(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記データ層は、テルル、テルル合金、セレン、セレン合金、錫、錫合金、ビスマス、ビスマス合金、アンチモン、アンチモン合金、鉛、または鉛合金を含む、請求項1に記載の光学情報媒体。
前記データ層は、TexSe100−x、TexSe100−x(Xは95以下)、Te86Se14、Te79Se21、TexSb100−x、TexSb100−x(Xは95以下)、TexSeySbz、TexSeySbz(X+Y+Z=100)、TexSeySbz(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te75Se20Sb5、Te72.5Se20Sb7.5、Te3Sb2、TexSeyInz、TexSeyInz(X+Y+Z=100)、TexSeyInz(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、InTe3、Te75Se20In5、Te72.5Se20In7.5、TexSeyPbz、TexSeyPbz(X+Y+Z=100)、TexSeyPbz(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te75Se20Pb5、Te72.5Se20Pb7.5、TePb、TexSeySnz、TexSeySnz(X+Y+Z=100)、TexSeySnz(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te75Se20Sn5、Te72.5Se20Sn7.5、Te3Bi2、TexSeyBiz、TexSeyBiz(X+Y+Z=100)、TeSn、TexSeyBiz(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te75Se20Bi5、Te72.5Se20Bi7.5、TeGeAs、TeGeSbS、TeOxGe、TeOxSn、Pb−Te−Se、Pb−Te−Sb、As−Te、As10Te90、As32Te68、Ge−Te、Ge10Te90、またはCdTeを含む、請求項15に記載の光学情報媒体。
【背景技術】
【0002】
光学情報格納媒体は、一般的には、データ層、誘電体層、および支持基板などのいくつかの構成要素を含む。様々な構成要素は、各々、商用製品に何らかの機能を与えている。
【0003】
しばらくの間、光学情報格納媒体において用いるためにテルル材料が提案されてきたが、種々の理由から商業的には用いられていない。テルルは酸化しやすいことが知られており、この問題を低減または解消するために種々のアプローチが試行されてきた。テルル媒体で頻繁に観測される別の問題には、「バーム」の形成がある。バームとは、レーザを用いて光学格納媒体に書き込むときに形成される書き込み済「ピット」を囲む、盛り上がった領域である。元々空間を占めていた材料が押し出され、高くなった唇状の「バーム」が形成される。バームは、媒体を読み取るときに実効ピークトゥピーク値を低下させるHF信号におけるアーティファクトを生じさせる。これにより、復号器がデータを解釈する信号が減少する。
【0004】
以下は、テルル材料の使用、および光学格納媒体におけるテルルの使用に関連する問題を緩和するためになされた試行について説明している代表的な科学文献および特許文献を抽出したものである。
【0005】
テルル合金層は、レーザ書き込み後、合体して離散した球状粒子を形成することが報告されている(非特許文献1)。アルミニウムディスク基板を有するディスクを、Te
80Se
19As
1合金で作製された厚さ15nm未満の吸収層を含むように作製した。吸収層を、厚さ250nmのスパッタリングされた誘電体有機オーバーコート層で覆った。ディスクにマークを書き込むために用いるレーザ出力を増加させることにより、マークのサイズが大きくなることが見出された。加えて、レーザ出力の増加とともに、粒子の形成が増加することが見出された。著者らは、これらの結果を、相変化またはマーク形成のためのアブレーションのメカニズムを見出した過去の報告とは区別している。
【0006】
様々な金属膜システムを用いて、ポリメチルメタクリレート基板上の薄膜に形成された穴の形状が調査されている(非特許文献2)。用いられた様々なシステムは、As−Te、Ge−Te、As−Se、Ge−Se、およびSb−Sであった。膜の粘性が高いことが、整った形状の穴を得るために役に立つことが見出された。
【0007】
テルル膜を格納媒体において用いるにあたり深刻な不利益をテルル膜に有させるものとして、電食が検討されている(非特許文献3)。セレンおよび/またはを添加することによりテルル膜を非晶質にした。Te−Se−Sb膜は200日超安定していた、ということが気候試験により示された。その後の刊行物では、金属−Te−Se膜にIn、Pb、Sn、Bi、またはSbを添加することにより酸化が抑制されることが検討されている(非特許文献4)。
【0008】
特許文献1(1982年3月30日付与)は、連続波型半導体レーザビーム、および光学ディスク上に情報を記録する際のその使用を提起している。光学ディスクはテルル酸化物を含有し得る。PbOおよびV
2O
5を様々な濃度で添加することにより、光吸収率が変化することが報告されている。
【0009】
特許文献2(1982年10月20日公開)は、テルルおよび炭素の記録層を有する光学記録媒体を提示している。炭素は、5〜50原子パーセントの所定含有量で存在する。テルル−炭素層は、良好な感度および長い耐用寿命を有するものとして提示されている。
【0010】
特許文献3(1982年11月2日付与)および特許文献4(1983年5月24日付与)は、薄いテルル膜をベースプレートに付加し、テルルを酸化させることにより2つの酸化層を形成することを示唆している。複数の酸化層は、各々、異なるテルル酸化物を含有する。紫外線放射を用いて酸化を生じさせている。
【0011】
特許文献5(1983年10月18日付与)は、ディスク基板上に堆積させた変形可能な金属テルル膜、および情報を記録する変調光ビームを提起している。光はテルル材料を気化させずに液化させ、その結果、読み出し光ビームの反射度を変化させる材料が再分散する。
【0012】
特許文献6(1983年12月27日付与)は、2つ以上の非共形被覆層を含み、被覆層の間に溶媒バリア層を有するディスクを用いることを示唆している。ディスクにおける吸収層は、テルルまたはテルル合金を含む種々の金属および合金で作製することが可能である。被覆層および溶媒バリア層は、巨大および微小な欠陥を伴わない基板を作製するのに役立つ。
【0013】
特許文献7(1984年2月21日付与)は、ある所定の原子パーセントの炭素を含有するテルル層を有する光学記録媒体を提起している。テルル層における炭素の存在により、酸素または湿気によるテルルの酸化が低減されることが示唆されている。
【0014】
特許文献8(1984年10月9日付与)は、基板プレートならびにテルル、セレン、およびアンチモンの合金を含む光学情報ディスクを提起している。記録層材料は、式Te
xSe
ySb
zS
q(x=55〜85原子%、y=13〜30原子%、z=1〜12原子%、q=0〜10原子%、およびx+y+z+q=100)を満たす。好適な記録層は、Te
60Se
25Sb
10S
5およびTe
75Se
15Sb
5S
5合金である。これらの合金により、芳しいアブレーション特性が記録層に付与されることが見出されている。
【0015】
特許文献9(1986年4月15日付与)は、樹脂ディスク基板、記録媒体層、記録媒体層上に形成された透過層、および透過保護樹脂層を有する光学ディスクを記載している。記録媒体層は、テルル酸化物または有機着色材料を含有することが可能である。透過層は、接着層または気層であることが可能である。このような層編成により、従来の光学ディスクと比較してより低いエラー率が与えられることが報告されている。
【0016】
特許文献10(1986年7月2日公開)は、10〜80原子パーセントのテルルおよび炭素を有するデータ記録媒体を示唆している。記録層は、メタンおよびアルゴンの存在下でテルルをスパッタリングすることにより形成することが可能である。
【0017】
特許文献11(1986年11月25日付与)は、ディスク形状基板、平坦化層、反射層、フッ化炭素フェーズ層、活性層、およびフッ化炭素マトリクス層の三層構造、ならびに薄い透過導電上層を有する情報格納装置を提示している。活性層は、フェーズ層とマトリクス層との間に包まれている。活性層は、テルル、セレン、およびヒ素の合金の小球を含む。レーザビームの印加により活性層が凝集し、三層構造の光透過率が変化する。フェーズ層により活性層が反射層のヒートシンク効果から隔離され、レーザエネルギーが活性層において放散される。
【0018】
特許文献12(1987年3月3日付与)は、基板および電磁エネルギー吸収層を記載している。この層は、テルル、アンチモン、錫、ビスマス、亜鉛、または鉛などの低融点金属を含有することが可能である。また、この層は、所定温度を下回る温度で気相状態の元素も含有することが可能である。エネルギーの印加により記録層が盛り上がり、隆起が形成される。
【0019】
特許文献13(1987年7月21日付与)は、ゲルマニウム、テルル、ビスマス、アンチモン、およびそれらの合金で作製された複数の薄膜層を含む光学ディスクを示唆している。レーザビームの照射により、それらの複数の層が単一の層に変換される。
【0020】
特許文献14(1989年10月4日公開)は、テルル、炭素、および水素を含有する記録膜を用いることを記載している。炭素および水素の含有量は、それらの原子百分率が25原子パーセント以上および38原子パーセント以下となるように定義されている。このような範囲は、良好な記録感度、耐酸化性、および再生レーザ出力マージンを提供するように選択されている。
【0021】
特許文献15(1990年3月13日付与)および特許文献16(1991年12月17日付与)は、基板、下層、および低融点テルル記録層を有するディスクを提起している。下層により、記録層からディスク基板に伝達される熱衝撃が緩和される。下層は、基板よりも優れた耐熱性を有する高ポリマー材料を含有する。ポリマー材料の例として、フッ化炭素樹脂またはポリイミドが提起されている。
【0022】
特許文献17(1990年5月29日付与)は、炭素および金属元素、半金属元素、または半導体元素を含有する非晶質構造記録層を有する情報格納媒体を提起している。元素の例は、Te、Se、Bi、Pb、Sb、Ag、Ga、As、およびGeを含む。記録層にエネルギーを印加することにより、構造が非晶形から結晶形に変化する。これらの構造は、テルルまたは他の過去に用いられていた金属の酸化特性に対処するために提起されている。
【0023】
特許文献18(1991年2月5日付与)は、水および酸素の浸透から記録層を保護する拡散バリアとして作用する炭素およびフッ素の下層を用いることを示唆している。記録層は、炭素ならびにTe、Se、Ge、Sb、Pb、Sn、Ag、In、およびBiなどの金属および半導体元素を含有するものとして説明されている。記録層は、良好な書き込み感度および抗酸化特性を有する。
【0024】
特許文献19(1991年5月7日付与)は、ポリカーボネート基板ならびにAgTe共晶合金、炭素、および水素を含有する記録層からなる情報格納媒体を提示している。これらの構造は、テルルまたは他の過去に用いられていた金属の酸化特性に対処するために提起されている。
【0025】
特許文献20は、テルル、炭素、および水素を含有し、炭素および水素が化学結合により互いに結合されたC−Hマトリクスにテルルのクラスタが分散して構造を有する記録膜を作製することを示唆している。このシステムは、テルル膜の酸化により引き起こされる問題への可能性のある解決策として示唆されている。その結果得られる記録膜は、遠赤外領域(25〜100μm)において吸収することが見出されている。
【0026】
特許文献21(1992年4月7日付与)は、基板と、C
4F
8フッ化炭素ガスのプラズマ重合により形成された下被覆層と、Te、C、H、ならびにAg、Au、およびCuからなる金属を様々な含有比率で含有する記録層とを含むデータ記録媒体を提起している。
【0027】
特許文献22(1996年4月23日付与)は、テルルベースの活性データ層を含む光学ディスクを記載している。レーザの照射によりテルル合金が流動し、穴が形成される。ディスクは、テルル層上に直接設けられた「軟らかい」変形可能な層を含む。変形可能な層の材料の例として、シリコンエラストマ、フッ素化炭化水素、ポリアクリレート、エチレンプロピレン、およびポリウレタンが列挙されている。変形可能な層は軟らかいため、テルルは過大なレーザ出力を要求することなく流動することができる。
【0028】
特許文献23(1996年12月3日付与)および特許文献24(1997年7月29日付与)は、Ge、Sb、およびTeを含有する非晶質合金で作製された記録膜を記載している。膜を照射することにより、合金が結晶性GeTeおよび結晶性SbTeに変化する。この変化は光学的に検出可能である。
【0029】
特許文献25(1998年8月18日付与)は、Ge−Sb−Teの第1のサブ記録層およびBi−Teの第2のサブ記録層を有する光学ディスクを提起している。
【0030】
光学情報媒体においてテルルおよび他の金属を用いることに関して多くの開発が報告されているが、光学情報媒体において用いるのに商業的に魅力的な金属を作製する新たな材料および方法についてのニーズが依然として存在する。酸化およびバーム形成に関連する問題を低減または解消する材料および方法が、特に魅力的である。
【0031】
拡散した酸素または水により引き起こされる腐食からデータ層材料を保護するために、誘電体層が光学データディスクに含まれることが多い。誘電体層は、二酸化ケイ素、硫化亜鉛−二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、または酸窒化ケイ素−ニッケルなどの無機材料から作製されることが多い。二酸化ケイ素を含有する誘電体層は、現在、商用製品において広く用いられている。
【0032】
また、誘電体層は、電気絶縁体としても作用し、光学ディスクの異なる層を効果的に分離させる。
【0033】
誘電体層において用いられる材料は、通常、誘電体層がディスクへのデータの書き込みまたはディスクからのデータの読み取りに光学的に干渉しないような光透過性のものが選択される。誘電体材料の光学特性は、用いられる光の波長とともに変化する。例えば、ケイ素は、光の波長が400nmよりも長ければ透過性であるが、光の波長が400nmよりも短ければ吸収性である。
【0034】
また、従来の誘電体材料は、基板および書き込み層を熱的に保護するためにも用いられる。誘電体材料は、ピンホール欠陥が生じにくく、ガラス状態ではほとんど劣化しない。特定の誘電体材料の選択には、コスト、界面において隣接する材料への付着性、材料の混和性または非混和性、融点、および熱容量などの多くの基準が関わり得る。
【0035】
炭素は、商用光学媒体においては広く用いられていない。以下は、炭素を含む様々な材料を「界面層」として用いることを検討しているいくつかの参照文献である。
【0036】
特許文献26(2004年8月26日公開)は、基板、第1の保護層、記録層、第2の保護層、および反射層を有する書き換え可能な相変化光学ディスクを提起している。記録層は、特定の定義された原子比率におけるSb、Te、Ge、およびInの複合組成を含む。この公報は、記録層の片側または両側に窒化物、酸化物、または炭化物の「界面層」を付加することを認めている。また、ディスクは、類似の物質で作製された「拡散保護層」も含むことが可能である。界面層は、硫黄成分を含まず、硫黄の侵入から記録層を保護する。
【0037】
特許文献27(2005年4月7日公開)は、結晶相と非晶相との間で相を変化させることが可能な相変化記録層、CrおよびOの層、ならびにGaおよびOの層を含む情報記録媒体を示唆している。作用例11は、記録層と「界面層」として提供されるGa含有層との間、および/または、Cr含有層と記録層との間に配置されたC含有層を付加することを記載している。界面層は、誘電体層と記録層との間の物質の移動を防止するように機能する。界面層は、光吸収性が低く、記録中に融解しない程度に融点が高く、記録層への付着性が良好である。
【0038】
特許文献28(2004年9月14日付与)は、規定された記録層および他の複雑な層構造を有する相変化光学情報媒体を提起している。この特許は、金属酸化物、窒化物、硫化物、炭化物、ダイヤモンド様炭素、およびそれらの混合物を含む種々の材料で作製された上下の保護層を提供している。この特許は、保護層が記録層よりも高い融点を有することを「要求している」。また、この特許は、保護層が高い熱伝導率、低い熱膨張係数、および良好な付着特性を有することも「要求している」。
【0039】
特許文献29(2007年1月30日付与)は、透過性基板、可逆記録層、Taベース誘電体層、および銀反射層を有する相変化光学情報記録媒体を提起している。炭素またはアルファ元素(Sn、In、Zr、Si、Cr、Al、V、Nb、Mo、W、Ti、Mg、またはGe)の窒化物、酸化物、炭化物、もしくは窒素酸化物を含有する「界面層」を用いて、剥離を防止することが可能である。また、界面層により、記録層と誘電体層との間の原子の拡散も防止される。界面層の厚さは、好ましくは少なくとも1nmおよび多くとも10nmであり、より好ましくは少なくとも1nmおよび多くとも5nmである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
組成および方法は、様々な構成要素またはステップを「備える」(「含むが、それに限定されない」を意味するものとして解釈される)との用語で説明しているが、組成および方法は、また、様々な構成要素およびステップ「から本質的になる」またはそれら「からなる」ことも可能であり、かかる用語法は、本質的に閉じた要素群を定義するものとして解釈すべきである。
【0047】
本明細書中に記載の光学情報媒体は、好ましくは、磁気的なものでない。本明細書中に記載の光学情報媒体に書き込まれるデータは、好ましくは、可逆的または相変化マークでなく、恒久的な消去不可能な物理変化マークである。
【0048】
本明細書中に記載の光学情報媒体は、好ましくは、アーカイブ媒体として用いるために好適である。アーカイブ媒体上に格納されたデータは、好ましくは、約1ヶ月後、約1年後、約2年後、約3年後、約4年後、約5年後、約6年後、約7年後、約8年後、約9年後、約10年後、約20年後、約30年後、約40年後、約50年後、約60年後、約70年後、約80年後、約90年後、約100年後、約200年後、約300年後、約400年後、約500年後、および理想的には無期限に読み取り可能である。
【0049】
以下で説明する光学情報媒体は、一般に、いずれの形状およびサイズであることも可能である。媒体は、典型的には、平坦で丸い形状である。現在想定されているサイズは、直径約8cm、直径約12cm(従来のCDまたはDVDと同様)、直径約13cm、直径約20cm、直径約10インチ(約25.4cm)、直径約26cm、および直径約12インチ(約30.48cm)である。
【0050】
光学情報媒体の断面図は、対称的または非対称的であることが可能である。断面は、非対称的であるのが最も一般的である。
【0051】
以下で説明する光学情報媒体は、一般に、少なくとも1つの支持基板を含む。支持基板は、一般に、光学情報格納における使用と適合可能ないずれかの材料であることが可能である。望ましい光学的および機械的特性を有するポリマーまたはセラミック材料が広く利用可能である。支持基板は、典型的には、ポリカーボネート、ポリスチレン、酸化アルミニウム、ポリジメチルシロキサン、ポリメタクリル酸メチル、酸化ケイ素、ガラス、アルミニウム、ステンレス鋼、またはそれらの混合物を含む。基板の透過性が所望されなければ、金属基板を用いてもよい。また、他の光透過性プラスチックまたはポリマーを用いてもよい。支持基板は、十分な剛性または剛直性を有する材料から選択することが可能である。剛性または剛直性は、一般的には、ヤング率(単位面積当たりの圧力を単位とする)として測定され、好ましくは、約0.5GPa〜約70GPaである。剛直性値の具体例は、約0.5GPa、約1GPa、約5GPa、約10GPa、約20GPa、約30GPa、約40GPa、約50GPa、約60GPa、約70GPa、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲である。支持基板は、約1.45〜約1.70の屈折率を有する材料から選択することが可能である。屈折率の具体例は、約1.45、約1.5、約1.55、約1.6、約1.65、約1.7、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲である。
【0052】
基板は、好ましくは、経年劣化作用を受けない材料を含む。現時点で好ましい材料は、ポリカーボネート、ガラス、および酸化ケイ素(溶融石英)である。
【0053】
支持基板は、一般に、いずれの厚さであることも可能である。基板の厚さは、ドライブ容量の関数として選択することが可能である。厚さ1.2ミリメートルの基板は、CDドライブと互換性を有し、厚さ0.6ミリメートルの基板は、DVDドライブと互換性を有し、厚さ0.1ミリメートルの基板は、BDドライブと互換性を有する。厚さは、歴史的に、読み取りおよび書き込みプロセス中にデータ層に焦点を保つために、基板の必要な平坦性および剛性を維持しつつ、回転質量を合理的な限界内に保つように選択されてきた。
【0054】
材料−炭素層
本発明の一実施形態は、アーカイブ目的に好適な光学情報媒体を備える。材料および製造プロセスは、非常に高い耐久性を有し、実質的な程度の経年劣化作用を受けないように設計される。同様に、情報書き込みプロセスは、恒久的であり、実質的な程度の経年劣化作用を受けないことが意図される。媒体は、少なくとも1つの支持基板10と、ガスが注入された少なくとも1つのデータ層20とを含む。これを
図1aに示す。
【0055】
データ層は、炭素、非晶質炭素、ダイヤモンド様炭素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、ケイ素、非晶質シリコン、ゲルマニウム、非晶質ゲルマニウム、またはそれらの組み合わせを含むことが可能である。データ層が非晶質炭素を含むことが、現時点では好ましい。非晶質炭素は、その光学特性を変更するためにかなりの量の活性化エネルギーを要求する安定的な物質である。この特長により、非晶質炭素は、典型的な熱的および化学的動的経年プロセスによる影響を受けない。また、非晶質炭素は、優れた耐化学性を有し、高い割合の黒鉛(SP
2)状炭素を含む。
【0056】
また、データ層は、その構造に注入された少なくとも1種類のガスを含む。「注入」との用語は、少なくとも1種類のガスが非晶質炭素または他の材料内またはその上に共有結合、捕捉、または吸着された状態を言う。適切なエネルギー源による処理を受けると、処理されたデータ層は分解し、ガスを遊離させることが可能である。この遊離ガスは、膨脹し、突出またはアブレーション部位を形成することが可能で、それにより、被処理部位と未処理部位との間に検出可能な光学的コントラストが形成される。ガスは、酸素原子を含まないことも酸素原子を含有することも可能である。データ層には、1種類のガスを注入することも、2種類以上の異なるガスを注入することも可能である。データ層に2種類以上のガスが注入されている場合、それらのガスは、すべて酸素原子を含まないことも、すべて酸素原子を含有することも、酸素原子を含まない1種類以上のガスと酸素原子を含有する1種類以上のガスとの混合物であることも可能である。
【0057】
酸素原子を含まないガスの例は、分子状水素(H
2)、分子状窒素(N
2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、塩素(Cl
2)、およびフッ素(F
2)を含む。
【0058】
現時点で好ましい実施形態では、ガスは酸素含有ガスである。「酸素含有ガス」との用語は、その分子式が少なくとも1つの酸素原子を含むガスを言う。かかるガスの例は、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO
2)、分子状酸素(O
2)、オゾン(O
3)、窒素酸化物(NO
x)、硫黄酸化物(SO
x)、およびそれらの混合物を含む。酸素は、極度の高温に加熱されるとデータ層の揮発性を増加させるものと考えられる。さらに、酸素は、特に炭素膜における残留応力に関して、通常の条件下で書き込み層を安定化させるものと考えられる。この安定化は、炭素に共有結合された酸素が炭素を酸化させることにより、非常に反応性が低い化合物を産生させることの結果であると考えられる。データ層には、1種類の酸素含有ガスを注入することも、2種類以上の異なる酸素含有ガスを注入することも可能である。
【0059】
データ層の透過性(または不透過性)は、データ層の作製において用いられるガスの濃度を調整することにより変更することが可能である。ガスの濃度がより高いとデータ層の透過性がより大きくなることが、本発明者らにより見出されている。添合されたガスは、XPSなどの方法を用いて検出および定量化することが可能である。その結果得られる被覆層は、作製中に添加ガスを含まない以外は同様に作製された場合よりも高い濃度のガス、酸素、または酸素含有ガスを有する。
【0060】
ガスは、データ層のアブレーションを支援することが見出されている。アブレーションを増大させるものと現在考えられているメカニズムを以下で検討する。その厳密なメカニズムは、本発明の実施形態を限定するものとは考えない。書き込みプロセス中、書き込みレーザにより発生する極度の高熱により、ガスと炭素原子との間の通常は強く安定的な共有結合が破壊される。ガス加熱および分離プロセスにより爆発が生じ、ガスと非晶質炭素との両方がデータ層から放出される。ガスの放出は、光学ディスクから書き込み層をアブレーションする、またはデータ層の書き込み済部分をデータ層の未書き込み領域と比較して、読み取りレーザに対する透過性が著しく低くもしくは高く(システム設計による)なるように恒久的に変質させる、という組み合わせられた効果を有する。データ層の書き込み済部分および未書き込み部分は、ともに極度に反応性が低く(典型的な熱的および化学的動的経年プロセスによる影響を受けない)、また、光学的に異質である。加えて、ガス注入状態からガスが存在しない状態への変化は、著しい活性化エネルギーを要求するため、自然状態での化学的動的経年変化を通じて生じることが防止される。
【0061】
データ層は、一般に、いずれの厚さであることも可能である。データ層の厚さにより、光吸収性が提供される。厚さの下限は、約10nmまたは約20nmであることが可能である。厚さの上限は、データ層を変質させるために要求されるエネルギーにより決定することが可能であり、選択される材料によって変化する。上限の例は、約100nmである。厚さの具体例は、約10nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲である。厚さの値は、理論上、ラムダ/2n(ラムダは読み取り波長、nはデータ層の屈折率)として算出することが可能である。
【0062】
支持基板は、いずれの1つまたは複数の介在層もない状態でガスが注入されたデータ層に直接面的に接触することが可能である。あるいは、支持基板とデータ層との間に1つ以上の追加の層を配置することが可能である。
【0063】
基板およびデータ層の屈折率、厚さ、および不透過性は、読み取りレーザを光学的に反射するように未書き込み状態において最適化してもよい。読み取りレーザの形態でディスクの底部に進入する光は、支持基板/データ層の界面からの第1の反射ビームと、データ層/空気の界面からの第2の反射ビームとを形成する。両方の反射ビームが同相となるようにデータ層の厚さを調整することにより、建設的干渉を通じて反射が最大化される。ディスクの未書き込み状態における反射を増加させることにより、書き込み済部分と未書き込み部分との間により大きい光学的コントラストを提供し、読み取りプロセスにおける信号対雑音比を増加させることが可能である。
【0064】
データ層の書き込み済部分は、ディスク上に記録されたデータストリームに変調された高出力書き込みレーザの強度によりディスクからアブレーション加工または除去することが可能である。強度が著しく低い読み取りレーザは、データ層のアブレーション加工された部分を通過するか、または、データ層の未書き込み部分において生じる最大化された反射と光学的に対照をなすガスが存在しない不透過性炭素において吸収される。フォトダイオードにより、ディスクの書き込み済すなわち非反射部分と未書き込みすなわち反射部分との間の光学的コントラストを検出する。
【0065】
書き込みを行うためにより好適であり、アーカイブを行うためにより高い耐久性を有し、または既存の光学ディスクの容量およびフォーマットとより高い互換性を有するディスクを作製するために、追加の層を追加してもよい。光学情報媒体は、さらに、アブレーションキャプチャ層20を備えることが可能である。アブレーションキャプチャ層は、データ層を覆うことにより、書き込みプロセス中にアブレーション加工された材料をキャプチャするとともにデータ層を保護することが可能である。アブレーションキャプチャ層に好適な材料は、エアロゲルまたは薄い金属層を含む。他の好適な材料は、アルミニウム、クロム、チタン、銀、金、白金、ロジウム、ケイ素、ゲルマニウム、パラジウム、イリジウム、錫、インジウム、他の金属、セラミック、SiO
2、Al
2O
3、それらの合金、およびそれらの混合物を含む。アブレーションキャプチャ層が存在するときは、データ層に元々注入されていたガスが書き込みプロセスにより恒久的に分離され、データ層に空隙が形成され、アブレーションキャプチャ層に泡または隆起が形成される。先に説明したように、注入ガスは高出力エネルギー書き込みプロセスによる以外では容易に除去されないため、データ層の未書き込み部分は時間が経過しても変化せずに残る。アブレーションキャプチャ層は、データ層を封止することにより、書き込みプロセス中にアブレーション加工された材料による書き込み光学部品の潜在的な汚染を防止する、というさらなる利点を有する。アブレーションキャプチャ層における隆起は、読み取りレーザを吸収するため、書き込み層の未書き込みまたは乱されていない部分に対して光学的コントラストを形成し、読み取りレーザが光学ディスク全体を透過したのと同じ効果がもたらされる。データ層から除去されアブレーションキャプチャ層の下方にキャプチャされたガスが最終的に隆起から離れるのであれば、隆起の光学特性は変化せずに残るであろう。このため、書き込み済部分および未書き込み部分の光学特性は恒久的なものであるため、ディスクは経年劣化作用を受けない。
【0066】
図1cに示すように、光学情報媒体は、さらに、反射層25を備えることが可能である。アブレーションキャプチャ層を伴ってまたは伴わずに反射層を用いることが可能である。あるいは、反射層は、反射層とアブレーションキャプチャ層との両方(反射キャプチャ層30(
図1d)とする)として機能することが可能である。この場合、2つの異質な書き込みストラテジが提供される。第1の書き込みストラテジは、半透過性書き込み層を提供する。上で説明したように、書き込み層の透過性は、ガス濃度の増加により調整される。反射アブレーションキャプチャ層は、ミラーとして作用し、データ層の未書き込み領域において読み取りレーザを反射する。書き込み層が書き込みプロセスを通じてアブレーション加工されると、反射アブレーションキャプチャ層において隆起が形成され、読み取りレーザがフォトダイオード検出器に直接反射されることを防止する効果的なプリズムを形成する。これにより、未書き込み領域の読み取りレーザに対する反射性がより高くなり、書き込み済領域の読み取りレーザに対する吸収性がより高くなり、読み取りプロセスにおいて必要なコントラストが提供される。第2の書き込みストラテジは、第1および第2の表面からの反射光が180度位相がずれて相殺的干渉となるように厚さを調整することにより、最小の反射性を有するデータ層を提供する。また、データ層は、ガス濃度を低下させることにより、透過性がより低くなるように製造してもよい。加えて、データ層の不透過性および厚さは、読み取りレーザの吸収が最大となり、相殺的光位相打ち消しが得られるように調整してもよい。書き込みプロセスにより、書き込み層の一部分をアブレーション加工することにより、反射層が露出する。未書き込み領域は不透過性またはより吸収性が高くなり、書き込み済領域は反射性となり、やはり読み取りプロセスに必要なコントラストが提供される。
【0067】
反射層材料は、それらの極めて高い耐久性および反射性のために選択され、ケイ素、銀、チタン、クロム、白金、ロジウム、金、アルミニウム、またはそれらの合金などの材料を含んでもよい。
【0068】
光学情報媒体は、さらに、拡散バリア層35(
図1e)を備えることが可能である。拡散バリア層は、基板がポリカーボネート材料からなるときにデータ層に追加の保護層を追加するために、基板とデータ層との間に追加することができる。拡散バリア層がなければ、酸素および湿気が従来のポリカーボネート基板を通じて容易く拡散し、データ層と反応してしまうため、好ましくない。拡散バリア材料は、それらの耐久性およびガスおよび湿気への不浸透性のために選択され、酸化ケイ素、アルミナ、セラミック、ガラス、金属酸化物、ガラス状材料、または他の透過性金属酸化物などの材料を含んでもよい。基板がこれらと同じ材料を含むときは、別個の拡散バリアは必要ない。
【0069】
光学情報媒体は、さらに、保護シーラントバリア層40(
図1f)を備えることが可能である。さらなる保護のために、およびデジタルデータの寿命を増加させるために、上記の層の上方および下方に追加の層を追加してもよい。保護シーラントバリア層は、クロム、チタン、酸化ケイ素、アルミナ、セラミック、ガラス、金属酸化物、ガラス状材料、またはスピン被覆ポリマーなどの材料を含むことが可能である。反射層が反応性材料を含むのであれば、保護シーラントバリア層はより望ましい。また、保護シーラントバリア層は、選択された材料によっては反射層であってもよい。
【0070】
光学情報媒体は、さらに、紫外線放射ブロック層45(
図1g)を備えることが可能である。紫外線放射ブロック層は、基板のヘイジングまたはデータ層への他の劣化作用を防止するために基板の下方に追加してもよい。紫外線放射ブロック層は、酸化亜鉛、酸化チタン、炭化ケイ素、ガラス、またはガラス状材料などの少なくとも1つの紫外線放射ブロック剤を含有するポリカーボネートまたはガラス膜を含む。
【0071】
光学情報媒体は、さらに、耐スクラッチ層50(
図1g)を備えることが可能である。光学ディスクについての最も一般的な故障態様の1つは、散乱と吸収とを通じて読み返し光信号の減少を引き起こすスクラッチである。これらのスクラッチは、読み返し光学システムの焦点面から十分に外れているものの、光学的に非常に幅広い(数百または数千トラックの幅)ため、広範な読み返しの問題を引き起こす可能性がある。そのため、基板の下方に耐スクラッチ層を適用してもよい。耐スクラッチ材料は、酸化ケイ素、アルミニウム、炭化ケイ素、またはガラス状材料を含む。
【0072】
基板、紫外線ブロック層、および耐スクラッチ層は、個々の層の有益な特徴のすべてを示す単一の材料として組み合わせてもよい。換言すれば、基板は、少なくとも1つの紫外線放射ブロック剤、少なくとも1つの耐スクラッチ材料、または両方を含有することが可能である。
【0073】
光学情報媒体は、さらに、環境保護層55(
図1g)を備えることが可能である。環境保護層は、不潔物、水、または他の汚染物質がディスク構造に進入することを防止するために追加してもよい。典型的な環境保護層は、疎水性材料およびフッ素化疎水性材料を含む。
【0074】
光学情報媒体は、様々な異なる構成に編成された多くの異なる層を含むことが可能である。以下は、光学情報媒体製品における単純およびより複雑な層編成のいくつかの例である。層および層の適用順序には多くの変形が存在するため、これらの例は網羅的であることを意図していない。ガスが酸素含有ガスであり、データ層が炭素を含むことが、現時点では好ましい。
【0075】
最も単純な実施形態では、媒体は、少なくとも1つの支持基板と、支持基板およびデータ層が互いに面的に接触するようになされたガスが注入された少なくとも1つのデータ層とを備えることが可能である。現時点で好ましい実施形態では、データ層は支持基板の一方の面に面的に接触する。1つの現時点で好ましい実施形態では、支持基板はポリカーボネートである。別の現時点で好ましい実施形態では、支持基板は溶融石英またはガラスである。現時点で好ましい実施形態では、データ層は炭素を含む。ガスが酸素含有ガスであることが、現時点では好ましい。
【0076】
一実施形態では、媒体は、少なくとも1つの支持基板と、支持基板およびデータ層が互いに面的に接触するようになされたガスが注入された少なくとも1つのデータ層と、データ層およびアブレーションキャプチャ層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つのアブレーションキャプチャ層とを備えることが可能である。
【0077】
別の実施形態では、媒体は、少なくとも1つの支持基板と、支持基板およびデータ層が互いに面的に接触するようになされたガスが注入された少なくとも1つのデータ層と、データ層および反射キャプチャ層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つの反射キャプチャ層とを備えることが可能である。これを
図1cに示す。
【0078】
別の実施形態では、媒体は、少なくとも1つの支持基板と、支持基板および拡散バリア層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つの拡散バリア層と、拡散バリア層およびデータ層が互いに面的に接触するようになされたガスが注入された少なくとも1つのデータ層と、データ層および反射キャプチャ層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つの反射キャプチャ層とを備えることが可能である。これを
図1eに示す。
【0079】
別の実施形態では、媒体は、少なくとも1つの支持基板と、支持基板および拡散バリア層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つの拡散バリア層と、拡散バリア層およびデータ層が互いに面的に接触するようになされたガスが注入された少なくとも1つのデータ層と、データ層および反射キャプチャ層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つの反射キャプチャと、反射キャプチャ層および保護シーラントバリア層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つの保護シーラントバリア層とを備えることが可能である。これを
図1fに示す。
【0080】
別の実施形態では、媒体は、第1の面および第2の面を有する少なくとも1つの支持基板と、支持基板および拡散バリア層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つの拡散バリア層と、拡散バリア層およびデータ層が互いに面的に接触するようになされたガスが注入された少なくとも1つのデータ層と、データ層および反射キャプチャ層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つの反射キャプチャ層と、反射キャプチャ層および保護シーラントバリア層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つの保護シーラントバリア層と、支持基板および紫外線放射ブロック層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つの紫外線放射ブロック層と、耐スクラッチ層および紫外線放射ブロック層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つの耐スクラッチ層と、環境保護層および紫外線放射ブロック層が互いに面的に接触するようになされた少なくとも1つの環境保護層とを備えることが可能である。これを
図1gに示す。
【0081】
非常に具体的な実施形態では、光学情報媒体は、ポリカーボネート、溶融石英、またはガラスの支持基板と、二酸化炭素が注入された非晶質炭素のデータ層とを備えることが可能である。
【0082】
作製方法−炭素層
本発明の追加の実施形態は、光学情報媒体を作製する方法に関する。一般に、方法は、支持基板を提供するステップと、1つ以上の追加の層を適用して光学情報媒体を作製するステップとを含むことが可能である。
【0083】
光学情報媒体製品において所望される特定の層構造によって、様々な層を様々な順序で適用することが可能である。すべての層を支持基板の片側に適用し、一方の外面に支持基板が配置された最終製品を得ることが可能である。あるいは、各層を支持基板の両側に適用し、最終製品の外面に支持基板が配置されていない最終製品を得ることが可能である。
【0084】
最も単純な実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、支持基板およびデータ層が互いに面的に接触するように、ガスが注入された少なくとも1つのデータ層を支持基板の少なくとも一方の面に適用するステップとを含むことが可能である。現時点で好ましい実施形態では、データ層は支持基板の一方の面に適用される。支持基板は、上述の支持基板のいずれであることも可能である。1つの現時点で好ましい実施形態では、支持基板はポリカーボネートである。別の現時点で好ましい実施形態では、支持基板は溶融石英またはガラスである。
【0085】
方法は、さらに、適用ステップに先立って、支持基板を真空に露出させるステップを含むことが可能である。
【0086】
適用ステップでは、スパッタリングを用いてデータ層および他の層を適用することが可能である。スパッタリングによりデータ層を形成するステップは、前駆材料および少なくとも1種類のガスを提供するステップと、前駆材料にエネルギーを印加して前駆材料を気化させるステップと、ガスがデータ層に注入されるように気化した前駆材料およびガスを支持基板上に堆積させるステップとを含むことが可能である。現時点で好ましい実施形態では、前駆材料は炭素である。ガスは、上述のいずれのガスであることも可能である。現時点で好ましい実施形態では、ガスは、二酸化炭素などの上述の酸素含有ガスのいずれかである。スパッタリング中、アルゴン、クリプトン、窒素、ヘリウム、およびネオンなどの追加の非酸素含有ガスが存在してもよい。これらのガスは、一般的に、不活性スパッタリングキャリアガスとして用いられる。スパッタリングは、単一のチャンバおよび1つ以上のターゲットを有するのが典型的な実験室規模の装置(Kurt J.Lesker Company(Pittsburgh,PA)のPVD 75装置など)を用いて行うか、または、複数のチャンバおよび複数のターゲットを有する工業規模の装置(Oerlikon Systems(Pfaeffikon,Switzerland)のSprinter装置など)を用いて行うことが可能である。
【0087】
スパッタリング中のガスの濃度は、約0.01%(v/v)〜約25%(v/v)であることが可能である。具体的な濃度は、約0.01%(v/v)、約0.05%(v/v)、約0.1%(v/v)、約0.5%(v/v)、約1%(v/v)、約2%(v/v)、約3%(v/v)、約4%(v/v)、約5%(v/v)、約10%(v/v)、約15%(v/v)、約20%(v/v)、約25%(v/v)、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲であることが可能である。これらの値は、不活性スパッタリングキャリアガス(典型的にはアルゴン)に対する容量/容量である。
【0088】
スパッタリング以外の方法を用いてデータ層および他の層を適用することが可能である。例えば、プラズマ重合、Eビーム蒸着、化学蒸着、分子線エピタキシ、および蒸着を用いることが可能である。
【0089】
ガスが注入された少なくとも1つのデータ層を適用するステップは、単一のステップとして行うことが可能である。あるいは、適用ステップは、注入ガスを有さないデータ層を適用する第1のステップと、データ層にガスを注入する第2のステップとの2つのステップとして行うことが可能である。
【0090】
より複雑な実施形態では、1つ以上の追加の層を支持基板に適用することが可能である。支持基板は、第1の面および第2の面を有することが可能である。追加の層は、それらが支持基板の第1の面から、第2の面から、または第1の面と第2の面との両方から延在して存在するように配向させることが可能である。追加の層が支持基板の一方の面のみから延在して存在するのであれば、最終的に作製される製品では、支持基板の一方の面が露出している。追加の層が支持基板の第1の面と第2の面との両方から延在して存在するのであれば、最終的に作製される製品では、支持基板が露出していない。1つ以上の追加の層は、支持基板に対して対称的に、または支持基板に対して非対称的に配向させることが可能である。
【0091】
いくつかの実施形態では、データ層を最外層上に適用する前に、1つ以上の層を支持基板に適用することが可能である。例えば、方法は、さらに、以下の層の1つ以上を適用するステップを含むことが可能である:アブレーションキャプチャ層、反射キャプチャ層、保護シーラントバリア層、紫外線放射ブロック層、耐スクラッチ層、および環境保護層。
【0092】
いくつかの実施形態では、ある層を第1の支持基板に適用することが可能であり、ある層を第2の支持基板に適用することが可能であり、第1の支持基板および第2の支持基板を面的に接合または接着することが可能である。この方法は、DVD媒体の作製について特に魅力的である。
【0093】
以下は、多層光学データ媒体を作製する方法の特定の例である。層および層の適用順序には多くの変形が存在するため、これらの例は網羅的であることを意図していない。支持基板の第1の面と第2の面との両方に層が適用される実施形態では、特定の層の適用順序を変化させて同じ最終的な光学データ媒体製品に到達ことが可能である。
【0094】
一実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、支持基板およびデータ層が互いに面的に接触するように、ガスが注入された少なくとも1つのデータ層を支持基板上に適用するステップと、データ層およびアブレーションキャプチャ層が互いに面的に接触するように少なくとも1つのアブレーションキャプチャ層をデータ層上に適用するステップとを含むことが可能である。
【0095】
別の実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、支持基板およびデータ層が互いに面的に接触するように、ガスが注入された少なくとも1つのデータ層を支持基板上に適用するステップと、データ層および反射キャプチャ層が互いに面的に接触するように少なくとも1つの反射キャプチャ層をデータ層上に適用するステップとを含むことが可能である。
【0096】
別の実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、支持基板および拡散バリア層が互いに面的に接触するように少なくとも1つの拡散バリア層を支持基板上に適用するステップと、拡散バリア層およびデータ層が互いに面的に接触するように、ガスが注入された少なくとも1つのデータ層を拡散バリア層上に適用するステップと、データ層および反射キャプチャ層が互いに面的に接触するように少なくとも1つの反射キャプチャ層をデータ層上に適用するステップとを含むことが可能である。
【0097】
別の実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、支持基板および拡散バリア層が互いに面的に接触するように少なくとも1つの拡散バリア層を支持基板上に適用するステップと、拡散バリア層およびデータ層が互いに面的に接触するように、ガスが注入された少なくとも1つのデータ層を拡散バリア層上に適用するステップと、データ層および反射キャプチャ層が互いに面的に接触するように少なくとも1つの反射キャプチャ層をデータ層上に適用するステップと、反射キャプチャ層および保護シーラントバリア層が互いに面的に接触するように少なくとも1つの保護シーラントバリア層を適用するステップとを含むことが可能である。
【0098】
別の実施形態では、方法は、第1の面および第2の面を有する支持基板を提供するステップと、支持基板および拡散バリア層が互いに面的に接触するように少なくとも1つの拡散バリア層を支持基板の第1の面上に適用するステップと、拡散バリア層およびデータ層が互いに面的に接触するように、ガスが注入された少なくとも1つのデータ層を拡散バリア層上に適用するステップと、データ層および反射キャプチャ層が互いに面的に接触するように少なくとも1つの反射キャプチャ層をデータ層上に適用するステップと、反射キャプチャ層および保護シーラントバリア層が互いに面的に接触するように少なくとも1つの保護シーラントバリア層を反射キャプチャ層上に適用するステップと、支持基板および紫外線放射ブロック層が互いに面的に接触するように少なくとも1つの紫外線放射ブロック層を支持基板の第2の面上に適用するステップと、耐スクラッチ層および紫外線放射ブロック層が互いに面的に接触するように少なくとも1つの耐スクラッチ層を紫外線放射ブロック層上に適用するステップと、環境保護層および耐スクラッチ層が互いに面的に接触するように少なくとも1つの環境保護層を耐スクラッチ層上に適用するステップとを備えることが可能である。
【0099】
材料−データ層に隣接する炭素層
本発明の一実施形態は、アーカイブ目的に好適な光学情報媒体を備える。材料および製造プロセスは、非常に高い耐久性を有し、実質的な程度の経年劣化作用を受けないように設計される。同様に、情報書き込みプロセスは、恒久的であり、実質的な程度の経年劣化作用を受けないことが意図される。媒体は、少なくとも1つのデータ層60と、少なくとも1つの炭素層65と、少なくとも1つの支持基板10とを備える。炭素層およびデータ層が面的に接触していることが現時点では好ましいが、それらの間に少なくとも1つの介在層を配置することが可能である。
【0100】
炭素層の存在により、多くの芳しい特性を光学情報媒体に付与することが可能である。炭素層は、熱コンデンサとして作用し、データ層からの熱伝達を容易化することが可能である。これは、データ層にデータを書き込むために高出力レーザが用いられるときに特に有用である。高出力レーザは、放散されなければ隣接するデータを損傷または劣化させ得る高温の局所熱ブルーミングを形成する可能性がある。極端な場合、熱ブルーミングは、後続の読み取りステップ中にデータをトラッキングする際に用いられる基板の溝が損傷させる可能性がある。また、炭素層は、透過性バリアとしても作用し、酸素、水蒸気、およびデータ層の材料を酸化またはその他劣化させ得る他の作用剤へのデータ層の露出を制限することが可能である。炭素層は、誘電体層において伝統的に用いられる材料よりも柔軟であることが可能であり、その柔軟性は、ガスまたは他の材料の添合により「調節」することが可能である。この柔軟性により、応力の低下がもたらされ、クラックを低減または解消することが可能になり、炭素層が隣接する層から分離するという望ましくない事態を低減または解消することが可能になる。また、炭素は、高融点の耐火材料でもあり、高出力レーザを用いてデータ層にデータを書き込むときに達する瞬時の高温に抗する助けにもなる。
【0101】
データ層は、一般に、ディスクドライブなどの好適な装置を用いてデータを書き込むおよびデータを読み出すのに好適ないずれの1つまたは複数の材料であることも可能である。炭素層は、一般に、いずれのデータ層ともともに用いて本発明の様々な実施形態を形成することが可能である。データ層において用いられる材料の例は、有機染料、金属、金属合金、金属酸化物、ガラス、およびセラミックを含む。
【0102】
データ層は、一般に、いずれの厚さであることも可能である。厚さの下限の例は、約2nmであることが可能である。厚さの上限の例は、約250nmであることが可能である。厚さの例は、約2nm、約4nm、約6nm、約8nm、約10nm、約12nm、約14nm、約15nm、約16nm、約18nm、約20nm、約22nm、約24nm、約25nm、約26nm、約28nm、約30nm、約32nm、約34nm、約35nm、約36nm、約38nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約140nm、約150nm、約160nm、約170nm、約180nm、約190nm、約200nm、約210nm、約220nm、約230nm、約240nm、約250nm、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲であることが可能である。
【0103】
炭素層は、元素炭素(C)を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなることが可能である。元素炭素の例は、非晶質炭素、黒鉛状非晶質炭素、四面体非晶質炭素、ダイヤモンド様非晶質炭素、ポリマー様非晶質炭素、ガラス様炭素、ダイヤモンド様炭素、およびカーボンブラックを含む。炭素層を用いることにより、炭素層を含まない点以外は同一の光学情報媒体に対して、隣接する層の間の付着性を向上させることが可能である。
【0104】
光学情報媒体が2つ以上の炭素層を備えるのであれば、それらはそれぞれ同じであっても異なってもよい。
【0105】
炭素層は、注入ガスを含まないことが可能である。あるいは、炭素層は、さらに、少なくとも1種類の注入ガスを含むことが可能である。「注入」との用語は、少なくとも1種類のガスが炭素材料層内またはその上に共有結合、捕捉、または吸着された状態を言う。ガスは、酸素原子を含まないことも酸素原子を含有することも可能である。酸素原子を含まないガスの例は、分子状水素(H
2)、分子状窒素(N
2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、塩素(Cl
2)、およびフッ素(F
2)を含む。少なくとも1つの酸素原子を含有するガスの例は、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO
2)、分子状酸素(O
2)、オゾン(O
3)、窒素酸化物(NO
x)、および硫黄酸化物(SO
x)を含む。具体的な実施形態は、注入ガスとして二酸化炭素(CO
2)を含むことが可能である。代替の具体的な実施形態は、注入ガスとして分子状水素(H
2)を含むことが可能である。あるいは、メタン、エタン、プロパン、またはアセチレンなどの様々な炭化水素化合物を用いて炭素層に水素ガスを導入することが可能である。
【0106】
あるいは、炭素層は、さらに、アルミニウムなどの追加の固体を含むことが可能である。
【0107】
炭素層は、一般に、いずれの厚さであることも可能である。厚さの下限は、約1つの炭素の単一層分であることが可能である。代替の厚さの下限は、約10nmであることが可能である。厚さの上限は、約200nmであることが可能である。厚さの例は、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約140nm、約150nm、約160nm、約170nm、約180nm、約190nm、約200nm、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲を含む。
【0108】
炭素層は、好ましくは、光学情報媒体における隣接する層と不混和性である。炭素層は、好ましくは、光学情報媒体における隣接する層に付着する。炭素層は、好ましくは、光学情報媒体が平坦であることおよび媒体の長期間の凝集を容易化するため、実質的に応力が存在しない。
【0109】
光学情報媒体は、第1の支持基板と第2の支持基板とを備えることが可能である。第1の支持基板および第2の支持基板は、同じ材料で作製することが可能であり、または異なる材料で作製することが可能である。第1の支持基板および第2の支持基板は、典型的には、それらが光学情報媒体の外側の2つの層を形成する(すなわち、断面で見たときに最初および最後の層である)ように配向させる。これは、DVD型フォーマットにおいて特に当てはまる。
【0110】
支持基板は、データ層または炭素層に面的に接触することが可能である。あるいは、支持基板とデータ層との間または支持基板と炭素層との間のいずれかに、少なくとも1つの介在層が存在することが可能である。これらの層編成を
図2a〜
図2dに示す。
【0111】
図2aに示す実施形態では、断面がまず支持基板、次いでデータ層、次いで炭素層と交差している。
図2bは、支持基板に対するデータ層および炭素層の代替の配向を示す。この図面では、断面がまず支持基板、次いで炭素層、次いでデータ層と交差している。
図2cに示す実施形態では、断面がまず支持基板、次いで少なくとも1つの介在層、次いでデータ層、次いで炭素層と交差している。
図2dは、支持基板に対するデータ層および炭素層の代替の配向を示す。この図面では、断面がまず支持基板、次いで少なくとも1つの介在層、次いで炭素層、次いでデータ層と交差している。
【0112】
介在層の例は、熱バリア層である。熱バリアは、金属材料層へのデータの書き込み中に発生する熱から基板を保護することが可能である。熱バリア層の例は、ガラス、セラミック、窒化物、および金属酸化物を含む。具体的な例は、シリカ(SiO
2)、シリカ−硫化亜鉛(SiO
2−ZnS)、窒化ケイ素(SiN)、炭素、アルミナ、ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、チタン酸化物(TiO
x)、およびタンタル酸化物(TaO
x)を含む。好適な付着特性で薄膜層に堆積させることが可能なものであれば、他の耐火材料を用いることが可能である。あるいは、誘電体層と比較してその熱伝導率が高いため、金属層を熱バリア層として用いることが可能である。金属層を用いることにより、熱を時間の経過とともに徐々に吸収および放散させるのでなく、熱をデータ部位から素早く伝導させることができる。
【0113】
データ層は、2つの炭素層の間に「サンドイッチ」することが可能である。この場合、データ層は、第1の炭素層75と第2の炭素層80との両方に面的に接触する。この例を
図3aに示す。この図面では、断面がまず支持基板、次いで第1の炭素層、次いでデータ層、次いで第2の炭素層と交差している。
【0114】
代替の実施形態を
図3bに示す。この図面では、断面がまず支持基板、次いで少なくとも1つの介在層、次いで第1の炭素層、次いでデータ層、次いで第2の炭素層と交差している。
【0115】
第1の支持基板と第2の支持基板とを備える代替の実施形態を
図3cおよび
図3dに示す。
図3cでは、断面がまず第1の支持基板85、次いでデータ層60、次いで炭素層65、次いで第2の支持基板90と交差している。
図3dでは、断面がまず第1の支持基板85、次いで第1の炭素層75、次いでデータ層60、次いで第2の炭素層80、次いで第2の支持基板90と交差している。
【0116】
複数の支持基板と複数の介在層とを備えるさらに別の代替の実施形態を
図3eに示す。
図3eでは、断面がまず第1の支持基板85、次いで第1の1つ以上の介在層95、次いで第1の炭素層75、次いでデータ層60、次いで第2の炭素層80、次いで第2の1つ以上の介在層100、次いで第2の支持基板90と交差している。
【0117】
光学情報媒体は、さらに、少なくとも1つの反射層、少なくとも1つの外部保護層、少なくとも1つのヒートシンク層、少なくとも1つの光学調節層、または少なくとも1つの接着層などの追加の層を備えることが可能である。他の層を追加することで、光路長を増加させて建設的または相殺的干渉により構造の反射率を変調させることにより、光学情報媒体の光学的挙動を調節することが可能である。
【0118】
データ層は、さらに、データを書き込み済の1つ以上の部位を含むことが可能である。これらの部位は、データを未書き込みの他の部位との検出可能な差異を示す。
【0119】
作製方法−炭素層誘電体
本発明の追加の実施形態は、光学情報媒体を作製する方法を対象とする。
【0120】
光学情報媒体製品において所望される特定の層構造によって、様々な層を様々な順序で適用することが可能である。すべての層を支持基板の片側に適用し、一方の外面に支持基板が配置された最終製品を得ることが可能である。あるいは、各層を支持基板の両側に適用し、最終製品の外面に支持基板が配置されていない最終製品を得ることが可能である。炭素層およびデータ層が面的に接触していることが現時点では好ましいが、それらの間に少なくとも1つの介在層を配置することが可能である。
【0121】
一実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、データ層が支持基板に面的に接触するようにデータ層を適用するステップと、炭素層がデータ層に面的に接触するように炭素層を適用するステップとを含むことが可能である。この方法を行うことにより、
図2aに示すものなどの光学情報媒体を生産することが可能である。
【0122】
代替の実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、炭素層が支持基板に面的に接触するように炭素層を適用するステップと、データ層が炭素層に面的に接触するようにデータ層を適用するステップとを含むことが可能である。この方法を行うことにより、
図2bに示すものなどの光学情報媒体を生産することが可能である。
【0123】
代替の実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、介在層が支持基板に面的に接触するように少なくとも1つの介在層を適用するステップと、データ層が介在層に面的に接触するようにデータ層を適用するステップと、炭素層がデータ層に面的に接触するように炭素層を適用するステップとを含むことが可能である。この方法を行うことにより、
図2cに示すものなどの光学情報媒体を生産することが可能である。
【0124】
代替の実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、介在層が支持基板に面的に接触するように少なくとも1つの介在層を適用するステップと、炭素層が介在層に面的に接触するように炭素層を適用するステップと、データ層が炭素層に面的に接触するようにデータ層を適用するステップとを含むことが可能である。この方法を行うことにより、
図2dに示すものなどの光学情報媒体を生産することが可能である。
【0125】
さらに別の代替の実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、第1の炭素層が支持基板に面的に接触するように第1の炭素層を適用するステップと、データ層が第1の炭素層に面的に接触するようにデータ層を適用するステップと、第2の炭素材料層がデータ層に面的に接触するように第2の炭素層を適用するステップとを含むことが可能である。この方法を行うことにより、
図3aに示すものなどの光学情報媒体を生産することが可能である。
【0126】
さらに別の代替の実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、介在層が支持基板に面的に接触するように少なくとも1つの介在層を適用するステップと、第1の炭素層が介在層に面的に接触するように第1の炭素層を適用するステップと、データ層が第1の炭素層に面的に接触するようにデータ層を適用するステップと、第2の炭素材料層がデータ層に面的に接触するように第2の炭素層を適用するステップとを含むことが可能である。この方法を行うことにより、
図3bに示すものなどの光学情報媒体を生産することが可能である。
【0127】
一実施形態では、方法は、第1の支持基板を提供するステップと、データ層が第1の支持基板に面的に接触するようにデータ層を適用するステップと、炭素層がデータ層に面的に接触するように炭素層を適用するステップと、第2の支持基板が炭素層に面的に接触するように第2の支持基板を適用するステップとを含むことが可能である。この方法を行うことにより、
図3cに示すものなどの光学情報媒体を生産することが可能である。
【0128】
さらに別の代替の実施形態では、方法は、第1の支持基板を提供するステップと、第1の炭素層が第1の支持基板に面的に接触するように第1の炭素層を適用するステップと、データ層が第1の炭素層に面的に接触するようにデータ層を適用するステップと、第2の炭素材料層がデータ層に面的に接触するように第2の炭素層を適用するステップと、第2の支持基板が第2の炭素層に面的に接触するように第2の支持基板を適用するステップとを含むことが可能である。この方法を行うことにより、
図3dに示すものなどの光学情報媒体を生産することが可能である。
【0129】
さらに別の代替の実施形態では、方法は、第1の支持基板を提供するステップと、第1の介在層が第1の支持基板に面的に接触するように少なくとも1つの第1の介在層を適用するステップと、第1の炭素層が第1の介在層に面的に接触するように第1の炭素層を適用するステップと、データ層が第1の炭素層に面的に接触するようにデータ層を適用するステップと、第2の炭素層がデータ層に面的に接触するように第2の炭素層を適用するステップと、第2の介在層が第2の炭素層に面的に接触するように少なくとも1つの第2の介在層を適用するステップと、第2の支持基板が第2の炭素層に面的に接触するように第2の支持基板を適用するステップとを含むことが可能である。この方法を行うことにより、
図3eに示すものなどの光学情報媒体を生産することが可能である。
【0130】
適用ステップは、物理蒸着法(スパッタリング、反応性スパッタリング、eビーム蒸着、およびターゲットのレーザアブレーションなど)または化学蒸着法を含むことが可能である。スパッタリングは、単一のチャンバおよび1つ以上のターゲットを有するのが典型的な実験室規模の装置(Kurt J.Lesker Company(Pittsburgh,PA)のPVD 75装置など)を用いて行うか、または、複数のチャンバおよび複数のターゲットを有する工業規模の装置(Oerlikon Systems(Pfaeffikon,Switzerland)のSprinter装置など)を用いて行うことが可能である。
【0131】
材料−炭素層および金属データ層のアセンブリ
本発明の一実施形態は、アーカイブ目的に好適な光学情報媒体を備える。材料および製造プロセスは、非常に高い耐久性を有し、実質的な程度の経年劣化作用を受けないように設計される。同様に、情報書き込みプロセスは、恒久的であり、実質的な程度の経年劣化作用を受けないことが意図される。媒体は、少なくとも1つの金属材料層105と、少なくとも1つの炭素材料層65と、少なくとも1つの支持基板10とを備える。
【0132】
金属材料層は、少なくとも1つの金属もしくは金属合金を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。金属材料層は、2つ以上の金属または金属合金の混合物を含有することが可能である。金属および合金の例は、テルル、テルル合金、セレン、セレン合金、ヒ素、ヒ素合金、錫、錫合金、ビスマス、ビスマス合金、アンチモン、アンチモン合金、鉛、および鉛合金を含む。テルル合金の例は、Te
xSe
100−x、Te
xSe
100−x(Xは95以下)、Te
86Se
14、Te
79Se
21、Te
xSb
100−x、Te
xSb
100−x(Xは95以下)、Te
xSe
ySb
z、Te
xSe
ySb
z(X+Y+Z=100)、Te
xSe
ySb
z(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te
75Se
20Sb
5、Te
72.5Se
20Sb
7.5、Te
xSe
yIn
z、Te
xSe
yIn
z(X+Y+Z=100)、Te
xSe
yIn
z(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te
75Se
20In
5、Te
72.5Se
20In
7.5、Te
xSe
yPb
z、Te
xSe
yPb
z(X+Y+Z=100)、Te
xSe
yPb
z(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te
75Se
20Pb
5、Te
72.5Se
20Pb
7.5、Te
xSe
ySn
z、Te
xSe
ySn
z(X+Y+Z=100)、Te
xSe
ySn
z(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te
75Se
20Sn
5、Te
72.5Se
20Sn
7.5、Te
xSe
yBi
z、Te
xSe
yBi
z(X+Y+Z=100)、Te
xSe
yBi
z(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te
75Se
20Bi
5、Te
72.5Se
20Bi
7.5、TeGeAs、TeGeSbS、TeO
xGe、TeO
xSn、Pb−Te−Se、Pb−Te−Sb、As−Te、およびGe−Teを含む。他の合金の例は、As−Se、Ge−Se、GeS、SnS、Sb−S、Bi
xSb
100−x、Bi
xSb
100−x(Xは95以下)を含む。合金の他の例は、GeS、As
2S
3、SnS、Sb
2S
3、Sb
20S
80、GeSe、As
2Se
3、SnSe、Sb
2Se
3、Bi
2Se
3、GeTe、Ge
10Te
90、As
2Te
3、SnTe、Sb
2Te
3、PbTe、Bi
2Te
3、As
10Te
90、As
32Te
68、InTe
3、In
2S
3、CdTe、およびIn
2Se
3を含む。追加の金属および合金は、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ステンレス鋼、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、Monel(海洋用途で一般的に用いられるニッケル、銅、および鉄の合金)、ケイ素(Si)、AuSi、CuNi、およびNiCrを含む。現時点で好ましい金属材料層は、クロム、テルル、またはテルル合金を含む。
【0133】
金属材料層は、一般に、いずれの厚さであることも可能である。厚さの下限の例は、約2nmであることが可能である。厚さの上限の例は、約250nmであることが可能である。厚さの例は、約2nm、約4nm、約6nm、約8nm、約10nm、約12nm、約14nm、約16nm、約18nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約140nm、約150nm、約160nm、約170nm、約180nm、約190nm、約200nm、約210nm、約220nm、約230nm、約240nm、約250nm、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲である。
【0134】
炭素材料層は、少なくとも1つの炭素化合物を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。炭素化合物の例は、非晶質炭素、ガラス様炭素、ダイヤモンド様炭素、およびカーボンブラックを含む。
【0135】
光学情報媒体が2つ以上の炭素材料層を備えるのであれば、それらはそれぞれ同じであっても異なってもよい。
【0136】
炭素材料層は、注入ガスを含まないことが可能である。あるいは、炭素材料層は、さらに、少なくとも1種類の注入ガスを含むことが可能である。「注入」との用語は、少なくとも1種類のガスが炭素材料層内またはその上に共有結合、捕捉、または吸着された状態を言う。ガスは、酸素原子を含まないことも酸素原子を含有することも可能である。酸素原子を含まないガスの例は、分子状水素(H
2)、分子状窒素(N
2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、塩素(Cl
2)、およびフッ素(F
2)を含む。少なくとも1つの酸素原子を含有するガスの例は、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO
2)、分子状酸素(O
2)、オゾン(O
3)、窒素酸化物(NO
x)、および硫黄酸化物(SO
x)を含む。具体的な実施形態は、注入ガスとして二酸化炭素(CO
2)を含むことが可能である。代替の具体的な実施形態は、注入ガスとして分子状水素(H
2)を含むことが可能である。
【0137】
炭素層は、一般に、いずれの厚さであることも可能である。厚さの下限は、約1つの炭素の単一層分であることが可能である。代替の厚さの下限は、約10nmであることが可能である。厚さの上限は、約200nmであることが可能である。厚さの例は、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約10nm、約15nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約140nm、約150nm、約160nm、約170nm、約180nm、約190nm、約200nm、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲を含む。現時点で好ましい厚さは、第1の炭素層については約19nm、第2の炭素層については約13nmである。
【0138】
光学情報媒体は、第1の支持基板と第2の支持基板とを備えることが可能である。第1の支持基板および第2の支持基板は、同じ材料で作製することが可能であり、または異なる材料で作製することが可能である。第1の支持基板および第2の支持基板は、典型的には、それらが光学情報媒体の外側の2つの層を形成する(すなわち、断面で見たときに最初および最後の層である)ように配向させる。これは、DVD型フォーマットにおいて特に当てはまる。
【0139】
支持基板は金属材料層に面的に接触することが可能であり、または、それらの間に少なくとも1つの介在層が存在することが可能である。金属材料層は、炭素材料層に面的に接触することが可能である。これらの層編成を
図4a〜
図4dに示す。
図4aに示す実施形態では、断面がまず支持基板10、次いで金属材料層105、次いで炭素材料層65と交差している。
図4bは、支持基板に対する金属材料層および炭素材料層の代替の配向を示す。この図面では、断面がまず支持基板10、次いで炭素材料層65、次いで金属材料層105と交差している。
図4cに示す実施形態では、断面がまず支持基板10、次いで少なくとも1つの介在層70、次いで金属材料層105、次いで炭素材料層65と交差している。
【0140】
介在層の例は、熱バリア層である。熱バリアは、金属材料層へのデータの書き込み中に発生する熱から基板を保護することが可能である。熱バリア層の例は、シリカ(SiO
2)または炭素を含む。
【0141】
金属材料層は、2つの炭素材料層の間に「サンドイッチ」することが可能である。この場合、金属材料層は、第1の炭素材料層と第2の炭素材料層との両方に面的に接触する。この例を
図4dに示す。この図面では、断面がまず第1の支持基板85、次いで第1の炭素材料層110、次いで金属材料層105、次いで第2の炭素材料層115、次いで第2の支持基板90と交差している。
【0142】
代替の簡素化された「サンドイッチ」構成は、少なくとも1つの支持基板10、第1の炭素材料層110、金属材料層105、および第2の炭素材料層115を備え得る。支持基板は第1の炭素材料層と直接接触することが可能であり、または、支持基板と第1の炭素材料層との間に少なくとも1つの介在層が存在することが可能である。第1の炭素材料層は、金属材料層に面的に接触することが可能であり、金属材料層は、第2の炭素材料層に面的に接触することが可能である。断面がまず支持基板、次いで第1の炭素材料層、次いで金属材料層、次いで第2の炭素材料層と交差している。
【0143】
作製方法−炭素層および金属データ層
本発明の追加の実施形態は、光学情報媒体を作製する方法を対象とする。
【0144】
光学情報媒体製品において所望される特定の層構造によって、様々な層を様々な順序で適用することが可能である。すべての層を支持基板の片側に適用し、一方の外面に支持基板が配置された最終製品を得ることが可能である。あるいは、各層を支持基板の両側に適用し、最終製品の外面に支持基板が配置されていない最終製品を得ることが可能である。
【0145】
一実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、金属材料層が支持基板に面的に接触するように金属材料層を適用するステップと、炭素材料層が金属材料層に面的に接触するように炭素材料層を適用するステップとを含むことが可能である。
【0146】
代替の実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、介在層が支持基板に面的に接触するように少なくとも1つの介在層を適用するステップと、金属材料層が介在層に面的に接触するように金属材料層を適用するステップと、炭素材料層が金属材料層に面的に接触するように炭素材料層を適用するステップとを含むことが可能である。
【0147】
さらに別の代替の実施形態では、方法は、第1の支持基板を提供するステップと、第1の炭素材料層が第1の支持基板に面的に接触するように第1の炭素材料層を適用するステップと、金属材料層が第1の炭素材料層に面的に接触するように金属材料層を適用するステップと、第2の炭素材料層が金属材料層に面的に接触するように第2の炭素材料層を適用するステップと、第2の支持基板が第2の炭素材料層に面的に接触するように第2の支持基板を適用するステップとを含むことが可能である。
【0148】
適用ステップは、物理蒸着法(スパッタリング、反応性スパッタリング、eビーム蒸着、およびターゲットのレーザアブレーションなど)または化学蒸着法を含むことが可能である。スパッタリングは、単一のチャンバおよび1つ以上のターゲットを有するのが典型的な実験室規模の装置(Kurt J.Lesker Company(Pittsburgh,PA)のPVD 75装置など)を用いて行うか、または、複数のチャンバおよび複数のターゲットを有する工業規模の装置(Oerlikon Systems(Pfaeffikon,Switzerland)のSprinter装置など)を用いて行うことが可能である。
【0149】
材料−注入ガスを含むテルルデータ層
本発明の一実施形態は、アーカイブ目的に好適な光学情報媒体を備える。材料および製造プロセスは、非常に高い耐久性を有し、実質的な程度の経年劣化作用を受けないように設計される。同様に、情報書き込みプロセスは、恒久的であり、実質的な程度の経年劣化作用を受けないことが意図される。光学情報媒体は、少なくとも1つのテルルおよび炭素酸化物(一酸化炭素、二酸化炭素、または一酸化炭素と二酸化炭素との両方)のデータ層120と、少なくとも1つの支持基板10とを備える。
【0150】
テルルおよび二酸化炭素のデータ層は、テルル材料および炭素酸化物(CO
x、x=1または2;一酸化炭素、二酸化炭素、または一酸化炭素と二酸化炭素との両方)を備えるか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。二酸化炭素または一酸化炭素は、いずれかの様式でデータ層に含まれることが可能である。例えば、二酸化炭素または一酸化炭素は、データ層におけるテルル材料内またはその上に共有結合、捕捉、または吸着されることが可能である。二酸化炭素または一酸化炭素は、略いずれの濃度でもデータ層に存在することが可能である。
【0151】
テルル材料は、テルル金属(Te)または少なくとも1つのテルル合金であることが可能である。テルルは、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)、鉛(Pb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、酸素(O)、カドミウム(Cd)、またはそれらの組み合わせなどの種々の他の元素と合金化することが可能である。テルル合金は、テルル金属よりも酸化に対して安定的であり得る。
【0152】
テルル合金の例は、Te
xSe
100−x、Te
xSe
100−x(Xは95以下)、Te
86Se
14、Te
79Se
21、Te
xSb
100−x、Te
xSb
100−x(Xは95以下)、Te
xSe
ySb
z、Te
xSe
ySb
z(X+Y+Z=100)、Te
xSe
ySb
z(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te
75Se
20Sb
5、Te
72.5Se
20Sb
7.5、Te
3Sb
2、Te
xSe
yIn
z、Te
xSe
yIn
z(X+Y+Z=100)、Te
xSe
yIn
z(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、InTe
3、Te
75Se
20In
5、Te
72.5Se
20In
7.5、Te
xSe
yPb
z、Te
xSe
yPb
z(X+Y+Z=100)、Te
xSe
yPb
z(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te
75Se
20Pb
5、Te
72.5Se
20Pb
7.5、TePb、Te
xSe
ySn
z、Te
xSe
ySn
z(X+Y+Z=100)、Te
xSe
ySn
z(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te
75Se
20Sn
5、Te
72.5Se
20Sn
7.5、Te
3Bi
2、Te
xSe
yBi
z、Te
xSe
yBi
z(X+Y+Z=100)、TeSn、Te
xSe
yBi
z(X+Y+Z=100、Yは10〜30、およびZは5〜20)、Te
75Se
20Bi
5、Te
72.5Se
20Bi
7.5、TeGeAs、TeGeSbS、TeO
xGe、TeO
xSn、Pb−Te−Se、Pb−Te−Sb、As−Te、As
10Te
90、As
32Te
68、Ge−Te、Ge
10Te
90、CdTe、およびPbTeを含む。他の合金の例は、GeTe、Ge
10Te
90、As
2Te
3、SnTe、Sb
2Te
3、PbTe、Bi
2Te
3、As
10Te
90、As
32Te
68、およびInTe
3を含む。
【0153】
テルルおよび二酸化炭素または一酸化炭素のデータ層は、一般に、いずれの厚さであることも可能である。厚さの下限の例は、約2nmであることが可能である。厚さの上限の例は、約250nmであることが可能である。厚さの例は、約2nm、約4nm、約6nm、約8nm、約10nm、約12nm、約14nm、約16nm、約18nm、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約140nm、約150nm、約160nm、約170nm、約180nm、約190nm、約200nm、約210nm、約220nm、約230nm、約240nm、約250nm、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲である。現時点で好ましい範囲は、約12nm〜約45nmであることが可能である。
【0154】
テルルおよび二酸化炭素または一酸化炭素のデータ層は、さらに、銀などの1つ以上の追加の材料を含むことが可能である。
【0155】
テルルおよび二酸化炭素または一酸化炭素のデータ層は、さらに、データを書き込み済の部位を含むことが可能である。これらの部位は、データを未書き込みの他の部位との検出可能な差異を示す。
【0156】
光学情報媒体は、第1の支持基板85と第2の支持基板90とを備えることが可能である。第1の支持基板および第2の支持基板は、同じ材料で作製することが可能であり、または異なる材料で作製することが可能である。第1の支持基板および第2の支持基板は、典型的には、それらが光学情報媒体の外側の2つの層を形成する(すなわち、断面で見たときに最初および最後の層である)ように配向させる。これは、DVD型フォーマットにおいて特に当てはまる。この編成を
図5cに示す。
【0157】
支持基板はテルルおよび二酸化炭素または一酸化炭素のデータ層に面的に接触することが可能であり、または、それらの間に少なくとも1つの介在層が存在することが可能である。これらの層編成を
図5aおよび
図5bに示す。
図5aに示す実施形態では、断面がまず支持基板、次いでデータ層と交差している。
図5bに示す実施形態では、断面がまず支持基板、次いで少なくとも1つの介在層、次いでデータ層と交差している。
図5bでは、支持基板が少なくとも1つの介在層に面的に接触し、少なくとも1つの介在層がデータ層に面的に接触している。
【0158】
介在層の例は、熱バリア層である。熱バリアは、データ層へのデータの書き込み中に発生する熱から基板を保護することが可能である。熱バリア層の例は、シリカ(SiO
2)、炭素、アルミナ、ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、チタン酸化物(TiO
x)、およびタンタル酸化物(TaO
x)を含む。
【0159】
介在層の追加の例は、熱伝導層である。この種の層は、データを書き込まれた部位から熱を伝導させ、隣接する部位への熱的損傷を低減または解消する。
【0160】
光学情報媒体は、さらに、少なくとも1つの反射層を備えることが可能である。反射層は、典型的には、反射層からデータ層までの距離が反射層から支持基板までの距離未満であるように、支持基板から離して配向される。
【0161】
光学情報媒体は、データ層に二酸化炭素または一酸化炭素を有さないように作製された類似の媒体よりも高い耐酸化性を示す。
【0162】
作製方法−注入ガスを含むテルルデータ層
本発明の追加の実施形態は、光学情報媒体を作製する方法を対象とする。
【0163】
光学情報媒体製品において所望される特定の層構造によって、様々な層を様々な順序で適用することが可能である。すべての層を支持基板の片側に適用し、一方の外面に支持基板が配置された最終製品を得ることが可能である。あるいは、各層を支持基板の両側に適用し、最終製品の外面に支持基板が配置されていない最終製品を得ることが可能である。
【0164】
一実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、データ層が支持基板に面的に接触するようにテルルならびに二酸化炭素および/または一酸化炭素のデータ層を適用するステップとを含むことが可能である。この方法により、
図5aに示すものなどの光学情報媒体が生産される。
【0165】
代替の実施形態では、方法は、支持基板を提供するステップと、介在層が支持基板に面的に接触するように少なくとも1つの介在層を適用するステップと、データ層が介在層に面的に接触するようにテルルならびに二酸化炭素および/または一酸化炭素のデータ層を適用するステップとを含むことが可能である。この方法により、
図5bに示すものなどの光学情報媒体が生産される。
【0166】
さらに別の代替の実施形態では、方法は、第1の支持基板を提供するステップと、データ層が第1の支持基板に面的に接触するようにテルルならびに二酸化炭素および/または一酸化炭素のデータ層を適用するステップと、第2の支持基板がデータ層に面的に接触するように第2の支持基板を適用するステップとを含むことが可能である。この方法により、
図5cに示すものなどの光学情報媒体が生産される。
【0167】
適用ステップは、物理蒸着法(スパッタリング、反応性スパッタリング、eビーム蒸着、およびターゲットのレーザアブレーションなど)または化学蒸着法を含むことが可能である。スパッタリングは、単一のチャンバおよび1つ以上のターゲットを有するのが典型的な実験室規模の装置(Kurt J.Lesker Company(Pittsburgh,PA)のPVD 75装置など)を用いて行うか、または、複数のチャンバおよび複数のターゲットを有する工業規模の装置(Oerlikon Systems(Pfaeffikon,Switzerland)のSprinter装置など)を用いて行うことが可能である。
【0168】
テルル金属またはテルル合金は、二酸化炭素、一酸化炭素、または二酸化炭素と一酸化炭素との両方の存在下で適用することが可能である。存在する二酸化炭素または一酸化炭素の濃度は、一般に、いずれの濃度であることも可能である。適用ステップ中に存在する二酸化炭素の濃度の例は、約1%(v/v)、約2%(v/v)、約2.5%(v/v)、約3%(v/v)、約4%(v/v)、約5%(v/v)、約6%(v/v)、約7%(v/v)、約8%(v/v)、約9%(v/v)、約10%(v/v)、約15%(v/v)、約20%(v/v)、約25%(v/v)、約30%(v/v)、約35%(v/v)、約40%(v/v)、約45%(v/v)、約50%(v/v)、およびこれらの値のいずれか2つの間の範囲であることが可能である。二酸化炭素と一酸化炭素との両方が用いられるのであれば、各々が同じ濃度または異なる濃度で存在することが可能である。100%の割合とするため、典型的には、希ガス、ヘリウム、ネオン、クリプトン、またはアルゴンなどの少なくとも1種類の不活性ガスが用いられる。アルゴンがその低コストのため現時点では好ましい。
【0169】
使用方法
上記デジタルデータ媒体のいずれかを用いてデジタルデータを格納することが可能である。方法は、デジタルデータ媒体を提供するステップと、金属材料層における部位にエネルギーを印加して媒体のデータ層において検出可能な変化を引き起こすステップとを含むことが可能である。方法は、さらに、データ層における変化を検出するステップを含むことが可能である。
【0170】
また、データ層における部位にエネルギーを印加するステップは、支持基板におけるトラックを変形させるために十分な熱を局所的に発生させる可能性がある。支持基板における変形した部位は、後に検出することが可能である。
【0171】
エネルギー印加ステップおよび検出ステップでは、レーザを用いることが可能である。主なクラスのレーザは、ガスレーザ、ダイオード励起固体レーザ、およびダイオードレーザを含む。
【0172】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために与えられるものである。以下の実施例において開示されている手法は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者(ら)により発見された手法を表し、従って、本発明の実施のために好ましい態様を構成するものと考えることが可能である、ということが当業者により理解されるべきである。しかし、開示されている具体的な実施形態において多くの変更を行うことが可能であり、なおも本発明の範囲から逸脱することなく同様または類似の結果が得られる、ということを当業者は本開示に照らして理解すべきである。
【実施例】
【0173】
実施例1:候補書き込み層材料の識別
光学媒体において書き込み層として用いるために好適な材料を識別するために、いくつかのツールおよびアプローチを採用することが可能である。第1のツールは、候補材料の相図である。相図は、熱力学的に安定した材料について説明し、融点、異なる化合物および構造への相分離、ピーク結晶温度、および共晶点についての情報を提供するものである。
【0174】
ある事前に選択された温度(摂氏100度など)よりも下で材料が安定する程度に高く、しかし製品における支持基板材料を変形も分解もさせることなくレーザにより融解させることが可能な程度に低い融点を有する書き込み層材料を、選択することが可能である。材料は、好ましくは、加熱により物質の2つの異なる状態(時として「共晶組成」と呼ばれる)に分離しない。材料は、好ましくは、加熱または冷却のいずれかにより2つの異なる相に分離しない。
【0175】
材料は、「理想的な」特質のすべてを満たさなくとも、なおも商用製品において用いるために好適であり得る。また、いずれの変化の動特性に関する情報も、候補材料を識別、ふるい分け、またはランク付けする助けになり得る。相変化動特性情報は、示差走査熱量測定およびX線結晶学などの方法を用いて得ることが可能である。動特性情報により、材料が所与の温度について相図に示す芳しいまたは芳しくない状態にどの程度速くまたは遅く近付くかを説明することが可能である。例えば、室温の摂氏約50度以内のピーク結晶温度を有する合金は、より高いピーク結晶温度を有する合金ほどは、商業的使用のために魅力的でなかろう。
【0176】
実施例2:反応性スパッタリングに用いられる一般的方法
PVD 75装置(Kurt J.Lesker Company;Pittsburgh,PA)を用いて、RFスパッタリングを行った。システムは、1つのRF電源と、3インチ(7.62cm)のターゲットを保持することが可能な3つのマグネトロンガンと、2種類のスパッタガスのための設備とで構成した。ターゲットは、スパッタアップ構成に編成した。3つのターゲットの各々をシャッタで覆った。200℃まで加熱することが可能な回転プラテン上に基板を載置した。回転プラテンをターゲットの上方に位置決めした。実験のほとんどは、プラテンを能動的に加熱することなく行った。能動的に加熱しない状態で、プラテンの温度は、400wでのスパッタリング時間の増加とともに徐々に上昇し、約60℃〜70℃の最高温度に達した。約3時間後に最高温度に達した。スパッタリング前のチャンバ内の当初温度は、典型的には、約27℃であった。時間、ターゲット、およびスパッタリング源は、以下の実施例において説明するように変化させた。
【0177】
基板には、典型的には、シリコン(Si)ウエハまたは約300nmにおけるUVを遮断するガラス顕微鏡スライドを用いた。プラズマ洗浄された基板をプラテン上に載置した。スパッタリング堆積速度の測定を容易化するために、シリコン基板の一部分をアクリル接着剤を有するテープ片でマスキングした。プラテンが定位置にある状態で、スパッタリングチャンバに真空を印加し、圧力を2.3×10
−5torrより低くした。次いで、チャンバ内の圧力が約12mtorrになるように、規定された割合のアルゴン(Ar)および二酸化炭素(CO
2)をチャンバに導入した。Capman圧力は13mtorrに維持した(Capman圧力はPVD 75装置の装置設定である)。次いで、炭素黒鉛ターゲット(99.999%;Kurt J.Lesker Company、部品番号EJTCXXX503A4)の上方でプラズマを点火した。出力をゆっくりと400wRFまで上昇させ、チャンバ圧を約2.3mtorr(Capman圧力は3mtorrに等しい)に低下させ、その間中、規定のAr対CO
2比を維持した。次に、黒鉛ターゲット上のシャッタを開き、基板をスパッタリングターゲットに所定の長さの時間露出させた。その時間の終わりに、ターゲット上のシャッタを閉じ、出力を低下させた。次いで、スパッタリングされた材料を含む基板を装置から除去し、解析およびさらなるプロセスを行った。
【0178】
実施例3:AFM厚さ測定のための一般的方法
Veeco Dimension 3100装置(Veeco;Plainview,NY)を用いて、タッピングモードにおいて取り込んだ画像で原子間力顕微鏡法(AFM)を行った。
【0179】
以下のようにAFMによりステップ高を測定するために被覆シリコンウエハを作製した。表面の一部分をマスキングしているテープを除去した。表面をアセトンで濡らし、アセトンを浸した綿棒で拭いて、ウエハの露出部分とマスキング部分との間の界面の残留接着剤および遊離物質を除去した。Siウエハ上の界面ステップ高をAFMにより測定した。Siウエハ上の膜のいくつかをXPSにより調査した。被覆ガラス顕微鏡スライドをUV−VIS分光法により解析した。
【0180】
実施例4:UV−VIS測定のための一般的方法
Agilent 8453 UV−VIS分光計(Agilent;Santa Clara,CA)を用いて、ガラススライド上の膜に対してUV−VIS分光分析を行った。分光法測定のために、分光計からの光ビームがまずスライドの空気−ガラスの界面、次いでガラス−膜の界面を通過するように、ガラススライドを配向させた。走査毎に無地の未被覆ガラススライドの走査を行った。被覆ガラススライドの吸光度スペクトルから無地ガラススライドの吸光度スペクトルを減算することにより、薄膜の吸光度スペクトルを求めた。無地ガラススライドのガラス−空気の界面の反射率は被覆ガラススライドの膜−空気の界面の反射率と同じであり、膜−ガラスの界面の反射率は無視できるものと仮定した。被覆ガラススライドを走査するときは、スパッタリング堆積中に分光計の光ビームがプラテンの中心から2.2cmのガラススライドの部分を通過するように、スライドを位置決めした。
【0181】
実施例5:光学濃度を測定するための一般的方法
UV/VIS吸光度を膜厚で除算することにより薄膜の光学濃度を決定した。所与の波長における材料の光学濃度が高いほど、その波長におけるその材料の透過性は低くなる。2つの試料および2回の測定で光学濃度を決定した。2つの試料は、被覆およびマスキングされたシリコンウエハと被覆ガラススライドとであった。これらの2つの試料上の膜は、理想的には、同時に作製する。被覆ガラススライドのUV/VIS吸光度スペクトルを求めた。Siウエハのマスキング部分と露出部分との界面のAFM画像を取得し、ステップ高を測定して膜の厚さを求めた。次いで、吸光度スペクトルのすべての点に沿う吸光度値を膜厚で除算して膜についての光学濃度スペクトルを求めた。
【0182】
実施例6:酸素含有ガスが注入されたデータ層を含まないディスクの作製
ディスク上に被覆を有さないポリカーボネート光学ディスクを、PVD 75装置におけるプラテン上に、ディスク上の光学トラックがターゲットに面するように載置した。3mtorrのCapman圧力および400wRFのマグネトロン出力で、アルゴンをスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットを1時間スパッタリングした。これにより、光学ディスクの表面上に厚さ約31nmの炭素膜が形成された。次に、クロムの層を堆積させた。
【0183】
実施例7:二酸化炭素が注入されたデータ層を含むディスクの作製
ディスク上に被覆を有さないポリカーボネート光学ディスクを、PVD 75装置におけるプラテン上に、ディスク上の光学トラックがターゲットに面するように載置した。3mtorrのCapman圧力および400wRFのマグネトロン出力で、ArおよびCO
2をCO
2の濃度を有するスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットを1時間スパッタリングした。次に、炭素膜上にアルミニウムまたはクロムなどの金属の層を堆積させた。
【0184】
実施例8:クロム反射層の適用
通常であれば炭素層の堆積後に、スパッタ堆積により光学ディスクにクロム層を適用した。典型的には、炭素層の適用とクロム層の適用との間はチャンバを真空下に保った。4mtorrのCapman圧力および400wRFのマグネトロン出力で、Arをスパッタガスとして用いて、クロムターゲットを15分間スパッタリングした。これにより、光学ディスクの表面上に厚さ約138nmのクロム膜が形成された。
【0185】
実施例9:スパッタリング時間を変更した場合の膜成長速度の測定
AFMを用いて膜の厚さを決定した。先に述べたように、スパッタリング中、膜はテープでマスキングされていた。スパッタリング後、テープを除去し、表面を清浄化した。次いで、ステップ高をAFMにより測定した。400wRFのマグネトロン出力および4mtorrのCapman圧力の条件下でスパッタリングされたクロムは、0.154nm/sの速度で成長することが見出された。これは、5つのデータ点の較正曲線の傾きから決定した。400wRFのマグネトロン出力および3mtorrのCapman圧力の条件下でスパッタリングされたアルミニウムは、0.141nm/sの速度で成長することが見出された。これは、3つのデータ点の較正曲線の傾きから決定した。
【0186】
実施例10:ガス濃度を変更した場合の膜成長速度の測定
炭素膜の成長速度は、スパッタガスにおける二酸化炭素の百分率によることが見出された。400wRFのマグネトロン出力およびCapman=3mtorrの実験条件は、すべての実験について一定とした。プロセスガスにおける二酸化炭素の量は、実験で用いたアルゴンの量に対する百分率で、0%(v/v)、1%(v/v)、2%(v/v)、および4%(v/v)であった。次表に示すこれらの膜の成長速度は、AFMにより決定した膜の厚さをスパッタ時間で除算することにより決定した。
【0187】
【表1】
【0188】
これらの成長速度は、二酸化炭素濃度を増加させることによりスパッタリング堆積速度が遅くなった、ということを明らかに示している。
【0189】
実施例11:ガス濃度を変更した場合の膜の光学濃度(透過性)の測定
炭素膜の光学濃度は、スパッタガスにおける1%〜4%(v/v)の範囲にわたり、二酸化炭素スパッタリング濃度の増加とともに減少することが見出された。この実施例については、400wRFのマグネトロン出力および3mtorrのCapman圧力で、炭素黒鉛を4時間スパッタリングすることにより膜を形成した。これらの膜の650nm光学濃度を次表に示す。
【0190】
【表2】
【0191】
300nmから1100nmまでのスペクトルにわたる光学濃度を測定し、
図6に示す。これらの結果は、二酸化炭素濃度を増加させることにより形成される膜の光学濃度が減少した、ということを明らかに示している。言い方を換えれば、二酸化炭素濃度を増加させることにより形成される膜の透過性が増加した。
【0192】
実施例12:二酸化炭素を注入した炭素膜のX線電子分光分析
SSX−100装置(Surface Physics;Bend,ORにより維持されているSurface Science)を用いて、X線電子分光分析(XPS)を行った。XPSは、材料の上部概ね10nmの元素組成を提供する。XPSにより、スパッタガスにおける二酸化炭素の百分率が増加するにつれ、膜の酸素含有量が安定的に増加することが示された。その結果を次表に示す。
【0193】
【表3】
【0194】
加えて、スパッタガスにおける二酸化炭素の濃度が増加するにつれ、C1sナロースキャンの高エネルギー側のショルダのサイズがメインC1sピークに対して増加した。これは、スパッタガスにおける二酸化炭素の百分率が増加するにつれ、酸素に共有結合された炭素の量が増加したことを示す。
【0195】
実施例13:炭素膜剥離の測定
スパッタリングにより堆積させた炭素膜は、内部応力および大気中での分解により劣化する可能性があることが周知である。損なわれていない炭素膜と激しく劣化した炭素膜との間には、外観および特性において明瞭に視認可能な差異が存在する。激しい劣化を経た炭素膜は、曇りがかった外観を有し、色がより明るく、基板から容易に拭き取るまたは洗い流すことが可能である。対照的に、損なわれていない膜は、反射し、基板から除去することが困難である。
【0196】
以下の実験は、二酸化炭素を黒鉛膜に注入することにより膜の安定性が向上する、ということを実証している。様々な膜をガラス顕微鏡スライド上に作製し、解析した。400wおよび3mtorrのCapman圧力で黒鉛ターゲットをスパッタリングすることにより形成された膜については、スパッタ時間が増加するにつれ、膜の明白に劣化する傾向が増加した。例えば、二酸化炭素を添加せずに黒鉛を1時間スパッタリングすることにより形成された対照膜は、視認可能な劣化の兆候を示さなかったが、1.5時間の膜は視認可能な劣化の兆候を示した。スパッタガスに二酸化炭素を含ませることにより、不安定な膜が形成される前に膜をスパッタリングすることが可能な時間が増加した。例えば、スパッタガスに1%(v/v)の二酸化炭素が含まれた状態で黒鉛を3時間スパッタリングすることにより形成された膜は、劣化が観測されなかったが、4時間の膜は劣化の兆候を示した。スパッタガスに2%(v/v)の二酸化炭素が含まれた状態で黒鉛を4時間スパッタリングすることにより形成された膜は、劣化の兆候を示さなかった。これらの結果を次表に示す。
【0197】
【表4】
【0198】
実施例14:ディスク耐久性の測定
耐久性を測定する単純な試験は、試料を沸騰水に48時間浸漬させる試験と、テープ引張接着性試験とを含む。より複雑な劣化試験がECMA−379(ISO−IEC−10995としても知られる)において規定されている。
【0199】
実施例15:アブレーション法の予想実施例
ポリカーボネート支持基板と二酸化炭素が注入された炭素データ層とを含む光学情報媒体を生産することが可能である。媒体をレーザに露出させて媒体上の部位をアブレーション加工または変形させることにより、媒体内にコンピュータプログラムまたはファイルを符号化することが可能である。その後、媒体を従来のCDまたはDVDディスクドライブにおいて読み込んでコンピュータプログラムまたはファイルを引き出すことが可能である。
【0200】
実施例16:酸素含有ガスを用いておよび用いずに作製したディスクのアブレーション加工を比較する予想実施例
ポリカーボネート支持基板と炭素データ層とを有し、データ層に二酸化炭素を注入してまたは注入せずに生産された光学情報媒体を、性能および寿命について比較する。二酸化炭素を注入された媒体が、書き込み性能および寿命試験においてより優れることが予想される。
【0201】
実施例17:材料および方法
ポリカーボネートブランクディスクは、Bayer Material Science AG(Leverkusen,Germany)、General Electric Company(Fairfield,CT)、および帝人株式会社(日本、大阪)などの種々のソースから市販されている。溶融石英ブランクディスクは、Corning Incorporated(Corning,NY)、Hoya株式会社(日本、東京)、およびSchott AG(Mainz,Germany)などの種々のソースから市販されている。
【0202】
テルルは、純度99.999%のもの(Sigma Aldrich;St.Louis,MO;カタログ452378、ロット01948ER)を用いた。電子ビーム堆積システム(モデルNRC 3116;NRC Equipment Corp.(現在はVarian,Palo Alto,CA))でテルル堆積を行った。システムは、堆積させた膜の厚さを測定するための結晶センサを装備させた。炭素黒鉛ターゲット(99.999%;Kurt J.Lesker Company、部品番号EJTCXXX503A4)から炭素を得た。
【0203】
PVD 75装置(Kurt J.Lesker Company;Pittsburgh,PA)を用いて、RFスパッタリングを行った。システムは、1つのRF電源と、3インチ(7.62cm)のターゲットを保持することが可能な3つのマグネトロンガンと、2種類のスパッタガスのための設備とで構成した。ターゲットは、スパッタアップ構成に編成した。3つのターゲットの各々をシャッタで覆った。200℃まで加熱することが可能な回転プラテン上に基板を載置した。回転プラテンをターゲットの上方に位置決めした。実験のほとんどは、プラテンを能動的に加熱することなく行った。能動的に加熱しない状態で、プラテンの温度は、400wでのスパッタリング時間の増加とともに徐々に上昇し、約60℃〜70℃の最高温度に達した。約3時間後に最高温度に達した。スパッタリング前のチャンバ内の当初温度は、典型的には、約27℃であった。時間、ターゲット、およびスパッタリング源は、以下の実施例において説明するように変化させた。
【0204】
実施例18:ディスク95の作製
ディスク上に被覆を有さないポリカーボネート光学ディスク(直径120mmおよび厚さ0.6mm)を、PVD 75装置におけるプラテン上に載置した。ディスク上の第1の層については、総Capman圧力を3mtorrに維持しマグネトロン出力を400WRFに設定した状態で、98%(v/v)のArおよび2%(v/v)のCO
2をスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットを30分間スパッタリングした。その結果得られた炭素膜は、厚さ約14nmであった。
【0205】
ディスク上の第2の層としては、電子ビーム堆積システムで40nmのテルルを堆積させた。ベース圧力は5×10
−5torrであった。
【0206】
ディスク上の最終の第3の層については、総Capman圧力を3mtorrに維持した状態で、98%(v/v)のArおよび2%(v/v)のCO
2をスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットをスパッタリングした。黒鉛ターゲットの上方で65Wでプラズマを点火し、ガンへの出力を3W/sの速度で200Wまで上昇させた。出力設定点に達したときに1時間のカウントダウンを開始した。1時間のカウントダウンの終わりに、15分間のカウントダウンを開始し、ガンへの出力を3W/sの速度で400Wまで上昇させた。15分間のカウントダウンの終わりにシャッタを閉じた。その結果得られた炭素膜は、厚さ約9nmであった。
【0207】
その結果得られたディスクは、ポリカーボネート支持基板と、炭素および二酸化炭素の反応性材料層と、テルル層と、第2の炭素および二酸化炭素の反応性材料層とを有していた。
【0208】
実施例19:ディスク98の作製
ディスク上に被覆を有さないポリカーボネート光学ディスク(直径120mmおよび厚さ0.6mm)を、PVD 75装置におけるプラテン上に載置した。ディスク上の第1の層については、総Capman圧力を3mtorrに維持しマグネトロン出力を400WRFに設定した状態で、98%(v/v)のArおよび2%(v/v)のCO
2をスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットを15分間スパッタリングした。その結果得られた炭素膜は、厚さ約7nmであった。
【0209】
ディスク上の第2の層としては、電子ビーム堆積システムで40nmのテルルを堆積させた。ベース圧力は5×10
−5torrであった。
【0210】
ディスク上の最終の第3の層については、総Capman圧力を3mtorrに維持した状態で、98%(v/v)のArおよび2%(v/v)のCO
2をスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットをスパッタリングした。黒鉛ターゲットの上方で65Wでプラズマを点火し、ガンへの出力を3W/sの速度で200Wまで上昇させた。出力設定点に達したときに1時間のカウントダウンを開始した。1時間のカウントダウンの終わりに、15分間のカウントダウンを開始し、ガンへの出力を3W/sの速度で400Wまで上昇させた。15分間のカウントダウンの終わりにシャッタを閉じた。その結果得られた炭素膜は、厚さ約9nmであった。
【0211】
その結果得られたディスクは、ポリカーボネート支持基板と、炭素および二酸化炭素の反応性材料層と、テルル層と、第2の炭素および二酸化炭素の反応性材料層とを有していた。
【0212】
実施例20:ディスク99の作製
ディスク上に被覆を有さないポリカーボネート光学ディスク(直径120mmおよび厚さ0.6mm、170nmの溝深さを有する)を、PVD 75装置におけるプラテン上に載置した。ディスク上の第1の層については、総Capman圧力を3mtorrに維持しマグネトロン出力を400WRFに設定した状態で、98%(v/v)のArおよび2%(v/v)のCO
2をスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットを15分間スパッタリングした。その結果得られた炭素膜は、厚さ約7nmであった。
【0213】
ディスク上の第2の層としては、電子ビーム堆積システムで50nmのテルルを堆積させた。ベース圧力は6×10
−5torrであった。
【0214】
ディスク上の最終の第3の層については、総Capman圧力を3mtorrに維持しマグネトロン出力を200WRFに設定した状態で、98%(v/v)のArおよび2%(v/v)のCO
2をスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットを30分間スパッタリングした。その結果得られた炭素膜は、厚さ約1nmであった。
【0215】
その結果得られたディスクは、ポリカーボネート支持基板と、炭素および二酸化炭素の反応性材料層と、テルル層と、第2の炭素および二酸化炭素の反応性材料層とを有していた。
【0216】
実施例21:ディスク100の作製
ディスク上に被覆を有さないポリカーボネート光学ディスク(直径120mmおよび厚さ0.6mm、170nmの溝深さを有する)を、PVD 75装置におけるプラテン上に載置した。ディスク上の第1の層については、総Capman圧力を3mtorrに維持しマグネトロン出力を400WRFに設定した状態で、98%(v/v)のArおよび2%(v/v)のCO
2をスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットを30分間スパッタリングした。その結果得られた炭素膜は、厚さ約14nmであった。
【0217】
ディスク上の第2の層としては、電子ビーム堆積システムで61nmのテルルを堆積させた。ベース圧力は3×10
−5torrであった。
【0218】
ディスク上の最終の第3の層については、総Capman圧力を3mtorrに維持しマグネトロン出力を200WRFに設定した状態で、98%(v/v)のArおよび2%(v/v)のCO
2をスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットを30分間スパッタリングした。その結果得られた炭素膜は、厚さ約1nmであった。
【0219】
その結果得られたディスクは、ポリカーボネート支持基板と、炭素および二酸化炭素の反応性材料層と、テルル層と、第2の炭素および二酸化炭素の反応性材料層とを有していた。
【0220】
実施例22:ディスク101の作製
ディスク上に被覆を有さないポリカーボネート光学ディスク(直径120mmおよび厚さ0.6mm、170nmの溝深さを有する)を、PVD 75装置におけるプラテン上に載置した。ディスク上の第1の層については、総Capman圧力を3mtorrに維持しマグネトロン出力を400WRFに設定した状態で、98%(v/v)のArおよび2%(v/v)のCO
2をスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットを30分間スパッタリングした。その結果得られた炭素膜は、厚さ約14nmであった。
【0221】
ディスク上の第2の層としては、電子ビーム堆積システムで70nmのテルルを堆積させた。ベース圧力は2×10
−5torrであった。
【0222】
ディスク上の最終の第3の層については、総Capman圧力を3mtorrに維持しマグネトロン出力を200WRFに設定した状態で、98%(v/v)のArおよび2%(v/v)のCO
2をスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットを30分間スパッタリングした。その結果得られた炭素膜は、厚さ約1nmであった。
【0223】
その結果得られたディスクは、ポリカーボネート支持基板と、炭素および二酸化炭素の反応性材料層と、テルル層と、炭素および二酸化炭素の反応性材料層とを有していた。
【0224】
実施例23:ディスク123の作製
ディスク上に被覆を有さないポリカーボネート光学ディスク(直径120mmおよび厚さ0.6mm、60nmの溝深さを有する)を、PVD 75装置におけるプラテン上に載置した。ディスク上の第1の層については、総Capman圧力を3mtorrに維持しマグネトロン出力を400WRFに設定した状態で、98%(v/v)のArおよび2%(v/v)のCO
2をスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットを30分間スパッタリングした。Capman圧力は装置のパラメータである。Capman圧力値は、プラズマチャンバ内の圧力に近い。その結果得られた炭素膜は、厚さ約14nmであった。
【0225】
ディスク上の第2の層としては、電子ビーム堆積システムで60nmのテルルを堆積させた。ベース圧力は5×10
−5torrであった。
【0226】
ディスク上の最終の第3の層については、総Capman圧力を3mtorrに維持しマグネトロン出力を200WRFに設定した状態で、98%(v/v)のArおよび2%(v/v)のCO
2をスパッタガスとして用いて、炭素黒鉛ターゲットを30分間スパッタリングした。その結果得られた炭素膜は、厚さ約1nmであった。
【0227】
その結果得られたディスクは、ポリカーボネート支持基板と、炭素および二酸化炭素の反応性材料層と、テルル層と、第2の炭素および二酸化炭素の反応性材料層とを有していた。
【0228】
実施例24:ディスクにデータを書き込むための一般的方法
PulstecのODU1000装置(パルステック工業株式会社;浜松市;日本)を用いて、650nmの波長に設定されたダイオードレーザで様々なディスクにおいてマークを形成した。すべての書き込みは1倍速(3.49m/秒)で行った。特に断らない限り、すべての書き込みは単一のトラック上で行った。HF信号がすべての場合において確認され、マークは顕微鏡を用いてはっきりと観測された。
【0229】
実施例25:ディスク95へのデータの書き込み
ディスク番号95への書き込みを、次の種々の出力レベルで行った:4mW、5mW、6mW、8mW、10mW、11mW、12mW、13mW、15mW、16mW、および20mW。キャッスル型とマルチパルス型との両方のストラテジを用いて33%のデューティで行った。次のマーク長の書き込みは成功し、顕微鏡により検証を行った:3T(398nm)、5T(663nm)、および14T(1857nm)。
【0230】
実施例26:ディスク98へのデータの書き込み
ディスク番号98への書き込みを、次の種々の出力レベルで行った:3mW、4mW、5mW、6mW、7mW、8mW、9mW、10mW、12mW、14mW、15mW、16mW、および20mW。マルチパルス型ストラテジを用いて33%のデューティで行った。次のマーク長の書き込みは成功し、顕微鏡により検証を行った:3T(398nm)、4T(530nm)、5T(663nm)、7T(928nm)、および14T(1857nm)。
【0231】
実施例27:ディスク99へのデータの書き込み
ディスク番号99への書き込みを、次の種々の出力レベルで行った:3mW、3.5mW、4mW、4.5mW、5mW、6mW、7mW、8mW、および9mW。マルチパルス型ストラテジを用いて33%のデューティで行った。次のマーク長の書き込みは成功し、顕微鏡により検証を行った:3T(398nm)、4T(530nm)、および5T(663nm)。
【0232】
実施例28:ディスク100へのデータの書き込み
ディスク番号100への書き込みを、次の種々の出力レベルで行った:3.5mW、4mW、4.5mW、5mW、6mW、および7mW。マルチパルス型ストラテジを用いて33%のデューティで行った。次のマーク長の書き込みは成功し、顕微鏡により検証を行った:3T(398nm)、4T(530nm)、7T(928nm)、および14T(1857nm)。また、いくつかのトラックに3T(398nm)から14T(1857nm)までのすべてのマーク長を4mWで連続的に書き込み、検証した。
【0233】
実施例29:ディスク101へのデータの書き込み
ディスク番号101への書き込みを、次の種々の出力レベルで行った:4mW、5mW、6mW、7mW、および8mW。マルチパルス型ストラテジを用いて33%のデューティで行った。次のマーク長の書き込みは成功し、顕微鏡により検証を行った:3T(398nm)、4T(530nm)、および14T(1857nm)。
【0234】
実施例30:ディスク123へのデータの書き込み
ディスク番号123への書き込みを、次の種々の出力レベルで行った:3.5mW、4mW、4.5mW、および8mW。マルチパルス型ストラテジを用いて33%のデューティで行った。50トラックについての3T(398nm)のマークの連続書き込みは成功し、顕微鏡により検証を行った。
【0235】
実施例31:ディスクへのデータの書き込みのまとめ
様々なディスクおよび得られた結果を次表にまとめる。
【0236】
【表5】
【0237】
実施例32:材料および方法
ポリカーボネートブランクディスクは、Bayer Material Science AG(Leverkusen,Germany)、General Electric Company(Fairfield,CT)、および帝人株式会社(日本、大阪)などの種々のソースから市販されている。溶融石英ブランクディスクは、Corning Incorporated(Corning,NY)、Hoya株式会社(日本、東京)、およびSchott AG(Mainz,Germany)などの種々のソースから市販されている。
【0238】
銅バッキングプレートを有する0.125インチ(3.175mm)のテルルターゲット(Plasmaterials;Livermore,CA;ロット番号PLA5420787)を用いて、テルル上にスパッタ堆積を行った。
【0239】
PVD 75装置(Kurt J.Lesker Company;Pittsburgh,PA)を用いて、RFスパッタリングを行った。システムは、1つのRF電源と、3インチ(7.62cm)のターゲットを保持することが可能な3つのマグネトロンガンと、2種類のスパッタガスのための設備とで構成した。ターゲットは、スパッタアップ構成に編成した。3つのターゲットの各々をシャッタで覆った。200℃まで加熱することが可能な回転プラテン上に基板を載置した。回転プラテンをターゲットの上方に位置決めした。実験のすべては、プラテンを能動的に加熱することなく行った。ターゲットと基板との間の距離は約22cmであった。スパッタリング前のチャンバ内の当初温度は、典型的には、約27℃であった。時間、ターゲット、およびスパッタリング源は、以下の実施例において説明するように変化させた。
【0240】
実施例33:テルルを含有し二酸化炭素膜を変化させたディスク列の作製
二酸化炭素を伴うまたは伴わない一連のTe膜を、PVD 75で1組のポリカーボネート光学ディスク上に堆積させた。光学ディスクは被覆を有さず、直径120mmおよび厚さ0.6mmであった。ディスク上に堆積させる一連のTe膜については、次のパラメータを一定に保った:テルルターゲットをスパッタリングし(出力は20WDC、Capman圧力は7mtorr、基板は20rpmで回転させた)、基板をスパッタリングされたターゲットに12分間露出させた。スパッタガスにおける二酸化炭素の濃度は、一連の膜の各々が異なるスパッタガスにおける二酸化炭素の濃度(原子%を単位とする)でスパッタリングされるように変化させた。二酸化炭素の濃度は、0%、1%、2%、2.3%、2.5%、2.7%、3%、4%、および10%であった。スパッタガスの残りの部分はアルゴンであった。
【0241】
実施例34:Teデータ層における二酸化炭素の効果の評価
光学ディスク測定システム(Argus eco;dr.schwab Inspection Technology GmbH;Aichach,Germany)を用いて、先の実施例のディスクを日々解析した。膜の吸光度および反射率を時間の経過とともにプロットした。
【0242】
吸光度についての結果を
図7に示す。
図7における各データ点は、吸光度測定値からディスクが作製された同じ日に得られた当初吸光度(光学濃度)を減算することにより得たものであり、ディスクの形成から1日以内に行われたArgus装置での1回目の測定からの日数に対してプロットした。
【0243】
反射率についての結果を
図8に示し、以下の表にまとめた。図面は、ディスクの作製からの日数に対するディスクのパーセント反射率をグラフ化している。
【0244】
図7および
図8についての生データは、以下の表のとおりである。表における日数は、ディスクの形成からの時間数および分数に基づいて算出されているため、整数でない。
【0245】
0%の二酸化炭素を有するディスクから得られたデータ
【0246】
【表6】
【0247】
1%の二酸化炭素を有するディスクから得られたデータ
【0248】
【表7】
【0249】
2%の二酸化炭素を有するディスクから得られたデータ
【0250】
【表8】
【0251】
2.3%の二酸化炭素を有するディスクから得られたデータ
【0252】
【表9】
【0253】
2.5%の二酸化炭素を有するディスクから得られたデータ
【0254】
【表10】
【0255】
2.7%の二酸化炭素を有するディスクから得られたデータ
【0256】
【表11】
【0257】
3%の二酸化炭素を有するディスクから得られたデータ
【0258】
【表12】
【0259】
4%の二酸化炭素を有するディスクから得られたデータ
【0260】
【表13】
【0261】
10%の二酸化炭素を有するディスクから得られたデータ
【0262】
【表14】
【0263】
スパッタガスに10%のCO
2を伴って形成されたTe膜は、吸光度における経時変化がその他の膜よりもはるかに小さかったが、反射率値もより低かった。より低い反射率は、少なくとも部分的には、膜の透過性がより大きいことによるものである。その他の膜よりも低い吸光度値により、透過性がより大きいことが示されている。この膜は、その優れた安定性のため、アーカイブ光学ディスクにおいて用いるために特に魅力的である。
【0264】
実施例35:ディスク356の作製
溝を有するポリカーボネート光学ディスク基板上に、CO
2が注入されたテルル層が2つの炭素層の間にサンドイッチされるように3つの膜を順次堆積させた。基板は、直径120mmおよび厚さ0.6mmであった。
【0265】
PVD 75のプラテン上に、溝側がガンに面するように基板を載置した。第1の層は、次のように堆積させた。厚さ1/8インチの黒鉛ターゲット(Kurt J.Lesker Co.,Clariton,PA、部品#EJTCXXX503A2、ロット#VPU0140000)を、出力400WDCおよびcapman圧力7mtorrでスパッタリングした。スパッタガスは、98%(v/v)のアルゴンおよび2%(v/v)の二酸化炭素を用いた。基板は20rpmで回転させた。基板をスッパリングされたターゲットに10分間露出させた。
【0266】
第2の層は、次のように堆積させた。銅バッキングプレートを有する厚さ1/8インチのTeターゲット(Plasmaterials、ロット#PLA5420787)を、出力20WDCおよびcapman圧力7mtorrでスパッタリングした。スパッタガスは、98%(v/v)のアルゴンおよび2%(v/v)の二酸化炭素を用いた。基板は20rpmで回転させた。基板をスッパリングされたターゲットに6分2秒間露出させた。
【0267】
第3の層の堆積パラメータは、第1の層の堆積パラメータと同一であった。
【0268】
ディスク356は、ポリカーボネート支持基板と、7nmの第1の炭素層と、概ね20nmのテルルおよび二酸化炭素のデータ層と、7nmの第2の炭素層とを有していた。
【0269】
実施例36:ディスクにデータを書き込むための一般的方法
PulstecのODU1000装置(パルステック工業株式会社;浜松市;日本)を用いて、650nmの波長に設定されたダイオードレーザでマークを形成した。すべての書き込みは1倍速(3.49m/秒)で行った。特に断らない限り、すべての書き込みは単一のトラック上で行った。HF信号がすべての場合において確認され、マークは顕微鏡を用いてはっきりと観測された。
【0270】
実施例37:ディスク356へのデータの書き込み
様々な出力レベルで混合データフォーマット(「ROM1」)をディスクに繰り返し書き込むことにより、ディスク番号356への書き込みを行った。出力レベルをふるい分けして、合計のジッタ値が最小となる設定を決定した。データトゥデータジッタが書き込み済ピットの長さにおける変化を測定したものであるのに対して、データトゥクロックジッタは、クロック信号に対するいずれかのピットの立ち上がりのタイミングにおける変化を測定したものである。次表は、ディスクの2つの領域において得られたデータを示す。
【0271】
【表15】
【0272】
【表16】
【0273】
これらの結果は、混合データをディスクに書き込むことが可能であり、ジッタ値を監視することにより書き込み出力を最適化することが可能である、ということを示している。
【0274】
実施例38:デモディスク911および912の作製
トラック溝を有するポリカーボネート光学ディスク基板[D30W33]上に、4つの膜を順次堆積させた。基板は、直径120mmおよび厚さ0.6mmであった。4つの膜のすべてを真空を破壊することなく堆積させた。
【0275】
PVD 75のプラテン上に、溝側がガンに面するように基板を載置した。堆積中はプラテンを回転させた。第1の層は、次のように堆積させた。銅バッキングプレートに接合された厚さ1/8インチのSiO2ターゲット(Kurt J.Lesker Co.,Clariton,PA、部品#EJBPCU03A2、ロット#VPU014670/4−8−08)をスパッタリングした(出力は400WRF、capman圧力は3mtorr、スパッタガスは100%Arから成り、堆積時間は30分間)。このSiO
2膜は、厚さ概ね35nmであった。
【0276】
第2の層は、次のように堆積させた。厚さ1/4インチの黒鉛ターゲット(Plasmaterials,Livermore,CA、ロット#PLA489556)をスパッタリングした(出力は400WDC、capman圧力は7mtorr、スパッタガスの主成分はアルゴン、スパッタガスにおける二酸化炭素の濃度は2%、堆積時間は15分間)。この炭素膜は、厚さ概ね19nmであった。
【0277】
第3の層は、次のように堆積させた。銅バッキングプレートに接合された厚さ1/8インチのTeターゲット(Plasmaterials、ロット#PLA489788)をスパッタリングした(出力は20WDC、capman圧力は7mtorr、スパッタガスの主成分はアルゴン、スパッタガスにおける二酸化炭素の濃度は2%、堆積時間は5:23分間)。このテルル膜は、厚さ概ね20nmであった。
【0278】
第4の膜の堆積についての条件は、堆積時間が10分間であったことを除き、第2の層の条件と同一であった。第4の層は、次のように堆積させた。厚さ1/4インチの黒鉛ターゲット(Plasmaterials、ロット#PLA489556)をスパッタリングした(出力は400WDC、capman圧力は7mtorr、スパッタガスの主成分はアルゴン、スパッタガスにおける二酸化炭素の濃度は2%、堆積時間は10分間)。この炭素膜は、厚さ概ね13nmであった。
【0279】
ディスク911および912は、ポリカーボネート支持基板と、35nmのSiO
2介在誘電体層と、19nmの第1の二酸化炭素含有炭素層と、概ね20nmのテルルおよび二酸化炭素のデータ層と、13nmの第2の二酸化炭素含有炭素層とを有していた。
【0280】
Spaceline II DVDラインを用いて、ディスク上に第2のポリカーボネート支持を接合した。接着剤には0.9〜1.1グラムのPancure 1503を用い、3500〜3600rpmでスピン塗布した。接着剤は、4.5kVAの硬化出力で1.5〜1.7秒間硬化させた。
【0281】
実施例39:デモディスク911および912は商用プレーヤにおいて良好に機能する
標準的な商用DVDプレーヤを用いた再生を許容する様式でデモディスク911および912上に記録を行った。書き込みに先立って、好適なレーザ出力設定およびパルスストラテジ値を求めた。
【0282】
書き込み前の評価ステップには、反射率および読み取り出力誘起変調(「RPIM」)への耐性の慣例的試験を行った。反射率の試験は、ディスクのデータ領域の径方向における最小位置から最大位置までの広がりにおいて任意の間隔でディスク表面の反射率をマッピングするステップを伴う。このステップは、ODU制御ユニット、アナログ−デジタル信号二値化器、光学的/機械的ディスクドライブユニットを有するマルチ信号発生器(MSG4)からなるPulstecのODU−1000システムと、YokogawaのDL1640Lデジタルオシロスコープと(ともにコンピュータ制御下で動作させた)を用いて行った。試験自動化ソフトウェアにより、デジタルオシロスコープからの読み取り値をログ化および記録した。同じ設備を用いてRPIM調査を行った。RPIM試験では、反復的な長期にわたる低レベルレーザへの露出(例えば、1.0ミリワット)の影響下での平均的局所反射率における変化へのディスクの耐性を評価した。両方のディスクが書き込み前評価に合格した。
【0283】
書き込み前試験の完了後、上記設備およびYokogawaのTIA520時間間隔解析器(再生中に書き込み済データを評価するために用いる)を用いて予備の出力および書き込みストラテジの最適化を行った。時間間隔解析器は、先に書き込まれたデータのリアルタイムグラフィック表示を提供することにより、後続の書き込み試行のための出力およびストラテジの設定の調整を案内するモードで用いた。ODU−1000を手動制御下で用いて、すべての可能性のある標準的なDVDマークおよびスペースの擬似ランダム組み合わせを含む標準的試験パターンを、様々な出力および書き込みストラテジでディスクに繰り返し書き込んだ。その結果得られた各書き込みセッション後の各マーク種類(3T〜14T)についての各マーク長の平均および標準偏差を記録し、これらの値の公称値からの偏差を、ストラテジおよび/またはレーザ書き込み出力を調整する必要性の指標として用いた。この反復作業の結果、ディスクの最適な書き込み出力およびストラテジの設定が適切に決定された。手動制御によるストラテジおよび出力の最適化に続き、以下で説明するように自動化試験を行った。
【0284】
(n−2)マルチパルスDVD+R書き込みストラテジを用いた。実際の最適化された出力およびストラテジにおけるパラメータの各々の値は、ディスク毎に多少異なった。また、1つの重要な尺度である結合または「バケット」データトゥクロックジッタも、ディスク毎に多少変化した。ジッタは、擬似ランダム試験パターンにおけるすべてのマークについての立ち上がりおよび立ち下がりパルスのタイミングの標準偏差を表すため、ジッタが最小化されることが、最適化作業の1つの望ましい成果である。ジッタは、隔離された単一トラックについての性能と多トラックについての性能との両方について測定した。レーザ書き込み出力を変化させて各出力設定についてジッタを測定する自動化試験を行ったところ、観測された最小の多トラックジッタの範囲は、4.80nm〜5.24nmであった。最適な出力の範囲は、15.0〜16.0ミリワットであった。書き込み速度は、標準的な1倍速定線速度(CLV)であった。
【0285】
上記の最適化作業後、標準的なDVDフォーマットのデータを3つのディスクの各々に書き込むことに成功した。ディスク技術についての表示ならびにChurch of Jesus Christ of Latter−Day Saints、Les Olson Company(Sharpのコピー機およびプリンタの代理店)、およびTHX Ltd.により提供およびライセンス供与されたマルチメディアコンテンツにリンクされたDVDメニュー構造を、ODU−1000およびEclipse Data Technologiesの画像符号化器ユニットを用いてディスクに書き込んだ。Eclipse符号化器からのデータは、Apogee LabsのTTL−ECL変換器によりレベル補正し、Pulstecのマルチ信号発生器(MSG4)を通じてODU−1000レーザヘッドにストリーミングし、先に求められた書き込みストラテジおよび出力の設定を用いて1倍速CVLでプロトタイプディスク上に書き込んだ。
【0286】
記録後、いくつかの商用DVDプレーヤにおいてディスクの広範な再生試験を行い、書き込み済データの引き出しの成功を妨げるエラーは存在しないことを見出した。この実施例は、ディスクに映像コンテンツを書き込むことが可能であり、ディスクを異なる商用DVDプレーヤにおいて繰り返し再生することが可能である、ということを実証している。
【0287】
実施例40:TeSe合金データ層および炭素層を有するディスク944および945の作製
トラック溝を有するポリカーボネート光学ディスク基板[D27W40A−LB]上に、4つの膜を順次堆積させた。基板は、直径120mmおよび厚さ0.6mmであった。4つの膜のすべてを真空を破壊することなく堆積させた。
【0288】
PVD 75のプラテン上に、溝側がガンに面するように基板を載置した。堆積中はプラテンを回転させた。第1の層は、次のように堆積させた。銅バッキングプレートに接合された厚さ1/8インチのSiO2ターゲット(Kurt J.Lesker Co.,Clariton,PA、部品#EJTSIO2453A2、ロット#11−24−08/VPU026926)をスパッタリングした(出力は400WRF、capman圧力は3mtorr、スパッタガスは100%Arから成り、堆積時間は36:12分間)。この膜は、厚さ概ね45nmであった。
【0289】
第2の層は、次のように堆積させた。厚さ1/4インチの黒鉛ターゲット(Plasmaterials,Livermore,CA、ロット#PLA489556)をスパッタリングした(出力は400WDC、capman圧力は7mtorr、スパッタガスの主成分はアルゴン、スパッタガスにおける二酸化炭素の濃度は2%、堆積時間は13:46分間)。この膜は、厚さ概ね19nmであった。
【0290】
第3の層は、次のように堆積させた。銅バッキングプレートに接合されたTe(78.4原子%)およびSe(21.6原子%)を含有する厚さ1/8インチのターゲット(Plasmaterials,Livermore,CA)をスパッタリングした。このターゲットの一部は、接合剤の露出を通じてスパッタリングした。カソードに印加された出力は200WDC、capman圧力は3mtorr、スパッタガスはAr、堆積時間は4:18分間であった。この膜は、厚さ概ね20nmであった。
【0291】
第4の層は、次のように堆積させた。厚さ1/4インチの黒鉛ターゲット(Plasmaterials、ロット#PLA489556)をスパッタリングした(出力は400WDC、capman圧力は7mtorr、スパッタガスの主成分はアルゴン、スパッタガスにおける二酸化炭素の濃度は2%、堆積時間は9:25分間)。この膜は、厚さ概ね13nmであった。
【0292】
その結果得られたディスクは、ポリカーボネート支持基板と、45nmのSiO
2誘電体介在層と、19nmの炭素および二酸化炭素の層と、20nmのTeSe合金データ層と、13nmの炭素および二酸化炭素の層とを有していた。
【0293】
実施例41:TeSe合金データ層および炭素層を有するディスク944および945の特性解析
デモディスク911および912に関して上で説明した一般的方法を用いて、TeSe合金データディスクを評価した。データマークのディスクへの書き込みは成功したが、ジッタ値が書き込み後に数分間変化する顕著な「整定時間」が存在した。整定時間の影響を最小化するために、これらのTeSe合金データディスクを最適化する努力がなされるであろう。
【0294】
実施例42:クロムデータ層および炭素層を有するディスクの作製
溝付きポリカーボネート光学ディスク基板上に、4つの膜を順次堆積させた。基板は、直径120mmおよび厚さ0.6mmであった。4つの膜のすべてを真空を破壊することなく堆積させた。
【0295】
PVD 75のプラテン上に、溝側がガンに面するように基板を載置した。堆積中はプラテンを回転させた。第1の層は、次のように堆積させた。銅バッキングプレートに接合された厚さ1/8インチのSiO
2ターゲット(Kurt J.Lesker Co.,Clariton,PA、部品#EJTSIO2453A2、ロット#11−24−08/VPU026926)をスパッタリングした(出力は400WRF、capman圧力は3mtorr、スパッタガスは100%Arから成り、堆積時間は44:12分間)。この膜は、厚さ概ね45nmであった。
【0296】
第2の層は、次のように堆積させた。厚さ1/4インチの黒鉛ターゲット(Plasmaterials,Livermore,CA、ロット#PLA489556)をスパッタリングした(出力は400WDC、capman圧力は7mtorr、スパッタガスの主成分はアルゴン、スパッタガスにおける二酸化炭素の濃度は2%、堆積時間は15:20分間)。この膜は、厚さ概ね19nmであった。
【0297】
第3の層は、次のように堆積させた。厚さ1/8インチのCrターゲット(Kurt J.Lesker Co.、部品#EJTCRXX353A2、ロット#L5791/D05/601713)をスパッタリングした(出力は200WRF、capman圧力は3mtorr、スパッタガスはAr、堆積時間は2:49分間)。この膜は、厚さ概ね20nmであった。
【0298】
第4の層は、次のように堆積させた。厚さ1/4インチの黒鉛ターゲット(Plasmaterials、ロット#PLA489556)をスパッタリングした(出力は400WDC、capman圧力は7mtorr、スパッタガスの主成分はアルゴン、スパッタガスにおける二酸化炭素の濃度は2%、堆積時間は10:30分間)。この膜は、厚さ概ね13nmであった。
【0299】
その結果得られたディスクは、第1のポリカーボネート支持基板と、45nmのSiO
2誘電体介在層と、19nmの炭素および二酸化炭素の層と、20nmのクロムデータ層と、13nmの炭素および二酸化炭素の層と、第2のポリカーボネート支持基板とを有していた。
【0300】
実施例43:クロムデータ層および炭素層を有するディスクの特性解析
このディスクは、3.5mW超で読み取り出力誘起変調(「RPIM」)試験に合格した。このことは、ディスクが読み取り出力レーザの強度への高い耐性を有することを示している。3Tと14Tとの両方のマークがディスクに作成されたが、マークの品質はやや雑音が多かった。書き込みストラテジは未だ最適化されていない。
【0301】
実施例44:TeSeデータ層を有するが炭素層を含まないディスク966の作製および解析
溝付きポリカーボネート光学ディスク基板上に、2つの膜を順次堆積させた。基板は、直径120mmおよび厚さ0.6mmであった。2つの膜のすべてを真空を破壊することなく堆積させた。
【0302】
PVD 75のプラテン上に、溝側がガンに面するように基板を載置した。堆積中はプラテンを回転させた。第1の層は、次のように堆積させた。銅バッキングプレートに接合された厚さ1/8インチのSiO
2ターゲット(Kurt J.Lesker Co.,Clariton,PA、部品#EJTSIO2453A2、ロット#11−24−08/VPU026926)をスパッタリングした(出力は400WRF、capman圧力は3mtorr、スパッタガスは100%Arから成り、堆積時間は44:12分間)。この膜は、厚さ概ね45nmであった。
【0303】
第2の層は、次のように堆積させた。複合TeSeターゲット(Plasmaterials,Livermore,CA、ロット#PLA489556)をスパッタリングした。ターゲットの比は、Te
78Se
22であった。この膜は、厚さ概ね20nmであった。
【0304】
その結果得られたディスクは、第1のポリカーボネート支持基板と、45nmのSiO
2誘電体介在層と、20nmのTe
78Se
22データ層とを有していた。ディスクは、いずれの炭素層も含んでいなかった。
【0305】
ディスクは、0.8mWで読み取り出力誘起変調(「RPIM」)試験に合格しなかった。このことは、炭素層が存在しない場合、ディスクドライブにより用いられる低い読み取り出力によりTeSe合金データ層が損傷することを示している。この基本的な試験に合格しなかったため、このディスクのさらなる特性分析は行っていない。
【0306】
実施例45:Teデータ層を有するが炭素層を含まないディスク967の作製および解析
溝付きポリカーボネート光学ディスク基板上に、3つの膜を順次堆積させた。基板は、直径120mmおよび厚さ0.6mmであった。3つの膜のすべてを真空を破壊することなく堆積させた。
【0307】
PVD 75のプラテン上に、溝側がガンに面するように基板を載置した。堆積中はプラテンを回転させた。第1の層は、次のように堆積させた。銅バッキングプレートに接合された厚さ1/8インチのSiO
2ターゲット(Kurt J.Lesker Co.,Clariton,PA、部品#EJTSIO2453A2、ロット#11−24−08/VPU026926)をスパッタリングした(出力は400WRF、capman圧力は3mtorr、スパッタガスは100%Arから成り、堆積時間は44:12分間)。この膜は、厚さ概ね45nmであった。
【0308】
第2の層は、次のように堆積させた。銅バッキングプレートに接合された厚さ1/8インチのTeターゲット(Plasmaterials、ロット#PLA489788)をスパッタリングした(出力は20WDC、capman圧力は7mtorr、スパッタガスの主成分はアルゴン、スパッタガスにおける二酸化炭素の濃度は2%、堆積時間は5:23分間)。このテルル膜は、厚さ概ね20nmであった。
【0309】
第3の層は、次のように堆積させた。銅バッキングプレートに接合された厚さ1/8インチのSiO
2ターゲット(Kurt J.Lesker Co.,Clariton,PA、部品#EJTSIO2453A2、ロット#11−24−08/VPU026926)をスパッタリングした(出力は400WRF、capman圧力は3mtorr、スパッタガスは100%Arから成り、堆積時間は44:12分間)。この膜は、厚さ概ね45nmであった。
【0310】
その結果得られたディスクは、第1のポリカーボネート支持基板と、45nmのSiO
2誘電体介在層と、20nmのテルルおよび二酸化炭素のデータ層と、45nmのSiO
2誘電体介在層とを有していた。
【0311】
実施例46:炭素層を有するがデータ層を含まないディスク968の作製および解析
溝付きポリカーボネート光学ディスク基板上に、3つの膜を順次堆積させた。基板は、直径120mmおよび厚さ0.6mmであった。3つの膜のすべてを真空を破壊することなく堆積させた。
【0312】
PVD 75のプラテン上に、溝側がガンに面するように基板を載置した。堆積中はプラテンを回転させた。第1の層は、次のように堆積させた。銅バッキングプレートに接合された厚さ1/8インチのSiO
2ターゲット(Kurt J.Lesker Co.,Clariton,PA、部品#EJTSIO2453A2、ロット#11−24−08/VPU026926)をスパッタリングした(出力は400WRF、capman圧力は3mtorr、スパッタガスは100%Arから成り、堆積時間は44:12分間)。この膜は、厚さ概ね45nmであった。
【0313】
第2の層は、次のように堆積させた。厚さ1/4インチの黒鉛ターゲット(Plasmaterials,Livermore,CA、ロット#PLA489556)をスパッタリングした(出力は400WDC、capman圧力は7mtorr、スパッタガスの主成分はアルゴン、スパッタガスにおける二酸化炭素の濃度は2%)。この膜は、厚さ概ね30nmであった。
【0314】
第3の層は、次のように堆積させた。銅バッキングプレートに接合された厚さ1/8インチのSiO
2ターゲット(Kurt J.Lesker Co.,Clariton,PA、部品#EJTSIO2453A2、ロット#11−24−08/VPU026926)をスパッタリングした(出力は400WRF、capman圧力は3mtorr、スパッタガスは100%Arから成り、堆積時間は44:12分間)。この膜は、厚さ概ね45nmであった。
【0315】
その結果得られたディスクは、第1のポリカーボネート支持基板と、45nmのSiO
2誘電体介在層と、30nmの炭素および二酸化炭素のデータ層と、45nmのSiO
2誘電体介在層とを有していた。ディスクは、いずれのデータ層も含んでいなかった。
【0316】
このディスクをトラッキングすることは可能であったが、ディスクにデータを書き込むすべての試行は完全に失敗した。
【0317】
本明細書中で説明および請求されているすべての組成および/または方法および/またはプロセスおよび/または装置は、本開示に照らして必要以上の実験を行うことなく、作製および実行することが可能である。本発明の組成および方法を好ましい実施形態により説明してきたが、本明細書中に記載の組成および/または方法および/または装置および/またはプロセスに、ならびに方法のステップまたは一連のステップにおいて、本発明の概念および範囲を逸脱することなく変更を適用することができる、ということが当業者には明白であろう。より具体的には、同じまたは類似の結果を達成しつつ、本明細書中に記載の作用剤を化学的と物理的との両方で関連するある作用剤で置換することができる、ということが明白であろう。当業者に明白なすべてのかかる類似の代替物および変更は、本発明の範囲および概念に該当するものと見なす。