(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シート状の集電体からなる電池用負極板の基材の表面に一定間隔で設置された電池用活物質層の始端部と終端部とを検出する検出手段を備え、該検出手段の検出信号に応じて上記駆動機構の作動タイミングを設定することにより、周面に多数の塗工用セルパターンが形成されたグラビア式塗工ロールを基材の搬送方向と逆方向に回転させつつ、該塗工ロールの周面を上記基材に接触させることにより、電池用活物質層の表面を覆うように塗工液を塗布してその表面を被覆する多孔性保護膜を形成するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の間欠塗工装置。
上記塗工ロールの周面に対向するように開口した空間部からなる塗布剤溜まりが形成された塗工ケースと、この塗工ケースの塗工剤溜まり内に塗工剤を給送する塗工剤給送手段と、上記塗工ロールの回転方向上流側部および下流側部をシールして上記塗工ケースの塗工剤溜まりを密閉状態とするシール部材とを有し、上記ガイドロールにより上下方向に搬送される基材に上記塗工ロールを接離させるように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の間欠塗工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された間欠塗工装置では、基材の下面と塗工ロールの周面とをカム機構により相対的に接触離間させることにより、連続的に搬送される基材に対して塗布液を一定間隔で間欠塗工するように構成されているため、相隣接する塗布液層の間に形成された非塗工部の幅寸法が短い場合には、塗工ロールを高速で進退させるように駆動することにより基材に繰り返して接離させる必要がある。したがって、上記基材の搬送速度を一定値以下に抑えなければ、基材の必要個所に塗布液を適正に塗工することができず、生産性を向上させることが困難であるという問題があった。
【0006】
一方、上記特許文献2に開示されているように、塗布液溜まり内の塗布液に圧力を加えることによりスリットから塗布液を吐出させて基材に塗工するとともに、所定のタイミングで塗布液に加える圧力を遮断して塗布液の吐出を停止させることにより上記塗布液の間欠塗工するように構成したダイコート塗工方式では、所定の重量を有するダイ本体を移動させる必要がないので、基材の搬送速度を低下させることなく必要個所に塗布液を塗工することが可能である。
【0007】
上記ダイコート塗工方式は、10μm以上の比較的厚肉の塗膜を形成するのに適している。また、塗工ノズルと被塗工面との距離が塗工厚さに大きな影響を与える。しかし、上記ダイコート塗工方式はその構造上、電池用負極板に形成される多孔性保護膜のように被塗工面が立体的なパターンを有するものの上に、10μm以下の膜圧を有する塗布剤層を形成することは困難である。このため、基材に塗布液が塗工されることにより形成される塗布剤層の厚みを一定値以下に抑えつつ、上記基材に塗布液を均一かつ適正に塗布できるようにすることが望まれていた。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、高速で搬送される基材の必要個所に、塗布剤を均一かつ適正に塗工することができる間欠塗工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、搬送路に沿って搬送される基材に
該基材の搬送方向と逆方向に回転する塗工ロールを間欠的に接触させることにより上記基材に塗布剤を間欠的に塗工する
キスリバース方式の間欠塗工装置において、上記基材の搬送路に沿って一定間隔で配設された
二つの塗工ロールと、
各塗工ロールに対し上記基材の搬送方向に離間した位置に配設され、上記基材を搬送路に沿って案内する複数のガイドロールと、各塗工ロールを基材に対して
予め設定された順序で交互に接離させることにより上記基材の異なる領域に塗布剤をそれぞれ塗工するように駆動する駆動機構とを備え
、上記両塗工ロールの設置間隔を、基材に塗布剤が間欠的に塗工される塗工領域の全長に非塗工領域の間隔を加算した値の偶数倍に設定したものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、上記
請求項1に記載の間欠塗工装置において、シート状の集電体からなる電池用負極板の基材の表面に一定間隔で設置された電池用活物質層の始端部と終端部とを検出する検出手段を備え、該検出手段の検出信号に応じて上記駆動機構の作動タイミングを設定することにより、周面に多数の塗工用セルパターンが形成されたグラビア式塗工ロールを基材の搬送方向と逆方向に回転させつつ、該塗工ロールの周面を上記基材に接触させることにより、電池用活物質層の表面を覆うように塗工液を塗布してその表面を被覆する多孔性保護膜を形成するように構成したものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、上記
請求項1または2に記載の間欠塗工装置において、塗工ロールの周面に対向するように開口した空間部からなる塗布剤溜まりが形成された塗工ケースと、この塗工ケースの塗工剤溜まり内に塗工剤を給送する塗工剤給送手段と、上記塗工ロールの回転方向上流側部および下流側部をシールして上記塗工ケースの塗工剤溜まりを密閉状態とするシール部材とを有し、上記ガイドロールによ
り上下方向に搬送される基材に上記塗工ロールを接離させるように構成されたものである。
【0016】
請求項4に係る発明は、上記
請求項1〜3のいずれか1項に記載の間欠塗工装置において、塗工ロールの設置位置を基材の搬送路に沿って変位させることにより相隣接する塗工ロールの設置間隔を調節する駆動機構を備えたものである。
【0017】
請求項5に係る発明は、上記
請求項1〜3のいずれか1項に記載の間欠塗工装置において、基材の搬送路に沿って配設されたガイドロールの設置位置を変位させることにより上記塗工ロールの設置間隔を調節する駆動機構を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、基材の搬送路に沿って設置された
二つの塗工ロールにより基材の異なる領域に塗布剤をそれぞれ塗工するように構成したため、相隣接する塗布剤の塗工領域の間に形成された非塗工部の幅寸法が短い場合においても、単一の塗工ロールを介して基材に塗布剤を一定間隔で間欠塗工するように構成された従来の塗工装置のように、上記塗工ロールを高速で変位させることにより基材に接離させる動作を頻繁に繰り返す必要はなく、塗工ロールの移動速度を一定値以下に抑制しつつ、所定の速度で搬送される上記基材の必要個所に塗布剤を適正に塗工できるという利点がある。
【0020】
特に、上記発明では、二つの塗工ロールの設置間隔を、基材に塗布剤が間欠的に塗工される塗工領域の全長に非塗工領域の間隔を加算した値の偶数倍に設定したため、上記両塗工ロールの一方を基材に接触させるのと略同時に、両塗工ロールの他方を基材から離間させることにより、基材の張力変動を効果的に抑制しつつ、その表面に塗布剤が間欠的に塗工された塗布剤層を適正に形成できるという利点がある。
【0021】
請求項2に係る発明では、シート状の集電体からなる電池用負極板の基材の表面に一定間隔で設置された電池用活物質層の始端部と終端部とを検出する検出手段を備え、該検出手段の検出信号に応じて上記駆動機構の作動タイミングを設定することにより、周面に多数の塗工用セルパターンが形成されたグラビア式塗工ロールを基材の搬送方向と逆方向に回転させつつ、該塗工ロールの周面を上記基材に接触させることにより、いわゆるキスリバース方式で電池用活物質層の表面を覆うように塗工液を塗布してその表面を被覆する多孔性保護膜を形成するように構成したため、該電池用活物質層の表面を被覆する薄肉の多孔性保護膜からなる塗布剤層を適正に形成することができ、上記電池用負極板の基材を高速で搬送しつつ、上記間欠塗工装置により優れた機能を有する電池用電極板を安価に製造できる。また、上記多孔性保護膜の膜厚を10μm以下に設定できるとともに、所定の重量を有する上記グラビア式塗工ロールを高速で移動させる動作を頻繁に繰り返すことなく、基材の表面に塗布剤が間欠的に塗工された塗布剤層を適正に形成でき、かつ上記検出手段の検出信号に応じて駆動機構の作動タイミングを設定し、塗工ロールを基材に対して間欠的に接触させることにより、外気温度が変化する等の環境変化が生じることに起因して基材が伸縮したり、基材の搬送速度が変動したりした場合においても、上記塗工ロールを適正なタイミングで基材に対して接離させ、基材の表面に塗布剤が間欠的に塗工された塗布剤層を適正に形成できるという利点がある。
【0022】
請求項3に係る発明では、密閉式の塗工ケースを備えたいわゆる密閉チャンバータイプの塗工ユニットに設けられた塗工ロールより、上下方向に搬送される基材に対して塗布剤を塗工するように構成したため、塗工剤溜まりが開放状態となった塗工ユニットに設けられた塗工ロールにより、水平方向に搬送される基材に下面に塗布剤を塗工するように構成した場合のように、塗布剤が液垂れするという問題を生じることがなく、上記基材に対して塗布剤を適正に塗工できるという利点がある。
【0025】
請求項4に係る発明では、塗工ロールの一方または両方の設置位置を基材の搬送路に沿って変位させることにより、相隣接する塗工ロールの設置間隔を調節するように構成したため、基材の表面に塗布剤が間欠的に塗工される塗工領域の全長が増減した場合においても、該塗工領域の増減量に対応した距離だけ塗工ロールの設置間隔を調節して該設置間隔を上記加算値の偶数倍に相当する値に維持することができる。したがって、簡単な構成で上記基材の張力変動を効果的に抑制しつつ、その表面に塗布剤を間欠的に塗工することにより塗布剤層を適正に形成することができる。
【0026】
請求項5に係る発明では、基材の搬送路に沿って配設されたガイドロールの設置位置を変位させることにより上記塗工ロールの設置間隔を調節するように構成したため、基材の表面に塗布剤が間欠的に塗工される塗工領域の全長が増減した場合に、これに対応させて上記ガイドロールの設置位置を変位させることにより、上記塗工領域の増大量に対応した距離だけ塗工ロールの設置間隔を調節して該設置間隔を上記加算値の偶数倍に相当する値に維持することができる。したがって、上記塗工領域の全長が変化した場合においても、塗工ユニット等を昇降変位させることなく、複数個の塗工ロールを交互に移動させて基材に接離させる際に、基材の張力変動が生じるのを効果的に抑制するように上記両塗工ロールの作動タイミングを設定できるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および
図2には、本発明に係る間欠塗工装置の第1実施形態を示し、該間欠塗工装置は、リチウムイオン二次電池等の電池用負極板を構成する基材1に塗布剤を間欠的に塗工するものである。具体的には、10μm程度の厚みを有する銅箔等からなるシート状の集電体2に、80μm程度の厚みを有する電池用活物質層3が所定間隔で適正に設置されてなる基材1を所定速度で搬送しつつ、その表面にセラミックペーストからなる塗布剤を間欠的に塗工して乾燥させることにより、上記電池用活物質層3の表面を10μm以下の膜厚、例えば2μm±1μmの膜厚で被覆する薄肉の多孔性保護膜4を形成するように構成されている。
【0029】
上記間欠塗工装置は、基材1を鉛直方向に延びる搬送路に沿って案内するように一定間隔で配設された第1〜第3ガイドロール5〜7と、下方の第1ガイドロール5と中間の第2ガイドロール6との間に配設された第1塗工ユニット8と、上記第2ガイドロール6と上方の第3ガイドロール7との間に配設された第2塗工ユニット9とを有している。そして、上記第1塗工ユニット8には、基材1の表面に塗布剤を塗工する第1塗工ロール10が設けられるとともに、第2塗工ユニット9には、基材1の表面に塗布剤を塗工する第2塗工ロール11が設けられている。
【0030】
上記第1塗工ユニット8の基材搬送方向上流側(下方側)には、上記集電体2の表面に形成された電池用活物質層3の下流端部(以下、始端部という)からなる塗布剤の塗工始端位置と、電池用活物質層3の上流端部(以下、終端部という)からなる塗布剤の塗工終端位置とを検出する反射型光電センサ等からなる第1検出手段12が配設されている。また、上記第2塗工ユニット8,9の基材搬送方向上流側にも、上記集電体2の表面に形成された電池用活物質層3の始端部および終端部を検出する反射型光電センサ等からなる第2検出手段13が配設されている。
【0031】
上記第1,第2塗工ユニット8,9は、第1,第2塗工ロール10,11の周面に対向するように開口した空間部からなる塗布剤溜まり14が形成された塗工ケース15と、この塗工ケース15の前面上端部、つまり上記塗工ロール10,11の回転方向の下流側部に取り付けられたスチールまたはプラスチック等からなるドクター刃16と、塗工ケース15の前面下端部、つまり上記塗工ロール10,11の回転方向の上流側部に設けられたスチールまたはプラスチック等からなるシールプレート17とを有している。
【0032】
上記塗工ロール10,11は、その周面には多数の塗工用セルパターンが形成されるとともに、100mm程度の外径を有するグラビア式塗工ロールからなっている。また、図外の塗布剤給送手段から上記塗布剤溜まり14内に給送された塗布剤を塗工ロール10,11の塗工用セルパターン内に保持させた状態で、上記塗工ロール10,11の回転に応じて、その周面に付着した余分な塗布剤を上記ドクター刃16により掻き取るように構成されている。
【0033】
そして、上記塗工ロール10,11を、図外の駆動手段により駆動して基材1の搬送方向と逆方向に回転させつつ、上記塗工ロール10,11の周面を基材1の表面に接触させることにより、所謂キスリバース方式で塗布剤が塗工されるように構成されている。すなわち、当実施形態では、
図1および
図2に示すように、塗工ロール10,11を反時計方向に回転駆動することにより、下方から上方に搬送される基材1に対する塗工ロール10,11の接触部を上方から下方に移動させつつ、該塗工ロール10,11上の塗工剤を基材1上に転写するキスリバース方式により、薄肉で均一な塗工を可能としている。
【0034】
上記第1,第2塗工ユニット8,9には、塗工ケース15を水平方向に駆動することにより上記第1,第2塗工ロール10,11を基材1に対して個別に接離させるように駆動する駆動機構18が設けられている。該駆動機構18は、上記塗工ケース15を水平移動可能に支持するガイド部材19と、塗工ケース15に突設されたナットプレート20と、該ナットプレート20に形成された螺子孔に螺着されたねじ軸21と、該ねじ軸21を回転駆動する駆動モータ22とを有するボールねじタイプ(ボールは図示せず)からなっている。なお、上記ボールねじタイプの駆動機構18に代え、エアシリンダ、カム機構またはリンク機構タイプの駆動機構を使用することも可能である。
【0035】
また、上記間欠塗工装置には、第1,第2検出手段12,13の出力信号に応じて上記第1,第2塗工ユニット8,9の駆動機構18を作動させるタイミングを設定するコントローラ23が設けられている。そして、後述するように上記コントローラ23から第1,第2塗工ユニット8,9にそれぞれ設けられたモータドライバ24,25に対して作動指令信号を所定のタイミングで出力することにより、上記第1,第2塗工ユニット8,9の駆動モータ22を正転または逆転させる制御をそれぞれ実行するように構成されている。
【0036】
上記駆動モータ22を正転させることにより、上記塗工ケース15をガイド部材19に沿って基材1に接近させる方向にねじ軸21を回転駆動し、上記塗工ロール10,11を基材1に接触させた塗布剤の塗工状態とすることができる。また、上記駆動モータ22を逆転させることにより、上記塗工ケース15を基材1から離間させる方向にねじ軸21を回転駆動し、第1,第2塗工ロール10,11を基材1から離間させた塗布剤の非塗工状態とすることができる。このようにして上記第1,第2塗工ロール10,11の周面に付着した塗布剤が電池用活物質層3上に塗工され、該電池用活物質層3の表面を被覆する多孔性保護膜4が間欠的に形成されるようになっている。
【0037】
また、上記基材1の搬送路に相隣接して配設された第1塗工ロール10と第2塗工ロール11との設置間隔Kは、基材1に塗布剤が間欠的に塗工される塗工領域の全長Lと、相隣接する塗工領域の間に形成される非塗工領域の間隔Nとを加算した値(L+N)の偶数倍に対応した値に設定されている。例えば、上記電池用活物質層3の長さに対応する塗工領域の全長Lが400mmに設定されるとともに、非塗工領域の間隔Nが20mmに設定された基材1において、上記第1,第2塗工ロール10,11の設置間隔Kを上記加算値(L+N)の2倍に設定した場合には、両塗工ロール10,11の設置間隔Kは840mmとなる。
【0038】
なお、上記第1塗工ロール10と第2塗工ロール11との設置間隔Kを、必ずしも上記加算値(L+N)の2倍に対応した値に正確に設定する必要はなく、該加算値(L+N)の2倍前後に上記両塗工ロール10,11の設置間隔Kを設定すれば、後述するように上記塗工ロール10,11を基材1に対して交互に接触させることにより該基材1に生じる張力変動を抑制しつつ、その表面に塗布剤を間欠的に塗工した塗布剤層(多孔性保護膜4)を適正に形成することが可能である。
【0039】
上記間欠塗工装置を用いて基材1の表面に塗布剤を塗工するには、図外の製造装置において予め製造された電池用負極板の基材1、つまり銅箔等からなる集電体2の表面上に所定の厚みを有する電池用活物質層3が所定間隔で適正に形成されてなるシート状体を、上記第1〜第3ガイドロール5〜7が設置された搬送路に沿って一定速度で搬送しつつ、上記塗布剤の塗工始端位置および塗工終端位置に相当する電池用活物質層3の始端部および終端部を第1,第2検出手段12,13により検出する。
【0040】
図3に示すように、第1検出手段12の設置部に最初に到達する電池用活物質層3を第1電池用活物質層3aとした場合に、その始端部が第1検出手段12の設置部に到達したことが検出された時点で、該第1検出手段12の設置部から第1塗工ロール10の設置部までの距離と、基材1の搬送速度とに基づき、第1電池用活物質層3aの始端部が第1塗工ロール10の設置部に到達するまでの時間を上記コントローラ23において算出する。
【0041】
そして、
図3の仮想線で示すように、第1電池用活物質層3aの始端部が第1塗工ロール10の設置部に到達する直前に、該第1塗工ロール10を基材1に接触させて塗布剤の塗工が開始されるように、上記第1塗工ユニット8の駆動モータ22を正転させる作動タイミングを上記時間の算出値に応じて設定する。さらに、上記第1電池用活物質層3aの終端部が第1検出手段12の設置部に到達したことが検出されて該第1検出手段12から出力される検出信号に応じ、上記第1電池用活物質層3aの終端部が第1塗工ロール10の設置部に到達した直後に、該第1塗工ロール10を基材1から離間させて塗布剤の塗工を終了するように、上記駆動モータ22を逆転させる作動タイミングを設定する。
【0042】
上記のように第1塗工ロール10を基材1から離間させた後、上記第1電池用活物質層3aの下流部に位置する第2電池用活物質層3bが第1検出手段12の設置部に到達したことが検出された場合には、
図4に示すように、該第2電池用活物質層3bが第1塗工ロール10の設置部を通過するまで、上記第1塗工ユニット8の駆動モータ22を非作動状態に維持する。これにより、上記第1塗工ロール10が基材1から離間した塗布剤の非塗工状態に保持され、上記第2電池用活物質層3bが第1塗工ロール10の設置部を素通りすることになる。そして、上記第2電池用活物質層3bの下流部に位置する第3電池用活物質層3cが第1検出手段12の設置部に到達することにより出力される検出信号に応じ、上記第1電池用活物質層3aと同様のタイミングで、第1塗工ロール10を基材1に対して接離させるように上記駆動モータ22の作動タイミングを設定する。
【0043】
また、上記第1塗工ユニット8による塗布剤の塗工が施された第1電池用活物質層3aが第2検出手段13の設置部に到達したことが検出された場合には、
図4の仮想線で示すように、該第1電池用活物質層3aが上記第2塗工ロール11の設置部を通過するまで、上記第2塗工ユニット9の駆動モータ22を非作動状態に維持して上記第2塗工ロール11を基材1から離間させた塗布剤の非塗工状態とし、上記第1電池用活物質層3aを第2塗工ロール11の設置部を素通りさせる。
【0044】
そして、上記第1塗工ユニット8において塗布剤の塗工が施されなかった第2電池用活物質層3bの始端部が第2検出手段13の設置部に到達したことが検出されると、
図5に示すように、上記第2電池用活物質層3bの始端部が第2塗工ロール11の設置部に到達する直前に、該第2塗工ロール11を基材1に接触させて塗布剤の塗工を開始し、その後に上記第2電池用活物質層3bの終端部が第2塗工ロール11の設置部に到達した直後に、該第2塗工ロール11を基材1から離間させた塗布剤の塗工を終了するように、上記駆動モータ22の作動タイミングを設定する。また、第1塗工ユニット8と第2塗工ユニット9の設置距離を上記加算値(L+N)の2倍付近に設定すれば、第1塗工ユニット8および第2塗工ユニット9とに設けられた駆動機構18の作動タイミングを一致させることができるため、上記第2検出手段13を省略することも可能である。
【0045】
上記駆動モータ22を正転させて塗工ロール10,11を基材1に接触させる際において、その移動速度が早すぎると、該塗工ロール10,11が基材1に強い力で押し付けられることにより装置が振動し、その振動が該基材1に伝わるため、上記基材1に塗工ロール10,11が接触する前にアブソーバ手段で塗工ロール10,11の移動速度を減速することが好ましい。そして、待機位置にある塗工ロール10,11と基材1との離間距離と、上記アブソーバ手段による塗工ロール10,11の移動速度を減速度合とを考慮し、上記電池用活物質層3の下流端部からなる塗工始端部が塗工ロール10,11の設置部に到達するよりも所定時間前の時点で上記駆動モータ22の作動を開始するように、その作動タイミングを設定することにより、上記電池用活物質層3の下流端部が塗工ロール10,11の設置部に到達した時点で塗布剤の塗工を開始することができる。
【0046】
これに対して第1,第2塗工ユニット8,9の駆動モータ22を逆転させて塗工ロール10,11を基材1から離間させる際には、該塗工ロール10,11の移動速度を速くしても、その振動が基材1に伝わることはなく、極力高速で塗工ロール10,11を移動させることが可能である。また、上記電池用活物質層3の上流端部からなる塗工終端部が塗工ロール10,11の設置部に到達するのと略同時に上記駆動モータ22を作動させるように、上記駆動モータ22の作動タイミングを設定することにより、上記塗工剤の塗工を適正に終了させることができる。
【0047】
上記のように搬送路に沿って搬送される基材1に塗工ロール10,11を間欠的に接触させることにより基材1に塗布剤を間欠的に塗工する間欠塗工装置において、上記基材1の搬送路に沿って複数個の塗工ロール10,11を一定間隔で配設するとともに、各塗工ロール10,11を基材1に対して個別に接離させることにより上記基材1の異なる領域に塗布剤をそれぞれ塗工するように駆動する駆動機構18を設けたため、基材1を高速で搬送した場合においても、その必要個所に塗布剤を均一かつ適正に塗工できるという利点がある。
【0048】
すなわち、上記第1実施形態では、グラビア塗工ロールからなる第1,第2塗工ロール10,11によりキスリバース方式で基材1の表面に塗布剤を塗工するように構成された第1塗工ユニット8と第2塗工ユニット9とを一定間隔で上記基材1の搬送路に配設し、第1,第2塗工ユニット8,9の各塗工ケース15をそれぞれ所定のタイミングで水平方向に駆動することにより、上記第1,第2塗工ロール10,11を基材1に対して個別に接離させるように構成したため、該第1,第2塗工ロール10,11を交互に基材1に接触させて基材1の表面に塗布剤を間欠的に塗工することにより、薄肉の塗布剤層を適正に形成することができる。
【0049】
したがって、相隣接する塗布剤の塗工領域の間に形成された非塗工部の間隔Nが短い場合においても、単一の塗工ロールにより連続して搬送される基材に塗布剤を一定間隔で間欠塗工するように構成された従来の塗工装置のように、塗工ロールを高速で変位させることにより基材に接離させる動作を頻繁に繰り返す必要はなく、上記第1,第2塗工ロール10,11の移動速度を一定値以下に抑制しつつ、所定の速度で搬送される上記基材1の必要個所に塗布剤を適正に塗工できるという利点がある。
【0050】
例えば、所定の質量Mを有する第1,第2塗工ロール10,11の移動速度Vを、単一のグラビア式塗工ロールを使用した従来装置における移動速度の1/2に設定した場合には、第1,第2塗工ロール10,11を移動させる際に生じる運動エネルギー(=1/2MV
2)を上記従来装置の1/4に低減することができる。このため、第1,第2塗工ロール10,11を高速で移動させることに起因して生じる種々の弊害、例えば上記塗布剤の塗工位置がずれたり、塗布剤層の膜厚が不均一になったりする等の弊害が生じるのを防止しつつ、上記グラビア式塗工ロールからなる第1,第2塗工ロール10,11を使用したキスリバース方式で、電池用負極板の集電体2上に形成された電池用活物質層3の表面を覆うように塗布剤を均一に塗工することにより、10μm以下の膜厚、例えば2μm±1μmの膜厚を有する薄肉の多孔性保護膜4からなる塗布剤層を適正に形成することができる。したがって、上記電池用負極板の基材1を高速で搬送しつつ、上記間欠塗工装置により塗布剤を適正に塗工して優れた機能を有する電池用電極板を安価に製造できるという利点がある。
【0051】
また、上記のように第1,第2塗工ロール10,11を基材1に対して個別に接離させるように構成した場合には、単一の塗工ロールにより連続して搬送される基材に塗布剤を一定間隔で間欠塗工するように構成された従来の塗工装置に比べて、上記基材1を高速で搬送しつつ、その必要個所に塗布剤を適正に塗工することができるため、必要に応じて上記非塗工部の間隔Nを短くすることが可能となる。また、この非塗工部の間隔Nを短くすることにより、上記第1,第2塗工ロール10,11が同時に基材1から離間した状態となる期間を短縮することができるため、上記基材1に顕著なテンション変動が生じるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0052】
なお、上記第1実施形態では、基材1に塗布剤が間欠的に塗工されることにより形成される塗布材層の始端位置と終端位置とを検出する第1,第2検出手段12,13を設け、該検出手段12,13の検出信号に応じて上記第1,第2塗工ユニット8,9に設けられた駆動機構18の作動タイミングを設定することにより、上記第1,第2塗工ロール10,11を基材1に対してそれぞれ間欠的に接触させるように構成した例について説明したが、この構成に代え、例えば基材1に設けられた基準位置を示すレジストマークの位置と、予めコントローラ23に入力された塗布剤層の始端位置および終端位置のデータと、基材1の搬送速度等に基づいて、上記駆動機構18の作動タイミングを設定することも可能である。
【0053】
しかし、上記第1実施形態に示すように検出手段12,13の検出信号に応じて上記第1,第2塗工ユニット8,9に設けられた駆動機構18の作動タイミングを設定するように構成した場合には、外気温度が変化する等の環境変化が生じることに起因して基材1が伸縮したり、基材1の搬送速度が変動したりした場合においても、各駆動機構18の作動タイミングを適正に設定することができ、上記第1,第2塗工ロール10,11を適正なタイミングで基材1に対して接離させることができるという利点がある。
【0054】
例えば、上記第1実施形態では、電池用負極板の基材1上に一定間隔で形成された電池用活物質層3の表面を覆うように塗工液が塗布されることにより電池用活物質層3の表面を被覆する多孔性保護膜4を形成するように構成された間欠塗工装置において、上記電池用活物質層3の始端部および終端部からなる塗布剤層の始端位置と終端位置とを検出する第1,第2検出手段12,13の検出信号に応じて上記第1,第2塗工ユニット8,9に設けられた駆動機構18の作動タイミングを設定するように構成したため、電池用活物質層3の表面を被覆する薄肉の多孔性保護膜4等からなる塗布剤層を適正に形成することができる。
【0055】
なお、上記塗工ケース15の塗工剤溜まり14を密閉状態といわゆる密閉チャンバータイプの塗工ユニット8,9に設けられた塗工ロール10,11より、上下方向に搬送される基材1に対して塗布剤を塗工するように構成した上記実施形態に代え、塗工剤溜まりが開放状態となった塗工ユニットに設けられた塗工ロールにより、水平方向に搬送される基材に下面に塗布剤を塗工するように構成することも可能である。
【0056】
しかし、上記塗工剤溜まりが開放状態となった塗工ユニットした場合には、基材に塗工した塗布剤が液垂れを生じ易いという問題がある。これに対して上記実施形態に示すように、密閉チャンバータイプの塗工ユニット8,9に設けられた塗工ロール10,11より、上下方向に搬送される基材1に対して塗布剤を塗工するように構成した場合には、上記液垂れを生じることがなく、上記基材1に対して塗布剤を適正に塗工できるという利点がある。
【0057】
また、上記第1実施形態では、第1,第2塗工ロール10,11の設置間隔Kを、基材1に塗布剤が間欠的に塗工される塗工領域の全長Lと相隣接する塗工領域の間に形成される非塗工領域の間隔Nとを加算した値(L+N)の偶数倍に略対応した値に設定したため、上記第1,第2塗工ロール10,11を交互に移動させて基材1に接離させることにより、基材1の張力変動を抑制しつつ、その表面に塗布剤が間欠的に塗工された塗布剤層(多孔性保護膜4)を適正に形成できるという利点がある。
【0058】
上記第1実施形態に示すように、第1,第2塗工ロール10,11の設置間隔Kを、上記加算値(L+N)の2倍に設定した場合には、
図5に示すように、第3電池用活物質層3cの終端部が第1塗工ロール10の設置部を通過して、該第1塗工ロール10を基材1から離間させた直後に、第2電池用活物質層3bの始端部が上記第2塗工ロール11の設置部に到達し、該第2塗工ロール11を基材1に接触させる制御が実行されることになる。このため、上記第1塗工ロール10を基材1から離間させることにより生じる基材1の張力低下を、上記第2塗工ロール11を基材1に接触させることにより生じる基材1の張力上昇に応じて減殺することができる。したがって、上記基材1の張力変動を効果的に抑制しつつ、その表面に塗布剤を間欠的に塗工することにより塗布剤層を適正に形成することができる。
【0059】
なお、
図5に示すように、第3電池用活物質層3cの終端部が第1塗工ロール10の設置部に通過した直後の時点では、未だ第2電池用活物質層3bの始端部が第1塗工ロール10の設置部に到達していないため、当該時点から第2電池用活物質層3bの始端部が第1塗工ロール10の設置部に到達して該第1塗工ロール10を基材1に接触させるまでの間は第1,第2塗工ロール10,11の両方が離間した状態となる。しかし、当該期間は極めて短いため、その間に基材1に大きな張力変動が生じることはなく、上記第1,第2塗工ロール10,11の設置間隔Kを、上記加算値(L+N)の偶数倍に略対応した値に設定することにより、上記基材1の張力変動を効果的に抑制することが可能である。
【0060】
図6は、本発明に係る間欠塗工装置の第2実施形態を示している。該間欠塗工装置は、第1塗工ユニット8を昇降変位させて第1塗工ロール10の設置位置を基材1の搬送路に沿って変位させることにより、相隣接する第1,第2塗工ロール10,11の設置間隔Kを調節する駆動機構26を備えている。上記第2実施形態に係る間欠塗工装置によれば、該間欠塗工装置に供給される基材1の種類が変化して、例えば基材1の表面に塗布剤が間欠的に塗工される塗工領域の全長L等が増大した場合に、その増大量に対応した距離だけ第1塗工ユニット8を下降させることにより、第1,第2塗工ロール10,11の設置間隔Kを、上記加算値(L+N)の偶数倍に対応した値に維持することができる。
【0061】
上記第2実施形態に係る間欠塗工装置によれば、第1塗工ユニット8を昇降変位させて第1塗工ロール10の設置位置を基材1の搬送路に沿って変位させるという簡単な操作で、相隣接する第1,第2塗工ロール10,11の設置間隔Kを任意に調節することができる。したがって、基材1の表面に塗布剤が間欠的に塗工される塗工領域の全長L等が変化した場合においても、上記第1,第2塗工ロール10,11を交互に移動させて基材1に接離させる際に、該基材1の張力変動が生じるのを効果的に抑制しつつ、その表面に塗布剤が間欠的に塗工された塗布剤層を適正に形成できるという利点がある。
【0062】
なお、上記第1塗工ユニット8を昇降変位させて第1塗工ロール10の設置位置を基材1の搬送路に沿って変位させることにより相隣接する第1,第2塗工ロール10,11の設置間隔Kを調節するようにした上記構成に代え、第1,第2塗工ユニット8,9の両方を昇降変位させて第1,第2塗工ロール10,11の設置位置をそれぞれ基材1の搬送路に沿って変位させるように構成した場合においても、同様の効果が得られることは勿論である。
【0063】
また、
図7に示す第3実施形態のように、第1塗工ロール10と第2塗工ロール11とを相対向させて設置するとともに、該第1,第2塗工ロール10,11の下方に第1,第2中間ガイドロール31,32を一定間隔で設置し、かつ該第1,第2中間ガイドロール31,32の一方または両方を昇降変位させる駆動機構を設けることにより、上記第1,第2塗工ロール10,11の設置間隔を調節するように構成してもよい。例えば、基材1の表面に塗布剤が間欠的に塗工される塗工領域の全長L等が増大した場合には、上記駆動機構により第1,第2中間ガイドロール31の一方または両方を下降させることにより、上記塗工領域の増大量に対応した距離だけ第1,第2塗工ロール10,11の設置間隔を調節して該設置間隔を上記加算値(L+N)の偶数倍に相当する値に維持することができる。
【0064】
したがって、上記第3実施形態に係る間欠塗工装置によれば、第1塗工ユニット8等を昇降変位させることなく、基材1の表面における塗工領域の全長L等が変化した場合に、これに対応させて相隣接する第1,第2塗工ロール10,11の設置間隔を調節することができるため、上記第1,第2塗工ロール10,11を交互に移動させて基材1に接離させる際に、基材1の張力変動が生じるのを効果的に抑制しつつ、その表面に塗布剤が間欠的に塗工された塗布剤層を適正に形成できるように、上記両塗工ロール10,11の作動タイミングを設定することができる。
【0065】
なお、上記各実施形態では、基材1の搬送路に第1,第2塗工ロール10,11からなる二つの塗工ロール10,11を設置した例について説明したが、これに限られず上記基材1の搬送路に3個以上の塗工ロールを配設した構造としてもよい。また、上記基材1の搬送路に配設された複数個の塗工ロールを、必ずしも予め設定された順序で交互に基材に対して接触させるように構成する必要はなく、複数個の塗工ロールを同時に基材1に対して接触させるように構成してもよい。
【0066】
すなわち、本発明に係る間欠塗工装置の第4実施形態では、
図8に示すように、基材1の搬送路に沿って二つの塗工ロール10,11を配設するとともに、両塗工ロール10,11の設置間隔Kを、上記基材1の塗布剤が塗工される塗工領域の全長Lに非塗工領域の間隔Nを加算した値の奇数倍、例えば1倍に設定している。そして、図示を省略した検出手段の出力信号に応じ、基材1上に設けられた第1,第2電池用活物質層3a,3bの始端部が両塗工ロール10,11の設置部に到達する直前に、該塗工ロール10,11を同時に基材1に接触させるように駆動することにより、上記第1,第2電池用活物質層3a,3bに塗布剤を塗工した後、上記第1,第2電池用活物質層3a,3bの終端部が両塗工ロール10,11の設置部に通過した直後に、
図9に示すように、両塗工ロール10,11を同時に基材1から離間させる動作を繰り返すことにより基材1に塗布剤を間欠的に塗工する。
【0067】
上記のように複数個の塗工ロール10,11を同時に基材1に対して接離させるように構成した場合においても、単一の塗工ロールにより連続して搬送される基材に塗布剤を一定間隔で間欠塗工するように構成された従来の塗工装置のように、塗工ロールを高速で変位させて基材に繰り返し接離させるように構成する必要はなく、上記塗工ロール10,11を一定時間に亘り基材1に接触させた後、同程度の時間だけ基材1から離間させた状態で維持することにより、基材1に塗布剤を間欠的に塗工することができる。したがって、上記塗工ロール10,11の移動速度を一定値以下に抑制しつつ、所定の速度で搬送される上記基材1の必要個所に塗布剤を適正に塗工することができる。しかも、単一の駆動機構で両塗工ロール10,11の両方を駆動し、上記基材1に対して同時に接離させることも可能であるため、間欠塗工装置の構造を効果的に簡略化できるという利点がある。
【0068】
なお、上記第4実施形態のように両塗工ロール10,11を同時に基材1に接触させるように構成した場合には、両塗工ロール10,11を基材1に接触させた状態と、該基材1から離間させた状態とで、基材1に生じる張力が顕著に変動する傾向がある。このため、上記両塗工ロール10,11を基材1に対して接離させる際に生じる基材1の張力変動を防止するために、上記テンションロール(図示せず)を設けて基材1の張力を調節するように構成することが好ましい。