(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730450
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】不活性溶剤を使用してモノクロロシランおよびアンモニアからトリシリルアミンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 21/087 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
C01B21/087
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-546380(P2014-546380)
(86)(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公表番号】特表2015-502321(P2015-502321A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】EP2012071873
(87)【国際公開番号】WO2013087298
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】102011088814.4
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512266187
【氏名又は名称】エボニック インダストリーズ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Evonik Industries AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】カール−フリードリヒ ホッペ
(72)【発明者】
【氏名】ハルトヴィッヒ ラウレーダー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ゲッツ
【審査官】
西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−162543(JP,A)
【文献】
特開2000−239211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相でトリシリルアミンを製造する方法であって、
− モノクロロシラン(AまたはA’)を溶剤(H)に溶かし、反応器(1)中に液状で予め装入し、その際にこの溶剤は、モノクロロシラン、アンモニアならびにTSAに対して不活性でありかつTSAよりも高い沸点を有し、および
− 溶剤(H)に溶かしたアンモニア(B)を前記反応器中に導入し、
− 反応を反応器(1)中で実施し、
− 引続き、こうして得られた生成物混合物を反応器(1)からフィルターユニット(2)中へ導入して通過させ、固体の塩化アンモニウム(C)を前記生成物混合物から分離し、および
− ろ液をフィルターユニット(2)から蒸留塔(3)中に導入し、
− 蒸留塔(3)中で過剰のモノクロロシラン(A’)を塔頂部を介して留出させ、凝縮させ、および反応器(1)に前記溶剤の供給下に液状で供給し、ならびに
− ガス状物質(D)を蒸留塔(3)の塔頂部を介して導出させ、および
− 塔底物質(E)を蒸留塔(4)中に移送し、
− 蒸留塔(4)中で生成物のトリシリルアミン(G)を塔頂部を介して留出かつ凝縮させ、および
− 塔底物質(F)を蒸留塔(5)中に移送し、
− 蒸留塔(5)中で溶剤(H)を塔頂部を介して留出させ、凝縮させ、かつ反応器の供給原料流(A)、(A’)、(B)に溶剤として返送し、および
− より高沸点の物質を塔底部(I)を介して排出することによる、前記方法。
【請求項2】
成分(AまたはA’)を、成分(B)に対して、化学量論的にモル過剰で使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
成分(A、A’)、(B)の反応混合物ならびに溶剤(H)を有する反応器容量の99%までの反応を実施するために、反応器(1)を充填することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記反応を、反応器(1)中で、−60〜+40℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法をバッチ式で実施するかまたは連続的に実施することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
溶剤(H)は、トルエンである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも出発物質であるモノハロゲン化シラン(A、A’)およびアンモニア(B)と溶剤(H)とを液相で、トリシリルアミンを製造するための生成物混合物の形成下に反応させる装置であって、
− 成分(A)、(A’)、(B)ならびに溶剤(H)のための各供給部と反応器(1)に後接続されたフィルターユニット(2)に開口する、生成物混合物のための排出部とを備えた反応器(1)と、
− 前記フィルターユニット(2)と、この場合このフィルターユニット(2)は、一方では成分(C)のための固体排出部を装備し、かつ他方では、ユニット(2)からのろ液を、後続の蒸留ユニット中に移送するための導管を装備しており、
− 前記蒸留ユニットとを含み、この蒸留ユニットは、少なくとも3つの蒸留塔(3)、(4)および(5)から構成されており、およびこの蒸留塔(3)は、ガス状物質流(D)のための塔頂部を介した排出部と、反応器(1)中への溶剤(H)の供給下に凝縮されたモノクロロシラン(A’)のための返送導管を備えた、塔頂部を介した排出部と、トリシリルアミン(G)を取得するために、塔底物質(E)を蒸留塔(3)から後続の蒸留塔(4)中に移送するための導管と、溶剤(H)を回収しかつ塔底物質(I)を排出するために、塔底物質(F)を蒸留塔(4)から後続の蒸留塔(5)中に移送するための導管とを装備している、前記装置。
【請求項8】
溶剤(H)がトルエンである、請求項7記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相でモノクロロシランおよびアンモニアからトリシリルアミンを製造する方法に関する。さらに、本発明は、当該方法を実施しうる装置に関する。
【0002】
化学式N(SiH
3)
3を有するトリシリルアミン(本発明の範囲中で「TSA」と略記)は、融点−105.6℃および沸点+52℃を有する、易流動性で無色の自然発火性かつ易加水分解性の液体である。窒素含有ケイ素化合物、例えばトリシリルアミンは、半導体産業において重要な物質である。
【0003】
TSAを窒化ケイ素層の製造に使用することは、久しく公知である(US 4200666、JP 1986−96741)。すなわち、TSAは、殊にチップ製造の際に、窒化ケイ素層またはオキシ窒化ケイ素層のための層前駆体として使用される。
【0004】
例えば、EP 1547138には、TSAを使用する、かなり特殊な方法が開示されている。チップ製造における使用のために、トリシリルアミンを、安全に支障なくかつ不断に必要とされる、たいてい高純度の品質で製造しうることは、重要である。
【0005】
トリシリルアミンは、モノクロロシランおよびアンモニアから次の式:
3H
3SiCl+4NH
3→N(SiH
3)
3+3NH
4Cl (1)
により製造されうる。この反応の副生成物は、塩化アンモニウムである。モノクロロシランとアンモニアとの反応は、自然発生的な発熱反応である。
【0006】
Alfred StockおよびKarl Somieskiは、Ber.Dtsch.Chem.Ges.54,740頁以降,1921において、式(1)による室温でのモノクロロシランガスとアンモニアガスとの直ちの反応について説明している。この反応は、過剰のモノクロロシランを用いてトリシルアミンを定量的に形成しながら進行する。副生成物として、塩化アンモニウムが分離する。
【0007】
WO 2010/141551には、気相中でのモノクロロシランとアンモニアとの反応が記載されている。
【0008】
さらに、WO 2011/049811には、供給路、ひいては供給時間を短く維持するために、シリルアミンの製造をできるだけ用途地域の近くで実施することが教示されている。WO 2011/049811によれば、モノクロロシランおよびアンモニアからのTSA含有シリルアミンの製造は、気相でも液相でも行うことができる。
【0009】
米国特許第2011/0178322号明細書には、酸素不含の雰囲気中または僅かな酸素含量を有する雰囲気中でペルヒドロポリシラザンを熱分解することによって、トリシリルアミンを製造する方法が記載されている。
【0010】
Richard L.WellsおよびRiley Schaefferは、J.Am.Chem.Soc.88、37頁以降,1966において、モノクロロシランとアンモニアとの混合物を−196℃から室温へ加熱することによる、モノクロロシランとアンモニアとの反応を説明している。式(1)によるトリシリルアミンの形成の他に、その後続反応の進行が観察される:
3(SiH
3)
3N+nNH
3→3SiH
4+nNH
3+(SiH
3NSiH
2)
3 (2)
(SiH
3NSiH
2)
3+xNH
3→ySiH
4+zNH
3+「高分子材料」 (3)。
【0011】
すなわち、トリシリルアミンは、アンモニアの存在下でモノシラン(SiH
4)およびN,N’,N’’−トリシリルシクロトリシラザン(SiH
3NSiH
2)
3ならびに高分子材料へさらに反応しうる。後続反応(2)および(3)は、トリシリルアミンの収量に不利に影響を及ぼす。
【0012】
したがって、本発明は、使用される出発物質ができるだけ効率的に最終生成物のトリシリルアミンの製造に利用される程度に、多工程装置中で生成物流をネットワーク化する、液相でアンモニアおよびモノクロロシランからトリシリルアミンを製造する、工業的かつできるだけ経済的な解決策を提供するという課題に基づくものであった。
【0013】
この課題は、本発明によれば、特許請求の範囲における特徴に相応して解決される。すなわち、以下に、好ましい実施態様を含めて、本発明による方法ならびに当該方法が有利に実施されうる、本発明による装置について説明する。
【0014】
さて、意外なことに、有利に溶剤に溶かしたモノクロロシラン(AならびにA’)が反応器(1)中に液状で予め装入され、溶剤に溶かしたアンモニア(B)が前記反応器中に導入され、TSAおよびNH
4Clを含有する生成物混合物が得られ、この生成物混合物は固体の形で存在することが見い出された。引続き、こうして得られた生成物混合物は、反応器(1)からフィルターユニット(2)へ移送され、その際に固体の塩化アンモニウム(C)が前記生成物混合物から分離される。次に、ろ液は、蒸留塔(3)中に導かれ、この蒸留塔中で過剰のモノクロロシラン(A’)は、塔頂部を介して留出され、凝縮され、溶剤に溶かされ、かつ好ましくは、元通りに反応器(1)に液状で供給される。この溶剤は、モノクロロシラン、アンモニアならびにTSAに対して不活性であり、かつTSAよりも高い沸点を有する。とりわけ、この溶剤はトルエンである。
【0015】
さらに、モノシラン(D)は、蒸留塔(3)の塔頂部を介して導出されうる。前記塔(3)の塔底部(E)から蒸留塔(4)中に移送される場合には、当該蒸留塔中で生成物のトリシリルアミン(G)は、塔頂部を介して留出かつ凝縮される。より高沸点の物質は、塔底部(F)を介して排出され、かつ塔(5)に供給される。前記塔(5)において、前記溶剤は、塔頂部を介して留出され、凝縮され、かつ反応供給原料流(A)、(A’)、(B)へ溶剤として返送される。
【0016】
前記反応供給原料流中へのトルエン(H)の供給は、本発明による方法において、モノクロロシラン(AならびにA’)ならびにアンモニア(B)が既に供給管中で互いに反応しかつ塩化アンモニウム(C)の沈殿によって供給管を閉塞することを阻止するという利点をもつ。さらに、TSAは、トルエン(H)中で安定している。さらに、トルエン(H)は、反応溶液の希釈のため、ならびに反応エンタルピーの吸収のために使用される。さらに、塩化アンモニウム(C)は、トルエン(H)中で難溶性であり、それによって塩化アンモニウム(C)の分離は、ろ過により簡易化される。
【0017】
殊に、溶剤がモノクロロシランに対して容量的に過剰で存在する場合に、本発明による方法において、モノクロロシランおよび溶剤を混合物として使用することは、好ましい。とりわけ、液体である溶剤対モノクロロシランの容量比は、30:1〜1:1、有利に20:1〜3:1、特に有利に10:1〜3:1である。しかし、3:1〜1:1の範囲内の容量比の場合には、前記利点はより僅かになる。
【0018】
引続き、適切にはガス状であるかまたは液体の形であるが、溶剤中のアンモニア(NH
3)をモノクロロシラン含有溶液中に計量供給しかつ反応させることができ、この場合には、とりわけ、混合または攪拌される。その際に、モノクロロシランの化学量論的モル量は、少なくとも、アンモニアの化学量論的モル量の程度の高さでなければならない。特に、モノクロロシランは、アンモニアに比べて化学量論的にモル過剰で存在しており、それというのも、さもなければ、この反応は、強く無差別的になり、ポリシラザンの急増された形成を予想することができ、およびTSAは、NH
3の作用によって分解されるからである。
【0019】
本発明による方法は、非連続的と同じ意味をもつバッチ式で実施されてもよいし、連続的に実施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】特許保護が請求された方法によるTSAの連続的製造を示すプロセス系統図。
【0021】
TSAの非連続的製造の場合には、前記反応混合物は、反応器中で放圧され、こうして得られた生成物混合物は、特に少なくとも2つの蒸留工程を経て、蒸留により後処理される。前記反応器中に残留する塩化アンモニウムは、当該反応器の下方に排出されかつ廃棄されうる。
図1には、特許保護が請求された方法によるTSAの連続的製造がプロセス系統図の形で示されている。塩化アンモニウムは、連続的製造の場合に、ろ別されうる。
【0022】
前記方法が連続的に実施される場合には、さらに有利に返送法が利用されうる。
図1に示したように、MCSは、第1の塔において塔頂部で凝縮され、溶剤、特にトルエンと混合され、前記反応器中に供給される。この溶剤は、第3の塔において塔頂部で凝縮されかつ同様に前記反応器中に返送される。
【0023】
それによって、本発明による方法において、極めて純粋なTSAが得られる。
【0024】
したがって、本発明の対象は、
− モノクロロシラン(AまたはA’)を溶剤(H)に溶かし、反応器(1)中に液状で予め装入し、その際にこの溶剤は、モノクロロシラン、アンモニアならびにTSAに対して不活性でありかつTSAよりも高い沸点を有し、および
− 溶剤(H)に溶かしたアンモニア(B)を前記の予めの装入物中に導入し、
− 反応を反応器(1)中で実施し、
− 引続き、こうして得られた生成物混合物を反応器(1)からフィルターユニット(2)中へ導入して通過させ、固体の塩化アンモニウム(C)を前記生成物混合物から分離し、および
− ろ液をフィルターユニット(2)から蒸留塔(3)中に導入し、
− 蒸留塔(3)中で過剰のモノクロロシラン(A’)を塔頂部を介して留出させ、凝縮させ、および反応器(1)に溶剤の供給下に液状で供給し、ならびに
− ガス状物質(D)、例えばモノシラン、を蒸留塔(3)の塔頂部を介して導出させ、および
− 塔底物質(E)を蒸留塔(4)中に移送し、
− 蒸留塔(4)中で生成物のトリシリルアミン(G)を塔頂部を介して留出かつ凝縮させ、および
− 塔底物質(F)を蒸留塔(5)中に移送し、
− 蒸留塔(5)中で溶剤(H)を塔頂部を介して留出させ、凝縮させ、かつ反応供給原料流(A)、(A’)、(B)に溶剤として返送し、および
− より高沸点の物質を塔底部(I)を介して排出することにより、
液相でトリシリルアミンを製造する方法である。
【0025】
その際に、前記反応は、有利に保護ガス、例えば窒素および/または希ガス、有利にアルゴンの下で、および酸素および水の不在下、殊に湿分の不在下で実施され、この場合、本発明による装置は、第1の充填工程前に適切に乾燥されかつ保護ガスで洗われる。
【0026】
とりわけ、溶剤(H)が使用され、これは、TSAとの共沸混合物を形成せず、さらに有利には、トリシリルアミンよりも少なくとも10K高い沸点を有する。特に有利には、溶剤としてトルエンが使用される。
【0027】
また、ここで生じる物質と接触する、本発明により使用される装置部品は、好ましくはステンレス鋼から構成されており、かつ加熱冷却制御が可能である。
【0028】
本発明による方法の場合、成分(AまたはA’)は、成分(B)に対して、有利に化学量論的にモル過剰で使用され、その際に成分(A)、(B)の反応混合物、蒸留塔(3)から返送された(A’)ならびに溶剤としての(H)を有する反応器容量の99%まで、特に5〜95%、特に有利に20〜80%の反応を適切に実施するために、反応器(1)が充填される。そのために、好ましくは、不活性溶剤に溶かした、液状の形のモノクロロシランを予め装入しかつアンモニアをモノクロロシランと溶剤とのこの溶液中に導入し、その際にトルエンは、特に好ましい。そのうえ、アンモニアは、ガス状で供給されうるか、または溶剤に溶かして液状で供給されうる。
【0029】
さらに、本発明による方法を実施する場合、殊に前記反応器を充填する場合ならびに前記成分を反応させる場合に、前記反応器内容物を混合することは好ましい。すなわち、前記の反応混合物または生成物混合物は、反応器(1)中で、例えば攪拌されうる。
【0030】
好ましくは、前記反応混合物の反応は、反応器(1)中で、−60〜+40℃、特に−20〜+10℃、特に有利に−15〜+5℃、殊に有利に−10〜0℃の温度で実施される。この反応は、0.5〜15バールの圧力で、殊に所定の反応条件下で生じる圧力で実施されうる。
【0031】
さらに、前記溶剤に溶かした液状モノクロロシランの予めの装入物による前記反応器中での反応の場合には、本質的に、モノクロロシランと生じるトリシリルアミンと任意に溶剤中の当該副生成物との相応する混合物の蒸気/液平衡圧力が生じる。アンモニアは、蒸気/液平衡圧力に作用を及ぼさず、それというのも、アンモニアは、導入の際に、過剰で存在するモノクロロシランと直ちに反応するからである。
【0032】
さらに、本発明の対象は、本発明による方法を実施しうる装置であり、その際にこの装置は、
− 出発物質または成分(A)、(A’)、(B)ならびに溶剤としての(H)のための各供給管と反応器(1)に後接続されたフィルターユニット(2)に開口する、生成物混合物のための排出部とを備えた反応器(1)と、
− 前記フィルターユニット(2)と、この場合このフィルターユニット(2)は、一方では成分(C)のための固体排出部を装備し、かつ他方では、ユニット(2)からのろ液を、後続の蒸留ユニット中に移送するための導管を装備しており、
− 前記蒸留ユニットとを含み、この蒸留ユニットは、少なくとも3つの蒸留塔(3)、(4)および(5)から構成されており、およびこの蒸留塔(3)は、ガス状物質流(D)のための塔頂部を介した排出部と、反応器(1)中への溶剤(H)の供給下に凝縮されたモノクロロシラン(A’)のための返送導管を備えた、塔頂部を介した排出部と、トリシリルアミン(G)の取得のために、塔底物質(E)を蒸留塔(3)から後続の蒸留塔(4)中に移送するための導管と、溶剤(H)を回収しかつ塔底物質(I)を排出するために、塔底物質(F)を蒸留塔(4)から後続の蒸留塔(5)中の移送するための導管とを装備している。
【0033】
溶剤(H)は、モノクロロシラン、アンモニアならびにTSAに対して不活性であり、かつTSAよりも高い沸点を有する。とりわけ、この溶剤は、トルエンである。
【0034】
本発明による方法は、一般に本発明による装置中で、液状モノクロロシラン(AまたはA’)およびアンモニア(B)をそれぞれ溶剤、特にトルエンと一緒に反応器(1)に供給し、かつ適切に混合することにより実施され、その際にTSAおよび固体のNH
4Clを含有する生成物混合物が生じる。この生成物混合物は、引き続きフィルターユニット(2)を介して導かれ、このフィルターユニット(2)中で固体の塩化アンモニウム(C)が分離される。フィルターユニット(2)からのろ液は、蒸留塔(3)に供給され、この蒸留塔中で過剰のモノクロロシラン(A’)は、塔頂部を介して留出され、凝縮され、かつ元通りに反応器(1)に溶剤の供給下に液状で供給され、すなわち好ましくは再循環される。さらに、モノシラン(D)は、蒸留塔(3)の塔頂部を介して取り出されうる。たいてい、TSA、溶剤ならびにより高沸点の物質を含有する塔底物質(E)は、塔(4)中に移送され、この塔(4)中で極めて純粋なトリシリルアミン(G)は、塔頂部を介して留出され、凝縮され、かつ取り出されうる。より高沸点の物質(F)は、塔(5)中に移送され、この塔(5)中で溶剤(H)は、塔頂部を介して留出され、凝縮され、かつ再循環されうる。より高沸点の物質(I)は、塔(5)の塔底部を介して排出されうる。
【0035】
こうして、本発明は、トリシリルアミンを、簡単かつ経済的な方法で工業的量および極めて良好な品質で製造することを可能にする。
【符号の説明】
【0036】
(1)反応器、 (2)フィルターユニット、 (3)蒸留塔、 (4)蒸留塔、 (5)蒸留塔、 (A)モノクロロシラン、 (A’)再循環されたモノクロロシラン、 (B)アンモニア、 (C)塩化アンモニウム、 (D)(3)からの塔頂部を経てのガス状物質、とりわけモノシラン、 (E)(3)から(4)への塔底物質の移送管、 (F)(4)からの塔底物質、 (G)トリシリルアミン、 (H)溶剤、 (I)(5)からの塔底物質