特許第5730559号(P5730559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730559
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/54 20100101AFI20150521BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20150521BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   H01L33/00 422
   H01L33/00 410
   H01L23/28 D
   H01L23/28 J
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-279497(P2010-279497)
(22)【出願日】2010年12月15日
(65)【公開番号】特開2012-129362(P2012-129362A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2012年11月27日
【審判番号】不服2014-7717(P2014-7717/J1)
【審判請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 孝志
(72)【発明者】
【氏名】赤沢 光治
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆
【合議体】
【審判長】 吉野 公夫
【審判官】 松川 直樹
【審判官】 山村 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−123802号公報(JP,A)
【文献】 特開2007−299879号公報(JP,A)
【文献】 特開2007−42749号公報(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/023992号(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体素子を埋設可能な封止樹脂層及び光波長変換粒子を含有する厚さ50〜200μmの波長変換層が直接又は間接的に積層されてなる光半導体素子封止用シートを、該封止樹脂層が光半導体素子搭載基板に対向するよう配置して凹型金型を用いて成型する光半導体装置の製造方法であって、前記凹型金型が、凹部底面の面積と凹部側面の面積の合計面積のうち、凹部底部面積が40%以上、60%未満を満足する凹部構造を有し、かつ、凹部底面の形状が正方形又は円形であ金型を用いて、得られる成型体が直方体又は円柱形状であり、その上面及び側面には波長変換層が形成され、かつ、成型体の高さが500〜1500μmとなるよう成型する、光半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置に関する。さらに詳しくは、光半導体素子封止用シートで一括封止されている光半導体装置、及び該装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白熱電球や蛍光灯にかわり、光半導体(発光ダイオード、LED)の発光装置が普及してきている。白色のLED装置には種々タイプが挙げられるが、青色の発光素子を用い、封止樹脂に青色を黄色に変換する蛍光体を分散させて、青色と黄色の混色で白色を発光する発光形態が現在の白色LED装置の主流である。
【0003】
近年、発光素子の開発が急ピッチで進んでおり、従来の砲弾型をメインとした低輝度の白色パッケージにかわり、一般照明器具や液晶テレビのバックライトにも使用できるような高輝度の白色LEDパッケージが主流になりつつある。そのため、従来封止樹脂として使われてきたエポキシ樹脂では光と熱による劣化によって透明性が低下するという問題が生じ、シリコーン等の劣化が少ない樹脂が使用されつつある。一方、シリコーン樹脂は耐久性が良好であるものの、通常、液体状態からパッケージを成型する必要があり、封止時の作業性の悪さが低いスループット、さらには高コストの要因となっている。
【0004】
このような理由により、液状のものを用いた封止工法に代わり、封止シートを用いた封止工法が提案され、作業性の大幅な改善が図られている。また、波長変換層を発光素子より離れたところ、即ち、パッケージの最も外側に配置することで、光の取り出し効率を向上させることができることから、均一な波長変換層を装置の最外層に容易に形成できる点においても、封止シートを用いたパッケージの作製方法が注目を集めている。
【0005】
封止シートを用いたパッケージの作製は、通常、発光素子上に封止シート、凹型金型をこの順にのせ、加圧成型することにより行われる。この場合、発光素子の上面、側面(横部)のいずれの面においても、パッケージの最も外側には、均一な波長変換層が形成されている。よって、光の取り出し効率は高く、明るい装置を得ることが可能となる。
【0006】
しかしながら、発光した光の配向状態、即ち、光が放射された各角度における光の色分布を詳細に調べると、正面方向に放射された光に比べ広角方向へ放射された光は色が濃くなる傾向にある。これは、正面方向に比べて広角方向に放射される光の方が、波長変換層を長い距離通過するためである。従って、封止シートを用いて作製される比較的高さの低いパッケージでは、角度毎の色度差、即ち、色度の角度依存性が大きく、照明などに用いられる場合には、見る方向によって光の色度の違いが問題となってくる。
【0007】
この問題を改善するために、パッケージの高さを高くし、なおかつ横部の波長変換層があらゆる面において発光素子に対して垂直となるように配置したドーム型のようなパッケージが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−327841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ドーム型パッケージは、作り難いという製造上の問題点を抱えていたり、最近の薄型パッケージの傾向に反するものであったりするなど、十分満足できるものではない。よって、封止シートを用いて簡便に作製でき、かつ、厚みの薄いもので、低い角度依存性を有するパッケージが望まれている。
【0010】
本発明の課題は、封止シートを用いて簡便に作製でき、かつ、厚みの薄いもので、低い色度角度依存性を有する光半導体装置、及び該装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、光半導体素子を埋設可能な封止樹脂層及び光波長変換粒子を含有する厚さ50〜200μmの波長変換層が直接又は間接的に積層されてなる光半導体素子封止用シートを、該封止樹脂層が光半導体素子搭載基板に対向するよう配置して凹型金型を用いて成型する光半導体装置の製造方法であって、前記凹型金型が、凹部底面の面積と凹部側面の面積の合計面積のうち、凹部底部面積が40%以上、60%未満を満足する凹部構造を有し、かつ、凹部底面の形状が正方形又は円形であ金型を用いて、得られる成型体が直方体又は円柱形状であり、その上面及び側面には波長変換層が形成され、かつ、成型体の高さが500〜1500μmとなるよう成型する、光半導体装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光半導体装置は、封止シートを用いて簡便に作製でき、かつ、厚みの薄いもので、低い色度角度依存性を有するため、全角度にわたって均一な色の光を放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1〜3及び比較例1〜5の光半導体装置を示す図である。
図2図2は、実施例4〜5の光半導体装置を示す図である。
図3図3は、実施例6の光半導体装置を示す図である。
図4図4は、参考例1のドーム形状の光半導体装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の光半導体装置は、光半導体素子(LEDチップ、あるいは単に素子ともいう)を埋設可能な封止樹脂層、及び光波長変換粒子を含有する波長変換層が直接又は間接的に積層された光半導体素子封止用シートを用いて、該封止樹脂層が光半導体素子搭載基板に対向するよう配置して凹型金型を用いて成型したものであって、光半導体素子を埋設した成型体(パッケージともいう)の上面の面積が、該上面面積と成型体の側面の面積との合計面積のうち40%以上、60%未満であることに大きな特徴を有する。なお、本明細書において、成型体の上面の面積とは成型体を真上から見た際に見える、基板に対して平行(平坦)な部分の総表面積を言い、成型体の側面の面積とは成型体を全ての横方向(全周囲)から見た際に見える、基板に対して垂直な部分の総表面積を言う。具体的には、例えば、成型体が直方体が上下に積み重ねられた2段状の形状である場合、上面の面積は、1番上の段の上面面積に加えて2段目の露出した部分の上面面積も含み、側面の面積は、1段目の全側面面積と2段目の全側面面積を合計したものを言う。
【0015】
一般的なパッケージでは、正面方向(光半導体素子搭載基板に対して垂直方向)に放射される光が波長変換層を通過する距離は、波長変換層の厚みと等しくなる。しかし、広角方向へ放射される光は波長変換層を斜めに通過するため、通過距離が波長変換層の厚みよりも大きくなり、広角に放射される光ほど波長変換の効果を受ける。例えば、高さが低く、上面の面積が大きいパッケージの場合、光の殆どがパッケージの上面の面から外に出るため、パッケージの真上から見るとやや青っぽい白色光が見られるが、広角から見るとパッケージの側面から放射された黄色の濃い白色光が見える。
【0016】
また、真横方向(光半導体素子搭載基板に対して平行方向)に放射される光は、前記と同様の原理で放射されるため、真横方向、即ち、側面方向に放射される光は波長変換層を真っ直ぐ通過するが、広角方向、即ち、正面方向よりに放射される光ほど波長変換層を斜めに通過するため、波長変換の効果を受ける。よって、パッケージの上面と側面のいずれにおいても、各面に対して垂直方向と広角方向の両方向の光が混在して放射されることになるため、この混在程度を決定すれば、色度の角度依存性が均一なものになると推定される。そこで、本発明では、パッケージの上面と側面の面積比が特定範囲内になるように設定することで、全角度にわたって均一な色の光が放たれることになる。
【0017】
本発明の光半導体装置は、光半導体素子封止用シートを用いて一括封止したものであり、該光半導体素子封止用シートは、光半導体素子を埋設可能な封止樹脂層及び光波長変換粒子を含有する波長変換層を含む。
【0018】
封止樹脂層は、凹型金型を押し付けて成型した際に光半導体素子を埋設することが可能な層であるが、封止時に素子を包埋できる柔軟性に加えて、使用時には外部の衝撃から素子を保護するための強度が必要である。このような観点から、封止樹脂層には、素子を包埋することができる低弾性(可塑性)と、その後硬化して形状を保持する特性(後硬化性)が必要である。
【0019】
かかる特性を有する封止樹脂層を構成する樹脂としては、可塑性と後硬化性を併せ持つ樹脂であれば特に限定はないが、耐久性の観点から、シリコーン樹脂を主成分として含有することが好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは、樹脂層を構成する成分のうち、50%以上の成分のことを言う。
【0020】
シリコーン樹脂は、シロキサン骨格の架橋数により、ゲル状物、半硬化物、硬化物等のシリコーン樹脂が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、本発明における封止樹脂層は、封止時の圧力によって層の形状が変化するような柔軟性を有し、かつ、硬化した際に衝撃等に耐えうる強度を有するというような、温度によって異なる強度を示すことが好ましいことから、2つの反応系を有するシリコーン樹脂、及び変性シリコーン樹脂が好ましい。
【0021】
2つの反応系を有するシリコーン樹脂としては、例えば、シラノール縮合反応とエポキシ反応の2つの反応系を有するものや、シラノール縮合反応とヒドロシリル化反応の2つの反応系を有するもの(縮合-付加硬化型シリコーン樹脂)が例示される。
【0022】
変性シリコーン樹脂としては、シロキサン骨格中のSi原子をB、Al、P、Tiなどの原子に一部置換した、ボロシロキサン、アルミノシロキサン、ホスファーシロキサン、チタナーシロキサン等のヘテロシロキサン骨格を有する樹脂や、シロキサン骨格中のSi原子にエポキシ基等の有機官能基を付加した樹脂が例示される。なかでも、ジメチルシロキサンは高架橋でも低弾性率であることから、ジメチルシロキサンにヘテロ原子を組み込んだ、あるいは有機官能基を付加した変性シリコーン樹脂がより好ましい。なお、封止樹脂層が前記のような強度を有するためには、公知の方法で、シロキサン骨格の架橋数を調整すればよい。
【0023】
これらの樹脂は、公知の製造方法により製造することができるが、縮合-付加硬化型シリコーン樹脂を例に挙げて説明する。例えば、両末端シラノール型シリコーンオイル、アルケニル基含有シラン化合物としてビニル(トリメトキシ)シラン、及び有機溶媒の混合物に、縮合触媒として水酸化テトラメチルアンモニウムを添加後、室温で2時間攪拌混合し、そこに、オルガノハイドロジェンシロキサン及びヒドロシリル化触媒として白金触媒を加えて混合することにより、縮合-付加硬化型シリコーン樹脂を得ることができる。
【0024】
シリコーン樹脂の含有量は、封止樹脂層を構成する樹脂中、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは実質的に100重量%である。
【0025】
また、本発明における封止樹脂層は、熱伝導性や光拡散性を向上させる観点から、無機粒子を含有することができる。無機粒子としては、二酸化ケイ素(シリカ)、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
封止樹脂層における無機粒子の含有量は、熱伝導性や光拡散性の観点から、10〜70重量%が好ましく、40〜60重量%がより好ましい。
【0027】
封止樹脂層には、前記以外に、硬化剤や硬化促進剤、さらに老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤が原料として配合されていてもよい。なお、これらの添加剤を含有しても、封止樹脂層としては、可塑性と後硬化性を有する樹脂層であればよい。
【0028】
封止樹脂層は、前記樹脂もしくは樹脂の有機溶媒溶液を、例えば、表面を離型処理したセパレーター(例えば、2軸延伸ポリエステルフィルム)の上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに製膜し、さらに、硬化反応を進行させず、溶媒の除去が可能な程度の温度で乾燥することにより、シート状に成形される。製膜した樹脂溶液を乾燥させる温度は、樹脂や溶媒の種類によって異なるため一概には決定できないが、80〜150℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。また、縮合-付加硬化型シリコーン樹脂を用いる場合は、前記乾燥により、縮合反応が進行するため、得られるシート状の封止樹脂層は半硬化状を呈する。なお、得られたシートは、複数枚積層して20〜180℃で熱プレスして圧着させて一体化したものを、一枚の封止樹脂層として用いてもよい。
【0029】
封止樹脂層の厚みは、LEDチップを埋設可能であれば特に限定はなく、LEDチップの厚みより大きければよく、200μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましい。また、蛍光体の波長変換による発熱を光半導体素子側へ逃げ易くする観点から、5000μm以下が好ましく、3000μm以下がより好ましい。従って、本発明における封止樹脂層の厚みは、200〜5000μmが好ましく、500〜3000μmがより好ましい。
【0030】
本発明における封止樹脂層は、常温ではシート状態であり、かつ、セパレーターからの剥離が容易である観点から、23℃における貯蔵弾性率が、好ましくは1.0×104Pa以上(0.01MPa以上)、より好ましくは2.0×104〜1.0×106Pa(0.02〜1.0MPa)であり、150℃における貯蔵弾性率が、好ましくは1.0×106Pa以下(1.0MPa以下)、より好ましくは1.0×104〜1.0×105Pa(0.01〜0.1MPa)である。また、150℃で5時間硬化後の23℃の貯蔵弾性率は、好ましくは1.0×106Pa以上(1.0MPa以上)、より好ましくは1.0×106〜1.0×107Pa(1.0〜10MPa)である。
【0031】
波長変換層は、光波長変換粒子を含有する樹脂層であって、素子からの光の一部を波長変換してLEDチップからの発光と混合することで、所望の色の発光に調整することができる。また、本発明においては、波長変換層で反射された光が屈折率の高いLEDチップに到達するのを抑制する観点から、パッケージの最も外側に波長変換層を配置するのが好ましい。
【0032】
波長変換層における光波長変換粒子(蛍光体)としては、特に限定はなく、光半導体装置で用いられる公知の蛍光体が挙げられる。具体的には、青色を黄色に変換する機能を有する好適な市販品の蛍光体として、黄色蛍光体(α−サイアロン)、YAG、TAG等が例示され、赤色に変換する機能を有する好適な市販品の蛍光体として、CaAlSiN3等が例示される。これらの蛍光体は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
光波長変換粒子の含有量は、波長変換層の厚みによって混色程度が異なることから、一概には決定されないが、例えば、波長変換層の厚みが100μmである場合、光波長変換粒子の含有量は10〜30重量%であることが好ましい。
【0034】
波長変換層における樹脂としては、従来から光半導体封止に用いられる樹脂であれば特に限定はなく、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の透明樹脂が挙げられるが、耐久性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。
【0035】
シリコーン樹脂としては、上記で挙げたシリコーン樹脂が同様に挙げられ、市販されているものを使用してもよいし、別途、製造したものを使用してもよい。
【0036】
波長変換層には、前記樹脂及び光波長変換粒子に加えて、封止樹脂層と同様の添加剤が原料として配合されていてもよい。
【0037】
波長変換層は、前記光波長変換粒子を含有する樹脂もしくは樹脂の有機溶媒溶液を、例えば、表面を離型処理したセパレーター(例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム)の上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに製膜し、さらに、硬化反応を進行させず、溶媒の除去が可能な程度の温度で乾燥することにより、シート状に成形される。製膜した樹脂溶液を乾燥させる温度は、樹脂や溶媒の種類によって異なるため一概には決定できないが、80〜150℃が好ましく、90〜150℃がより好ましい。
【0038】
加熱乾燥後の波長変換層のシート厚さは、光取り出し効率向上の観点から、50〜200μmが好ましく、70〜120μmがより好ましい。なお、得られたシートは、複数枚積層して熱プレスすることにより、上記範囲の厚みを有する1枚のシートとして成形することもできる。また、その際に、異なる種類の光波長変換粒子を含有する波長変換層を複数用いて成形してもよい。
【0039】
波長変換層の150℃の貯蔵弾性率は、層の厚みが変形するとパッケージの色が変化することから、1.0×105Pa以上(0.1MPa以上)が好ましく、1.0×106〜1.0×108Pa(1.0〜100MPa)がより好ましい。
【0040】
本発明における光半導体素子封止用シートは、前記封止樹脂層と波長変換層を有するのであれば特に限定はないが、セパレーターを有するものであってもよく、セパレーターの上に、波長変換層、封止樹脂層がこの順に積層されていることが好ましい。
【0041】
セパレーターとしては、波長変換層から剥離できるものであればよいが、剥離段階、即ち、光半導体素子封止用シートからセパレーターを剥離後にシートを成型する場合と、光半導体素子封止用シートを成型後にセパレーターを剥離させる場合によって異なる材質が挙げられる。
【0042】
セパレーターを剥離後にシート成型を行う場合に使用可能なセパレーターとしては、波長変換層の表面を被覆保護できるものであれば特に限定されず、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
【0043】
一方、シート成型後にセパレーターを剥離させる場合に使用可能なセパレーターとしては、成型の際の金型追従性が必要となるので、常温では剛直であるものの、硬化温度、例えば150℃の貯蔵弾性率が1.0×108Pa以下である材質が挙げられる。具体的には、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、シリコーン樹脂フィルム、スチレン樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルム等が例示される。
【0044】
なお、本発明においては、波長変換層からの剥離を容易にさせる観点から、セパレーター表面に公知の方法に従って離型処理を施したものを用いてもよい。
【0045】
セパレーターの厚みは、特に限定されないが、金型に追従させる場合には、20〜100μmが好ましく、30〜50μmがより好ましい。
【0046】
封止樹脂層及び波長変換層の積層方法としては、特に限定はなく、例えば、封止樹脂層をシート状に成形する際に、セパレーターの上に成形した波長変換層の上に直接、封止樹脂層を成形して積層させる方法が挙げられる。なお、本明細書において、「直接積層」しているシートとは、封止樹脂層及び波長変換層が直接積層されて形成されているシートのことを意味し、「間接的に積層」しているシートとは、封止樹脂層と波長変換層の間に、常法に従って他の層を介して積層されて形成されているシートのことを意味する。
【0047】
かくして得られた光半導体素子封止用シートを、封止樹脂層が光半導体素子搭載基板に対向するよう配置して、その上に凹型金型を配置して成型することにより、本発明の光半導体装置が得られる。
【0048】
本発明に用いられる光半導体素子は、通常、光半導体装置に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、窒化ガリウム(GaN、屈折率:2.5)、ガリウムリン(GaP、屈折率:2.9)、ガリウム砒素(GaAs、屈折率:3.5)などが挙げられ、これらの中では、青色を発光し、蛍光体を介して白色LEDの製造ができるという観点から、GaNが好ましい。
【0049】
光半導体素子が搭載される基板も特に限定されないが、例えば、メタル基板、ガラス−エポキシ基板に銅配線を積層したリジッド基板、ポリイミドフィルム上に銅配線を積層したフレキシブル基板などが挙げられ、平板や凹凸板等いずれの形態のものも用いることができる。
【0050】
当該基板への光半導体素子の搭載方法としては、発光面に電極が配置された光半導体素子を搭載するのに好適なフェイスアップ搭載法、発光面とは逆の面に電極が配置された光半導体素子を搭載するのに好適なフリップチップ搭載法などが挙げられる。
【0051】
成型方法としては、光半導体素子封止用シートの波長変換層がパッケージ側面に均一の厚みで配置され、かつ、成型後のパッケージの上面と側面の面積が特定割合となるのであれば特に限定はない。具体的な方法としては、例えば、LEDチップが搭載された平板な基板の上に、封止樹脂層が該基板と対向するように光半導体素子封止用シートを配置して、セパレーターを付けたまま凹型金型を押し付けて成型後、凹型金型とセパレーターを順に剥離する方法が挙げられる。
【0052】
凹型金型を用いた成型条件としては、特に限定はないが、加熱温度は、80〜200℃が好ましく、100〜160℃がより好ましい。加熱時間は、1〜60分が好ましく、5〜20分がより好ましい。また、常圧下(101.3kPa)で成型してもよいが、樹脂層への気泡の混入を防止する観点から減圧下で成型してもよい。
【0053】
凹型金型としては、後述のパッケージが得られる凹部構造を有するものが挙げられる。即ち、本発明では、得られる成型体の上面面積と側面面積の比が一定範囲内となるような、特定の凹部構造を有する凹型金型を用いることに一つの特徴を有する。本発明で用いる凹型金型は、凹部底部の面積と凹部側面の面積が成型体の前記面積比を満足するような面積比を有するものであり、かつ、凹部底部が平坦であり、凹部側面が底部に対して垂直な配置をとるものである。
【0054】
加圧成型後は、凹型金型やセパレーターを剥離する前に、封止樹脂層の硬化に必要な時間まで加温加圧してポストキュアを行ってもよい。ポストキュアの条件は特に限定されない。
【0055】
また、本発明においては、LEDチップ上に光半導体素子封止用シートを配置する際に、外力や成型時の圧力によってLEDチップ周辺のワイヤーが破損することを防ぐ観点から、予め、LEDチップ及び周辺ワイヤー上に保護用樹脂(ポッティング樹脂ともいう)を滴下し、加熱乾燥することにより保護してもよい。
【0056】
ポッティング樹脂としては、従来から光半導体封止に用いられる樹脂であれば特に限定はなく、また、熱伝導性や光拡散性の観点から、添加剤として、二酸化ケイ素(シリカ)、硫酸バリウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム等の無機粒子を含有することができる。
【0057】
ポッティング樹脂は、LEDチップやその周辺ワイヤーを被覆できれば、使用量は特に制限されない。
【0058】
成型されたパッケージは、室温下においても形状が変化しなくなるまで、放置後、封止樹脂層の硬化に必要な時間まで加温加圧してポストキュアを行ってもよい。
【0059】
得られたパッケージの形状としては特に限定はなく、直方体、立方体、円柱、階段状構造物等が挙げられる。
【0060】
パッケージの大きさとしては、小さすぎると波長変換層で発生する熱がこもりやすいことから、最外層の表面積が20mm2以上が好ましい。また、大きすぎると使用樹脂量の増加やハンドリング性の悪化等の問題があるため、最外層の表面積は300mm2以下が好ましい。なお、ここでいう最外層の表面積とは、成型体の上面の面積と成型体の側面の面積を合計したものを意味する。
【0061】
パッケージの高さとしては特に限定はないが、500〜5000μmが好ましく、800〜3000μmがより好ましい。
【0062】
また、本発明においては、パッケージの上面と側面の面積比が特定であることから均一な色度の発光が得られることが大きな特徴である。即ち、パッケージの上面の面積は、パッケージ上面面積と側面面積の合計面積のうち、40%以上、60%未満、好ましくは45〜55%を占める。なお、前記面積比となるためには、パッケージの高さとパッケージの大きさ(平面面積)とを任意の割合に適宜調整すればよい。
【0063】
かくして得られた本発明の光半導体装置は、光半導体素子封止用シートを用いて一括封止でき、また、該シートにおける波長変換層がパッケージの最外層に位置することから、光取り出し効率に優れ、かつ、均一な色度の発光が得られるものである。
【0064】
また、本発明では、前記光半導体素子封止用シートを用いて封止する、光半導体装置の製造方法を提供する。該製造方法は、前記光半導体素子封止用シートを、封止樹脂層が光半導体素子搭載基板に対向するよう配置して凹型金型を用いて成型する工程を含むものであり、特定の凹部構造を有する凹型金型を使用するものであれば特に限定はない。具体的には、本発明の光半導体素子封止用シートを、封止樹脂層が光半導体素子搭載基板に対向するよう配置して、その上から、凹型金型を押し付けて好ましくは100〜160℃で成型する方法が挙げられる。
【0065】
かくして得られる本発明の光半導体装置は、光取り出し効率に優れ、かつ、均一な色度の発光が得られることから、光半導体の発光装置として好適に使用される。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。なお、ここで「室温」とは、20〜30℃を意味する。
【0067】
光半導体素子封止用シートの調製例1
(波長変換層の調製)
シリコーンエラストマー(旭化成ワッカー社製、商品名「LR7665」、ジメチルシロキサン骨格誘導体)溶液に、黄色蛍光体(YAG)を粒子濃度20重量%となるように添加し1時間攪拌して、波長変換層構成溶液を得た。得られた溶液を、市販のポリプロピレンフィルム(厚み50μm)上に100μmの厚みに塗工し、80℃で10分乾燥することにより、セパレーター上に積層された波長変換層を得た。
【0068】
(封止樹脂層の調製)
両末端シラノール型シリコーオイル200g(17.4mmol)、ビニル(トリメトキシ)シラン1.75g(11.8mmol)及び2-プロパノール20mLの混合物に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの10%水溶液320μL(0.35mmol)を加え、室温で2時間攪拌混合した。得られたオイルに、オルガノハイドロジェンポリシロキサン1.50g及び白金カルボニル錯体溶液(白金濃度2重量%)105μLを加えて攪拌混合し、封止樹脂層構成溶液を得た。
【0069】
(光半導体素子封止用シート)
セパレーターに積層した波長変換層の上に、前記で得られた封止樹脂層構成溶液を900μmの厚みに塗工し、80℃で20分乾燥することによりシートを得た(セパレーターを除く厚み1000μm)。
【0070】
実施例1〜6及び比較例1〜4
2cm×3cmのメタル基板の中央に青色LEDチップ(1mm×1mm)が実装されている基板に、前記で得られた光半導体素子封止用シートを封止樹脂層が基板に対向するよう配置し、その上から表1に示す凹型金型を配置した。この際に、金型底部の中央とチップの中央は位置が合うように配置した。次に、真空ラミネーター(ニチゴーモートン社製)を用いて、150℃、0.1MPaの条件で10分間成型した。その後、真空ラミネーターから取り出し、封止樹脂層が室温下においても形状が変化しなくなるまで放置後、金型、セパレーターを順に剥離して、150℃の乾燥機にて5時間ポストキュアを行って、光半導体装置を製造した。
【0071】
参考例1
φ2.0mmのドーム形状の凹部(ドーム凹部)が形成された金型に前記光半導体素子封止用シートの調製に用いた封止樹脂層構成溶液を充填したものを、実施例1と同様の基板上に、ドーム凹部の底部中央とチップの中央が位置が合うように配置して、真空ラミネーター(ニチゴーモートン社製)を用いて、150℃、0.1MPaの条件で10分間成型した。その後、真空ラミネーターから取り出し、封止樹脂層が室温下においても形状が変化しなくなるまで放置後、金型を剥離して、封止樹脂層で封止されたLEDチップを得た。
【0072】
次に、φ2.2mmのドーム形状の凹部(ドーム凹部)が形成された金型に前記光半導体素子封止用シートの調製に用いた波長変換層構成溶液を充填後、その中にφ2.0mmのドーム形状の凸部が形成された金型をそれぞれの金型中心が合うように配置して、真空ラミネーター(ニチゴーモートン社製)を用いて、150℃、0.1MPaの条件で10分間成型した。その後、真空ラミネーターから取り出し、波長変換層が室温下においても形状が変化しなくなるまで放置後、金型を剥離して、内部にφ2.0mmのドーム形状がくり貫かれたφ2.2mmのドーム形状の波長変換層を得た。
【0073】
得られた波長変換層をLEDチップの封止樹脂層の上に被せて配置し、ドーム形状を有する光半導体装置を得た。
【0074】
得られた光半導体装置について、以下の試験例1〜2に従って、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0075】
試験例1(色度角度依存性)
光半導体装置に50mAの電流を流して、各角度の放射光を分光光度計(大塚電子社製、MCPD-3000)を用いて検知し、色度をCIE色度指標(x、y)で表わした。同一材料の光半導体素子と波長変換物質から得られる混色による色度(x、y)の(x)値と(y)値は1対1の関係にあるため、0°(正面)から80°までの放射光のうち、CIE色度(y)値について、最大値と最小値の差を色度差として算出し、以下の評価基準に従って色度角度依存性を評価した。なお、色度差が小さいほど色度角度依存性が小さいことを示し、一般的な人間の目によって識別できる色度差は0.03程度である。
【0076】
<色度角度依存性の評価基準>
○:色度差が0.030未満
×:色度差が0.030以上
【0077】
試験例2(波長変換特性)
光半導体装置を銅製のヒートシンクに装着後、1Aの電流を流して、パッケージ表面の温度をサーモグラフィック装置(CHINO社製、CPA1000)を用いて測定し、以下の評価基準に従って波長変換特性を評価した。なお、パッケージの表面温度が120℃を超えると、蛍光体の波長変換効率が低下するため、波長変換特性が劣ることを示す。
【0078】
<波長変換特性の評価基準>
○:パッケージ表面温度が120℃未満
△:パッケージ表面温度が120℃以上
【0079】
【表1】
【0080】
結果、実施例の光半導体装置は、比較例に比べて、色度角度依存性が小さく、均一な色度の発光が得られることが分かる。また、参考例1の光半導体装置は色度角度依存性が小さく均一な色度の発光が得られるが装置作製が煩雑であるのに対し、実施例の光半導体装置は均一な色度の発光が得られ、さらには簡便に得られるという優れたものである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の光半導体装置は、色度角度依存性が小さく、例えば、液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイや広告看板等に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 基板
2 成型体
3 封止樹脂層
4 φ2.0mm凹型金型
5 波長変換層
6 φ2.2mm凹型金型
7 φ2.0mm凸型金型
図1
図2
図3
図4