し層13をコーティングされているので、型押し層13は、(新規の)外周面13oを形成している。型押し層13のコーティングは、有利には回転体5の回転により、回転体5の所定の周方向区分だけを収容する浸漬浴内で、または吹付け法で、液滴分配法で、PVD法で、またはCVD法で行われる。択一的には、回転体5全体を浸漬浴内に浸漬することも考えられる。型押し層13のためのコーティング材料として、有利には液状ポリマが使用される。外周面に型押し層13の材料を被着した後に、型押し層13は、特に1mmよりも薄い、有利には0.1mmよりも薄い、さらに有利には1μmよりも薄い、より有利には0.1μmよりも薄い、極めて有利には100nmよりも薄い、最も有利には10nmよりも薄い所望の厚さで形成される。
【0047】
型押し構造部自体は、1mmよりも少ない、有利には0.1mmよりも少ない、さらに有利には1μmよりも少ない、更に有利には0.1μmよりも少ない、極めて有利には100nmよりも少ない、最も有利には10nmよりも少ない平均的な横方向解像度を有している。
【0048】
型押しロール(16)の直径は、任意に選択可能である。例示的であり制限するものではないが、型押しロール(16)は、1mmよりも大きな直径、有利には1cmよりも大きな直径、さらに有利には10cmよりも大きな直径、極めて有利には1mよりも大きな直径、最も有利には10mよりも大きな直径である。本発明に係る実施の形態の第1のプロトタイプは、10cm〜50cmの型押しロールの直径で実現されている。型押しロール(16)の直径が大きければ大きいほど、ナノ構造部(19)からのマイクロ構造部および/またはナノ構造部(14)の剥離は穏やかである。
【0049】
次いで、被着され、硬化された型押し層13を備えるロール支持体5を位置決めし(
図3aもしくは
図1)、それもY方向かつ回転体5に対するナノ構造スタンプの回転位置もしくは角度位置について位置調整するだけではなく、型押しロール軸線5aに対して平行に外周面13oに沿ってX方向でも位置調整する(特に
図4a,
図4b)。とりわけ、ナノ構造スタンプ1の回転位置を正確に位置調整することが重要である。
【0050】
位置調整後に、ナノ構造部14の第1の型押し区分14.1(
図4a)もしくは第1の型押し区分14.3(
図4b)がスタンプ面7fのスタンプポジ型もしくは突出部に基づいて型押しされるまで、ナノ構造スタンプ1がZ方向に(つまり型押しロール軸線5aに向かって)移動させられる。本発明によれば少なくとも大抵は、有利には完全に、隣り合った構造部区分14.nが順番に型押しされる。なぜならば、これによって、先に型押しされた複数の構造部、特に先に型押しされた1つの構造部区分14.[n−1]の縁部におけるオーバラップ構造部14e(オーバラップ区分)における位置調整が可能であるからである。順次の型押し時に、
図4aおよび
図4bに図示した択一的な態様が生じる。
【0051】
図4aに示された実施の形態では、まず第1のスタンプステップとしてスタンプ面7fに対応するナノ構造部区分14.1が型押しされ、次いで回転体5の回転により第2のナノ構造部区分14.2が1つのスタンプステップで型押しされる。
【0052】
図4bに示した実施の形態では、第1のナノ構造部区分14.3の型押し後に、複数の構造部区分14.3,14.4,14.5,14.6から構成される、型押しロール軸線5aに対して平行に延びる列が順次に型押しされる。この間に回転体5の回転は行われない。したがって、図示された5つの型押しステップ中に、ナノ構造スタンプ1だけがX方向に移動され、特にそれぞれ先に型押しされたそれぞれのナノ構造部区分14.[n−1]の1つの構造部において位置調整されることが必要である。これらのナノ構造部区分14.3−14.7の型押し後に回転体5の回転が行われるので、次の列が引き続き型押しされる。
【0053】
各型押しステップは、
図3cから
図3eに示されたステップから成っている。すなわち、ナノ構造スタンプ1の上昇(
図3c)と、回転体(5)の回転および/またはナノ構造スタンプ1のX方向への移動(
図3d)と、特に先のナノ構造部区分の縁部に設けられた少なくとも1つのオーバラップ構造部14eへのオーバラップによる、構造部区分14.nの型押し(
図3e)とから成っている。
【0054】
説明された工程は、型押し層13の全外周面13oにナノ構造部14が設けられるまで繰り返される(
図3gを参照)。
【0055】
図4aに示された実施の形態では、まず、X方向のスタンプ面7fの幅に一致する1つの周面リング15が型押しされるのに対して、
図4bに示された実施の形態では、実際に外周面5oの全幅にわたって延びる1つの周面リング15’が型押しされる。
【0056】
図4aに示した実施の形態では、全外周面5oをカバーするために、さらに相並んで配置された複数の周面リング15を型押ししなければならないので、回転体5はその軸線を中心として複数回、完全に回転される必要がある。
図4bに示した実施の形態では、約360度(オーバラップがある場合にはこれよりも大きい)の唯1回の回転だけが必要である。この場合に重要なのは、オーバラップする場合に、本発明によれば、既に型押しされた構造部が、スタンプのオーバラップする部分により破壊されず、この部分が既存の構造部に、該構造部を破壊することなしに重なり合うことである。
【0057】
いずれの場合も、各スタンプステップの後に、ナノ構造スタンプ1を上昇させることが必要である。さらに、本発明によれば、上昇前または上昇後に、つまり各スタンプステップの前または後に、型押しされたナノ構造部区分14.nの硬化が実施されると有利である。複数回の硬化も考えられる。複数回の硬化が行われる場合、本発明によればナノ構造スタンプ1の各個別の型押し工程後の「予備硬化」が考えられる。本発明によれば、スタンプ材料(型押し層13)の被覆をナノ構造スタンプ1と型押しロール5との間だけで実施し、次いでスタンプ(型押し)および硬化プロセスを実施し、型押しロール5をさらに回転させ、その後にようやく次の部分を表面5oにコーティングすることも考えられる。これによって、いかなる場合も、型押しロール5の下面および側面に設けられた材料が、重力によって変形され、型押し層13の厚さが不均一にされることが阻止される。
【0058】
別の場合には、型押し層13の粘度が、当該型押し層13の被着後に型押しのために十分小さいが、流れることがないように十分に大きいことが本発明にとって重要である。
【0059】
本発明によれば、周面リング15が閉じられた時に、つまり各周面リング15のためにそれぞれ最後のナノ構造部区分14.nを型押しした場合に、継ぎ目のない、特に他のナノ構造部区分14.nと間隔において一致するナノ構造部区分14.nが型押しされると有利である。
【0060】
本発明による方法では、ナノ構造スタンプ1は、簡単に形成可能であるので、正確に適合されたナノ構造スタンプ1の製造による完全な移行部が達成され得る。
【0061】
ナノ構造スタンプ1を実際の回転体5に適合させるためには、
図4aに示した個別の周面リング15による試し型押しが考えられる。型押しが完璧に行われる限り、複数の型押しロール16を製造するためのナノ構造スタンプ1が使用され得る。完璧ではない場合、(正しい)間隔に対する差異が求められ、その差異に基づいて新しいナノ構造スタンプ1を製造するための、変更されたスタンプネガ型9が算定され得る。
【0062】
図5には、型押しロール5による、いわば連続的にナノ構造部19を備えた型押し基板18の連続的な型押しが示されている。型押しロール5は、先行技術とは異なり、均一かつ継ぎ目のないナノ構造部19を、このようにして形成された型押し基板18にもたらす。
【符号の説明】
【0063】
1 ナノ構造スタンプ
2 真空チャンバ
2b 底部
3 スタンプ収容部
4 型押しロール収容部
5 回転体
5o 外周面
5a 型押しロール軸線
6 作業室
7 スタンプ型
7f スタンプ面
8 放射器
9 スタンプネガ型
9r 縁部
10 スタンプ型材料
11 スタンプ支持体
12 加熱手段
13 型押し層
13o 外周面
14 ナノ構造部
14.1〜14.n ナノ構造部区分
14e オーバラップ構造部
15 周面リング
16 型押しロール
17 保護周面
18 型押し基板
19 ナノ構造部