(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730648
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】光半導体装置およびその製造方法、それを使う装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20150521BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
H01L33/00 400
H01L31/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-85923(P2011-85923)
(22)【出願日】2011年4月8日
(65)【公開番号】特開2012-222125(P2012-222125A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波岡 かおり
(72)【発明者】
【氏名】辻 正孝
【審査官】
吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−044565(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3166758(JP,U)
【文献】
特開2005−101283(JP,A)
【文献】
特開平08−078273(JP,A)
【文献】
特開平06−242626(JP,A)
【文献】
特開2002−152966(JP,A)
【文献】
特開2012−004168(JP,A)
【文献】
特開2009−125960(JP,A)
【文献】
特開昭63−037158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H05K 3/34
H01L 31/02−31/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
前記配線基板上に配置された光半導体素子と、
前記光半導体素子を覆い、かつ、光出射面又は光入射面を有する封止樹脂と、
前記封止樹脂の光出射面又は光入射面の一部を覆い、かつ、リフロー時の温度未満の環境において有色であって、リフロー時の温度以上の環境において不可逆的に色が消える又は色が薄くなる性質を持つ未変色感熱部と、前記未変色感熱部の一部が既に色が消えた又は色が薄くなった状態の変色済感熱部によって極性を表示する光半導体装置。
【請求項2】
配線基板の上に光半導体素子を配置する工程と、
前記光半導体素子を封止樹脂で覆う工程と、
前記封止樹脂の光出射面又は光入射面の一部に、リフロー時の温度未満の環境において有色であって、リフロー時の温度以上の環境において不可逆的に色が消える又は色が薄くなる性質を持つ感熱部を形成する工程と、
前記感熱部の一部に熱を加えて不可逆的に色を消す又は色を薄くすることによって変色済感熱部を形成しつつ、前記感熱部の他の一部に熱を加えずに未変色のまま残す工程と、
を有する光半導体装置の製造方法。
【請求項3】
封止樹脂の光出射面又は光入射面上に未変色感熱部と、前記未変色感熱部の一部が既に色が消えた又は色が薄くなった状態の変色済感熱部とによって極性を表示された光半導体装置を実装基板上に配置する工程と、
前記実装基板をリフローにかけて光半導体装置を半田で固定し、かつ、前記未変色感熱部を消色化又は薄色化する工程と、を有する装置製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光素子や受光素子等の光半導体素子を利用した光半導体装置に関する。より詳しくは、より改良された光半導体装置の極性表示に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発光素子や受光素子等の光半導体素子の電極は、一方がカソード、他方がアノードという極性を持つ。この電極の接続方向を誤って電流を流そうとしても正しい特性が得られず、場合によっては素子自体が破壊されることもある。このような誤接続を防ぐため、光半導体装置には、一方がカソード乃至アノードであることを示す極性方向識別手段が付加されていることが通例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−094090
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、方向識別用マークをGNDパターン上に形成した光半導体装置を開示している。この構成により、方向識別用マークによって光を遮断することなく、また、マーク自体を大きく形成することが可能とある。しかし、発光装置の場合、封止樹脂に蛍光体や散乱材を添加して発光色や発光特性を調整することがある。封止樹脂の下側に方向識別用マークが形成される構成では、外部からこのマークが認識できない。また、受光素子であっても、例えば赤外受光素子であれば可視光を遮断する樹脂によって封止するため、赤外線を検出する機器を用いない限り、やはり方向識別用マークを外部から認識できないことになる。従って、このような極性方向を識別するための手段は、封止樹脂表面、即ち、光出射面又は光入射面の表面にあることがより好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、極性方向を識別するための手段を、感熱部を封止樹脂表面に形成することによって得ることに特徴を有する。極性方向を識別するための手段は、光半導体装置の実装段階でのみ求められる手段であるため、リフロー工程等の高温に曝される工程を経て、感熱部は消色化又は薄色化する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に関わる光半導体装置は、封止樹脂表面の一部に有色感熱部を形成することによって極性方向を表示するため、封止樹脂を通じて配線基板表面が見えない場合にも方向の識別が可能となる。また、光出射面又は光入射面に方向識別手段が形成されているにもかかわらず、実装後の工程によって感熱部の色が消える又は薄くなるため、実質的に発光機能又は受光機能に影響を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明による第1の実施形態の光半導体装置の製造方法の説明図である。
【
図2】本発明による第1の実施形態の光半導体装置の製造方法の説明図である。
【
図3】本発明による第1の実施形態の光半導体装置の製造方法の説明図である。
【
図4】本発明による第1の実施形態の光半導体装置の製造方法の説明図である。
【
図5】本発明による第2の実施形態の光半導体装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に従って、本発明を説明する。
図1から
図4は、本発明による光半導体装置の製造方法を表した模式図である。まず、
図1にあるように、配線パターン2を形成した配線基板1上に、発光ダイオード素子やフォトダイオード素子等の光半導体素子3を配置する。光半導体素子3は、導電性ペースト(図示せず)や、ワイヤ4などにより配線パターン2に電気的に接続される。その後、透明な封止樹脂5によって光半導体素子3、ワイヤ4が封止される。
【0009】
次に、
図2にあるように、感熱部6によって、封止樹脂5上面を被覆する。感熱部6は、例えば、樹脂と有機溶剤とによって構成されるバインダー材料に感熱材料を混合したものを用いる。封止材料5を覆う工程は、例えば、スプレー法、ディップ法、スクリーン印刷法、ポッティング法などを選択できる。被覆後、加熱によって有機溶剤の気化と樹脂硬化を行い、感熱部6を封止樹脂5上に固定する。
【0010】
次に、
図3にあるように、感熱部6のうち、例えば光半導体素子3上方に該当する部分を加熱し、変色済感熱部6aと未変色感熱部6bとを形成する。
図3においては、全体として縞状となっている。変色済感熱部6aを形成するには、例えば、変色済感熱部6aの形状を表面に形成した、加熱した金属ブロックを感熱部6に押し付けるなどの方法を選択できる。なお、本願中において、封止樹脂5を覆うように感熱材料を含む層を形成した状態においてその層を感熱部6、その後の工程において感熱部6のうちの一部を変色させた場合に、変色箇所を変色済感熱部6a、未変色の箇所を未変色感熱部6bと呼ぶ。
【0011】
最後に、
図4にあるように、配線基板1、変色済感熱部6a、未変色感熱部6b、封止樹脂5とをダイシング、ブレーキング等の方法によって分割し、個片化する。その後、各々に個片化された光半導体装置は、実装基板などに半田などによって固定される等の通常の電子部品として扱われる。
【0012】
感熱部6は、製造方法と機能の観点によって好適な材料が選択される。感熱材料としては、常温において有色であって、変色点以上になると不可逆的に透明となる物質を使用する。例えば、サリチリデンアニリン系化合物やフルオラン系化合物等である。ここで、変色点としては、感熱部6の形成工程における雰囲気温度より高く、かつ、感熱部6を形成後に最も高温となる工程中の温度より低い必要がある。例えば、感熱部6の形成工程における雰囲気温度は、バインダー材料に用いる樹脂の硬化温度として100℃程度となる。一方で、個片化後にリフロー工程などを経て半田実装される場合、リフロー工程は230℃程度であることが通例である。従って、このような場合には、変色点が100℃から230℃までの材料を使用するべきである。なぜなら、感熱部6の形成工程において感熱材料が透明化してはならない一方で、リフロー工程を経ても未変色感熱部6bが有色のままであれば、完成した光半導体装置の発光ないし受光性能に影響が出るからである。一般的に言って、変色点としては感熱部6を形成する工程の雰囲気温度と、感熱部6を形成後に最も高温となる工程中の温度から、それぞれ20℃以上離れていれば、工程中の温度管理をさほど厳密にしなくともすむため、より望ましい。
【0013】
図4の光半導体装置は、配線パターン2から導通される下面側配線パターン7のうち一方の側と、他方の側とが、矩形形状をした装置下面の対辺にそれぞれ露出している。変色済感熱部6a又は未変色感熱部6bが下面側配線パターン7のカソード側又はアノード側を示すことにより、きわめて容易にこの光半導体装置の極性を識別できる。特に、小型の光半導体装置の場合は極性識別手段を形成する場所が限られるため、光出射面又は光入射面を利用して極性識別手段を配置できることは有用である。
【0014】
また、変色済感熱部6aと未変色感熱部6bは光出射面又は光入射面に一様に塗布される場合は、装置上面の平坦性が保たれるため、マウンターノズルに傾いて吸着されることがなく、実装不良が少なくなる利点がある。
【0015】
なお、感熱部6として特に粒子性のものを用いる場合、消色化又は薄色化後に光散乱効果を発揮する。特に光半導体素子として発光素子を用い、かつ、発光素子の設置場所が光半導体装置全体の中で偏在している場合、指向特性の対称化に資する。
【0016】
更に、感熱材料の色は任意であるが、封止樹脂の色とのコントラストが高いことが望ましい。例えば、YAG蛍光体を含む封止樹脂を用いる白色発光半導体装置は、樹脂の外観が淡黄色であるため、感熱材料の色としては青色や緑色、黒色の感熱材料が適している。
【0017】
その他、配線基板1、配線パターン2、光半導体素子3、ワイヤ4、封止樹脂5などは従来から利用されてきたものと同様のため、説明を省略する。
【0018】
図5は、本発明の第2の実施形態を示す図である。
図2の光半導体装置は、実装される基板の平面に対して水平方向へ光が発射される/又は水平方向に光を受け取る構造である。
【0019】
基本的に、このような構成の光半導体装置は、例えば配線基板1の上に光半導体素子3を配置し、それらを覆うようにかまぼこ状に封止樹脂5を形成し、前記かまぼこ形状を軸方向に垂直な平面で裁断して得ることができる。
図5においては、裁断前又は裁断後に、感熱部6を封止樹脂5表面全体に配置した点に特色がある。感熱部6は、光入出射面として変色済感熱部6aを形成するとともに、図中の光半導体装置の上側の面に変色済感熱部6aが極性表示として形成される。
【0020】
このため、従来の側方発光装置は、配線基板1裏面に極性マークが付されていることが多く、実装時に極性を確認するには認識カメラを側方へ傾けなければなかったところを、本構成によれば、その必要がなく、簡便に極性を認識できる。
【0021】
第2の実施形態において、未変色感熱部6bを光遮蔽部として用いることができる。この場合、第1の実施形態と違って、感熱材料として工程中で最も高い温度よりも変色点が高い必要がある。リフロー工程等を経て色が消えないようにするためである。
【符号の説明】
【0022】
1 配線基板
2 配線パターン
3 光半導体素子
4 ワイヤ
5 封止樹脂
6 感熱部
6a 変色済感熱部
6b 未変色感熱部
7 下面側配線パターン