特許第5730459号(P5730459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730459
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】生化学アッセイカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20150521BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   G01N33/50 Z
   G01N33/72 A
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-508848(P2015-508848)
(86)(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公表番号】特表2015-515632(P2015-515632A)
(43)【公表日】2015年5月28日
(86)【国際出願番号】KR2013002182
(87)【国際公開番号】WO2013162175
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0042774
(32)【優先日】2012年4月24日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504206469
【氏名又は名称】アイ−センス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】I−SENS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャ グンシグ
(72)【発明者】
【氏名】ナム ハクヒョン
(72)【発明者】
【氏名】シェン ドンシュアン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク カプス
(72)【発明者】
【氏名】キム ジフン
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−0798471(KR,B1)
【文献】 韓国登録特許第10−0662021(KR,B1)
【文献】 特表2010−528315(JP,A)
【文献】 特開2011−099852(JP,A)
【文献】 特開2002−310972(JP,A)
【文献】 特開2003−215086(JP,A)
【文献】 特開2005−313908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
G01N 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を供給する挿入型溶液カートリッジと、該挿入型溶液カートリッジを収納する反応カートリッジとを備える生化学アッセイカートリッジであって、
前記挿入型溶液カートリッジは、
液相生体試料を採取及び保存するキャピラリ型試料保存ユニットであって、保存した前記液相生体試料を前記反応カートリッジに供給する試料入口を有する、キャピラリ型試料保存ユニットと、
前記液相生体試料と反応することができる反応溶液を保存する反応溶液保存ユニットと、
前記反応溶液が前記反応溶液保存ユニットから漏出するのを防止するように取り付けられている反応溶液保護フィルムと、
前記反応溶液保護フィルムの端部に取り付けられている保護フィルム取外し誘導ユニットであって、該挿入型溶液カートリッジを前記反応カートリッジに挿入する際、該保護フィルム取外し誘導ユニットは、前記反応溶液保護フィルムの方に移動し、該保護フィルムを取り外す、保護フィルム取外し誘導ユニットと、
を含み、
前記反応カートリッジは、
前記挿入型溶液カートリッジが挿入され収納される収納ユニットと、
前記挿入型溶液カートリッジが前記収納ユニットにおいて該反応カートリッジに挿入されると、前記保護フィルム取外し誘導ユニットに接触し、該保護フィルム取外し誘導ユニットを前記保護フィルムの方に移動させ、ひいては該保護フィルム取外し誘導ユニットによる前記保護フィルムの取外しを誘導するラッチと、
前記保護フィルムが取り外されるときに放出された前記反応溶液を受け取るとともに、該反応溶液を前記挿入型溶液カートリッジの試料入口に接触させることにより、該反応溶液と放出された前記液相生体試料とを混合し、混合溶液を形成する混合ユニットと、
試薬を固定して、該試薬と前記混合ユニットの前記混合溶液との反応を誘導する試薬固定ユニットと、
前記反応の結果を光学的に測定する測定ユニットと、
微小流路であって、前記混合ユニットと、前記試薬固定ユニットと、前記測定ユニットとが該微小流路を通して接続される、微小流路と、を含み、
前記溶液カートリッジの1つの側部にはクランプが設けられ、
前記反応カートリッジの前記収納ユニットには固定溝が設けられ、
前記溶液カートリッジが前記反応カートリッジの前記収納ユニットに挿入される際に、前記クランプが前記固定溝に係合する、生化学アッセイカートリッジ。
【請求項2】
前記挿入型溶液カートリッジを前記反応カートリッジに挿入する間に、前記反応溶液が前記混合ユニットに移動する、請求項1に記載の生化学アッセイカートリッジ。
【請求項3】
前記挿入型溶液カートリッジを前記反応カートリッジに挿入する際、前記混合ユニットは前記試料保存ユニットを収める、請求項1に記載の生化学アッセイカートリッジ。
【請求項4】
前記反応カートリッジは複数の試薬固定ユニットを含む、請求項1に記載の生化学アッセイカートリッジ。
【請求項5】
前記反応は、前記混合溶液中の基質と前記試薬中の酵素との酵素反応、又は、前記混合溶液中の抗原と前記試薬中の抗体との抗原抗体反応である、請求項1に記載の生化学アッセイカートリッジ。
【請求項6】
前記生体試料の前記混合溶液及び化学試薬が、重力と、前記生化学アッセイカートリッジ全体の回転によって生じる遠心力とにより、前記流路に沿って測定領域又は前記試薬固定ユニットに移動する、請求項1に記載の生化学アッセイカートリッジ。
【請求項7】
前記生化学アッセイカートリッジの前記反応カートリッジは、測定後に、前記生体試料の前記混合溶液と、前記反応溶液と、化学試薬とを処理する廃液処理ユニットを更に含む、請求項1に記載の生化学アッセイカートリッジ。
【請求項8】
前記生化学アッセイカートリッジの前記反応カートリッジは、廃液の円滑な移動及び収集用の空気出口を更に有する、請求項7に記載の生化学アッセイカートリッジ。
【請求項9】
前記生化学アッセイカートリッジは、血液アッセイ用生化学アッセイカートリッジである、請求項1に記載の生化学アッセイカートリッジ。
【請求項10】
前記生化学アッセイカートリッジは、糖化ヘモグロビン定量アッセイ用生化学アッセイカートリッジである、請求項1に記載の生化学アッセイカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つ又は複数のアッセイ試薬と少量の生体試料との液相反応によって、特定の試料の量及び濃度を光学的に簡易に測定する生化学反応カートリッジ、並びに、そのアッセイ方法に関する。本開示は、特に、ポイントオブケア検査(POCT:point-of-care testing:臨床現場即時検査)装置において用いることができるアッセイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療診断分野において、血液、血清、尿、及び細胞液等の生体試料に含まれる特定の試料を検出又は定量化するために、酵素アッセイ、免疫アッセイ、化学比色アッセイ、電気化学アッセイ、蛍光標識法及び蛍光測定法、並びに、化学発光標識法及び化学発光測定法等の種々のアッセイ技法が用いられている。これらのアッセイ技法は、病院の臨床試験センターにおいて使用される自動アッセイ装置等の大型装置、又は、試験ストリップ及びカートリッジ等のプラットフォームを用いるポイントオブケア検査(POCT)装置において応用及び使用される。
【0003】
大型自動装置は、大量の試料を高速で処理することができ、測定値の信頼性が高いという利点を有するが、機械的構造が複雑であり、その装置は特別な検査室又は集中研究所においてしか使用されず、したがってその装置の適した設置場所が制限されているという不都合点がある。さらに、生体試料の前処理プロセスが要求され、種々のタイプの試薬及びセンサーを定期的に交換して使用する必要がある場合が多いことから、保守管理の実施が非常に煩雑である。
【0004】
その一方、ポイントオブケア検査装置の場合、大型装置に比較して測定値の信頼性は低いが、測定の場所が(geographically)制限されず、また測定を迅速に行うことができる。そのため、ポイントオブケア検査装置は、医療診断分野において広く用いられている。特に、種々のタイプの試薬及びセンサーがそれぞれ装備及び設置される大型装置とは異なり、カートリッジ型ポイントオブケア検査装置は、生体試料供給ユニットと、反応試薬と、検出ユニットとによって1つのカートリッジに構成され、そのため使用者の測定時の利便性が高い。さらに、測定後の生体試料の露出による汚染の可能性が低いことから、医療従事者の安全に関する利点がある。
【0005】
その一方、糖尿病の診断において、血糖測定とともに、糖化ヘモグロビンのポイントオブケア検査の需要が高まっている。糖化ヘモグロビン(HbA1c)は、グルコース分子が反応して付加物(adduct)を形成するヘモグロビンを意味する用語である。血液中に含まれる糖化ヘモグロビンの測定値は、食事及び患者の身体状態に関係なく、患者が行った血糖管理法の有効性を評価する、過去3ヶ月〜4ヶ月の患者の平均血糖値の指標として用いることができる。そのため、目下、糖化ヘモグロビンの測定が注目を浴びている。実際に、現在まで、血液中に含まれる糖化ヘモグロビンを測定する多くのカートリッジ型ポイントオブケア検査装置が研究報告及び公表されている。
【0006】
特許文献1は、血液中に存在する糖化ヘモグロビンを測定するために、第1の入口を通して試料と第1の反応物と反応させ、続いて、第2の入口を通してその試料と第2の反応物とを反応させることによって、アッセイ物質(assay material)を測定するカートリッジを開示している。しかし、この場合、測定は時間的間隔をおいて順次行われなくてはならず、反応させる試料を順次注入するように、測定者が測定ステップに介入しなくてはならない。さらに、試薬溶液が測定プロセス中に漏出する場合があることから、測定結果の信頼性及び市場性が低下するという問題があるとともに、糖化ヘモグロビンと一旦結合したビーズを濾過するプロセスが要求されることから、測定は複雑であり、所要時間が長いという不都合点がある。さらに、上述した作業は、使用者に種々のステップでの直接的な介入を要求することから、使用者が煩雑さを感じる場合があり、そのため測定時間が自然と遅延するという問題がある。
【0007】
さらに、特許文献2は、少なくとも2つのウェル領域(well spaces)と、少なくとも2つのウェル領域に位置することができるピペットとを備えるアッセイカートリッジを開示している。この場合、ピペットは基部(stylobate)ユニット及び端部ユニットを有し、端部ユニットは、液体が通過することができる膜によって閉鎖される構造部を有する。さらに、カートリッジを受けるように配置される保持器と、カートリッジ内の選択されたウェル領域にピペットを位置付けるように動作する駆動ユニットと、ピペットと結合されて、膜を通してピペット内の液体を流す(fluidize)ガス圧印加装置と、ウェル領域からの又は操作されるカートリッジのピペットからの放射線を検出する放射線検出器と、電磁放射線源とを備えるアッセイ装置が開示されている。このアッセイ装置は、定量性が高い糖化ヘモグロビン用カートリッジ型ポイントオブケア検査装置であるが、カートリッジ及びアッセイ装置の構造は、駆動システムを具現するために、上述したように複雑であり、そのためアッセイ装置の費用が増大するという不都合点を有する。
【0008】
それに応じて、本発明者らは、生体試料及び溶液試薬(solution reagent:液状試薬)を供給する挿入型溶液カートリッジと、1つ又は複数の反応ユニットを有し、1つ又は複数のアッセイ試薬を固定するとともにそのアッセイ試薬を溶液試薬と反応させる反応カートリッジと、光学的測定を行う測定窓とを備える生化学アッセイカートリッジを開発し、それにより本発明を達成している。この場合、本発明に係る生化学アッセイカートリッジは、挿入型溶液カートリッジを反応カートリッジに挿入する間に、生体試料及び溶液試薬を自動供給するユニットを備える。さらに、重力を用いてカートリッジの角度を調整することのみにより、挿入型溶液カートリッジから供給される生体試料及び溶液試薬を所与の流路に沿って各反応ユニットに連続的に流入させる、単純な駆動システムが具現されている。したがって、アッセイにおける測定者による介入プロセスを最低限に抑える生化学アッセイカートリッジが開発されており、比較的単純かつ利便的なカートリッジ型ポイントオブケア検査装置が達成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,300,142号公報
【特許文献2】米国特許第7,632,462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、生化学アッセイカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、試料を供給する挿入型溶液カートリッジと、該挿入型溶液カートリッジを収納する反応カートリッジとを備える生化学アッセイカートリッジであって、前記挿入型溶液カートリッジは、液相生体試料を採取及び保存するとともに、前記保存した生体試料を前記反応カートリッジに供給する試料入口を有する、キャピラリ型試料保存ユニットと、前記液相生体試料と反応する反応溶液を保存する反応溶液保存ユニットと、前記反応溶液が前記反応溶液保存ユニットから漏出するのを防止するように取り付けられている反応溶液保護フィルムと、前記反応溶液保護フィルムの端部に取り付けられているとともに、該挿入型溶液カートリッジを前記反応カートリッジに挿入すると、前記反応溶液保護フィルムの方に移動し、該保護フィルムを取り外す、保護フィルム取外し誘導ユニットと、を含み、前記反応カートリッジは、前記挿入型溶液カートリッジが挿入され収納される収納ユニットと、前記挿入型溶液カートリッジが前記収納ユニットにおいて該反応カートリッジに挿入されると、前記保護フィルム取外し誘導ユニットに接触し、該保護フィルム取外し誘導ユニットを前記保護フィルムの方に移動させ、ひいては該保護フィルム取外し誘導ユニットによる前記保護フィルムの取外しを誘導するラッチと、前記保護フィルムが取り外されると放出される前記反応溶液を受け取るとともに、該反応溶液を前記挿入型溶液カートリッジの試料入口に接触させると、該反応溶液と前記放出される生体試料とを混合し、混合溶液を形成する混合ユニットと、試薬を固定して、該試薬と前記混合ユニットの前記混合溶液との反応を誘導する試薬固定ユニットと、前記反応の結果を光学的に測定する測定ユニットと、微小流路であって、前記混合ユニットと、前記試薬固定ユニットと、前記測定ユニットとが該微小流路を通して接続される、微小流路と、を含む、生化学アッセイカートリッジを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る生化学アッセイカートリッジは、アッセイに供する試料を挿入型溶液カートリッジによって反応カートリッジに挿入するのと同時に、その試料が反応カートリッジ内に自動注入され、したがって、ユーザーの利便性とアッセイカートリッジの操作性とを向上させることが可能であることが有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る生化学アッセイカートリッジを示す等角斜視図である。
図2】本発明に係る反応カートリッジの下面を示す正面斜視図である。
図3】本発明に係る反応カートリッジの上面を示す正面斜視図である。
図4】本発明に係る溶液カートリッジを示す正面斜視図である。
図5】本発明に係る溶液カートリッジの側部を示す図である。
図6】反応溶液保護フィルムが取り付けられている、本発明に係る溶液カートリッジを示す図である。
図7】本発明に係る挿入型溶液カートリッジを挿入する際、反応溶液保護フィルムが自動的に除去される原理を示す図である。
図8】本発明に係る生化学アッセイカートリッジのアッセイプロセスを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明が属する分野の当業者が本発明の技術的趣旨を容易に具現することができるように本発明を詳細に記載するために、添付図面を参照しながら、本発明の最も好ましい実施形態を記載する。まず、図面の要素に参照符号を与える際、その要素が異なる図面に示されていても、同じ参照符号は図面を通して同じ要素を指すことが留意される。さらに、本開示の記載において、既知の関連構成部又はその機能の詳細な説明は、本発明の主旨を不明確にする場合、省略されている場合がある。
【0015】
本発明は、試料を供給する挿入型溶液カートリッジと、この挿入型溶液カートリッジを収納する反応カートリッジとを備える生化学アッセイカートリッジを提供する。挿入型溶液カートリッジは、液相生体試料を採取及び保存するとともに、保存した生体試料を反応カートリッジに供給する試料入口を有する、キャピラリ型試料保存ユニットと、液相生体試料と反応する反応溶液を保存する反応溶液保存ユニットと、反応溶液が反応溶液保存ユニットから漏出するのを防止するように取り付けられている反応溶液保護フィルムと、反応溶液保護フィルムの端部に取り付けられているとともに、挿入型溶液カートリッジを反応カートリッジに挿入する際、反応溶液保護フィルムの方に移動し、保護フィルムを取り外す、保護フィルム取外し誘導ユニットとを含む。反応カートリッジは、挿入型溶液カートリッジが挿入され収納される収納ユニットと、挿入型溶液カートリッジが収納ユニットにおいて反応カートリッジに挿入されると、保護フィルム取外し誘導ユニットに接触し、保護フィルム取外し誘導ユニットを保護フィルムの方に移動させ、ひいては保護フィルム取外し誘導ユニットによる保護フィルムの取外しを誘導するラッチと、保護フィルムが取り外されると放出される反応溶液を受け取るとともに、反応溶液を挿入型溶液カートリッジの試料入口に接触させることにより、反応溶液と放出される生体試料とを混合し、混合溶液を形成する混合ユニットと、試薬を固定して、試薬と混合ユニットの混合溶液との反応を誘導する試薬固定ユニットと、反応の結果を光学的に測定する測定ユニットと、微小流路であって、混合ユニットと、試薬固定ユニットと、測定ユニットとがこの微小流路を通して接続される、微小流路とを含む。
【0016】
本発明に係る生化学アッセイカートリッジは、図面によって詳細に記載される。
【0017】
図1図5を参照すると、本発明に係る生化学アッセイカートリッジは、試料を供給する挿入型溶液カートリッジ10と、この挿入型溶液カートリッジが挿入及び収納される反応カートリッジ20とを備える。この場合、挿入型溶液カートリッジ10は、アッセイに供する生体試料を所望の量で採取するとともにその生体試料を保存するキャピラリ型試料保存ユニット14を含み、試料保存ユニットに保存されている生体試料は、試料保存ユニット14に設けられている試料入口13を通して反応カートリッジ20に注入される。この場合、生体試料の量は、試料保存ユニット14のキャピラリの内径及び高さに応じる内部容積を調整することによって調整することができ、試料保存ユニットの構造は、その構造が生体試料を放出するのが容易でさえあれば、キャピラリ構造に限定されない。
【0018】
さらに、挿入型溶液カートリッジ10は、生体試料に反応することができる反応溶液を保存する反応溶液保存ユニット16を備える。挿入型溶液カートリッジ10を反応カートリッジ20に挿入するまで反応溶液が放出されるのを防止するために、反応溶液保存ユニット16には、反応溶液保存ユニットをシールするように反応溶液保護フィルム17が取り付けられている。
【0019】
さらに、挿入型溶液カートリッジ10に設けられている保護フィルム取外し誘導ユニット15が、反応溶液保護フィルム17の端部に付着している。これは、挿入型溶液カートリッジ10が反応カートリッジ20に挿入されると、保護フィルムの自動的な取外しを誘導するように構成されている。したがって、挿入型溶液カートリッジ10を反応カートリッジ20に挿入する間に保護フィルム取外し誘導ユニット15の保護フィルム17が取り外れ、そのため、使用者による反応溶液の別途注入プロセスを省略することができる。
【0020】
その一方、反応カートリッジ20は、溶液カートリッジ10から放出された反応溶液と生体試料とを混合する混合ユニット24を含む。さらに、反応カートリッジ20は、混合ユニット24において混合された反応溶液及び生体試料と反応する化学試薬が固定され、酵素反応及び抗原/抗体反応を誘導する、1つ又は複数の試薬固定ユニット23を含む。生体試料は、試薬固定ユニット23において行われた反応の結果を測定する測定領域26において、紫外可視分光法(UV/VIS)の光学アッセイによるアッセイに供することができる。
【0021】
さらに、反応カートリッジ20は、測定領域26において測定された廃液を収集する廃液処理ユニット27を更に含んでもよい。一種の医療廃棄物としての廃液は、廃液処理ユニット27によって収集及び別途処理することができ、廃液処理ユニットによる廃液の収集は、廃液を吸収するように、脱脂綿、吸収フィルター、及び強力な吸収率を有するポリマー製の吸収素材を廃液処理ユニット27に付加することによって行うことができる。
【0022】
さらに、反応カートリッジ20は空気出口28を更に含んでもよい。空気出口28は、廃液の円滑な移動及び吸収素材の円滑な吸収用の構造部である。空気出口28によって、廃液をより円滑に廃液処理ユニット27に移動させることができ、空気出口28によって、より円滑に吸収を行って廃液を収集することができる。
【0023】
この場合、混合ユニット24において混合された反応溶液及び生体試料は、混合ユニット24、1つ又は複数の試薬固定ユニット23、測定領域26、及び廃液処理ユニット27間の流路25を通して移動させることができる。流路25の構造は、反応カートリッジ20が傾いたとき、重力により反応溶液及び生体試料を移動させるように設計されてさえいれば、限定されない。
【0024】
図6及び図7を参照すると、溶液カートリッジ10の反応溶液保存ユニット16は、取り付けられている反応溶液保護フィルム17によってシールされ、突出構造部を有して反応溶液保存ユニット16の下端部に設けられている保護フィルム取外し誘導ユニット15が、反応溶液保存ユニット16に取り付けられている保護フィルムの端部に付着している。したがって、溶液カートリッジ10が反応カートリッジ20に挿入されると、保護フィルム取外し誘導ユニット15が、反応カートリッジ20に設けられているラッチ29に接触し、ラッチ29により溶液カートリッジ10の挿入方向の反対方向に引かれる(bent)。さらに、溶液カートリッジ10の挿入を進行する際に更なる力が印加される場合、保護フィルム取外し誘導ユニット15は破壊されて、溶液カートリッジ10から分離する。すなわち、ラッチ29により挿入を妨げられている保護フィルム取外し誘導ユニット15は、挿入方向の反対方向に引かれ、保護フィルム取外し誘導ユニットは、更なる挿入に向けて印加される力により破壊され、取り付けられているフィルムとともに挿入方向の反対方向に移動する。上述したように、溶液カートリッジ10と保護フィルム取外し誘導ユニット15との分離により、フィルム取外し取付け誘導ユニット15及び反応溶液保存ユニット16に取り付けられている保護フィルムは自動的に取り外れ、反応溶液保存ユニット16に保存されている反応溶液は、重力により放出されて、反応カートリッジ20の混合ユニット24に自然に移動する。
【0025】
この連続プロセスは、挿入型溶液カートリッジを反応カートリッジに挿入する間に行われて、最終的に、挿入型溶液カートリッジを反応カートリッジに挿入する間に、反応溶液が混合ユニット24に移動する。
【0026】
上述したように、溶液カートリッジ10を反応カートリッジ20に挿入することによって反応溶液保存ユニット16から自動的に放出された反応溶液は、溶液カートリッジ10の試料保存ユニット14に接触し、キャピラリ内の生体試料は、接触により試料入口を通して反応カートリッジ20の混合ユニット24に放出され、反応溶液と混合される。すなわち、本発明に係る生化学アッセイカートリッジの場合、測定者が試料の注入プロセス及び反応溶液の注入プロセスに介入しなくても、生体試料と反応溶液とが自動的に注入及び混合され、そのため、使用者の利便性及び操作性が優れていることを理解することができる。
【0027】
その一方、溶液カートリッジ10と反応カートリッジ20とは、それぞれ、溶液カートリッジ把柄部11と反応カートリッジ把柄部21とを更に有することができる。把柄部は、溶液カートリッジ10及び反応カートリッジ20が容易に運搬及び使用されるように構成され、その構造は特に限定されない。
【0028】
さらに、溶液カートリッジ10が反応カートリッジ20に挿入されている際に溶液カートリッジ10を固定するために、溶液カートリッジの1つの側部にクランプ12を設けることができ、反応カートリッジの収納ユニットに固定溝22を設けることができる。クランプ12は、固定溝22に係合して、挿入されている溶液カートリッジ10を反応カートリッジ10に固定することができ、本発明の生化学アッセイカートリッジは回転しても、アッセイの実施による溶液カートリッジの移動又は分離を防止することができる。
【0029】
図8を参照すると、本発明に係る生化学アッセイカートリッジによるアッセイは以下のとおりである。
【0030】
溶液カートリッジ10が反応カートリッジ20に挿入されて、反応溶液が混合ユニット24に自動的に放出される。試料保存ユニット14は混合ユニット24に収まり、放出された反応溶液は試料保存ユニット14の試料入口13に接触し、試料保存ユニット内の生体試料に混合される。混合された反応溶液及び生体試料は、反応溶液及び生体試料と反応することが可能であるように試薬固定ユニット23に固定されている試薬と反応する。この反応は、例えば、互いに混合された反応溶液及び生体試料を含む混合溶液中の基質と、試薬中の酵素との酵素反応、又は、互いに混合された反応溶液及び生体試料を含む混合溶液中の抗原と、試薬中の抗体との抗原抗体反応とすることができる。しかし、この反応は上記反応に限定されず、光学アッセイに要求される、適した反応を誘導してアッセイを行うことができる。
【0031】
アッセイの対象及びアッセイの方法に応じて、1つ又は複数の試薬固定ユニット23は複数設けることができ、試薬固定ユニット23において起こる反応の結果は、測定領域26における光学アッセイに供することができる。
【0032】
その一方、続いて図8に示されているように、混合ユニット24において混合された反応溶液及び生体試料は、重力により、本発明の生化学アッセイカートリッジの回転に応じ、流路に沿って測定領域及び試薬固定ユニットまで移動する。このように、反応溶液及び生体試料の反応及び測定が行われる。この場合、流路の構造及び図8に示されているアッセイシーケンスは、生体試料のアッセイの実施の一例として示されており、本発明に係る生化学アッセイカートリッジは上記アッセイシーケンスに限定されない。
【0033】
本発明に係る生化学アッセイカートリッジは、種々の生体試料のアッセイに、好ましくは血液アッセイに、より好ましくは糖化ヘモグロビン定量アッセイに用いることができる。
【0034】
例えば、本発明に係る生化学アッセイカートリッジを用いた、酵素法による糖化ヘモグロビン定量アッセイを具体的に記載する。
【0035】
糖化ヘモグロビン定量アッセイに用いる酵素法は、主に、4つの化学反応によって構成される。
【0036】
第1の反応は血液試料の溶血反応である。これは、血液の赤血球が反応溶液の使用により破壊され、ヘモグロビンが解離する反応を意味する。この場合、溶血反応に用いられる反応溶液は、pHの調整及び界面活性剤の使用等の種々の方法によって製造することができる。
【0037】
第2の反応は、糖化ヘモグロビン分子がタンパク質分解酵素の使用により切断される反応である。プロテアーゼA、プロテアーゼN、ディスパーゼ、プロナーゼ、中性プロテアーゼ、Glu−C、パパイン、トリプシン、及びペプシン等の種々の酵素を用いることができる。
【0038】
第3の反応は、タンパク質分解酵素による切断を用いて生成された糖化ペプチド又は糖化アミノ酸分子が、FPOX(フルクトシルペプチドオキシダーゼ)と呼ばれるオキシダーゼの使用により酸化される反応である。この反応により、過酸化水素を生成することができる。
【0039】
第4の反応は呈色反応である。これは、第3の反応により生成された過酸化水素(H)がペルオキシダーゼ(POD)の使用により酸化され、酸化によって放出される電子により、発色試薬及び基質を減退させ、退色を行う化学反応を意味する。
【0040】
酵素法により糖化ヘモグロビン定量アッセイを行うために、本発明に係る生化学アッセイカートリッジにおいて上記4つの反応が行われ、糖化ヘモグロビン定量アッセイは、一例として、図1図8に示されているカートリッジの構造及び動作方法によって詳細に記載される。
【0041】
アッセイを行うために、挿入型溶液カートリッジ10の試料保存ユニット14に血液を採取して保存する。血液の溶血を行うことができる界面活性剤を反応溶液として反応溶液保存ユニット16に保存する。挿入型溶液カートリッジ10を反応カートリッジ20に挿入し、突出している保護フィルム取外し誘導ユニット15を自動的に反応カートリッジ内のラッチに接触させる。保護フィルム取外し誘導ユニットが、連続する力の印加によって破壊され、溶液カートリッジから取り外れる。更に挿入が進行すると、反応溶液保存ユニットに取り付けられている保護フィルムも取り外れ、反応溶液が放出し、反応溶液が混合ユニットに移動する。放出された反応溶液と血液試料とが混合し、溶血反応を行う。溶血反応が行われた後、タンパク質分解酵素の1つのタイプの試薬、すなわちFPOX及びPODが固定されている第1の化学試薬固定ユニット23−Aにおいて、固定されている試薬が血液試料により溶解し、これによって酵素反応を誘導することができる。
【0042】
溶血反応は混合ユニット24において行う。第1の化学試薬固定ユニット23−Aによる酵素反応の終結により得られた反応溶液が、重力により、カートリッジの動作原理を示している図8のようなカートリッジの回転の結果、反応カートリッジ内の流路25を通して測定領域26に移動する。測定領域に移動した反応溶液の総溶血ヘモグロビン濃度を、紫外可視分光光度計により、535nmにおいて呈される吸光度によって測定する。
【0043】
総ヘモグロビンの測定の終了により得られた反応溶液は、カートリッジの回転によって第2の化学試薬固定ユニット23−Bに移動する。第2の化学試薬固定ユニット23−Bは対面構造を有する。この対面構造では、第1の化学試薬固定ユニット23−Aに固定される酵素ではない、互いに混合される2つの残存酵素を含む試薬と、発色試薬とが固定され、2つの酵素を有する試薬と発色試薬とが互いに直面する。
【0044】
第2の化学試薬固定ユニット23−Bに移動した反応溶液は酵素反応及び呈色反応の双方に供され、酵素反応及び発色反応の終了により得られた反応溶液は、カートリッジの回転によって測定領域26に戻る。続いて、呈色反応によって呈色した糖化ヘモグロビンの濃度を、紫外可視分光光度計により、およそ660nmにおいて呈される吸光度によって測定する。
【0045】
アッセイの終了後、廃液は、カートリッジの回転によって廃液処理ユニット27に移動し、廃液は廃液処理ユニット27内の吸収素材によって吸収されて収集される。
【0046】
上述したように、糖化ヘモグロビン定量アッセイを行うためには、分光測定を2回行う必要がある。なぜなら、糖化ヘモグロビンとは、総ヘモグロビン濃度に対する糖化ヘモグロビンの比率を意味するからである。すなわち、測定者による血液試料の前処理プロセス及びマーカー物質の付着プロセス等の多くのステップを有するアッセイプロセスを行う必要があるという点に煩雑さがある。しかし、本発明に係る生化学アッセイカートリッジを用いることにより糖化ヘモグロビンのアッセイを行う場合、図8に示されているように、1つのカートリッジにおいて、カートリッジの回転により反応溶液を移動させることによって、酵素反応を行うことができるとともに総ヘモグロビン及び糖化ヘモグロビンの絶対濃度を測定することができる。特に、挿入型溶液カートリッジ10を反応カートリッジ20に挿入する間に、反応溶液(糖化ヘモグロビンアッセイ時は溶血試薬)を、反応カートリッジ内の混合ユニットに自動的に放出することができる。そのため、アッセイプロセスにおけるアッセイを行っている人物の直接的な介入を最低限に抑えることができ、アッセイ時間遅延又はアッセイ精度低下の問題を防止することができる。
【0047】
本発明は、例示として記載してきたが、用いられている用語は、限定ではなく、説明的性質にあることが意図されていることが理解される。本発明の多くの変更形態及び変形形態が上記教示を踏まえて可能である。したがって、添付特許請求の範囲の範囲内で、本発明を、具体的に記載したものとは別様に実施することができることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8