特許第5730763号(P5730763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アモーレパシフィックの特許一覧

特許5730763天然物の塩漬け発酵抽出物を含有する化粧料組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730763
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】天然物の塩漬け発酵抽出物を含有する化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/97 20060101AFI20150521BHJP
   A61K 8/96 20060101ALI20150521BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20150521BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20150521BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   A61K8/97
   A61K8/96
   A61K8/20
   A61Q19/00
   A61Q19/08
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-521010(P2011-521010)
(86)(22)【出願日】2009年5月7日
(65)【公表番号】特表2011-529874(P2011-529874A)
(43)【公表日】2011年12月15日
(86)【国際出願番号】KR2009002396
(87)【国際公開番号】WO2010013885
(87)【国際公開日】20100204
【審査請求日】2012年4月9日
(31)【優先権主張番号】10-2008-0075489
(32)【優先日】2008年8月1日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2009-0034997
(32)【優先日】2009年4月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】株式会社アモーレパシフィック
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】キム ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュン ソン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヘ ユン
(72)【発明者】
【氏名】アン ソー ミ
(72)【発明者】
【氏名】キム ドク ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム ハン コン
【審査官】 川島 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−529486(JP,A)
【文献】 特表2011−512814(JP,A)
【文献】 特開2006−070146(JP,A)
【文献】 特開平11−075788(JP,A)
【文献】 特開平09−234017(JP,A)
【文献】 Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi,2007年,Vol.54, No.12,pp.563-567
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤小豆、緑豆及び黒豆よりなる群から選択された1種以上の天然物に海洋深層水をさらに添加したものの塩漬け発酵抽出物を有効成分として含有する化粧料組成物。
【請求項2】
上記塩漬け発酵抽出物は、上記天然物と上記海洋深層水との合計総重量に対して塩を10〜30重量%の量で添加して発酵させることにより得られることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
上記塩漬け発酵抽出物は、組成物の全体重量に対して0.0001〜30重量%の量で含有されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
a)海洋深層水及び塩を、赤小豆、緑豆及び黒豆よりなる群から選択された1種以上の天然物に添加して発酵させて塩漬け発酵天然物を得る段階と、
b)上記塩漬け発酵天然物を、水または有機溶媒で抽出して塩漬け発酵抽出物を得る段階とを含んだ塩漬け発酵抽出物の製造方法。
【請求項5】
上記塩は、上記天然物と上記海洋深層水との合計総重量に対して10〜30重量%の量で添加されることを特徴とする請求項に記載の塩漬け発酵抽出物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物の発酵抽出物を含有する化粧料組成物に関し、より詳細には、赤小豆(red bean)、緑豆(mung bean)及び黒豆(black bean)のうち1種以上の塩漬け発酵抽出物、または赤小豆、緑豆及び黒豆のうち1種以上に海洋深層水を添加して得た塩漬け発酵抽出物を含有することによって、抗酸化及び抗老化効果を有する化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚は、年を取るにつれて様々な内的、外的要因によって変化を経験する。すなわち、内的には、新陳代謝を調節する各種ホルモンの分泌が減少し、免疫細胞の機能と細胞の活性が低下し、生体に必要な免疫タンパク質及び生体構成タンパク質の生合成が減少し、外的には、オゾン層の破壊に起因して太陽光線のうち地表に到逹する紫外線の含量が増加し、環境汚染がさらに深刻になるにつれて自由ラジカル及び活性有害酸素などが増加することによって、皮膚の厚さが減少し、しわが増加し、弾力が減少するだけでなく、皮膚の血色が悪くなり、皮膚トラブルがよく発生し、しみ、そばかす及び黒い斑点も増加するなど様々な変化を起こす。
【0003】
老化が進行するほど皮膚を構成する物質であるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸及び糖蛋白質の含有量及び配列が変化したり減少したりする症状が現われ、自由ラジカル及び活性有害酸素による酸化的ストレスを受ける。また、老化の進行または紫外線によって、皮膚を構成する大部分の細胞では、炎症を起こすものと知られている炎症誘発性サイトカイン(proinflammatory cytokine)を生成する酵素であるシクロオキシゲナーゼ−2(Cox−2;cyclooxygenase-2)の生合成が増加し、これらの炎症誘発性因子によって皮膚組職を分解する酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP;Matrix metalloproteinase)の生合成が増加し、iNOS(inducible nitric oxide synthase)によるNO(nitric oxide)生成が増加すると知られている。すなわち、自然に進行する内因性老化による細胞活性の減少及び微細炎症によって基質物質の生合成が減少し、様々な有害環境によるストレスの増加及び太陽光線による活性酸素種の増加のような外的要因によって、分解及び変性が加速され、皮膚基質が破壊され且つ薄くなり、そのため、皮膚老化の諸症状が現われる。したがって、このような老化の現象を防止し、改善させることができる活性成分について多くの研究が行われているのが現況である。
【0004】
一方、体内の酵素系、還元代謝、化学薬品、公害物質及び光化学反応などの各種物理的、化学的及び環境的要因などによって生成される活性酸素は、細胞構成成分である脂質、タンパク質、糖及びDNAなどに対して非選択的、非可逆的な破壊作用をすることによって、細胞老化または癌を含めた各種疾病を起こすものと知られている。また、これら活性酸素による脂質過酸化の結果として生成される脂質過酸化物を含めた様々な体内の過酸化物も細胞に対する酸化的破壊を起こし、各種機能障害を招くことによって、様々な疾病の原因になることもある。したがって、このような自由ラジカルを消去することができる化合物(free radical scavengers)または過酸化物生成抑制物質のような抗酸化剤がこれら酸化物に起因する老化及び各種疾患の抑制または治療剤として期待される。
【0005】
最近、健康的な生活様式を追求する傾向に伴い、人工的な要素が加味されていない天然発酵方法を利用した天然物の発酵方法に対する要求が増加していて、これを活用した製品に対する要求が続いている。しかし、このような天然発酵方法は、人体に有害な大膓菌、嫌気性細菌などによる腐敗及び汚染に対する危険性に起因して実際製品として活用することが困難である。これを解決するために、煮沸法などの発酵前殺菌方法が考案されたが、熱によって効能成分などが破壊され得るので、非殺菌方法による発酵法の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これより、本発明者らは、天然来由の有効物質のうち皮膚に安全で且つ抗酸化及び抗老化効果に優れていて、製品としての安定性も優れた抗酸化及び抗老化化粧料を製造するために研究したところ、天然物を塩に漬けた後に発酵させる天然発酵方法により製造された塩漬け発酵抽出物が抗酸化効果及び抗老化効果に非常に優れていることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
したがって、本発明の目的は、天然物の塩漬け発酵抽出物を含有し、皮膚抗酸化及び抗老化効能に優れた化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による化粧料組成物は、赤小豆、緑豆及び黒豆よりなる群から選択された1種以上の塩漬け発酵抽出物を含有する。または、赤小豆、緑豆及び黒豆よりなる群から選択された1種以上に海洋深層水をさらに添加したものの塩漬け発酵抽出物を有効成分として含有することができる。本発明の化粧料組成物は、上記塩漬け発酵抽出物を有効成分として組成物の全体重量に対して0.0001〜30重量%の量で含有する。含量が0.0001重量%未満なら、上記抽出物による抗酸化及び抗老化効果などを得ることができず、含量が30重量%超過なら、含量の増加に比べて効果の増加が大きくないからである。
【0009】
本発明において使用される赤小豆は、一般的に小豆と呼ばれ、利尿、消炎、排膿、及び解熱に効能があり、全身浮腫、肝硬化、黄疸、お出来、化膿性疾患、水腫、脚気、消渇、赤痢、下痢などに使用される。
【0010】
緑豆は、安豆、吉豆とも言う。暖かい気候の壌土でよく成長し、高さが30〜80cmである。茎は、細くて、縦に脈があり、10余個の節があり、枝が伸びる。葉は、1対の二葉と若葉が出た後、3個の小さい葉よりなる複葉が出る。品種を分けずに、種子の色によって、黄色、緑色を帯びた茶色、及び黒色を帯びた茶色の緑豆に区分されるが、緑色緑豆が全体の90%を占める。成分は、澱粉53〜54%、タンパク質25〜26%であって、栄養価が高くて、香味が良い。民間では、皮膚病を治療するのに使用され、解熱、解毒作用をすると知られている。
【0011】
黒豆は、黒大豆とも言う。特定の一種類の豆を指すものではなく、黒色を帯びる豆を総称する。フクテ、ソリテ、ソモクテ(ニョドゥ)などが黒豆に属する。黒豆は、一般豆と比べて栄養素の含量は同様であるが、老化防止成分が4倍も多く、成人病予防とダイエットに効果があると知られている。本草綱目(中国の薬用植物書)には、黒豆の効能について、腎臓を強くし、浮腫を治療し、血液循環を活発にし、すべての薬の毒を解くと記録されている。また、毛髪成長に必須成分であるシステインが含有されていて、脱毛を防止することにも効果があり、倦まず弛まず服用すれば、腎臓と膀失の機能を円滑にすると知られている。
【0012】
海洋深層水は、水深200mよりも深い所に存在し、有機物や病原菌などがほとんどないだけでなく、年中安定した低温を維持していて、海洋植物の生長に必須な栄養塩類に富み、ミネラルバランスが良好な海水資源である。
【0013】
本発明において使用される赤小豆、緑豆及び黒豆の塩漬け発酵抽出物は、下記の方法で製造される。
段階1:赤小豆、緑豆及び黒豆の発酵段階
まず、赤小豆、緑豆または黒豆に一定量の塩を添加し、長期熟成発酵させる。または、これに塩とともに海洋深層水をさらに添加して塩漬け発酵させることができる。赤小豆、緑豆または黒豆を各々1kgの量で使用する場合、海洋深層水は、1〜2Lの量で添加することが好ましい。
【0014】
塩漬けに使用される塩としては、精製した高純度塩化ナトリウム、天日塩、岩塩及び竹塩などが好ましく、塩の濃度は、全体発酵物に対して10〜30重量%が好ましい。塩の含量が10重量%未満では、期待する効果を発揮しにくく、30重量%を超過すれば、塩の使用量に比べて塩漬け効果の相乗効果が極めて弱いからである。
【0015】
本発明の発酵工程は、4〜40℃の間で、十分な発酵が起きることができるように30日から1年程度、好ましくは、6ヶ月乃至1年程度発酵させることが好ましい。
【0016】
段階2:塩漬け発酵抽出物を収得する段階
上記段階1の塩漬け発酵天然物から抽出溶媒を利用して塩漬け発酵抽出物を収得する。
【0017】
本発明では、抽出溶媒として水または有機溶媒を使用することができ、より具体的には、精製水、メタノール、エタノール、グリセリン、エチルアセテート、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジクロロメタン及びヘキサンよりなる群から選択された1種を単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0018】
この時、抽出温度は、10〜80℃が好ましく、6〜24時間抽出することができる。上記抽出温度及び抽出時間を脱すれば、抽出効率が劣化するか、成分の変化が発生することがある。
【0019】
上記で、溶媒を利用して抽出物を得た後、当業界に知られた通常の方法で、常温で冷浸(cold-water extraction)、加熱及び濾過して液相物を得ることができ、または追加に溶媒を蒸発、噴霧乾燥または凍結乾燥することによって、赤小豆、緑豆または黒豆の塩漬け発酵抽出物、または赤小豆、緑豆または黒豆に海洋深層水をさらに添加した塩漬け発酵抽出物を製造することができる。
【0020】
前述のような方法で製造した塩漬け発酵抽出物を含有する化粧料組成物は、DPPH酸化抑制実験を通じて抗酸化効能があることを確認することができ、プロコラーゲン(procollagen)生成促進とコラゲナーゼ(collagenase)発現抑制効果があり、この2つの活性の複合相乗作用により優れた皮膚しわ改善効果を提供することができる。
【0021】
本発明による塩漬け発酵抽出物は、その使用に特に制限がなく、例えば、化粧料組成物以外にも、健康食品の添加物及び薬剤組成物などに使用されることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による赤小豆、緑豆または黒豆の塩漬け発酵抽出物は、DPPH酸化抑制実験を通じて抗酸化効能があることを確認し、プロコラーゲン生成促進とコラゲナーゼ発現抑制効果を示し、この2つの活性の複合相乗作用により優れた皮膚しわ改善効果を期待することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施例及び試験例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がこれらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
[実施例1]赤小豆、緑豆、黒豆及び海洋深層水の塩漬け発酵抽出物の製造
洗浄した赤小豆、緑豆及び黒豆の各1kgと海洋深層水1Lとを10重量%濃度の塩溶液に混合した後、陶器に入れて準備し、4℃で約30日間光を遮断させた暗室で低温熟成保管した。その後、これに80%エタノール水溶液5Lを入れ、3回還流抽出した後、15℃で1日間沈積させた。その後、濾過布を用いた濾過と遠心分離により残渣と濾液を分離し、分離した濾液を減圧濃縮して得た抽出物を水に懸濁した後、エーテル1Lで5回抽出して色素を除去し、水層を1−ブタノール500mLで3回抽出した。これにより得られた全体1−ブタノール層を減圧濃縮して1−ブタノール抽出物を得、これを少量のメタノールに溶解した後、大量のエチルアセテートに追加し、生成された沈殿物を乾燥することによって、赤小豆、緑豆、黒豆及び海洋深層水の塩漬け発酵抽出物190gを収得した。
【0025】
[実施例2]赤小豆及び海洋深層水の塩漬け発酵抽出物の製造
乾燥した赤小豆1kgと海洋深層水1Lとを上記実施例1と同一の方法で処理して、赤小豆及び海洋深層水の塩漬け発酵抽出物182gを製造した。
【0026】
[実施例3]緑豆及び海洋深層水の塩漬け発酵抽出物の製造
乾燥した緑豆1kgと海洋深層水1Lとを上記実施例1と同一の方法で処理して、緑豆及び海洋深層水の塩漬け発酵抽出物172gを製造した。
【0027】
[実施例4]黒豆及び海洋深層水の塩漬け発酵抽出物の製造
乾燥した黒豆1kgと海洋深層水1Lとを上記実施例1と同一の方法で処理して、黒豆及び海洋深層水の塩漬け発酵抽出物178gを製造した。
【0028】
参考例5]赤小豆の塩漬け発酵抽出物の製造
海洋深層水を添加しないことを除いて、乾燥した赤小豆1kgを上記実施例1と同一の方法で処理して、赤小豆の塩漬け発酵抽出物210gを製造した。
【0029】
参考例6]緑豆の塩漬け発酵抽出物の製造
海洋深層水を添加しないことを除いて、乾燥した緑豆1kgを上記実施例1と同一の方法で処理して、緑豆の塩漬け発酵抽出物193gを製造した。
【0030】
参考例7]黒豆の塩漬け発酵抽出物の製造
海洋深層水を添加しないことを除いて、乾燥した黒豆1kgを上記実施例1と同一の方法で処理して、黒豆の塩漬け発酵抽出物198gを製造した。
【0031】
[比較例1]赤小豆、緑豆、黒豆及び海洋深層水の発酵抽出物の製造
洗浄した赤小豆、緑豆、黒豆の各1kgと海洋深層水1Lとを混合した後、陶器に入れて準備し、4℃で約30日間光を遮断させた暗室で低温熟成保管した。その後、これに80%エタノール水溶液5Lを入れ、3回還流抽出した後、15℃で1日間沈積させた。その後、濾過布を用いた濾過と遠心分離により残渣と濾液を分離し、分離した濾液を減圧濃縮して得た抽出物を水に懸濁した後、エーテル1Lで5回抽出して色素を除去し、水層を1−ブタノール500mLで3回抽出した。これにより得られた全体1−ブタノール層を減圧濃縮して1−ブタノール抽出物を得、これを少量のメタノールに溶解した後、大量のエチルアセテートに追加し、生成された沈殿物を乾燥することによって、赤小豆、緑豆、黒豆及び海洋深層水の発酵抽出物185gを収得した。
【0032】
[比較例2]赤小豆、緑豆、黒豆及び海洋深層水の抽出物の製造
洗浄した赤小豆、緑豆、黒豆の各1kgと海洋深層水1Lとを混合した後、これに80%エタノール水溶液5Lを入れ、3回還流抽出した後、15℃で1日間沈積させた。その後、濾過布を用いた濾過と遠心分離により残渣と濾液を分離し、分離した濾液を減圧濃縮して得た抽出物を水に懸濁した後、エーテル1Lで5回抽出して色素を除去し、水層を1−ブタノール500mLで3回抽出した。これにより得られた全体1−ブタノール層を減圧濃縮して1−ブタノール抽出物を得、これを少量のメタノールに溶解した後、大量のエチルアセテートに追加し、生成された沈殿物を乾燥することによって、赤小豆、緑豆、黒豆及び海洋深層水の抽出物170gを収得した。
【0033】
[試験例1]抗酸化効果試験(DPPHテスト)
上記比較例1〜2の天然物抽出物並びに実施例1〜4及び参考例5〜7から得た天然物の塩漬け発酵抽出物のDPPH酸化抑制効能を、広く使用されている合成抗酸化剤であるトロロクス(Trolox)と比較して測定した。
【0034】
有機ラジカルであるDPPH(11−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル;1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)の還元によって(抗酸化剤は酸化される)発生する吸光度の変化を通じて、抗酸化能を評価する方法を使用した。上記で収得した抽出物である比較例1〜2、実施例1〜4及び参考例5〜7に対するDPPHの酸化が抑制され、吸光度が対照群に比べて減少する程度を測定し、対照群の吸光度に比べて50%以下の吸光度を示す濃度を有効抗酸化濃度として評価した。
【0035】
100μMのDPPH溶液(inエタノール)190μLに、上記の比較例、実施例及び参考例で収得した抽出物と対照試料を各々10μLずつ添加して反応液を製造し、37℃で30分間反応させた後、540nmの吸光度を測定した。対照試料としては、広く使用されている合成抗酸化剤であるトロロクス(Trolox)を使用した。各物質のDPPH分析結果は、下記表1に示し、IC50は、添加した試料によって吸光度が50%減少した時の試料濃度を意味する。
【0036】
【表1】
【0037】
上記表1から明らかなように、本発明による赤小豆、緑豆または黒豆の塩漬け発酵抽出物である実施例1〜4及び参考例5〜7は、発酵抽出物である比較例1及び単純抽出物である比較例2より抗酸化能に優れていることが分かる。
【0038】
また、赤小豆、緑豆または黒豆に海洋深層水と塩を添加した塩漬け発酵抽出物である実施例2〜4は、海洋深層水を添加しない赤小豆、緑豆または黒豆の単純塩漬け発酵抽出物である参考例5〜7と比べて、さらに優れた抗酸化能を示すことが分かる。
【0039】
また、実施例2〜4の場合、合成抗酸化剤であるトロロクスと同様の水準の抗酸化能を示すが、赤小豆、緑豆、黒豆及び海洋深層水の塩漬け発酵抽出物である実施例1の場合は、トロロクスよりも抗酸化能にさらに優れていることが分かる。
【0040】
[試験例2]コラゲナーゼ発現抑制効能測定
上記比較例1〜2の天然物抽出物並びに実施例1〜4及び参考例5〜7から得た天然物塩漬け発酵抽出物のコラゲナーゼ発現抑制能をトコフェロール(tocopherol)及びEGCGと比較して測定した。コラゲナーゼの発現程度が低いほどコラゲナーゼの発現抑制能が高く、皮膚内のコラーゲンの分解が少なく、したがって、生成されるしわの量が少なくなる。また、トコフェロール及びEGCGは、抗酸化物質であって、皮膚の表皮細胞を再生させて皮膚の老化を防止する機能があるものと知られた物質である。
【0041】
試験は、2.5%の牛胎児血清が含有されたDMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Media)培地が入っている96孔平板培養器(96-well microtiter plate)に、ヒトの繊維芽細胞を5,000細胞/孔(well)となるように添加し、90%程度成長するまで培養した。その後、無血清DMEM培地で24時間培養した後、無血清DMEM培地に溶解された上記比較例1〜2、実施例1〜4及び参考例5〜7、トコフェロール並びにEGCGを10-4モルの濃度で24時間処理した後、細胞培養液を採取した。
【0042】
採取した細胞培養液を商業的に利用可能なコラゲナーゼ測定器具(米国アマシャムファルマシア社)を利用してコラゲナーゼ生成程度を測定した。まず、1次コラゲナーゼ抗体が均一に塗布された96−孔平板(96-well plate)に採取された細胞培養液を入れ、3時間抗原−抗体反応を恒温槽で実施した。
【0043】
3時間後、発色団(choromophore)が結合された2次コラーゲン抗体を96−孔平板に入れ、さらに15分間反応させた。15分後、発色誘発物質を入れ、室温で15分間発色を誘発させ、さらに1M硫酸を入れ、反応(発色)を中止させれば、反応液の色は、黄色を帯び、反応進行の程度によって黄色の程度が異なって現われた。
【0044】
黄色を帯びる96−孔平板の吸光度を、吸光計を利用して405nmで測定し、下記数式1によってコラゲナーゼの合成の程度を計算した。この時、組成物を処理しない群で採取された細胞培養液の反応吸光度を対照群にした。すなわち、非処理群でのコラゲナーゼの発現程度を100にし、これと対比して組成物を処理した群でのコラゲナーゼ発現程度を求めた。結果を表2に示した。
【0045】
【数1】
【0046】
【表2】
【0047】
上記表2から明らかなように、発酵抽出物である比較例1及び単純抽出物である比較例2は、非処理群よりもコラゲナーゼ発現を抑制せず、コラゲナーゼの発現抑制能がないことを確認することができる。
【0048】
一方、本発明による赤小豆、緑豆または黒豆の塩漬け発酵抽出物である実施例1〜4及び参考例5〜7の場合は、コラゲナーゼ発現の程度に差異があるが、いずれも試験管内(in vitro)でコラゲナーゼの発現を抑制することを確認することができる。
【0049】
また、赤小豆、緑豆または黒豆に海洋深層水を添加した塩漬け発酵抽出物である実施例1〜4は、単純塩漬け発酵抽出物である参考例5〜7よりもさらに優れたコラゲナーゼ発現抑制能を有し、抗酸化物質として知られているトコフェロールより優れたコラゲナーゼ発現抑制能を有することを確認することができる。
【0050】
[試験例3]プロコラーゲン生成促進効能実験
上記比較例1〜2の天然物抽出物並びに実施例1〜4及び参考例5〜7から得た天然物塩漬け発酵抽出物のプロコラーゲン生成能をビタミンCと比較して測定した。プロコラーゲンは、コラーゲン生成誘導物質としてコラーゲン生成と老化防止に必要な物質であって、プロコラーゲンの生成程度が高いほどコラーゲンの生成程度が高くなり、したがって、皮膚しわの生成を防止することができる。また、ビタミンCは、コラーゲンの合成に必須成分であると知られている。
【0051】
試験は、2.5%の牛胎児血清が含有されたDMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Media)培地が入っている96孔平板培養器にヒトの繊維芽細胞を5,000細胞/孔となるように添加し、90%程度成長するまで培養した。その後、無血清DMEM培地で24時間培養した後、無血清DMEM培地に溶解された上記比較例1〜2、実施例1〜4及び参考例5〜7、ビタミンCを10-4モルの濃度で24時間処理した後、細胞培養液を採取した。24時間後に培地中に遊離されたプロコラーゲンの量をプロコラーゲンタイプ−1 C−ペプチドEIAキット(procollagen type-1 C-peptide EIA kit)(MK101、Takara、Japan)を使用して測定した。
【0052】
測定した結果は、下記数式2によってプロコラーゲンの生成程度を計算し、この時、組成物を処理しない群で採取されたプロコラーゲン生成程度を対照群にした。すなわち、非処理群でのプロコラーゲン生成程度を100にし、これと対比して組成物を処理した群でのプロコラーゲン生成程度を求めた。結果を表3に示した。
【0053】
【数2】
【0054】
【表3】
【0055】
上記表3から明らかなように、発酵抽出物である比較例1及び単純抽出物である比較例2は、非処理群よりもプロコラーゲン生成を促進しないことを確認することができる。
【0056】
一方、本発明による赤小豆、緑豆または黒豆の塩漬け発酵抽出物である実施例1〜4及び参考例5〜7の場合は、プロコラーゲン生成促進程度に差異があるが、いずれも試験管内(in vitro)でプロコラーゲンの生成を促進することを確認することができる。
【0057】
また、赤小豆、緑豆または黒豆に海洋深層水を添加した塩漬け発酵抽出物である実施例1〜4は、単純塩漬け発酵抽出物である参考例5〜7より優れたコラゲナーゼ発現抑制能を有し、実施例1〜4のプロコラーゲンの生成促進程度は、コラーゲンの合成に必須成分として知られているビタミンCと同様の水準であることを確認することができる。
【0058】
以下、本発明の赤小豆、緑豆及び黒豆に海洋深層水を添加した塩漬け発酵抽出物を含有する組成物の剤形例を説明するが、本発明の化粧料組成物がこれらの例に限定されるものではない。
【0059】
[剤形例1]栄養化粧水
赤小豆、緑豆及び黒豆に海洋深層水を添加した塩漬け発酵抽出物を含有する栄養化粧水を下記表4に記載された組成で製造した。
【0060】
【表4】
【0061】
[剤形例2]柔軟化粧水
赤小豆、緑豆及び黒豆に海洋深層水を添加した塩漬け発酵抽出物を含有する柔軟化粧水を下記表5に記載された組成で製造した。
【0062】
【表5】
【0063】
[剤形例3]栄養クリーム
赤小豆、緑豆及び黒豆に海洋深層水を添加した塩漬け発酵抽出物を含有する栄養クリームを下記表6に記載された組成で製造した。
【0064】
【表6】
【0065】
[剤形例4]マッサージクリーム
赤小豆、緑豆及び黒豆に海洋深層水を添加した塩漬け発酵抽出物を含有するマッサージクリームを下記表7に記載された組成で製造した。
【0066】
【表7】
【0067】
[剤形例5]パック
赤小豆、緑豆及び黒豆に海洋深層水を添加した塩漬け発酵抽出物を含有するパックを下記表8に記載された組成で製造した。
【0068】
【表8】