特許第5730766号(P5730766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730766
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】フラバン−3−オール含有食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/226 20060101AFI20150521BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20150521BHJP
   A23F 3/16 20060101ALN20150521BHJP
【FI】
   A23L1/226 F
   A23L2/00 B
   !A23F3/16
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-525487(P2011-525487)
(86)(22)【出願日】2009年7月31日
(65)【公表番号】特表2012-501634(P2012-501634A)
(43)【公表日】2012年1月26日
(86)【国際出願番号】EP2009059940
(87)【国際公開番号】WO2010026003
(87)【国際公開日】20100311
【審査請求日】2012年6月22日
(31)【優先権主張番号】08163749.8
(32)【優先日】2008年9月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590003065
【氏名又は名称】ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ロベルトゥス・ヨハネス・ガウカ
(72)【発明者】
【氏名】アフロディーテ・ロールバコス
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特表平05−500756(JP,A)
【文献】 特開2005−312382(JP,A)
【文献】 特開2003−169641(JP,A)
【文献】 特表平07−504810(JP,A)
【文献】 特表2001−520865(JP,A)
【文献】 特表2001−520866(JP,A)
【文献】 日本食品科学工学会誌,1996年,Vol.43, No.11,pp.1197-1204
【文献】 茶業研究報告,2002年,No.94,pp.60-64
【文献】 日本味と匂学会誌,2005年,Vol.12, No.3,pp.397-400
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/22−1/237,1/24
A23F 3/00−3/42
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Food Science and Tech Abst(FSTA)(ProQuest Dialog)
Foodline Science(ProQuest Dialog)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテキン、テアフラビン、テアルビジン、およびそれらの混合物に起因する苦味を低減または除去するための、
4-フェニルブタン酸、
3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパン酸、
3,4,5-トリメトキシケイ皮酸、
3-(4-メトキシフェニル)プロパン酸、
4-メトキシケイ皮酸、
2,4-ジメトキシケイ皮酸、
3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸、
3,4-ジメトキシケイ皮酸、
3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸、および
3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸
の1つまたは複数である化合物の使用。
【請求項2】
苦味がカテキンに起因する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
0.01重量%を超えるカテキン、テアフラビン、テアルビジン、およびそれらの混合物、並びに有効量の少なくとも1つの化合物を含む組成物であって、少なくとも1つの化合物が、
4-フェニルブタン酸、
3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパン酸、
3,4,5-トリメトキシケイ皮酸、
3-(4-メトキシフェニル)プロパン酸、
4-メトキシケイ皮酸、
2,4-ジメトキシケイ皮酸、
3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸、
3,4-ジメトキシケイ皮酸、
3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸、および
3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸
の1つまたは複数である組成物。
【請求項4】
少なくとも0.05重量%のカテキン、テアフラビン、テアルビジン、およびそれらの混合物を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
カテキン、テアフラビン、テアルビジン、およびそれらの混合物が1種または複数のカテキンである、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの化合物の量が0.05〜1.5重量%である、請求項3から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
料である、請求項3から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
カテキン、テアフラビン、テアルビジン、およびそれらの混合物を含む第1の物質および少なくとも1つの化合物を含む第2の物質を提供するステップと、2つの物質を混合するステップと、組成物を回収するステップとを含む、請求項3から7のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項9】
第1の物質が1種または複数のカテキンを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラバン-3-オールに起因する苦みを低減または除去するための化合物および組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
水を除いて、茶は人が摂取する最も人気のある飲料である。茶は非常に清涼感があり、温かくしてまたは冷やして提供することができ、長年の間市販されている。例えばLipton(登録商標)は、茶の世界有数のブランドであり、Unileverによって110カ国を超えて入手可能となっている。
【0003】
今日、現代の科学者らは、フラボノイド(フラバン-3-オール、フラボノール、およびフラボノールグルコシドを挙げることができる)として知られる天然の抗酸化剤の独特な組合せを有する、茶の興味をそそる潜在的可能性を模索している。定期的に摂取すれば、茶は血管機能、戦闘疲労症の改善、コレステロール値の低下、および活力感の増大に役立ち得る。
【0004】
研究によって、茶の中に見出されるカテキンなどのフラバン-3-オールは多くの健康上の利益を有することが分かっており、エピガロカテキンガラート、エピカテキン、エピカテキンガラート、およびエピガロカテキンは、生理的活性に良い影響を与えることが示されており、抗アレルギー剤および大脳機能活性化剤としてのそれらの使用が提案されている。
【0005】
フラバン-3-オールに関連する多くの有益な寄与の点から見て、高濃度のフラバン-3-オールを有する、飲料および食品などの摂取可能な組成物を配合することが望ましい。残念ながら、フラバン-3-オールの量を増加させると、粗悪な官能特性、特に苦味を有する可能性のある末端使用製品につながる恐れがある。
【0006】
米国特許出願2003/0096050号は、カテキン(すなわちフラバン-3-オール)および没食子酸を含有する食品組成物を開示しており、ここで没食子酸は一定の苦味緩和効果を有すると主張されている。したがって、苦味が低減された、高濃度のフラバン-3-オールを含む摂取可能な組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願2003/0096050号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Tea-Cultivation to consumption」、K.C.WillsonおよびM.N.Clifford(Eds)、1992、Chapman & Hall、London、555〜601頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
定義
フラバン-3-オール
本明細書において使用する場合、用語「フラバン-3-オール」は、カテキン、テアフラビン、テアルビジン、およびそれらの混合物の総称として使用される。
【0010】
カテキン
本明細書において使用する場合、用語「カテキン」は、カテキン、ガロカテキン、カテキンガラート、ガロカテキンガラート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガラート、エピガロカテキンガラート、およびそれらの混合物の総称として使用される。
【0011】
テアフラビン
本明細書において使用する場合、用語「テアフラビン」は、テアフラビン、イソテアフラビン、ネオテアフラビン、テアフラビン-3-ガラート、テアフラビン-3'-ガラート、テアフラビン-3,3'-ジガラート、エピテアフラビン酸、エピテアフラビン酸-3'-ガラート、テアフラビン酸、テアフラビン酸-3'-ガラート、およびそれらの混合物の総称として使用される。これらの化合物の構造は周知である(例えば「Tea-Cultivation to consumption」、K.C.WillsonおよびM.N.Clifford(Eds)、1992、Chapman & Hall、London、555〜601頁の17章の構造xi〜xxを参照のこと)。用語テアフラビンは、これらの化合物の塩の形態を含む。好ましいテアフラビンは、テアフラビン、テアフラビン-3-ガラート、テアフラビン-3'-ガラート, テアフラビン-3,3'-ジガラート、およびそれらの混合物であるが、それはこれらのテアフラビンが紅茶などの天然源において最も豊富であるためである。
【0012】
飲料
本明細書において使用する場合、用語「飲料」は、人間が摂取するのに適した実質的に水性の飲用可能な組成物を指す。好ましくは飲料は、飲料の重量の少なくとも85%の水、より好ましくは少なくとも90%の水、最も好ましくは95%〜99.9%の水を含む。
【0013】
茶固形物
本明細書において使用する場合、用語「茶固形物」は、植物であるカメリアシネンシス中国種(Camellia sinensis var. sinensis)および/またはカメリアシネンシスアッサム種(Camellia sinensis var. assamica)の葉から抽出可能な乾燥物質を指す。この物質はいわゆる「発酵」のステップに供されていてもよく、このステップにおいて、これは「紅茶」製造の初期段階の間に放出されるある種の内在性酵素によって酸化される。この酸化は、オキシダーゼ、ラッカーゼ、およびペルオキシダーゼなどの内在性酵素の作用によって補われることさえもある。あるいは、この物質を部分的に発酵させているか(「ウーロン」茶)またはほとんど発酵させていなくてもよい(「緑茶」)。
【0014】
茶をベースとした飲料
本明細書において使用する場合、用語「茶をベースとした飲料」は、少なくとも0.01重量%の茶固形物を含む飲料を指す。好ましくは茶をベースとした飲料は、0.04〜3重量%、より好ましくは0.06〜2%、最も好ましくは0.1〜1%の茶固形物を含む。
【0015】
高濃度のフラバン-3-オール
本明細書において使用する場合、用語「高濃度のフラバン-3-オール」は、少なくとも0.01重量%のフラバン-3-オールを含む組成物を指す。
【0016】
有効量
本明細書において使用する場合、用語「有効量」は、フラバン-3-オールに起因する苦味を低減または除去するための、少なくとも0.01重量%の化合物(1種または複数)を指す。
【0017】
含む
用語「含む(comprising)」は、その後に記載されるいかなる成分にも限定することを意図せず、むしろ機能的重要性の大小にかかわらず明記されない成分を包含することを意図する。言い換えれば、列挙されるステップ、成分、または選択肢は網羅的である必要はない。単語「含む(including)」または「有する」を使用する場合はいつでも、これらの用語は上記で定義される「含む(comprising)」と同義である。
【0018】
ここで本発明者らは、高濃度のフラバン-3-オールを有する摂取可能な組成物における苦味を、特定の化合物を使用することによって除去できることを見出した。したがって、第1の態様において、本発明はフラバン-3-オールに起因する苦味を低減または除去するための式(I)の化合物:
【0019】
【化1】
【0020】
の使用を提供し、式中、R1はC2〜C3の飽和または不飽和の二価炭化水素基を表し、
nは0〜3の整数であり、
各Xは独立にC1〜C3アルキルオキシおよびOHから選択され、
nが0である場合、R1はC3飽和二価炭化水素基またはC2〜C3不飽和二価炭化水素基であり、
nが0を超える場合、化合物は式(II)を有する。
【0021】
【化2】
【0022】
本発明者らは、フラバン-3-オールに由来する苦味の生理的な原因について広範囲の研究を行ってきた。ヒトの舌は約25の関連する受容体のファミリーを介して苦味を知覚し、その各々は別々の1組の苦味の分子を検出する。理論に拘束されることを望まないが、フラバン-3-オールの苦味は、フラバン-3-オールによって特定の受容体TAS2R39が活性化されることに起因すると本発明者らは考えている。さらに本発明者らは、式(I)の化合物が特異的に受容体TAS2R39に結合し、その活性化と拮抗することを見出した。したがって本発明による化合物は、フラバン-3-オールによる受容体TAS2R39の活性化を阻止または低減し、フラバン-3-オールの苦味が緩和される。より具体的には、式(I)による化合物は、TAS2R39の阻害において没食子酸よりも効果的である。
【0023】
第2の態様において、本発明は0.01重量%を超えるフラバン-3-オールおよび有効量の少なくとも1つの式(I)の化合物を含む組成物を提供する。本発明のこの態様の利点は、そのような組成物によって、消費者がより少数回の例えば高濃度フラバン-3-オールの茶を摂ることによりフラバン-3-オールの必要摂取量を達成することが可能となり、それが通常もたらすことになる増大した苦味の嫌悪効果を伴わないことである。
【0024】
第3の態様において、本発明は組成物の製造方法を提供し、この方法はフラバン-3-オールを含む第1の物質および少なくとも1つの式(I)の化合物を含む第2の物質を提供するステップと、2つの物質を混合するステップと、組成物を回収するステップとを含む。
【0025】
最後の態様において、本発明は、フラバン-3-オールに起因する苦味を低減または除去する方法を提供し、この方法は第1の物質および第2の物質を同時にまたは連続して摂取するステップを含み、第1の物質がフラバン-3-オールを含み、第2の物質が有効量の少なくとも1つの式(I)の化合物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、高濃度のフラバン-3-オールを含有し、フラバン-3-オールの苦味が低減された、摂取可能な組成物を対象とする。
【0027】
本発明は、フラバン-3-オールの苦味の阻止においてより効果的である式(I)の化合物の使用を提供する。この化合物はカテキンの苦味の阻止において特に効果的であり、したがって好ましい使用法はカテキンに起因する苦味を阻止するためのものである。特に効果的で、そのため好ましい化合物は、式(I)の各Xが独立にメトキシおよびOHから選択される化合物である。あるいは好ましい化合物は、式(I)のnが0である場合、R1がC2不飽和二価炭化水素基またはC3飽和二価炭化水素基である化合物である。特に好ましい化合物は、
ケイ皮酸、
4-フェニルブタン酸、
3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパン酸、
3,4,5-トリメトキシケイ皮酸、
3-(4-メトキシフェニル)プロパン酸、
4-メトキシケイ皮酸、
2,4-ジメトキシケイ皮酸、
3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸、
3,4-ジメトキシケイ皮酸、
4-ヒドロキシケイ皮酸、
3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸、
3,4-ジヒドロキシケイ皮酸、
3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸、
3-メトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸、
4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシケイ皮酸、
およびそれらの混合物である。
【0028】
さらにより好ましい化合物は、
4-フェニルブタン酸、
3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパン酸、
3,4,5-トリメトキシケイ皮酸、
3-(4-メトキシフェニル)プロパン酸、
4-メトキシケイ皮酸、
2,4-ジメトキシケイ皮酸、
3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸、
3,4-ジメトキシケイ皮酸、
3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸、
3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸、
およびそれらの混合物である。
【0029】
本発明はまた、0.01重量%を超えるフラバン-3-オール、好ましくは0.02重量%を超えるフラバン-3-オール、より好ましくは0.05重量%を超えるフラバン-3-オール、および有効量の少なくとも1つの式(I)の化合物を含む組成物も提供する。好ましくは、フラバン-3-オールは1種または複数のカテキンである。化合物の量は、典型的には少なくとも0.05重量%、より好ましくは少なくとも0.075重量%、最も好ましくは少なくとも0.1重量%である。化合物の量は、典型的には最大で1.5重量%、より好ましくは最大で0.75重量%、最も好ましくは最大で0.25重量%である。組成物の好ましい形態は食品であり、より好ましくは飲料、最も好ましくは茶をベースとした飲料である。好ましくは化合物は、ケイ皮酸、4-フェニルブタン酸、3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパン酸、3,4,5-トリメトキシケイ皮酸、3-(4-メトキシフェニル)プロパン酸、4-メトキシケイ皮酸、2,4-ジメトキシケイ皮酸、3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸、3,4-ジメトキシケイ皮酸、4-ヒドロキシケイ皮酸、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸、3,4-ジヒドロキシケイ皮酸、3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸、3-メトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸、および4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシケイ皮酸の1つまたは複数である。より好ましくは化合物は、4-フェニルブタン酸、3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパン酸、3,4,5-トリメトキシケイ皮酸、3-(4-メトキシフェニル)プロパン酸、4-メトキシケイ皮酸、2,4-ジメトキシケイ皮酸、3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸、3,4-ジメトキシケイ皮酸、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸、および3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸の 1つまたは複数である。
【0030】
本発明はさらに、組成物の製造方法を提供し、この方法は、フラバン -3-オールを含む第 1の物質および少なくとも 1つの式 (I)の化合物を含む第 2の物質を提供するステップと、 2つの物質を混合するステップと、組成物を回収するステップとを含む。好ましくは第 1の物質はカテキンを含む。
【0031】
本発明は最終的に、フラバン -3-オールに起因する苦味を低減または除去する方法を提供し、この方法は第 1の物質および第 2の物質を摂取するステップを含み、第 1の物質はフラバン -3-オールを含み、第 2の物質は有効量の少なくとも 1つの式 (I)の化合物を含む。好ましくは第 1の物質はカテキンを含む。好ましくは第 1および第 2の物質は同じ食事の一部として同時に摂取され、より好ましくは第 1および第 2の物質は同じ組成物において同時に摂取される。あるいは、第 1および第 2の物質は連続的に摂取され、最も好ましくは、連続的に摂取される場合、第 1の物質は第 2の物質の後に摂取される。
【実施例1】
【0032】
TSA2R39阻害剤の評価
苦味受容体TAS2R39の活性化は、受容体を含む細胞の小胞体からのカルシウムの放出を引き起こす。したがって、TAS2R39を発現する細胞内のカルシウム濃度変化は、受容体の活性のプロキシマーカーとして役立つ。フラバン-3-オール エピカテキンガラート(ECG)によるTAS2R39の刺激を評価し、以下のような様々な化合物の使用によるこのTAS2R39の刺激の阻害を評価するために、アッセイを使用した。
【0033】
ヒトの苦味受容体TAS2R39を発現するHEK293細胞、およびカルシウム読出しシステムへの結合を可能にするGタンパク質を、Dulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM)ならびにブラストサイジン(5μg/ml)、ジェネテシン(400μg/ml)、およびハイグロマイシン(100μg/ml)を加えたテトラサイクリンフリーの10%ウシ胎仔血清(Cambrex)を含有する、DMEM中で維持させた。細胞は37℃/5%CO2にて増殖および維持させた。
【0034】
細胞を75cm2フラスコ中で培養し、トリプシン処理により回収し、DMEM培養液中に再懸濁させた。1つのウェル当たり100μlの細胞を、ポリ-L-リジンを塗布したμClear96ウェルプレートに加え、一晩インキュベートした。次いで、0.5μg/mlドキシサイクリンを含有する100μl DMEM 培養液を加えることにより、TAS2R39遺伝子の発現を誘発した。さらに24〜30時間後、培養液を除去し、2.5μMのカルシウムの蛍光マーカーFluo-4-AMを含有する50μl Tyrodes緩衝液(140mM NaCl、5mM KCl、10mMグルコース、1mM CaCl2.2H2O、1mM MgCl2.6H2O、20mM HEPES pH7.4(Sigma P8761))で1時間添加し、続いて37℃で1時間インキュベートした。次いで細胞をTyrodes緩衝液で洗浄し、最後に100μl Tyrodes緩衝液中に取り上げた。
【0035】
Tyrodes緩衝液中に溶解させた、0.5mM ECGおよび10mMの試験化合物を含有する試験溶液を調製し、100μlの各試験溶液を細胞の入った96ウェルプレートのウェルに加えた。Tyrodes緩衝液中に溶解させた0.5mM ECGのみを含有する比較溶液も調製し、100μlを細胞の入った96ウェルプレートのウェルに加えた。
【0036】
細胞内カルシウム濃度をFlexstation II 384を用いてモニタリングした。96ウェルプレートをFlexstation II 384に装着し、蛍光測定を37℃にて485nmの励起波長および520nmの発光波長で行った。TAS2R39の活性は、試験溶液または比較溶液の添加後の蛍光の最大値を試験溶液または比較溶液の添加前に測定された蛍光の基準値から減算して計算される、蛍光の変化(ΔF)として測定した。
【0037】
TAS2R39活性の阻害を、ECGおよび試験化合物の存在下でのΔFと比較した、ECGのみの存在下でのΔFの減少率として測定した。試験化合物、それらの構造、およびTAS2R39活性の阻害率を以下の表に示す。3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)が、試験化合物の選択に含まれた。
【0038】
【表1A】
【0039】
【表1B】
【0040】
【表1C】
【0041】
【表1D】
【0042】
【表1E】
【0043】
試験化合物が類似の基本部分を共有しているにも関わらず、それらが苦味受容体TAS2R39を阻害する能力は異なることが明確に理解できる。式(I)による化合物のみが没食子酸よりも良好である。特に、上記の結果は、ケイ皮酸、4-フェニルブタン酸、3-(3,4,5-トリメトキシフェニル)プロパン酸、3,4,5-トリメトキシケイ皮酸、3-(4-メトキシフェニル)プロパン酸、4-メトキシケイ皮酸、2,4-ジメトキシケイ皮酸、3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸、3,4-ジメトキシケイ皮酸、4-ヒドロキシケイ皮酸、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸、3,4-ジヒドロキシケイ皮酸、3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸、3-メトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸、および4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシケイ皮酸などの式(I)による化合物が、没食子酸より効果的なTAS2R39の阻害剤であることを実証している。