(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、糸条をボビンの軸方向に綾振りするトラバース装置を有し、糸条を綾振りながらボビンに巻き取り、パッケージを形成する糸条巻取機が知られている。このような糸条巻取機のトラバース装置として、糸条の綾振らせ方で様々な構成のものが知られている。例えば、特許文献1には、ボビンの軸芯と平行に配置され、周面に螺旋状のカム溝が形成されたカムドラムと、カムドラムが回転することで、カム溝に沿ってボビンの軸方向に往復移動するトラバースガイドとを有するカムドラム式のトラバース装置について開示されている。このカムドラム式のトラバース装置におけるトラバースガイドは、走行する糸条をボビンの軸方向の両側から挟んで拘束した状態で移動することで、糸条をボビンの軸方向に綾振っている。
【0003】
また、特許文献2には、重ねられた状態で、互いに反対方向に回転する2枚の羽根状のトラバースガイドを有する羽根式のトラバース装置について開示されている。このトラバース装置では、一方のトラバースガイドでボビンの軸方向一方に糸条を移動させた後、終点位置(ボビンの巻き幅の端位置)で他方のトラバースガイドに糸条を受け渡し、他方のトラバースガイドでボビンの軸方向他方に糸条を移動させる。
【0004】
この特許文献2は、パッケージの端部の糸溜まり現象を実害のない迄に解消すること(いわゆるパッケージの耳高防止)を目的とするものであり、トラバース両端においてトラバースガイドによって案内されてきた糸条物が一旦該トラバースガイドから外れ、再び逆の方向に他のトラバースガイドと係合して案内されるようなトラバース装置を用いて糸巻き取りをする際に、トラバース両端において糸条物の戻り作用を積極的に利用するようにしたものである。具体的には、トラバース端部に位置規制ガイドを設けて、トラバース端部から戻る糸の戻り速度をトラバースガイドの移動速度よりも速くしてやることで、トラバース端部での糸溜まり量を小さくしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2のいずれのトラバース方式においても、パッケージ両端部で糸が外れる、いわゆる綾落ち現象を回避することができなかった。このような綾落ち現象は、トラバース方式の相違に関わらず、トラバースガイドとボビンとの間に、糸条が無拘束の状態で走行する区間(いわゆるフリーレングス)が存在することが大きな発生要因となっていると考えられる。
【0007】
これについて
図6を用いて以下説明する。
図6に示すように、糸条Yは(3)→(2)→(1)→(2)→(3)の順に糸形態を変えながら綾振られるが、トラバースガイド80がボビン81の巻き幅を越えて反転するときに、走行する糸条Yとトラバースガイド80の接触点A1と、走行する糸条Yとボビン81の接触点A2との間の直線距離が短くなる。一方、通常は、ボビン81への巻取速度(糸条の供給速度)は、トラバースガイド80の反転時も含めて、常に一定であるため、上記のように距離が短くなっても、トラバースガイド80とボビン81との間を走行する糸条Yの長さはそのままである。すると、トラバースガイド80が反転するときに、トラバースガイド80とボビン81との間を走行する糸条Yが
図6の(2)のように一瞬弛んでしまう。そして、このように弛んだ糸条をボビン81に巻き取ったときに端部で綾落ちが生じやすいと考えた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、トラバースガイドの反転時のボビンとトラバースガイドとの間に生じる糸条の弛みを取って、綾落ちの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の糸条巻取機は、ボビンに糸条を巻き取る巻取部と、走行する糸条を
、前記ボビンの軸方向の両側から挟みつつ、前記ボビンの前記軸方向に往復移動させるトラバースガイドを有するトラバース装置と、前記トラバースガイドが反転するときに、前記トラバースガイドと前記ボビンとの間を走行する糸条の弛みを取る弛み取り手段と、を備えている。
【0010】
本発明の糸条巻取機によると、トラバースガイドが反転するときに、トラバースガイドとボビンとの間を走行する糸条の弛みを取ることで、糸形態の安定した糸条をボビンの巻き幅の端部で巻き取ることが可能になり、綾落ちの発生を抑制することができる。
【0011】
また、前記弛み取り手段は、前記トラバースガイドよりも糸条の走行方向の上流側に配置され、前記トラバースガイドが反転するときに、走行する糸条に接触して、糸条の走行方向に対して走行抵抗を付与する抵抗付与手段であることが好ましい。
【0012】
これによると、トラバースガイドが反転するときに、糸条の走行方向に対して走行抵抗を付与するだけで、走行抵抗付与手段の箇所よりも下流側では糸条のテンションが増加し、糸条の弛みを簡単に取ることができる。
【0013】
さらに、前記トラバースガイドよりも糸条の走行方向の上流側に固定的に配置された支点ガイドと、前記支点ガイドと前記トラバースガイドとの間に配置された、前記抵抗付与手段としての接触ガイドと、を備えており、前記接触ガイドは、前記ボビンの前記軸方向に関して、前記ボビンの巻き幅の端位置に前記トラバースガイドが到達したときの、前記支点ガイドと前記トラバースガイドとを結ぶ線上で、前記支点ガイドと前記トラバースガイドとの間の糸条に外側から接触することが好ましい。
【0014】
仮に、接触ガイドが設けられていないとすると、トラバースガイドとボビンとの間を走行する糸条が最も弛むのは、走行する糸条とトラバースガイドの接触点と、走行する糸条とボビンの接触点との間の直線距離が最小となったときであり、すなわちトラバースガイドがボビンの巻き幅の端位置に到達したときである。本発明では、接触ガイドは、支点ガイドと上記位置のトラバースガイドとを結ぶ線L2(
図3参照)上で、支点ガイドとボビンとの間を走行する糸条に接触している。例えば、接触ガイドが上記線L2上よりもトラバース中心側にあればあるほど、接触ガイドに接触した糸条の、接触ガイドによる屈曲角が大きくなり、トラバースガイドとボビンとの間を走行する糸条の弛みを取るというよりも、走行する糸に与えるダメージが大きくなる。そこで、接触ガイドが、上記線L2上で支点ガイドとボビンとの間を走行する糸条に接触することで、トラバースガイドとボビンとの間を走行する糸条の弛みをより効果的に取ることができる。
【0015】
加えて、前記ボビンの前記軸方向における前記接触ガイドの位置を変更する位置変更手段と、前記位置変更手段を制御する位置制御手段と、を備えていることが好ましい。
【0016】
また、前記トラバース装置は、前記トラバースガイドの反転位置を変更可能であり、前記位置制御手段は、前記位置変更手段を制御して、前記ボビンへの巻き取り中に、前記トラバースガイドの前記反転位置を変更した方向に合わせて、前記接触ガイドを移動させることが好ましい。
【0017】
例えば、テーパーエンドパッケージを巻き取る場合、パッケージの端面を径方向外側に向かうにつれて傾斜させているものがある。このような場合、トラバースガイドの反転位置は糸条の巻取量が増加するにつれて次第に内側に移動し、これに合わせて、接触ガイドも内側に移動させる。これにより、トラバースガイドが反転するときに、走行する糸条を確実に接触ガイドに接触させることができ、綾落ちの発生をより効果的に抑制することができる。
【0018】
また、前記巻取部による前記ボビンの回転速度を制御する巻取制御手段をさらに備えており、前記巻取制御手段は、前記巻取部を制御して、前記トラバースガイドが反転するときに、前記ボビンの回転速度を一時的に上げることにより、前記トラバースガイドと前記ボビンとの間を走行する糸条の弛みを取る前記弛み取り手段として機能してもよい。
【0019】
これによると、トラバースガイドが反転するときに、ボビンの回転速度を一時的に上げることで、仮に、糸条に走行抵抗を加えて弛みを取る場合に比べて、糸品質の低下を少なくして、トラバースガイドとボビンとの間を走行する糸条の弛みを取ることができる。
【発明の効果】
【0020】
トラバースガイドが反転するときに、トラバースガイドとボビンとの間を走行する糸条の弛みを取ることで、糸形態の安定した糸条をボビンの巻き幅の端部で巻き取ることが可能になり、綾落ちの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
次に、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る糸条巻取機の側面図である。
図2は、糸条巻取機の正面図である。
図1に示すように、糸条巻取機1には、上方に位置する図示しない紡糸機から複数本の糸条Yが連続的に供給される。そして、糸条巻取機1は、紡糸機から供給された複数本の糸条Yを、複数のボビン9にそれぞれ巻き取って複数のパッケージ10を形成するように構成されている。
【0023】
図1及び
図2に示すように、糸条巻取機1は、本体フレーム2と、この本体フレーム2に上下方向に移動可能に設けられた昇降枠3と、本体フレーム2に回転可能に設けられた円板状のターレット4と、ターレット4に一端が支持され、且つ、複数のボビン9が装着される2本のボビンホルダ5(巻取部)と、ボビン9に巻き取られる糸条Yを綾振るトラバース装置6と、ボビンホルダ5に装着されたボビン9に接触可能なコンタクトローラ7と、各部の動作を制御して全体動作を司る制御装置8などを備えている。
【0024】
ターレット4は、円板状をしており、本体フレーム2に回転可能に設けられている。そして、ターレット4の回転中心である軸4aに対して互いに対称な2つの位置には、2本のボビンホルダ5の一端が支持され、2本のボビンホルダ5はターレット4からそれぞれ回転可能に突設している。これら2本のボビンホルダ5は、ターレット4の回転に合わせて一体的に移動するようになっている。2本のボビンホルダ5には、それぞれ複数のボビン9が、ボビンホルダ5の軸方向に直列に並べて装着されている。
【0025】
ターレット4は、回転モータ31により軸4aを中心に回転駆動される。そして、ターレット4が回転することにより、2本のボビンホルダ5は、コンタクトローラ7に接触してボビン9に糸条Yを巻き取る巻取位置P1と、この巻取位置P1よりも下方であり、ターレット4の軸4aに対して巻取位置P1と点対称な位置である待機位置P2とにわたって移動可能である。そして、巻取位置P1にあるボビンホルダ5に装着されたボビン9に糸が巻き取られ、パッケージ10が形成されると、この巻取位置P1に位置するボビンホルダ5と待機位置P2に位置するボビンホルダ5とは互いの位置を切り替えられる。
【0026】
ターレット4に支持された2本のボビンホルダ5は、回転モータ32によりそれぞれ回転駆動される。そして、巻取位置P1にあるボビンホルダ5が回転することによって、このボビンホルダ5に装着された複数のボビン9に複数の糸条Yがそれぞれ巻き取られる。
【0027】
昇降枠3は、ボビンホルダ5の軸方向に延びる長尺なフレームであり、その長手方向基端部において本体フレーム2に支持されている。そして、昇降枠3は、本体フレーム2に固設された図示しないシリンダのロッドと連結され、シリンダを駆動することで、本体フレーム2に対して上下方向(ボビンホルダ5に対して接離する方向)に移動可能に構成されている。
【0028】
トラバース装置6は、昇降枠3に設けられており、支点ガイド19と、トラバースカム20と、トラバースガイド21と、トラバースモータ33などを有している。
【0029】
支点ガイド19は、昇降枠3の上端部近傍に設けられており、紡糸機から供給された糸条Yが掛けられるものであり、糸条Yのトラバース支点となっている。トラバースカム20は、ボビンホルダ5と平行に配置されて、昇降枠3に回転自在に支持されている。また、トラバースカム20は、その周面に螺旋状のカム溝が形成されており、トラバースモータ33により回転駆動される。
【0030】
トラバースガイド21は、トラバースカム20が回転駆動することにより、カム溝に沿って移動し、トラバースカム20(ボビンホルダ5)の軸方向に往復移動する。また、トラバースガイド21は、走行する糸条Yをボビンホルダ5の軸方向の両側から2つのガイド部21aで挟んでいる。そして、トラバースガイド21は、支点ガイド19を通って走行する糸条Yを、支点ガイド19を支点としてボビンホルダ5の軸方向(綾振り方向)に綾振りながらコンタクトローラ7へ案内する。
【0031】
また、昇降枠3の、トラバース装置6の支点ガイド19とトラバースガイド21の間には、トラバースガイド21により綾振られる糸条Yと接触可能な綾落ち抑制ガイド50が設けられている。綾落ち抑制ガイド50は、昇降枠3に固設されたシリンダ34のロッドと連結され、シリンダ34を駆動することで、昇降枠3に対して綾振り方向に移動可能となっている。この綾落ち抑制ガイド50については、後ほど詳述する。なお、第1実施形態では、この綾落ち抑制ガイド50は固定されて、移動可能となっていなくてもよいが、後述する第2実施形態では、綾落ち抑制ガイド50が移動可能な構成が必須となるため、このような構成している。
【0032】
昇降枠3には、支持フレーム11が連結されており、この長手方向両端部にはコンタクトローラ7を回転自在に支持する2つの支持部11aが設けられている。この支持フレーム11は、昇降枠3の長手方向に長尺であり、支持フレーム11の長手方向両端部に接続された案内プレート12に連結されており、案内プレート12(昇降枠3)に対して上下方向に移動可能に構成されている。
【0033】
コンタクトローラ7は、支持フレーム11の2つの支持部11aに、ボビンホルダ5と平行な状態で支持されている。また、コンタクトローラ7は、巻取位置P1にあるボビンホルダ5に装着された複数のボビン9、または、ボビン9に糸条Yが巻き取られて形成されたパッケージ10の外周面に接触可能である。コンタクトローラ7は、ボビン9への糸の巻き取り時には、パッケージ10に所定の接圧を付与しながら、ボビンホルダ5の回転に合わせて従動回転して、パッケージ10の形状を整える。また、支持フレーム11とコンタクトローラ7は、案内プレート12により案内されながら、巻取位置P1にあるボビン9に近接する方向(下方向)とこのボビン9から離れる方向(上方向)に移動して、昇降枠3に対する相対位置を変えることができる。
【0034】
次に、糸条巻取機1の全体制御を司る制御装置8について説明する。
図2に示すように、制御装置8は、例えば、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、糸条巻取機1の全体動作を制御するための各種プログラムやデータなどが格納されたROM(Read Only Memory)と、CPUで処理されるデータなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)などを備え、ROMに格納されたプログラムがCPUで実行されることにより、以下に説明するような種々の制御を行うものであってもよい。あるいは、演算回路を含む各種回路が組み合わされたハードウェア的なものであってもよい。
【0035】
この制御装置8は、ホルダ切替制御部41と、巻取制御部42と、トラバース制御部43と、接触位置制御部44とを有している。
【0036】
ホルダ切替制御部41は、回転モータ31を駆動して、ターレット4を回転させることで、2つのボビンホルダ5の位置を巻取位置P1と待機位置P2との間で切り替える。巻取制御部42は、回転モータ32を駆動して、巻取位置P1にあるボビンホルダ5を回転させることで、ボビンホルダ5に装着されたボビン9に糸条Yを巻き取る。
【0037】
トラバース制御部43は、トラバースモータ33を駆動して、トラバースカム20を回転させることで、トラバースガイド21を綾振り方向に往復移動させて、トラバースガイド21に挟まれた糸条Yを綾振り方向に綾振る。接触位置制御部44は、シリンダ34を駆動して、綾落ち抑制ガイド50の位置を綾振り方向に移動させて変更する。なお、第1実施形態では、上述したように綾落ち抑制ガイド50は固定されていてもよく、接触位置制御部44は必要ないが、後述する第2実施形態では、綾落ち抑制ガイド50を移動させる構成が必須となることにともない、接触位置制御部44が必要となるため、制御装置8は接触位置制御部44を有する構成としている。
【0038】
次に、綾落ち抑制ガイド50の配置位置について説明した後、トラバース装置6による綾振り動作について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、綾落ち抑制ガイドの配置位置について説明するための図である。なお、
図3においては、コンタクトローラ7の図示を省略している。そして、実際にはトラバースガイド21から案内された糸条Yはコンタクトローラ7にまず接触して、その周面をつたって、ボビン9に接触しているが、以降では、簡単のため、トラバースガイド21から案内された糸条Yは、コンタクトローラ7ではなく、ボビン9に直接接触しているものとして説明する。
図4は、トラバースガイドが反転するときの糸の糸形態について説明するための図である。なお、
図4において、トラバースガイド21の反転時には、糸条Yのボビン9との接触点は綾振り方向に少しずつ移動しているが、この移動量は微小であるので、移動していないものとして説明する。
【0039】
図3に示すように、1つのトラバース装置6(1本の糸条Y)に対して、綾落ち抑制ガイド50は2つ設けられている。そして、2つの綾落ち抑制ガイド50の端面50aは、反転位置にあるトラバースガイド21と支点ガイド19とを結ぶ線L1よりもトラバース中心側であって、支点ガイド19とボビン9の巻き幅の端位置に到達したトラバースガイド21とを結ぶ線L2上に設けられている。
【0040】
そして、トラバースガイド21とボビン9の間には、糸条Yが空中を無拘束で走行するフリーレングス区間、すなわちトラバースガイド21に掛かっている糸条Yがトラバースガイド21から解放されて、ボビン9に接触するまでの糸条Yの自由長の区間FLが存在する。そして、通常、糸条Yの張力が確保されていれば、このフリーレングス区間FLの糸条Yの形態は、トラバースガイド21とボビン9の接点を結ぶ直線となる。また、フリーレングス区間FLの糸条Yの傾きは、ボビンホルダ5の回転速度(ボビン9への糸条Yの巻取速度)とトラバースガイド21の綾振り速度の合成ベクトルとなる。
【0041】
このように、糸条Yがボビン9の軸方向に対して傾きを持って巻き取られる場合、トラバースガイド21は、ボビン9に巻き取られる糸条Yの巻き幅の端部X1を越えた外側まで綾振りすることになる。このとき、トラバースガイド21が巻き幅を越えて反転するときに、走行する糸条Yとトラバースガイド21の接触点と、走行する糸条Yとボビン9の接触点との間の直線距離は一瞬短くなる。特に、ボビン9に巻き取られる糸条Yの巻き幅の端部X1とボビン9の軸方向に関して同じ位置にトラバースガイド21が位置するとき(
図4の(2))が、上記距離が最も短いときである。このようなときに、仮に、綾落ち抑制ガイド50が設けられていないとすると、トラバースガイド21とボビン9との間のフリーレングス区間を走行する糸条Yの長さは変わらないため、糸条Yの形態が直線状から乱れて、予想不可能な糸形態に乱れた糸条Yをボビン9の巻き幅の端部X1で巻き取るため、綾落ちが起きてしまう。
【0042】
本発明では、
図4に示すように、糸条Yは(3)→(2)→(1)→(2)→(3)の順に糸形態を変えながら綾振られるが、トラバースガイド21が反転するときに、走行する糸条Yは綾落ち抑制ガイド50に接触して、走行抵抗を付与される。すると、糸条Yの走行抵抗が加わった箇所よりも下流側(ボビン9側)では糸条Yのテンションが増加し、糸条Yの弛みを簡単に取ることができる。そして、トラバースガイド21反転時のボビン9に巻き取られる直前のフリーレングス区間FLの糸条Yの糸形態を安定させて、糸形態の安定した糸条Yをボビン9の巻き幅の端部X1で巻き取ることで、綾落ちの発生を抑制することができる。
【0043】
このように、綾落ち抑制ガイド50は、少なくとも、反転位置(トラバース端部)にあるトラバースガイド21と支点ガイド19とを結ぶ線L1よりもトラバース中心側、すなわち、トラバース端部で走行する糸が弛み始める位置よりもトラバース中心側であれば、トラバースガイドとボビンとの間を走行する糸条の弛みを取って、上述したように綾落ちの発生を抑制することができる。また、綾落ち抑制ガイド50の端面50aが、上記線1よりもトラバース中心側であって、さらに、支点ガイド19とボビン9の巻き幅の端位置に到達したトラバースガイド21とを結ぶ線L2上であれば、トラバースガイドとボビンとの間を走行する糸条の弛みをより効果的に取ることができる。これは、例えば、綾落ち抑制ガイド50の端面50aが上記線L2上よりもトラバース中心側にあればあるほど、綾落ち抑制ガイド50に接触した糸条Yの、綾落ち抑制ガイド50による屈曲角が大きくなり、トラバースガイド21とボビン9との間を走行する糸条Yの弛みを取るというよりも、走行する糸条Yに与えるダメージが大きくなるからである。
【0044】
なお、綾落ち抑制ガイド50に接触することで糸条Yに付与される走行抵抗は、綾落ち抑制ガイド50の配置位置に加えて、ガイドの材質や糸条Yと接触する面の表面粗さを変えることでも変化させることができる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、糸条巻取機1は、第1実施形態で説明した綾落ち抑制ガイド50を移動させることが可能な構成となっており、接触位置制御部44により綾落ち抑制ガイド50の位置を変更させる構成となっている。すなわち、上述した綾落ち抑制ガイド50を移動させるためのシリンダ34や接触位置制御部44が必須の構成となる。
【0046】
そして、以下では、3つの巻き取り方式に適用した場合について説明する。
(1)第1実施形態で説明したカムドラム式のトラバース装置6ではなく、特開2010−163275号公報(以下、公報1と称す)に開示されたベルト式のトラバース装置を用いた場合には、トラバース幅の変更が自在である。ベルト式のトラバース装置は、ガイドが取り付けられた無端ベルトを駆動モータによって綾振り方向に往復移動させる装置である。そして、公報1の糸ガイド4の綾振り幅、すなわち糸ガイド4の反転位置を変更可能である。このような構成を用いて、例えば、ボビン9に巻き取られる糸条Yの巻き幅をテーパー状に変化させて、パッケージ10の端面を径方向外側に向かうにつれて傾斜させたテーパーエンドパッケージ形成する。
【0047】
このような場合、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、トラバースガイド21の反転位置は糸条Yの巻取量が増加するにつれて次第に内側に移動し(L4<L3)、これに合わせて、接触位置制御部44によりシリンダ34を制御して、綾落ち抑制ガイド50を内側(トラバース幅中心側)に移動させる。これにより、トラバースガイド21が反転するときに、走行する糸条Yを確実に綾落ち抑制ガイド50に接触させることができ、綾落ちをより効果的に抑制することができる。
【0048】
また、上述したように、綾落ち抑制ガイド50をボビン9の巻き幅に合わせて移動可能にして、綾落ち改善することで、テーパー角度を急にでき、巻き径をそのままにした状態で、1つのパッケージ10当たりの総巻取量を長くすることができる。
【0049】
(2)特開2010−189127号公報のように、トラバース速度をパッケージの巻き始めにおいて速くして、綾角(
図6の角度θ)を大きくすることで、パッケージ端面におけるバジルを抑制する場合には、すなわち、第2実施形態に適用したときに、
図2のトラバース制御部43によりトラバースガイド21の移動速度を速くして、綾角を大きくする場合には、この綾角が大きくなるタイミングに同期させて、接触位置制御部44により綾落ち抑制ガイド50を内側(トラバース幅中心側)に移動させる。
【0050】
(3)フリーレングス区間FLを増減させて、クリーピング(耳高防止)を行う場合には、すなわち、
図2の昇降枠3を昇降させることで、トラバースガイド21とパッケージ10の間の距離を増減させ、トラバース幅を変更させる。このとき、糸条Yの反転位置が次第に内側に移動し、これに合わせて、接触位置制御部44によりシリンダ34を制御して、綾落ち抑制ガイド50を内側(トラバース幅中心側)に移動させる。これにより、(1)と同様の効果を奏することができる。
【0051】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。ただし、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0052】
本実施形態においては、綾落ち抑制ガイド50を設けて、綾落ちの発生を抑制していたが、フリーレングス区間の糸条Yの弛みを取ることができれば、綾落ち抑制ガイド50を設ける構成に限らず、いかなる構成であってもよい。例えば、トラバースガイド21が反転するときに、巻取制御部42により回転モータ32を制御して、ボビンホルダ5の回転速度を一時的に上げてもよい。これによると、綾落ち抑制ガイド50により糸条Yに走行抵抗を加えて、糸条Yにテンションを付与して糸条Yの弛みを取る場合に比べて、糸品質に与える影響を少なくして、トラバースガイド21とボビン9との間を走行する糸条Yの弛みを取ることができる。
【0053】
さらに、糸条Yの巻取中に綾落ち抑制ガイド50を移動させる必要がなく、例えば、糸条Yの巻取停止中に糸種やボビン9への糸条Yの巻き幅を変更したときなどにだけ綾落ち抑制ガイド50を移動させるのであれば、綾落ち抑制ガイド50を昇降枠3にその位置を移動可能に図示しないネジなどで固定してもよい。そして、作業者が必要に応じてネジをゆるめて、綾落ち抑制ガイド50の位置を移動させて、再度ネジを締めてもよい。
【0054】
また、本実施形態においては、トラバース制御部43によりトラバースガイド21の綾振り幅に合わせて、接触位置制御部44によりシリンダ34を制御して、綾落ち抑制ガイド50の位置を移動させていたが、トラバースガイド21の綾振り幅に合わせて、綾落ち抑制ガイド50の位置が機械的または電気的に連動して移動するように構成してもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、カムドラム式やベルト式のトラバース装置を例に挙げて説明したが、ガイドを綾振り方向に往復移動させる構成のトラバース装置であれば、他のトラバース装置、例えば、アーム式などのトラバース装置にも本発明を適用することができる。アーム式のトラバース装置は、先端にガイドが形成されたアーム部材を駆動モータによって綾振り方向に往復移動させる装置である。