【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、物品を加工物上に締結するための改善されたクリップを明確に述べることが、本発明の目的である。
【0011】
本発明の第1の態様によると、この目的は、冒頭に述べたクリップの場合、振動減衰手段が、収容部から長手方向に延び、互いに向かって円錐状にテーパし、且つ、半径方向に弾性的に変形可能であるように設計された、少なくとも2つの第1のタングを有し、収容された物品がタングの端部により保持されるという点で達成される。
【0012】
本発明によるクリップの場合、弾性的に変形可能なタングを介して振動を減衰させることが可能である。弾性的に変形可能なタングは、基部本体と同じ可塑性材料から生成することができ、その場合、クリップをより低い費用で生成することができる。
【0013】
さらに、本発明によるクリップは、従来のクリップに比べて、必要とする据え付けスペースが少ない。
【0014】
本発明の第2の態様によると、上記の目的は、比較的硬い可塑性材料で作られ、長手方向軸に沿って物品を収容することが可能な収容部をもつ基部本体と、基部本体を物品に締結することができる締結部とを有する、物品を加工物に締結するためのクリップにより達成され、この場合に、収容部の保持面は、ゴム系材料で少なくとも部分的に被覆される。
【0015】
本発明の第2の態様によるクリップの特徴は、本発明の第1の態様による特徴と組み合わせられることが好ましい。
【0016】
収容部の保持面に適用されるゴム系材料は、クリップの収容部の保持面と内部に収容される物品との間の摩擦係数を増大させるという利点を有する。
【0017】
結果として、物品は、クリップにおいてより確実に保持され、振動が原因で又は移送中に物品がクリップに対して変位する傾向が減少する。
【0018】
ゴム系材料の被覆のため、クリップは、比較的硬い可塑性材料の一体型の要素とすることができる。従来技術(付加的な軟らかい可塑性要素がクリップに取り付けられるか、又は低速で費用のかかる2K射出成形プロセスによりクリップと統合される)において周知のように、比較的軟らかい可塑性材料の更に別の要素をクリップ内に統合する必要はない。
ゴム系材料は、振動を減衰する効果を有することができる。
【0019】
別の利点は、ゴム系材料の被覆は、比較的硬い可塑性材料で作られた基部本体の機械的特性及び機能に対して如何なる負の効果ももたらさないという点である。
【0020】
本発明の第2の態様によるクリップは、2K射出成形機械よりも著しく短いサークル時間を有する標準的な射出成形機械上で製造することができる。保持面へのゴム系材料の適用は、射出成形機械の現場においてオンラインで行うことができるが、手動で又は自動化された方法で、オフラインで適用することもできる。
従って、目的が完全に達成される。
【0021】
本発明の第1の態様の特に好ましい実施形態によると、振動減衰手段は、収容部から反対の長手方向に延び、互いに向かって円錐状にテーパし、且つ、半径方向に弾性的に変形可能であるように設計された、少なくとも2つの第2のタングを有し、物品は、第1のタング及び第2のタングの端部により保持される。
【0022】
この実施形態の場合、物品は、もっぱらそのようなタングによって保持することができ、即ち、基部本体のいかなる他の部分とも接触しないことが好ましく、その場合、良好な振動減衰を実現することができる。
【0023】
本文脈において円錐状に延びるタングについて言及される限り、これは、これらの円錐状に延びるタングが、収容部に隣接する端部及び自由端部を有し、自由端部と長手方向軸との間の空間が、タングの他方の端部と長手方向軸との間の空間よりも小さいことを意味するよう意図される。これらの間の領域においては、タングは、直線的な設計のものとすることができるが、いずれかの曲線形状を有することもできる。
更に別の好ましい実施形態によると、タングは、基部本体と一体形成される。
【0024】
この実施形態の場合、クリップが単一部品のみを含むことが可能であり、この単一部品は、さらに、単一の材料、即ち比較的硬い可塑性材料から形成される。振動減衰目的に必要な弾性は、好ましくは、適切な長さのタングによってもたらすことができる。第1のタング及び第2のタングの長さは、例えば、いずれの場合にも、収容部領域における基部本体の軸方向長さより長くすることができる。
【0025】
一般に、収容部を閉鎖することができ、その場合、物品はクリップ内に長手方向に導入される。
しかしながら、収容部が、物品を半径方向に導入するための半径方向開口部を有する場合は、特に好ましい。
結果として、物品の取り付け操作をかなりの程度まで簡略化することができる。
さらに、収容部は、少なくとも半径方向開口部の領域において弾性的に広げることができる設計される場合は、ここでは特に有利である。
【0026】
本実施形態の場合、物品を収容部内に挟み込むことができ、半径方向開口部は、ひとたび弾性的に復元されると、物品の後ろに係合し、この場合物品は、本質的に係留状態でクリップ上に保持される。ここでの保持力は、以下に見られるように、物品が、例えばカバーによりクリップ上に確実に固定されるときまで十分な程度のものとすることができる。この代替技術として、この保持力は、物品が、更なる固定手段を必要とすることなく、クリップ上に恒久的に固定されるようにも設定することができる。
【0027】
さらに、収容部が、半径方向開口部の周辺領域において少なくとも1つの導入スロープを有する場合は、好ましい。
これは、収容部内に挟み込む目的で、物品を押し込む動作をかなりの程度まで容易にすることができ、その場合、取り付けがより単純にされる。
【0028】
更に別の好ましい実施形態によると、半径方向開口部に隣接する少なくとも1つのタングが、導入スロープを有する。
タング上のこうした導入スロープは、収容部の領域内の導入スロープの代替物として又はそれに加えて設けることができ、同様に、物品を取り付ける動作を容易にするのに役立つ。
ここでは、タング上の導入スロープが、タングの端部に配置される場合は特に好ましい。
【0029】
更なる好ましい実施形態によると、導入スロープが形成されるタングは、他のタングより長い。一般に、タングは異なる長さであり、その結果として、物品の軸方向の異なる位置に作用することが可能である。一方では、これは、クリップ上への物品の取り付けの安定性を増大させ得る。他方では、クリップにおける物品の軸方向移動に関する固定動作を改善することも可能である。
【0030】
さらに、クリップが、基部本体に結合することができるカバーを有する場合は、全体的に有利である。
このようにして、基部本体の機能の一部をカバーに移すことができる。例えば、ここでの振動減衰手段は、基部本体上の第1のタングと、クリップ上の更なるタングとを有することができ、これらのタングは、同じ長手方向に延び、互いに向かって円錐状にテーパし、且つ、半径方向に弾性的に変形可能であり、そのため、収容された物品はこれら2つのタングの端部によって保持される。
【0031】
さらに、カバーは、更なる機能を有することもできる。
従って、カバーが、収容部の半径方向開口部を閉鎖するための閉鎖部を有する場合は、好ましい。
この実施形態の場合、カバーは、物品をクリップ上に半径方向に固定するのに役立つ。
【0032】
さらに、ここでは、少なくとも1つのクリップ・タングが閉鎖部から長手方向に延び、物品が第1のタングの端部及びクリップ・タングの端部により保持される場合は、好ましい。
カバーは、好ましくは、ラッチ手段を介して基部本体に結合することができ、その場合、カバーを基部本体上に単純に取り付けることができる。
【0033】
さらに、カバーは、例えば既に加工物に固定された基部本体上にラッチ留めされた別個の部品の形で設計することができる。この代替技術として、例えばフィルム・ヒンジを介して、カバーを基部本体と一体形成することもできる。
さらに、締結部が、基部本体を、加工物の表面に対して突出するスタッド上に固定するためのスタッド・ホルダを有する場合は、特に好ましい。
【0034】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態において、ゴム系材料が、本発明の第1の態様によるクリップのタングのうちの少なくとも1つの端部に適用される。
【0035】
本発明の第2の態様のクリップにおいて、物品と接触する保持面が、タングの端部の内部により形成される。これらの保持面にゴム系材料を適用することにより、摩擦係数が増大するために、保持力を増大させることができる。
【0036】
本発明の第2の態様によるクリップの別の好ましい実施形態においては、ゴム系材料は、浸漬、又は噴霧、或いはピペットを用いてある量の材料を付着させることにより適用される。
【0037】
最終的に、簡単且つ費用効果の高いプロセスにより、ゴム系材料を適用することができる。特に、ピペット操作ステップを用いて、材料をクリップのタングの端部に適用することができる。
【0038】
ゴム系材料は、適用される際に低粘度を有する材料であることが好ましい。そのような材料の典型的な例は、PUR、エラストマー材料、PVC、plastisole、及び、物理的又は化学的に硬化する接着剤である。保持面に適用するときのゴム系材料の粘度は、重要なパラメータである。ゴム系材料を適用し、十分な架橋時間を待った後、ゴム系材料の被覆は完了し、保持面に固定される。
【0039】
当然のことながら、本発明の枠組みから逸脱することなく、上述された特徴、及びこれから以下に説明される特徴は、いずれの場合にも、指定された組み合わせだけではなく、他の組み合わせでも、又はそのままで用いることもできる。
本発明の例示的な実施形態は、以下の説明により詳細に説明され、図面に示される。