(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記壁(50)の一部(50X)が、一側においては前記センサ(43)に面して、かつ他側においては回転する前記ターゲット(41,42)によって表面を規定される容積(V)に面して延在しており、前記壁(50)の一部(50X)は、前記センサ(43)と回転する前記ターゲット(41,42)によって表面を規定される容積(V)との間に実質的に軸方向に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の前記噴霧器(P1)。
前記センサ(43)は、磁気センサ、磁気抵抗センサ、ホール効果センサ、電気誘導センサ、磁気誘導センサ、および静電容量センサからなるグループから選択されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の前記噴霧器(P1)。
前記壁(50)を形成する少なくとも1つの材料が、ポリオキシメチレンコポリマー(POM C)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、塩化ポリビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるグループから選択されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の前記噴霧器(P1)。
前記回転駆動手段(7)は、ブレード付きホイール(11)が設けられたタービン(7)を具備してなり、かつ、前記回転構成要素は、前記ブレード付きホイール(11)によって構成されており、前記一つのあるいはそれぞれのターゲット(41,42)は、前記ブレード付きホイール(11)の軸方向表面上に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の前記噴霧器(P1)。
【背景技術】
【0002】
静電式噴霧器を用いた従来のスプレーは、車両の車体などの被覆される物品に被覆材料を塗布するために使用されている。「被覆材料」との語は、下塗剤、塗料、ニスなどをパウダー状または液状で被覆される物品に吹き付けるための材料を意味するよう使用されている。
【0003】
パウダー状または液状の材料をスプレーするために、噴霧器の固定本体に対して回転するよう取り付けられる被覆材料噴霧部材を有する静電式噴霧器を使用できることが知られている。そうした噴霧部材は、通常、皿状またはカップ状の形状のものであり、均一な拡散状態で被覆材料のジェットをスプレーでき、かつこうした方法で吹き付けられる被覆材料の粒子または液滴に高い電荷を付与することができる。
【0004】
一定のかつ反復性のあるスプレー品質および有効性を保証するために、噴霧部材の調整、したがってその回転速度の測定が必要とされている。スプレー部材の回転速度の調整は、回転駆動手段に設定ポイントを送り、その設定ポイントと測定される回転速度との比較結果に応じて変化させることに関連する。
【0005】
特許文献1には、被覆材料の電位を上昇させるための手段と、噴霧部材を回転して駆動させるためのエアタービンと、エアタービンの流入圧力と流出圧力との間の差異に応じて噴霧部材の回転速度を評価するためのデバイスとを含む静電式噴霧器が開示されている。そうしたデバイスによって行われる回転速度の測定はあまり精度が高くない。なぜなら、多数のパラメータが、例えば流入チャネルと流出チャネルとによって部分的にブロックされるなどによってエアタービンの流入圧力と流出圧力とに影響を及ぼすからである。
【0006】
加えて、噴霧部材の回転速度の測定するために、センサとしてのマイクロフォンと、空気圧パルスを発生させる様式で噴霧器の回転構成要素に設けられたターゲットと、を有する検出デバイスが使用できることが知られている。このマイクロフォンは、各パルスに対して、言い換えると、ターゲットがマイクロフォンを通って移動して回転速度が特定されるように計数される電気信号を生じることによって反応する。そうした検出デバイスは、精密な加工をかつそうした検出に関連する構成要素の精密な組み立てを要求し、そのため、こうした加工および組み立てはコストの掛かるものとなっている。
【0007】
さらに静電式噴霧器は圧縮空気源に連結されていなければならず、かつマイクロフォンへ空気信号を供給するために戻りダクトを設ける必要がある。そうしたダクトは、噴霧器に材料供給しかつ電力供給するために必要な連結部およびコネクタが配置される係合面において、噴霧器の半径方向のサイズを全体的に増加させてしまう。加えて、圧縮空気源は連続的にエネルギーを消費する。さらにまた、多くの場合、望ましくないノイズを提供するためにマイクロフォンによって提供される信号を処理することが必要となる。
【0008】
特許文献2には、回転噴霧部材の回転速度を検出するための光学検出デバイスが設けられた静電式噴霧器が開示されている。この光学検出には光エミッタ−レシーバと噴霧部材の回転構成要素に設けられた反射ターゲットとが使用される。そうした検出デバイスは、光を放射するための光学ファイバおよびターゲットによって反射された光パルスを受光するための光学ファイバを必要とする。これら光学ファイバは著しく長大なものとなる。なぜなら、光エミッタ−レシーバは一般にターゲットからある程度の距離をおいて配置されるからである。
【0009】
残念なことに光学ファイバは破損しやすく、そのため多軸ロボットの手首部に取り付けられた静電式噴霧器に振動が加えられることで光ファイバに過度な曲げ応力および/またはねじり応力が掛けられると、光ファイバは損壊することがある。それゆえ、こうした検出デバイスは設置およびメンテナンスにコストが掛かるものとなる。
【0010】
特許文献3には、噴霧器を回転して駆動するための回転駆動手段を組み込んだ本体を有する噴霧器が開示されている。センサは、本体の外側に取り付けられ、かつ導電要素からなる壁によって形成されかつ接地電位に接続された凹部内に取り付けられている。導電要素からなる壁によって形成されたこの凹部は、絶縁破壊、過剰消費またはスパーキングを避けるために、高電位要素から充分に離間されている必要がある。
【0011】
特許文献4には、磁気センサと、噴霧部材を回転して駆動するエアタービンのホイールに配置されたマグネットによって構成された二つのターゲットとを備える検出デバイスを含む静電式噴霧部材が開示されている。この検出デバイスは、タービンホイールに隣接して配置されたソレノイドから形成されたセンサを備えており、それによってマグネット−ターゲットがセンサを通過するたびごとに電気パルスがソレノイドに発生する。センサのソレノイドは、回転速度を評価する計数ユニットに電気パルスを送る。静電式噴霧器においては噴霧部材が、一般にはタービンの特定の構成要素(例えばホイール)が高電圧下にある。これは、センサのソレノイドが、電気パルス誘導する高電圧ケーブルを介して、かつ高電圧ケーブルによって影響を受ける絶縁ソレノイドを介して、計数ユニットに接続されているためである。
【0012】
高電圧ケーブルの絶縁は外的電磁干渉を考慮すると十分でないことがある。外的電磁干渉は、計数ユニットに望ましくない信号を誘起することがあり、それによって回転速度の評価に誤りが生じてしまう。さらに高電圧ケーブルは、噴霧器のメンテナンス中に操作者に危険性を示すキャパシタを形成する。また、この高電圧ケーブルは嵩張るため、適合および取り扱いが困難である。加えて、そうした検出デバイスは、特定の構成を有するセンサのソレノイドを含む二つのソレノイドが必要でありかつ高電圧ケーブルも必要であるため、相対的にコストが掛かる。さらに言えば、そうした噴霧器は、高電圧ケーブルの一部と、噴霧器のフィッティング平面または中位−電圧電力ケーブルとの間に電気アークが発生する可能性が増大するという問題を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の特定の目的として、正確であり、信頼性が高く、頑丈であり、無害であり、簡単な構成であり、かつ低コストな検出デバイスを備える静電式噴霧器を提供することによって、上記欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのため、本発明は、液状あるいはパウダー状の被覆材料を静電気的にスプレーするための噴霧器であって、
当該噴霧器は、
・電気的に絶縁された本体と;
・本体に対してかつ回転軸線の周囲で回転するよう取り付けられた、被覆材料をスプレーするための噴霧部材と;
・噴霧部材を回転駆動するための回転駆動手段と;
・噴霧部材の電位を高電位まで上昇させるために設けられた電力供給手段と;
・電力供給手段に電気的に接続され、かつ特に噴霧部材と回転駆動手段と電力供給手段とに属する導電要素であって、導電要素の電位は高電位へと上昇されるのに適している、導電要素と;
・噴霧部材の回転速度を測定するための検出デバイスと;
を備え、
検出デバイスは、
・噴霧部材または回転駆動手段のうちのひとつなどの、噴霧器に属する回転構成要素上に配置された少なくとも1つのターゲットと;
・噴霧器内に固定されたセンサであって、センサは一つのあるいはそれぞれのターゲットを検出するよう構成されており、センサは、信号を処理するための遠隔処理ユニットにセンサをリンクするためのリンクケーブルが備えられている、センサと;
を備える。
【0016】
噴霧器は、絶縁材料から形成された少なくとも1つの壁をさらに備え、壁は、センサ全体とリンクケーブルのすべてまたはその一部とを導電要素から電気的に絶縁する様式で、センサとリンクケーブルのすべてまたはその一部とを包囲する凹部を規定している。センサは、回転するターゲットによって面を規定される容積から、回転軸線に本質的に平行に延在する検出距離によって離間されている。
【0017】
それゆれ、センサおよびリンクケーブルの一部は絶縁され、そして高電位から、ひいては低電位に接続されたセンサの部分における絶縁破壊が生じる危険性から保護される。
【0018】
本発明の有利であるが付加的な特性によれば、以下のものは、単独であるいは技術的に実現可能な以下の組み合わせで採用される:
・壁は本体の一部から形成されている。
・壁は、本体に取り付けられた別体部分から形成されている。
・壁の一部が、一側においてはセンサに面してかつ他側においては回転するターゲットによって面を規定される容積に面して延在しており、壁の一部は、センサと回転するターゲットによって面を規定される容積との間に実質的に軸方向において配置されている。
・壁の一部と回転するターゲットによって面を規定される容積とは、1mmから10mmの範囲内にある軸方向距離によって離間されている。
・噴霧部材の電位が50kV以上まで上昇される場合に、壁は3mmより大きな厚さを有する。
・凹部は、回転軸線に実質的に平行な方向に延在する。
・センサは、磁気センサ、磁気抵抗センサ、ホール効果センサ、電気誘導センサ、磁気誘導センサ、および静電容量センサからなるグループから選択される。
・壁を形成する少なくとも1つの材料が、ポリオキシメチレンコポリマー(POM C)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、塩化ポリビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるグループから選択されたものである。
・回転駆動手段は、ブレード付きホイールが設けられたタービンを備え、かつ回転構成要素は、ブレード付きホイールによって構成されており、一つのあるいはそれぞれのターゲットは、ブレード付きホイールの軸方向表面上に配置されている。
・一つのあるいはそれぞれのターゲットは、レリーフにおけるくぼみ部または突出部などの、不連続的な形状で構成されている。
・一つのあるいはそれぞれのターゲットは、不連続的な材料によって構成されており、一つのあるいはそれぞれのターゲットは、例えば導電材料または磁気材料を含む。
・一つのあるいはそれぞれのターゲットは、不連続的な物理的特性によって構成されている。
【0019】
以下の図面を参照した非限定的な励磁として与えられる説明から本発明はより良く理解できかつその利点も明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本体1と、車両の車体などの物品を被覆するべく材料をパウダー状態でスプレーするための噴霧部材2とを含む噴霧器P
1を示す。
【0022】
噴霧部材2は、互いに固定されるカップ3とディスク4とを備え、それらは、ともに、材料をパウダー状態で噴射するための射出細隙5を規定する。噴霧部材2は、カップ3およびディスク4が固定されるベース6をさらに備える。噴霧部材2は、噴霧器P
1の下流端部に取り付けられている。
【0023】
より詳細には、ベース6は、タービン7に属するシャフト8の下流端部に固定されている。シャフト8は、タービン7のケーシング10内においてベアリング9によって支持されている。タービン7のケーシング10は、ナット15を用いて本体1の下流部分に固定されている。タービン7は、シャフト8の上流部分に固定されたブレード付きホイール11をさらに含む。本体1は、ケーシング10の相当な部分を覆う。本明細書において「上流」および「下流」との語は噴霧器P
1の通常の流れ方向に関連して使用されている。
【0024】
またタービン7には、ブレード付きホイール11のブレード上に圧縮空気を誘導するために構成されたチャネル(図示せず)が設けられている。作動中に、ブレードに噴射された圧縮空気は、軸線X
2の周囲で、ブレード付きホイール11を回転させるように駆動し、そしてシャフト8および噴霧部材2をも回転状態で駆動する。このようにタービン7は軸線X
2の周囲噴霧部材2を回転駆動するための駆動手段を形成する。
【0025】
パウダー状の被覆材料をスプレーするための静電式噴霧器を吹き付ける間、噴霧部材の回転速度は通常5000毎分回転数(rpm)から10000rpmの範囲内にある。液状の被覆材料をスプレーするための静電式噴霧器を吹き付ける間には、噴霧部材の回転速度は通常35000毎分回転数(rpm)から80000rpmの範囲内にある。
【0026】
噴霧器P
1は、噴霧器P
1を被覆される物品に対して移動させるよう構成された多軸ロボットの手首部16に固定されていてもよい。特に、噴霧器P
1には、本体1の上流肩部18を手首部16に対して固定状態で保持するナット17が備え付けられている。本体1の上流軸方向表面は、手首部16とのインターフェースを形成するフィッティングプレート19を規定する。
【0027】
噴霧器P
1は、噴霧部材2の電位(potential)を高電位まで引き上げるために電力供給手段26をさらに備える。本出願においては、「電位」「電圧」および「電流」との語は、それぞれ、電気的なポテンシャル、電気的な細または電気的な「テンション」、および電気的な流れを意味しております。また「導電する」「接続する」および「相互接続する」との語は、固体または液体導電体によって、もしくは二つの部分が接触状態となりかつ相対的運動状態となることによって、あるいは電磁誘導によって、電気的に導電することを意味している。
【0028】
電力供給手段26は、本体1に設けられた相補的な形状のチャンバ21内に配置される高電位(高電圧)ユニット20を備える。高電位ユニット20は、それ自体がフィッティングプレート19において高電位ユニット20に接続される電力コネクタ25に取り付けられた電力ケーブル24を使用して電力供給されるようになっている。一変形例(図示せず)においては、高電位ユニットは噴霧器の外側に配置されてもよい。そうした変形例において、高電位(高電圧)ケーブルは、高電位ユニットと噴霧器の内側との間に配置される、それゆえ、そうした高電位ケーブルは、噴霧部材の電位を高電位まで上昇させるための電力供給手段を構成している。
【0029】
高電位ユニット20および噴霧部材2は、導電要素を介して電気的に相互接続されている。高電位ユニット20の出口は、導電材料からなるシート23へとそれ自身がプラグ接続されているピン22と接触している。シート23は、リング33を介して、シャフト8に、ひいては噴霧部材2に電気的に接続されている。
【0030】
ピン22、シート23、リング33、シャフト8およびベース6は、導電材料から形成されているため、「導電」要素である。噴霧部材2は、射出細隙5を介して材料粒子が排出されるまえに材料粒子を充填するための例えばピン2.1およびディスク4などの他の導電要素を含む。噴霧部材2は、また、被覆材料からなる粒子または液滴を高電位なものとするための電極を含む。ゆえに、そうした電極は導電要素を形成する。時1ないし
図4に示される例示において、電極はディスク4によって構成されてもよい。加えてこの例示においてはケーシング10およびブレード付きホイール11は絶縁材料から形成できる。代替的には、ケーシング10およびブレード付きホイール11は、導電材料から形成されてもよい。
【0031】
これら導電要素は、高電位ユニット20に対して直接的にあるいは間接的に接続されており、それらは噴霧部材2の一部、またはタービン7の一部、もしくは電力供給手段26の一部である。これら導電要素のそれぞれの電位は、通常10キロボルト(kV)から100kVの範囲にある高直流電源(DC)においては高くなっていてもよい。
【0032】
噴霧部材2にパウダー状被覆材料を供給するために、噴霧器P
1は、円状ベースを有するチューブ30を含む。チューブ30は、本体1およびタービン7を通って軸線X
2と同軸となるように延在している。チューブ30の上流端部は、パイプ32に適合される連結部31を有する。パイプ32は、貯留部(図示せず)から噴霧器P
1まで被覆材料を移動させる様式で、手首部16を通って延在している。チューブ30の下流端部は、噴霧部材2のベース6における円筒孔へ開放されている。
【0033】
加えて噴霧器P
1は、噴霧部材2の回転速度を評価するための検出デバイス40を有する。検出デバイス40は、ブレード付きホイール11上に配置された二つのターゲット41および42と、噴霧器P
1の本体1内に固定されたセンサ43とを備えている。
【0034】
図2に示されるように、ターゲット41または42はそれぞれブレード付きホイール11に組み込まれたパッドから形成される。特にターゲット41または42は、ブレード付きホイール11の上流軸方向表面12において開放される様式で、それぞれブレード付きホイール11に形成された対応する形状の各孔に収容される。ターゲット41および42は、軸線X
2から同一半径距離で配置されており、かつそれらは、回転するターゲット41および42の慣性の相互的な補償によってブレード付きホイール11がバランスをとれるような様式で、直径方向において対向するポジションを占めるようになっている。
【0035】
本出願において、方向または距離は、軸線X
2に対して平行である場合あるいは軸線X
2に対して直交する場合のそれぞれにおいて「軸方向」および「半径方向」を意味するよう使用される。本出願において、表面は、その表面に対する法線に続く方向に応じた「軸方向」または「半径方向」を意味している。それゆえ軸線方向表面は、軸線X
2に対して実質的に直交するものである。
【0036】
実際に、ターゲット41および42のそれぞれは、円筒形状のものであり、かつ接着性結合、圧力ばめ、または他の同等の結合によって適所においてブレード付きホイール11に固定されている。
【0037】
各ターゲット41または42は永久磁石によって構成されており、一方で、ブレード付きホイール11は非透磁性の材料または低透磁性の材料によって構成されている。実際に各ターゲット41または42は、強磁性体または強磁性材料から形成されてもよい。それゆえ各ターゲット41または42は、不連続的な材料または物理的特性(physical property discontinuity)の形をとるものである。好ましくは、各ターゲット41および42は、希土類からもしくは高い透磁性を有する材料から形成されてもよい。それによって、各ターゲット41または42を相対的にコンパクトにできると同時に、相対的に強力でありかつ検出可能な磁気範囲を生じるようにする。各ターゲット41または42の磁気範囲は、軸線X
2に平行となるよう配向されている。各ターゲット41または42の極性は、センサ43の検出方向に応じて配向付けられている。
【0038】
この例において、センサ43はこの例示におけるホール効果タイプのものである。より一般的には、ターゲットを検出するセンサは、検出されるターゲットの特性に応じて能動的あるいは受動的なタイプのものとすることができる。センサ43は、磁気センサ、磁気抵抗センサ、ホール効果センサ、電気誘導センサ、磁気誘導センサ、および静電容量センサを含むグループから選択されてもよい。
【0039】
この方法で選択されたセンサは、高速回転時および低速回転時の両方においてターゲットを検出できる。それは圧縮空気を必要とせず、それによってエネルギーを節約でき、かつ被覆材料による検出領域のなんらかの汚損に対する影響を受けないものとなる。加えてそうしたセンサはコンパクトなものである。当該センサは、長大な検出範囲を有するよう選択され、それによって、相対的に薄手の遮蔽壁を提供できるようになる。
【0040】
加えてそうしたセンサは、高周波数で作動しなければならず、それによって高速の回転を検出できるようになる。上記速度のような高速の回転を検出するために、選択されたセンサは、数キロヘルツ(kHz)のオーダーの高周波数でのターゲット検出に効果があるよう構成されたものでなければならない。
【0041】
半径方向において、センサ43は、ターゲット41および42のそれぞれに関して軸線X
2からおおよそ同一の半径距離をおいて噴霧器P
1内に配置されている。軸線方向において、センサ43は、軸線X
2の周囲で回転するターゲット41および42によって表面を規定される(言い換えると、広がっている)容積Vから、検出距離Hをおいて噴霧器P
1内に配置されている。容積Vは
図2において破線で示されている。それゆえ容積Vは軸線X
2と同軸の環状形状を有する。検出距離Hは、軸線X
2に平行に計測されたものであり、この例示に置いては約6mmである。検出距離は実際に使用されるセンサの感度に応じて決定され、それによって、センサが各ターゲットの各々の回転中において一度ターゲットをそれぞれ検出するようになる。
【0042】
作動中において、センサ43の電位は、接地された場合に低電位あるいはゼロ電位へもたらされる。センサ43は、噴霧器P
1の導電要素、つまり詳細に言えば、高い電位まで上昇させられる要素である噴霧部材2、部分33、シャフト8ならびにターゲット41および42に対して絶縁されている。
【0043】
本発明において、「絶縁」「絶縁する」および「絶縁性」との語は、電気的な導電を遮断するかあるいは著しく制限する電気的な遮断に関する特性に関連して使用される。
【0044】
導電要素からセンサ43への絶縁のために、噴霧器P
1は、本体の一部によって形成されかつセンサ43のための凹部51を規定する壁50をさらに備える。本体1は凹部51を、さらには壁50を覆う。本体1ひいては壁50は一つ以上の絶縁材料から形成される。言い換えると壁50は本体1と一体的に形成されている。実際に本体1および壁50を形成する材料は、ポリオキシメチレンコポリマー(POM C)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、塩化ポリビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるグループから選択されたものである。
【0045】
凹部51は、フィッティングプレート19から容積Vからわずかに上流に配置された検出領域まで、軸線X
2に平行な方向に延在している。凹部51は円筒形状を有する。凹部51は、壁50によって規定されセンサ43を収容する下流部分と、センサ43に電力供給するべく電流とターゲット41および42の回転中にセンサ43によって生じた電気的信号とを送るリンクケーブル46を収容する上流部分と、から形成されている。フィッティングプレート19において、リンクケーブル46は信号コネクタ45に接続されており、それ自体は手首部16内を延在する信号ケーブル44に、そして信号処理ユニット(図示せず)に接続されている。
【0046】
図2に示されるように、凹部51はセンサ43およびそのリンクケーブル46の一部を包囲する。それゆえ、センサ43全体は、噴霧器P
1の、センサ43より本質的に下流に配置されている導電要素から絶縁されている。したがって、センサ43およびリンクケーブル46の一部は、高電位から絶縁されかつ保護される。ひいては、低電位に接続されたセンサの部分にわたって絶縁破壊が生じる可能性が低減される。
【0047】
凹部51の下流部分は(組み立てクリアランスを無視すると)センサ43の一部の周囲にぴったりと適合されるため、凹部51内にセンサ43を配置するのが容易となる。
【0048】
図2に示されるように、センサ43を凹部51内へそしてその端部において適所に配置するために、センサ43は、まず外筒52の端部へネジ止めされる。外筒52は、その両端が開放された筒状形状のものである。外筒52は堅固であり、それによってセンサ43を保持しかつ凹部51の下流端部におけるその検出ポジションへと延在できるようになっている。外筒52は、凹部51の円筒状半径方向面と一致する環状形状を有し、それによって、リンクケーブル46が外筒52に沿ってその内側を通過できるようになる。
【0049】
壁50の軸方向部分50Xは、一側がセンサ43に面して延在し、かつ他側が容積Vに面して延在している。したがって軸方向部分50Xは実質的に半径方向に延在している。軸方向部分50Xは、センサ43と容積Vとの間に、軸方向に配置されている。言い換えると、壁50の軸方向部分50Xは、軸線X
2に平行な方向において、凹部51の下流軸方向表面とケーシング10の上流表面との間に配置されている。壁50の軸方向部分50Xと容積Vとは、約1ミリメートル(mm)の軸方向距離G
1をおいてによって区分されている。実際に軸方向距離G
1は1mmから10mmの範囲内にある。センサ43は、壁50Xの軸方向厚さと軸方向距離G
1との合計よりも大きな検出距離Hを有していなければならない。
【0050】
実際に、壁50を形成するために使用される材料は、使用される高電位から効果的にセンサ43を絶縁するために壁50の軸方向部分50Xが約5mmの厚さE
1を有するよう与えられる。現実に、厚さE
1は5mm以上となるよう選択される。
【0051】
加えて、壁50の半径方向部分50Yが凹部51の円筒形状表面と軸線X
2との間に延在している。壁50の半径方向部分50Yの最も薄い部分は、凹部51の下流部分の円筒形状表面と、リング33の半径方向表面との間に延在している。この壁50の半径方向部分50Yの最も薄い部分は、約5mmの厚さF
1を有する。
【0052】
したがってセンサ43は、絶縁距離を無視したときに、ターゲット41および42の近くに取り付けられてもよい。噴霧器P
1全体のサイズを制限するこの配置は半径方向Y
2において高いコンパクト性を示す。
【0053】
壁50の軸方向部分のおよび半径方向部分のそれぞれの厚さE
1およびF
1は、絶縁壁を形成する材料の透磁性に応じて、かつ、その電位が低くあるいはゼロにもたらされたセンサ43と、その電位が高い電位へともたらされた噴霧器P
1の導電要素との間の予想される電位差に応じて、規定される。
【0054】
加えて、凹部51は、軸線X
2に沿って測定された長さL
51を有しており、長さL
51は50kVから100kVの範囲内の高電位のために100mmから150mmの範囲内におおむねある。長さL
51は、フィッティングプレート19と導電要素との間がどれだけ離れていることが必要とされるかに応じて規定される。
【0055】
作動中において、静電式スプレー中、パウダー状の被覆材料がパイプ32を介して、続いてチューブ30を通って噴霧部材2へと空気作用(pneumatically)によって移送させられる。それゆえ、被覆材料は、フィッティングプレート19から噴霧器P
1を介して噴霧部材2へ向かって上流から下流方向へ流動させられる。
【0056】
高電位ユニット20は、電源ケーブル24を経てかつ電源コネクタ25を介して電気的に電力供給されかつ作動させられる。続いて、電力供給手段26は、噴霧器P
1の導電要素の電位を高電位まで上昇させ、特にピン22の、シート23の、リング33の、シャフト8の、ベース6の、ピン2.1の、およびディスク4の電位を高電位まで上昇させる。そしてパウダー状の材料は、ベース6から射出細隙5までカップ3に沿って流動する。このとき、その粒子のそれぞれは帯電状態で蓄積されている。
【0057】
センサ43は、ターゲット41または42がその検出部材に近接して通過したときにいつでも使用可能となる信号変化を生じるものである。発生した信号変化またはセンサ43によって生じた電気的パルスはリンクケーブル46を介して伝達され、続いて信号コネクタ45を通り、そして信号ケーブル44を通過し、計数ユニット(図示せず)へと伝達される。計数ユニットは、上記信号変化に基づいて噴霧部材2の回転速度を特定する電気回路に組み込まれている。
【0058】
ホール効果を実現するセンサを使用することは、信頼性が高くかつ反復可能な様式で明確な信号変化を生じるため、回転速度の測定の精度を向上させると同時に検出機能を実施可能とする。
【0059】
加えて、軸線方向におけるセンサ43とターゲット41および42の配置は、本体1の半径方向の寸法を、つまり、軸線X
2に直交する平面上におけるその寸法を著しく制限する。それゆえ、実質的に円筒形の本体1は約100mmの直径D
1を有し、その一方で、軸線X
2に直交する方向Y
2において測定されたセンサ43の半径方向の直径は、約10mmである。
【0060】
センサ43の半径方向寸法と本体1の直径D
1との比は約10%である。したがって、なんらかの付加がセンサ43によってなされることがないため、噴霧器P
1の半径方向における全体のサイズは小さくなる。車両の車体の内面を被覆することに関連付けられた小さな容積における噴霧器P
1へのアクセス、および、スプレーブースにおける開口を通るアクセスは、噴霧器P
1の半径方向全体のサイズによって直接的に決定される。
【0061】
さらに、噴霧器P
1において、導電材料からなる外筒52は、線さ43の外面に連結されることが必要とされた場合に導電要素によってかつ噴霧器P
1に組み込まれた電力供給手段26によって生じる電磁干渉を避けるために接地できる。
【0062】
図3および
図4’には本発明の噴霧器P
2の第二実施形態を示す。
図1および2を参照して与えられた噴霧器P
1に関する説明は、後述する差異を除いて、
図3および4に示された噴霧器P
2に変換できる。噴霧器P
1の要素と類似するあるいは対応する噴霧器P
2の要素は、同様の参照番号が付与される。それゆえ以下のように規定される:本体1、噴霧部材2およびその回転軸線X
2、タービン7、ロボット手首部16、フィッティングプレート19、パワーコネクタ25、および信号コネクタ45、電力供給手段26、チューブ30、ターゲット41および42ならびにセンサ43。
【0063】
噴霧器P
1は、噴霧器P
2とはセンサ43を噴霧器P
1の導電要素に対して絶縁する壁50のかつ凹部51の構成ならびに配置に関して異なっている。本体1の一部によって形成された噴霧器P
1の壁50とは異なり、噴霧器P
2は、下流側が開放されていないチューブの形態の外筒152によって形成された壁150を有する。このものにおいて、それはチューブに一体的に形成されたディスクによって閉鎖されている。外筒152は
図4に示されるように本体1内に形成された筒状穴13内に取り付けられている。
【0064】
外筒152の壁150は、センサ43およびそのリンクケーブル46を包囲する凹部151を規定する。本体1は、特に、外筒152を被覆し、ひいては特に凹部151および壁150を被覆する。壁150の軸方向部分150Xおよび半径方向部分150Yは、それぞれ、該当152の下流軸方向部分によって、かつ筒状半径方向部分によって形成される。噴霧器P
2のこの構成は、本体1の相対的に単純な加工をもたらす。
【0065】
凹部151の長さL
151は、高電位導電要素同士とリンクケーブル46との間またはフィッティングプレート19と電源コネクタ25または信号コネクタ45との間において、もしそれらが接地されている場合には、外筒152に沿って電気アーク発生する高電位のクリープまたは伝播を避けるのに十分な大きさとなるように選択される。このため、長さL
151は、50kVから100kVの範囲内にある電圧レベルのために、150mmより大きなものとなっている。そうした電気アーク発生は、センサ43の電磁干渉を損ない、さらには消滅させる。
【0066】
外筒152は、ポリオキシメチレンコポリマー(POM C)などの絶縁性材料からなる。実際に、外筒152を形成する材料は、ポリオキシメチレンコポリマー(POM C)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、塩化ポリビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるグループから選択されたものである。
【0067】
噴霧器P
2において、噴霧器の裏側に配置されかつ低電位または接地電位へともたらされた導電要素に対して、外筒152が取り付け可能なように、かつさらに外筒と本体1との間の電気アークの伝播を避けるようにするために、外筒152と本体1との間の隙間は最小にされることが好ましい。
【0068】
センサ43の軸線方向部分43Xは、その検出部材が配置されており、かつ軸線X
2の周囲で回転状態で作動するターゲット41および42によって面が規定される容積Vから検出距離Hをおいて配置されている。容積Vは
図4において破線で示されている。センサ43を噴霧器P
2の導電要素から絶縁するために、壁150の軸方向部分150Xの厚さE
2は5mmに等しい。実際に厚さE
2は3mmより大きい。同様に、壁50の半径方向部分150Yの厚さF
2(つまり外筒152の半径方向の厚さ)は5mmに等しい。実際に厚さF
2は3mm以上である。
【0069】
壁150の下流軸方向部分150Xは、一側においてセンサ43に面してかつ他側は容積Vに面して延在している。壁150の軸方向部分150Xは、凹部51の下流軸方向表面とケーシング10の上流表面との間において軸線X
2に平行に配置されている。壁150の軸方向部分150Xおよび容積Vは、約1mmの軸方向距離G
2によって隔てられている。実際に軸方向距離G
2は1mmから10mmの範囲内にある。
図3および
図4に示される変形例に置けるように、平面である代わりに、壁150の軸方向部分は、タービン7の構成要素に対して後退するかあるいは突出したレリーフが施された部片を有していてもよい。
【0070】
厚さF
1およびF
2は、絶縁壁を形成する材料の透磁性に応じて、かつ噴霧器P
2の導電要素の電位がもたらされる高電位に応じて規定される。
【0071】
噴霧器P
1においてかつ噴霧器P
2において、センサ43とすべてのまたはいくつかのリンクケーブルとは、高電位になされた導電要素から完全に絶縁されている。言い換えると、センサ43のすべての構成要素およびリンクケーブルの一部は、高電位から絶縁され、かつ低電位またはゼロ電位(つまり接地状態)とすることができる。
【0072】
センサ43全体の絶縁は、回転速度を測定する機能を保護しかつそれを保証するためにセンサ43自体の構成要素を通る電気アークの伝導を回避することができる。そうした電気アークは、被覆材料によって生じた爆発可能性のある環境中においてはスパークポイントとなり得る。したがって、本発明は、内因的なセーフティーバリアに比べて単純でありかつ安価に、爆発可能性のある環境中でも保護状態を獲得できる。
【0073】
センサ43が高電位になされた導電要素から完全に絶縁されているため、センサ43はターゲット41および42へ非常に近接して配置されてもよい。それゆえ、相対的にコンパクトであり、感受性が強すぎず、高電位に耐えうるように設計されておらず、それゆえ安価なセンサを使用することが可能となる。
【0074】
噴霧器P
1において、金属から形成されかつ設置された外筒52を使用することで、高レベルの周囲電磁干渉に対するセンサ43のおよびリンクケーブル46の遮蔽が形成される。
【0075】
噴霧器P
2において、そうした遮蔽はセンサ43上にかつリンクケーブル46上に直接設けられてもよい。
【0076】
変形例(図示せず)において、各ターゲットは、レリーフにおけるくぼみ部または突出部などの不連続的な形状によって構成されている。そうした状況において、センサは、静電容量センサあるいは導電材料から形成された場合には誘導型センサとすることができる。
【0077】
他の変形例(図示せず)においては、各ターゲットは、第一実施形態におけるような磁気材料の代わりに導電材料を備える不連続的な材料によって構成されていてもよい。そうした状況においてセンサは誘導型のものとすることができる。
【0078】
代替的な変形例(図示せず)においては、各ターゲットは、ターゲットが固定される部分と同様の材料から形成され得る不連続的な物理的特性を形成する。センサは、この不連続的な物理的特性を検出するよう構成されているが、高電圧に耐えうるように構成される必要はない。
【0079】
そうした不連続的な物理的特性は、例えば表面状態における変化によって形成されてもよい。少なくとも1つのターゲットは、センサを形成する光エミッタ−レシーバによって放出された光線を反射する様式で研磨された回転部分の一領域によって形成されてもよく、光エミッタ−レシーバは光バリアによって構成されていてもよい。
【0080】
この変形例においては、絶縁壁は透明材から形成されている。光エミッタ−レシーバは全体的に透明壁に包囲されており、それによってターゲットからの検出を実行する構成要素が完全に絶縁され、かつセンサへ向かう電気アークの発生のリスクが避けられる。したがって、光エミッタ−レシーバは、ターゲットに非常に近接して、特にその視界の範囲内に設置することができる。それによって光学ファイバはほとんどあるいはまったく必要ではなくなる。
【0081】
他の変形例(図示せず)において、噴霧部材を回転状態で駆動するための回転駆動手段は、エアタービンの代わりに電気モータを備えていてもよい。
【0082】
さらに他の変形例(図示せず)においては、絶縁壁は、層状に並置された複数のさまざまな材料から形成されてもよい。
【0083】
図1ないし
図4の例示に置いては、本発明はパウダー状の被覆材料をスプレーするための静電式噴霧器に関して説明した。しかしながら、本発明は液状の被覆材料をスプレーするための静電式噴霧器にも適用される。パウダー状の被覆材料をスプレーするための静電式噴霧器を液状の材料をスプレーするために適切に形成するべく採用される構造上の変更は従来のものであり、そのため、それについては本願明細書には記載しない。