【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、
i)少なくとも1種の高分子樹脂及び少なくとも1種の導電性繊維強化材を含むプリプレグと、
ii)前記高分子樹脂に分散した導電性粒子と、
iii)別の樹脂成分を含む金属被覆炭素繊維の最上層であって、前記金属が、ニッケル、銅、金、白金、パラジウム、インジウム及び銀から選択される1種以上の金属を含む最上層とを含む複合材料が提供される。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、
i)少なくとも1種の高分子樹脂及び少なくとも1種の導電性繊維強化材を含むプリプレグを準備するステップと、
ii)前記高分子樹脂中に導電性粒子を分散させるステップと、
iii)別の樹脂成分を含む金属被覆炭素繊維の最上層であって、前記金属が、ニッケル、銅、金、白金、パラジウム、インジウム及び銀から選択される1種以上の金属を含む最上層を加えるステップと
を含む複合材料の製造方法が提供される。
【0015】
最上層は、プリプレグの製造中又は製造後に加えることができ、プリプレグに含まれる樹脂によって与えられる付着力を用いて所定位置に一体化することができる。
【0016】
プリプレグの高分子樹脂中に、導電性粒子を使用すると共に、これと組み合わせて別の樹脂成分を含む金属被覆炭素繊維の層(但し、この金属は、ニッケル、銅、金、白金、パラジウム、インジウム及び銀から選択される1種以上の金属を含む)をプリプレグの最上プライとして使用することにより、バルク抵抗率、表面抵抗率が低下し、複合材料中のz方向の導電性が向上することが分かった。さらに、樹脂配合物中に導電性粒子を分散しその後プリプレグ化しても、対応する元のプリプレグに対して実質上同じような取扱い特性を有するプリプレグが得られることが分かった。
【0017】
更なる樹脂成分を含む金属被覆炭素繊維の層(但し、この金属は、ニッケル、銅、金、白金、パラジウム、インジウム及び銀から選択される1種以上の金属を含む)を、金属被覆粒子を含むプリプレグ複合材料の最上層として使用することにより、プリプレグ複合材料の導電性が増大する。これにより、この複合材料は、落雷などの強い放電によって受ける恐れがある損傷に対してさらに強いものになる。
【0018】
複合材料と言う場合、繊維補強材を含む材料ではあるが、その高分子樹脂は繊維に接しているが繊維には含浸していないような材料も含まれる。複合材料という用語には、樹脂が繊維中に部分的に埋め込まれているか、又は部分的に含浸しているような別の形態のものも含まれている。これは当技術分野ではプリプレグとして公知である。プリプレグは、完全に含浸した繊維強化材層を持つこともある。複合材料には、複数の繊維−樹脂−繊維層を有する多層材料も含まれ得る。
【0019】
「インタリーフ構造」とは、繊維−樹脂−繊維構造を有する多層材料を指す。「インタリーフ」という用語は、繊維層の間に存在し、且つ介挿された高分子樹脂を指す。「インタリーフ厚み」とは、下側繊維プライの最上面から上側繊維プライの最下面へ測定したインタリーフ層の平均距離である。したがって、インタリーフ厚みは介挿された高分子樹脂層の厚みと同等であり、インタリーフ厚みと高分子樹脂厚みは交換可能である。
【0020】
本明細書で使用する、中間層、インタリーフ樹脂層、相互作用樹脂層及び繊維を含まない層という用語は、すべて交換可能であり、高分子樹脂層を指す。
【0021】
本明細書で使用する高分子樹脂という用語は高分子系を指す。
【0022】
「高分子樹脂」及び「高分子系」という用語は、本出願において交換可能に使用され、異なる鎖長を有する、樹脂の鎖長の混合物を指す。したがって、「高分子の」という用語は、存在する樹脂が、単量体、二量体、三量体、又は3超の鎖長を有する樹脂のいずれかを含む樹脂混合物の形をしている実施形態を含んでいる。硬化の結果得られる高分子樹脂は、樹脂が架橋したマトリックスを形成する。
【0023】
体積抵抗率とは、半導体材料の「バルク」又は「体積」抵抗率の測定値を指す。「初期バルク抵抗率」とは、導電性粒子添加前の高分子樹脂のバルク抵抗率に関するものであることを理解されたい。オーム−mの値が、所与の材料の固有抵抗である。三次元材料の抵抗率の測定にはオーム−m(Ωm)を使用する。材料のバルク電気抵抗率ρは、通常下式により定義される:
【数1】
但し、
ρは静的抵抗率(オームメーターで測定)であり、
Rは、材料からの均一な試験片の電気抵抗(オームで測定)であり、
lは試験片の長さ(メートルで測定)であり、
Aは、試験片の横断面積である(平方メートルで測定)。
【0024】
本発明では、体積抵抗はz方向にのみ(複合材料の厚みを通して)測定する。計算においては厚みが常に考慮されるので、すべての場合において、この値は「体積」抵抗率と呼ばれる。
【0025】
本発明の目的は、プリプレグを形成する高分子樹脂自体(即ち炭素繊維が存在しない)に導電性を付与するには全く不十分な水準の低体積分率の導電性粒子をプリプレグのインタリーフ領域に組み込むことに加えて、別の樹脂成分を含む金属被覆炭素繊維の最上層(但し、この金属は、ニッケル、銅、金、白金、パラジウム、インジウム及び銀から選択される1種以上の金属を含む)をプリプレグ上に組み込むことにより達成される。
【0026】
さらに、炭素粒子又は銀被覆ガラス球体などの導電性粒子を複合材料に添加すると同時に、別の樹脂成分を含む金属被覆炭素繊維の最上層(但し、この金属は、ニッケル、銅、金、白金、パラジウム、インジウム及び銀から選択される1種以上の金属を含む)を加えることにより、バルク抵抗率が低下し、これにより当然予想された以上の電気電導度水準が得られることが分かった。
【0027】
典型的には、金属被膜の総量は、繊維の約10重量%から約65重量%までの範囲である。
【0028】
ニッケル、銅、金、白金、パラジウム、インジウム及び銀の任意の金属を、単独で又は組み合わせて炭素繊維の被覆に使用することができるが、典型的には、炭素繊維の被覆にはニッケルと、銅、金、白金、パラジウム、インジウム及び銀から選択される1種以上の金属とを組み合わせて使用する。より典型的には、銅−ニッケル被膜を使用して炭素繊維を被覆する。
【0029】
金属被覆炭素繊維層の効率は非常に優れており、複合体組立品中で用いられる導電性プライの総数を減らすことができ、これにより、導電性プライを、避雷が最も重要な外側部分に限定することが可能になる。さらに、本発明の複合材料の高い導電性により、落雷によって引き起こされるどんな損傷も外側のプライに実質上限定される。
【0030】
本発明の複合材料は製造に便利である。何故ならば、既存のパラスティック材料(parasitic material)は取扱いが難しいからである。本発明では、炭素繊維層は、プリプレグに容易に組み込むことができ、必要な場合は一体製品として容易に供給することができる。
【0031】
さらに、表面仕上げは優れており、本発明の複合材料はプリプレグのように加工することができる。
【0032】
本発明のさらなる利点はプリプレグの向上した熱伝導率である。これにより、加熱時間が短縮され、硬化発熱中に発生した熱の散逸が改善される。さらなる利点は、複合材料の電気抵抗が温度の変動によって本質的に変わらないことである。
【0033】
バルク抵抗率の低下及び導電率の上昇により、落雷性能が向上する。したがって、本発明によって達成されたこの向上は、使用された導電性粒子が低水準であること、及びインタリーフ樹脂自体が通常示す高い電気抵抗率を考慮すると驚くべきことである。
【0034】
本明細書で使用する「抵抗率」及び「伝導率」という用語は、電気抵抗率及び導電率をそれぞれ指す。
【0035】
本明細書で使用する用語「粒子」とは、別個の、個々の単位として扱われ、他の個々の添加剤から分離可能な個別の三次元形状の添加剤を指すが、これは添加剤が互いに接触することを排除するものではない。この用語は、本明細書に記述され定義された導電性粒子の形状及び寸法を包含する。
【0036】
本明細書で使用する用語「アスペクト比」とは、三次元体の最長寸法と最短寸法の比を指すものと理解されたい。この用語は、本明細書で使用する任意の形状及び寸法の添加剤に適用可能である。この用語を球体又は実質上の球体に対して使用する場合、アスペクト比は、この球体の最大断面直径と最小断面直径の比となる。したがって、完全な球体のアスペクト比は1であることが理解されるであろう。導電性粒子について本明細書で規定したアスペクト比は、任意の金属被覆を施した粒子の寸法に基づくものである。
【0037】
金属被覆炭素繊維の層は、典型的には不織炭素繊維を含む。何故ならば、優れた表面仕上げを有しているからである。これに代えて織布又は編地を含むこともできる。或いは、チョップド金属被覆炭素繊維をプリプレグ表面に直接適用することもできる。炭素繊維は軽量であることが重要である。
【0038】
炭素繊維の面積重量は、約5gsm
(g/m2)から約100gsm
(g/m2)まで変化させることができる。34gsm
(g/m2)の炭素繊維層を加えることにより、落雷によって引き起こされる損傷を面積及び深さで約30〜40%低減することができる。
【0039】
導電性粒子の寸法とは、その粒子の最大断面直径である。
【0040】
導電性粒子の例としては、これらだけには限らないが、球体、マイクロ球体、樹枝状結晶、ビーズ、粉体、その他の適切な三次元添加剤、又はこれらの任意の組合せを挙げることができる。
【0041】
本発明で使用する導電性粒子は、複合材料のバルク抵抗率を低下させることにより導電性を上昇させることができる任意の導電性粒子を含むことができる。
【0042】
導電性粒子は、金属被覆導電性粒子、非金属導電性粒子、又はこれらの組合せから選択することができる。
【0043】
導電性粒子は高分子樹脂に分散している。「分散した」という用語には、導電性粒子が、実質上高分子樹脂の全体にわたって存在しており、高分子樹脂の任意の部分において他の部分より実質的に高い濃度で存在することがない状態が含まれていることが想定されている。さらに、「分散した」という用語には、低いバルク抵抗率が複合材料の特定の領域でのみ必要な場合には、導電性粒子が高分子樹脂の局部的領域に存在する状態も含んでいる。
【0044】
金属被覆導電性粒子は、適切な金属によって実質的に覆われたコア粒子を含むことができる。
【0045】
コア粒子は任意の適切な粒子であってよい。適切な粒子は、これらだけには限らないが、ポリマー、ゴム、セラミックス、ガラス、鉱物、又はフライアッシュなどの耐火物から形成されたものが挙げられる。
【0046】
ポリマーは、任意の熱可塑性又は熱硬化性ポリマーであってよい。「熱可塑性ポリマー」及び「熱硬化性ポリマー」という用語は本明細書に記述する通りである。
【0047】
ガラスから形成されるコア粒子は、固体又は中空のマイクロ球体を作るために使用される任意の種類であってよい。
【0048】
ガラス微粒子を含む適切なシリカの非限定的な例としては、ソーダガラス、ホウケイ酸塩、及び石英が挙げられる。或いは、ガラスは実質的にシリカを含まないものであってもよい。適切なシリカを含まないガラスは、単に例として、カルコゲナイドガラスが挙げられる。
【0049】
コア粒子は、多孔性でも中空でもよく、又はそれ自体がコア−シェル構造、例えばコア−シェルポリマー粒子であってもよい。コア粒子は、最初に、活性化層、接着促進層、下塗り層、半導体層、又は別の層で被覆した後、金属被覆する。
【0050】
コア粒子は、典型的にはガラスから形成された中空粒子である。ガラスから形成された中空コア粒子の使用は、減量が特に重要な用途において有利であり得る。
【0051】
コア粒子の混合物を使用して、例えば、より低密度又は他の有用な特性を得ることができる。例えば、ある割合の中空な金属被覆ガラス粒子を、ある割合の金属被覆ゴム粒子と共に使用してより低比重の強化層を得ることができる。
【0052】
コア粒子を被覆するのに適している金属は、これらだけには限らないが、銀、金、ニッケル、銅、スズ、アルミニウム、白金、パラジウム、及び高い導電性を持つことが知られているその他の任意の金属、又はそれらの任意の2種以上の組合せが挙げられる。典型的には、その高い導電性のために、銀が使用される。
【0053】
金被覆銅及び銀被覆銅などの多層金属被覆を使用してコア粒子を被覆することができる。金属を同時に堆積させて混合金属被膜を作ることも可能である。
【0054】
金属被覆は、粒子被覆に対して公知の任意の手段で行うことができる。適切な被覆方法の例としては、化学蒸着、スパッタリング、電気めっき、又は無電解蒸着が挙げられる。
【0055】
金属は、バルク金属、多孔性金属、円柱状、微晶質、繊維状、樹枝状、又は金属被覆で公知の任意の形態として存在してよい。金属被膜は、平滑であってもよく、又は比表面積を増加させ界面接合を改善するために、フィブリル又は隆起などの表面凹凸を含んでもよい。
【0056】
その後、金属被膜は、高分子樹脂との界面接合を改善するために、当技術分野で公知の任意の処理剤、例えば、シラン、チタン酸塩、ジルコン酸塩で処理することができる。
【0057】
金属被膜の電気抵抗率は、好ましくは3×10
−5Ωm未満、より好ましくは1×10
−7Ωm未満、特に好ましくは3×10
−8Ωm未満である。
【0058】
金属被覆導電性粒子は、任意の適切な形状、例えば、球状、楕円体、回転楕円面状、円盤状、樹枝状、棒状、円盤状、針状、立方形、又は多角体であってもよい。微細チョップド又はミルドファイバー、例えば金属被覆ミルドガラス繊維も使用することができる。粒子は、輪郭が明確な形状であってもよく、形状が不規則であってもよい。
【0059】
金属被覆導電性粒子のアスペクト比は、典型的には100未満であり、好ましくは10未満、特に好ましくは2未満である。
【0060】
金属被覆導電性粒子の粒度分布は、単分散であってもよく、多分散であってもよい。好ましくは、金属被覆粒子の少なくとも約90%は、約0.3μm〜約100μmの範囲内の大きさであり、より好ましくは約1μm〜約50μm、特に好ましくは約5μm〜約40μmである。
【0061】
導電性粒子は、非金属導電性粒子であってもよい。これには、金属被覆を有しておらず、且つ複合材料のバルク抵抗率を低下させることによりその導電性を改善することができる、任意の適切な非金属粒子が含まれることを理解されたい。
【0062】
適切な非金属導電性粒子は、これらだけには限らないが、片状黒鉛、黒鉛粉末、黒鉛微粒子、グラフェンシート、フラーレン、カーボンブラック、固有導電性高分子(ICP−例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、及びポリアニリン)、電荷移動錯体、又はこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0063】
非金属導電性粒子の適切な組合せの一例としては、ICPとカーボンブラック及び黒鉛微粒子の組合せが挙げられる。
【0064】
非金属導電性粒子粒度分布は、単分散であってもよく、多分散であってもよい。好ましくは、非金属導電性粒子の少なくとも約90%は、約0.3μm〜約100μmの範囲内の大きさであり、より好ましくは約1μm〜約50μm、特に好ましくは約5μmと約40μmの間である。
【0065】
導電性粒子の大きさは、高分子樹脂中に存在する少なくとも約50%の粒子が、高分子樹脂層の厚みから約10μm以内の大きさを有する。言いかえれば、樹脂層の厚みと導電性物の大きさの差は約10μm未満である。典型的には、導電性粒子の大きさは、高分子樹脂中に存在する少なくとも約50%の粒子が、高分子樹脂層の厚みから5μm以内の大きさを有する。
【0066】
したがって、少なくとも約50%の導電性粒子の大きさは、これらの粒子がインタリーフ厚み(高分子樹脂層)の端から端までにわたるような大きさである。また、これらの粒子は、高分子樹脂層の周りに配置された上側の繊維強化材プライ及び下側の繊維強化材プライと接触している。
【0067】
導電性粒子は、複合材料の約0.2体積%〜約20体積%の範囲で存在することができる。好ましくは、導電性粒子は、約0.4体積%〜約15体積%の範囲で存在する。特に好ましくは、導電性粒子は、約0.8体積%〜約10体積%の範囲で存在する。
【0068】
代替実施形態では、導電性粒子は、高分子樹脂層の約10体積%未満の量で存在することができる。
【0069】
導電性粒子の好ましい範囲は体積%で表わされていることが分かる。これは、粒子の重量は、密度の変動により大きく変動する恐れがあるからである。
【0070】
導電性粒子は、単独で使用してもよく、任意の適切な組合せで使用してもよい。
【0071】
必要以上に理論に束縛されたくはないが、本発明の利点は、インタリーフ厚みのいたるところの(即ち、高分子樹脂層のいたるところの、且つ繊維強化材層の間の)導電ブリッジとして働くことにより、繊維強化材プライ同士を接続し、z方向の導電性を上昇させる(金属被覆又は非金属の)導電性粒子によってもたらされることが分かった。別の樹脂成分を含む金属被覆炭素繊維の最上層(但し、この金属は、ニッケル、銅、金、白金、パラジウム、インジウム及び銀から選択される1種以上の金属を含む)は、z方向の電気電導度をさらに改良する。
【0072】
さらに、インタリーフ厚みと実質的に等しい大きさを有する導電性粒子を使用すると、(z平面内の)複合材料のいたるところの導電性が比較的低い添加量で好都合に得られることが分かった。導電性粒子のこのような低添加量は、高分子樹脂自体を導電性にするために通常必要とされる量より少ない。
【0073】
したがって、導電性粒子は複合材料のバルク抵抗率を低下させることにより導電性を上昇させる。
【0074】
複合材料はさらにカーボンナノ材料を含んでもよい。カーボンナノ材料は、任意の適切なカーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーから選択することができる。
【0075】
カーボンナノ材料の直径は、約10〜約500nmの範囲、好ましくは約100〜約150nmの範囲とすることができる。
【0076】
カーボンナノ材料の長さは、好ましくは約1〜約10μmの範囲の長さとすることができる。
【0077】
カーボンナノ材料は、さらにインタリーフを端から端まで橋架けすることにより、(z平面内の)複合材料のいたるところの追加の導電経路を形成することができる。繊維補強材は、典型的には多くの繊維ストランドを含む層(layer)又はプライの形で配置される。複合材料は、典型的には高分子樹脂層の両側に配置された少なくとも2つの繊維強化材プライを含む。これらのプライは、材料のx面及びy面の導電性を与えると同時に、材料構造体の支持層としての役割を果たし、且つ実質的に高分子樹脂を含んでいる。
【0078】
プリプレグの繊維強化材は、合成若しくは天然繊維、又はこれらの組合せを含むハイブリッド若しくは混合繊維系から選択することができる。繊維強化材は導電性の繊維から形成される。したがって、この繊維強化材は導電性である。
【0079】
繊維強化材は、典型的には、金属被覆ガラス、炭素、黒鉛、金属被覆ポリマー繊維(連続的若しくは不連続金属層を有する)などの任意の適切な材料から選択する。この場合、ポリマーは高分子樹脂に可溶であってもよく、不溶性であってもよい。これらの繊維の任意の組合せを選択することができる。これらの繊維と非導電性繊維(グラスファイバーなど)との混合物も使用することができる。
【0080】
繊維補強材は、実質的に炭素繊維から形成されることが最も好ましい。
【0081】
繊維強化材は、亀裂の入った(即ち、延伸破壊した)繊維若しくは選択的に短い繊維、又は長繊維を含むことができる。亀裂の入った繊維若しくは選択的に短い繊維の使用は、本発明による完全硬化前の硬化複合材料のレイアップを促進することができ、且つその被成形能力を改善することができることを想定している。
【0082】
繊維強化材は、織布、非捲縮、不織布、単向性、又は多軸の織物テープ若しくはトウ(tow)の形とすることができる。
【0083】
織りの形は、平織、朱子織、又は綾織のスタイルから選択することが好ましい。非捲縮及び多軸の形には多くのプライ及び繊維方向があり得る。
【0084】
こうしたスタイル及び形の繊維強化材は、複合補強材分野で周知であり、Hexcel Reinforcements of Villeurbanne,Franceを含む多くの会社から市販されている。
【0085】
プリプレグの高分子樹脂及び別の樹脂成分は、両方とも、好ましくはそれぞれ独立に、少なくとも1種の熱硬化性又は熱可塑性樹脂を含む。
【0086】
「熱硬化性樹脂」という用語は、可塑性があり、硬化前は通常液状、粉状又は展性があり、最終の形に成形されるように設計されている任意の適切な材料を含む。熱硬化性樹脂は、任意の適切な熱硬化性樹脂とすることができる。一旦硬化すると、熱硬化性樹脂は溶融及び再成形に適していない。本発明に好適な熱硬化性樹脂材料としては、それだけに限らないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(メラミン)樹脂、ビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾキサジン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、不飽和ポリエステル、シアン酸エステル樹脂、又はこれらの任意の2種以上の組合せが挙げられる。
【0087】
熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビスマレイミド、ビニルエステル、ベンゾキサジン、及びフェノール樹脂から選択されることが好ましい。
【0088】
「熱可塑性樹脂」という用語は、加熱すると可塑性又は変形可能であり、溶融して液状になり、十分冷却すると凍結して脆い固体になりガラス状態を形成する任意の材料を含む。熱可塑性樹脂は、一旦成形して硬化しても、溶融及び再成形に適している。本発明に使用するのに好適な熱可塑性ポリマーは、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリエステル、重合性大環状分子(例えば、環状ブチレンテレフタレート)、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリエーテルイミド、アラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルフィド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド(PPO)及び変性PPO、或いはこれらの任意の2種以上の組合せのいずれかを含むことができる。
【0089】
高分子エポキシ樹脂には、好ましくは、ビスフェノールA(BPA)ジグリシジルエーテル及びビスフェノールF(BPF)ジグリシジルエーテルの少なくとも1種及びその誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルメタン(TGDDM)のテトラグリシジル誘導体;アミノフェノールのトリグリシジル誘導体、並びに当技術分野において周知の他のグリシジルエーテル及びグリシジルアミンが含まれる。
【0090】
高分子樹脂は繊維強化材に適用される。繊維強化材は、高分子樹脂で完全に含浸してもよいし、部分的に含浸してもよい。代替の実施形態では、高分子樹脂は、繊維強化材に近接しこれと接触しているが、前記繊維強化材に実質的には含浸していない、別個の層とすることもできる。
【0091】
炭素繊維層を含浸させるために用いられる別の樹脂成分は、導電性であっても非導電性であってもよく、少なくとも1種の熱硬化性又は熱可塑性樹脂を含むことができる。代表的な樹脂には、それだけに限らないが、高分子樹脂について先に挙げた樹脂化合物のすべてが含まれる。別の樹脂成分は、高分子樹脂と同じ樹脂であってもよく、同じ樹脂でなくてもよい。別の樹脂成分は、任意選択で、有利に(金属被覆又は非金属)導電性粒子を含むこともできる。
【0092】
複合材料は、少なくとも1種の硬化剤を含むことができる。硬化剤は、実質的に高分子樹脂中に存在することができる。「実質的に存在する」という用語は、硬化剤の少なくとも約90重量%、典型的には硬化剤の約95重量%を想定している。
【0093】
エポキシ樹脂については、本発明の硬化剤は、本発明のエポキシ官能性化合物の硬化を促進し、特に、こうしたエポキシ化合物の開環重合を促進するものである。特に好ましい実施形態では、こうした硬化剤には、その開環重合において、1種又は複数種のエポキシ官能性化合物と重合する化合物が含まれる。硬化剤には、典型的には、シアノグアニジン、芳香族及び脂肪族アミン、酸無水物、ルイス酸、置換尿素、イミダゾール及びヒドラジンが含まれる。
【0094】
こうした硬化剤を2種以上併用して使用することができる。
【0095】
適切な硬化剤としては、無水物、特にポリカルボン酸無水物、例えば、無水ナジン酸(NA)、メチル無水ナジン酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、又はトリメリト酸無水物が挙げられる。
【0096】
その他の適切な硬化剤には、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族アミンを含むアミン、並びに、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS)及び3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)などのポリアミノスルホンがある。
【0097】
さらに、適切な硬化剤としては、平均分子量が約550〜650のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、平均分子量が約600〜700のp−t−ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、及び平均分子量が約1200〜1400のp−n−オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂などのフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を挙げることができる。
【0098】
しかしながら、更にフェノール酸基を含むその他の適切な樹脂を使用することができる。これには、レゾルシノール系樹脂、及びジシクロペンタジエン−フェノール共重合体などの、カチオン重合で形成された樹脂がある。その他の適切な樹脂は、メラミン−フォルムアルデヒド樹脂及び尿素ホルムアルデヒド樹脂である。
【0099】
種々の市販の組成物を本発明で硬化剤として使用することができる。こうした組成物の1つは、Ajinomoto USA Inc.から市販されているAH−154であり、ジシアンジアミドタイプの配合物である。その他の適切なものとしてはAncamide1284が挙げられるが、これは4,4’−メチレンジアニリンと1,3−ベンゼンジアミンの混合物であり、Pacific Anchor Chemical,Performance Chemical Division,Air Products and Chemicals,Inc.,Allentown,USAから市販されている。
【0100】
硬化剤は、適切な温度で複合材料と組み合わせた場合、複合材料の樹脂成分を硬化させるように選択される。樹脂成分を適切に硬化させるのに必要な硬化剤の量は、硬化する樹脂の種類、所望の硬化温度、及び硬化時間を含むいくつか要因に応じて異なる。典型的な硬化剤としては、シアノグアニジン、芳香族及び脂肪族アミン及び酸無水物、ルイス酸、置換尿素、イミダゾール、及びヒドラジンが挙げられる。個々の特別な状況において必要な硬化剤の特定量は、確立したルーチンの実験作業によって決定することができる。
【0101】
典型的な好ましい硬化剤としては、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS)及び3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)が挙げられる。
【0102】
硬化剤が存在する場合は、複合材料の約45重量%〜約2重量%の範囲で存在することができる。より典型的には、硬化剤は約30重量%〜約5重量%の範囲で存在することができる。特に典型的には、硬化剤は約25重量%〜約5重量%の範囲で存在することができる。
【0103】
促進剤は、存在する場合は、典型的にはウロン類である。適切な促進剤(単独でも組み合わせても使用することができる)としては、N,N−ジメチル,N’−3,4−ジクロロフェニル尿素(ジウロン)、N’−3−クロロフェニル尿素(モニュロン)、及び好ましくはN,N−(4−m−フェニレンビス[N’,N’−ジメチル尿素](TDIウロン)が挙げられる。
【0104】
複合材料及び/又は炭素繊維層は、さらに性能増強剤又は変性剤などの追加の成分を含むことができる。性能増強剤又は変性剤は、単に例として、可撓性付与剤、強化剤/粒子、追加の促進剤、コアシェル型ゴム、難燃剤、湿潤剤、顔料/染料、難燃剤、可塑剤、UV吸収剤、抗菌化合物、賦形剤、粘性調整剤/フロー制御剤、粘着性付与剤、安定剤、重合防止剤、又はそれらの2種以上の任意の組合せから選択することができる。
【0105】
強化剤/粒子は、単に例として、以下のいずれかを単独で又は組み合わせて含むことができる:ポリアミド、コポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、高機能炭化水素ポリマー、液晶ポリマー、PTFE、エラストマー、及びセグメント化エラストマー。
【0106】
強化剤/粒子が存在する場合は、複合材料の約45重量%〜約0重量%の範囲で存在することができる。より典型的には、それらは約25重量%〜約5重量%の範囲で存在することができる。特に典型的には、それらは約15重量%〜約10重量%の範囲で存在することができる。
【0107】
適切な強化剤/粒子の例としては、Sumikaexcel 5003Pがある。これは、Sumitomo Chemicals of Tokyo,Japanから市販されている。5003Pの代替品としてはSolvay polysulphone 105P及びSolvay 104P がある。これらは、Solvay of Brussels,Belgiumから市販されている。
【0108】
適切な賦形剤は、単に例として、以下のいずれかを単独で又は組み合わせて使用することができる:シリカ、アルミナ、チタニア、ガラス、炭酸カルシウム、及び酸化カルシウム。
【0109】
好適な顔料としては、例として挙げるだけであるが、二酸化チタンを挙げることができる。これはプライマー及び塗料の必要性を低下させ、これにより、最小の損傷で落雷に耐える材料としての本発明の複合材料の利点をさらに向上させる。
【0110】
複合材料は、上に定義された少なくとも1種の熱硬化性又は熱可塑性樹脂である追加の高分子樹脂を含むことができる。
【0111】
大多数の導電性粒子が複合材料の高分子樹脂内にあることが望ましいが、わずかな割合のこうした粒子が繊維強化材内に分布しても一般に不利ではない。導電性粒子は、通常の混合又はブレンド操作によってプリプレグの高分子樹脂内に適切に分散させることができる。
【0112】
必要な添加剤及び導電性粒子をすべて含んだ混合樹脂は、任意の公知の方法、例えば、いわゆるラッカープロセス、樹脂フィルムプロセス、押出、スプレー、印刷又は他の公知の方法によってプリプレグに組み込むことができる。
【0113】
ラッカープロセスでは、樹脂成分のすべてを溶媒に溶解又は分散し、繊維強化材を溶媒に浸漬した後、熱で溶媒を除去する。樹脂フィルムプロセスでは、ラッカー又はホットメルト樹脂のいずれかから、剥離剤で処理された基板上に、高分子樹脂を連続フィルムとしてキャストする。次いで、塗布されたフィルムを繊維強化材と接触させ、熱及び圧力の力を借りて、樹脂フィルムは溶融し繊維内へ流れる。多数のフィルムを使用することができ、繊維層の片側又は両側をこの方法で含浸することができる。
【0114】
プリプレグをフィルム又はラッカープロセスで作る場合、大多数の導電性粒子は、強化繊維によって「ろ過され」、繊維強化材に入り込むことが実質上妨げられることになる。何故ならば、粒子サイズは強化繊維同士間の距離より大きいからである。スプレー又は印刷などの他のプロセスによって、導電性粒子を繊維強化材上に直接配置することができる。繊維同士間への前記粒子の浸透性は非常に低い。
【0115】
金属被覆中空粒子を使用する場合は、低剪断混合装置を使用することにより、混合によって導電性粒子に生じる可能性のある変形効果を弱めることが必要であろう。
【0116】
プリプレグは、連続したテープ、トウプレグ、ファブリック、ウェブ、又は切断された長さのテープ、トウプレグ、ファブリック、若しくはウェブの形とすることができる。プリプレグはまた、接着性フィルム又はサーフェーシングフィルムとして機能することができ、さらに織編、不織両方の様々な形の埋め込まれた担体を有することができる。
【0117】
本発明によって調合されたプリプレグは、任意の公知の方法、例えば、マニュアルレイアップ、自動テープレイアップ(ATL)、自動繊維配置、真空バギング、オートクレーブ硬化、オートクレーブ以外の硬化、流体援用加工、圧力支援プロセス、マッチモールドプロセス、単純プレス硬化、プレスクレーブ硬化、又は連続バンドプレスを使用して最終構成部品を製造することができる。
【0118】
本発明の一実施形態によれば、複合材料は、導電性繊維強化材から成る単一プライを含むことができる。これは、導電性粒子を含む高分子樹脂層の片側に適用されている。複合材料は、単一プライの実施形態で製造し、引き続きレイアップによって多層に成形してインタリーフ構造を形成することができる。したがって、インタリーフ構造は、繊維−樹脂−繊維の構成が生じるレイアップ中に形成される。
【0119】
したがって、複合材料は単一のプリプレグを含むことができる。或は、複合材料は複数のプリプレグを含んでもよい。
【0120】
プリプレグの高分子樹脂層の厚みは、好ましくは、約1μm〜約100μm、より好ましくは約1μm〜約50μm、特に好ましくは約5μm〜約50μmの範囲である。
【0121】
多層の導電性組成物材料を使用することができる。したがって、一例として、12プライの標準複合材料と、本発明の導電性粒子を含む4プライの複合材料とを使用して組立体を作製することができる。このようにして最終組立体の導電性を上昇させることができる。さらに別の実施例として、12プライの標準複合材料と、導電性粒子を含み炭素繊維補強材のない複合材料とからラミネート組立体を作製することもできる。任意選択で、本発明の複合材料が使用される場合、電気的絶縁層を炭素繊維プライと樹脂表面の間に置くことができる。例えば、ガラス強化繊維層を絶縁層として使用することができる。使用することができる多くの可能な組立体があること、並びに、本明細書に記述したものは単に例として挙げたものであることを理解されたい。
【0122】
さらなる利点は、本発明の複合材料は、完全に硬化するまで十分に柔軟であり、自動テープレイアッププロセスに適しているということである。このプロセスは、航空宇宙産業において大型の複合構造体の製造における使用が増大している。
【0123】
本発明の複合材料は、当技術分野で公知の任意の適切な温度、圧力、及び時間条件を使用して、完全に又は部分的に硬化することができる。
【0124】
複合材料は、UV−可視光線、マイクロ波放射、電子ビーム、ガンマ線、又は他の適切な熱若しくは非熱の放射線から選択された方法を使用して硬化することができる。
【0125】
したがって、本発明の第4の態様によれば、第2の態様のステップを含み、引き続き複合材料を硬化するステップを含む硬化複合材料の製造方法が提供される。
【0126】
第4の態様の硬化ステップは、任意の公知の方法を使用することができる。本明細書に記述した硬化方法が特に好ましい。
【0127】
したがって、本発明の第1態様による複合材料を含む硬化複合材料が提供される。但し、前記複合材料は硬化している。
【0128】
複合材料が硬化するとき、金属被覆炭素繊維層中の別の樹脂成分も同時に硬化する。
【0129】
以下の議論の大部分は落雷保護に的をしぼっているが、バルク抵抗率が低く導電率が高い複合材料には多くの潜在的な用途があることは容易に理解されるであろう。したがって、本発明によって達成される導電率の水準により、得られる複合材料は、電磁遮蔽、静電気保護、電流リターン、及び導電性の改善が必要なその他の用途における使用に適したものになるであろう。
【0130】
さらに、議論の多くは航空宇宙部品に集中しているが、本発明を、風力タービン、建物、船舶、列車、自動車、及び他の関連分野の落雷及び他の電気的な管理問題に適用することも可能である。
【0131】
本発明は、これを航空宇宙部品に使用した場合、一次構造用途(即ち、飛行機の完全性の維持に重要な構造の部品)にも、二次構造用途にも使用することができることが想定される。
【0132】
したがって、硬化複合材料から航空宇宙用品を製造する方法が提供される。この方法は、第4の態様の方法に従って硬化複合材料を製造するステップと、前記硬化複合材料を使用して任意の方法によって航空宇宙用品を製造するステップとを含む。
【0133】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の態様の硬化複合材料を含む航空宇宙用品が提供される。
【0134】
本明細書に記述されたすべての特徴は、任意の組合せで、上記の態様のうちのどれとも組み合わせることができる。
【0135】
次に、本発明をより容易に理解するために、単に例及び実例として以下の説明及び添付図面に言及する。