(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を
図1〜
図4を参照して説明する。本実施形態1の洗浄タンク装置Taは、洗浄タンク10と、排水弁12と、排水路16と、補給手段20Aとを備えて構成されている。
【0025】
<洗浄タンク10>
洗浄タンク10は、上水に接続されたボールタップの給水弁11と、洗浄レバー(図示省略)とを備えている。給水弁11が開弁すると洗浄タンク10内には洗浄水Wが供給され、洗浄タンク10内が所定の水位まで上昇すると、給水弁11が閉弁して洗浄タンク10への洗浄水Wの供給が停止し、洗浄タンク10内が満水状態となる。洗浄タンク10の底壁部には、弁口13を上方からフロート14で開閉する形態の排水弁12が設けられている。
【0026】
洗浄レバーの操作によりフロート14が持ち上げられると、排水弁12が開弁し、洗浄タンク10内の洗浄水Wが便鉢15側へ排出される。大洗浄の場合は、フロート14が高く持ち上げられ、排水弁12が開弁してから閉弁するまでに要する時間が長いので、洗浄タンク10から便鉢15側への排水量が多く、洗浄タンク10内の水位低下が大きい。小洗浄の場合は、フロート14の持ち上げ高さが低く、排水弁12の開弁時間が大洗浄に比べて短いので、便鉢15側への排水量が少なく、洗浄タンク10内の水位低下が小さい。
【0027】
<排水路16>
排水路16は、排水弁12から排出された洗浄水Wを便鉢15に供給するための流路である。上記排水弁12は排水路16の上流端に配置されている。排水路16を通って便鉢15に供給された洗浄水Wは、便鉢15内の汚物を下流側へ押し流し、押し流された汚物と洗浄水Wは、便鉢15に連なる排水トラップ部17を通過して下水へ排出される。この洗浄時における洗浄水Wの便鉢15への供給流量は大きいので、汚物と洗浄水Wは、勢い良く排水トラップ部17を通過する。そのため、排水弁12が閉弁して便鉢15への洗浄水Wの供給が急に停止すると、排水トラップ部17内に貯留すべき水の量が不足して、封水切れが発生する虞がある。
【0028】
<補給手段20A>
封水切れを防止する手段として、本実施形態1の洗浄タンク装置Taには、排水トラップ部17へ封水用の水を補給するための補給手段20Aが設けられている。補給手段20Aは、貯水部21Aと、通水路22Aと、残留手段30Aとを備えて構成されている。
【0029】
<貯水部21A>
貯水部21Aは、上面が開放されるとともに下面が底壁部で閉塞された有底筒形状をなし、洗浄タンク10の内部に配置されている。貯水部21Aの上面は、洗浄タンク10の満水時の水位よりも高い位置に開放されている。この貯水部21A内には、排水弁12が閉弁した後に排水トラップ部17へ補給するための補給水が貯留されるようになっている。
【0030】
<通水路22A>
通水路22Aは、共通流路23Aと、連通路24Aと、導水路25Aとから構成されている。共通流路23Aの一端部は、排水路16における弁口13(排水弁12)に近い位置であって貯水部21Aの底壁部よりも低い位置に、連通状態で接続されている。共通流路23Aの他方の端部には、洗浄タンク10内に設けたオーバーフロー管26Aの下端部が、連通状態で接続されている。連通路24Aの一方の端部は、共通流路23Aの他方の端部に連通状態で接続されている。したがって、共通流路23Aの他方(排水路16とは反対側)の端部においては、オーバーフロー管26Aと連通路24Aが分岐した状態で連なっている。連通路24Aの他方の端部は、貯水部21Aの底壁部に接続されている。
【0031】
導水路25Aは、上下方向に延びていて、貯水部21A内に設けられている。導水路25Aの下端部は、底壁部において連通路24Aの他方の端部と連通状態に接続されている。導水路25Aの上端27A(洗浄水Wが貯水部21Aに流入するときの通水路22Aの下流端)は、洗浄タンク10の満水時の水位よりも低く、且つ排水弁12よりも高い位置において上向きに開口されている。上記のように、通水路22Aは排水路16と貯水部21Aとを連通する流路となっている。洗浄タンク10が満水の状態で排水弁12が開弁すると、洗浄タンク10の水頭圧により、排水弁12から排水路16側へ流出した洗浄水Wの一部が、流動抵抗により共通流路23Aと連通路24Aと導水路25Aを順に通り、導水路25Aの上端27Aの開口から貯水部21A内に流入して貯留されるようになっている。
【0032】
<残留手段30A>
残留手段30Aは、上述の洗浄水Wが貯水部21Aに流入するときの通水路22Aの下流端(導水路25Aの上端27A)を排水弁12よりも高い位置に配置する形態と、絞り部31Aを設ける形態とを備えて構成されている。貯水部21Aのうち導水路25Aの上端27Aよりも下方の空間は、残留空間32Aとなっている。絞り部31Aは、導水路25Aの下端部、つまり残留空間32A(貯水部21A)の下端部(底壁部の上面とほぼ同じ高さ)に形成され、残留空間32Aの下端部において貯水部21Aと導水路25Aとを連通させている。残留空間32A内の洗浄水Wは、絞り部31Aを通って通水路22A内(排水路16側)へ排出されるようになっている。この絞り部31Aの開口面積は、通水路22Aの流路の断面積よりも小さく設定されている。したがって、絞り部31Aを通って残留空間32Aから排水路16側(通水路22A内)排出される洗浄水Wの流量は、通水路22Aを通って導水路25Aの上端27Aから残留空間32Aに流入する洗浄水Wの流量よりも少ない。
【0033】
<作用>
次に、本実施形態1の作用を説明する。
図1に示すように、洗浄タンク10内が満水となっている状態で洗浄レバーを大洗浄方向へ操作すると、フロート14が高く持ち上げられて排水弁12が開弁する。排水弁12が開弁すると、
図2に示すように、洗浄タンク10内の洗浄水Wが便鉢15側へ排出され始め、洗浄タンク10の水位が低下していくとともに、洗浄タンク10の水頭圧により洗浄水Wの一部が通水路22Aを通って貯水部21A内に流入し、貯水部21A内の水位が次第に上昇していく。この間、オーバーフロー管26A内の水位も貯水部21Aと同様に上昇していく。
【0034】
そして、
図3に示すように、貯水部21A内の水位が洗浄タンク10内と同じ水位になると、貯水部21Aへの洗浄水Wの流入が行われなくなり、それ以降は、通水路22A内及びオーバーフロー管26A内の洗浄水Wが、洗浄タンク10内の洗浄水Wと概ね同じ水位を保ちながら排水路16へ急速に排出される。この間、残留空間32A内の洗浄水Wは、絞り部31Aにおいて通水路22A内(排水路16側)への排出水量を絞られるので、残留空間32A内の水位は、洗浄タンク10内の水位よりも高い状態が維持される。
【0035】
この後、洗浄タンク10内の水位が大きく低下すると、フロート14が弁口13を塞いで排水弁12が閉弁されるが、排水弁12が閉弁した時点では、残留空間32A内には残留手段30Aにより洗浄水Wが残留したままとなる。そして、
図4に示すように、排水弁12が閉弁した後は、残留空間32A内に残留する洗浄水Wが、絞り部31Aと通水路22Aを順に通過して排水路16側へ排出され、排水トラップ部17に補給される。
【0036】
また、洗浄タンク10内が満水となっている状態で洗浄レバーを小洗浄方向へ操作すると、排水弁12が開弁し、大洗浄時と同様に、洗浄タンク10内の洗浄水Wが便鉢15側へ排出されるとともに、洗浄タンク10の水頭圧によって洗浄水Wの一部が通水路22Aを通って貯水部21A内に流入していく。そして、貯水部21A内の水位が洗浄タンク10内と同じ水位になるが、このときの貯水部21Aの水位は、大洗浄の時とほぼ同じ高さである。これ以降も、大洗浄時と同様、洗浄タンク10内の洗浄水Wが排水路16へ排出されるが、残留空間32A内の水位は、絞り部31Aにより洗浄タンク10の水位よりも高い状態が維持される。
【0037】
この後、フロート14が弁口13を塞いで排水弁12が閉弁されるのであるが、洗浄レバーの操作によってフロート14が持ち上げられる高さは大洗浄の時よりも低いので、排水弁12が開弁している時間は大洗浄時よりも短い。しかし、残留空間32Aの高さ寸法(底壁部から導水路25Aの上端27Aまでの高さ)は大小いずれの洗浄形態でも変わらないので、残留空間32Aに残留する洗浄水Wの最高水位は、大洗浄時とほぼ同じ高さである。そして、排水弁12が閉弁した後は、残留空間32A内に残留する洗浄水Wが、絞り部31Aと通水路22Aを順に通過して排水路16側へ排出され、排水トラップ部17に補給される。
【0038】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を
図5〜
図8を参照して説明する。本実施形態2の洗浄タンク装置Tbは、補給手段20Bを上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0039】
<補給手段20B>
排水トラップ部17へ封水用の水を補給して封水切れを防止する補給手段20Bは、貯水部21Bと、通水路22Bと、残留手段30Bとを備えて構成されている。
【0040】
<貯水部21B>
貯水部21Bは、上面が上壁部で閉塞されるとともに下面が底壁部で閉塞された箱状の本体部33Bを有する。本体部33Bは、洗浄タンク10の内部に収容され、洗浄タンク10の満水時の水位よりも低い位置に配置されている。貯水部21Bは、本体部33Bの上壁部から上方へ延出した形態であって本体部33B内と連通するオーバーフロー管26Bを有している。オーバーフロー管26Bの上端は、洗浄タンク10の満水時の水位よりも高い位置で開口している。この貯水部21B内には、排水弁12が閉弁した後に排水トラップ部17へ補給するための補給水(洗浄水W)が貯留されるようになっている。
【0041】
<通水路22B>
通水路22Bは、連通路24Bと、導水路25Bとから構成されている。連通路24Bの一端部は、排水路16における弁口13(排水弁12)に近い位置であって貯水部21Bの底壁部よりも低い位置に、連通状態で接続されている。連通路24Bの他方の端部は、貯水部21Bの底壁部に接続されている。導水路25Bは、上下方向に延びていて、本体部33B内に設けられている。導水路25Bの下端部は、貯水部21Bの底壁部において連通路24Bの他方の端部と連通状態に接続されている。導水路25Bの上端27B(洗浄水Wが貯水部21Bに流入するときの通水路22Bの下流端)は、洗浄タンク10の満水時の水位及び本体部33Bの上壁部よりも低い位置で、且つ排水弁12よりも高い位置において上向きに開口されている。
【0042】
上記のように、通水路22Bは排水路16と貯水部21Bとを連通する流路となっている。洗浄タンク10が満水の状態で排水弁12が開弁すると、洗浄タンク10の水頭圧により、排水弁12から排水路16側へ流出した洗浄水Wの一部が、流動抵抗により連通路24Bと導水路25Bを順に通り、導水路25Bの上端27Bの開口から貯水部21B内に流入して貯留されるようになっている。本体部33Bのうち導水路25Bの上端27Bよりも下方の空間は、残留空間32Bとなっている。また、本体部33Bの上壁部は、導水路25Bの上端27B(通水路22Bの下流端)の近傍位置に対向するように配置されているので、通水路22Bの下流端から吐出した洗浄水Wを残留空間32B側へ下向きに反射して誘導するための誘導面34Bとして機能する。
【0043】
<残留手段30B>
残留手段30Bは、通水路22Bの下流端(導水路25Bの上端27B)を排水弁12よりも高い位置に配置する形態と、絞り部31Bを設ける形態とを備えて構成されている。絞り部31Bは、導水路25Bの下端部、つまり残留空間32B(貯水部21B)の下端部に形成され、残留空間32Bの下端部において貯水部21Bと導水路25Bとを連通させている。残留空間32B内の洗浄水Wは、絞り部31Bを通って通水路22B内(排水路16側)へ排出されるようになっている。この絞り部31Bの開口面積は、通水路22Bの流路の断面積よりも小さく設定されている。したがって、絞り部31Bを通って残留空間32Bから排水路16側(通水路22B内)排出される洗浄水Wの流量は、通水路22Bを通って導水路25Bの上端27Bから貯水部21Bに流入する洗浄水Wの流量よりも少ない。
【0044】
<作用>
次に、本実施形態2の作用を説明する。
図4に示すように、洗浄タンク10内が満水となっている状態で洗浄レバー(図示省略)を大洗浄方向へ操作すると、フロート14が高く持ち上げられて排水弁12が開弁する。排水弁12が開弁すると、
図5に示すように、洗浄タンク10内の洗浄水Wが便鉢15側へ排出され始め、洗浄タンク10の水位が低下していくとともに、洗浄タンク10の水頭圧によって洗浄水Wの一部が通水路22Bを通って貯水部21B内に流入する。洗浄水Wの流入に伴い、貯水部21Bの水位は、次第に上昇し、本体部33Bの上壁部を越えてオーバーフロー管26Bまで達する。
【0045】
そして、
図5に示すように、貯水部21B(オーバーフロー管26B)内の水位が洗浄タンク10内と同じ水位になると、貯水部21Bへの洗浄水Wの流入が行われなくなる。それ以降は、オーバーフロー管26B内の洗浄水Wと、本体部33Bのうち残留空間32Bよりも上方の空間内の洗浄水Wと、通水路22B内の洗浄水Wが、洗浄タンク10内の洗浄水Wと概ね同じ水位を保ちながら排水路16へ急速に排出される。
【0046】
この間、残留空間32B内の洗浄水Wは、絞り部31Bにおいて通水路22B内(排水路16側)への排出水量を絞られるので、貯水部21B内の水位は、洗浄タンク10内の水位よりも高い状態が維持される。この後、洗浄タンク10内の水位が大きく低下すると、フロート14が弁口13を塞いで排水弁12が閉弁されるが、排水弁12が閉弁した時点では、残留空間32B内には残留手段30Bにより洗浄水Wが残留したままとなる。そして、排水弁12が閉弁した後は、残留空間32B内に残留する洗浄水Wが、絞り部31Bと通水路22Bを順に通過して排水路16側へ排出され、排水トラップ部17に補給される。
【0047】
また、洗浄タンク10内が満水となっている状態で洗浄レバーを小洗浄方向へ操作すると、排水弁12が開弁し、大洗浄時と同様に、洗浄タンク10内の洗浄水Wが便鉢15側へ排出されるとともに、洗浄タンク10の水頭圧によって洗浄水Wの一部が通水路22Bを通って貯水部21B内に流入していく。そして、貯水部21B内の水位が洗浄タンク10内と同じ水位になるが、このときの貯水部21Bの水位は、大洗浄の時とほぼ同じ高さである。これ以降も、大洗浄時と同様、洗浄タンク10内の洗浄水Wが排水路16へ排出されるが、残留空間32B内の水位は、絞り部31Bにより洗浄タンク10の水位よりも高い状態が維持される。
【0048】
この後、排水弁12が閉弁されるのであるが、洗浄レバーの操作によってフロート14が持ち上げられる高さは大洗浄の時よりも低いので、排水弁12が開弁している時間は大洗浄時よりも短い。しかし、残留空間32Bの高さ寸法(底壁部から導水路25Bの上端27Bまでの高さ)は大小いずれの洗浄形態でも変わらないので、残留空間32B内に残留する洗浄水Wの最高水位は、大洗浄時とほぼ同じ高さである。そして、排水弁12が閉弁した後は、残留空間32B内に残留する洗浄水Wが、絞り部31Bと通水路22Bを順に通過して排水路16側へ排出され、排水トラップ部17に補給される。
【0049】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3を
図9,10を参照して説明する。本実施形態3の洗浄タンク装置Tcは、通水路22Cを構成する導水路25Cと残留手段30Cを上記実施形態2とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態2と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造の説明は省略する。
【0050】
本実施形態3の残留手段30Cは、導水路25Cの上端27C(通水路22Cの下流端)の高さを調節可能な高さ調節手段37を備えている。高さ調節手段37の構成は、次の通りである。導水路25Cは、軸線を上下方向に向けた円筒形の周壁部35と、周壁部35に外嵌された筒部材36とを備えて構成されている。周壁部35の外周には雄ネジ部35Mが形成され、筒部材36の内周には雌ネジ部36Fが形成されている。雄ネジ部35Mと雌ネジ部36Fを係合させることにより、筒部材36が周壁部35に外嵌され、筒部材36の上端が導水路25Cの上端27C(洗浄水Wが貯水部21Cに流入するときの通水路22Cの下流端)となる。筒部材36を回転させると、導水路25Cの上端27Cの高さ、即ち貯水部21Cのうち導水路25Cの上端27Cよりも下方の残留空間32Cの高さが変化し、残留空間32Cに貯留される洗浄水Wの最高水位も増減する。
【0051】
また、本実施形態3の残留手段30Cは、絞り部31Cの開口面積を調節可能な開口調節手段38を備えている。開口調節手段38は、周壁部35の下端部に形成した絞り部31Cと、周壁部35の外面に形成した水平なガイドレール39と、このガイドレール39に沿って水平方向にスライド可能な遮蔽部材40とを備えている。絞り部31Cは、遮蔽部材40のスライド方向と平行な方向に長い長円形をなしている。遮蔽部材40には、絞り部31Cの両端の半円形状の縁部と対応する半円形の切欠部41が形成されている。
図9に示すように、遮蔽部材40を絞り部31Cの開口領域から退避する位置へ移動させると、絞り部31Cの開口面積が大きくなり、残留空間32Cから通水路22Cへの洗浄水Wの排水流量が多くなる。また、
図10に示すように、遮蔽部材40を絞り部31Cの開口領域内へ進出する位置へ移動させると、絞り部31Cの開口面積が小さくなり、残留空間32Cから通水路22Cへの排水流量が少なくなる。
【0052】
<実施形態4>
次に、本発明を具体化した実施形態4を
図11を参照して説明する。本実施形態4の洗浄タンク装置Tdは、補給手段20Dを上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じである。同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0053】
排水トラップ部17へ封水用の水を補給して封水切れを防止する補給手段20Dは、貯水部21Dと、通水路22Dと、残留手段30Dとを備えて構成されている。貯水部21Dは、上面が開放されるとともに下面が底壁部で閉塞された形態であり、洗浄タンク10の内部に収容されている。貯水部21Dの上端は、洗浄タンク10の満水時の水位よりも高い位置で開口している。この貯水部21D内には、排水弁12が閉弁した後に排水トラップ部17へ補給するための補給水(洗浄水W)が貯留されるようになっている。
【0054】
通水路22Dは、排水路16と貯水部21Dとを連通する流路となっている。即ち、通水路22Dの一端部は、排水路16に連通状態で接続され、通水路22Dの他方の端部は貯水部21Dの下端部に連通状態で接続されている。洗浄タンク10が満水の状態で排水弁12が開弁すると、洗浄タンク10の水頭圧により、排水弁12から排水路16側へ流出した洗浄水Wの一部が、流動抵抗により、通水路22Dを通って貯水部21D内に貯留されるようになっている。
【0055】
残留手段30Dは、排水弁12を、排水路16と通水路22Dとの連通部及び貯水部21Dの下端部よりも高い位置に配置することによって構成されている。即ち、排水路16の上流側部分は、洗浄タンク10の内部において上下方向に延びた管状をなしており、この排水路16の上端部(上流端部)に弁口13が形成されている。
【0056】
次に、本実施形態4の作用を説明する。洗浄タンク10内が満水となっている状態で洗浄レバー(図示省略)を操作すると、フロート14が持ち上げられて排水弁12が開弁する。排水弁12が開弁すると、洗浄タンク10内の洗浄水Wが排水路16内(便鉢側)へ排出されるとともに、洗浄タンク10の水頭圧によって洗浄水Wの一部が排水路16から通水路22Dを通って貯水部21D内に流入する。そして、貯水部21D内の水位が洗浄タンク10内と同じ水位になると、貯水部21Dへの洗浄水Wの流入が行われなくなる。それ以降は、貯水部21D内の洗浄水Wが、洗浄タンク10内の洗浄水Wと概ね同じ水位を保ちながら排水路16へ排出される。
【0057】
この後、排水弁12が閉弁されるのであるが、排水弁12の位置は貯水部21Dの下端部よりも高い位置にある。したがって、排水弁12が閉弁した時点では、貯水部21D内には洗浄水Wが残留している。そして、排水弁12が閉弁した後、貯水部21D内に残留している洗浄水Wが、通水路22Dを通過して排水路16側へ排出され、排水トラップ部17に補給される。
【0058】
<実施形態の効果>
実施形態1〜4の洗浄タンク装置Ta,Tb,Tc,Tdは、通水路22A,22B,22C,22Dを介して排水路16と連通し、排水弁12が開弁したときには、洗浄タンク10内の水頭圧により洗浄水Wの一部が排水路16から通水路22A,22B,22C,22Dを通って流入するようになっている貯水部21A,21B,21C,21Dと、洗浄タンク10内の洗浄水Wが便鉢側へ排出されて排水弁12が閉弁した状態で、貯水部21A,21B,21C,21D内に流入した洗浄水Wを残留させておくとともに、排水弁12が閉弁した後に貯水部21A,21B,21C,21D内の洗浄水Wを排水路16側へ排出させる残留手段30A,30B,30C,30Dとを備えている。
【0059】
この構成によれば、排水トラップ部17へ補給するために貯水部21A,21B,21C,21Dに貯留される洗浄水Wの量が、洗浄タンク10の満水時の水頭圧によって決まるので、大洗浄と小洗浄のいずれの洗浄形態でも、排水トラップ部17への補給水量が一定となる。また、貯水部21A,21B,21C,21Dにおける洗浄水Wの貯水量は、上水から洗浄タンク10への給水圧の影響を受けることもない。したがって、排水トラップ部17に過剰な水量の洗浄水Wが補給されるのを回避することができ、ひいては、排水トラップ部17から無駄に排出される水量を低減して節水を図ることができる。
【0060】
実施形態1〜3の洗浄タンク装置Ta,Tb,Tcにおいて、残留手段30A,30B,30Cは、貯水部21A,21B,21Cから排水路16側への洗浄水Wの排出流量が、通水路22A,22B,22Cから貯水部21A,21B,21C内への洗浄水Wの流入流量よりも少なくなるように構成されている。この構成によれば、貯水部21A,21B,21Cへの洗浄水Wの流入水量が比較的多いので、貯水部21A,21B,21C内に所定量の洗浄水Wを確実に残留させることができる。また、貯水部21A,21B,21Cから排水路16側への排出水量が比較的少ないので、排水トラップ部17へ補給される洗浄水Wの流動に起因する異音の発生を抑えることができる。
【0061】
実施形態1〜3の洗浄タンク装置Ta,Tb,Tcにおいて、残留手段30A,30B,30Cは、洗浄水Wが貯水部21A,21B,21Cに流入するときの通水路22A,22B,22Cの下流端(導水路25A,25B,25Cの上端27A,27B,27C)を、排水弁12よりも高い位置に配置する形態と、通水路22A,22B,22Cの下流端よりも低い位置に、貯水部21A,21B,21C内の洗浄水Wを流入時よりも少ない流量で排水路16側へ流出させる絞り部31A,31B,31Cを設ける形態とを備えて構成されている。この構成によれば、貯水部21A,21B,21C内に残留する洗浄水Wの最高水位は、通水路22A,22B,22Cの下流端と同じ高さとなり、この高さは、大小の洗浄形態や洗浄タンク10への給水圧の影響を受けず、一定である。したがって、大小の洗浄形態や洗浄タンク10への給水圧が変化しても、排水トラップ部17に補給される洗浄水Wの水量を、常に一定に保つことができる。
【0062】
実施形態3の洗浄タンク装置Tcでは、残留手段30Cに、絞り部31Cの開口面積を調節可能な開口調節手段38が設けられている。したがって、絞り部31Cの開口面積を調節することにより、排水トラップ部17への補給に要する時間を適宜に設定することができる。同じく、実施形態3の洗浄タンク装置Tcでは、残留手段30Cに、通水路22Cの下流端の高さ(導水路25Cの上端27C)を調節可能な高さ調節手段37が設けられている。したがって、通水路22Cの下流端の高さを調節することにより、排水弁12が閉弁した時点で貯水部21Cに残留する洗浄水Wの水量を適宜に変更することができる。
【0063】
実施形態1〜3の洗浄タンク装置Ta,Tb,Tcでは、排水弁12が閉弁した時点で貯水部21A,21B,21C内に残留する洗浄水Wの水量は、閉弁後における排水トラップ部17への補給水量となる。この点に鑑み、実施形態1〜3の残留手段30A,30B,30Cは、排水弁12が閉弁した時点での貯水部21A,21B,21Cの水位が、洗浄タンク10の水位とほぼ同じとなるようにした。これにより、閉弁時の貯水部21A,21B,21Cの水位がほぼ一定となるので、排水トラップ部17への補給水量が無駄に多くならずに済む。
【0064】
実施形態2,3の洗浄タンク装置Tb,Tcでは、貯水部21B,21Cが、洗浄タンク10の内部に配置されていて、上端の開口が洗浄タンク10内に臨む形態のオーバーフロー管26B,26Cを備えている。この構成によれば、貯水部21B,21Cがオーバーフロー管26B,26Cの機能を兼ね備えているので、貯水部とオーバーフロー管を別々に設ける場合に比べると、洗浄タンク10の内部の構造を簡素化することが可能である。
【0065】
実施形態2,3の洗浄タンク装置Tb,Tcにおいては、洗浄水Wが貯水部21B,21Cに流入するときの通水路22B,22Cの下流端(導水路25B,25Cの上端27B,27C)の近傍に、通水路22B,22Cの下流端から吐出した洗浄水Wを、貯水部21B,21C側へ誘導するための誘導面34Bが設けられている。この構成によれば、通水路22B,22Cの下流端から吐出した洗浄水Wを、誘導面34Bにより貯水部21B,21C内へ確実に流入させることができる。
【0066】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1〜3では、絞り部を通水路に連通させたが、絞り部は、通水路に連通させずに、直接、排水路に連通させてもよい。
(2)上記実施形態1〜3では、排水弁が閉弁した時点で、貯水部の水位が洗浄タンクの水位とほぼ同じ高さとしたが、排水弁が閉弁した時点での貯水部の水位は、洗浄タンクの水位より低くてもよく、洗浄タンクの水位より高くてもよい。
(3)上記実施形態1〜4では、貯水部を洗浄タンクの内部に配置したが、貯水部は洗浄タンクの外部に配置されていてもよい。
(4)上記実施形態2〜4では、貯水部とオーバーフロー管を一体化したが、実施形態2〜4において貯水部とは別にオーバーフロー管を設けてもよい。
(5)上記実施形態3の開口調節手段は、実施形態1に適用してもよい。
(6)上記実施形態3の高さ調節手段は、実施形態1に適用してもよい。
(7)上記実施形態2,3の誘導面は、実施形態1に適用してもよい。