【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主チャネルにおける平均速度は、1mm/s〜50mm/sの範囲にあり、前記再循環ゾーンにおける速度は、5μm/s〜1000μm/sの範囲にある、請求項1に記載の方法。
前記柱の列は、前記少なくとも1つのフォーカシング装置の下流、かつ前記フォーカシング装置と前記再循環チャンバとの間に配置されている、請求項10に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
障害物の周期的アレイの下流での受動的な流体力学的選別のための方法が、すでに知られており、スタッドの各列において、装置の形状によって決定される臨界サイズよりも大きいすべての粒子が同じ方向に偏向させられている。したがって、より大きな粒子の経路が、より小さな粒子の経路に対して傾けられることによって、細胞を、それらのサイズの関数として分離することが可能である。
【0003】
そのような技法が、特には次の出願に記載されている。WO2004/037374(Huang)、US2007−026381(Huang)、またはUS2007−059782(Kapur)。
【0004】
別の受動的な選別法は、2つの層流、すなわち粒子を含んでいるバッファおよび粒子を含んでいないフォーカシングバッファを提供し、これらのバッファが狭いチャネルへと送り込まれ、その後により広いチャネルへと進入する。この方法においては、フォーカシングが、粒子をチャネルの対向する壁に対して位置させることを可能にする。フォーカシングは、粒子を含まない流体を側方から注入することによって実行され、幾何学的な絞りによって促進される。壁に対する粒子の位置を、粒子のサイズの関数として異ならせることができ、断面の拡大が、選別の実行を可能にする。すなわち、最小の粒子が、それらの慣性中心を、フォーカシングが実行されるチャネルの壁に近い距離x1(極小)に有する一方で、より大きい粒子は、それらの慣性中心を、x1よりも大きい距離x2に有する。
【0005】
絞り領域からより大きな断面の領域への通過時に、流線の間の位置の差が強調され、粒子は、それらの慣性中心が位置している流線に従うため、チャネルの拡大によって、小さな粒子と大きな粒子との間の位置の相違が強調される。
【0006】
流れの絞りは、狭いチャネルに達するときに、粒子にせん断応力を作用させるという欠点を呈しており、とりわけ、その形状ゆえに、粒子サンプルの希釈を生じさせ、使用されている技法が、これについて何ら救済をもたらしていないという欠点を呈している。そのような技法は、特にはMasumi Yamadaらによる「Pinched flow fractionation:continuous size separation of particles utilizing a laminar flow profile in a pinched microchannel」という文献(Analytical Chemistry,Vol.78,No.18,2004年9月15日,5465〜5471頁)に記載されている。
【0007】
他の公知の技法は、粒子を含んでいる流体の流線を、吸引によって低圧ゾーンを局所的に生成することによって偏向させる能動的な選別法である。粒子の経路は、粒子へと加わる力の全体的な釣り合いに依存して決まる。すなわち、粒子の重量、密度、体積(または、直径)、および速度の関数として、ならびに吸引によってもたらされる圧力場の関数として、粒子が選別されるか否かが決定される。そのような技法が、Barton SmithおよびZachary Humesの名義の米国出願第2007/221550号(WO 2006/102258)に提案されている。
【0008】
さらに別の公知の技法は、流体力学的フィルタリングであり、特にはMasumi YamadaおよびMinori Sekiによる論文「Hydrodynamic filtration for on−chip particle concentration and classification utilizing microfluidics」,The Royal Society of Chemistry,2005,Lab Chip 2005,5,1233〜1239頁に記載されている。この方法は、第1に粒子を濃縮および整列させ、第2にそれらを選択するために、横チャネル内に小流量の流れを実現している。壁に沿った粒子の濃度ゆえ、低流量かつきわめて正確な幾何学的寸法の横チャネルが、多数必要である。
【0009】
小さな蛍光粒子(マイクロメートル程度のサイズ)を捕捉するために、微細渦を利用することも知られている。この技法は、「Dynamic formation of ring−shape pattern of colloidal particles in microfluidic system」,Applied physics Letters 2003,83(6),1145〜1147頁においてD. Limらによって説明されている。この方法は高い速度範囲を必要とする。
【0010】
粒子を遠心分離再循環によってそれらの密度に応じて分離する方法が、異なる密度を有する2種類のビーズ(1.05グラム/平方センチメートル(g/cm
3)の密度を有するポリスチレンビーズおよび1.8g/cm
3〜2.0g/cm
3の範囲の密度のシリカビーズ)の分離について、Nature 2003,425の38頁以降に発表された「High radial acceleration in microvortices」において、Shelbyらによって説明されている。遠心分離再循環が、渦の中心に低密度のビーズを集中させ、より密度の大きいビーズをチャンバの壁に向かって集中させるように機能する。この方法は、粒子間の密度の大きな相違とともに、高速(20メートル/秒(m/s)程度)を必要とする。最後に、この方法は分離された粒子の回収が可能にされていない。
【0011】
したがって、この方法は、粒子の選別または濃縮に役立たず、再循環ゾーンに高いレベルのせん断(10
5パスカル(Pa)程度)を伴う大きな遠心力(10
4メートル毎秒毎秒(m/s
2)程度の遠心加速度)を加えることによって、粒子を分離させるように機能するにすぎない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
したがって、本発明は、主チャネル内の流体に混入したサブミリメートル粒子を集中させ、選別し、取り出すことを可能にする。
【0034】
また、本発明は、そのような粒子を、取り出しの前に濃縮することを可能にする。
【0035】
選別は、実行すべき選別の関数として寸法付けられた開口を介して主チャネルに連通しているチャネルまたはチャンバの助けによって行われる。
【0036】
以下の説明は、種々の選別及び取り出し装置を、3つの主たる実施形態にて示している。
【0037】
・主チャネルに連通した再循環チャンバによる選別および濃縮。粒子が順次に取り出される(
図3a〜
図3c、
図4a〜
図4d、
図4g、
図5、
図6、および
図8)。
【0038】
・固定または可変の漏れ流量を有する再循環チャンバによる選別および濃縮。順次の粒子の取り出しを伴う。漏れ流量および主チャネルに連通する開口のサイズが、選別される粒子のサイズを決定する(
図4f〜
図12)。
【0039】
・中央チャネルに連通しているいわゆる「横」チャネルによる選別。横チャネルが、固定または可変の取り出し流量で動作する連続的な取り出し手段を有している。取り出し流量および横チャネルの入り口径が、選別される粒子のサイズを決定する。この実施形態は、粒子の濃縮を可能にすることができず、粒子の選別および取り出しのみを可能にする(
図9〜
図11)。および
・中央チャネルに連通しているいわゆる「横」チャネルによる選別。横チャネルが、固定または可変の取り出し流量で動作する順次の取り出し手段27を、漏れポンプ手段25とともに有している。取り出し流量および漏れ流量、ならびに横チャネルの入り口径が、選別される粒子のサイズを決定する。この実施形態は、粒子の濃縮を可能にすることができず、粒子の選別および取り出しのみを可能にする。
【0040】
図1(α=90°)においては、選別対象の粒子10の溶液が、実質的に一定の断面の主チャネル1に沿って矢印Fの方向に平均速度V
0で流れる。主チャネル1は、好ましくは、幅w
0および深さpの正方形または矩形の断面である。
【0041】
フォーカシング溶液が、補助チャネル2内に矢印F’の方向で注入される。補助チャネル2は、好ましくは矢印Fの方向に対して垂直である矢印F’’の方向に横注入を行うために、1つ以上の横チャネル3によって開いている。主チャネル1の流れの方向への入射角αを、5°〜90°の範囲にあるように選択することも可能である。
【0042】
この横注入の効果は、上流領域4において主チャネル1に無作為に分布している粒子10を、フォーカシングゾーン30において壁7へと偏向させて、主チャネルの下流領域において、横注入が行われる壁6とは反対側の領域へと集中させることにある。
【0043】
粒子の壁への集中を、他の様式で実行することも可能であり、特には
図2aに示すように、注入および流体の取り出しの両方に依存する原理に基づくフォーカシングシステムを、実施することが可能である。このシステムにおいては、流体取り出しゾーン20において、流体取り出しチャネル21が、流体取り出しチャネル22へと開いており、いかなる粒子もこれらの横チャネルへと進入することがないように十分に小さい。
【0044】
このフォーカシングシステムについて、
図1に示したシステムと比べた場合の主たる利点は、注入によるフォーカシングに起因する希釈効果に対抗するために必要となる流体の取り出し流量を可能にする点にある。さらには、チャネル21が注入ゾーン30に面し、さらには/あるいは注入ゾーン30のすぐ下流に位置することで、壁への粒子の集中を向上させることができる一方で、注入フォーカシングシステムへの進入において流体に必要とされる速度を抑えることができる。このように、2つの要素の組み合わせが、フォーカシングゾーンにおいて粒子に加わる希釈およびせん断力の両方を小さくするように機能する。
【0045】
図2aの例では、注入によって生じる希釈効果を抑制または除去するために、取り出し流量Q
take−off(矢印F’’’)を、注入流量Q
injectionと同じにすることが可能である。V
injectionおよびV
take−offが、注入および取り出しの流体のそれぞれの平均速度を表わしている。
【0046】
図2bが、
図2aの細部の拡大であり、選別対象の粒子を含んでいる流体の流線が、どのように壁へと上手く集中させられるのかを示している。
【0047】
フォーカシングバッファとして機能する注入流体は、選別対象の粒子を含んでいる流体と同じであってよい。この条件は、決して必須ではなく、2つの異なるバッファ、好ましくは、混和性であるバッファを使用することも、完全に可能である。
【0048】
このフォーカシング段階の後で、粒子は、層流の様相で流体内を流れ、直径に応じて選別される。
【0049】
・より小さな粒子は、壁にきわめて近い流線に位置し、したがって再循環ゾーンに向かって偏向させることができる。
【0050】
・より大きな粒子は、重心を壁からさらに遠くに有しており、結果として、より小さな粒子がたどる流線とは異なる流線に従い、連続的な層流の流体の流れをたどる。
【0051】
その結果、小さな粒子および大きな粒子が、流線の位置に応じて分布し、流線への粒子の配置は、それらの慣性中心に依存して決まり、したがって層流である流れにおけるそれらのサイズに依存して決まる。
【0052】
効果的な選別を得るために、小さな粒子および大きな粒子の流線の間の位置の相違を強調することが適切である。
【0053】
従来技術において、主チャネルの急激な拡大、あるいは流体の局所的な吸い出しまたは送り込みによって、位置の相違を強調することが知られており、流体の除去の可能性は、出願WO2006/102258号に記載のとおりである。
【0054】
この出願に記載されている選別手段は、設定可能ではない。加えて、濃縮手段との組み合わせも、記載されていない。
【0055】
本発明の独自の特徴の1つは、フォーカシング段階の下流に1つ以上の再循環チャンバを配置することにあり、これらのチャンバが、粒子にとって粒子のサイズの関数としてアクセス可能であることで、粒子をそれらのサイズによって選別することができ、選別した粒子を取り出すことができる一方で、おそらくはそれらを濃縮することも可能である。粒子を、速度(延いては、せん断力)が小さい少なくとも1つの再循環ゾーンに蓄積させることによって、濃縮することが可能である。
【0056】
Shelbyらの論文(上記参照)が、粒子が再循環チャンバにおける遠心加速度(10
4m/s
2程度である)によって10
5Pa程度のせん断応力において濃縮されることを示している。このような大きさは、ランゲルハンス島などといった壊れやすい粒子または粒子集団の操作に適合しない。本発明の装置は、粒子の分離および濃縮のために遠心力によって動作することが決してないため、5Pa程度のせん断レートで、再循環ゾーンを実現することを可能にし、したがって濃縮を達成することを可能にする。例として、遠心加速度が、本発明においては10
−5m/s
2程度である。したがって、本発明を、ランゲルハンス島などといった壊れやすい粒子または粒子集団の操作および濃縮のために、好都合に利用することができる。
【0057】
技術水準に示されているとおり、希釈は、大部分の既存の流体力学選別技法の大きな欠点である。この問題を解決するために、再循環ゾーンの濃縮力が利用される。
図3a〜
図3cに示されるとおり、そのような再循環チャンバ40の分離力は、主チャネルと再循環ゾーンとの間に存在する大きな速度差に由来し、この差は、チャンバの形状に大きく依存する。
【0058】
主チャネル1において、速度Vで移動しており、距離Lだけ離れており、再循環チャンバ40においては、速度vであって、距離lだけ離れている2つの粒子101および102を考える。
【0063】
したがって、両方の粒子が空洞にあるとき、
【0065】
v<Vかつl<Lであるため、空洞の効果は、粒子を互いに近付くように移動させることであり、これが粒子の濃縮に相当する。
【0066】
再循環ゾーン40を生じさせるために、さまざまな形状を使用することができるが、とりわけ、
・例えばひし形(「ダイアモンド形」)(
図4a)などの多角形のチャンバ、あるいは準矩形または矩形、特には(
図4cおよび
図4dに示した形式の)台形のチャンバ、ならびに
・円形、特には円柱形(
図4b)のチャンバ
を挙げることができる。
【0067】
図4bにおいて、参照番号27が、後述される粒子取り出しチャネルに相当する。
【0068】
壊れやすい粒子集団について、モデル化が、使用できる再循環ゾーンを得るために必要な速度が、較正された開口を介して主チャネルに連通する円形または多角形のチャンバにおいて、きわめて低いことを示している。したがって、この種の形状(
図4aまたは
図4bを参照)が、ランゲルハンス島などの凝集力に乏しい壊れやすい粒子集団の選別、濃縮、および取り出しが所望される場合に、推奨される。
【0069】
各チャンバにおいて、再循環ゾーン41を、特には
・チャンバの形状(空洞への開口、深さ、など)、
・主チャネルにおける最大速度、および
・主チャネルの形状(特には、深さ)
に依存して決まる限界のレイノルズ数を超えて得ることができる。
【0071】
のように表わされ、ここで
V
1は、流体の最大速度(単位は、メートル/秒(m/s))であり、
Lは、考慮対象の形状の特徴寸法(単位は、メートル(m))であり、
νは、流体の動粘性係数(単位は、平方メートル/秒(m
2/s))である。
【0072】
Gが、チャンバの深さとチャンバの開口の長さD
hとの間の比として定義される。
図4eが、円形、特には、円柱形またはひし形(「ダイアモンド形」)の0.5ミリメートル(mm)(小さなチャンバ)〜3mm(「大寸法」と呼ばれるチャンバ)の範囲のさまざまなD
hの値について、水または水性バッファにおけるレイノルズ数Reの値の例を、比Gの関数として示している。
【0073】
図4cが、粒子を壁へと集中させるためのシステムを、再循環チャンバ40内の特定の粒子のための濃縮ゾーン41aおよび41bに組み合わせる本発明の原理を示しており、ここでは、再循環チャンバ40が、主チャネル1の両側に広がる準矩形のチャンバである。特定の流線に沿って流れる特定の粒子のみが、再循環ゾーン41aに加わり、したがって濃縮されることを、理解できるであろう。壁7の最も近くの流線に沿って移動する粒子(最も直径の小さい粒子に相当)が存在する。ゾーン41aのみが、選別された粒子を含んでおり、すなわち本方法によって利用される。
【0074】
図4dが、選別マイクロシステムの原理を示している。最小の粒子110が、壁にきわめて近い流線をたどることによって、再循環ゾーン41aに向かって移動する。それらは、とりわけストークスの流体力学的抗力、慣性、および重力など、さまざまな力によって再循環ゾーン41aの中心に向かって引き寄せられる。
【0075】
より大きな粒子111、すなわち壁から遠く離れている粒子は、自身の経路をそのまま進み続け、循環チャンバ40の下流から出る。
【0076】
図4fおよび
図4gが、1mm/sの平均進入速度(フォーカシング速度1mm/s)を有し、主チャネルに与えられる平均速度が2mm/sであり、空洞の中央において5μm/s程度の速度である直径5mmの円形の再循環ゾーン(
図4f)、ならびに1mm/sの進入速度および50mm/sの空洞入り口オリフィスにおける速度(平均フォーカシング速度:50mm/s)を有する矩形の再循環ゾーン(
図4g)の内外の流線を、さらに詳しく示している。したがって、再循環ゾーン41について計算される速度は、数十〜数百μm/s程度であり、最大のせん断速度は、円形のチャンバにおいて2.5mm/s程度であり、矩形のチャンバにおいて60mm/s程度である。
図4fに示した再循環チャンバが、160μL/hの漏れ流量を有する漏れチャネル25を有していることに気付くべきである。
【0077】
空洞の開口の特性が、フォーカシングシステムの反対側の壁7に最も近い流線の偏向を可能にし、これらの流線が、上流で実行されたフォーカシングの結果としての特定の粒子径に対応していることに、気付くべきである。
【0078】
より正確には、取り出そうとする粒子の最大径がDcである場合、壁7に対して距離Dc/2に位置している流線(Dc/2よりも小さい半径またはDc/2に近い半径の粒子に対応)を捕捉するように、空洞の開口の特性を定めることが可能である。これらの特性を、例えば当業者によく知られているComsolソフトウェアなど、適切なソフトウェアを使用して実行されるモデル化によって定めることができる。モデルのパラメータは、チャンバおよび主チャネルの寸法、流体の性質(特には、動粘性係数)、ならびに種々のチャネルの入り口および出口における流量または圧力である。
【0079】
そのようなソフトウェアを、例えば再循環ゾーンによって得られる濃縮力を最適にするという目的のために、再循環ゾーンの流線をモデル化して、上述のパラメータを調節できるようにするためにも、使用することができる。
【0080】
図6が、1mmの深さを有しており、フォーカシング段階を準矩形のチャンバに先立って備えているマイクロシステムにおける流線のモデルを示している。この図は、主チャネル1における特徴速度(フォーカシング後のV
max=50mm/s)および再循環41のレベル(再循環における位置に依存して0.5mm/s〜1mm/s程度のV
max)を比較することによって、濃縮力を説明している。このようにして、上述のように、フォーカシングの下流における再循環の有無をモデル化することができる。
【0081】
種々の空洞40を次々に縦列配置することによって、異なるサイズの粒子をそれぞれのチャンバにおいて選別し、捕捉し、濃縮することができる。縦列に接続される空洞のサイズおよび数が大である特定の状況においては、粒子が実際に壁に対して位置して濃縮空洞へと進入できるように保証するために、2つの空洞の間にフォーカシングシステムを追加することが、適切かも知れない。
【0082】
図5が、縦列に配置された3つのひし形の空洞40
1、40
2、および40
3の平面図である。これらの空洞の中央に示されている正方形は、後述される粒子取り出しチャネル27に相当する。例として、主チャネルにおいて、最大速度は1.9mm/sであり、それぞれの空洞40
1〜40
3においては、70μm/s程度(5μm/s〜70μm/sにわたる値)である。主チャネル1と空洞40
1〜40
3との間のきわめて明らかな速度差が、粒子の濃縮を可能にする。
【0083】
このような状況のもとで、空洞の開口によって実行されるとおりのサイズによる粒子の選択が、昇順にて生じ、最も小さな粒子が空洞40
1によって集められ、それよりもわずかに大きい粒子が、空洞40
2によって集められ、以下同様である。
粒子取り出しシステム
本発明は、再循環チャンバ40に蓄積した粒子を回収することができる取り出しシステムをさらに含んでいる。
【0084】
この取り出しは、流体バルブ26によって制御される取り出しチャネル27から順次に行われる。バルブが閉じられているとき(
図7a)、粒子が、再循環が生じているチャンバ40の再循環ゾーン41aおよび41bに蓄積される。粒子が濃縮されると、バルブ26が開かれ(
図7b)、流線がバルブ26の開放の結果として偏向させられ、選別されて濃縮された粒子をチャネル27に回収することができる。
【0085】
図示のとおり、例えば温度制御のもとで開閉する流体バルブ26を使用することが可能であり、空気が室温に保たれているとき、バルブ26が開き、循環41を解消して流れ42を形成することによって取り出しが実行される。チャンバ内に収容されている空気の温度を(ヒータ抵抗Rによって)高めることで、チャンバ内に収容されている気体の圧力が上昇する。その結果、気体28がチャネル25へと進入し、流体の流れを阻止する。
【0086】
図8に示した実施形態は、粒子を濃縮するために、閉じた空洞40、例えば、円形の空洞の中央に取り出しチャネル27(
図4bも参照のこと)を備えている。取り出しチャネル27の流量は少ない(数μL/分〜数μL/時)。
柱を有する受動選別/濃縮カップリング
別の実施形態において、本発明は、やはり純粋に受動的であるカップリングによって再循環ゾーンへと連結された選別システムを実現する。受動的とは、粒子の再循環ゾーンへの進入が、装置の形状のみによって引き起こされるという意味である。
【0087】
この構成は、ランゲルハンス島など、細胞の大集団において好ましい。
【0088】
この装置の動作は、2つの段階を含んでいる。最初に、粒子が、上述のとおり再循環チャンバとは反対側の壁7に集中させられる。次いで、選別が、主チャネル1の軸に対して所定の角度βを形成している柱50の列60によって実行される。直径Φの柱50の幾何学的特徴は、臨界サイズDcよりも小さい粒子が、柱50の列によって構成される障害物を通過するため、おおむね偏向されることがない一方で、臨界サイズDcよりも大きい粒子が、柱の各列によって再循環チャンバ40に向かって常に同じ方向に偏向させられるような幾何学的特徴である。そのような状況のもとで、再循環チャンバが、好ましくは壁7とは反対側の壁に位置し、すなわちフォーカシング装置と同じ側に位置することに、気付くべきである。この装置は、降順のサイズによる選別の実行を可能にする。
【0089】
この装置の柱50の列60は、例えばScience 2004,304,987〜990頁に発表された「Continuous particle separation through deterministic lateral displacement」においてHuangによって説明されているように、粒子をそれらのサイズに従って偏向させることによって、サイズによる選別の実行を可能にするが、相違点は、柱のアレイの代わりに、柱の列が1列だけ使用されている点にあり、これは、前もって粒子を壁7に沿って集中させることによって可能にされる。これは、選択されたサイズの粒子が再循環ゾーンへと進入することを保証できるようにする。柱の立体障害効果が、柱によって粒子が流線を変えて、再循環ゾーンへの進入を強いられるような効果である。
【0090】
装置が、拡散、局在化、および放散(DLD)タイプの装置を使用してサイズによる選別の実行を可能にするそのような柱の列を備える場合、好ましくはフォーカシングの下流に配置することが可能である。しかしながら、上流のフォーカシング段階を備えないそのような柱の列を想像することも可能である。そのような状況下では、列が、フォーカシングの機能およびサイズ選別の機能の両方を実行する。
【0091】
寸法決定は、基本的には、流線の形態学に基づいて行われる。
【0092】
粒子の速度が遅い(すなわち、粒子の慣性を無視できる)場合、小さなサイズの粒子(直径がDc未満)は、例えばDc未満の直径の粒子51など、自身の重心を通過する流線に従う(
図13)。
【0093】
対照的に、Dc以上の直径の粒子は、立体障害ゆえに柱の列によって偏向させられる。すなわち、柱の列が、Dcよりも大きい直径の粒子52について示されているような方法で、流線を偏向させる(
図14)。
【0094】
要約すると、臨界サイズDcよりも小さい粒子が、チャネル1内の自身の経路をたどり続ける一方で、その他の粒子は、流れの方向Fに対して角度βに傾けられた軸を有している柱50の列によって、再循環ゾーンへと押し込まれ、再循環ゾーンに蓄積する(
図15参照)。降順のサイズでの選別を実行できるようにするために、柱の列60を、2つの再循環チャンバ40(中間にフォーカシング装置を有していても、あるいは有していなくてもよい)の間に配置してもよいことに、気付くべきである。最大の粒子が最も偏向させられやすいため、柱から下流に位置する空洞が、偏向させられた粒子、すなわち最大の粒子を、選択的に収集する。
【0095】
このシステムの寸法決定は、
図16の図によって与えられる。
【0096】
柱50(停止点を参照)上で終息している流線が、粒子を案内する臨界線であって、
・粒子を主チャネルの出口に向かって案内し(すなわち、粒子が偏向させられることなく柱50の列60を通過する)、あるいは
・再循環チャンバ40に向かって案内する(粒子が、それぞれの柱50において立体障害ゆえに偏向させられる)。
【0097】
これらの臨界線は、チャネルの軸に厳密には平行ではなく、柱から数百マイクロメートルの距離にあると推定され、臨界線は、直径Φの柱の中心を通過する水平線から距離Φ/2に位置する。これは、柱のペアの間にDc/2程度の横方向の間隔を与える。
【0098】
2つの柱50の中心間の軸方向の間隔(e+Φ)は、ピタゴラスの定理を適用することによって与えられ、
(L
0 +F )
2 = (e +F)
2 + Dc
2/4
である。
【0099】
柱のペアの間の距離L
0は、フィルタを構成することがないように十分に大きくなければならないため、さらなる条件
L
0 3 a Dc(ここで、a ≫ 1.25 to 1.50である)
が存在する。
【0100】
柱50の間の軸方向の間隔eは、
cos b = ( e+F) / ( L
0+F)
のように導出され、Φ、e、およびL
0が与えられると、βが決定される。
【0101】
図17が、柱50の列60を備える選別及び再循環装置の全体図であり、柱50の列60の位置で主チャネル1’が拡大されている。
【0102】
図17において、再循環ゾーンの上流の主チャネルが非対称であり、そのような形状が、それぞれの再循環ゾーンへの入り口における力線の曲率半径を調節できるようにしていることを、見て取ることができる。すなわち、曲率半径を、力線上を移動している粒子が、曲率ゆえに慣性によって力線から抽出されるように、構成することができる(
図17参照)。このような非対称性は、濃縮の対象である粒子が大きなサイズの粒子である場合に、特に有用である。これは、結果として、再循環ゾーン内に漏れの流れがもたらされることを防止する。寸法入りの
図18aに、そのような非対称が示されており、主チャネルが、再循環チャンバの上流に凹所が形成されるように、徐々に広げられている。
図18aにおいて、主チャネルが、再循環チャンバの入り口の反対側でも広げられている一方で、
図18bは、再循環チャンバの上流で主チャネルを広げるための別の様式を示しており、ただ1つの凹所を再循環ケースの入り口のすぐ近くに有している。
【0103】
図17、
図18a、および
図18bにおいては、拡散、局在化、および放散(DLD)タイプの装置が、選択されたサイズの粒子が再循環ゾーンへと進入することを保証するために、再循環ゾーンの上流に位置している。そのような装置は、たいへん興味深いものであるが、必須ではない。
【0104】
図19に、考えられる拡散、局在化、および放散(DLD)タイプに関する詳細が提示されている。この特定の事例は、主として直径が200μmの粒子に適合する。
【0105】
図17、
図18a、および
図18bには示されていないが、すでに説明したようなフォーカシング装置を、流れの上流に配置してもよい。
【0106】
図15および
図17に示した再循環チャンバ40は、粒子を濃縮後に取り出すことができるよう、(例えば、7aまたは7b同様)取り出しチャネル27を呈してもよい。
選別及び濃縮システムのモデル化の例
実施例1:柱の列を備えている選別、濃縮、および取り出しのための装置
図17の選別装置は、200マイクロメートル(μm)よりも小さなサイズの粒子が、全体として偏向させられることなく柱の列を通過する一方で、200μmを超えるサイズの粒子が、それぞれの柱において再循環チャンバに向かって偏向させられるように、設計されている。
【0107】
この提案のシステムの特性を、以下の寸法規則から決定した。
【0108】
・臨界選別直径:Dc=200μm
・柱の直径:Φ=150μm
・柱の間の横間隔:Dc/2=100μm
・軸方向の間隔e+Φ=440μm、L
0=300μm
別の実施形態において、本発明は、選別システムを、能動的なカップリングを備える再循環ゾーンに組み合わせて備えている。能動的とは、再循環ゾーンへの粒子の進入が、漏れポンプに連結された装置の形状によって引き起こされるという意味である。
【0109】
漏れポンプと称される流体ポンプ装置を、再循環チャンバのうちの1つ以上に設けることも可能である。下記の実施例2が、容易に調節可能であり、したがって本発明の流体力学的特性を調節可能にできるという、漏れポンプの主たる利点を説明している。
実施例2:横チャネル式の選別及び取り出し装置
図9が、粒子が好ましくは主チャネルに対して垂直に配置される横チャネル28によって選別される例を示している。この例では、外部の連続的な取り出し手段が、前記横チャネルを介して取り出し流量Q
take−offを適用することを可能にしている。
【0110】
粒子を横チャネル28へと進入させるために、粒子の半径が、空洞へと進入する流れの幅w
1よりも小さいか、あるいはそのような幅w
1に近い必要がある(
図9参照)。この幅は、それを超えると流線が開口へと進入できない距離w
1に相当する。壁7から距離w
1を超えて位置する流線に沿って移動する慣性中心を有する粒子は、横チャネル28に向かって偏向させられることがなく、したがって主チャネルに残る。対照的に、慣性中心が壁7に距離w
1よりも近く位置している流線に沿って移動している粒子は、開口に向かって偏向させられる。したがって、収集がサイズに関して選択的であると言うことができる。したがって、空洞へと進入できる粒子の最大サイズは、2w
1に等しい。
【0111】
この検討に基づき、Purdayの放物線状の速度プロファイルを積分することが、選別される粒子のサイズを連続的な取り出し流量Q
take−offに関連付けるように機能し、ここで、Vtake−offが、取り出される流体の速度を指し、
であって、w
0は主チャネルの幅であり、w
1は選別される粒子の半径であり、bはチャネルの深さであり、Q
0は主チャネル1の流量であって、rは、w
0≦bの場合には比α=w
0/bに依存し、b≦w
0の場合にはα=b/w
0に依存する指数である。
【0112】
これは、α≦1/3において、r=2を与え、α>1/3において、r=2+0.3(α−1/3)を与える。
【0113】
連続的な取り出し流量を調節することによって、異なるサイズの粒子を空洞に回収して濃縮することができ、空洞へと進入できる粒子の最大サイズは、2w
1である。この例は、選別された粒子を横チャネルに収集できることを示しており、収集は、サイズに関して選択的である。この選択的な収集を、幾何学的なパラメータ(w
0、w
1)ならびに連続的な取り出しの流量Q
take−off、流体の取り出しの速度V
take−off、および主チャネル1の流量Q
0などといった流体力学的なパラメータを調節することによって実行できることを、容易に理解できるであろう。
装置の設定変更可能な性質の説明
選別される粒子のサイズは、連続的な取り出しの流量および形状に依存して決まる。
【0114】
以下の寸法(
図10)
・主チャネル:1mmの深さで1mmの幅(w
0=1mm)、および
・横チャネル:1mmの深さで1mmの幅
において、所望の選別サイズが200μm、すなわちw
1=100μmである場合、これらの数字を式(1)へと代入して、
【0115】
がもたらされ、ここで、V
0は、主チャネル1の流体の平均速度である。したがって、V
0=1mm/sである場合、V
take−off=30μm/sである。
【0116】
数値シミュレーションが、それぞれ主チャネル1の縁7から50μmおよび75μmに位置する流線45および46が、完全に横チャネル29へと進入することを示しており、壁7から100μmに位置する流線47が、進入の限界にあることを示している(
図10参照)。最後に、壁7から100μmよりも遠く位置しているすべての流線(例えば、壁7から150μmに位置している線48)は、横チャネル29に進入しない。
【0117】
結果として、同じ形状において、漏れ流の流量を変化させることによって、臨界選別サイズを300μmにすることが可能であり、それらの数字を式(1)に代入することで、
【0119】
これは、主チャネルの入り口における1mm/sの速度を維持する場合、63μm/sという取り出し流量を必要とする。このとき、
図11のシミュレーションに示されているように、壁7から50μmおよび100μmにそれぞれ位置している流線45’および46’が、完全に横チャネル29へと進入する一方で、例えば壁7から200μmに位置している流線48’など、壁7から150μmを超えて位置している流線は、横チャネル29へと進入することができず、壁7から150μmの距離に位置している流線47’が、進入の限界にある。
【0120】
上記の例では、流線が、チャネル1に対して垂直なチャネル29であって、連続的な取り出し流量を可能にする手段が適用されるチャネル29によって案内されることで、偏向させられる流線に位置する粒子、すなわち壁7から特定の距離に位置する粒子を、選択することができる。
実施例3:再循環チャンバによる選別、濃縮、および取り出し
同じ原理を、再循環空洞など、外部の漏れポンプ手段25を好都合に設けることができる他の形状にも当てはめることができ、そのような漏れポンプ手段25が、調節可能な漏れ流量を生成できることで、装置に設定変更可能という性質を付与することができる。漏れポンプ手段は必須ではないが、他のパラメータ(寸法、流体の粘度、主たる流量)が可変でなくても本発明の流体力学的特性を調節できるようにする追加のパラメータを構成する。好ましくは、漏れポンプは、粒子が進入するには狭すぎる漏れポンプチャネルを通って実行され、そのようなチャネルが、再循環チャンバの粒子濃縮ゾーンの外側に位置する部位へと開いている。そのような漏れチャネル25を、フォーカシング段階30の下流に位置する任意の再循環チャンバ40に組み合わせてもよい。柱50の列を、前記再循環チャンバの開口よりも前に配置することができる。
【0121】
したがって、そのような漏れチャネル25を、サイズに従って選別された粒子を濃縮するために、再循環ゾーン41へと連結することが可能である。
【0122】
以下の例(
図12)が、そのような連結を示している。装置が、200μm(w
1=100μm)よりも小さい直径の粒子が、再循環ゾーン41へと進入して濃縮されるように寸法付けられている。
【0123】
装置は、フォーカシング/選別ゾーン、および5mmの直径を有する円形の空洞にて現れる再循環内の濃縮ゾーンを有している。以下に提示される実施例の幾何学的特徴は、以下のように与えられる。
【0124】
・主チャネル1:幅1mm(w
0=1mm)および深さ1mm(p=1mm)
・フォーカシングチャネル3:幅500μmおよび深さ1mm
・漏れポンプチャネル25:1mmの深さにわたり幅100μm
・5mmの直径を有する空洞40
以下、すなわち入り口における1mm/sという平均速度V
0、1mm/sのフォーカシング速度V
focusing、および大気圧に等しい出口圧力が与えられる場合、式(1)を適用することによって、漏れ速度が450μm/sでなければならないことが示される。
Q
focusing = V
focusing S= (1×10
-3)(500×10
-6)(1×10
-3) = 0.5×10
-9 m
3/s
Q
main = V
main S= (1×10
-3)(1×10
-3)(1×10
-3) = 1×10
-9m
3/s
Q
0 = 1.5×10
-9m
3/s
ここで、S=w
0×pであり、m
3/sは、立方メートル/秒を表わしている。
【0125】
したがって、
Q
leak = 0.03´Q
0 = 0.045´10
-9 = V
leak ´ S
であり、ここから
【0127】
以上の数値モデルは、
・フォーカシング後に壁7から50μmに位置する流線が、実際に再循環空洞40へと進入する一方で、例えば壁7から150μmに位置する流線は、再循環ゾーンから締め出されること、および
・漏れポンプ25によって再循環ゾーンが消されることがない(
図4f参照)こと
を示している。
【0128】
図12において、順次の取り出しチャネル27が再循環ゾーン41の真ん中に存在することを、見て取ることができる。
【0129】
本発明の設定変更可能という性質を説明するために、直径1.5mmの円形の空洞40(
図4bまたは
図8)、500μm×500μmの寸法を有する矩形の主チャネル1、および300μm×300μmの寸法を有する矩形の漏れポンプチャネル25に関して、Q
0=15μL/分における一例を提示する。これは、
a)V
max=1.8mm/s(主チャネルにおける最大速度)およびV’
max=50μm/s(空洞における最大速度)において、Q
leak=26μL/hで臨界サイズ2w
1=100μmを与え、
b)V
max=1.8mm/sおよびV’
max=14μm/sにおいて、Q
leak=6.9μL/hで2w
1=50μmを与え、
c)V
max=1.8mm/sおよびV’
max=14μm/sにおいて、Q
leak=0.3μL/hで2w
1=10μmを与える。
【0130】
空洞40における粒子の最大速度は、それぞれ主チャネルにおける最大速度よりも36倍、100倍、および129倍小さい。このような速度が、ランゲルハンス島などといった壊れやすい細胞の凝集力に乏しい集団の濃縮に適することを、理解できるであろう。
【0131】
臨界サイズの考え方は、臨界サイズよりも小さい粒子が空洞へと進入して、そこで濃縮される一方で、臨界サイズよりも大きい粒子は、空洞へと進入することなく主チャネルに沿い続け、あるいは空洞から出ることを意味する。
【0132】
上述の例は、所与の入り口流量Q
0および所与の形状において、漏れ流量Q
leakを変化させることによって、臨界サイズを10倍も(10μm〜100μmの範囲にわたって)変化させることができることを示している。
【0133】
このように、本発明の装置は、所与の幾何学的特徴においてユーザがさまざまな臨界サイズで選別を実行することができるため、使用においてより柔軟である。これは、横チャネルの流体の流通抵抗を調節する必要があるM.YamadaおよびM.Seki(Lab Chip 2005、1233〜1235頁において発表された上記論文)による技法や、臨界サイズの設定を可能にしていない公知の流れ絞り技法と比べたときに、有利である。
【0134】
本発明は、粒子の選別および濃縮に、それらが生物学的な粒子であるか否かにかかわらず使用可能である。すなわち、本発明のマイクロシステムの寸法を適宜に選択することによって、例えば
・ポリマー粒子、ナノ粒子、金属粒子、あるいは
・動物または植物細胞、細胞小器官、微生物、たんぱく質、DNA分子、など
に使用することが可能である。
【0135】
特には、選別/濃縮装置を、ランゲルハンス島、20μm〜500μmのサイズの壊れやすい細胞集団を選別するのに適用することが可能である。
【0136】
島の単分散の集団を得ることは、例えば薬物動態学的研究を実行するときや、島を揃いのサイズのカプセルに封入するために、好都合でありうる。
【0137】
細胞集団をサイズによって選別するための装置は、それ自身が、本発明の進歩的な態様である。なぜならば、それらのサイズおよび壊れやすさを前提として、従来技術において、そのような集団の選別を可能にするためにただ1つの装置を使用することが可能であるが、そのような装置は、いかなる状況であっても、決してマイクロ流体装置ではないからである。
【0138】
マイクロシステムは、生物学的粒子の選別および濃縮に使用することができるようにするために、殺菌することが可能である。
【0139】
入り口において、流体の移動を、圧力または流量にて制御することが可能である。
【0140】
この装置は、主として水相において機能するように意図されており、あるいは流体としての視点から見て、水のように挙動する培地において機能するように意図されている。
【0141】
しかしながら、他の種類の液体またはポリマー溶液においても、該当の液体の密度および粘度を考慮に入れるように該当の液体再循環チャンバの形状を構成したうえで、使用することが可能である。
【0142】
さらに、この選別装置は、好都合には殺菌可能であってよい。