特許第5730618号(P5730618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5730618-擬似接着ラベル 図000003
  • 特許5730618-擬似接着ラベル 図000004
  • 特許5730618-擬似接着ラベル 図000005
  • 特許5730618-擬似接着ラベル 図000006
  • 特許5730618-擬似接着ラベル 図000007
  • 特許5730618-擬似接着ラベル 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730618
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】擬似接着ラベル
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/02 20060101AFI20150521BHJP
   B42D 11/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   G09F3/02 N
   B42D11/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-45520(P2011-45520)
(22)【出願日】2011年3月2日
(65)【公開番号】特開2012-181449(P2012-181449A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2013年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大介
(72)【発明者】
【氏名】松島 大
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−243919(JP,A)
【文献】 特開2010−173694(JP,A)
【文献】 特開2001−225851(JP,A)
【文献】 特開平04−142254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/00− 3/20
B42D 1/00−15/00
B65D 5/00− 5/76
B65D 27/00−27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面基材と、前記表面基材に擬似接着される擬似接着層と、粘着剤層とがこの順に積層された積層構造を備え、前記粘着剤層が被着物に貼着された状態で、前記表面基材を前記擬似接着層から剥離可能な擬似接着ラベルであって、
前記表面基材は、少なくとも2以上のラベル部に分離して前記擬似接着層から剥離可能とする分離線を備え、
前記分離線は、複数の切れ目が間隔をおいて形成された断裁線が、少なくとも2本近接して並べられて複線状となり、
前記少なくとも2本の断裁線のうちの1本の断裁線の間隔を塞ぐように、その間隔の近傍に他の1本の断裁線の切れ目が配置され
前記分離線は、前記断裁線が、少なくとも3本近接して並べられて複線状となり、
前記1本の断裁線の前記間隔を両側から塞ぐように、他の2本の断裁線の切れ目が配置され、
前記1本の断裁線の各切れ目は、直線状であり、
前記1本の断裁線の各切れ目の長さL1は、前記1本の断裁線の前記間隔の長さD1よりも長く、かつ、前記長さL1は前記他の2本の断裁線の切れ目の長さL2、L3よりも長いことを特徴とする擬似接着ラベル。
【請求項2】
前記長さL1に対する前記長さD1の比D1/L1は、1/10〜2/3であることを特徴とする請求項1に記載される擬似接着ラベル。
【請求項3】
前記長さD1は0.2〜1.0mmであり、前記他の2本の断裁線の切れ目の上端又は下端と、前記1本の断裁線の各切れ目との離間距離E1は0.2〜1.5mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載される擬似接着ラベル。
【請求項4】
前記断裁線のうちの前記他の1本又は2本の断裁線の各切れ目は、直線状、あるいは両端が前記1本の断裁線に近づくように傾斜した線状であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載される擬似接着ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の搬送や管理等に使用される配送伝票、各種の保険やチケットの申し込み等に使用される記録票等に適用される擬似接着ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、郵便、宅配便、通信販売などにおいて、商品の受注、発送、顧客の受け取り等からなる流通過程を管理するために、配送伝票等が用いられる。広く用いられる配送伝票の1つとして、感圧紙が複数枚重ね合わされた伝票がある。このような配送伝票では、商品名、送り先等の情報を記入する際、一番下の伝票まで情報を書き込むために、強い圧力を加えなければならず、ボールペン、タイプライター、ドットプリンター等が必要とされる。しかし、ボールペン、タイプライターを用いての書き込みは、煩雑な手作業であり、また誤字、脱字、写し間違いなどによって、誤配送の原因となる。また、ドットプリンターを用いる場合、印字に時間がかかるという欠点がある。さらに、感圧紙が複数枚重ね合わされた配送伝票は、その一部が流通過程で破れたり、剥がれ落ちたりすることもある。
【0003】
上記問題点を解決するために、例えば、表面基材、擬似接着層、粘着剤層、及び剥離シートがこの順に積層されてなり、表面基材と擬似接着層との間が剥離可能なように擬似接着された擬似接着ラベルが配送伝票に使用される。擬似接着ラベルは、剥離シートが剥離された後、粘着剤層が配送物に貼付されて、配送伝票として使用される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような擬似接着ラベルの配送伝票には、通常、種々の印刷が施された表面基材の表面にミシン目の切れ目や、連続的な一条の切れ目によって形成された分離線が入れられており、1枚の表面基材が2つのラベル部として分離して剥離可能となっている。そして、例えば、一方のラベル部が配達票として使用されると共に、他方のラベル部が、受領票として使用され、捺印・サイン後に剥がされて持ち帰られ、伝票整理等に使用される。
【0005】
擬似接着ラベルを用いれば、郵便、宅配便、通信販売などにおいて商品の受注から顧客の受け取りまで1枚のシートで流通過程を管理することが可能であり、さらに流通過程における伝票の破れや紛失等も防止することができる。また、レーザープリンター、熱転写等による情報の書き込みが可能であるため、記入が迅速に行えると共に、誤字・脱字等も低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭55−15035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、擬似接着ラベルにおいて分離線がミシン目の場合には、ミシン目で一方のラベル部を切り離すことができずに表面基材が破れるおそれがある。特に、表面基材は紙の流れ方向やフィルムの延伸方向に沿って破れやすいため、ミシン目が流れ方向や延伸方向に対して垂直に形成されている場合には、表面基材がより破れやすくなる。
【0008】
一方、分離線が一条の切れ目によって構成される場合には、表面基材の破れは発生しにくいが、擬似接着ラベルを剥離シートから剥離した際、ラベルが分離線で折れ曲がりやすく、作業性が悪いという問題がある。また、一条の切れ目の場合には、剥離シートから剥離された擬似接着ラベルが切れ目によって分断されないように、切れ目は、擬似接着層や粘着剤層には切り込まず、表面基材のみを切り込んで形成する必要がある。しかし、このような切れ目は、切込の制御が難しく、所望の深さに切込を入れることが難しいという加工上の問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、表面基材を分離線で分離して剥離する際に、分離線以外の箇所で表面基材に破れが発生することなく、更に擬似接着ラベルが分離線で折れ曲がることなく作業性の良い擬似接着ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る擬似接着ラベルは、表面基材と、表面基材に擬似接着される擬似接着層と、粘着剤層とがこの順に積層された積層構造を備え、粘着剤層が被着物に貼着された状態で、表面基材を擬似接着層から剥離可能な擬似接着ラベルであって、表面基材は、少なくとも2以上のラベル部に分離して擬似接着層から剥離可能とする分離線を備え、分離線は、複数の切れ目が間隔をおいて形成された断裁線が、少なくとも2本近接して並べられて複線状となり、上記少なくとも2本の断裁線のうちの1本の断裁線の間隔を塞ぐように、その間隔の近傍に他の1本の断裁線の切れ目が配置されることを特徴とする。
【0011】
分離線が、断裁線が少なくとも3本近接して並べられて複線状となる場合、上記1本の断裁線の間隔を両側から塞ぐように、他の2本の断裁線の切れ目が配置されることが好ましい。
【0012】
上記1本の断裁線の各切れ目は、直線状であることが好ましい。また、断裁線のうち上記他の1本又は2本の断裁線の各切れ目は、直線状、あるいは両端が上記1本の断裁線に近づくように傾斜した線状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、表面基材を分離線で分離して剥離する際に、分離線以外の箇所で表面基材に破れが発生することなく、更にラベルが分離線で折れ曲がることがなく作業性の良い擬似接着ラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る擬似接着ラベルを模式的に示す断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る擬似接着ラベルを模式的に示す平面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る擬似接着ラベルの分離線の部分拡大図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る擬似接着ラベルの分離線の部分拡大図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る擬似接着ラベルの分離線の部分拡大図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る擬似接着ラベルの分離線の変形例を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
本発明の第1実施形態に係る擬似接着ラベルを図1〜3を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る擬似接着ラベルを模式的に示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る擬似接着ラベル10は、表面基材11、表面基材11に擬似接着される擬似接着層12、擬似接着層12に接着された粘着剤層13がこの順に積層された積層構造を備え、更に、剥離基材14が粘着剤層13に貼着されている。擬似接着ラベル10は、剥離基材14が粘着剤層13から剥離され、露出した粘着剤層13によって、被着物(図示せず)に貼着されて使用される。
【0017】
擬似接着層12は、表面基材11に剥離可能に擬似接着されており、ラベル10が被着物に貼着された状態で、表面基材11が擬似接着層12から剥離される。擬似接着ラベル10には、表面基材11の表面から多数の切れ目31〜33が切り込まれており、後述するように、切れ目31〜33によって分離線20(図2参照)が構成される。切れ目31〜33は、図1に示すように、表面基材11の表面から切り込まれて、表面基材11、擬似接着層12、及び粘着剤層13を貫通するものである。ただし、切れ目31〜33は、表面基材11の裏面まで貫通していれば、擬似接着層12及び粘着剤層13は切り込まれていなくても良い。
【0018】
表面基材11としては、例えば上質紙、熱転写用紙、クラフト紙、グラシン紙、感熱紙、合成紙、又はプラスティックフィルムが使用される。表面基材11の厚みは、例えば15〜120μm、好ましくは20〜110μmであり、更に好ましくは30〜100μmである。表面基材11の表面は、例えば文字等の情報が表示されるための面に使用される。
【0019】
擬似接着層12は、表面基材11に剥離可能に擬似接着されるものであれば、特に限定されないが、熱可塑性樹脂層であることが好ましい。熱可塑性樹脂層は、例えば、加熱溶融された熱可塑性樹脂が表面基材11の裏面に押出積層されることにより形成される。熱可塑性樹脂層を形成するための熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等が単独で又は2種類以上混合されて使用される。熱可塑性樹脂層の厚さは、特に限定されないが、例えば3〜70μm、好ましくは5〜50μmである。
【0020】
表面基材11の裏面には、擬似接着層12から表面基材11を容易に剥離できるように、離型剤層が被膜されていても良い。離型剤層は、特に限定されないが、スチレン−アクリル共重合体、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル、アクリル酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体などからなる離型剤によって形成される。なお、表面基材11は、離型剤層が設けられる場合には、擬似接着層12と離型剤層との界面で剥離される。また、表面基材11は、その裏面にさらに上記熱可塑性樹脂で形成された熱可塑性樹脂層と、離型剤層とがこの順に設けられたものであっても良い。
【0021】
粘着剤層13は、擬似接着層12の裏面側に設けられ、擬似接着ラベル10を被着物に粘着させるための層であって、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の従来公知の粘着剤から形成される。粘着剤層13の厚さは、特に限定されないが、例えば5〜50μm、好ましくは10〜40μmである。剥離基材14は、粘着剤層13に貼着されるための表面がシリコーン系剥離剤等によって離型処理された剥離シート等である。
【0022】
粘着剤層13は、例えば、剥離基材14に粘着剤が塗布されて形成される。そして、その剥離基材14の上に形成された粘着剤層13に、表面基材11に積層された擬似接着層12が貼り合わされることにより、擬似接着ラベル10が得られる。但し、粘着剤層13は、表面基材11に積層されている擬似接着層12の上に直接塗布して形成され、その上に剥離基材14が貼り合わされて擬似接着ラベル10が形成されても良い。
【0023】
図2は第1実施形態に係る擬似接着ラベル10を模式的に示す平面図であり、図3図2の分離線20の部分拡大図である。擬似接着ラベル10は、打ち抜き加工が施されることにより、表面基材11、擬似接着層12、及び粘着剤層13が打ち抜き切断された後、カス上げによって不要部分が剥離基材14から取り除かれ、下辺10A及び上辺10Bを長辺とし、左右の側辺10C、10Dを短辺とする略矩形のラベルに形成される。擬似接着ラベル10は、打ち抜き加工と共に略中央部にミシン目加工が施され、表面基材11の略中央部に分離線20が形成される。打ち抜き加工及びミシン目加工は、例えば、ダイカッタが用いられて行われるが、レーザー照射等によって行われても良い。
【0024】
図2に示すように、分離線20は、表面基材11の下辺10Aから上辺10Bまで直線的に縦方向に延在する。表面基材11は、分離線20によって右左の矩形シート(これらをラベル部18、19という)に分離して擬似接着層12から剥離可能である。
【0025】
分離線20は、第1〜第3の断裁線21、22、23が、近接して横方向に並べられて形成され複線状となる。図3に示すように、第1の断裁線21は、縦方向(すなわち、分離線20に沿う方向)に平行な直線状の切れ目31が、縦方向に間隔34をおいて複数並べられて形成されたものであり、縦方向に平行なミシン目状の直線となる。同様に、第2及び第3の断裁線22、23はそれぞれ、縦方向に平行な直線状の切れ目32、33それぞれが、縦方向に間隔35、36をおいて複数並べられて形成されたものであり、縦方向に平行なミシン目状の直線となる。第2及び第3の断裁線22、23は、第1の断裁線21を両側から挟み込むように配置される。
【0026】
第1の断裁線21の切れ目31は、下辺10Aから上辺10Bまで間隔34をおいて連続的に設けられる。そして、第1の断裁線21の最下端及び最上端に配置された切れ目31、31は、表面基材11の外縁である下辺10A及び上辺10Bに接続される。
【0027】
第2及び第3の断裁線22、23それぞれにおいて、切れ目32、33は、間隔34に対応する数設けられる。各切れ目32、33は、第1の断裁線21の間隔34それぞれの近傍において間隔34を中心に対称的に、各間隔34を両側から塞ぐように配置される。つまり、各切れ目32、33は、その長さL2、L3が間隔34の長さD1よりも長くなる。そして、各切れ目32、33は、隣接する2本の切れ目31、31の上側の切れ目31の下端部、及び下側の切れ目31の上端部に、縦方向においてオーバーラップするように配置される。
【0028】
本実施形態では、切れ目32、33の長さL2、L3が、間隔34の長さD1より長く、切れ目32、33が間隔34を確実に塞ぐため、後述するように、切れ目31の端部を起点とする表面基材11の横方向への破れが確実に防止される。なお、長さL2、L3は、例えば、0.2〜5mm、好ましくは0.3〜3mmである。
【0029】
第1の断裁線21の各切れ目31の長さL1は、間隔34の長さD1や、切れ目32、33の長さL2、L3よりも長くなることが好ましい。長さL1が長さD1、L2、L3より短くなると、第1の断裁線21に沿って表面基材11が分離されにくくなり、破れが生じやすくなる。
【0030】
本実施形態では、切れ目31の長さL1は、例えば0.3〜15mm、好ましくは0.4〜10mmであるとともに、長さL1に対する長さD1の比D1/L1は、例えば1/10〜2/3、好ましくは1/5〜1/2である。また、間隔34の長さD1は、例えば、0.1〜1.5mm、好ましくは0.2〜1.0mmである。長さL1が上記範囲より長くなり、あるいは、比D1/L1がこれら範囲未満となると、擬似接着ラベル10は、剥離基材14が取り除かれた後、分離線20で折れ曲がりやすくなる。また、長さL1が上記範囲より短くなり、あるいは、D1/L1がこれら範囲より大きくなると、ラベル部を剥離する際、第1の断裁線21に沿って表面基材11が分離されにくくなり、破れが生じやすくなる。
【0031】
さらに、切れ目32、33の上端又は下端と、切れ目31との離間距離E1は、例えば0.1〜2mm、好ましくは0.2〜1.5mmである。離間距離E1が長すぎると、後述するように、一旦表面基材の破断が第2ないし第3の断裁線22、23に進んだ後、第1の断裁線21に戻りにくくなる。一方、離間距離E1が短すぎると、上記したような擬似接着ラベルの折れ曲がりが発生しやすくなる。
【0032】
次に、疑似接着ラベル10における表面基材11の剥離方法について説明する。表面基材11のラベル部18の切り離しは、例えば、下辺10Aと分離線20が交差するラベル部18の角部18Aを剥離開始部として摘まんで、表面基材11を剥離方向Aに引き剥がすことにより行われる。このとき、ラベル部18は、ラベル部19側を残すように、分離線20に沿って表面基材11を断裁しつつ擬似接着層12から剥離される。
【0033】
第1の裁断線21における最下端の切れ目31は、下辺10Aに接続され、したがって剥離方向Aにラベル部18が引き剥がされると、ラベル部18の剥離が、第1の裁断線21の切れ目31に沿って開始される。ここで、剥離方向Aは分離線20に対して斜め方向であるため、ラベル部18の破断は、切れ目31の上端から縦方向に進み、間隔34を介して、次の切れ目31に進むこともあるが、切れ目31の上端から横方向へ進むこともある。
【0034】
本実施形態では、この切れ目31の上端から横方向へ進む破断は、ラベル部18側から間隔34を塞ぐように配置された、第2の裁断線22の切れ目32により止められる。すなわち、切れ目31の上端から横方向に破断しても、その破断は、切れ目31の上端に隣接する切れ目32に進み、ラベル部18の剥離は、その切れ目32に沿って再び縦方向に進むこととなる。そして、ラベル部18の剥離は、その切れ目32の上端まで進むと、その上端から隣接する次の切れ目31に戻ることとなる。このように本実施形態では、切れ目31の上端から表面基材11の破断が一旦横方向に進んでも、ラベル部18の剥離は、第1の破断線21の切れ目31を順次進むこととなり、ラベル部18が横方向に大きく破れることが防止される。勿論、分離線20と上辺10Bが交差する位置にあるラベル部18の角部18Bからラベル部18が剥がされる場合も同様の作用により破れが防止される。
【0035】
なお、以上の説明では、2つのラベル部のうち、ラベル部18が先に剥離されるときの動作について説明したが、ラベル部19が、その角部19A、19Bを剥離開始部として、先に剥離される際にも同様の作用により第3の破断線23の切れ目33によってラベル部19の破れが防止される。さらに、一方のラベル部が剥がされた後、残ったラベル部は、擬似接着層12から適宜剥離される。
【0036】
以上のように、本実施形態では、ミシン目状の破断線21〜23が複線状に設けられたため、分離線20に沿ってラベル部18、19が分離して剥離される際、表面基材11に破れが発生しにくくなる。また、各破断線21〜23は、ミシン目状であるため、剥離基材11から剥離した擬似接着ラベルは、分離線20において折り曲がりにくく、擬似接着ラベルを被着体に貼着する際の作業性が良好となる。
【0037】
また、ラベル部18、19は分離線20に沿って容易に縦方向に切れるため、分離線20が流れ方向やフィルムの延伸方向に対して垂直に形成されている場合であっても表面基材11が破れにくくなる。
【0038】
なお、本実施形態では、表面基材11等にマーク等が付されて、例えば、角部18Aがラベル部18の剥離開始部であることが示されていても良い。
【0039】
さらに、マーク等が付されて、剥離開始部の位置が予め定められている場合には、第1の断裁線21における最上端及び最下端の切れ目31のいずれか一方は、表面基材11の外縁(すなわち、上辺10B又は下辺10A)に接続しなくても良い。例えば、角部18Aや角部19Aが剥離開始部と予め定められている場合には、角部18Bや角部19Bから剥離を開始しやすくする必要はないので、第1の断裁線21の最上端における切れ目31は、上辺10Bに接続しなくても良い。
【0040】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る分離線を示す。第2の実施形態は、第2及び第3の断裁線における切れ目の形状を除いて、第1の実施形態と同様である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同一の構成を有する部材については、同一の符号を付す。
【0041】
第2の実施形態では、第2及び第3の断裁線42、43における切れ目52、53は、両端が第1の断裁線21に近づくように傾斜した線状となっている。具体的には、切れ目52、53は、縦方向(分離線20に沿う方向)に対して傾斜する2本の同じ長さの直線部が連接して成る「く」の字状の切れ目である。各切れ目52、53は、縦方向における長さL5、L6が、第1の断裁線31の間隔34の長さD1より長くなっており、両側から間隔34を塞ぐように配置される。なお、本実施形態において、切れ目52、53の長さL5、L6、及び、切れ目52、53の上端又は下端と切れ目31との離間距離E2は、第1の実施形態における長さL2、L3及び離間距離E1と同様であるので、その説明は省略する。
【0042】
切れ目52は、その両端が、横方向において同じ位置に配置される。したがって、第2の断裁線42における全ての切れ目52の両端を結んだ仮想線α1は、縦方向に延在する直線状となる。第3の断裁線43においても同様に、切れ目53の両端を結んだ仮想線α2は、縦方向に延在する直線状となる。すなわち、第2及び第3の断裁線42、43はそれぞれ、複数の切れ目52、53が間隔55、56をおいて、縦方向に直線的に並べられたものである。
【0043】
本実施形態では、切れ目52、53は、両端が第1の断裁線21に近づくように傾斜しているため、表面基材11の破断が一旦、第1の断裁線21の切れ目31から切れ目52、53に進んでも、その破断は、切れ目52、53から、切れ目31に戻りやすくなり、表面基材11の破れがより防止されやすくなる。
【0044】
なお、第2の実施形態では、切れ目52、53は、両端が第1の断裁線21に近づくように傾斜しているものであれば、他の形状であっても良く、例えば曲線状であっても良い。勿論、第2及び第3の断裁線の切れ目は、表面基材11の横方向への破断を防止できるものであれば上記したものに限定されず、他の形状であっても良い。
【0045】
図5は、第3の実施形態における分離線を示す拡大平面図である。以下、本実施形態について第1の実施形態との相違点を説明する。第3の実施形態では、第3の破断線が省略されており、分離線60は、2本の破断線(第1及び第2の断裁線21、22)によって複線状に形成される。そのため、第1の破断線21の間隔34は、一方のラベル部18側から切れ目32によって塞がれるが、他方のラベル部19側からは切れ目によって塞がれない。
【0046】
したがって、2つのラベル部のうち、切れ目によって間隔34が塞がれていないラベル部19側から先に剥離されると、横方向の破断が切れ目によって防止されにくくなるので、表面基材11に破れが生じやすくなる。そのため、本実施形態では、擬似接着ラベルは、2つのラベル部のうち、ラベル部18が先に剥離されるように設計されることが好ましい。例えば、擬似接着ラベルが配送伝票に使用される場合、ラベル部18が受領票とされ、ラベル部19が配達票とされることが好ましい。また、ラベル部18を先に剥離すべきであることが、表面基材等に表示されても良い。
【0047】
なお、第3の実施形態のように、第3の断裁線が省略される場合も、第2の断裁線の切れ目の形状は、直線状に限定されず、図6に示すように、第2の実施形態と同様に、「く」の字状の切れ目52であっても良いし、他の形状のものであっても良い。
【0048】
なお、上記各実施形態において、ラベル部21、22は略矩形であったが、その形状は矩形に限定されず、例えば三角形等他の多角形でも良いし、円形等であっても良い。また、擬似接着ラベル10の構造や材質は、上記実施形態に限定されない。例えば、表面基材11、擬似接着層12、粘着剤層13以外の層を備えたものであっても構わない。また、各断裁線の間隔や切れ目の長さは、均等でも非均等であっても構わないし、各断裁線は、直線に限定されず曲線であっても構わない。
【実施例】
【0049】
次に、本発明について、以下実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例の構成に限定されない。
【0050】
[実施例1]
表面基材としてタック原紙(ユポ・コーポレーション社製、商品名:ユポタック原紙 60SGS)を使用し、擬似接着層を形成するための熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン(サンアロマー社製、商品名:サンアロマーPHA03A)を使用した。熱可塑性樹脂を押出温度290℃で厚さ20μmとなるようにTダイにて押し出し塗工し、表面基材の裏面に擬似接着層を積層した擬似接着シートを得た。次に、シリコーン系剥離紙の離型剤面に、アクリル系粘着剤を厚さ25μmになるように塗工して粘着剤層を形成し、先に形成した擬似接着シートの擬似接着層に貼り合わせた。その後、打ち抜き加工とともにミシン目加工により第1〜第3の破断線を形成し、カス上げを行って図2に示す擬似接着ラベルを得た。
【0051】
擬似接着ラベルは、横150mm、縦100mmのものであって、横方向における中央に第1〜第3の断裁線を設けたものであった。第1の破断線における切れ目の長さL1は2mm、間隔の長さD1は0.5mm、第2及び第3の破断線における切れ目の長さL2、L3は1mm、第1の破断線の切れ目と、第2及び第3の破断線の切れ目の端部との離間距離E1は0.3mmであった。なお、各切れ目は、表面基材、擬似接着層及び粘着剤層を貫通するように形成したものであった。
【0052】
[比較例1]
第2及び第3の断裁線を設けずに、第1の断裁線を上辺から下辺まで延在する一条の縦の切れ目とし、その切れ目を表面基材のみが貫通するように切り込んだものとした点を除いて実施例1と同様であった。
【0053】
[比較例2]
分離線において、第2及び第3の断裁線を設けなかったことを除いて実施例1と同様に実施した。
【0054】
[評価方法]
(1)擬似側剥離試験
実施例、比較例の擬似接着ラベルを、剥離基材を引き剥がして除去した後、被着物である台紙に貼着した。この状態で、図2に示す角部18Aからラベル部18を剥離方向Aに剥離角度180°で剥離する試験を10回行い、表面基材を破かずに分離線に沿って剥がすことができるかを評価した。表面基材の破れが発生した回数を、剥離不良率(破れが発生した回数/試験回数×100)で表し、剥離不良率20%未満を良好、剥離不良率20%以上を不可と評価した。
【0055】
(2)作業性確認試験
実施例及び比較例の擬似接着ラベルを、剥離基材を引き剥がして除去し、被着物である台紙に貼着する際の作業性を確認した。作業性が良好なものを良好(○)、作業可能なものを可(△)、作業し難いものを不可(×)として評価した。
【0056】
表1に、実施例及び比較例で得られた擬似接着ラベルの評価試験の結果を示す。
【表1】
【0057】
表面基材に一条の縦の切込を入れた比較例1では、擬似側剥離試験では問題なかったが、作業性確認試験では剥離基材を除去すると、擬似接着ラベルが自重により切込部分で折れ曲がり作業し難かった。また、断裁線を通常のミシン目形状とした比較例2は、作業性確認試験では表面基材が折れ曲がることなく問題なかったが、擬似側剥離試験では表面基材の破れが発生した。
【0058】
これに対し、実施例1では、表面基材に破れが発生することなく擬似接着層からラベル部を剥離することができ、更に、剥離基材を除去した後にラベルが折り曲がることなく作業性が良好だった。このように、分離線を複線状としたことにより、表面基材を分離線で分離して剥離する際に表面基材に破れが発生することなく、更にラベルの折れ曲がりも発生しない作業性の良い擬似接着ラベルを得ることができた。
【符号の説明】
【0059】
10 擬似接着ラベル
11 表面基材
12 疑似接着層
13 粘着剤層
20 分離線
21〜23 第1〜第3の断裁線
31〜33 切れ目
図1
図2
図3
図4
図5
図6