特許第5730496号(P5730496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5730496熱処理装置、半導体デバイスの製造方法および基板処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730496
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】熱処理装置、半導体デバイスの製造方法および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20150521BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20150521BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20150521BHJP
   C23C 16/46 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/42
   C23C16/455
   C23C16/46
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-91999(P2010-91999)
(22)【出願日】2010年4月13日
(65)【公開番号】特開2010-283336(P2010-283336A)
(43)【公開日】2010年12月16日
【審査請求日】2013年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2009-111716(P2009-111716)
(32)【優先日】2009年5月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】福田 正直
(72)【発明者】
【氏名】白子 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明博
(72)【発明者】
【氏名】盛満 和広
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 定夫
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−209198(JP,A)
【文献】 特開平03−209817(JP,A)
【文献】 特開2007−180132(JP,A)
【文献】 特開2008−034780(JP,A)
【文献】 特開平09−330884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/31
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室を形成する反応管と、
前記処理室の外側に設けられ、磁場を発生させる磁場発生部と、
前記処理室内で基板を支持し、前記処理室内に搬入される基板支持具と、
前記処理室内に設けられ、前記基板支持具の少なくとも一部を覆い、前記磁場発生部が発生させた磁場によって発熱する発熱体と、
前記発熱体の内側に設けられ、ガスを供給するガス供給系と、
前記処理室内に供給されたガスを排気するガス排気口と、
前記反応管と前記発熱体との間に設けられる第1の断熱壁と、
前記発熱体の内側における前記基板支持具が搬入される空間の周囲であって、前記ガス供給系と前記ガス排気口が配設された箇所を除いた空間に設けられているガス整流部と、
を有する熱処理装置。
【請求項2】
前記発熱体は、下端が開口し天井を備えた円筒形状を有し、
前記第1の断熱壁は、下端が開口し天井を備えた円筒形状を有し、前記反応管と同心円状に配設されている請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記ガス供給系と前記ガス排気口とは、互いに対向する位置に配設されており、
前記ガス整流部は、前記基板支持具と前記発熱体との間に形成される空間を狭めるように前記基板の外周に沿って構成される請求項1または2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記ガス供給系は、シリコン含有ガスを供給する第1の供給部と、炭素含有ガスを供給する第2の供給部とを、それぞれ少なくとも1つ有する請求項1乃至3のいずれか1つに記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記第1の断熱壁との間に前記磁場発生部が設けられるように前記磁場発生部の外側に設けられた第2の断熱壁をさらに有する請求項1乃至4のいずれか1つに記載の熱処理装置。
【請求項6】
基板を支持する基板支持具を、反応管によって形成されていて、基板を処理する処理室内へ搬入する工程と、
前記処理室の外側に設けられた磁場発生部が発生させた磁場によって前記処理室内に設けられた発熱体を発熱させ、前記発熱体の内側に設けられたガス供給系により前記処理室内へとガスを供給し、ガス排気口により前記処理室内からガスを排気し、前記発熱体の内側における前記基板支持具が搬入される空間の周囲であって、前記ガス供給系と前記ガス排気口が配設された箇所を除いた空間に設けられているガス整流部によってガスを整流し、前記反応管と前記発熱体との間に設けられた第1の断熱壁によって、前記加熱された発熱体からの熱を断熱して前記基板を処理する工程と、
を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
基板を支持する基板支持具を、反応管によって形成されていて、基板を処理する処理室内へ搬入する工程と、
前記処理室の外側に設けられた磁場発生部が発生させた磁場によって前記処理室内に設けられた発熱体を発熱させ、前記発熱体の内側に設けられたガス供給系により前記処理室内へとガスを供給し、ガス排気口により前記処理室内からガスを排気し、前記発熱体の内側における前記基板支持具が搬入される空間の周囲であって、前記ガス供給系と前記ガス排気口が配設された箇所を除いた空間に設けられているガス整流部によってガスを整流し、前記反応管と前記発熱体との間に設けられた第1の断熱壁によって前記加熱された発熱体からの熱を断熱し、前記基板を処理する工程と、
を有する基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置、半導体デバイスの製造方法および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のSiC(シリコンカーバイド)成膜装置は、複数枚の基板を板状サセプタに平面状に配置して1500〜1800℃に加熱し、成膜に用いる原料ガスを一箇所から反応室内に供給する。
【0003】
特許文献1では、サセプタに対向する対向面への原料ガスに起因する堆積物の付着及び、原料ガス対流が発生することによるエピタキシャル成長の不安定化、これらの課題を解決するために、サセプタの基板を保持する面を下方に向くように配置した真空成膜装置及び薄膜形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−196807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術においては、多数枚の基板を処理する場合、板状サセプタを大きくする必要があり、その結果、反応室の床面積が増大するという問題があった。
【0006】
また、原料ガスが一箇所から供給される構成となっているため、反応室中のガス濃度分布が均一でなく、その結果、ウエハに成膜される膜の厚さが不均一になるという問題があった。
【0007】
本発明は、多数枚の基板に、均一な膜厚で成膜することができる熱処理装置、半導体デバイスの製造方法および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は、基板を処理する処理室を形成する反応管と、前記処理室の外側に設けられ、磁場を発生させる磁場発生部と、前記処理室内で基板を支持し、前記処理室内に搬入される基板支持具と、前記処理室内に設けられ、前記基板支持具の少なくとも一部を覆い、前記磁場発生部が発生させた磁場によって発熱する発熱体と、前記発熱体の内側に設けられ、ガスを供給するガス供給系と、前記処理室内に供給されたガスを排気するガス排気口と、前記反応管と前記発熱体との間に設けられる第1の断熱壁と、前記発熱体の内側における前記基板支持具が搬入される空間の周囲であって、前記ガス供給系と前記ガス排気口が配設された箇所を除いた空間に設けられているガス整流部と、
熱処理装置である。
【0009】
請求項2に係る本発明は、前記発熱体は、下端が開口し天井を備えた円筒形状を有し、前記第1の断熱壁は、下端が開口し天井を備えた円筒形状を有し、前記反応管と同心円状に配設されている請求項1に記載の熱処理装置である。
【0010】
請求項3に係る本発明は、前記ガス供給系と前記ガス排気口とは、互いに対向する位置に配設されており、前記ガス整流部は、前記基板支持具と前記発熱体との間に形成される空間を狭めるように前記基板の外周に沿って構成される請求項1または2に記載の熱処理装置である。
【0011】
請求項4に係る本発明は、前記ガス供給系は、シリコン含有ガスを供給する第1の供給部と、炭素含有ガスを供給する第2の供給部とを、それぞれ少なくとも1つ有する請求項1乃至3のいずれか1つに記載の熱処理装置である。
【0012】
請求項5に係る本発明は、前記第1の断熱壁との間に前記磁場発生部が設けられるように前記磁場発生部の外側に設けられた第2の断熱壁をさらに有する請求項1乃至4のいずれか1つに記載の熱処理装置である。
請求項6に係る本発明は、基板を支持する基板支持具を、反応管によって形成されていて、基板を処理する処理室内へ搬入する工程と、前記処理室の外側に設けられた磁場発生部が発生させた磁場によって前記処理室内に設けられた発熱体を発熱させ、前記発熱体の内側に設けられたガス供給系により前記処理室内へとガスを供給し、ガス排気口により前記処理室内からガスを排気し、前記発熱体の内側における前記基板支持具が搬入される空間の周囲であって、前記ガス供給系と前記ガス排気口が配設された箇所を除いた空間に設けられているガス整流部によってガスを整流し、前記反応管と前記発熱体との間に設けられた第1の断熱壁によって、前記加熱された発熱体からの熱を断熱して前記基板を処理する工程と、を有する半導体デバイスの製造方法である。
請求項7に係る本発明は、基板を支持する基板支持具を、反応管によって形成されていて、基板を処理する処理室内へ搬入する工程と、前記処理室の外側に設けられた磁場発生部が発生させた磁場によって前記処理室内に設けられた発熱体を発熱させ、前記発熱体の内側に設けられたガス供給系により前記処理室内へとガスを供給し、ガス排気口により前記処理室内からガスを排気し、前記発熱体の内側における前記基板支持具が搬入される空間の周囲であって、前記ガス供給系と前記ガス排気口が配設された箇所を除いた空間に設けられているガス整流部によってガスを整流し、前記反応管と前記発熱体との間に設けられた第1の断熱壁によって前記加熱された発熱体からの熱を断熱し、前記基板を処理する工程と、を有する基板処理方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、多数枚の基板に、均一な膜厚で成膜することができる熱処理装置、半導体デバイスの製造方法および基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態が適用される熱処理装置を示す斜透視図である。
図2】本発明の一実施形態に用いられる処理炉を示す側面断面図である。
図3】本発明の一実施形態に用いられる処理炉を示す上面断面図である。
図4】本発明の一実施形態に用いられる処理炉及びその周辺構造を示す概略図である。
図5】本発明の一実施形態が適用される熱処理装置のコントローラを示すブロック図である。
図6】本発明の第2実施形態に用いられる処理炉の側面断面図である。
図7】本発明の第3実施形態に用いられる処理炉の側面断面図である。
図8】本発明の第4実施形態に用いられる処理炉の上面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる熱処理装置10の斜視図を示す。この熱処理装置10は、バッチ式縦型熱処理装置であり、主要部が配置される筺体12を有する。熱処理装置10には、例えば、SiCからなる基板としてのウエハ14を収納する基板収容器としてのフープ(以下、ポッドという)16が、ウエハキャリアとして使用される。この筺体12の正面側には、ポッドステージ18が配置されており、このポッドステージ18にポッド16が搬送される。ポッド16には、例えば25枚のウエハ14が収納され、蓋が閉じられた状態でポッドステージ18にセットされる。
【0016】
筺体12内の正面側であって、ポッドステージ18に対向する位置には、ポッド搬送装置20が配置されている。また、このポッド搬送装置20の近傍には、ポッド棚22、ポッドオープナ24及び基板枚数検知器26が配置されている。ポッド棚22はポッドオープナ24の上方に配置され、ポッド16を複数個載置した状態で保持するように構成されている。基板枚数検知器26はポッドオープナ24に隣接して配置される。ポッド搬送装置20は、ポッドステージ18とポッド棚22とポッドオープナ24との間でポッド16を搬送する。ポッドオープナ24は、ポッド16の蓋を開けるものであり、基板枚数検知器26は蓋が開けられたポッド16内のウエハ14の枚数を検知する。
【0017】
筺体12内には、基板移載機28、基板支持具としてのボート30が配置されている。基板移載機28は、アーム(ツイーザ)32を有し、図示しない駆動手段により上下回転動作が可能な構造となっている。アーム32は、例えば5枚のウエハ14を取り出すことができ、このアーム32を動かすことにより、ポッドオープナ24の位置に置かれたポッド16及びボート30間にて、ウエハ14を搬送する。
【0018】
ボート30は、例えばグラファイトや炭化珪素等の耐熱性(1500〜1800℃)材料で構成され、複数枚のウエハ14を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて縦方向に多段に保持するように構成されている。なお、ボート30の下部には、例えばグラファイトや炭化珪素等の耐熱性材料で構成される円板形状をした断熱部材としてのボート断熱部34が配置されており、後述するサセプタ48からの熱が処理炉40の下方側に伝わりにくくなるよう構成されている(図2参照)。
【0019】
筺体12内の背面側上部には処理炉40が配置されている。この処理炉40内に、複数枚のウエハ14を装填したボート30が搬入され熱処理が行われる。
【0020】
次に、処理炉40について説明する。
図2は、処理炉40の側面断面図を示す。なお、図2においては、ガス供給ノズル60、ガス供給口70、ガス排気ノズル80及びガス排気口90を代表例として、それぞれが1つずつ図示されている。
図3は、処理炉40の上面断面図を示す。図3においては、5つのガス供給ノズル60a−e、1つのガス供給口70、1つのガス排気ノズル80及び、2つのガス排気口90a、90bが設けられた実施形態について図示されている。
【0021】
処理炉40は、円筒形状の反応管としてのアウターチューブ42を備える。アウターチューブ42は、石英(SiO)またはSiC等の耐熱材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウターチューブ42の内側の筒中空部には、処理室44が形成されており、ウエハ14をボート30によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0022】
アウターチューブ42の下方には、このアウターチューブ42と同心円状にマニホールド46が配設されている。マニホールド46は、例えば、ステンレス等で構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。このマニホールド46はアウターチューブ42を支持するように設けられている。なお、マニホールド46とアウターチューブ42との間には、シール部材としてのOリングが設けられている。このマニホールド46が図示しない保持体に支持されることにより、アウターチューブ42は垂直に据え付けられた状態となっている。このアウターチューブ42とマニホールド46により反応容器が形成される。
【0023】
処理炉40は、例えばグラファイトで構成される発熱体としてのサセプタ48及び磁場発生部としての磁気コイル50を備える。サセプタ48は、処理室44内に配設されており、このサセプタ48は、アウターチューブ42の外側に設けられた磁気コイル50により発生される磁場によって発熱される構成となっている。サセプタ48が発熱することにより、処理室44内が加熱される。
【0024】
サセプタ48の近傍には、処理室44内の温度を検出する温度検出体としての図示しない温度センサが設けられている。磁気コイル50及び温度センサには、電気的に温度制御部52が接続されており、温度センサにより検出された温度情報に基づき磁気コイル50への通電具合を調節することにより処理室44内の温度が所望の温度分布となるよう所望のタイミングにて制御するように構成されている(図5参照)。
【0025】
サセプタ48とアウターチューブ42の間には、このサセプタ48の熱がアウターチューブ42あるいはこのアウターチューブ42の外側へ伝達するのを抑制する例えばフェルト状カーボンで構成される内側断熱壁54が設けられている。また、磁気コイル50の外側には、処理室44内の熱が外側に伝達するのを抑制するための、例えば水冷構造である外側断熱壁56が、処理室44を囲むようにして設けられている。
さらに、外側断熱壁56の外側には、磁気コイル50により発生された磁場が外側に漏れるのを防止する磁場シール58が設けられている。
【0026】
マニホールド46には、ガス供給ノズル60及びガス供給口70それぞれにガスを供給するガス供給管62、72が貫通するようにして設けられている。ガス供給ノズル60は、例えば、筒状に形成されている。ガス供給管62、72は、バルブ64、74とガス流量制御装置としてのMFC(mass flow controller)66、76を介して、図示しないガス供給源に、それぞれ接続されている。バルブ64、74及び、MFC66、76には、ガス流量制御部78が電気的に接続されており、供給するガスの流量が所望の流量となるよう、所望のタイミングにて制御するように構成されている(図5参照)。
ガス供給ノズル60には、ボート30に支持されたウエハ毎にガスを供給するための供給孔68が設けられている。なお、供給孔68は、ウエハ数枚ごとに設けるようにすることもできる。
【0027】
また、マニホールド46には、ガス排気ノズル80及びガス排気口90それぞれに接続されたガス排気管82、92が貫通するようにして設けられている。ガス排気ノズル80は、例えば、筒状に形成されている。ガス排気管82、92の下流側には、図示しない圧力検出器としての圧力センサ及び圧力調整器としてのAPCバルブ84、94を介して真空ポンプ等の真空排気装置86が接続されている。圧力センサ及びAPCバルブ84、94には、圧力制御部98が電気的に接続されており、この圧力制御部98は、圧力センサにより検出された圧力に基づいてAPCバルブ84、94の開度を調節することにより、処理室44内の圧力が所望の圧力となるよう、所望のタイミングにて制御するように構成されている(図5参照)。
ガス排気ノズル80には、ボート30に支持されたウエハ毎にガスを排気するための排気孔88が設けられている。なお、排気孔88は、ウエハ数枚ごとに設けるようにすることもできる。
【0028】
ガス供給ノズル60及びガス排気ノズル80の下方部は、石英で構成されている。このような構成とすることで、本構成を有さない場合と比較して、成膜処理に伴う熱(例えば1500〜1700℃)がマニホールド46側へ伝導するのを抑制することができる。
石英の熱伝導率(1〜2W/(m・℃))は、例えばカーボンの熱伝導率(100〜200W/(m・℃))等より低く、石英は、断熱性に優れる。
また、石英は、例えばカーボン等と比較して、加工性(溶接、接着等)やシール性等が良好である。このため、ガス供給ノズル60及びガス排気ノズル80の下方部を石英で構成した場合、本構成を有さない場合と比較して、例えば「L字型」の加工が容易となり、例えばマニホールド46等の他の構成要素とのシール性が向上する。
このように、成膜処理に伴う熱に対する断熱効果、及び加工性・シール性を向上する効果、これらを発揮する範囲でガス供給ノズル60及びガス排気ノズル80の下方部が石英で構成されていることが望ましい。
【0029】
このように、供給孔68から噴出されたガスは、排気孔88に向かって流れるため、ガスがウエハ14に対し平行に流れ、ウエハ14全体が効率的にかつ均一にガスに晒される。
【0030】
ガス供給ノズル60、ガス供給口70、ガス排気ノズル80及びガス排気口90について詳細に説明する。
図3に示すように、サセプタ48の内側に、4つのガス供給ノズル60a、60b、60c、60dが配置され、アウターチューブ42と内側断熱壁54の間に1つのガス供給ノズル60eが配置されている。
ガス供給ノズル60a、60bは、シリコン源として、例えばトリクロールシラン等のシリコン水素塩化物と水素の混合ガスを導入する。ガス供給ノズル60cは、炭素源として、例えばプロパン等の水素炭化物と水素の混合ガスを導入する。ガス供給ノズル60dは、n型ドープ層を形成するドーパントガスとして、例えば窒素を導入する。ドーパントガスとしては、p型ドープ層を形成するホウ素又はアルミニウム化合物等を用いるようにすることもできる。
【0031】
シリコン源としてのガスを供給するガス供給ノズル60(本例では60a、60b)と、炭素源としてのガスを供給するガス供給ノズル60(本例では60c)とをそれぞれ別個独立して設ける構成とした場合、本構成を有さない場合と比較して、それぞれのガスの供給が滞るのを抑制することができる。
具体的には、シリコン源としてのガス及び炭素源としてのガスを、別々のガス供給ノズル60から供給する構成とすることで、このガス供給ノズル60内で、これらのガスが反応することを回避することができる。これに対し、シリコン源としてのガス及び炭素源としてのガスを、同一のガス供給ノズル60から供給すると、このガス供給ノズル60内でこれらのガスが反応し、供給孔68を閉塞したり、ガス供給ノズル60内でSiCが堆積したりする場合がある。
【0032】
なお、これらのガス供給ノズル60a−dが導入するガスは、上記に限られず、目的に応じて適宜変更することができる。シリコン源としては、シリコン水素化物、シリコン塩化物又はシリコン水素塩化物等、あるいはこれらを水素又はアルゴン等で希釈したものを用いることができる。これら、処理室44内のウエハ14を処理(膜形成)するためのガスを、以下、反応ガスと称す。
【0033】
アウターチューブ42と内側断熱壁54との間には、ガス供給ノズル60eが配置されており、このガス供給ノズル60eは、アルゴン等の不活性ガスを導入する。ガス供給ノズル60eは、反応ガスがアウターチューブ42と内側断熱壁54との間に侵入するのを防ぎ、アウターチューブ42の内壁に不要な生成物が付着するのを防止する。
【0034】
また、サセプタ48の内側には、ガス供給口70が配置されている。ガス供給口70は、キャリアドーパントガスとして、例えば窒素、トリメチルアルミニウム(TMA)、ジボラン(B)、三塩化ホウ素(BCl)等を導入する。
【0035】
さらに、サセプタ48の内側で、ガス供給ノズル60a−dと対向する側には、ガス排気ノズル80が配置されており、ガス供給口70と対向する側には、ガス排気口90aが配置されている。ガス排気ノズル80及びガス排気口90aは、主に反応ガスを排気する構成となっている。
【0036】
アウターチューブ42と内側断熱壁54との間で、ガス供給ノズル60eと対向する側には、ガス排気口90bが配置されている。ガス排気口90bは、主にガス供給ノズル60eから導入された断熱材領域(アウターチューブ42と内側断熱壁54との間)を不活性ガスパージするガスを排気する構成となっている。
【0037】
この処理炉40の構成において、ガス供給ノズル60a−e及びガス供給口70から処理室44内に導入されるガスは、図示しないガス供給源から、対応するガス供給管62a−e、72を通して供給され、MFC66a−e、76でその流量が調節された後、バルブ64a−e、74を介して、処理室44内に導入される。
また、処理室44内に導入されたガスは、ガス排気ノズル80及びガス排気口90a、90bに対応するガス排気管82、92a、92bに接続された真空排気装置86により、処理室44から排気される。
【0038】
次に、処理炉40周辺の構成について説明する。
図4は、処理炉40及びその周辺構造の概略図を示す。処理炉40の下方には、この処理炉40の下端開口を気密に閉塞するための炉口蓋体としてのシールキャップ102が設けられている。シールキャップ102は、例えばステンレス等の金属よりなり、円盤状に形成されている。シールキャップ102の上面には、処理炉40の下端と当接するシール部材としてのOリングが設けられている。シールキャップ102には、回転機構104が設けられている。回転機構104の回転軸106はシールキャップ102を貫通してボート30に接続されており、このボート30を回転させることでウエハ14を回転させるように構成されている。シールキャップ102は、処理炉40の外側に設けられた昇降機構としての後述する昇降モータ122によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート30を処理炉40に対し搬入搬出することが可能となっている。回転機構104及び昇降モータ122には、駆動制御部108が電気的に接続されており、所望の動作をするよう所望のタイミングにて制御するよう構成されている(図5参照)。
【0039】
予備室としてのロードロック室110の外面に下基板112が設けられている。下基板112には昇降台114と嵌合するガイドシャフト116及びこの昇降台114と螺合するボール螺子118が設けられている。下基板112に立設したガイドシャフト116及びボール螺子118の上端に上基板120が設けられている。ボール螺子118は上基板120に設けられた昇降モータ122により回転される。ボール螺子118が回転することにより昇降台114が昇降するように構成されている。
【0040】
昇降台114には中空の昇降シャフト124が垂設され、昇降台114と昇降シャフト124の連結部は気密となっている。昇降シャフト124は昇降台114と共に昇降するようになっている。昇降シャフト124はロードロック室110の天板126を遊貫する。昇降シャフト124が貫通する天板126の貫通穴は、この昇降シャフト124に対して接触することがないよう充分な余裕がある。ロードロック室110と昇降台114との間には昇降シャフト124の周囲を覆うように伸縮性を有する中空伸縮体としてのベローズ128が、ロードロック室110を気密に保つために設けられている。ベローズ128は昇降台114の昇降量に対応できる充分な伸縮量を有し、このベローズ128の内径は昇降シャフト124の外形に比べ充分に大きく、ベローズ128の伸縮により接触することがないように構成されている。
【0041】
昇降シャフト124の下端には昇降基板130が水平に固着される。昇降基板130の下面にはOリング等のシール部材を介して駆動部カバー132が気密に取付けられる。昇降基板130と駆動部カバー132とで駆動部収納ケース134が構成されている。この構成により、駆動部収納ケース134内部はロードロック室110内の雰囲気と隔離される。
【0042】
また、駆動部収納ケース134の内部にはボート30の回転機構104が設けられ、この回転機構104の周辺は、冷却機構136により、冷却される。
【0043】
電力供給ケーブル138は、昇降シャフト124の上端からこの昇降シャフト124の中空部を通り回転機構104に導かれて接続されている。また、冷却機構136及びシールキャップ102には冷却流路140が形成されている。冷却水配管142は、昇降シャフト124の上端からこの昇降シャフト124の中空部を通り、冷却流路140に導かれて接続されている。
【0044】
昇降モータ122が駆動されボール螺子118が回転することで、昇降台114及び昇降シャフト124を介して駆動部収納ケース134を昇降させる。
【0045】
駆動部収納ケース134が上昇することにより、昇降基板130に気密に設けられているシールキャップ102が処理炉40の開口部である炉口144を閉塞し、ウエハ処理が可能な状態となる。駆動部収納ケース134が下降することにより、シールキャップ102とともにボート30が降下され、ウエハ14を外部に搬出できる状態となる。
【0046】
図5は、熱処理装置10を構成する各部の制御構成を示す。
温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、操作部及び入出力部を構成し、熱処理装置10全体を制御する主制御部150に電気的に接続されている。これら、温度制御部52、ガス流量制御部78、圧力制御部98、駆動制御部108は、コントローラ152として構成されている。
【0047】
次に、上述したように構成された熱処理装置10を用いて、半導体デバイスの製造工程の一工程として、SiCウエハなどの基板上に、例えばSiC膜を形成する方法について説明する。なお、以下の説明において、熱処理装置10を構成する各部の動作は、コントローラ152により制御される。
【0048】
まず、ポッドステージ18に複数枚のウエハ14を収容したポッド16がセットされると、ポッド搬送装置20によりポッド16をポッドステージ18からポッド棚20へ搬送し、このポッド棚22にストックする。次に、ポッド搬送装置20により、ポッド棚22にストックされたポッド16をポッドオープナ24に搬送してセットし、このポッドオープナ24によりポッド16の蓋を開き、基板枚数検知器26によりポッド16に収容されているウエハ14の枚数を検知する。
【0049】
次に、基板移載機28により、ポッドオープナ24の位置にあるポッド16からウエハ14を取り出し、ボート30に移載する。
【0050】
複数枚のウエハ14がボート30に装填されると、複数枚のウエハ14を保持したボート30は、昇降モータ122による昇降台114及び昇降シャフト124の昇降動作により処理室44内に搬入(ボートローディング)される。この状態で、シールキャップ102はOリングを介してマニホールド46の下端をシールした状態となる。
【0051】
処理室44内が所望の圧力(真空度)となるように真空排気装置86によって真空排気される。この際、処理室44内の圧力は、圧力センサで測定され、この測定された圧力に基づきガス排気ノズル80及びガス排気口90a、90bに対応するAPCバルブ84、94a、94bがフィードバック制御される。また、処理室44内が所望の温度となるようにサセプタ48により加熱される。この際、処理室44内が所望の温度分布となるように温度センサが検出した温度情報に基づき磁気コイル50への通電具合がフィードバック制御される。続いて、回転機構104により、ボート30が回転されることでウエハ14が回転される。
【0052】
続いて、図示しないガス供給源からガス供給ノズル60a−dそれぞれに反応ガスが供給される。所望の流量となるように、ガス供給ノズル60a−dに対応するMFC66a−dの開度が調節された後、バルブ64a−dが開かれ、それぞれの反応ガスがガス供給管62a−dを流通して、供給孔68a−dから、この処理室44内に導入される。また、MFC76の開度が調節された後、バルブ74が開かれ、ガス供給管72を流通して、ガス供給口70から、処理室44内にガスが導入される。ガス供給ノズル60a−d及びガス供給口70から導入されたガスは、処理室44内のサセプタ48の内側を通り、主に、ガス排気ノズル80及びガス排気口90aからガス排気管82、92aを通り排気される。反応ガスは、処理室44内を通過する際にウエハ14と接触し、ウエハ14の表面上にSiC膜が堆積(デポジション)される。
【0053】
また、図示しないガス供給源からガス供給ノズル60eにガスが供給される。所望の流量となるように、ガス供給ノズル60eに対応するMFC66eの開度が調節された後、バルブ64eが開かれ、ガス供給管62eを流通して、供給孔68eから処理室44内に導入される。ガス供給ノズル60eから導入されたガスは、処理室44内の内側断熱壁54の外側を通り、主に、ガス排気口90bから排気される。
【0054】
予め設定された時間が経過すると、図示しない不活性ガス供給源から不活性ガスが供給され、処理室44内が不活性ガスで置換されると共に、処理室44内の圧力が常圧に復帰される。
【0055】
その後、昇降モータ122によりシールキャップ102が下降されて、マニホールド46の下端が開口されると共に、処理済ウエハ14がボート30に保持された状態でマニホールド46の下端からアウターチューブ42の外部に搬出(ボートアンローディング)し、ボート30に支持された全てのウエハ14が冷えるまで、ボート30を所定位置で待機させる。次に、待機させたボート30のウエハ14が所定温度まで冷却されると、基板移載機28により、ボート30からウエハ14を取り出し、ポッドオープナ24にセットされている空のポッド16に搬送して収容する。その後、ポッド搬送装置20により、ウエハ14が収容されたポッド16をポッド棚22、またはポッドステージ18に搬送する。このようにして熱処理装置10の一連の作用が完了する。
【0056】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に用いられる処理炉40の概略図を示す。この実施形態では、ガス供給側はガス供給口70が配設され、ガス排気側は排気孔88を有するガス排気ノズル80が配設されている。
【0057】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。図7は、第3実施形態に用いられる処理炉40の概略図を示す。この実施形態では、ガス供給側は供給孔68を有するガス供給ノズル60が配設され、ガス排気側はガス排気口90が配設されている。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限られず、ガス供給ノズル60、ガス供給口70、ガス排気ノズル80及びガス排気口90の数や配置、あるいはその組み合わせは、目的に応じて適宜変更することができる。
【0059】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。図8は、第4実施形態に用いられる処理炉40の断面図を示す。この実施形態では、ボート30が搬入される空間の周囲であって、ガス供給ノズル60a、60b及びガス排気ノズル80が配設された箇所を除いた空間に(図8において、サセプタ48内側の上下)、サセプタウォール160が設けられている。このため、ガス供給ノズル60a、60bから噴出された反応ガスが、ボート30に支持されたウエハ14に対し、効率よく供給される。
【0060】
このように、ガス供給ノズル60a、60b及びガス排気ノズル80が設けられていない位置に対応して配設されたサセプタウォール160の方が、これらが設けられている位置に対応する部分のサセプタ48よりも、ボート30に近い構成となっている。
サセプタウォール160は、ボート30の搬入搬出、及びボート30に支持されたウエハ14への反応ガスの供給を阻害しない範囲で、ボート30とサセプタ48との間に形成される空間を狭めるように設けられている。
【0061】
サセプタウォール160を構成する材料は、耐熱性(例えば1700℃程度)を有する導体であって、例えば、カーボンの表面をSiCやTaC(タンタルカーバイド)でコーティングしたもの、高純度のSiC、又は高融点金属(W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)等)が用いられる。
【符号の説明】
【0062】
10 熱処理装置
12 筺体
14 ウエハ
16 ポッド
30 ボート
40 処理炉
42 アウターチューブ
44 処理室
48 サセプタ
50 磁気コイル
60 ガス供給ノズル
68 供給孔
70 ガス供給口
80 ガス排気ノズル
88 排気孔
90 ガス排気口
150 主制御部
152 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8