(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730764
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】溶射マスキングテープ
(51)【国際特許分類】
C23C 4/02 20060101AFI20150521BHJP
B05B 15/04 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
C23C4/02
B05B15/04 102
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-521389(P2011-521389)
(86)(22)【出願日】2009年8月6日
(65)【公表番号】特表2011-530006(P2011-530006A)
(43)【公表日】2011年12月15日
(86)【国際出願番号】US2009052990
(87)【国際公開番号】WO2010017380
(87)【国際公開日】20100211
【審査請求日】2011年2月1日
(31)【優先権主張番号】61/087,489
(32)【優先日】2008年8月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500149223
【氏名又は名称】サン−ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】シェリル・プリュドム
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ホルツィンガー
(72)【発明者】
【氏名】ジーン・ゴールドシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ・ツィヴァニス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・イー・ヌーナン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ジェイ・オースティン
【審査官】
祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表平08−503496(JP,A)
【文献】
特公昭52−027178(JP,B1)
【文献】
特開昭54−143463(JP,A)
【文献】
特開平04−039036(JP,A)
【文献】
特開平06−032909(JP,A)
【文献】
特表2005−534481(JP,A)
【文献】
特開平07−228786(JP,A)
【文献】
特開平06−093226(JP,A)
【文献】
特開昭62−277474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C4/00−6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および第2主面を有する基材と;
前記基材の前記第1主面の上にある表層であって、
4.13MPa超の最大抗張力を有するエラストマーから形成された表層と
を含み、
前記基材が、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、及びシリケート繊維;それらの任意の組み合わせからなる溶射マスキングテープ。
【請求項2】
前記エラストマーが架橋されている、請求項1に記載の溶射マスキングテープ。
【請求項3】
前記エラストマーがシリコーンゴムである、請求項1〜2のいずれか一項に記載の溶射マスキングテープ。
【請求項4】
前記基材の前記第2主面の上にある接着層をさらに含む、請求項1に記載の溶射マスキングテープ。
【請求項5】
前記表層の上にあるキスコート接着層をさらに含む、請求項4に記載の溶射マスキングテープ。
【請求項6】
前記基材と前記表層との間に、前記基材と前記接着剤層との間に、前記表層と前記キスコート接着剤層との間に、またはそれらの任意の組み合わせに配置された少なくとも1つの中間層をさらに含む、請求項5に記載の溶射マスキングテープ。
【請求項7】
高速オキシ燃料(HVOF)プロセス中の層間剥離及び分解に対する耐性を有する、請求項1に記載の溶射マスキングテープ。
【請求項8】
第1主面および第2主面を有する基材を提供する工程と;
前記基材の前記第1主面の上に、4.13MPa超の最大抗張力を有する架橋エラストマーから形成される表層を重ねる工程と
を含み、
前記基材が、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、及びシリケート繊維;それらの任意の組み合わせからなる溶射マスキングテープの形成方法。
【請求項9】
前記エラストマーがシリコーンゴムである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基材の前記第2主面上に接着層をコートする工程をさらに含む、請求項8〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記表層をコートする前に前記基材の前記第1主面の上に重ねるための中間層を提供する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記接着剤層をコートする前に前記基材の前記第2主面の上に重ねるための中間層を提供する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
キスコート接着剤層を前記表層一面にコートする工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記キスコート接着剤層をコートする前に前記表層の上に重ねるための中間層を提供する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、溶射マスキングテープに関する。
【背景技術】
【0002】
部品のプラズマまたはフレーム溶射は、保護金属またはセラミックコーティングを部品に適用させるための公知の技法である。かかるプロセスは、金属またはセラミックを融解させ、薄いコーティングを生成するために表面上に溶射することによって部品一面に溶射コートを提供する。プラズマ溶射コーティングは典型的には、プラズマガンまたは類似のデバイスを使用して達成される。
【0003】
プラズマ溶射プロセスでは、コーティングの適用を防ぐために部品の特定エリアをマスクすることが重要である。部品をマスクする理由には、コーティングが部品の隙間に入るのを防ぐこと、寸法を臨界範囲内に維持すること、軽量化などが含まれる。かかるマスキングを達成するために、コーティングが望まれないエリア一面にマスキングテープが適用される。
【0004】
マスキングテープは、表面処理として典型的に使用されるグリットブラスティングと実際のプラズマ溶射コーティングとからの隣接面の保護の両方で、優れた耐熱性および耐摩耗性を示さなければならない。かかるテープは、この厳しいプロセスの間ずっと剥がれてもすり減ってもならず、そして接着剤残渣を残すことなく部品表面から速く、容易に剥離するように設計される。
【0005】
従来のプラズマ溶射テープには、処理されていても処理されていなくてもよい、ガラス布が典型的には含まれる。プラズマ溶射テープは、低分子量液体シリコーン化合物上塗と高温シリコーン感圧接着剤下塗とを含む。好都合なハンドリングのために剥離ライナーが通常用いられる。他のタイプのマスキングテープは、ガラス繊維クロスに積層された薄いアルミ箔を含む。
【0006】
かかるマスキングテープは典型的なプラズマ溶射プロセスで有効であるが、それらは、最近導入された、高速オキシ燃料(HVOF)プロセスとして知られるより厳しいプロセスでは有効ではない。このプロセスは、粉末が排気流中へ注入される、スプレーガンが本質的にロケットである連続燃焼プロセスである。排気流は極超音速(毎秒数千フィート)で出ていく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、改良された溶射マスキングテープおよび改良されたテープの形成方法が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特定の実施形態では、溶射マスキングテープは、第1主面および第2主面を有する基材と、基材の第1主面の上にある表層とを含む。この表層は、
4.13MPa超の最大抗張力を有するエラストマーから形成される。
【0009】
ある実施形態では、溶射マスキングテープは、第1主面および第2主面を有する基材と、基材の第1主面の上にある表層とを含む。この表層は、高コンシステンシーゴム状物質(HCR)から形成される。このテープは、
高速オキシ燃料(HVOF
)プロセス中の
層間剥離及び分解に対する耐性を有する。
【0010】
別の実施形態では、溶射マスキングテープの形成方法は、第1主面および第2主面を有する基材を提供する工程と基材の第1主面の上に表層を重ねる工程とを含む。この表層は、
4.13MPa超の最大抗張力を有するエラストマーから形成される。
【0011】
添付の図面を参照することによって、本開示はより良く理解され、その多数の特徴および利点は当業者に明らかにされる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】溶射マスキングテープの形成方法を例示するフローチャートである。
【
図3】物品の溶射コート法を例示するフローチャートである。
【
図4】例示的な溶射マスキングテープについての模擬HVOF試験データのチャートを含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特定の実施形態では、溶射マスキングテープは、第1主面および第2主面を有する基材を含む。溶射マスキングテープは、第1主面の上にある表層を含む。ある実施形態では、表層は、いかなる介在層またはタイ層もなく基材の第1主面上に直接配置されても、それと直接接触してもよい。特に、表層は、基材に望ましい接着性を提供する。さらに、溶射マスキングテープは、高温、高圧、および高速オキシ燃料(HVOF)プロセスに関連した高速に対する望ましい耐性を有する。
【0014】
溶射マスキングテープ100の例示的な実施形態は
図1に例示される。溶射マスキングテープは、第1主面104および第2主面106を有する基材102を含む。基材102の第1主面104一面に表層108が配置される。ある実施形態では、接着剤層110が基材102の第2主面106一面に配置されてもよい。溶射マスキングテープ100は、基材102と表層108との間に配置される中間層(例示されていない)を含んでもよい。ある実施形態では、溶射マスキングテープ100は、基材102と接着剤層110との間に配置される中間層(例示されていない)を含んでもよい。さらに、溶射マスキングテープ100は、表層108の上にあるキスコート接着剤層112を含んでもよい。ある実施形態では、溶射マスキングテープ100は、表層108とキスコート接着剤層112との間に配置される中間層(例示されていない)を含んでもよい。
【0015】
溶射マスキングテープの基材102は柔軟であってもよく、様々な材料でできていてもよい。例示的な柔軟性基材には、有機または無機材料が含まれる。基材は織られたまたは不織の高温材料(すなわち、約300°F超の温度に耐えることができる材料)であってもよい。例示的な基材には、シリコーン、ポリウレタン、アクリル、アラミド、ポリアミドなどの材料;ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、およびシリケート繊維を含むクロス;それらの任意の組み合わせまたはそれらの任意の処理バージョンが含まれる。ある実施形態では、クロスは織られている。ある実施形態では、クロスは、フェルトなどの、不織である。特定の例では、基材は、耐擦り切れ性、接着移行、層接合などを向上させるために処理されてもよい。任意の好適な処理剤、プライマー、またはコーティングが溶射マスキングテープ用途向けに基材を改善するために使用されてもよい。例えば、基材材料には、エポキシコート、シリコーンバリアコートなどが含まれてもよい。
【0016】
典型的には、基材102は、約1ミル〜約10ミルなどの、約10ミル以下の厚さを有する。例えば、基材102は約2ミル〜約4ミルの厚さを有してもよい。
【0017】
例示的な実施形態では、表層108は、望ましいエラストメリック特性を有する材料から形成される。例えば、材料は、約30〜約80、またはさらに約40〜約70などの、約20〜約90のデュロメーター(ショア(Shore)A)を有するエラストマー(すなわち、エラストマー化合物)である。さらに、エラストマーは、約
0.969g/
cm3〜約
4.15g/
cm3、またはさらに約
1.11g/
cm3〜約
13.8g/
cm3などの、約
0.83g/
cm3〜約
8.30g/
cm3の密度を有してもよい。ある実施形態では、エラストマーは、約300%超などの、約250%超の伸びを有する。ある実施形態では、エラストマーは、約75,000超、またはさらに約100,000超などの、約25,000超の数平均分子量(Mn)を有してもよい。
【0018】
ある実施形態では、エラストマーは、ASTM D412によって測定される高い引張強度を有する。例示的な実施形態では、エラストマーは、約
4.48MPa超など、約
4.82MPa超など、
5.17MPa超、またはさらに約
5.51MPa超などの、約
4.13MPa超の最大抗張力を有する。ある実施形態では、エラストマーはASTM D412によって測定される低い引張永久歪みを有する。
【0019】
例示的な実施形態では、エラストマーは、約40%未満など、約30%未満など、約20%未満など、約15%未満など、約10%未満など、約5%未満、またはさらに約2%未満などの、約50%未満の引張永久歪みを有する。ある実施形態では、エラストマーは、高い引張強度と低い引張永久歪みとの組み合わせを有する。例えば、エラストマーは、約
4.13MPa超の引張強度と約50%未満の引張永久歪みとを有してもよい。ある実施形態では、エラストマーは、約
4.48MPa超の引張強度と約20%未満の引張永久歪みとを有してもよい。ある実施形態では、エラストマーは、約
5.51MPa超の引張強度と約10%未満の引張永久歪みとを有してもよい。
【0020】
ある実施形態では、望ましいエラストメリック特性を有する材料は、架橋可能なエラストメリックポリマーである。ある実施形態では、エラストマーは、フィラー、滑剤、安定剤、架橋剤、架橋促進剤、接着助剤、分散助剤、防止剤、着色剤、顔料、それらの任意の組み合わせなどを含むが、それらに限定されない添加剤を含有してもよい。例えば、セラミック粉末、金属、ガラス、金属酸化物、非晶質シリカ、またはそれらの組み合わせなどの難燃性フィラーが使用されてもよい。
【0021】
ある例では、表層108はシリコーンゴムを含んでもよい。シリコーンゴムは、触媒および他の任意選択的な添加剤を含んでもよい。ある例では、シリコーン調合物は、高コンシステンシーゴム状物質(HCR)であってもよい。ある実施形態では、高コンシステンシーゴム状物質は、過酸化物触媒されてもよい。
【0022】
ある実施形態では、表層108の材料は、基材102上へ圧延される。ある実施形態では、表層108の材料は、部分硬化されてもまたは完全硬化されてもよい。例えば、生じた複合材料は、表層108を架橋するかまたは硬化させるのに十分な時間、熱、圧力、またはそれらの組み合わせに暴露される。表層108を架橋するために好適な他の方法には、x線放射線、ガンマ放射線、紫外電磁放射線、可視光放射線、電子ビーム(e−ビーム)放射線、またはそれらの任意の組み合わせを使用するなどの、放射線が含まれてもよい。熱硬化は典型的には、約150℃より高い温度で起こる。架橋中にかけられてもよい典型的な圧力は、約100psi〜約30,000psi、またはさらに約200psi〜約10,000psiなどの、約0psi〜約50,000psiの範囲にある。ある実施形態では、架橋中にかけられる圧力は、約500psi超など、約1000psi超など、約5,000psi超、またはさらに約8,000psi超などの、約150psi超であってもよい。紫外(UV)放射線には、170nm〜220nmの範囲などの、170nm〜400nmの範囲のある波長でのまたは複数の波長での放射線が含まれてもよい。ある例示的な実施形態では、表層108は、熱/圧力法によって硬化されてもよい。
【0023】
典型的には、表層108は、約5ミル〜約100ミル、またはさらに約10ミル〜約30ミルなどの、約0.5ミル〜約200ミルの厚さを有する。特定の実施形態では、表層108は基材102に直接接合され、それと直接接触する。例えば、表層108は、いかなる介在層もなく基材102に直接接合されても、それと直接接触してもよい。ある実施形態では、任意選択的な中間層(例示されていない)が表層108と基材102との間に配置されてもよい。
【0024】
溶射マスキングテープ100はまた、任意選択的に、基材102の第2主面106の上にある接着剤層110を含んでもよい。ある実施形態では、接着剤層110は、いかなる介在層またはタイ層もなく基材102の第2主面上に直接配置されてもよく、それと直接接触する。ある実施形態では、任意選択的な中間層が接着剤層110と基材102との間に配置されてもよい。接着剤層110は、HVOFプラズマプロセスに耐える、ならびにそれが直接接触する層に接着することができる任意の好適な材料である。ある実施形態では、接着剤層110はポリマー成分を含む。ポリマー成分は、モノマー分子、オリゴマー分子、ポリマー分子、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。ポリマー成分は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を形成することができる。例示的なポリマーには、シリコーン、アクリル、ゴム、ウレタンなどが含まれる。ある例示的な実施形態では、接着剤層110は感圧接着剤である。例えば、感圧接着剤はシリコーンポリマーベースの接着剤であってもよい。ある実施形態では、接着剤層110は、過酸化物硬化シリコーン感圧接着剤(PSA)から形成される。ある実施形態では、シリコーン感圧接着剤には、高分子量線状シロキサンポリマーおよび、MQ樹脂などの、高縮合シリケート粘着付与樹脂が含まれる。例示的なシリコーンPSAには、ポリマー鎖端にシラノールまたはビニル官能基を有する、ポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリマー、ポリジフェニルシロキサン(PDPS)ポリマー、およびポリジメチルジフェニルシロキサン(PDMDPS)ポリマーが含まれる。例示的な実施形態では、接着剤層110は、高温メチルフェニルシリコーン接着剤である。さらに別の実施形態では、2つ以上のシリコーン感圧接着剤のブレンドが使用されてもよい。
【0025】
接着剤層110は、セラミック粉末、金属、ガラス、金属酸化物、非晶質シリカ、またはそれらの組み合わせであってもよい、少なくとも1つの非燃焼性接着剤を任意選択的に含んでもよい。考えられる耐火性添加剤の例は、酸化鉄、酸化チタン、窒化ホウ素、酸化ジルコニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウムなどである。
【0026】
ある例では、接着剤層110は、エネルギー源によって硬化されてもよい。エネルギー源の選択は、調合物の化学的性質にある程度依存する。使用されるエネルギーの量は、接着剤層の厚さおよび密度にだけでなく、前駆体ポリマー成分中の反応性基の化学的性質にも依存する。露光などの、硬化パラメーターは一般に調合物依存性であり、調節することができる。硬化の好適な形態には、例えば、熱硬化、圧力、またはx線放射線、ガンマ放射線、紫外電磁放射線、可視光放射線、電子ビーム(e−ビーム)放射線、またはそれらの任意の組み合わせを使用するなどの、放射線が含まれる。
【0027】
典型的には、接着剤層110は、約0.5ミル〜約10ミルなど、約1ミル〜約5ミル、さらに約2ミル〜約3ミルなどの、約15ミル未満の厚さを有する。特定の実施形態では、接着剤層110は、基材102に直接接合され、それと直接接触する。例えば、接着剤層110は、いかなる介在層もなく基材120に直接接合されても、それと直接接触してもよい。
【0028】
ある実施形態では、溶射マスキングテープ100は、任意選択的な中間層(例示されていない)を含んでもよい。ある実施形態では、中間層は、基材102と表層108との間、基材102と接着剤層110との間、表層108とキスコート接着剤層112との間に、またはそれらの任意の組み合わせに配置されてもよい。例示的な中間層は、溶射マスキングテープ100の機械的特性を向上させる任意の材料を含んでもよい。ある実施形態では、中間層は、溶射マスキングテープの耐火性を向上させる材料である。中間層は有機または無機材料であってもよい。約200°F超、またはさらに約300°F超などの、約100°F超の温度に耐えることができる任意の好適な有機または無機材料を使用することができる。例えば、中間層は、アルミニウム、銅、鋼などの、金属箔;KEVLAR(登録商標);セラミックベースのシート;ガラスベースのシート;シリコーンエラストマー;ウールペーパー(wool paper);カーボン紙;ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミド紙、ポリアミドフェルトなどのポリマー材料を含んでもよい。例示的な材料には、高架橋シリコーン接着剤、ウレタンベースの接着剤もしくはコーティング、シリル化ウレタン接着剤、LSR(液体シリコーンエラストマー)、エポキシベースの接着剤もしくはコーティング、アクリル、およびそれらの組み合わせなどの感圧接着剤(PSA)が含まれる。溶射マスキングテープは、同じまたは異なる材料の複数の中間層などの、少なくとも1つの中間層を含んでもよい。特定の実施形態では、溶射マスキングテープは、2つの異なる材料を含む2つの中間層を含んでもよい。例えば、中間層は、シリコーンエラストマーの層および感圧接着剤の層を含んでもよい。典型的には、任意選択的な中間層は、約0.5ミル〜約20ミルなどの、約20ミル以下の厚さを有する。
【0029】
例示的な実施形態では、中間層はバリア性能を向上させる。バリア性能には、例えば、シリコーン移行、過酸化物移行、過酸化物分解生成物移行、ガス移行、湿気移行、またはそれらの任意の組み合わせに対するバリア特性が含まれる。上記の成分の移行は、テープ性能(すなわち、長期間にわたる基材、接着剤、および/またはキスコート接着剤性能および/または中間層接着性などの)、構成材料性能(構成材料は、テープが適用される物体である)、またはそれらの組み合わせに悪影響を及ぼし得る。
【0030】
ある実施形態では、キスコート接着剤層112が溶射マスキングテープに任意選択的に含まれてもよい。例えば、キスコート接着剤層112は表層108の上にあってもよい。ある実施形態では、キスコート接着剤層112は、いかなる介在層もなく表層108に直接接合されても、それと直接接触してもよい。ある実施形態では、任意選択的な中間層がキスコート接着剤層112と表層108との間に配置されてもよい。キスコート接着剤層112は、接着剤層110について記載された任意の好適な材料から形成されてもよい。さらに、キスコート接着剤層112は、約0.5ミル〜約10ミルなど、約1ミル〜約5ミル、またはさらに約2ミル〜約3ミルなどの、約15ミル未満の厚さを有してもよい。
【0031】
ある例では、キスコート接着剤層112は、エネルギー源によって硬化されてもよい。エネルギー源の選択は、キスコート接着剤層112の調合物の化学的性質にある程度依存する。使用されるエネルギーの量は、調合物の厚さおよび密度にだけでなく、前駆体ポリマー成分中の反応性基の化学的性質にも依存する。露光などの、硬化パラメーターは一般に調合物依存性であり、調節することができる。硬化の好適な形態には、例えば、熱硬化、圧力、またはx線放射線、ガンマ放射線、紫外電磁放射線、可視光放射線、電子ビーム(e−ビーム)放射線、またはそれらの任意の組み合わせを使用するなどの、放射線が含まれる。
【0032】
ある実施形態では、1つ以上の剥離ライナー(例示されていない)が、溶射マスキングテープ100に任意選択的に含まれてもよい。例えば、剥離ライナーは、溶射マスキングテープに含まれる任意の接着剤層の上にあってもよい。ある実施形態では、剥離ライナーは接着剤層110の上にあってもよい。接着剤層110の物理的特性または機能特性を変えることなく剥離ライナーが容易に、かつ手動で除去されることを可能にする任意の好適な材料、寸法、または形態が使用されてもよい。例えば、それは、接着剤層110を覆う薄層ウェブであってもよい。あるいはまた、それは、ポリオレフィンまたはPVCなどの、波形フィルムまたはエンボスフィルムであってもよい。それはまた、接着剤層110に接合しないフルオロシリコーンコートされた剥離層でコートされた平滑なプラスチックフィルムまたは紙であってもよい。類似の特性を有する他の剥離ライナーが同様に考えられる。接着剤層上に剥離ライナーを重ねる任意の好適な方法が同様に考えられる。
【0033】
溶射マスキングテープに含まれる層のどれでも、密度、色、靱性、耐熱性、耐紫外線性、耐オゾン性、粘着性、耐摩耗性などを調節するために任意の好適な添加剤、フィラーなどを含んでもよい。さらに、任意の数の層が構想されてもよい。
【0034】
研磨品の形成方法の例示的な、非限定的な実施形態は
図2に示され、ブロック200で始まる。ブロック200で、第1および第2主面を有する基材が提供される。ブロック202に見られるように、表層が基材の上に重ねられる。表層の上重ねは、表層の圧延、押出、コーティング、または射出成形によって行われてもよい。例示的な実施形態では、表層は基材上へ圧延される。ブロック204に見られるように、表層は架橋されて(硬化されて)もよい。架橋は、適切なエネルギー源の適用によって起こり得る。例示的な実施形態は、Rotocureプレスによって熱エネルギーおよび圧力を使用する。ある実施形態では、基材は、基材上へ表層を重ねる前に処理されてもよい。処理には、耐擦り切れ性、接着移行、層接合などの基材の特性を向上させるための任意の好適なプライマー、処理剤、またはコーティングが含まれてもよい。ある実施形態では、任意選択的な中間層が、表層を上に重ねる前に基材上に配置されてもよい。中間層を配置する任意の方法が、中間層として使用される材料に依存して構想されてもよい。例えば、中間層はコートされてもまたは積層されてもよい。例えば、中間層は、表層を上に重ねる前に基材の第1主面上に提供されてもよい。
【0035】
ブロック206に見られるように、基材の第2主面は接着剤層でコートされてもよい。コーティングは接着剤層の材料に依存し、コーティングには、押出コーティング、エマルジョンコーティング、または溶液コーティングが含まれてもよい。ある実施形態では、基材は、基材を接着剤層でコートする前に処理されてもよい。処理には、基材と接着剤層との間の接着性を向上させるための任意の好適なプライマー、処理剤、またはコーティングが含まれてもよい。ブロック208に見られるように、接着剤層は、任意の好適なエネルギー源によって硬化されてもよい。エネルギー源の選択は、調合物の化学的性質にある程度依存する。ある実施形態では、任意選択的な中間層が、基材の第2主面の上に接着剤層を提供する前に基材の第2主面上に提供されてもよい。
【0036】
いったん接着剤層が硬化されると、溶射マスキングテープが形成される。あるいはまた、任意選択的なキスコート接着剤層が表層一面に適用されてもよい。任意選択的な中間層は、キスコート接着剤層を適用する前に表層一面に適用されてもよい。ある実施形態では、1つ以上の剥離ライナーが接着剤層および/または任意選択的なキスコート接着剤層一面に置かれてもよい。ある実施形態では、溶射マスキングテープはポスト硬化されてもよい。本方法は、状態210で終わることができる。
【0037】
溶射マスキングテープは、ストリップ、リボン、またはテープに形成されてもよい。特定の例では、溶射マスキングテープは、長さ、幅、および厚さ寸法を有するテープまたはリボンの形態にある。長さ対幅寸法の比は、少なくとも約20:1、またはさらに約100:1などの、少なくとも約10:1である。
【0038】
物品の溶射コート法は
図3に見ることができ、ブロック300で始まる。ブロック300で、物品の溶射コート法は、溶射マスキングテープの部分を物品上に置く工程を含む。典型的には、ブロック302で、物品は溶射コートされる。ある実施形態では、物品は、HVOFなどの、高速、高温、および高圧プラズマ溶射プロセスで溶射コートされる。ブロック304で、溶射マスキングテープは物品から除去されてもよい。本方法は状態306で終了することができる。
【0039】
例示的な実施形態では、本溶射マスキングテープは有利には、HVOFプロセス中の層間剥離および分解に対する改善された耐性を提供する。改善された耐性は、下の実施例1の方法に従って溶射試験によって測定される。例えば、本溶射マスキングテープは、10パスのコーティング後にも破損せず、除去時に層間剥離せず、鋼板試験クーポンにくっつかない。例示的な実施形態では、本溶射マスキングテープは、マスクされたエリアと溶射エリアとの界面で明確な境界画定および描写を提供する、すなわち、テープ除去後のコーティング線の鮮明さは良好である。
【実施例】
【0040】
実施例1
物品を性能調査のために調製する。具体的には、シリコーン高コンシステンシーゴム状物質化合物(約75,000超の数平均分子量の)を、おおよそ18〜20ミルの厚さで基材の第1表面上へ圧延し、約150℃の温度および約600psiの圧力でRotoCureプレスを使用して熱硬化させる。基材は、基材の第2表面上におおよそ1〜4ミル厚さのシリコーン感圧接着剤コーティング付きの2ミルのガラス繊維処理クロスである。
【0041】
物品を模擬HVOF試験について試験する。HVOFシステムは、DJ9W機がハイブリッド水冷トーチを取り付けられた状態のSulzer DJシステムである。コーティング材料は、13ミクロンの平均粒径および2〜27ミクロンの範囲を有するSulzer 73SF−NS WCCoである。試験クーポンは、
5.08cm×
10.16cmのテープサイズの#24酸化アルミニウムでグリットブラストされた、
5.08cm×
15.24cm13GA(
0.229cm)冷間圧延鋼である。熱電対を、接着剤温度を得るためにテープの下に配置し、一熱電対を試験クーポンの中間に配置し、一つを裏面から試験クーポンおよびテープを通って経路を定める。
【0042】
コーティングを1溶射パス当たり8秒間で10回溶射パスする(80秒の合計時間およびサンプルから
22.86cmの距離で)。コーティングの厚さはおおよそ4ミルである。エアナイフ冷却は60psiである。ロボット速度は、おおよそ1900℃の粒子温度および約570m/秒の粒子速度で750mm/秒である。結果は
図4に見ることができる。このテープは、ステンレススチールパネル上に置かれ、全ての他の社内のおよび競合他社のテープサンプルよりも優れた性能を有する。
【0043】
実施例2
溶射マスキングテープを生産パイロットランのために調製する。溶射マスキングテープの組成は、実施例1のテープと等価であるが、約3.7ミルの厚さを有するガラスクロス基材を使ってである。試験結果は表1に見ることができる。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例3
2つの溶射マスキングテープを機械的試験のために調製する。第1の溶射マスキングテープ(1)は、実施例1のテープと等価であるが、高コンシステンシーゴム状物質(HCR)表層の上にキスコート接着剤層、および基材の第2表面とシリコーン感圧接着剤コーティングとの間にシリル化ウレタン接着剤中間層付きである。第2の溶射マスキングテープ(2)は、基材の第1表面と高コンシステンシーゴム状物質(HCR)表層との間にシリコーンエラストマー中間層、およびガラス繊維基材と外側感圧接着剤層との間に高架橋シリコーン接着剤付きで、本実施例の第1の溶射マスキングテープと等価である。鋼への引きはがし粘着力を、ASTM D1000を用いて試験する。試験結果は表2に見ることができる。
【0046】
【表2】
【0047】
試験された両溶射マスキングテープは、鋼への引きはがし粘着力に関して望ましいパーセント変化を有する。一週間の老化試験後に約30%以下の引きはがし粘着力損失(すなわち少なくとも約70%の引きはがし粘着力保持)を有することが望ましい。具体的には、120°Fで1週間熱老化された後に引きはがし粘着力の約5%〜約10%以下の変化があった。
【0048】
上に開示された主題は、例示的であり、限定的ではないと考えられるべきであり、添付のクレームは、本発明の真の範囲内に入る、全てのかかる修正、増強、および他の実施形態を包含することを意図される。