特許第5730665号(P5730665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730665
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】モータ制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/02 20060101AFI20150521BHJP
   F01L 13/00 20060101ALI20150521BHJP
   H02P 29/02 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   F02D13/02 G
   F01L13/00 301Z
   H02P7/00 U
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-110535(P2011-110535)
(22)【出願日】2011年5月17日
(65)【公開番号】特開2012-122465(P2012-122465A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0124220
(32)【優先日】2010年12月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 鍾 ウォン
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−200387(JP,A)
【文献】 特開2006−183603(JP,A)
【文献】 特開2008−190385(JP,A)
【文献】 特開2008−057373(JP,A)
【文献】 特開2008−215164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 − 28/00
F01L 1/34 − 1/356
F01L 9/00 − 9/04
F01L 13/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変バルブリフト装置と連動するモータを制御するモータ制御方法であって、
バルブリフト測定値とバルブリフト目標値を利用して前記可変バルブリフト装置制御のために前記モータへの制御有無を決定するステップ、
前記モータを制御するためにバッテリ電圧と予め定められた基準電圧範囲を比較するステップ、
前記バッテリ電圧が前記基準電圧範囲に含まれる場合、前記バッテリ電圧に対応する電圧因子を決定するステップ、および、
予め定められた基準信号値に前記電圧因子を適用して前記モータへの駆動信号値を決定するステップ、を含み、
前記バッテリ電圧と予め定められた基準電圧範囲を比較するステップにおいて、前記バッテリ電圧が前記基準電圧範囲の最小値よりも小さい場合、
バルブリフトを最高点位置に移動させる電圧制御信号値によって前記モータを制御するステップをさらに含み、
前記電圧制御信号値によって前記モータを制御するステップ以後に、
前記モータの駆動を中止する最小信号値によって前記モータを制御するステップをさらに含むことを特徴とするモータ制御方法。
【請求項2】
前記電圧因子を決定するステップは、
前記バッテリ電圧と予め定められた電圧閾値との差に該当する電圧差分値を計算するステップ、および、
前記電圧差分値に対応する前記電圧因子を決定するステップ、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御方法。
【請求項3】
前記制御有無を決定するステップは、
前記バルブリフト測定値と前記バルブリフト目標値間の差に該当するバルブリフト差分値によって前記モータへの制御有無を決定することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御方法。
【請求項4】
前記駆動信号値を決定するステップは、
前記バルブリフト差分値に対応する前記基準信号値を利用して前記駆動信号値を決定することを特徴とする請求項3に記載のモータ制御方法。
【請求項5】
前記バッテリ電圧が前記基準電圧範囲の最大値を超過する場合、前記基準信号値を前記駆動信号値として決定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のモータ制御方法。
【請求項6】
前記駆動信号値が予め定められた最大信号値を超過する場合、前記最大信号値によって前記モータを制御するステップ、および、
前記駆動信号値が前記最大信号値を超過しない場合、前記駆動信号値によって前記モータを制御するステップ、
をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のモータ制御方法。
【請求項7】
可変バルブリフトを制御するモータ制御装置であって、
前記可変バルブリフトと連動してバルブリフトを制御するモータ、
前記バルブリフトを測定する位置センサ、
前記モータに電源を供給するバッテリ、および
前記位置センサによって測定されたバルブリフト測定値によって前記モータに対する制御有無を決定し、前記モータを制御するために前記バッテリの電圧を用いて駆動信号値を決定し、前記駆動信号値によって前記モータを制御する制御コントローラ、を含み、
前記制御コントローラは、更に、
前記バッテリの電圧と予め定められた基準電圧範囲を比較し、前記バッテリの電圧が前記基準電圧範囲の最小値よりも小さい場合、
前記バルブリフトを最高点位置に移動させる前記電圧制御信号値によって前記モータを制御し、
前記電圧制御信号値によって前記モータを制御した後に、
前記モータの駆動を中止する最小信号値によって前記モータを制御することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項8】
前記制御コントローラは、
前記バッテリの電圧が予め定められた基準電圧範囲に含まれる場合、前記モータの電圧降下を防ぐために予め定められた基準信号値を増加させて前記駆動信号値を決定することを特徴とする請求項に記載のモータ制御装置。
【請求項9】
前記制御コントローラは、
前記バッテリ電圧に対応する因子を用いて前記基準信号値を増加させることを特徴とする請求項に記載のモータ制御装置。
【請求項10】
前記基準信号値は、
予め定められたバルブリフト目標値と前記バルブリフト測定値間の差分値に対応することを特徴とする請求項またはに記載のモータ制御装置。
【請求項11】
前記駆動信号値は、パルス幅変調方式に従うことを特徴とする請求項に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ制御装置および方法に係り、より詳しくは、連続可変バルブリフト装置を駆動するモータを制御する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続可変バルブリフト(Continuously Variable Valve Lift;以下では「CVVL」という)システムは、偏心したコントロールシャフト(control shaft)の回転を通じてカムの押し量を変更しバルブの開閉度を可変とする。この時、バルブの開閉度を示すバルブリフトはコントロールシャフトの角度によって決定され、コントロールシャフトの角度はモータによって変更される。
【0003】
CVVLシステムは、バルブリフトの現在値と目標値の差によってモータを制御し、予め定義された作動範囲内でコントロールシャフトの角度を変更することによってバルブリフトを制御する。この時、CVVLシステムにおいて、バルブリフトは、空気量、すなわち、エンジンの駆動力を決定するため、バルブリフトの制御性能は、エンジンの制御および反応性能を決定する重要な要素である。
このとき、モータによるCVVL機構の制御はモータの高電消耗を引き起こすため、最適なモータ制御条件が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−282573号公報
【特許文献2】特開2006−161623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車両の条件に応じてCVVLシステムの空気量制御およびエンジン性能を定義するバルブリフトの制御を実行するためのモータ制御装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるモータ制御方法は、可変バルブリフト装置と連動するモータを制御するモータ制御方法であって、バルブリフト測定値とバルブリフト目標値を利用して前記可変バルブリフト装置制御のために前記モータへの制御有無を決定するステップ、前記モータを制御するためにバッテリ電圧と予め定められた基準電圧範囲を比較するステップ、前記バッテリ電圧が前記基準電圧範囲に含まれる場合、前記バッテリ電圧に対応する電圧因子を決定するステップ、および、
予め定められた基準信号値に前記電圧因子を適用して前記モータへの駆動信号値を決定するステップ、を含むことを特徴とする。
【0007】
前記電圧因子を決定するステップは、前記バッテリ電圧と予め定められた電圧閾値との差に該当する電圧差分値を計算するステップ、および、前記電圧差分値に対応する前記電圧因子を決定するステップ、を含むことを特徴とする。
【0008】
前記制御有無を決定するステップは、前記バルブリフト測定値と前記バルブリフト目標値間の差に該当するバルブリフト差分値によって前記モータへの制御有無を決定することを特徴とする。
【0009】
前記駆動信号値を決定するステップは、前記バルブリフト差分値に対応する前記基準信号値を利用して前記駆動信号値を決定することを特徴とする。
【0010】
前記バッテリ電圧が前記基準電圧範囲の最大値を超過する場合、前記基準信号値を前記駆動信号値として決定するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0011】
前記駆動信号値が予め定められた最大信号値を超過する場合、前記最大信号値によって前記モータを制御するステップ、および、前記駆動信号値が前記最大信号値を超過しない場合、前記駆動信号値によって前記モータを制御するステップ、をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
前記バッテリ電圧が前記基準電圧範囲の最小値よりも小さい場合、バルブリフトを最高点位置に移動させる電圧制御信号値によって前記モータを制御するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0013】
前記電圧制御信号値によって前記モータを制御するステップ以後に、前記モータの駆動を中止する最小信号値によって前記モータを制御するステップをさらに含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、可変バルブリフトを制御するモータ制御装置であって、前記可変バルブリフトと連動してバルブリフトを制御するモータ、前記バルブリフトを測定する位置センサ、前記モータに電源を供給するバッテリ、および、前記位置センサによって測定されたバルブリフト測定値によって前記モータに対する制御有無を決定し、前記モータを制御するために前記バッテリの電圧を用いて駆動信号値を決定し、前記駆動信号値によって前記モータを制御する制御コントローラ、を含むことを特徴とする。
【0015】
前記制御コントローラは、前記バッテリの電圧が予め定められた基準電圧範囲に含まれる場合、前記モータの電圧降下を防ぐために予め定められた基準信号値を増加させて前記駆動信号値を決定することを特徴とする。
【0016】
前記制御コントローラは、前記バッテリ電圧に対応する因子を用いて前記基準信号値を増加させることを特徴とする。
【0017】
前記基準信号値は、予め定められたバルブリフト目標値と前記バルブリフト測定値間の差分値に対応することを特徴とする。
【0018】
前記駆動信号値は、パルス幅変調方式に従うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バッテリ電圧によるモータ性能低下を防いでCVVL制御効果を極大にし、モータ制御によるバッテリ負荷を低減してバッテリ電圧降下および性能低下を防止し、バッテリの異常時にモータ負荷を取り除くことによって問題発生時の走行距離を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態によるモータ制御装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態によるモータの制御方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるモータ制御装置および方法について説明する。
本発明の実施形態によるモータ制御装置は、図1に示す通りであり、モータ制御装置100は、位置センサ130、モータ150、およびバッテリ170を含み、モータ150を通じて連続可変バルブリフト(Continuously Variable Valve Lift;以下では「CVVL」という)装置10のバルブリフト(valve lift)を制御する。
制御コントローラ110は、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、以下では「PWM」という)方式によってモータ150を制御する。
位置センサ130はCVVL装置10のバルブリフトを測定する。
モータ150はCVVL装置10と連動してバルブリフトを制御する。
バッテリ170はモータ制御装置100の電源を供給する。
【0022】
次に、図2を参照して本発明のモータ制御装置がモータを制御する方法について説明する。
本発明の実施形態によるモータの制御方法は図2に示す通りであり、制御コントローラ110は、バルブリフトの測定値とバルブリフトの目標値間の差分値に該当するバルブリフト差分値(Diff_VLFT)が、予め定められた閾値(A)を超過するか否かを判断する(S101)。
S101ステップの判断結果に応じ、バルブリフト差分値(Diff_VLFT)が閾値(A)を超過する場合、制御コントローラ110は、バッテリ170の電圧(VB)が予め定められた第1基準電圧(a)以上であるかを判断する(S103)。
【0023】
S103ステップの判断結果に応じ、バッテリ170の電圧(VB)が予め定められた基準電圧(a)以上である場合、制御コントローラ110は、PWM駆動信号値を求めるためのPWM因子(PWM_DR_P_FAC)を決定する(S105)。ここで、制御コントローラ110は、PWM因子(PWM_DR_P_FAC)を「0」に決定する。
S103ステップの判断結果に応じ、バッテリ170の電圧(VB)が予め定められた基準電圧(a)以上でない場合、制御コントローラ110は、バッテリ170の電圧(VB)が予め定められた基準電圧範囲に含まれるかを判断する(S107)。ここで、基準電圧範囲は、第1基準電圧(a)未満であって第2基準電圧(b)以上である。
【0024】
S107ステップの判断結果に応じ、バッテリ170の電圧(VB)が基準電圧範囲に含まれる場合、制御コントローラ110は、バッテリ170の電圧(VB)と予め定められた電圧閾値との差に該当する電圧差分値(Diff_VB)を計算する(S109)。
次に、制御コントローラ110は、電圧差分値(Diff_VB)によってPWM駆動信号値を求めるためのPWM因子(PWM_DR_P_FAC)を決定する(S111)。ここで、制御コントローラ110は、予め格納されたPWM因子テーブルを用いてPWM因子(PWM_DR_P_FAC)を決定する。
このとき、PWM因子テーブルは表1のように示すことができる。
【0025】
【表1】
【0026】
この後、制御コントローラ110は、バルブリフト差分値(Diff_VLFT)に対応するPWM基準信号値(PWM_BAS)にPWM因子(PWM_DR_P_FAC)を適用してPWM駆動信号値(PWM_DR)を決定する(S113)。ここで、制御コントローラ110は、数1によってPWM駆動信号値(PWM_DR)を計算することができる。
【数1】
【0027】
次に、制御コントローラ110は、PWM駆動信号値(PWM_DR)が予め定められたPWM最大信号値(PWM_MAX)を超過するかを判断する(S115)。
S115ステップの判断結果に応じ、PWM駆動信号値(PWM_DR)がPWM最大信号値(PWM_MAX)を超過する場合、制御コントローラ110は、PWM最終信号値(PWM_DR_FNL)をPWM最大信号値(PWM_MAX)として設定する(S117)。ここで、制御コントローラ110は、PWM最終信号値(PWM_DR_FNL)、すなわちPWM最大信号値(PWM_MAX)によってモータ150を制御する。
【0028】
S115ステップの判断結果に応じ、PWM駆動信号値(PWM_DR)がPWM最大信号値(PWM_MAX)を超過しない場合、制御コントローラ110は、PWM最終信号値(PWM_DR_FNL)をPWM駆動信号値(PWM_DR)として設定する(S119)。ここで、制御コントローラ110は、PWM最終信号値(PWM_DR_FNL)、すなわちPWM駆動信号値(PWM_DR)によってモータ150を制御する。
S107ステップの判断結果に応じ、バッテリ170の電圧(VB)が基準電圧範囲に含まれない場合、制御コントローラ110は、高電流消耗部品であるモータ150の駆動をほぼ無くして最も基本的なエンジン駆動のみを実行するために、PWM最終信号値(PWM_DR_FNL)をPWM電圧制御信号値(ID_PWM_VB_LIMP)として設定する(S121)。ここで、モータ150は、PWM電圧制御信号値(ID_PWM_VB_LIMP)によってバルブリフトを最高点位置に移動させる。
【0029】
この後、制御コントローラ110は、モータ150の逆回転や変動を防ぐために、PWM最終信号値(PWM_DR_FNL)をPWM最小信号値(PWM_HOLD_LIMP)として再設定する(S123)。ここで、モータ150は。PWM最小信号値(PWM_HOLD_LIMP)によって駆動を中止する。
【0030】
次に、制御コントローラ110は、バッテリ170の電圧(VB)が第2基準電圧(b)未満であるかを判断する(S125)。
S125ステップの判断結果に応じ、バッテリ170の電圧(VB)が第2基準電圧(b)未満である場合、制御コントローラ110は再びS123ステップを実行する。
S125ステップの判断結果に応じ、バッテリ170の電圧(VB)が第2基準電圧(b)未満でない場合、制御コントローラ110は再びS107ステップを実行する。
S101ステップの判断結果に応じ、バルブリフト差分値(Diff_VLFT)が閾値(A)を超過しない場合、制御コントローラ110はモータ制御方法を終了する。
【0031】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0032】
10 ・・・CVVL装置
100 ・・・モータ制御装置
110 ・・・制御コントローラ
130 ・・・位置センサ
150 ・・・モータ
170 ・・・バッテリ
図1
図2