(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中空領域の形状は、前記突出部の前記断面において、前記多角形の凸な角部の厚みが、非角部の厚みよりも大きくなるように形成される請求項2に記載のシートベルト用リトラクタ。
前記ガス受け周縁部の突出高は、前記ガス受け周縁部に囲まれた領域における前記シール部材の厚みを変更することによって調整される請求項6に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一または相応する要素を示すものとする。
【0024】
<実施形態>
[1.全体構成]
図1は、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1を示す斜視図である。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ(単に「リトラクタ」とも称する)1は、車両等の座席に備えられるシートベルト装置に適用されるものである。当該リトラクタ1は、通常状態では、シートベルトとしてのウエビング11を引出および巻取自在に収容している。そして、リトラクタ1は、車両の衝突時や急減速時等の緊急時(車両緊急時)には、乗員を効果的に拘束するため、弛みを除去するようにウエビング11を巻取り、その後、乗員に加わる衝撃を緩和するようにウエビング11を徐々に繰り出すように構成されている。
【0026】
リトラクタ1は、ハウジングユニット(ハウジング)12と、巻取ドラム13と、緊急ロックユニット14と、巻取バネユニット15と、プリテンショナユニット16とを備えている。ここでは、巻取ドラム13は、ハウジング12内に収容され、ハウジング12の外側には、緊急ロックユニット14および巻取バネユニット15と、プリテンショナユニット16とが設けられている。ここで、巻取ドラム13を中心にしてリトラクタ1における各構成要素の位置関係を見ると、巻取ドラム13の一端側(
図1では左端側)に緊急ロックユニット14および巻取バネユニット15が設けられ、巻取ドラム13の他端側(
図1では右端側)にプリテンショナユニット16が設けられた構成となっている。
【0027】
[2.各構成要素の機能および各構成要素の概略構成]
次に、リトラクタ1の各構成要素について説明する。
図2は、シートベルト用リトラクタ1を、所定の機能を実現する構成要素単位で分解した分解斜視図であり、
図3は、巻取ドラム13と、プリテンショナユニット16とをさらに細かく分解した分解斜視図である。
【0028】
図2に示されるように、ハウジング12は、相対向して設けられた一対の側板部121,122と、当該側板部121,122の縁部を連結する連結板部123,124とを備えている。また、連結板部123の上部には、ウエビング11を外部に引き出すための開口125を有した部材126が設けられている。
【0029】
ハウジング12は、一対の側板部121,122間に巻取ドラム13を配置させた状態で、一方側の側板部122の外面に緊急ロックユニット14を、他方側の側板部121の外面にプリテンショナユニット16を取付可能に構成されている。
【0030】
巻取ドラム13は、ウエビング11が巻装された状態でハウジング12内に回転自在に配置される部材である。具体的には、巻取ドラム13は、アルミ材等により形成され、略円柱状のドラム本体部131と、そのドラム本体部131の軸心方向両端部に径方向に張出形成されたフランジ部132,133とを有している。そして、ウエビング11は、両フランジ部132,133間のドラム本体部131に巻装される。
【0031】
また、
図3に示されるように、巻取ドラム13には、中心軸に沿って不貫通の軸孔部134が形成されており、この軸孔部134には、トーションバー135が挿入されている。トーションバー135の一端部135Aは、軸孔部134内部において、巻取ドラム13と相対回転不能に結合される。また、トーションバー135の他端部135Bは、緊急ロックユニット14に接続されるラチェットギア136と相対回転不能に結合される。
【0032】
緊急ロックユニット14(
図1,2参照)は、ハウジング12の側板部122に固設され、ラチェットギア136を介してウエビング11の急激な引き出しおよび車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング11の引き出しを停止する動作を行う。
【0033】
巻取バネユニット15は、緊急ロックユニット14の外側に設けられ、巻取バネユニット15の内部に設けられた渦巻バネの付勢力により、巻取ドラム13をウエビング11の巻取方向に常時回転付勢する機能を有している。
【0034】
プリテンショナユニット16は、ハウジング12の側板部121にタッピングネジPN1を用いて、カバープレート168(
図3)とベースプレート166(
図3)とを直接共締め、若しくはカバープレート168とベースプレート166との間にベースブロック167(
図3)を介して共締めして固設される。プリテンショナユニット16は、車両の衝突時等の緊急時に所定のセンサ出力に応じてガス発生部材(ガス発生器)161を作動させ、このガス(流体)の圧力を利用して巻取ドラム13のフランジ部133を介して、巻取ドラム13をウエビング巻取方向に回転させる機構である。
【0035】
車両の衝突時等の緊急時に当該プリテンショナユニット16を動作させてウエビング11を巻き取ることによれば、ウエビング11の弛みを除去して乗員を効果的にシート側に拘束できる。
【0036】
なお、本プリテンショナユニット16は、車両が実際に衝突した場合のような緊急時において不可逆的に、つまり、一度だけ動作し、ウエビング11を巻き取る。すなわち、実際に車両が衝突してしまった後には、ウエビング11を再度引締める機構は不要となるので、不可逆的なプリテンショナユニット16によりウエビングを比較的強固に引締めるのである。
【0037】
[3.プリテンショナユニット16の詳細構成]
次に、プリテンショナユニット16の構成について詳述する。
図4は、待機状態におけるプリテンショナユニット16の縦断面図である。
図5は、プリテンショナユニット16を構成するパイプシリンダ162の斜視図である。
図6は、カバープレート168の斜視図である。
【0038】
図3に示されるように、プリテンショナユニット16は、ガス発生部材161と、パイプシリンダ162と、ガス発生部材161のガス圧を受けてパイプシリンダ162内を移動するシールプレート163およびピストン164と、当該ピストン164に形成されたラック642に噛合(係合)して回転するピニオンギヤ165と、パイプシリンダ162が取り付けられるベースプレート166と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成され、ピニオンギヤ165の側面を覆うようにベースプレート166に配設されるベースブロック(ブロック部材)167と、ベースプレート166に配置されたパイプシリンダ162、ベースブロック167等を覆うカバープレート168と、ベースプレート166の外側面に配設されるクラッチ機構169とから構成されている。
【0039】
ピニオンギヤ165は、スチール材等で形成された略円筒状で、その外周部にはピストン164に形成されたラック642に噛合するピニオンギヤ部650が形成されている。また、当該ピニオンギヤ部650の軸心方向のカバープレート168側には、外側方向に延出された円筒状の支持部651が形成されている。当該支持部651は、後述のようにカバープレート168の支持孔(開口部)683に嵌め込まれる。
【0040】
一方、ピニオンギヤ部650の軸心方向のベースプレート166側の端部には径方向に張り出すフランジ部652が形成されている。さらに、このフランジ部652から外側方向には、ベアリング170を嵌入させる軸受け部653を有するボス部654が形成されている。また、このボス部654の先端部の外周面には、3個ずつのスプラインが中心角約120度間隔で形成されている。
【0041】
クラッチ機構169は、スチール材等で形成されたパウルベース691と、スチール材等で形成された3個のクラッチパウル692と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、パウルベース691とともに各クラッチパウル692を挟持する略円環状のパウルガイド693とから構成されている。
【0042】
また、パウルベース691の内周面には、ピニオンギヤ165のボス部654に形成されたスプラインが圧入されるスプライン溝が中心角約120度間隔で3個ずつ形成されている。また、パウルガイド693の内周径は、パウルベース691のスプライン溝よりも大きく形成されるとともに、このパウルガイド693のベースプレート166側の側面部には、等角度で位置決突起(不図示)が3つ突設されている。
【0043】
リトラクタ1を構成する際には、クラッチ機構169のパウルガイド693のベースプレート166側の側面部に突設される各位置決突起を、ベースプレート166の各位置決孔661に嵌入して、該クラッチ機構169をベースプレート166のハウジング12の側板部121側の面に配置する。続いて、ピニオンギヤ165のボス部654を、ベースプレート166の略中央部に形成された貫通孔(開口部)662に嵌入後、当該ボス部654に形成される各スプラインをクラッチ機構169を構成するパウルベース691の各スプライン溝に圧入固定する。これにより、クラッチ機構169とピニオンギヤ165とが、ベースプレート166に配設固定されるとともに、ピニオンギヤ165のピニオンギヤ部650が、
図4に示す位置に常に位置決め固定される。
【0044】
なお、ベースプレート166の略中央部に形成される貫通孔662の内径は、ピニオンギヤ165のボス部654の基端部655の外径を支持できる径に形成されて、ピニオンギヤ165の一端側を回転可能に支持することが可能に構成されている。
【0045】
パイプシリンダ(シリンダ)162(
図3,5参照)は、筒状のスチールパイプ材等を略L字状に屈曲させて形成されている。
【0046】
具体的には、パイプシリンダ162の一端側(
図5中、下側折曲部分)には、略円筒状の収納部621が形成されて、ガス発生部材161を収納するように構成されている。ガス発生部材161は、火薬を含んでおり、図示省略の制御部からの着火信号により当該火薬を着火させてガス発生剤の燃焼でガスを発生させるように構成されている。当該ガス発生部材161は、パイプシリンダ162の内壁と当該パイプシリンダ162内に配置されるピストン164の底部との間に形成される空間(内部空間)NS(
図4参照)にガスを満たして、当該ガスの圧力でピストン164を駆動する駆動機構として機能する。
【0047】
一方、パイプシリンダ162の他端側(
図5中、上側折曲部分)には、ピストン収納部622が形成されている。ピストン収納部622は、断面略円形の筒形状を有し、筒の中段から上端にかけて一部、切欠部623が形成されている。ピストン164が移動すると、当該切欠部623からは、ピストン164のラック642が出現することになる。パイプシリンダ162をベースプレート166上に配設した場合、当該切欠部623には、ピニオンギヤ165のピニオンギヤ部650がラック642と噛合可能なように位置することになる。
【0048】
このように、パイプシリンダ162のピストン収納部622を断面略円形に形成することによれば、ピストン収納部622の断面を矩形に形成する場合に比べて、パイプシリンダ162の製造コストを大幅に低減することができる。
【0049】
また、ピストン収納部622の上端部には、プリテンショナユニット16をハウジング12に取り付けるとともに、ピストン164の抜け止め、並びにパイプシリンダ162の抜け止めおよび回転止めとして機能するストッパーピンPN2を挿通可能な相対向する一対の貫通孔624が形成されている。ストッパーピンPN2は、カバープレート168の貫通孔HL1、ベースプレート166の貫通孔HL2およびパイプシリンダ162の一対の貫通孔624に挿入され、カバープレート168、パイプシリンダ162、およびベースプレート166をハウジング12にプッシュナットNA1を用いて共締め固定する。
【0050】
シールプレート(「シール部材」とも称する)163は、ニトリルゴム、シリコンゴム等のエラストマー等でピストン収納部622の上端側から挿入可能な略円形の板状に形成されている。シールプレート163の中央部には、突起部(「突出部」または「凸部」とも称する)631が設けられている。
【0051】
ピストン164は、スチール材等で形成され、全体として長尺状の形状を有している。そして、ピストン164の側面には、ピニオンギヤ165のピニオンギヤ部650に噛合するラック642が形成されている。また、ラック642の先端部の背面には、ストッパーピンPN2に当接可能な段差部643が形成されている。また、ピストン164の下端部には、シールプレート163の突起部631を嵌め込み可能な所定深さの嵌入溝(「取付凹部」または単に「凹部」とも称する)641(
図4参照)が形成されている。
【0052】
また、ラック642が形成された側面と反対側の面は、パイプシリンダ162の内壁と接触可能な接触面644として構成されている。当該接触面644は、パイプシリンダ162に対してピストン164がスムーズに摺動可能なように、パイプシリンダ162の内壁面に合わせた形状となっている。すなわち、ピストン164において接触面側の断面は、円弧状に形成されている。
【0053】
なお、ラック642の背面側において、パイプシリンダ162の内壁と接触可能な部分は、「接触部」とも称される。本実施形態では、接触部として、接触面644を例示したが、当該接触部は、ピストン164のスムーズな移動を妨げない形状であれば、他の形状であってもよい。例えば、半球状の突部をラック642の背面側に設けて、接触部として構成してもよい。
【0054】
このような形状を有するピストン164は、シールプレート163の突起部631をピストン164の嵌入溝641に嵌入した状態で、シールプレート163を奥側にして、ピストン収納部622の上端から奥に圧入される。
【0055】
圧入されたピストン164は、
図4に示されるように、ピストン収納部622の奥側において、ラック642の先端がピニオンギヤ部650に非噛合状態となるように配置される。また当該非噛合状態では、ピストン164は、ベースブロック167に設けられ、プリテンショナユニット16の動作時にはピストン164によってせん断される位置決めリブ671によって、位置決めおよび回転規制される(
図4参照)。
【0056】
カバープレート168は、
図6に示されるように、パイプシリンダ162の側面を当該側面の形状に沿って覆うシリンダ被覆部681と、ピニオンギヤ165およびベースブロック167を覆う平面形状の平板被覆部682とを有している。
【0057】
シリンダ被覆部681は、筒状のパイプシリンダ162の側面を当接して被覆可能なように、当該側面に沿うことが可能な丸みを帯びた形状となっている。また、シリンダ被覆部681には、当該シリンダ被覆部681の一部を窪ませた絞り部684が形成されている。
【0058】
平板被覆部682は、シリンダ被覆部681と連接して形成され、ピニオンギヤ165の支持部651を嵌入させる支持孔683を有している。また、当該支持孔683からシリンダ被覆部681の絞り部684にかけては、平板被覆部682と同一平面の平板によって構成されている。
【0059】
このような構造を有するカバープレート168は、ピニオンギヤ165の支持部651を支持孔683に嵌入させつつ、パイプシリンダ162をシリンダ被覆部681で覆うように配置され、タッピングネジPN1によってベースプレート166と一緒にハウジング12に固設される。
【0060】
カバープレート168がハウジング12に固設された状態では、ピニオンギヤ165の両端部に形成されたボス部654の基端部655と、支持部651とが、それぞれベースプレート166の貫通孔662とカバープレート168の支持孔683とに嵌入される。これにより、ピニオンギヤ165は、ベースプレート166とカバープレート168とによって、回転可能に支持されることになる。なお、ここでは、カバープレート168の支持孔683を貫通孔とした場合を例示したが、不貫通の凹状部であってもよい。この場合、ピニオンギヤ165の支持部651は、当該凹状部に嵌入されることになる。支持孔683および凹状部は、「軸支部」とも称される。このように、軸支部を凹状部とすれば、カバープレート168の強度を上げることができる。
【0061】
また、カバープレート168がハウジング12に固設された状態では、パイプシリンダ162は、ベースプレート166とカバープレート168とによって挟持されるとともに、ベースブロック167とカバープレート168とによって挟持される。
【0062】
また、カバープレート168がハウジング12に固設された状態では、シリンダ被覆部681の絞り部684が、パイプシリンダ162の切欠部623に嵌入されることになる。
【0063】
なお、プリテンショナユニット16では、カバープレート168をベースプレート166に合わせた状態で、ベースプレート166の端部663をかしめることによって、カバープレート168のベースプレート166への固設力を強化させている。これによれば、固設に用いるピン・ネジ等の部品点数を削減することが可能になる。
【0064】
また、カバープレート168がハウジング12に固設された状態では、パイプシリンダ162のピストン収納部622の上端側開口が、ベースプレート166の上端部から略直角に延出されたカバー部664によって覆われる。
【0065】
[4.プリテンショナユニット16の動作]
次に、車両衝突時のプリテンショナユニット16によるウエビング11の巻き取り動作、すなわち、プリテンショナユニット16の動作を説明する。
図7は、プリテンショナユニット16の縦断面図である。
図8は、プリテンショナユニット16をハウジングユニット12への取り付け面側から見た斜視図である。
図9は、プリテンショナユニット16の縦断面図である。
【0066】
図4に示されるような待機状態において、ガス発生部材161からガスが発生すると、発生したガスの圧力によって、シールプレート163が押圧される。シールプレート163が押圧されると、
図7に示されるように、ピストン164がピストン収納部622の上端側(
図7の矢印YA1の方向)へ移動するとともに、ラック642と噛合したピニオンギヤ165が矢印YA2の方向に回転する。
【0067】
ピニオンギヤ165が矢印YA2の方向に回動すると、パウルガイド693に対してパウルベース691が相対回転する。この回転運動に伴い、クラッチ機構169に収納されているクラッチパウル692(
図8参照)が外径方向に突出する。突出したクラッチパウル692は、巻取ドラム13のフランジ部133において、軸心に向かって刻設されたクラッチギヤ137(
図8参照)に係合する。
【0068】
クラッチパウル692が突出した後、パウルガイド693に駆動力が加えられる。この駆動力に抗しきれなくなると、ベースプレート166の位置決孔661に嵌入されたパウルガイド693の位置決突起が破断する。以後、クラッチ機構169は一体となって、クラッチギヤ137に係合したクラッチパウル692を介して巻取ドラム13をウエビング11の巻き取り方向に回転させることになり、ウエビング11の巻き取りが行われる。
【0069】
そして、ガス発生部材161で発生したガスの圧力によって、ピストン164がピストン収納部622の最上端へ移動した場合には、ピストン164の段差部643が、各貫通孔624に挿通されたストッパーピンPN2に当接して、ピストン164が停止する(
図9参照)。
【0070】
また、プリテンショナユニット16の動作後、ウエビング11が再度引き出される場合には、ピニオンギヤ165の逆回転によってピストン164が下方(
図9の矢印YA3の方向)に下がることになる。この際、パイプシリンダ162に設けられたガス抜き孔625からパイプシリンダ162内のガスが抜け、スムーズにピストン164が下がる。
【0071】
[5.シールプレート163の構成]
次に、ピストン164に装着されるシールプレート163の構成について説明する。
図10は、シールプレート163の斜視図である。
図11,12は、シールプレート163の縦断面図であり、
図13は、
図11のXIII-XIIIにおける突起部631の断面図である。
【0072】
図10に示されるように、シールプレート163は、略円板形状の本体部630と、当該本体部630の中央部に設けられた突起部(「取付凸部」とも称する)631とを有している。また、
図11に示されるように、突起部631は、内部において中空領域633を有している。当該中空領域633は、
図11のようにシールプレート163の厚さ方向に貫通していてもよく、
図12のように不貫通であってもよい。
【0073】
また、
図11に示されるように、シールプレート163は、突起部631を有する面とは反対側の面、換言すれば、ガス圧を受ける圧受け面において、周縁部全周にわたって、所定高さ(例えば、約1.5mmの高さ)分突出したガス受け周縁部632を有している。
【0074】
このような構成を有するシールプレート163は、ピストン164とパイプシリンダ162の内壁との間をシールして内部空間NSを密閉状態に保つ機能を有している。
【0075】
ピストン164とシールプレート163とを組み付ける際には、
図4に示されるように、シールプレート163の突起部631が、ピストン164において内部空間NS側の面に形成された嵌入溝641に嵌入される。これにより、シールプレート163の突起部631を、ピストン164の嵌入溝641に押し込むだけで両者を一体に組み付けることができるので、作業性が向上する。また、突起部631の内部は中空であるため、突起部631はたわみ易く、嵌入溝641に対して突起部631の寸法がラップする場合においても、ピストン164の嵌入溝641に嵌入する際の組付性が向上する。
【0076】
また、
図13に示されるように、突起部631は、突出方向に垂直な断面(横断面)の形状が六角形となるように形成されている。これに対応して、突起部631を嵌入させるピストン164の嵌入溝641も六角形状となっている。このように、突起部631および当該突起部631を嵌入させる嵌入溝641において、嵌入方向に垂直な断面の形状を互いに六角形とすることによれば、パイプシリンダ162に対するピストン164の回転を防止することができる。
【0077】
より詳細には、シールプレート163は、パイプシリンダ162の断面と略同一形状の弾性部材であるため、シールプレート163とパイプシリンダ162との間に働く摩擦力は大きく、シールプレート163は、パイプシリンダ162に対して回転しにくい。このため、シールプレート163とピストン164との接合部を互いに六角形状にすることにより、シールプレート163に対するピストン164の回転を防止することによれば、パイプシリンダ162に対するピストン164の回転を防止することができる。
【0078】
このようなパイプシリンダ162に対するピストン164の回転防止は、シールプレート163をピストン164に組み付けた上で、当該ピストン164をパイプシリンダ162内に挿入する際に、特に有効となる。また、プリテンショナユニット16動作前の待機状態において、振動等によるピストン164の回転を防止することもできる。
【0079】
なお、ここでは、突起部631および嵌入溝641の断面を互いに六角形状とした場合を例示したが、当該断面は、六角形に限定されず、例えば、三角形、四角形、五角形等の多角形であればよい。
【0080】
また、
図13に示されるように、断面の外形が多角形である突起部631において、当該突起部631の内部を円筒の中空領域633とすれば、多角形の角部KBにおける剛性が他の部分(「非角部」とも称する)TBにおける剛性よりも高くなる。より詳細には、突起部631の横断面における外形を多角形とし、当該横断面における中空領域633の形状を円形とすれば、突起部631の横断面における厚みは、相対的に各角部KBにおいて最も厚くなるので、各角部KBにおける剛性は非角部TBにおける剛性よりも高くなる。
【0081】
突起部631の断面において凸な角部KBを肉厚にし、当該角部KBの剛性を高めた状態で、当該突起部631を嵌入溝641に取り付けると、突起部631が嵌入溝641に押し潰されることによって発生する反力は、角部KBにおいて最も大きくなる。すなわち、角部KBにおいて発生する反力HP1は、非角部TBにおいて発生する反力HP2よりも大きくなる。
【0082】
このように、突起部631の断面において、多角形の凸な角部KBの厚みが、非角部TBの厚みよりも大きくなるように、中空領域の形状を形成することによれば、角部KBの剛性を高めることができるので、パイプシリンダ162に対するピストン164の回転をより効果的に防止することが可能になる。
【0083】
また、突起部631の内部に設けられた中空領域は、パイプシリンダ162内の内部空間NSとつながっているため、ガス発生部材161によって発生したガスの圧力は、突起部631の内壁にも加えられることになる。ガスの圧力は、
図11の矢印NPで示されるように、突起部631の内壁面に対して垂直に加わることになるので、突起部631の嵌入溝641に対する密着度が上がることになる。すなわち、プリテンショナユニット16動作時には、ガス圧の影響を受けて、ピストン164に対するシールプレート163の組み付け強度が増すので、プリテンショナユニット16動作時にピストン164がガス圧により動き出してからピニオンギヤ165と噛み合うまでにおいて、パイプシリンダ162に対するピストン164の回転を防止することが可能になる。
【0084】
また、シールプレート163では、略円板形状の本体部630の板厚を、ガス発生部材161によって発生するガスの圧力に応じて変更することによって、ガス受け周縁部632の突出高を調整してもよい。
図14は、ガス圧の影響を受けて変化するガス受け周縁部632を示す図である。
図15,16は、それぞれシールプレート163の一態様を示す図である。
【0085】
具体的には、
図14に示されるように、本体部630に設けられたガス受け周縁部632は、ガスの圧力を受けて変形(変化)する。ガス受け周縁部632の変形量は、ガスの圧力の大きさおよびガス受け周縁部632の形状に応じて異なる。
【0086】
このため、発生するガスの圧力が小さい低圧のプリテンショナユニット16では、
図15に示されるように、ガス受け周縁部632に囲まれた領域における本体部630の板厚を薄くしてガス受け周縁部632の突出度合いを大きくする。このようにガス受け周縁部632の突出度合いを大きくすると、プリテンショナユニット16動作時のガスの圧力が低くても、ガス受け周縁部632を十分変形させることができるので、ガスの漏れを防止することができ、ガス漏れによる圧力低下を防ぐことが可能になる。
【0087】
また、発生するガスの圧力が大きい高圧のプリテンショナユニット16では、
図16に示されるように、ガス受け周縁部632に囲まれた領域における本体部630の板厚を厚くしてガス受け周縁部632の突出度合いを小さくする。これによれば、ガス受け周縁部632の過変形を抑えることができるので、ピストン164とパイプシリンダ162との間へのシールプレート163の巻き込みを防止することができる。なお、ガス受け周縁部632の突出度合いが小さくても、プリテンショナユニット16動作時のガスの圧力が高いので、ガスの漏れを防ぐためのガス受け周縁部632の変形量は確保することができる。
【0088】
なお、本体部630の板厚を変更することによって、ガス受け周縁部632の突出度合いを調整することによれば、シールプレート163の全高を変化させることなくガス受け周縁部632の突出度合いを変更することができるので、他の構成要素の変更を最小限に抑えることができる。
【0089】
以上のように、シートベルト用リトラクタ1に設けられるプリテンショナユニット16は、巻取ドラム13と連動回転可能なピニオンギヤ165と、ピニオンギヤ165に噛合するラック642を有し、ピニオンギヤ165を介して巻取ドラム13を巻き取り方向に回転させるピストン164と、ピストン164を移動可能に収容する断面円形で筒状のパイプシリンダ162と、発生させたガスをピストン164とパイプシリンダ162の内壁とによって形成される内部空間NSに満たして、ガスの圧力でピストン164を駆動するガス発生部材161と、ピストン164に取り付けられて、ピストン164とパイプシリンダ162の内壁との間をシールする板状のシールプレート163とを備えている。
【0090】
上記シールプレート163は、ピストン164に形成された嵌入溝641に嵌入させる突出部631を有している。そして、嵌入溝641および突出部631において、嵌入方向に垂直な断面の形状は互いに多角形に形成される。
【0091】
このような構成を有するシートベルト用リトラクタ1によれば、シリンダに対するピストンの回転を防止することが可能になる。
【0092】
<変形例>
以上、実施形態について説明したが、当該実施形態は、以下の変形例を含む。
【0093】
例えば、突起部631の断面の外形は、上記実施形態において例示した態様に限定されない。
図17は、変形例に係る突起部631の断面図である。
【0094】
具体的には、
図17に示されるように、突起部631の断面の外形は、凹な角部を有する星形であってもよい。なお、この場合、対応する嵌入溝641の断面も星形となる。
【0095】
また、上記実施形態では、突起部631の内部に中空領域633を設けていたが、当該中空領域の断面の形状は、円筒に限定されない。
図18〜20は、変形例に係る突起部631の断面図である。
【0096】
具体的には、突起部631の横断面における厚みが、突起部631の断面外形の角部KBにおいて非角部よりも相対的に厚く(大きく)なるように形成されるのであれば、中空領域の断面の形状は、
図18〜20に示されるような多角形であってもよい。