(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護部材と前記平板材との間であって、隣接する前記接続板の各々の間のスペースには、その内部に中詰材が充填された、前記スペースに対応した形状の箱体が設置される、請求項1又は請求項2記載の保護構造体。
【背景技術】
【0002】
地盤支持力の弱い軟弱地盤の地域においては、土石流等の土砂災害防止を目的とする砂防構造物を、例えば鋼製枠構造物よりなる構造物で構成している。このような砂防構造物は柔構造となるため、地盤沈下等に対応することが出来る。
【0003】
図11は従来の鋼製枠構造物よりなる砂防構造物を上流側から見た概略正面図であり、
図12は
図11で示したY部分の拡大斜視図である。
【0004】
これらの図を参照して、砂防構造物70は、複数の鋼製枠構造物10の集合体によって形成されている。
【0005】
鋼製枠構造物10は、水流方向(
図12の左下から右上に向かう方向)に直交する方向に延びるように水平に配置された、断面コの字形状の鋼材よりなる一対の水平材11a、11bと、砂防構造物70の天端面71を構成する、水流方向で各々が互いに平行に配置されるように水平材11a、11bに掛け渡すように取り付けられた鋼材よりなる複数の平板材12と、天端面71から上流側の面を構成する、各々が互いに平行及び水平になるように垂直方向に配置された、断面コの字形状の鋼材よりなる複数のスクリーン材13とから主に構成されている。尚、天端面71から下流側の面は、上述したスクリーン材13と同一形状のスクリーン材によって天端面71から上流側の面と同様に構成されている。又、平板材12及び上下流側のスクリーン材13の各々によって囲まれる鋼製枠構造物10の内方には、直径20〜30cm程度の骨材25が充填されている。
【0006】
又、平板材12の各々は、その両端の各々がボルト21a、21bによって水平材11a、11bの各々に固定されている。
【0007】
更に、水平材11a、11b及びスクリーン材13の両端側の各々には、垂直方向に延びるH型鋼よりなる柱材14a〜14dが設置されている。そして、水平材11a、11b及びスクリーン材13の両端部の各々は、柱材14a〜14dの凹み部分に挿入され、柱材14a〜14dの外面からボルト22a、22b、23a、23bの各々によって固定されている。更に、水流方向に対向する柱材14a、14bの各々と柱材14c、14dの各々との上端部を掛け渡すように、断面コの字形状の鋼材よりなる梁材15a、15bが柱材14a〜14dの各々にボルトで固定されている。
【0008】
このように構成された鋼製枠構造物10は、柱材14a〜14dを介して隣接する鋼製枠構造物10の各々と結合されて砂防構造物70等の構造物を形成する。そして、鋼製枠構造物10の各々の部材がボルト等によって所謂ピン結合されているため、砂防構造物70が柔軟性のある構造となる。従って、軟弱地盤における地盤変化等に対応することが出来る砂防構造物70となる。
【0009】
しかしながら、このような鋼製枠構造物よりなる砂防構造物は、各部材及びこれらを固定するボルトが外方に露出している等の理由から、耐摩耗性及び耐衝撃性に優れているとは言えないものであった。従って、流下土砂量の多い河川においては、特に天端面又は水叩きエプロン部分を構成する鋼製枠構造物の部材を頻繁に交換する必要があるため、このような河川においては適用し難いものであった。
【0010】
そこで、鋼製枠構造物よりなる砂防構造物の耐摩耗性及び耐衝撃性を向上させる手段として、鋼製枠構造物の表面を高強度のコンクリートで覆う方法が提案されている。
【0011】
図13は天端面がコンクリートに被覆された鋼製枠構造物よりなる砂防構造物を上流側から見た概略正面図である。
【0012】
図を参照して、砂防構造物75は、複数の鋼製枠構造物10の集合体によって形成されており、その構造は
図11で示した砂防構造物と同様である。
【0013】
砂防構造物75においては、その天端面71を構成する鋼製枠構造物10の上面が高強度のコンクリート76によって被覆されている。従って、天端面71は、河川からの流出土砂の衝突による衝撃から保護されるため、鋼製枠構造物10よりなる砂防構造物75の耐摩耗性及び耐衝撃性が向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のような
図13で示した砂防構造物では、その保護方法における施工の際に問題が生じていた。
【0015】
まず、既設の鋼製枠構造物の表面にコンクリートを被覆する場合、鋼製枠構造物表面を構成する部材の撤去、骨材の除去及びコンクリート打設等の作業が必要となる。そのため、施工期間の長期化によってコストが高くなってしまう。又、コンクリートの施工後であっても、地盤沈下等に伴う鋼製枠構造物の変形に伴ってコンクリートにひび割れ等の損傷が発生する虞がある。そして、損傷が発生したコンクリートを放置すると、鋼製枠構造物本体の耐久性が低下するため、コンクリートの補修又は取替えをおこなう必要がある。この場合、上述した問題が再度発生する。
【0016】
又、新設の場合であっても、例えば、山岳部の地すべり地帯等に設置する鋼製枠構造物よりなる砂防構造物にあっては、工事用道路の幅、急勾配又はコンクリート打設時間等の条件によっては生コン車による搬入が出来ず、施工が困難なものとなっていた。
【0017】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、鋼製枠構造物の上面を保護する保護部材の取付け、取替えが容易であると共に、耐久性の高い砂防構造物の保護構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、鋼製枠構造物よりなる砂防構造物の保護構造体であって、砂防構造物の天端面を構成する鋼製部材と、鋼製部材上に脱着自在に設置され、少なくとも天端面を覆う保護部材とを備え
、鋼製部材は、水流方向に互いに平行に配置され、その両端がボルトで固定された複数の平板材と、ボルトを利用して平板材に脱着自在に固定され、水流方向に直交する方向に延びるように配置された一対のスペーサー部材と、スペーサー部材に掛け渡すように取付けられ、所定間隔で配置された複数の接続板とを含み、保護部材は、スペーサー部材及び接続板の上面に脱着自在に取付けられ、スペーサー部材は、断面コの字形状に形成されており、スペーサー部材の上部には長手方向に整列する複数の開口が形成されており、開口の各々の下方に位置する下端には、底板が接続されており、開口及び底板の各々は、スペーサー部材の設置状態において、平板材のボルトの上方に位置するように配置されているものである。
【0019】
このように構成すると、損傷を受けやすい鋼製部材の上面が保護される。
又、保護部材はスペーサー部材及び接続板を介して取付けられる。
【0022】
請求項
2記載の発明は、請求項
1記載の発明の構成において、保護部材は、弾性体と、弾性体に埋設された鋼板とを含むものである。
【0023】
このように構成すると、鋼板は露出せず、外面が弾性を有する。
【0024】
請求項
3記載の発明は、請求項
1又は請求項
2記載の発明の構成において、保護部材と平板材との間のスペースに中詰材が充填されるものである。
【0025】
このように構成すると、保護部材の設置状態が安定する。
【0026】
請求項
4記載の発明は、請求項
3記載の発明の構成において、中詰材は土砂を含み、その上面及び下面には透水性のマットが布設されるものである。
【0027】
このように構成すると、河川の流水による中詰材の流出が防止される。
【0028】
請求項
5記載の発明は、請求項
1又は請求項
2記載の発明の構成において、保護部材と平板材との間であって、隣接する接続板の各々の間のスペースには、その内部に中詰材が充填された、スペースに対応した形状の箱体が設置されるものである。
【0029】
このように構成すると、保護部材の設置状態が安定すると共に、接続板の取付け後に箱体を設置できる。
【0032】
請求項
6記載の発明は、請求項1から請求項
5のいずれかに記載の発明の構成において、保護部材は、天端面から上流側の面の一部を更に覆うものである。
【0033】
このように構成すると、損傷及び摩耗を受けやすい場所の保護範囲が拡大する。
【0036】
請求項
7記載の発明は、
鋼製枠構造物よりなる砂防構造物の保護構造体であって、砂防構造物の天端面を構成する鋼製部材と、鋼製部材上に脱着自在に設置され、少なくとも天端面を覆う保護部材とを備え、鋼製部材は、水流方向に直交する方向に延び、天端面における水流方向の両端部の各々に配置された一対の水平材を含み、保護部材は、水平材の各々の上部を掛け渡すように水流方向に延び、その長手方向の両端の各々が水平材の各々を超えるように配置された胴部と、胴部の両端の各々に接続され、下方に延びる一対の第1脚部と、からなる、水流方向に互いに平行に配置された複数の保護鋼材と、保護鋼材の胴部の上面に取付けられた保護板と、保護鋼材の第1脚部の各々を水平材の各々に脱着自在に取付けるための取付手段とを含み、取付手段は、水平材の各々に沿って延び、水流方向に直交する方向に隣接する第1脚部の各々の内方側に取付けられた一対の鋼材と、鋼材の各々と水平材の各々とを水流方向に対して取付けるボルト及びナットとを含
み、鋼材は、断面コの字形状に形成されており、鋼材には、隣接する保護鋼材の間であって水平材に接する部分に底板が取付けられており、鋼材の底板及び水平材の両側面には、水流方向に連続する開口が形成されており、連続する開口の延長線上の鋼材の外面には、連続する開口より大きな開口が形成されているものである。
【0037】
このように構成すると、
損傷を受けやすい鋼製部材の上面が保護される。又、保護鋼材は鋼製部材を覆うように設置される。更に、鋼材の各々と水平材の各々とが直接的に取付けられる。
【0038】
請求項
8記載の発明は、
鋼製枠構造物よりなる砂防構造物の保護構造体であって、砂防構造物の天端面を構成する鋼製部材と、鋼製部材上に脱着自在に設置され、少なくとも天端面を覆う保護部材とを備え、鋼製部材は、水流方向に直交する方向に延び、天端面における水流方向の両端部の各々に配置された一対の水平材を含み、保護部材は、水平材の各々の上部を掛け渡すように水流方向に延び、その長手方向の両端の各々が水平材の各々を超えるように配置された胴部と、胴部の両端の各々に接続され、下方に延びる一対の第1脚部と、からなる、水流方向に互いに平行に配置された複数の保護鋼材と、保護鋼材の胴部の上面に取付けられた保護板と、保護鋼材の第1脚部の各々を水平材の各々に脱着自在に取付けるための取付手段とを含み、取付手段は、その底部の各々が水平材の底部の各々と同一高さに配置され、水平材の各々に沿って延びると共に、水流方向に直交する方向に隣接する第1脚部の各々に取付けられた一対の鋼材と、鋼材の底部の各々と水平材の底部の各々とを下方側から保持するように配置された一対の接続板と、接続板の各々と鋼材の底部の各々とを
上下方向に取付けるボルト及びナットとを含むものである。
【0039】
このように構成すると、
損傷を受けやすい鋼製部材の上面が保護される。又、保護鋼材は鋼製部材を覆うように設置される。更に、接続板の取付けによって鋼製部材が固定される。
【0040】
請求項
9記載の発明は、
鋼製枠構造物よりなる砂防構造物の保護構造体であって、砂防構造物の天端面を構成する鋼製部材と、鋼製部材上に脱着自在に設置され、少なくとも天端面を覆う保護部材とを備え、鋼製部材は、水流方向に直交する方向に延び、天端面における水流方向の両端部の各々に配置された一対の水平材を含み、保護部材は、水平材の各々の上部を掛け渡すように水流方向に延び、その長手方向の両端の各々が水平材の各々を超えるように配置された胴部と、胴部の両端の各々に接続され、下方に延びる一対の第1脚部と、からなる、水流方向に互いに平行に配置された複数の保護鋼材と、保護鋼材の胴部の上面に取付けられた保護板と、保護鋼材の第1脚部の各々を水平材の各々に脱着自在に取付けるための取付手段とを含み、保護鋼材は、胴部に接続されて下方に延び、水平材の各々を介して第1脚部の各々に内方側で対向する一対の第2脚部を更に備え、取付手段は、その上部の各々が水平材の底部の各々より低い高さ位置に配置され、水流方向に直交する方向に延びると共に、水流方向に直交する方向に隣接する第1脚部の各々に取付けられた一対の第1鋼材と、その上部の各々が第1鋼材の各々と同一高さに配置され、水流方向に直交する方向に延びると共に、水流方向に直交する方向に隣接する第2脚部の各々に取付けられた一対の第2鋼材と、第1鋼材の各々と第2鋼材の各々とを水平材の各々の下方で掛け渡すように配置された接続材と、接続材の各々と対応する第1鋼材及び第2鋼材の各々とを
上下方向に取付けるボルト及びナットとを含むものである。
【0041】
このように構成すると、
損傷を受けやすい鋼製部材の上面が保護される。又、保護鋼材は鋼製部材を覆うように設置される。更に、水平材が胴部、第1脚部、第2脚部及び接続材に囲まれる。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、損傷を受けやすい鋼製部材の上面が保護されるため、耐久性が向上すると共に、保護部材の取替えが容易となる。
又、保護部材はスペーサー部材及び接続板を介して取付けられるため、既存の砂防構造物における補修及び補強が容易となる。
【0044】
請求項
2記載の発明は、請求項
1記載の発明の効果に加えて、鋼板は露出せず、外面が弾性を有するため、鋼板に対する防塵効果及び錆び止め効果が向上すると共に、衝撃は弾性体によって緩和される。
【0045】
請求項
3記載の発明は、請求項
1又は請求項
2記載の発明の効果に加えて、保護部材の設置状態が安定するため、保護部材の設置状態の信頼性が向上する。
【0046】
請求項
4記載の発明は、請求項
3記載の発明の効果に加えて、河川の流水による中詰材の流出が防止されるため、中詰材の充填状態が安定する。
【0047】
請求項
5記載の発明は、請求項
1又は請求項
2記載の発明の効果に加えて、保護部材の設置状態が安定するため、信頼性が向上する。又、接続板の取付け後に箱体を設置できるため、箱体の設置が容易となる。
【0049】
請求項
6記載の発明は、請求項1から請求項
5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、損傷及び摩耗を受けやすい場所の保護範囲が拡大するため、耐久性が更に向上する。
【0051】
請求項
7記載の発明は、
損傷を受けやすい鋼製部材の上面が保護されるため、耐久性が向上すると共に、保護部材の取替えが容易となる。又、保護鋼材は鋼製部材を覆うように設置されるため、既存の砂防構造物における補修及び補強が、その状態を問わず容易となる。更に、鋼材の各々と水平材の各々とが直接的に取付けられるため、取付け状態が安定する。
【0052】
請求項
8記載の発明は、
損傷を受けやすい鋼製部材の上面が保護されるため、耐久性が向上すると共に、保護部材の取替えが容易となる。又、保護鋼材は鋼製部材を覆うように設置されるため、既存の砂防構造物における補修及び補強が、その状態を問わず容易となる。更に、接続板の取付けによって鋼製部材が固定されるため、接続板を鋼材にのみ取付ければ良いので、取付け作業が容易となる。
【0053】
請求項
9記載の発明は、
損傷を受けやすい鋼製部材の上面が保護されるため、耐久性が向上すると共に、保護部材の取替えが容易となる。又、保護鋼材は鋼製部材を覆うように設置されるため、既存の砂防構造物における補修及び補強が、その状態を問わず容易となる。更に、水平材が胴部、第1脚部、第2脚部及び接続材に囲まれるため、取付け状態が安定する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1はこの発明の第1の実施の形態による砂防構造物の保護構造体を示す概略斜視図であって、従来例の
図12に相当する図であり、
図2は
図1で示したII−IIラインの拡大断面図であって、
図3は
図2で示したIII−IIIラインの断面図であって、
図4は
図2で示したIV−IVラインの断面図である。
【0056】
尚、この実施の形態における砂防構造物の保護構造体5の鋼製枠構造物10は、従来例の
図12で示した鋼製枠構造物と同一のものである。
【0057】
これらの図を参照して、保護構造体5は、鋼製枠構造物10の平板材12と、水流方向(
図1の左下から右上に向かう方向)に直交する方向に延びるように水平材11a、11bの上方に配置された、鋼材よりなる一対のスペーサー部材31a、31bと、スペーサー部材31a、31bに掛け渡すように取り付けられ、水流方向に直交する方向に所定間隔で配置された鋼材よりなる複数の接続板32と、接続板32の各々に掛け渡すように取り付けられた、鋼材よりなる中間接続板33とからなる、砂防構造物の天端面を構成する鋼製部材を有している。そして、弾性体等よりなる複数の矩形平板状の保護部材40が、スペーサー部材31a、31b、接続板32及び中間接続板33の上面に複数のボルト45によって脱着自在に固定されている。即ち、砂防構造物の天端面が保護部材40によって覆われている。更に、保護部材40と平板材12との間のスペースには中詰材47が充填されている。保護部材40、ボルト45及び中詰材47の周辺部分の詳細な構造については後述する。
【0058】
スペーサー部材31aは、断面コの字形状に形成されており、平板材12の両端の各々のボルト21a、21bを利用して平板材12に固定されている。又、その上部には長手方向に整列する複数の開口51が形成されている。更に、開口51の各々の下方に位置する下端には、底板39が接続されている。開口51及び底板39の各々は、スペーサー部材31aの設置状態において、平板材12のボルト21aの上方に位置するように配置されている。そして、このボルト21aを利用して、スペーサー部材31aの底板39が平板材12の一方の端部に脱着自在に固定されている。即ち、スペーサー部材31aの底板39、平板材12及び水平材11が一体的に固定されている。尚、スペーサー部材31bにおいても、スペーサー部材31aと同様に平板材12のボルト21bを利用して平板材12の他方の端部に取り付けられている。
【0059】
接続板32は、その両端部の各々がボルトによってスペーサー部材31a、31bの各々の内方側面に固定されている。又、接続板32の長手方向の中間部分には、水流方向と直交する方向に延びる中間接続部38a、38bが形成されている。そして、中間接続板33の各々は、その端部が接続板32の中間接続部分38a、38bにボルトによって固定されている。
【0060】
又、スペーサー部材31a及び水平材11aの上流側(
図2の左側)の側面を覆うように、鋼材よりなる上方プレート35が設置されている。上方プレート35の両端は、水平材11aを柱材14a、14cに固定するためのボルト23a、23b(図示せず)を利用して、柱材14a、14bの各々に取り付けられている。即ち、上方プレート35、柱材14a、14bの各々及び水平材11aが一体的に固定されている。
【0061】
更に、上方プレート35の下方側には、スクリーン材13の上流側の側面を覆うように、鋼材よりなる下方プレート36が設置されている。下方プレート36の両端は、スクリーン材13を柱材14a、14bに取り付けるためのボルト22a、22b(図示せず)を利用して、柱材14a、14bに取り付けられている。即ち、下方プレート36、柱材14a、14bの各々及びスクリーン材13が一体的に固定されている。
【0062】
更に、砂防構造物における天端面を構成する鋼製部材の上面から上流側の面の一部を覆うように、矩形平板状の保護部材41が上方プレート35及び下方プレート36に複数のボルトによって脱着自在に固定されている。更に、スペーサー部材31bの下流側の側面には、矩形平板状の保護部材42が複数のボルトによって脱着自在に固定されている。保護部材41、42及びこれらを固定するためのボルトの詳細な構造については後述する。
【0063】
このような保護構造体5にあっては、スペーサー部材31a、31b、接続板32及び中間接続板33に保護部材40がボルト45によって脱着自在に固定されている。従って、保護部材40によって、損傷を受けやすい砂防構造物の天端面を構成する鋼製部材の上面が保護される。そのため、砂防構造物を構成する鋼製枠構造物10の耐久性が向上すると共に、保護部材40の損傷時における取替えが容易となる。
【0064】
更に、上述した上流側の面を保護する保護部材41によって、天端面のみならず損傷及び摩耗を受けやすい場所の保護範囲が拡大する。従って、砂防構造物を構成する鋼製枠構造物10の耐久性が更に向上する。又、耐久性の向上に伴い、砂防構造物のライフサイクル向上、生コン車の搬入が減ることによる、CO
2削減という効果も生じる。
【0065】
又、保護部材40はスペーサー部材31a、31b及び接続板32を介して鋼製枠構造物10に取り付けられる。従って、既設の鋼製枠構造物10をそのまま利用出来るため、既存の砂防構造物における補修及び補強が容易となると共に、従来のコンクリートによる保護方法に比べて施工期間が短縮する。
【0066】
次に、保護部材40、ボルト45及び中詰材47の周辺部分の詳細な構造について説明する。
【0067】
図5は
図2で示したX部分の拡大図である。
【0068】
図を参照して、保護部材40は、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の合成ゴム、あるいはポリウレタン等の合成樹脂よりなる弾性体53と、弾性体53に埋設された鋼板54とから構成されている。鋼板54の厚さは、砂防構造物の施工箇所における設計外力に応じた強度以上となるように設定されている。尚、
図1で示した保護部材41、42についても同一構造である。
【0069】
このように、保護部材40〜42は弾性体53を含んだ可撓性構造となっているため、地盤沈下等による鋼製枠構造物の変形に対して追従することが出来る。従って、コンクリートによる保護方法に比べて取替えの頻度が減少する。
【0070】
又、鋼板54の全面が弾性体53に覆われているため、鋼板54が外面に露出することが無い。従って、鋼板54に対する防塵効果及び錆び止め効果が向上する。そのため、鋼板54の厚さは摩耗しろ及び錆びしろを考慮した厚さにする必要が無いので、コスト的に有利となる。
【0071】
更に、保護部材40の外面に弾性体53が配置されるため、巨礫等の衝突による衝撃が弾性体53によって緩和される。尚、この外面に位置する弾性体53は、その厚さを種々に変更することで、砂防構造物の施工箇所の条件に対応した耐衝撃性を付加することが出来る。
【0072】
又、保護部材40は、ボルト45によってワッシャー46を介して接続板32の下面に溶接されたナット49に連結されている。尚、ボルト45の頭部は円筒状のゴム56によって覆われており、ゴム56の上面は保護部材40と同一平面上に位置している。従って、ボルト45への直接的な衝撃が加わる虞が無いため、ボルト45の耐久性が向上する。又、ゴム56は円筒状のため、保護部材40の弾性体53との隙間57を最小限にすることが出来る。従って、隙間57に不用意に砂等が溜まる虞が低減するので、保護部材40等の損傷時におけるボルト45の取外し等が容易となる。尚、ボルト45を締め付ける際には、六角レンチ等を中央部に挿入してボルト45を回転させれば良い。尚、保護部材40における他のボルト部分及び
図1で示した保護部材41、42を固定するためのボルトについても同一構造である。
【0073】
中詰材47は、例えば現場で発生した土砂等で構成されており、その上面及び下面には、透水性を有するマット59が布設されている。このように、保護部材40と平板材12との間のスペースに中詰材47が充填されているため、保護部材40の設置状態が安定する。そのため、保護部材40の設置状態の信頼性が向上する。又、中詰材47の上面及び下面がマット59に覆われているため、河川の流水による中詰材47の外方への流出が防止される。そのため、中詰材47の充填状態が安定する。
【0074】
次に、
図1で示した保護構造体5の設置方法について説明する。
【0075】
図6は
図1で示した砂防構造物の保護構造体の第1の設置手順を示した概略断面図であり、
図7は
図1で示した砂防構造物の保護構造体の第2の設置手順を示した概略断面図であり、
図8は
図1で示した砂防構造物の保護構造体の第3の設置手順を示した概略断面図である。
【0076】
まず
図6の(A)を参照して、従来例の
図12で示したものと同一の鋼製枠構造物10の水平材11a、11bにボルト21a、21bで固定された平板材12に、ボルト21a、21bを一旦外した後、再度これを利用してスペーサー部材31a、31bの底板39a、39bの各々を固定する。この時、スペーサー部材31a、31bの底板39a、39bの上方側には開口51a、51bが形成されているため、ボルト21a、21bの締め付けが容易となる。
【0077】
次に
図6の(B)を参照して、固定されたスペーサー部材31a、31b及び平板材12の間に、透水性のマット59をその端部が外方へ露出するように布設する。又、柱材14aに水平材11aを固定するためのボルト23を利用して、上方プレート35を柱材14aに固定する。従って、上方プレート35が水平材11aの上流側に設置される。
【0078】
更に、上方プレート35の下方側において、柱材14aにスクリーン材13を固定するためのボルト22を利用して、下方プレート36を柱材14aに固定する。従って、下方プレート36がスクリーン材13の上流側に設置される。
【0079】
次に
図7の(C)を参照して、マット59が布設されたスペーサー部材31a、31b及び平板材12の間に、上方から接続板32をスペーサー部材31a、31bに掛け渡すように配置する。そして、接続板32の長手方向の両端部の各々をスペーサー部材31a、31bの各々の側面にボルトで固定する。尚、接続板32は、水流方向に直交する方向(図の紙面を直交する方向)に複数設置する。
【0080】
次に
図7の(D)を参照して、複数設置された接続板32の各々の間から、平板材12上に土砂等の中詰材47を接続板32の上面まで充填する。この時、平板材12上にはマット59が布設されているため、中詰材47が平板材12の各々の間を通って下方へと流出する虞が無い。そして、中詰材47の充填が終了した後、接続板32の各々の間を掛け渡すように、図示しない中間接続板を設置し、接続板32の各々にボルトによって固定する。その後、充填された中詰材47の上面にマット59と同様のマットを布設する。即ち、
図5で示したような中詰材47の上面及び下面にマット59等が布設された状態となる。
【0081】
次に
図8の(E)を参照して、スペーサー部材31a、31b及び接続板32上に保護部材40を配置する。即ち、天端面を覆うように保護部材40を配置する。そして、保護部材40をスペーサー部材31a、31b及び接続板32の各々にボルト45で固定する。又、上流側(図の左側)の面を覆うように、保護部材41を上方プレート35及び下方プレート36にボルトで固定する。更に、下流側(図の右側)の面を覆うように、保護部材42をスペーサー部材31bの側面にボルトで固定する。すると、
図8の(F)で示す保護構造体5が完成する。
【0082】
保護構造体5はこのように設置されるため、コンクリート打設が不可能な立地条件等の制約がある施工場所であっても、保護部材40が平板形状であるため運搬し易く、施工可能な場所の範囲が拡大する。
【0083】
図9はこの発明の第2の実施の形態による砂防構造物の保護構造体を示す概略斜視図であって、第1の実施の形態の
図1に相当する図であり、
図10は
図9で示したX−Xラインの拡大断面図である。
【0084】
これらの図を参照して、この実施の形態にあっては、砂防構造物を構成する鋼製枠構造物20が、
図1で示した鋼製枠構造物の平板材を備えていない構造となっている。
【0085】
そして、保護構造体6は、砂防構造物の天端面を構成する鋼製部材である、その上面が水平材11a、11bの上面を結ぶ所定の平面に整列するように配置された、水流方向又は水流方向と直交する方向に延びる断面コの字形状の複数の型鋼材61a、61bを有している。水流方向に延びる型鋼材61bの各々の両端部にはフランジ62が形成されている。そして、このフランジ62の各々が、水流方向と直交する方向に延びる型鋼材61a及び水平材11a、11bにボルトで固定されている。又、型鋼材61a、61b上には、保護部材40が配置され、ボルト45によって型鋼材61a、61bに脱着自在に固定されている。
【0086】
尚、保護部材40及びボルト45は、
図1で示した第1の実施の形態による保護構造体及びボルトと同一構造となっている。又、保護部材41、42は、
図1で示した第1の実施の形態による保護構造体と同一である。従って、この実施の形態による保護構造体6においては、第1の実施の形態による保護構造体と同一の効果を発揮する。更に、保護構造体6においては中詰材が不要となり、中詰材の充填作業等が無くなるので、第1の実施の形態による保護構造体に比べて施工期間が短縮される。
【0087】
又、このような保護構造体6を設置する場合には、鋼製枠構造物20の上面に型鋼材61a、61bを取り付けた後、保護部材40等をボルト45で固定すれば良く、特に鋼製枠構造物を新設する際に適用されるものである。
【0088】
尚、上記の各実施の形態では、保護部材は砂防構造物における天端面から上流側の面及び下流側の面を覆うように形成されているが、これらの面を保護する保護部材は無くても良い。
【0089】
更に、上記の第1の実施の形態では、スペーサー部材は特定形状に形成されているが、平板材の両端のボルトを利用して平板材に脱着自在に固定され、水流方向に直交する方向に延びるように配置されるものであれば、他の形状に形成されていても良い。
【0090】
更に、上記の第1の実施の形態では、保護構造体は中間接続板を備えているが、中間接続板は無くても良い。
【0091】
更に、上記の第1の実施の形態では、保護部材と平板材との間のスペースに土砂よりなる中詰材が充填されているが、中詰材は土砂に限らず、このスペースに充填出来るものであれば、他の材料であっても良い。又は、中詰材は無くても良い。
【0092】
更に、上記の第1の実施の形態では、中詰材の上面及び下面に透水性のマットが布設されているが、マットは無くても良い。
【0093】
更に、上記の第2の実施の形態では、保護構造体は特定形状の型鋼材を備えているが、その上面が所定の平面(保護部材を設置する面)に整列するように複数配置されたものであれば、他の形状であっても良い。
【0094】
図14はこの発明の第3の実施の形態による砂防構造物の保護構造体を示す概略斜視図であって、第1の実施の形態の
図1に相当する図であり、
図15は
図14で示したXV−XVラインの拡大断面図であり、
図16は
図14で示したXVI−XVIラインの拡大断面図であり、
図17は
図15で示したXVII−XVIIラインの断面図であり、
図18は
図16で示したA部分の拡大図である。
【0095】
尚、この実施の形態における砂防構造物の保護構造体7の鋼製枠構造物10は、水平材11a、11bの断面形状を除いては、
図1で示した第1の実施の形態による鋼製枠構造物と同一のものである。
【0096】
これらの図を参照して、保護構造体7は、鋼製枠構造物10の四角筒状の水平材11a、11b及び複数の平板材12からなる、砂防構造物の天端面を構成する鋼製部材を有している。そして、水流方向に互いに平行に配置された断面コの字形状の鋼材よりなる複数の保護鋼材17が、後述する取付手段によって水平材11a、11bに脱着自在に固定されている。更に、第1の実施の形態における保護部材と同一構造の複数の矩形状の保護板27が、保護鋼材17の上面及び側面に脱着自在に固定されている。即ち、砂防構造物の天端面が保護部材である保護鋼材17及び保護板27によって覆われている。従って、第1の実施の形態による砂防構造物の保護構造体と同様、鋼製枠構造物10の耐久性が向上すると共に、保護板27及び保護鋼材17の損傷時における取替えが容易となる。
【0097】
保護鋼材17は、水平材11a、11bの各々の上部を掛け渡すように水流方向に延び、その長手方向の両端の各々が水平材11a、11bの各々を超えるように配置された胴部18と、胴部18の両端の各々に接続され、下方に延びる一対の第1脚部19a、19bとから構成されている。又、隣接する保護鋼材17の胴部18及び第1脚部19a、19bの各々は、複数の接続材29で接続されている。そして、保護鋼材17の胴部18の上面と第1脚部19a、19bの各々の外面とには、複数の保護板27がボルトによって脱着自在に固定されている。
【0098】
取付手段は、水平材11a、11bの各々に沿って延び、水流方向に直交する方向に隣接する第1脚部19a、19bの各々の内方側に取付けられた断面コの字形状の一対の鋼材63a、63bと、鋼材63a、63bの各々を水平材11a、11bの各々に水流方向に対して平行に取付けるボルト65a、65b及びナット66a、66bとで構成されている。
【0099】
そして、
図18で示すように、鋼材63aには、隣接する保護鋼材17の間であって水平材11aに接する部分に底板67が取付けられている。又、鋼材63aの底板67及び水平材11aの両側面には、水流方向に連続する開口68a〜68cが形成されている。更に、開口68a〜68cの延長線上の鋼材63aの外面には、開口68a〜68cより大きな開口69が形成されている。そして、ワッシャー72a、72b及び押え板73を介して、開口68a〜68cを貫通するボルト65a及びナット66aによって、鋼材63aの底板67と水平材11aとが水流方向に対して脱着自在に固定されている。尚、
図17を併せて参照して、鋼材63aの開口69によって、隣接する保護鋼材17の間から容易に外方側からボルト65a及びナット66aの締付け作業をおこなうことができる。又、鋼材63bにおいても、鋼材63a及び水平材11aと同様に、ボルト65b及びナット66aによって水平材11bに取付けられている。
【0100】
このように、鋼材63a、63bの各々と水平材11a、11bの各々とは、ボルト65a、65b及びナット66a、66bの各々によって直接的に取付けられている。従って、保護鋼材17の水平材11a、11bに対する取付け状態が安定する。
【0101】
尚、この実施の形態による保護構造体7においては、隣接する3本の保護鋼材17を一単位とした複数のユニット77a、77bが、水流方向に直交する方向に連続して配置されている。従って、後述する保護構造体7の設置時において、ユニット77a、77b毎に設置できるため、効率的となる。
【0102】
次に、このような保護構造体7の設置方法について説明する。
【0103】
図19は
図14で示した砂防構造物の保護構造体の第1の設置手順を示した概略断面図であり、
図20は
図14で示した砂防構造物の保護構造体の第2の設置手順を示した概略断面図である。
【0104】
まず
図19の(1)を参照して、保護鋼材17の胴部18の水流方向(図の左右方向)の長さは、水平材11a、11bの外方側面間より長くなるように形成されている。そして、鋼製部材である水平材11a、11b及び平板材12に対して、保護鋼材17の第1脚部19a、19bの各々(胴部18の長手方向の両端の各々)が水平材11a、11bの各々の外方側に位置した状態で、上方から降下させる。即ち、水平材11a、11b及び平板材12を覆うように保護鋼材17を設置する。尚、保護鋼材17の胴部18の上面には、予め保護板27aがボルトで取付けられている。
【0105】
次に
図19の(2)を参照して、保護鋼材17が水平材11a、11b及び平板材12上に設置されると、保護鋼材17の第1脚部19a、19bの各々の内方側に取付けられた鋼材63a、63bの各々が、水平材11a、11bの各々に沿って配置される。そして、鋼材63a、63bの底板67の各々を、水平材11a、11bの各々に、図示しない開口を介してボルト65及びナット66で水流方向に対して固定する。
【0106】
次に
図20の(1)を参照して、鋼材63a、63bの各々を水平材11a、11bの各々に固定した後、第1脚部19a、19bの各々の外面に保護板27aと同一素材の保護板27b、27cの各々をボルトで取付ける。すると、
図20の(2)で示す保護構造体7が完成する。
【0107】
このように、保護構造体7は鋼製部材である水平材11a、11b及び平板材12を覆うように設置されるため、例えば既設の水平材11a、11bが変形している場合等であっても、容易に設置することができる。即ち、保護構造体7による既設の砂防構造物における補修及び補強が、その状態を問わず容易となる。更に、保護鋼材17は予め上面に保護板27aを取付けた状態で設置できるため、保護構造体7の設置が更に容易となる。
【0108】
図21はこの発明の第4の実施の形態による砂防構造物の保護構造体を示す概略斜視図であって、第3の実施の形態の
図14に相当する図であり、
図22は
図21で示したXXII−XXIIラインの拡大断面図であり、
図23は
図22で示したXXIII−XXIIIラインの断面図であり、
図24は
図22で示したB部分の拡大図である。
【0109】
これらの図を参照して、この実施の形態による保護構造体8においては、保護鋼材17の第1脚部19a、19bの各々を水平材11a、11bの各々に脱着自在に取付けるための取付手段を除いては、第3の実施の形態による保護構造体と同一構造である。
【0110】
この実施の形態による取付手段は、その底部の各々が水平材11a、11bの底部の各々と同一高さに配置されると共に、水平材11a、11bの各々に沿って延びる、隣接する第1脚部19a、19bの各々を連結するように取付けられた、断面コの字形状の一対の鋼材80a、80bを備えている。
【0111】
更に、
図24で示すように、鋼材80aの底部と水平材11aの底部とを下方側から保持するように接続板81aが配置されている。そして、鋼材80aの底部及び接続板81aには連続する開口82a、82bが形成されており、これらはワッシャー87a、87bの各々を介して、開口82a、82bを貫通するボルト85及びナット86によって上下方向に脱着自在に固定されている。従って、水平材11aが保護鋼材17の胴部18と接続板81aとで挟み込まれるような状態となり、接続板81aの取付けによって水平材11aが固定される。従って、取付け時には接続板81aを鋼材80aにのみ取付ければ良いため、取付け作業が容易となる。更に、
図23を併せて参照して、隣接する保護鋼材17の第1脚部19aの各々の間から容易に外方側から取付作業をおこなうことができる。尚、第1脚部19b側の鋼材80bにおいても、接続板81b等によって同様に水平材11bに取付けられている。
【0112】
又、この実施の形態による保護構造体8は、第3の実施の形態と同様に複数のユニット77a、77bによって構成されている。上述した通り、保護構造体8の保護鋼材17の第1脚部19a、19bの各々は、第3の実施の形態のように直接的に水平材11a、11bの各々に取付けられていない。そのため、ユニット77a、77bの各々が単独で不用意に移動する虞がある。しかしながら、
図23で示すように、隣接するユニット77a、77bの各々は、ユニット接続板78を介してボルトによって連結されている。従って、ユニット77a、77bが水平材11a、11bに対して移動し難くなるため、保護構造体8の設置状態が安定する。
【0113】
次に、このような保護構造体8の設置方法について説明する。
【0114】
図25は
図21で示した砂防構造物の保護構造体の第1の設置手順を示した概略断面図であり、
図26は
図21で示した砂防構造物の保護構造体の第2の設置手順を示した概略断面図である。
【0115】
まず
図25の(1)を参照して、第3の実施の形態と同様、鋼製部材である水平材11a、11b及び平板材12を覆うように、上面に保護板27aが取付けられた保護鋼材17を設置する。
【0116】
次に
図25の(2)を参照して、保護鋼材17が水平材11a、11b及び平板材12上に設置されると、保護鋼材17の第1脚部19a、19bの各々の内方側に取付けられた鋼材80a、80bの各々の底部が、水平材11a、11bの各々の底部と同一高さに配置される。そして、鋼材80a、80bの各々の底部と水平材11a、11bの各々の底部とに下方側から接続板81a、81bを当接させて、ボルト85及びナット86によって上下方向に鋼材80a、80bの各々の底部と接続板81a、81bの各々とを固定する。
【0117】
次に
図26の(1)を参照して、接続板81a、81bによって第1脚部19a、19bの各々を水平材11a、11bの各々に取付けた後、第1脚部19a、19bの各々の外面に保護板27aと同一素材の保護板27b、27cの各々をボルトで取付ける。すると、
図26の(2)で示す保護構造体8が完成する。
【0118】
このように、保護構造体8は第3の実施の形態と同様、鋼製部材である水平材11a、11b及び平板材12を覆うように設置されるため、既設の砂防構造物における補修及び補強が、その状態を問わず容易となる。
【0119】
図27はこの発明の第5の実施の形態による砂防構造物の保護構造体を示す概略斜視図であって、第4の実施の形態の
図21に相当する図であり、
図28は
図27で示したXXVIII−XXVIIIラインの拡大断面図であり、
図29は
図28で示したXXIX−XXIXラインの断面図であり、
図30は
図28で示したC部分の拡大図である。
【0120】
これらの図を参照して、この実施の形態による保護構造体9においては、水平材11a、11bの形状、保護鋼材16の形状、及び保護鋼材16の第1脚部19a、19bの各々を水平材11a、11bの各々に脱着自在に取付けるための取付手段を除いては、第4の実施の形態による保護構造体と同一構造である。
【0121】
保護鋼材16は、第4の実施の形態による保護鋼材に対して、H型鋼よりなる水平材11a、11bの各々を介して第1脚部19a、19bの各々に内方側で対向する、胴部18に接続された一対の第2脚部26a、26bを更に備えたものである。
【0122】
又、取付手段は、その上部の各々が水平材11a、11bの底部の各々より低い高さ位置に配置され、水流方向に直交する方向に延びると共に、隣接する第1脚部19a、19bの各々を接続するように取付けられた断面逆コの字形状の一対の第1鋼材91a、91bを備えている。更に、その上部の各々が第1鋼材91a、91bの各々と同一高さに配置され、水流方向に直交する方向に延びると共に、隣接する第2脚部26a、26bの各々を接続するように取付けられた断面コの字形状の一対の第2鋼材92a、92bを備えている。
【0123】
更に、
図30で示すように、第1鋼材91aと第2鋼材92aとを水平材11aの下方で掛け渡すように、断面コの字形状の鋼材よりなる接続材93aが、調整板94a〜94dを介して、第1鋼材91a及び第2鋼材92a上に配置されている。そして、接続材93aの長手方向の両端部の各々は、調整板94a〜94dを介して、第1鋼材91a及び第2鋼材92aの各々に、各々に形成された開口を挿通するボルト95a、95b及びナット96a、96bの各々によって取付けられている。尚、第1鋼材91b及び第2鋼材92b側においても、第1鋼材91a及び第2鋼材92aと同様に、接続材93bが掛け渡され、ボルト及びナットで取付けられている。
【0124】
このようにして、保護鋼材16の第1脚部19a、19bの各々は水平材11a、11bの各々に脱着自在に取付けられている。即ち、水平材11a、11bの各々が保護鋼材16の胴部18、第1脚部19a、19bの各々、第2脚部26a、26bの各々及び接続材93a、93bの各々に囲まれた状態となる。従って、保護鋼材16の取付状態が安定する。又、調整板94a〜94dによって、接続材93a、93bの各々の上部と水平材11a、11bの各々の下部との間に隙間が無くなるため、保護鋼材16の取付状態が更に安定する。
【0125】
更に、この実施の形態による保護構造体9においては、第4の実施の形態と同様、複数のユニット77a、77bによって構成されており、ユニット77a、77b間で隣接する第2脚部26a、26bの各々は、ユニット接続板98を介してボルトによって連結されている。従って、特に水平材11a、11bに対して水流方向に直交する方向に移動し難くなるため、保護構造体9の設置状態が安定する。
【0126】
次に、このような保護構造体9の設置方法について説明する。
【0127】
図31は
図27で示した砂防構造物の保護構造体の第1の設置手順を示した概略断面図であり、
図32は
図27で示した砂防構造物の保護構造体の第2の設置手順を示した概略断面図である。
【0128】
まず
図31の(1)を参照して、鋼製部材である水平材11a、11b及び平板材12を覆うように、且つ第1脚部19a、19bの各々と第2脚部26a、26bの各々とで水平材11a、11bを挟み込むように、上面に保護板27aが取付けられた保護鋼材16を設置する。この時、第2脚部26a、26bは砂防構造物10内に配置されるため、対象となる範囲の既設の骨材を予め撤去しておく必要がある。
【0129】
次に
図31の(2)を参照して、保護鋼材16が水平材11a、11b及び平板材12上に設置されると、第1鋼材91a、91bの各々と第2鋼材92a、92bの各々とが、水平材11a、11bの底部の各々より下方に位置する。そして、接続板93a、93bの各々を、隣接する保護鋼材16の間であって外方側から挿入し、水平材11a、11bの各々の下方側に、且つ第1鋼材91a、91bの各々と第2鋼材92a、92bの各々とを掛け渡すように設置する。この時、調整板94a、94bの各々を、第1鋼材91a、91b及び第2鋼材92a、92bの各々と接続板93a、93bの各々との間に設置する。
【0130】
次に
図32の(1)を参照して、接続板93a、93bの各々の両端部と、第1鋼材91a、91b及び第2鋼材92a、92bの各々とを、上下方向にボルト95a、95b及びナット96a、96bの各々によって取付ける。
【0131】
次に
図32の(2)を参照して、第1脚部19a、19bの各々の外面に保護板27aと同一素材の保護板27b、27cの各々をボルトで取付ける。すると、保護構造体9が完成する。
【0132】
このように、保護構造体9は第4の実施の形態と同様、鋼製部材である水平材11a、11b及び平板材12を覆うように設置されるため、既設の砂防構造物における補修及び補強が、その状態を問わず容易となる。
【0133】
図33はこの発明の第6の実施の形態による砂防構造物の保護構造体を示す概略斜視図であって、第1の実施の形態の
図1に相当する図であり、
図34は
図33で示したXXXIV−XXXIVラインの拡大断面図である。
【0134】
これらの図を参照して、この実施の形態による保護構造体30においては、隣接する接続板32の間に2枚の中間接続板33a、33bを備えている点及び中詰材47の設置形状を除いては、第1の実施の形態による保護構造体と同一構造である。即ち、保護部材40と平板材12との間であって、隣接する接続板32及び中間接続板33a、33bの各々の間のスペースの各々には、その内部に土砂よりなる中詰材47が充填された、該スペースに対応した直方体形状のポリエステル製不織布よりなる箱体43が設置されている。従って、保護部材40の設置状態の信頼性が向上する。又、箱体43は、接続板32及び中間接続板33a、33bの取付け後において上方から該スペースの各々に設置できるため、箱体43の設置が容易となる。
【0135】
このような箱体43の製造方法について説明する。
【0136】
図35は
図33で示した箱体の製造方法を示した模式図である。
【0137】
まず(1)を参照して、箱体43は、その上面部44a〜44dの各々が開閉自在に形成されており、そのうちの一つの上面部44aの内面の外縁には面ファスナー55が取付けられている。そして、上面部44a〜44dの各々を開いた状態で、箱体43の内部に中詰材47を充填する。その後、面ファスナー55が取付けられた上面部44aが最上部となるように上面部44a〜44dの各々を矢印で示すように折り畳む。すると、(2)で示すように、上面部44aの面ファスナー55によって、その内部に中詰材47が封入された箱体43が完成する。
【0138】
尚、上記の各実施の形態では、保護構造体は特定形状の鋼製枠構造物に対して設置されているが、鋼製枠構造物は砂防構造物の天端面を構成する鋼製部材を有していれば、他の形状のものであっても良い。
【0139】
又、上記の各実施の形態では、保護部材は特定形状又は特定構造で構成されているが、鋼製部材上に脱着自在に設置され、少なくとも砂防構造物の天端面を覆うものであれば、他の形状又は構造で構成されていても良い。
【0140】
更に、上記の各実施の形態では、第1、第2、第6の実施の形態では保護部材、第3〜第5の実施の形態では保護板は弾性体と弾性体に埋設された鋼板とで構成されているが、例えば、弾性体のみ又は鋼板のみ等、保護部材(保護板)としての機能を発揮出来るものであれば、他の素材で構成されていても良い。
【0141】
更に、上記の各実施の形態では、第1、第2、第6の実施の形態では保護部材、第3〜第5の実施の形態では保護板の弾性体は、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)よりなる合成ゴムで形成されているが、合成ゴムは、例えばクロロプレンゴム(CR)やエチレンプロピレンゴム(EPT)等が含有されているものであっても良い。
【0142】
更に、上記の第3〜第5の実施の形態では、保護鋼材の第1脚部の各々は特定の取付手段で水平材の各々に取付けられているが、保護鋼材の第1脚部の各々を水平材の各々に脱着自在に取付けられるものであれば、他の構造の取付手段であっても良い。
【0143】
更に、上記の第3〜第5の実施の形態では、保護板と平板材との間であって、隣接する保護鋼材の胴部及び接続材の各々の間にスペースが形成されているが、このスペースに、第6の実施の形態で示した中詰材が充填された箱体を設置しても良い。箱体を設置することによって、上面側の保護板の設置状態の信頼性が向上する。又、その場合の保護構造体の設置手順においては、まず保護鋼材のみを水平材及び平板材を覆うように設置した後、隣接する保護鋼材の間に接続材を設置すると共に、第3〜第5の実施の形態の取付部材の各々によって保護鋼材を水平材に対して取付ける。そして、保護鋼材の胴部及び接続材の各々の間のスペースに箱体を設置した後、これらを覆うように保護板を保護鋼材の胴部に取付ければ良い。
【0144】
更に、上記の第3〜第5の実施の形態では、保護板は保護鋼材の第1脚部の各々の外面に取付けられているが、これらの面を保護する保護板は無くても良い。
【0145】
更に、上記の第5の実施の形態では、接続材は調整板を介して第1鋼材及び第2鋼材上に設置されているが、調整板は無くても良い。
【0146】
更に、上記の第6の実施の形態では、箱体の内部には土砂よりなる中詰材が充填されているが、中詰材は土砂に限らず、箱体の内部に充填出来るものであれば、他の材料であっても良い。