特許第5730669号(P5730669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730669
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】堆肥散布機における堆肥後送装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 3/06 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
   A01C3/06
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-116783(P2011-116783)
(22)【出願日】2011年5月25日
(65)【公開番号】特開2012-244908(P2012-244908A)
(43)【公開日】2012年12月13日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132909
【氏名又は名称】株式会社タカキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100065053
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 和郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 公憲
(72)【発明者】
【氏名】杉原 敦
【審査官】 柴田 和雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−289703(JP,A)
【文献】 特開2005−102697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 3/00 − 3/08
A01C 15/00 − 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体(1)に装架した荷箱(2)内には、油圧モータ(M)により該荷箱(2)の床面に沿い回動する無端の床コンベア(3)を、搬送面側が前記床板(21)の上面側を回動し、戻り側が前記床板(21)の下面側を回動するように張架し、該、荷箱(2)の左右の側壁(20)・(20)の各内側で、床板(21)の上面より上方に位置する部位には、帯板状のサイドレール(8)を、床板(21)に平行させて配位して、左右の側壁(20)・(20)内面に固定装着し、荷箱(2)の内部には、該荷箱(2)の内部を横切る仕切板状のプッシュ板(5)を、該荷箱(2)内を前後に移動可能に設け、前記床コンベア(3)に連結連繋せしめて、床コンベア(3)の作動により押し出し作動を行うようにし、かつ、該プッシュ板(5)には、左右の両端部の底部に、押し出し方向の背面側に延出するガイド部材(5a)をそれぞれ設けて、それらガイド部材(5a)の前端側と後端側との各外面側に、スライダー(R)をそれぞれ設け、それらスライダー(R)を、前記サイドレール(8)と床板(21)上面との間に嵌合せしめ、プッシュ板(5)の前後移動を、前端側と後端側の各スライダー(R)が、床板(21)の上面とサイドレール(8)との間に嵌合した状態で行われるようにして、プッシュ板(5)の移動時の浮き上がりと前後の傾きを防止するようにしたことを特徴とする堆肥散布機における堆肥後送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走してまたは牽引されて走行する機体に、散布すべき堆肥を収容する荷箱を装架するとともに、その荷箱の後端開放口の後方位置に堆肥を散布するビータを装架し、前記荷箱内には、内部に収容せる堆肥を前記散布ビータに向け後送する堆肥後送装置を設けて構成する堆肥散布機において、荷箱内に装設される堆肥後送装置についての改良に関する。
【背景技術】
【0002】
堆肥散布機の荷箱内に、堆肥を荷箱の後端開放口の後方に設けられる散布ビータに向けて、後方に送るよう装設される堆肥後送装置には、現在、次の2種類のものが存在する。
【0003】
その1つは、図1の(1)の側面図及び(2)の平面図に示しているように、機体1に装架した荷箱2内には、その荷箱2の左右の側壁20の各内側位置で、床板21に沿う高さ位置に、スプロケットホイル30・31を、前後に一対に対向させて軸支し、これらスプロケットホイル30・31に、無端のチェン32を、側面視において、上方回行部が前記床板21の上方に位置し、下方回行部が前記床板21の下方に位置する状態としてエンドレスにかけ回して張架し、これにより左右に一対に対向して張架されるチェン32とチェン32との間に、コンベアバー33を、前後方向に間隔をおいて並列させて渡架して、梯子型の床コンベア3に組み立て、この床コンベア3を荷箱2内の底部に装架し、後部のスプロケットホイル31を、油圧ホースhで導かれる油圧により作動する油圧モータMで駆動することで、該床コンベア3の上方回行部が床板21の上面に沿い後方に回動して、荷箱2内に投入された堆肥を、荷箱2の後端開放口に装架してある散布ビータ4に向け、後送するようにしているコンベアタイプのものである。
【0004】
もう1つのものは、図2の(1)の側面図及び(2)の平面図に示しているように、機体1に装架した荷箱2内には、その荷箱2の内部空間を横切る仕切板状に形成したプッシュ板5を配位して、床板21の上面に、前後方向の移動を可能に載置し、そのプッシュ板5の底部に設けたガイド部材5aを、床板21に設けた前後方向のガイド溝Gにスライド自在に嵌合させて、プッシュ板5が荷箱2内を横切る姿勢を保持して前後方向にスライド移動するようにし、このプッシュ板5の、背面側(機体1の前部側)に、機体1の前部に装架した2連複列型の油圧シリンダ装置Cの一方のシリンダcのピストンロッドpの突出端部を連繋し、他方のシリンダc’のピストンロッドp’の突出端部を機体1の前端部に設けた支持部材10に連繋して、油圧シリンダ装置Cの作動によりプッシュ板5を、図2の(1)図において鎖線に示す荷箱2内の前端部位置から同図で実線で示す荷箱2内の後端部位置に押し出していき、これにより、荷箱2内に投入された堆肥を、荷箱2の後端側の開放口に装設してある散布ビータ4に向け、後送していくプッシュ型のものである。
【0005】
これら2種の堆肥送り装置にはそれぞれ以下の問題点がある。
(コンベア型の堆肥送り装置の問題点)
(1)前側の堆肥Tが前方に崩れる傾向にあるので、散布終了手前時期の送り量が減少する問題がある。
荷箱2内に投入されて、床コンベア3上に堆積した堆肥Tの全体が、床コンベア3の作動で、荷箱2の後方に向け移動し、その移動する堆肥Tの後端部が、荷箱2の後端側の開放口に設けている散布ビータ4に順次供給されて、その散布ビータ4の回転作動で圃場に散布されていくとき、床コンベア3により後方に移動していく堆肥Tの前端側(移動方向において後端側)の上層部分が、図3の(1)図において矢印(イ)に示しているように、前方(移動方向において後方)に崩れるようになることで、床コンベア3上に堆積して後方に移動していく堆肥Tの前端側(移動方向において後端側)の部分の堆積高さが低くなり、床コンベア3の搬送面の単位面積当たりの堆肥Tの堆積量を減少させてくることから、荷箱2内の堆肥Tの散布作業の終了手前の時期における散布ビータ4に対する送り量が、図3の(2)図に示しているように減少してきて、散布ビータ4による堆肥の散布密度を疎にする問題がある。
(2)堆肥に混入した石などが、散布終了手前時期に前方に飛散するようになり、傷害事故を起こす危険がある。
堆肥T中に混入している石などは、散布ビータ4により前方にはじかれても図4の(1)図にあるように堆肥Tに衝突して抑えられてるので通常の散布作業時には問題ないが、堆肥Tの散布作業の終了手前の時期には、床コンベア3上の堆肥Tの堆積高さが前述の(1)で述べた理由で減少してくることで、この時期になると、散布ビータ4によりはじかれる石などが、図4の(2)図において矢印(ロ)に示しているように、床コンベア3上の堆肥Tの上を越して、作業者のいる前方に飛散するようになり傷害事故の危険を生ぜしめる問題がある。
(3)前下がりの傾斜で送り量が減少する問題がある。
傾斜地における前下がりの状態での散布作業の際、床コンベア3上に載架されて後方に搬送されていく堆肥Tが、図5の(1)図にあるように傾斜前方に向け流れる傾向があるので、床コンベア3上の堆肥Tの後端部からの散布ビータ4に対する送給量が減少し、散散密度を薄くする問題がある。プッシュ型の堆肥送り装置では図5の(2)図にあるように、プッシュ板で支えられて、下方に流れない。
【0006】
(プッシュ型の堆肥送り装置の問題点)
(1)堆肥送り装置の作動と同時に散布が始まらない問題。
プッシュ型の堆肥送り装置は、投入された堆肥Tを支承する荷箱2の床面が固定で、その固定の床面上の堆肥の全体を、プッシュ板5による押し出し作動で、床面上を滑らせて堆肥の散布ビータ4へ送り出すことから、プッシュ板5の押し出し作動を始動して、堆肥送り装置の作動を開始したとき、始動した直後の時期においては、図6の(2)図にあるように、荷箱2内に堆積した堆肥Tの前半側の部分を圧縮していくだけで、後半側は動かないので、散布ビータ4には堆肥Tの供給が無く堆肥の散布は行われない。プッシュ板5の後方への押し出しによる堆肥の圧縮が進んで、プッシュ板5による押し出し圧力が床面上の堆肥Tの後半側を押し出し移動させるまでになって、はじめて散布ビータ4への堆肥の送り込みが行われる。
従って、プッシュ板5の作動と同時に機体1を走行させて散布作業を始めると、暫くの間は、散布の無い状態となるので、散布作業の開始を、堆肥送り装置を作動させた後、暫く待って行わなければならない。
この点、コンベア式の送り装置は、荷箱2の床面が床コンベア3の搬送面なので、作動させれば、図6の(1)図にあるように、すぐに散布ビータ4への堆肥の供給が行われて、散布が始まるようになる。
(2)前上がり傾斜で、散布ビータ4への堆肥の送り量が増加する。また、送り作動なしで、堆肥が床面上を後方に滑り落ち、散布ビータ4へ送り込まれるようになる。
機体1が、前上がりに傾斜している場合は、コンベア型の堆肥送り装置にあっては、荷箱2の床面が床コンベア3の搬送面で構成されていることから、その搬送面の抵抗により、堆肥Tの重力による後方への滑り落ちが阻止されるので、散布ビータ4への送り量の増加はなく、また、堆肥送り装置の送り作動を停止していれば、図7の(1)図にあるように、床コンベア3上に堆積した位置にとどまり、散布ビータ4に供給されることはないが、プッシュ型の送り装置では、床面が滑りやすいので、堆肥Tが重力で滑り落ちるようになり、散布ビータ4への送り量を増大させる。また、プッシュ板5の押し込み作動を停止させていても、図7の(2)図で矢印(ハ)に示しているように、堆肥Tが重力で後方に滑り落ちて、散布ビータ4に供給され、望まない散布が行われるようになる。
(3)送り装置作用の油圧装置の油必要量が多いことで、大きなタンクを必要とする。
送り装置作動用の油圧装置は、コンベア型では、床コンベア3のチェン32を駆動する油圧モータMであり、図8の(1)図の説明図にあるように、送り量と戻り量とが同量なので、油の必要量が少なくてよくタンクは小さくてよいが、プッシュ型では、図8の(2)図で説明するように、プッシュ板5を押し出すべく油圧シリンダcのピストンpを押し出していくときのシリンダcに送り込むオイルの送り量に対して、シリンダcからのオイルの戻り量が少ないことから、オイルの必要量が多いので、大きいタンクを要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明において解決しようとする課題は、コンベア型の送り装置に生じている問題点を、プッシュ型の送り装置の併用により解消せしめようとする際、プッシュ型に生じている問題点が生じてこないように、コンベア型の送り装置とプッシュ型の送り装置とを複合させた複合型の送り装置を構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するための手段として、本発明においては、機体1に装架した荷箱2内には、油圧モータMにより該荷箱2の床面に沿い回動する無端の床コンベア3を、搬送面側が前記床板21の上面側を回動し、戻り側が前記床板21の下面側を回動するように張架し、該、荷箱2の左右の側壁20・20の各内側で、床板21の上面より上方に位置する部位には、帯板状のサイドレール8を、床板21に平行させて配位して、左右の側壁20・20内面に固定装着し、荷箱2の内部には、該荷箱2の内部を横切る仕切板状のプッシュ板5を、該荷箱2内を前後に移動可能に設け、前記床コンベア3に連結連繋せしめて、床コンベア3の作動により押し出し作動を行うようにし、かつ、該プッシュ板5には、左右の両端部の底部に、押し出し方向の背面側に延出するガイド部材5aをそれぞれ設けて、それらガイド部材5aの前端側と後端側との各外面側に、スライダーRをそれぞれ設け、それらスライダーRを、前記サイドレール8と床板21上面との間に嵌合せしめ、プッシュ板5の前後移動を、前端側と後端側の各スライダーRが、床板21の上面とサイドレール8との間に嵌合した状態で行われるようにして、プッシュ板5の移動時の浮き上がりと前後の傾きを防止するようにしたことを特徴とする堆肥散布機における堆肥後送装置を提起するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明手段によれば、
イ.散布終了手前時期の送り量が減少しない。
ロ.堆肥に混入した石などが、散布終了手前時期に、前方へ飛散しない。
ハ.送り装置の作動と同時に堆肥の散布が始まる。
ニ.前下がり傾斜で送り量が減少しない。
ホ.前上がり傾斜で送り量が増加、もしくは送り作動なしで堆肥が滑り落ちない。
ヘ.送り作動用の油圧装置の油必要量が少なく、大きなタンクが不要。
という効果が併せて得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】コンベア型の堆肥散布機の構成の説明図で、(1)図は同上堆肥散布機の縦断側面図、(2)図は、同上堆肥散布機の平面図である。
図2】プッシュ型の堆肥散布機の構成の説明図で、(1)図は同上堆肥散布機の縦断側面図、(2)図は、同上堆肥散布機の平面図である。
図3】コンベア型の堆肥送り装置に生じている問題のうちの(1)の問題についての説明図で、(1)図は、同上堆肥散布機の、床コンベア上に堆積した堆肥の前側が、床コンベアの作動による移動中に、前方に崩れ落ちる状態を表す縦断側面図、(2)図は、同上堆肥散布機の、散布終了手前時期に堆肥の堆積高さが減少していることを表す縦断側面図である。
図4】同上問題点のうちの(2)の問題についての説明図で、(1)図は、散布作業中において、堆肥中に混入している石などが散布ビータにより前方に飛ばされたときに、床コンベア上に堆積している堆肥により抑止されている状態を表す説明図、(2)図は、散布終了手前時期に、石などが、堆肥を越して前方に飛散して危険な状態を表す説明図である。
図5】コンベア型堆肥送り装置の問題点のうちの(3)の問題についての説明図で、(1)図は、前下がりの傾斜で、床コンベア上の堆肥の積載上部が傾斜下方に流れる傾向にあることの説明図、(2)図は、プッシュ型の送り装置では、プッシュ板に支えられることで傾斜下方に流れないことの説明図である。
図6】プッシュ型の堆肥送り装置に生じている問題のうちの、(1)の問題についての説明図で(1)図は、コンベア型の堆肥送り装置では、送り作動が、堆肥全体をそっくり移動させることで行われることで、送り作動の開始と同時に散布が始まることの説明図、(2)図は、プッシュ型の堆肥送り装置では、床面上に堆積した堆肥の前半側が圧縮された後に全体が動くようになることで、散布開始までに時間を要することの説明図である。
図7】プッシュ型の送り装置の問題点のうちの(2)の問題についての説明図で、(1)図は、コンベア型の堆肥送り装置では、搬送面の抵抗により、堆肥の後方への滑り落ちがないことの説明図、(2)図は、コンベア型の送り装置では、床面の滑りで、堆肥が後方に滑り落ちることの説明図である。
図8】プッシュ型の堆肥送りに生じている問題のうちの、(3)の問題についての説明図で、(1)図は、コンベア型の堆肥送り装置では、油圧装置が油圧モータなので、油の必要量が少なくてよいことの説明図、(2)図は、プッシュ型の堆肥送り装置では、油圧シリンダ装置を用いていることで、油の必要量が多く、大きい油タンクを要することの説明図である。
図9】本発明を実施せる堆肥散布機における堆肥送り装置の縦断側面図である。
図10】同上堆肥送り装置の平面図である。
図11】同上堆肥送り装置の、伝導機構を組み込んだ状態の側面図である。
図12】同上装置の、プッシュ板が約1/3作動した状態の平面図である。
図13】同上装置の要部の拡大した側面図である。
図14】同上装置の要部の部分の側面図である。
図15】同上装置の同上要部の部分の前面図である。
図16】同上装置の作動行程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に実施の態様を、実施例につき図面に従い詳述する。
【実施例1】
【0012】
図9乃至図13は、本発明の一実施例を示し、図9はその実施例装置の縦断側面図、図10は同上の平面図、図11は同上装置の、作動部の駆動機構を説明する縦断側面図、図12は同上の平面図、図13は同上のプッシュ板と床コンベアとの連繋部分の拡大した側面図であり、これら図においてWは堆肥散布機、1はその堆肥散布機Wの機体、2はその機体1に装架した荷箱、3はその荷箱2の床面に張架した床コンベア、4は前記荷箱2の後端側の開放口に設けた散布ビータ、5は前記荷箱2の内部に前後に移動可能に設けたプッシュ板、Mは、前記床コンベア3を駆動する油圧モータ、hはその油圧モータMにオイルを導く油圧ホース、mは散布ビータ4を駆動する駆動ミッション、sはその駆動ミッションmに動力を伝導する伝導軸、8は、荷箱2の左右の側壁20内面の下部に設けたプッシュ板5をガイドするサイドレールを示す。
【0013】
機体1は、走行輪10を装備して自在に走行移動する車体に構成した通常の機体であるが、この例の堆肥散布機Wが、トラクタ(図示省略)に連結してそのトラクタの運転走行により牽引されて走行する牽引型に構成してあることから、前端側には、トラクタの機体の後部に装設せる連結ヒッチに対して連結するための連結器11が設けてある。
【0014】
荷箱2は、前後に長い左右の側壁20・20と床板21と前後の壁板とで、散布すべき堆肥・厩肥を収容すべく箱状に形成して機体1の上面側に装架し、かつ、後壁は省略して開放口とし、その後面側の開放口を、機体1の後端部に装架せる散布ビータ4に臨ませた通常のものであるが、この例においては、前壁を取り除いて、前面側も開放口として開放させ、荷箱2内に前後に移動可能に設けるプッシュ板5が、出入りし得るようにして、散布作業を開始する前の、堆肥を受け入れる状態時においては、プッシュ板5がこの前面側の開放口に位置して前壁として機能するようにしてある。
【0015】
床コンベア3は、荷箱2の左右の側壁20・20の各内側で床板21に沿う高さ位置に配位して、機体1に軸支した前後のスプロケットホイル30・31にエンドレスにかけ回した左右に一対のチェン32・32と、これら左右に一対のチェン32・32間に、そのチェンの長手方向に間隔をおいて、渡架した帯板状のコンベアバー33とからなる通常の梯子型の床コンベアであり、後部側のスプロケットホイル31の軸に、油圧モータMの出力軸を連繋して、その油圧モータMの作動により、回動するようにしてある通常のものであるが、この例においては、床板21の上面の上方に位置して堆肥を支承する搬送面側3aが、後方に向けて移動し、床板21の下面の戻り側に位置する状態となるまでの略半周を回動したときに、回動作動がストップし、その状態位置からスプロケットホイル31を逆回転させることで、逆方向に略半周の長さを回動して、搬送面側3aが床板21の上面の上方に位置する状態に戻るよう、回動作動を制御せしめてある。
【0016】
機体1の後端部に装設せる散布ビータ4は、機体1に軸支せる縦の回転軸40の周面に、前記床コンベア3により順次送られてくる堆肥を掻き出して放出する放出アーム41を放射状に設けた通常のもので、前記回転軸40の下端側軸支する支持機枠42の下面側に組み付けたビータ駆動ミッションm内の駆動機構により駆動されてそれぞれ回動する。
【0017】
そして、この駆動ミッションmに対する回転動力の伝導は、この例においては、堆肥散布機Wを牽引するトラクタの車体に設けたPTO軸と伝導連結する動力伝導軸sにより行われるようにしてある。
【0018】
プッシュ板5は、荷箱2の内腔を左右に横切る巾で、上端が荷箱2の左右の側壁20より上方に突出する高さの板状に形成され、左右の両端部の底部には、押し出し方向の背面側(機体1基準では前面側)に延出するガイド部材5aがそれぞれ設けてあり、それらガイド部材5aには、前端部と後端部とに、荷箱2の床板21の上面に当接するスライダーRが設けてある。
【0019】
このプッシュ板5には、それの前面側(前記押し出し方向における前面側)の下部に、側面視において略アングル状に屈曲する左右に長い連結板70が固着して設けられ、その連結板70の前面側(機体1の後面側)に屈曲して棚板状に突出する屈曲部71を、床コンベア3のチェン32・32間に並列渡架した複数のコンベアバー33のうちの、所望に選択したコンベアバー33の上面に重合して、連結ボルト72により閉じ合わせることで、コンベアバー33に一体的に連結させてある。そして、プッシュ板5は、この連結板70と連結ボルト72とからなる連結部材7により床コンベア3に対し一緒に動くよう連結・連繋させてあり、これにより、床コンベア3を油圧モータMの作動による駆動で、搬送面側が後方に動くよう回動させて、搬送面上に支承する堆肥の送り作動を行わせたときに、該プッシュ板5が、回動する床コンベア3のチェン32に牽引されて後方に動き、堆肥を後方に押し出す作動を行うようにしてある。
【0020】
サイドレール8は、前述のプッシュ板5が、床コンベア3の作動で牽引されて移動するとき、浮き上がって前後に傾くことを防止するためのもので、この例においては、帯板状の金属板を、側断面が略L字形をなす形状に屈曲成形し、それの垂直方向の板部80が荷箱2の左右の側壁20の内側部に固定装着するための取付部材となり、水平方向の板部81がプッシュ板5に設けたスライダーRをガイドするレールとなるように形成してある。このサイドレール8は、ガイドレールとなる水平方向の板部81の下面に、前述のプッシュ板5の左右両側の底部に設けているスライダーRの上周面が当接するように配位して、前述の取付部材となる垂直方向の板部80を荷箱2の側壁20の内側に固定装着することで装設してあり、これにより、荷箱2内を、プッシュ板5が前後に動くとき、プッシュ板5の左右の両側に設けたスライダーRが、床板21の上面とサイドレール8の下面との間に嵌合して動くようになって、プッシュ板5の前後の傾きを防止するようにしている。
【0021】
この実施例装置は、以下のように使用される。散布作業を始めるときは、図15の(ロ)図に示しているように、プッシュ板5が荷箱2前端側の開放口に位置するよう床コンベア3を回動させておき、これによりプッシュ板5を前壁として構成される荷箱2内に同図の(イ)図にあるよう荷箱2内に堆肥Tを投入し、床コンベア3の搬送面上に堆積される。
【0022】
堆肥の投入が終えたところで、機体1を走行させながら床コンベア3及び散布ビータ4を作動させ、同図の(ハ)図・(ニ)図にあるように、床コンベア3とプッシュ板5とにより堆肥Tを散布ビータ4に送り込み散布させる。
【0023】
床コンベア3の回動作動により後方に移動するプッシュ板5が、荷箱2の後端側に達し、同図の(ホ)図・(ヘ)図の状態となったところで、床コンベア3は作動を停止し、一台の荷箱2内の堆肥の散布作業を終える。
【0024】
この実施例装置は、荷箱2内に投入して堆積させた堆肥を、前側からプッシュ板5で後方に向け押し出しながら床コンベア3で後方に移送することから、堆肥が、床コンベア3上に堆積させた状態を保持して後方に移動していくようになるので、堆肥の前側が前方に崩れて散布終了手前の時期に散布ビータ4への送り量を減少させることがなく、散布終了手前時期における石などの前方飛散を防止し得るようになる。また、床コンベア3を作動させると同時に散布作動が始まるようになる。
【0025】
また、荷箱2内の堆肥が、滑りに抵抗のある床コンベア3の搬送面上に堆積して、前側からプッシュ板5で支承されることから、前下がり傾斜で、散布ビータ4への送り量が減少することがなく、また、前上がりの傾斜で、送り量が増加したり、床コンベア3の作動をとめて、送り作動を停止させたときに、堆肥が後方に滑り落ちて、散布ビータ4に供給されたりすることがない。
【0026】
そして、このように床コンベア3と組み合わせて用いるプッシュ板5は、それの押し出し作動が、床コンベア3を駆動する油圧モータMの作動により行われるようにしていることから、大きな油タンクを要することもない。
【符号の説明】
【0027】
C 油圧シリンダ装置
G ガイド溝
M 油圧モータ
R スライダー
T 堆肥
W 堆肥散布機
c c’ シリンダ
g ガイドレール
h 油圧ホース
m 駆動ミッション
p p’ ピストンロッド
s 伝導軸
1 機体
10 走行輪
11 連結器
12 支持部材
2 荷箱
20 左右の側壁
21 床板
3 床コンベア
3a 搬送面側
30・31 スプロケットホイル
32 無端のチェン
33 コンベアバー
4 散布ビータ
40 回転軸
41 放出アーム
42 支持機枠
5 プッシュ板
5a ガイド部材
6 連結板
7 連結部材
70 連結板
71 屈曲部
72 連結ボルト
8 サイドレール
80 垂直方向の板部
81 水平方向の板部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16