(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730511
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20150521BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20150521BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20150521BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20150521BHJP
H01L 21/283 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/06 301F
H01L21/283 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-171130(P2010-171130)
(22)【出願日】2010年7月29日
(65)【公開番号】特開2012-33656(P2012-33656A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】西 眞弘
【審査官】
棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−354540(JP,A)
【文献】
特開2006−286952(JP,A)
【文献】
特開2005−260002(JP,A)
【文献】
特表2010−510680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 21/283
H01L 29/06
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体層上に、ソース電極、ゲート電極およびドレイン電極をそれぞれ形成する工程と、
前記窒化物半導体層上に窒化シリコン膜を形成する工程と、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間の前記窒化物半導体層が前記窒化シリコン膜から露出しない状態、かつ前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間の前記窒化シリコン膜の上面が露出した状態において、300℃以上の熱処理を行なう工程と、
前記熱処理を行なう工程の後に、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間の前記窒化シリコン膜の上面をフッ酸を含む溶液を用い処理する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記フッ酸を含む溶液を用い処理する工程の後、前記窒化シリコン膜の上面が露出した状態で300℃以上の熱処理を行なわず封止する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記フッ酸を含む溶液を用い処理する工程の後、前記窒化シリコン膜の上面が露出した状態で300℃以上の熱処理を行なわず、前記窒化シリコン膜の上面に接して樹脂絶縁膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間の前記窒化シリコン膜上にフィールドプレートを形成する工程を含み、
フッ酸を含む溶液で処理する工程は、前記フィールドプレートを形成する工程の後に行なわれる工程であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記フッ酸を含む溶液は、緩衝フッ酸または、フッ酸水溶液であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ソース電極および前記ドレイン電極上にそれぞれ配線をめっきにより形成する工程を含み、
前記熱処理は、前記配線のめっきシンターであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に窒化物半導体を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば窒化ガリウム(GaN)等の窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)等のFET(Field Effect Transistor)は、高周波かつ高出力で動作するパワー素子として用いられている。窒化物半導体を用いたFETにおいては、ドレイン電流コラプスとよばれる現象が生じることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−286135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
窒化物半導体を用いたFETにおいて、ドレイン電流コラプスを抑制することが求められている。本発明は、ドレイン電流コラプスを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、窒化物半導体層上に、ソース電極、ゲート電極およびドレイン電極をそれぞれ形成する工程と、前記窒化物半導体層上に窒化シリコン膜を形成する工程と、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間の前記窒化物半導体層が前記窒化シリコン膜から露出しない状態、かつ前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間の前記窒化シリコン膜の上面が露出した状態において、300℃以上の熱処理を行なう工程と、前記熱処理を行なう工程の後に、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間の前記窒化シリコン膜の上面をフッ酸を含む溶液を用い処理する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法である。本発明によれば、ドレイン電流コラプスを抑制することができる。
【0007】
上記構成において、前記フッ酸を含む溶液を用い処理する工程の後、前記窒化シリコン膜の上面が露出した状態で300℃以上の熱処理を行なわず封止する工程を含む構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記フッ酸を含む溶液を用い処理する工程の後、前記窒化シリコン膜の上面が露出した状態で300℃以上の熱処理を行なわず、前記窒化シリコン膜の上面に接して樹脂絶縁膜を形成する工程を含む構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間の前記窒化シリコン膜上にフィールドプレートを形成する工程を含み、フッ酸を含む溶液で処理する工程は、前記フィールドプレートを形成する工程の後に行なわれる工程である工程である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記フッ酸を含む溶液は、緩衝フッ酸または、フッ酸水溶液である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ドレイン電流コラプスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(a)から
図1(d)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図2】
図2(a)から
図2(d)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図4】
図4(a)から
図4(c)は、ドレイン電圧電流特性を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)から
図7(d)は、実施例4に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1(a)から
図3は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図1(a)のように、基板10上に、半導体層19として、バッファ層12、チャネル層14、電子供給層16およびキャップ層18が順次形成されている。基板10は、SiCである。バッファ層12は膜厚が300nmのAlN層である。チャネル層14は膜厚が1000nmのGaN層である。電子供給層16は、膜厚が20nm、Al組成比が0.2のn型AlGaN層である。キャップ層18は、膜厚が5nmのn型GaN層である。チャネル層14の電子供給層16界面には2DEG(2次元電子ガス)15が形成される。
【0015】
図1(b)のように、半導体層19上に開口を有するフォトレジスト40を形成する。フォトレジスト40をマスクにキャップ層18を除去し電子供給層16に達するリセスを形成する。
図1(c)のように、フォトレジスト40を剥離する。開口を有する2層フォトレジスト42を形成する。ソース電極20およびドレイン電極22として、リセス内にTaおよびAlを蒸着する。フォトレジスト42を除去することによりリフトオフする。550℃の温度で熱処理する。以上により、リセス内にソース電極20およびドレイン電極22が形成される。
図1(d)のように、半導体層19上、およびソース電極20およびドレイン電極22を覆うように、膜厚が60nmの窒化シリコン膜26をCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用い形成する。ゲート開口を有するフォトレジスト44を形成する。
【0016】
図2(a)のように、フォトレジスト44をマスクに窒化シリコン膜26をエッチングする。
図2(b)のように、蒸着法およびリフトオフ法を用いることにより、半導体層19に接するゲート電極24を形成する。ゲート電極24は、半導体層19側からNiおよびAuからなる。
図2(c)のように、窒化シリコン膜26上にゲート電極24を覆うように、膜厚が40nmの窒化シリコン膜28をCVD法を用い形成する。
図2(d)のように、ソース電極20およびドレイン電極22上の窒化シリコン膜26および28を除去する。ソース電極20およびドレイン電極22上に接するように配線30としてAuをめっき法により形成する。めっきシンターとして350℃において30分間熱処理する。
【0017】
図3のように、窒化シリコン膜28の表面をNH
4F:HFが10:1の緩衝フッ酸溶液に30秒浸す。これにより、窒化シリコン膜28の表面が1〜10nmエッチングされる。
【0018】
図4(a)から
図4(c)は、ドレイン電圧電流特性を示す図である。ドレイン電圧電流特性を測定したHEMTは、ゲート長が1μm、ゲート幅が80μm、ゲート−ドレイン距離が5μmである。ドレイン電圧電流特性は、カーブトレーサを用い測定した。
図4(a)から
図4(c)において、破線は、ドレイン電圧を10Vまで印加し、ゲート電圧を2Vから−1Vステップで印加したドレイン電圧電流特性を示している。実線は、ドレイン電圧を50Vまで印加し、ゲート電圧を2Vから−1Vステップで印加したドレイン電圧電流特性を示している。
【0019】
図4(a)は、
図2(d)の工程後に測定した結果を示す。
図4(a)のように、ドレイン電圧を50V印加することにより、ドレイン電流が減少している。この現象は、ドレイン電流コラプス現象である。
図4(b)は、
図2(d)の後、水洗および乾燥した後に測定した結果を示す。
図4(b)のように、ドレイン電流コラプス現象は改善していない。
図4(c)は、
図3後に測定した結果を示す。
図4(c)のように、ドレイン電圧を50V印加してもドレイン電流コラプス現象はほとんど観測されない。このように、窒化シリコン膜28の表面をフッ酸を含む溶液で処理することによりドレイン電流コラプス現象が抑制できることがわかった。
【0020】
ドレイン電流コラプスは、チャネル(2DEG)の電子が半導体層19表面または窒化シリコン膜26、28内のトラップに捕獲されるために生じる現象と考えられる。窒化シリコン膜28表面のSiのダングリングボンドが多いと、ダングリングボンドの影響により、電子がトラップに捕獲され易くなると考えられる。窒化シリコン膜28が熱処理されると、Si−H結合が離れ、窒化シリコン膜28表面にSiのダングリングボンドが多数形成される。このため、ドレイン電流コラプスが大きくなる。特に、ゲート電極24とドレイン電極22との間は、電界が大きく2DEGの電子がトラップに捕獲され易い。
図4(c)のように、窒化シリコン膜28表面をフッ酸処理すると、窒化シリコン膜28表面のSiのダングリングボンドは、Si−H結合となり、ドレイン電流コラプスが抑制されると考えられる。
【0021】
実施例1によれば、窒化シリコン膜28の少なくともゲート電極24とドレイン電極22との間の上面をフッ酸を含む溶液を用い処理する。これにより、窒化シリコン膜28表面のSiのダングリングボンドは、Si−H結合となり、ドレイン電流コラプスが抑制される。
【0022】
フッ酸を含む溶液としては、実施例1のように緩衝フッ酸またはフッ酸水溶液を用いることができる。フッ酸水溶液としては、HF:H
2Oを例えば1:10〜1:1000とすることができる。また、窒化シリコン膜28の少なくともゲート電極24とドレイン電極22との間の上面をフッ酸処理すればよく、例えば、実施例1のように、ソース電極20からドレイン電極22の間の窒化シリコン膜28の上面全体をフッ酸処理してもよい。
【0023】
窒化シリコン膜28表面のSiのダングリングボンドは、300℃以上の熱処理で生じやすく、350℃以上でより生じやすい。よって、窒化シリコン膜28の上面が露出した状態で300℃以上の熱処理を行ない、フッ酸を含む溶液を用いた処理は、熱処理を行なった後実行されることが好ましい。熱処理の温度は350℃以上がより好ましい。
【実施例2】
【0024】
図5は、実施例2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。実施例1の
図3の工程後、半導体チップ60に個片化する。
図5のように、パッケージは、ベース52およびキャップ50を有している。実施例1により製造された半導体チップ60がベース52上に実装されている。ベース52にはキャップ50がされ、半導体チップ60は封止されている。
【0025】
図5のように、
図3のフッ酸を含む溶液で処理する工程の後、窒化シリコン膜28の上面が露出した状態で300℃以上の熱処理を行なわず封止する。例えば、窒化シリコン膜28の上面が露出した状態で窒化シリコン膜28の上面を封止する。これにより、窒化シリコン膜28表面のダングリングボンドが少ない状態を維持することができる。なお、封止は気密封止が好ましく、窒素またはアルゴン等の不活性ガスを用い封止することが好ましい。
【実施例3】
【0026】
図6は、実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図6のように、実施例1の
図3のフッ酸を含む溶液で処理する工程後、窒化シリコン膜28の上面が露出した状態で300℃以上の熱処理を行なわず、窒化シリコン膜28の上面に接して絶縁膜32を形成する。これにより、窒化シリコン膜28表面のダングリングボンドが少ない状態を維持することができる。例えば、絶縁膜32は、エポキシ樹脂からなる樹脂絶縁膜を用いることができる。樹脂絶縁膜を形成する工程は、エポキシ樹脂を塗布した後、200℃前後の温度でエポキシ樹脂を硬化させる工程である。絶縁膜32は窒化シリコン膜以外の膜が好ましく、表面にダングリングボンドが生じにくい絶縁膜が好ましい。
【実施例4】
【0027】
実施例4はフィールドプレートを有する半導体装置の製造方法の例である。
図7(a)から
図7(d)は、実施例4に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図7(a)のように、実施例1の
図2(c)の後、ソース電極20およびドレイン電極22上に配線30を形成する。このとき、少なくともゲート電極24とドレイン電極22との間の窒化シリコン膜28上にフィールドプレート34を形成する。
図7(a)の例では、ソース電極20からゲート電極24とドレイン電極22との間に渡り窒化シリコン膜28上にフィールドプレート34が形成されている。
【0028】
図7(b)のように、フィールドプレート34および窒化シリコン膜28上に膜厚が600nmの窒化シリコン膜36をCVD法を用い形成する。
図7(c)のように、窒化シリコン膜36上に開口を有するフォトレジスト46を形成する。フォトレジスト46をマスクに窒化シリコン膜36および28をフッ酸を含む溶液を用いエッチングする。
図7(d)のように、フォトレジスト46を除去する。
【0029】
実施例4のように、フィールドプレート34を形成した後、フィールドプレート34とドレイン電極22との間の窒化シリコン膜36の上面をフッ酸を含む溶液を用い処理する。これにより、窒化シリコン膜36表面のSiのダングリングボンドが減少し、ドレイン電流コラプスが抑制される。
【0030】
実施例1〜4において、AlGaNを電子供給層16、GaNをチャネル層14とするHEMTを例に説明したが、半導体層19としては他の窒化物半導体を用いることができる。窒化物半導体とは、窒素を含む半導体であり、例えばInN、AlN、InGaN、InAlNまたはAlInGaN等である。
【0031】
また、実施例1〜4において、キャップ層18を設けた例を説明したが、キャップ層18を設けず、ゲート電極24を電子供給層16上に直接形成してもよい。また、基板10としてSiCの例を説明したが、基板10は、サファイヤまたはSi基板等でもよい。
【0032】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
19 半導体層
20 ソース電極
22 ドレイン電極
24 ゲート電極
26、28 窒化シリコン膜
34 フィールドプレート
36 絶縁膜