(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)中心電極と、前記中心電極の外周に配置された絶縁体と、前記絶縁体の外周に配置された主体金具と、一端部が前記主体金具に接合され、他端部が前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、を備えるスパークプラグを製造するために、前記中心電極と前記絶縁体と前記主体金具とを備えると共に、前記接地電極を形成するための接地電極形成部材の一端部が前記主体金具に接合されたスパークプラグ形成部材を用意する工程と、
(b)前記スパークプラグ形成部材における前記中心電極の先端部の位置を測定する工程と、
(c)前記主体金具に接合された前記接地電極形成部材の他端部側の切断を行なう工程と、を備えるスパークプラグの製造方法において、
前記(b)工程は、
(b−1)前記スパークプラグ形成部材を、該スパークプラグ形成部材を保持するための保持治具に固定すると共に、前記位置を測定するための測定装置に対して前記保持治具を位置合わせする工程と、
(b−2)前記測定装置を用いて、前記測定装置に対して位置合わせされた前記保持治具に固定されている前記スパークプラグ形成部材について、前記位置測定を行なう工程と、
を備え、
前記(c)工程は、
(c−1)前記(b)工程の後に、前記スパークプラグ形成部材が固定された状態を維持する前記保持治具を、前記切断を行なうための切断装置に対して位置合わせする工程と、
(c−2)前記切断装置を用いて、前記切断装置に対して位置合わせされた前記保持治具に固定されている前記スパークプラグ形成部材について、前記(b−2)工程の結果に基づいて決定される切断箇所において接地電極形成部材の切断を行なう工程と、
を備えることを特徴とするスパークプラグの製造方法。
(a)中心電極と、前記中心電極の外周に配置された絶縁体と、前記絶縁体の外周に配置された主体金具と、一端部が前記主体金具に接合され、他端部が前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、を備えるスパークプラグを製造するために、前記中心電極と前記絶縁体と前記主体金具とを備えると共に、前記接地電極を形成するための接地電極形成部材の一端部が前記主体金具に接合されたスパークプラグ形成部材を用意する工程と、
(b)前記スパークプラグ形成部材における前記中心電極の先端部の位置を測定する工程と、
(d)前記主体金具に接合された前記接地電極形成部材の他端部に、電極チップを溶接する工程と、を備えるスパークプラグの製造方法において、
前記(b)工程は、
(b−1)前記スパークプラグ形成部材を、該スパークプラグ形成部材を保持するための保持治具に固定すると共に、前記位置を測定するための測定装置に対して前記保持治具を位置合わせする工程と、
(b−2)前記測定装置を用いて、前記測定装置に対して位置合わせされた前記保持治具に固定されている前記スパークプラグ形成部材について、前記位置測定を行なう工程と、
を備え、
前記(d)工程は、
(d−1)前記(b)工程の後に、前記スパークプラグ形成部材が固定された状態を維持する前記保持治具を、前記電極チップの溶接を行なうための溶接装置に対して位置合わせする工程と、
(d−2)前記溶接装置を用いて、前記溶接装置に対して位置合わせされた前記保持治具に固定されている前記スパークプラグ形成部材について、前記(b−2)工程の結果に基づいて決定される溶接箇所において電極チップの溶接を行なう工程と、
を備えることを特徴とするスパークプラグの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スパークプラグの発火部を形成する際には、接地電極の端部近傍に電極チップを溶接する加工が行なわれる場合がある。また、接地電極を所望の長さに切断する加工が行なわれる場合もある。これら発火部を形成するための加工の種類によっては、例えばスパッタの飛散を伴う電極チップの溶接加工を行なう場合のように、撮像装置を用いた中心電極先端の位置測定と共通する装置を用いて行ない難い場合がある。このような場合には、中心電極の先端位置測定と加工とを、異なる装置によって行なう必要が生じる。
【0005】
また、スパークプラグの発火部を形成する際には、上記した電極チップの溶接加工や接地電極の切断加工と共に、接地電極を湾曲させる曲げ加工が行なわれるものであり、発火部形成のためには、通常は複数種類の加工工程が実行される。このように複数種類の加工工程を行なう場合には、加工対象であるスパークプラグの中心電極の先端位置測定の工程と、全ての加工工程とを、共通する装置を用いて行なうことは通常は困難である。したがって、中心電極の先端位置測定と各々の加工とを、異なる装置を用いて異なる位置で行なうか、あるいは、個々の加工を行なう加工装置において、個々に中心電極の先端位置測定を行なう必要が生じる。
【0006】
また、複数種類のスパークプラグを形成する際に、スパークプラグの種類に応じて異なる加工条件にて所定の加工を行なう場合には、加工条件ごとに異なる加工装置を用意する必要が生じる。例えば、接地電極の端部近傍に溶接する電極チップの形態が異なる複数種類のスパークプラグを製造する場合には、電極チップの種類毎に、異なる条件にて溶接を行なう溶接装置を用意する必要がある。このような場合には、中心電極の先端位置を測定するための単一の測定装置を、全ての加工装置が共通して利用できるならば、スパークプラグの製造装置全体の構成を簡素化できて望ましい。
【0007】
しかしながら、中心電極の先端位置測定と、発火部形成のための加工とを、異なる装置を用いて行なう場合には、位置測定した結果に基づく加工の精度を十分に確保することが困難になるという問題が生じ得た。すなわち、位置測定装置とは別体で設けられた加工装置を用いてスパークプラグの加工を行なう際に、位置測定結果と、位置測定結果に基づく加工時の判断との間にずれが生じて、加工によって作製される発火部の形状の精度が不十分になる可能性があった。
【0008】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、中心電極の先端位置測定のための測定装置と、発火部形成のための加工装置とが、異なる装置であっても、発火部形成の精度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実施することが可能である。
【0010】
[適用例1]
(a)中心電極と、前記中心電極の外周に配置された絶縁体と、前記絶縁体の外周に配置された主体金具と、一端部が前記主体金具に接合され、他端部が前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、を備えるスパークプラグを製造するために、前記中心電極と前記絶縁体と前記主体金具とを備えると共に、前記接地電極を形成するための接地電極形成部材の一端部が前記主体金具に接合されたスパークプラグ形成部材を用意する工程と、
(b)前記スパークプラグ形成部材における前記中心電極の先端部の位置を測定する工程と、
(c)前記主体金具に接合された前記接地電極形成部材の他端部側の切断を行なう工程と、を備えるスパークプラグの製造方法において、
前記(b)工程は、
(b−1)前記スパークプラグ形成部材を、該スパークプラグ形成部材を保持するための保持治具に固定すると共に、前記位置を測定するための測定装置に対して前記保持治具を位置合わせする工程と、
(b−2)前記測定装置を用いて、前記測定装置に対して位置合わせされた前記保持治具に固定されている前記スパークプラグ形成部材について、前記位置測定を行なう工程と、
を備え、
前記(c)工程は、
(c−1)前記(b)工程の後に、前記スパークプラグ形成部材が固定された状態を維持する前記保持治具を、前記切断を行なうための切断装置に対して位置合わせする工程と、
(c−2)前記切断装置を用いて、前記切断装置に対して位置合わせされた前記保持治具に固定されている前記スパークプラグ形成部材について、前記(b−2)工程の結果に基づいて決定される切断箇所において接地電極形成部材の切断を行なう工程と、
を備えることを特徴とするスパークプラグの製造方法。
【0011】
適用例1に記載のスパークプラグの製造方法によれば、スパークプラグ形成部材を保持治具に固定した状態を維持しつつ、中心電極の先端部の位置を測定する工程と、接地電極形成部材の他端部を切断する工程と、を行なっている。そして、位置を測定する測定装置あるいは切断装置と、保持治具との間を位置合わせした上で、各工程を実行している。そのため、測定装置で測定した結果に基づいて切断工程を行なう際に、接地電極形成部材の切断の動作を、精度良く所望の位置で行なうことができる。これにより、スパークプラグにおける発火部形成の精度を確保することができる。
【0012】
[適用例2]
適用例1記載のスパークプラグの製造方法であって、前記(a)工程において、複数の前記スパークプラグ形成部材を用意すると共に、複数の前記保持治具を用いて、前記複数のスパークプラグ形成部材の各々について前記(b)工程および前記(c)工程を順次行ない、前記(c−2)工程は、各々の前記保持治具に固定された前記スパークプラグ形成部材毎に、前記(b−2)工程で行なわれた前記位置の測定結果に基づいて、前記切断箇所を決定することを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例2に記載のスパークプラグの製造方法によれば、スパークプラグ形成部材毎に、当該スパークプラグ形成部材についての位置測定結果に基づいて切断箇所を決定するため、接地電極を切断する動作の精度を高めることができる。
【0013】
[適用例3]
適用例2記載のスパークプラグの製造方法であって、前記(b)工程は、さらに、(b−3)前記位置の測定により得られた位置情報を、前記保持治具と関連づけて記憶する工程を備え、前記(c)工程は、さらに、(c−3)前記切断に先立って前記保持治具を識別する工程を備え、前記(c−2)工程は、前記(c−3)工程で識別された前記保持治具に関連づけて前記(b−3)工程で記憶した前記位置情報に基づいて、前記切断箇所を決定することを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例3に記載のスパークプラグの製造方法によれば、位置情報を保持治具と関連づけて記憶すると共に、識別した保持治具に関連づけて記憶した位置情報に基づいて切断箇所を決定するため、接地電極を切断する動作の精度をさらに高めることができる。
【0014】
[適用例4]
適用例1記載のスパークプラグの製造方法であって、前記(c−2)工程は、前記接地電極形成部材の切断箇所を決定する際に、前記(b−1)工程で前記測定装置に対して前記保持治具が位置合わせされた時の前記測定装置と前記保持治具との位置関係と、前記(c−1)工程で前記切断装置に対して前記保持治具が位置合わせされた時の前記切断装置と前記保持治具との位置関係と、の間のずれを表わす装置間位置ずれに基づいて、前記切断箇所の補正を行なうことを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例4に記載のスパークプラグの製造方法によれば、装置間位置ずれに基づいて切断箇所の補正を行なうことにより、接地電極形成部材の切断の動作の精度を、より高めることができる。
【0015】
[適用例5]
適用例1または4記載のスパークプラグの製造方法であって、さらに、(d)少なくとも前記(b)工程の後に、前記接地電極形成部材の他端部に、電極チップを溶接する工程を備え、前記(d)工程は、(d−1)前記スパークプラグ形成部材が固定された状態を維持する前記保持治具を、前記電極チップの溶接を行なうための溶接装置に対して位置合わせする工程と、(d−2)前記溶接装置を用いて、前記溶接装置に対して位置合わせされた前記保持治具に固定されている前記スパークプラグ形成部材について、前記(b−2)工程の結果に基づいて決定される溶接箇所において電極チップの溶接を行なう工程と、を備えることを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例5に記載のスパークプラグの製造方法によれば、測定装置で測定した結果に基づいて溶接工程を行なう際に、電極チップの溶接の動作を精度良く所望の位置で行ない、発火部形成の精度を高めることができる。
【0016】
[適用例6]
適用例5記載のスパークプラグの製造方法であって、前記(a)工程において、複数の前記スパークプラグ形成部材を用意すると共に、複数の前記保持治具を用いて、前記複数のスパークプラグ形成部材の各々について前記(b)工程、前記(c)工程、および前記(d)工程を所定の順序で行ない、前記(d−2)工程は、各々の前記保持治具に固定された前記スパークプラグ形成部材毎に、前記(b−2)工程で行なわれた前記位置の測定結果に基づいて、前記溶接箇所を決定することを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例6記載のスパークプラグの製造方法によれば、スパークプラグ形成部材毎に、当該スパークプラグ形成部材についての位置測定結果に基づいて溶接箇所を決定するため、電極チップを溶接する動作の精度を高めることができる。
【0017】
[適用例7]
適用例6記載のスパークプラグの製造方法であって、前記(b)工程は、さらに、(b−3)前記位置の測定により得られた位置情報を、前記保持治具と関連づけて記憶する工程を備え、前記(d)工程は、さらに、(d−3)前記電極チップの溶接に先立って前記保持治具を識別する工程を備え、前記(d−2)工程は、前記(d−3)工程で識別された前記保持治具に関連づけて前記(b−3)工程で記憶した前記位置情報に基づいて、前記溶接箇所を決定することを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例7記載のスパークプラグの製造方法によれば、位置情報を保持治具と関連づけて記憶すると共に、識別した保持治具に関連づけて記憶した位置情報に基づいて溶接箇所を決定するため、電極チップを溶接する動作の精度をさらに高めることができる。
【0018】
[適用例8]
適用例5記載のスパークプラグの製造方法であって、前記(d−2)工程は、前記電極チップの溶接箇所を決定する際に、前記(b−1)工程で前記測定装置に対して前記保持治具が位置合わせされた時の前記測定装置と前記保持治具との位置関係と、前記(d−1)工程で前記溶接装置に対して前記保持治具が位置合わせされた時の前記溶接装置と前記保持治具との位置関係と、の間のずれを表わす装置間位置ずれに基づいて、前記溶接箇所の補正を行なうことを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例8記載のスパークプラグの製造方法によれば、装置間位置ずれに基づいて溶接箇所の補正を行なうことにより、電極チップの溶接の動作の精度を、より高めることができる。
【0019】
[適用例9]
(a)中心電極と、前記中心電極の外周に配置された絶縁体と、前記絶縁体の外周に配置された主体金具と、一端部が前記主体金具に接合され、他端部が前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、を備えるスパークプラグを製造するために、前記中心電極と前記絶縁体と前記主体金具とを備えると共に、前記接地電極を形成するための接地電極形成部材の一端部が前記主体金具に接合されたスパークプラグ形成部材を用意する工程と、
(b)前記スパークプラグ形成部材における前記中心電極の先端部の位置を測定する工程と、
(d)前記主体金具に接合された前記接地電極形成部材の他端部に、電極チップを溶接する工程と、を備えるスパークプラグの製造方法において、
前記(b)工程は、
(b−1)前記スパークプラグ形成部材を、該スパークプラグ形成部材を保持するための保持治具に固定すると共に、前記位置を測定するための測定装置に対して前記保持治具を位置合わせする工程と、
(b−2)前記測定装置を用いて、前記測定装置に対して位置合わせされた前記保持治具に固定されている前記スパークプラグ形成部材について、前記位置測定を行なう工程と、
を備え、
前記(d)工程は、
(d−1)前記(b)工程の後に、前記スパークプラグ形成部材が固定された状態を維持する前記保持治具を、前記電極チップの溶接を行なうための溶接装置に対して位置合わせする工程と、
(d−2)前記溶接装置を用いて、前記溶接装置に対して位置合わせされた前記保持治具に固定されている前記スパークプラグ形成部材について、前記(b−2)工程の結果に基づいて決定される溶接箇所において電極チップの溶接を行なう工程と、
を備えることを特徴とするスパークプラグの製造方法。
【0020】
適用例9に記載のスパークプラグの製造方法によれば、スパークプラグ形成部材を保持治具に固定した状態を維持しつつ、中心電極の先端部の位置を測定する工程と、電極チップを溶接する工程と、を行なっている。そして、位置を測定する測定装置あるいは溶接装置と、保持治具との間を位置合わせした上で、各工程を実行している。そのため、測定装置で測定した結果に基づいて溶接工程を行なう際に、電極チップの溶接の動作を、精度良く所望の位置で行なうことができる。これにより、スパークプラグにおける発火部形成の精度を確保することができる。
【0021】
[適用例10]
適用例9記載のスパークプラグの製造方法であって、前記(a)工程において、複数の前記スパークプラグ形成部材を用意すると共に、複数の前記保持治具を用いて、前記複数のスパークプラグ形成部材の各々について前記(b)工程および前記(d)工程を順次行ない、前記(d−2)工程は、各々の前記保持治具に固定された前記スパークプラグ形成部材毎に、前記(b−2)工程で行なわれた前記位置の測定結果に基づいて、前記溶接箇所を決定することを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例10に記載のスパークプラグの製造方法によれば、スパークプラグ形成部材毎に、当該スパークプラグ形成部材についての位置測定結果に基づいて溶接箇所を決定するため、電極チップを溶接する動作の精度を高めることができる。
【0022】
[適用例11]
適用例10記載のスパークプラグの製造方法であって、前記(b)工程は、さらに、(b−3)前記位置の測定により得られた位置情報を、前記保持治具と関連づけて記憶する工程を備え、前記(d)工程は、さらに、(d−3)前記電極チップの溶接に先立って前記保持治具を識別する工程を備え、前記(d−2)工程は、前記(d−3)工程で識別された前記保持治具に関連づけて前記(b−3)工程で記憶した前記位置情報に基づいて、前記溶接箇所を決定することを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例11に記載のスパークプラグの製造方法によれば、位置情報を保持治具と関連づけて記憶すると共に、識別した保持治具に関連づけて記憶した位置情報に基づいて溶接箇所を決定するため、電極チップを溶接する動作の精度をさらに高めることができる。
【0023】
[適用例12]
適用例9記載のスパークプラグの製造方法であって、前記(d−2)工程は、前記電極チップの溶接箇所を決定する際に、前記(b−1)工程で前記測定装置に対して前記保持治具が位置合わせされた時の前記測定装置と前記保持治具との位置関係と、前記(d−1)工程で前記溶接装置に対して前記保持治具が位置合わせされた時の前記溶接装置と前記保持治具との位置関係と、の間のずれを表わす装置間位置ずれに基づいて、前記溶接箇所の補正を行なうことを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例12に記載のスパークプラグの製造方法によれば、装置間位置ずれに基づいて切断箇所の補正を行なうことにより、電極チップの溶接の動作の精度を、より高めることができる。
【0024】
[適用例13]
適用例9または12記載のスパークプラグの製造方法であって、さらに、(c)少なくとも前記(b)工程の後に、前記接地電極形成部材の他端部側の切断を行なう工程を備え、前記(c)工程は、(c−1)前記スパークプラグ形成部材が固定された状態を維持する前記保持治具を、前記接地電極形成部材の切断を行なうための切断装置に対して位置合わせする工程と、(c−2)前記切断装置を用いて、前記切断装置に対して位置合わせされた前記保持治具に固定されている前記スパークプラグ形成部材について、前記(b−2)工程の結果に基づいて決定される切断箇所において接地電極形成部材の切断を行なう工程と、を備えることを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例13に記載のスパークプラグの製造方法によれば、測定装置で測定した結果に基づいて切断工程を行なう際に、接地電極の切断の動作を精度良く所望の位置で行ない、発火部形成の精度を高めることができる。
【0025】
[適用例14]
適用例13記載のスパークプラグの製造方法であって、前記(a)工程において、複数の前記スパークプラグ形成部材を用意すると共に、複数の前記保持治具を用いて、前記複数のスパークプラグ形成部材の各々について前記(b)工程、前記(c)工程、および前記(d)工程を所定の順序で行ない、前記(c−2)工程は、各々の前記保持治具に固定された前記スパークプラグ形成部材毎に、前記(b−2)工程で行なわれた前記位置の測定結果に基づいて、前記切断箇所を決定することを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例14に記載のスパークプラグの製造方法によれば、スパークプラグ形成部材毎に、当該スパークプラグ形成部材についての位置測定結果に基づいて切断箇所を決定するため、接地電極を切断する動作の精度を高めることができる。
【0026】
[適用例15]
適用例14記載のスパークプラグの製造方法であって、前記(b)工程は、さらに、(b−3)前記位置の測定により得られた位置情報を、前記保持治具と関連づけて記憶する工程を備え、前記(c)工程は、さらに、(c−3)前記切断に先立って前記保持治具を識別する工程を備え、前記(c−2)工程は、前記(c−3)工程で識別された前記保持治具に関連づけて前記(b−3)工程で記憶した前記位置情報に基づいて、前記切断箇所を決定することを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例15に記載のスパークプラグの製造方法によれば、位置情報を保持治具と関連づけて記憶すると共に、識別した保持治具に関連づけて記憶した位置情報に基づいて切断箇所を決定するため、接地電極を切断する動作の精度をさらに高めることができる。
【0027】
[適用例16]
適用例13記載のスパークプラグの製造方法であって、前記(c−2)工程は、前記接地電極形成部材の切断箇所を決定する際に、前記(b−1)工程で前記測定装置に対して前記保持治具が位置合わせされた時の前記測定装置と前記保持治具との位置関係と、前記(c−1)工程で前記切断装置に対して前記保持治具が位置合わせされた時の前記切断装置と前記保持治具との位置関係と、の間のずれを表わす装置間位置ずれに基づいて、前記切断箇所の補正を行なうことを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例16に記載のスパークプラグの製造方法によれば、装置間位置ずれに基づいて切断箇所の補正を行なうことにより、接地電極の切断の動作の精度を、より高めることができる。
【0028】
[適用例17]
適用例5ないし8、および適用例13ないし16のいずれか記載のスパークプラグの製造方法であって、前記接地電極形成部材の他端部に電極チップを溶接する工程を行なった後に、前記接地電極形成部材の他端部側を切断する工程を行なうことを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例17に記載のスパークプラグの製造方法によれば、溶接工程よりも切断工程を先に行なう場合に比べて、接地電極と電極チップとの間における接合部の溶融状態を均一化することができ、接合部近傍の耐久性を向上させることができる。
【0029】
[適用例18]
適用例5ないし17いずれか記載のスパークプラグの製造方法であって、前記溶接装置は、複数種類の電極チップを設けることが可能な装置であり、設けるべき前記電極チップの種類に対応した互いに異なる条件で前記電極チップの溶接を行なう複数の溶接装置部を備えており、前記スパークプラグ形成部材が固定された前記保持治具を前記溶接装置に対して位置合わせする工程では、設けるべき電極チップの種類に応じた前記溶接装置部に対して、前記保持治具を位置合わせすることを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例18に記載のスパークプラグの製造方法によれば、電極チップの構成が異なる複数種類のスパークプラグを製造する際に、中心電極の先端部の位置を測定する装置を共通して用いることができる。したがって、複数種類のスパークプラグを製造するために必要な装置全体の構成を、簡素化することができる。
【0030】
[適用例19]
適用例1ないし8、および適用例13ないし17のいずれか記載のスパークプラグの製造方法であって、さらに、(e)前記接地電極形成部材の他端部側の切断を行なう工程の後に、前記接地電極形成部材を曲げ加工するギャップ形成工程を備え、前記(e)工程は、(e−1)前記スパークプラグ形成部材が固定された状態を維持する前記保持治具を、前記接地電極形成部材の曲げ加工を行なうためのギャップ形成装置に対して位置合わせする工程と、(e−2)前記ギャップ形成装置を用いて、前記ギャップ形成装置に対して位置合わせされた前記保持治具に固定されている前記スパークプラグ形成部材について、前記位置測定の結果に基づいて決定されるギャップ形成条件にて、前記曲げ加工を行なう工程と、を備えることを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例19に記載のスパークプラグの製造方法によれば、測定装置で測定した結果に基づいて設定されるギャップ形成条件にて曲げ加工を行なうため、接地電極の切断の動作に加えて、さらにギャップ形成の動作を精度良く行なうことができる。
【0031】
[適用例20]
適用例5ないし17いずれか記載のスパークプラグの製造方法であって、さらに、(e)前記接地電極形成部材の他端部に前記電極チップを溶接する工程の後に、前記接地電極形成部材を曲げ加工するギャップ形成工程を備え、前記(e)工程は、(e−1)前記スパークプラグ形成部材が固定された状態を維持する前記保持治具を、前記接地電極形成部材の曲げ加工を行なうためのギャップ形成装置に対して位置合わせする工程と、(e−2)前記ギャップ形成装置を用いて、前記ギャップ形成装置に対して位置合わせされた前記保持治具に固定されている前記スパークプラグ形成部材について、前記位置測定の結果に基づいて決定されるギャップ形成条件にて、前記曲げ加工を行なう工程と、を備えることを特徴とするスパークプラグの製造方法。適用例20に記載のスパークプラグの製造方法によれば、測定装置で測定した結果に基づいて設定されるギャップ形成条件にて曲げ加工を行なうため、電極チップの溶接の動作に加えて、さらにギャップ形成の動作を精度良く行なうことができる。
【0032】
[適用例21]
適用例19または20記載のスパークプラグの製造方法であって、前記ギャップ形成装置は、前記接地電極形成部材を曲げ加工する際の支点となる支持部と、前記支持部を支点として前記接地電極形成部材に対して曲げ加工のための押圧力を加える押圧部と、を備え、前記ギャップ形成条件は、前記支持部の位置を含み、前記(e−2)工程は、前記押圧部を用いて前記接地電極形成部材を押圧する工程に先立って、前記位置測定の結果に基づいて決定される位置へと、前記支持部を移動させる工程を備えるスパークプラグの製造方法。適用例21に記載のスパークプラグの製造方法によれば、支持部を配置する精度を向上させることができるため、接地電極の先端部と中心電極の先端部との間の距離を、精度良く所望の値にして発火部を形成することができる。
【0033】
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、本発明のスパークプラグの製造方法により製造されたスパークプラグや、スパークプラグの製造装置などの形態で実現することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
A.スパークプラグの構造:
図1は、本発明の第1の実施形態としてのスパークプラグ100の部分断面図である。スパークプラグ100は、
図1に示すように、軸線Axに沿って伸長する細長形状を有している。
図1において、一点破線で示す軸線Axの右側は、外観正面図を示し、軸線Axの左側は、スパークプラグ100の中心軸を通る断面でスパークプラグ100を切断した断面図を示している。以下の説明では、軸線Axに沿って
図1の下方側を先端側と呼び、
図1の上方側を後端側と呼ぶ。また、以下の説明では、製造途中のスパークプラグについても、完成したスパークプラグ100の軸線Axに対応する仮想的な軸線を、軸線Axと呼ぶ。
【0036】
スパークプラグ100は、絶縁碍子10と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40と、主体金具50とを備える。絶縁碍子10の一端から突出する棒状の中心電極20は、絶縁碍子10の内部を通じて、絶縁碍子10の他端に設けられた端子金具40に電気的に接続されている。中心電極20の外周は、絶縁碍子10によって保持され、絶縁碍子10の外周は、端子金具40から離れた位置で主体金具50によって保持されている。主体金具50に電気的に接続された接地電極30は、火花を発生させる隙間である火花ギャップを中心電極20の先端との間に形成する。スパークプラグ100は、内燃機関のエンジンヘッド200に設けられた取付ネジ孔201に主体金具50を介して取り付けられる。端子金具40に2万〜3万ボルトの高電圧が印加されると、中心電極20と接地電極30との間に形成された火花ギャップに火花が発生する。
【0037】
絶縁碍子10は、アルミナを始めとするセラミックス材料を焼成して形成された絶縁体である。絶縁碍子10は、中心電極20および端子金具40を収容する軸孔12が中心に形成された筒状の部材である。絶縁碍子10の軸方向中央には外径を大きくした中央胴部19が形成されている。中央胴部19よりも端子金具40側には、端子金具40と主体金具50との間を絶縁する後端側胴部18が形成されている。中央胴部19よりも中心電極20側には、後端側胴部18よりも外径が小さい先端側胴部17が形成され、先端側胴部17の更に先には、先端側胴部17よりも小さい外径であって中心電極20側へ向かうほど外径が小さくなる脚長部13が形成されている。
【0038】
主体金具50は、絶縁碍子10の後端側胴部18の一部から脚長部13に亘る部位を包囲して保持する円筒状の金具であり、本実施形態では、低炭素鋼から成る。主体金具50は、工具係合部51と、取付ネジ部52と、シール部54とを備える。主体金具50の工具係合部51は、スパークプラグ100をエンジンヘッド200に取り付ける工具(図示せず)が嵌合する。主体金具50の取付ネジ部52は、エンジンヘッド200の取付ネジ孔201に螺合するネジ山を有する。主体金具50のシール部54は、取付ネジ部52の根元に鍔状に形成され、シール部54とエンジンヘッド200との間には、板体を折り曲げて形成した環状のガスケット5が嵌挿される。主体金具50の先端面57は、中央部に開口を有する円形状に形成されており、その中央部では、絶縁碍子10の脚長部13から中心電極20が突出する。
【0039】
主体金具50の工具係合部51より後端側には薄肉の加締部53が設けられている。また、シール部54と工具係合部51との間には、加締部53と同様に薄肉の圧縮変形部58が設けられている。工具係合部51から加締部53にかけての主体金具50の内周面と絶縁碍子10の後端側胴部18の外周面との間には、円環状のリング部材6,7が介在されており、さらに両リング部材6,7間にタルク(滑石)9の粉末が充填されている。スパークプラグ100の製造時には、加締部53を内側に折り曲げるようにして先端側に押圧することにより圧縮変形部58を圧縮変形させる加締加工を行なう。加締加工を行なうことで、リング部材6,7およびタルク9を介し、絶縁碍子10が主体金具50内で先端側に向け押圧される。この押圧により、タルク9が軸線Ax方向に圧縮されて主体金具50内の気密性が高められる。
【0040】
また、主体金具50の内周においては、取付ネジ部52の位置に形成された金具内段部56に、環状の板パッキン8を介し、絶縁碍子10の脚長部13の基端に位置する碍子段部15が押圧されている。この板パッキン8は、主体金具50と絶縁碍子10との間の気密性を保持する部材であり、燃焼ガスの流出が防止される。
【0041】
中心電極20は、有底筒状に形成された電極母材21の内部に、電極母材21よりも熱伝導性に優れる芯材25を埋設した棒状の部材である。本実施形態では、電極母材21は、ニッケルを主成分とするニッケル合金から成り、芯材25は、銅または銅を主成分とする合金から成る。中心電極20は、電極母材21の先端が絶縁碍子10の軸孔12から突出した状態で絶縁碍子10の軸孔12に挿入され、セラミック抵抗3およびシール体4を介して端子金具40に電気的に接続されている。
【0042】
接地電極30は、耐腐食性の高い金属から構成され、一例として、ニッケル合金が用いられる。この接地電極30の一端(基端)は、主体金具50の先端面57に溶接されている。接地電極30の他端(先端)側は、軸線Axと交差する方向に屈曲されており、接地電極30の先端部が、中心電極20の先端面と軸線Ax上で対向している。
【0043】
本実施形態では、接地電極30の先端部には電極チップ32が溶接されており、この電極チップ32が中心電極20の先端面と対向して、火花ギャップを形成する。電極チップ32は、高融点の貴金属を主成分として形成されている貴金属チップである。電極チップ32は、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)あるいはこれらの合金によって形成することができる。
【0044】
B.スパークプラグの製造工程:
図2は、本発明の実施形態におけるスパークプラグ100の製造工程の概要を示すフローチャートである。スパークプラグ100を製造する際には、まず、主体金具50、絶縁碍子10、中心電極20、接地電極30、の各々となる部材を準備する(ステップS100)。ここでは、接地電極30となる部材として、幅の狭い薄板状、すなわち、断面が略矩形の棒状部材を用意している。以下の説明では、接地電極30とするための上記した棒状部材を、接地電極形成部材31と呼ぶ。その後、主体金具50に接地電極形成部材31を接合し(ステップS110)、さらに、主体金具50に、中心電極20と絶縁碍子10とを挿入して組み付ける(ステップS120)。なお、ステップS120の組み付け工程としては、中心電極20を絶縁碍子10に組み付けたものを主体金具50に組み付ける方法と、絶縁碍子10を主体金具50に組み付けた後に、中心電極20を組み付ける方法とがあるが、これらのいずれを採用してもよい。その後、加締工具(図示省略)を用いて、主体金具50に対して既述した加締加工を実施して、絶縁碍子10を主体金具50に固定する(ステップS130)。そして、接地電極形成部材31に曲げ加工を含む加工を施して、エンジン駆動の際に火花放電を行なわせるための発火部を形成する(ステップS140)。この発火部の形成工程については、後に詳述する。以下の説明では、発火部の形成工程に供される部材、すなわち、中心電極20と絶縁碍子10と主体金具50とを備えると共に、接地電極形成部材31の一端部が主体金具50に接合された部材を、スパークプラグ形成部材110と呼ぶ。その後、主体金具50にガスケット5を装着することにより(ステップS150)、スパークプラグ100を完成する。なお、
図2に示した製造方法は単なる一例であり、これとは異なる種々の方法でスパークプラグを製造可能である。例えば、主体金具50に接地電極形成部材31を溶接するステップS110の工程を、ステップS130の加締加工の後に行なっても良い。
【0045】
図3は、
図2のステップS140である発火部の形成工程の概要を示すフローチャートである。発火部を形成する際には、まず、スパークプラグ形成部材110が備える中心電極20の、先端部の位置を測定し、上記先端部の位置に係る位置情報を取得する(ステップS200)。そして、ステップS200で取得した位置情報に基づいて、接地電極形成部材31の先端部に設定される溶接箇所において、電極チップ32の溶接を行なう(ステップS210)。また、ステップS200で取得した位置情報に基づいて、接地電極形成部材31の先端部に設定される切断箇所において、接地電極形成部材31の切断を行なう(ステップS220)。また、切断した接地電極形成部材31に対して所定の箇所で曲げ加工を行なって、屈曲された接地電極30と成し、中心電極20の先端面との間で火花ギャップを形成させ(ステップS230)、発火部を完成させる。なお、以下の説明では、ステップS200の位置測定工程よりも後の、発火部を形成するための具体的な加工の工程(ステップS210〜S230)を総称して加工工程とも呼び、各々の加工工程を実行する装置を総称して加工装置とも呼ぶ。
【0046】
図4は、発火部の形状を側面から見た様子を拡大して表わす説明図である。発火部を形成する際には、
図4に示すように、中心電極20の先端部の点Aを基準とする。点Aとは、中心電極20の先端面の外周上の1点であって、屈曲された接地電極30の先端に最も近い点である。
図4に示すように、発火部の形状を規定する数値としては、中心電極20の先端と、接地電極30に取り付けた電極チップ32の先端との間の距離(以下、ギャップ寸法ともいう)αや、点Aと、接地電極30の先端との間の、軸線Ax方向に垂直な方向の距離(以下、被り寸法ともいう)βがある。
【0047】
スパークプラグにおいて、ギャップ寸法αが小さすぎると、着火性が悪化する可能性がある。これに対し、ギャップ寸法αが大きすぎると、スパークプラグを着火させるための要求電圧が高くなり、このように放電電圧を高めると、絶縁碍子10の耐久性が低下する可能性がある。また、被り寸法βが小さすぎると、接地電極30において、電極チップ32よりも先端側の体積が小さくなるため、接地電極30の先端部の温度上昇の程度が大きくなり、接地電極30と電極チップ32との界面近傍にまで接地電極30の酸化が進行して、電極チップ32の耐久性が低下する可能性がある。これに対して、被り寸法βが大きすぎると、接地電極30の先端部の体積が大きくなるため、接地電極30による熱の吸収量が増加して、失火の可能性が高まる場合がある。以上のように、スパークプラグの性能を確保するためには、ギャップ寸法αおよび被り寸法βで規定される発火部の形状を、精度良く形成することが極めて重要といえる。
【0048】
C.発火部形成システム60の構成:
図5は、発火部形成システム60の概略構成を模式的に表わす説明図である。
図5では、発火部形成システム60を構成する各構成要素の配置の概略を、上面視にて示している。発火部形成システム60は、発火部の形成工程のうち、ステップS200〜S220を実行するための装置である。発火部形成システム60は、ターンテーブル61と、ターンテーブル61に固定された複数の保持治具70と、ターンテーブル61近傍の所定の位置に配置された位置測定装置63および複数の加工装置と、位置測定装置63および複数の加工装置との間で信号をやり取り可能に接続された制御部66と、を備える。本実施態様では、上記加工装置として、溶接装置64と切断装置65とを備えている。
【0049】
ターンテーブル61は、位置測定装置63から溶接装置64および切断装置65へと、スパークプラグ形成部材110を順次搬送するための搬送装置である。ターンテーブル61は、
図5に示された上面視円形の円盤部67と、円盤部67の中央部に取り付けられた図示しない回転軸と、回転軸を一定の方向に回転させるための図示しない回転機構とを備えている。回転機構は、例えば、油圧シリンダやモータを利用することができる。
図5では、ターンテーブル61の回転方向を矢印にて示している。
【0050】
円盤部67の上面(
図5にて表われている面)では、外周近傍において、等間隔で8個の保持治具70が固定されている。保持治具70は、位置測定装置63から溶接装置64および切断装置65へと、ターンテーブル61によってスパークプラグ形成部材110を順次搬送する際に、円盤部67上の所定の位置にスパークプラグ形成部材110を固定するための部材である。本実施形態では、各保持治具70は、いずれも同じ形状に形成されている。円盤部67への保持治具70の固定方法は、例えば、ネジ止めとすることができ、発火部形成の工程を行なう際に、円盤部67と保持治具70の間の位置関係が実質的に変化しなければよい。円盤部67上に保持治具70を固定する際の位置的な精度を確保するには、例えば、各々の保持治具70に、円盤部67に係合するための凸形状の係合部を設けると共に、円盤部67上面の所定の位置に、保持治具70を係合させるための凹形状の係合受け部を設ければ良い。そして、上記係合部と係合受け部とを係合させればよい。各々の保持治具70では、スパークプラグ形成部材110は、先端部がターンテーブル61の円盤部67の外周側を向き、後端部が円盤部67の中心を向くように配置される。保持治具70の詳しい構成については、後に説明する。
【0051】
位置測定装置63は、ターンテーブル61上の保持治具70に固定された個々のスパークプラグ形成部材110について、中心電極20の先端部の位置を測定し、位置情報を取得する工程(ステップS200)を実行する装置である。溶接装置64は、上記位置情報に基づいて、接地電極形成部材31の先端部に設定される溶接箇所において、電極チップ32の溶接を行なう工程(ステップS210)を実行する装置である。切断装置65は、位置情報に基づいて、接地電極形成部材31の先端部に設定される切断箇所において、接地電極形成部材31の切断を行なう工程(ステップS220)を実行する装置である。これらの各装置において実行される動作については、後に詳述する。
【0052】
制御部66は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成され、制御プログラムに従って所定の演算などを実行するCPUと、制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROMと、各種データが一時的に読み書きされるRAMと、各種信号を入出力する入出力ポート等を備える。制御部66は、位置測定装置63が得た位置情報を取得して記憶すると共に、取得した位置情報を、溶接装置64および切断装置65へと出力する。また、発火部形成システム60において、位置情報を用いて所定の処理を実行して、溶接装置64および切断装置65における動作に係る情報を導出する際には、そのような処理の少なくとも一部を、制御部66において行なうことができる。制御部66は、位置測定装置63、溶接装置64、および切断装置65とは別体で設けても良く、いずれかの装置と一体で設けても良い。
【0053】
ターンテーブル61の円盤部67は、45°回転する毎に停止する。すなわち、円盤部67に固定された各保持治具70は、円盤部67の回転と共に、8個のポジションを取り得る。
図5では、これらのポジションを、ポジションP(I)からポジションP(VIII)と表わしている。ポジションP(I)は、保持治具70に対して、発火部の形成工程に供すべきスパークプラグ形成部材110を供給するためのポジションである。ポジションP(II)は、供給されたスパークプラグ形成部材110を、保持治具70に固定するためのポジションである。ポジションP(III)は、位置測定装置63に近接しており、ステップS200を実行するためのポジションである。ポジションP(IV)は、溶接装置64に近接しており、ステップS210を実行するためのポジションである。ポジションP(V)は、切断装置65に近接しており、ステップS220を実行するためのポジションである。ポジションP(VI)は、保持治具70に対するスパークプラグ形成部材110の固定を解除するためのポジションである。ポジションP(VII)は、保持治具70上からスパークプラグ形成部材110を回収するためのポジションである。ポジションP(I)、P(II)、P(VI)、P(VII)における動作は、動作をプログラムされた機械を用いて実行しても良いし、作業員が実行することとしても良い。
【0054】
ターンテーブル61の円盤部67は、各ポジションにおいて、精度良く停止することができ、位置測定装置63、溶接装置64、切断装置65の各々に対して、各保持治具70に固定されたスパークプラグ形成部材110を、精度良く位置合わせすることができる。円盤部67を各ポジションに精度良く停止させるための構成としては、以下のような機構を採用可能である。例えば、円盤部67に設けた基準位置の相対的な回転角度を検出する検出機構と、基準位置が特定のポジションに位置合わせされた時の回転角度となるようにターンテーブルを回転させる駆動機構と、を設けることとすれば良い。あるいは、各装置には、円盤部67を係止させるための係合部(凸部)を設け、円盤部67には、少なくともいずれかの保持治具70の固定箇所に対応して、上記係合部と係合可能な係合受け部(凹部)を設けることとしても良い。このような構成とすれば、円盤部67が回転する際に係合受け部が係合部に係合して、各装置に対して所定の位置関係となるように、各保持治具70を停止可能となる。円盤部67に固定された各保持治具70と、各装置との間の位置合わせを、十分な精度で行なうことができればよい。
【0055】
D.スパークプラグ形成部材110の固定:
図6は、保持治具70の概略構成を模式的に表わす斜視図である。保持治具70は、固定部71とストッパ72と台座部73とを備えている。固定部71は、スパークプラグ形成部材110を、固定して保持するための部材である。ストッパ72は、スパークプラグ形成部材110を保持治具70に固定する際に、スパークプラグ形成部材110の軸線Ax方向の位置を定めるための部材である。台座部73は、板状部材であって、下面において円盤部67に固定され、上面には、上記固定部71およびストッパ72が取り付けられている。
【0056】
図6に示すように、固定部71は、第1固定部71aおよび第2固定部71bと、蝶番71cとを備えている。第1固定部71aは、台座部73に固定されている。第2固定部71bは、蝶番71cを支点として回動自在となるように、蝶番71cを介して第1固定部71aに取り付けられている。以下、第1固定部71aと第2固定部71bの対向する面同士が接するように第2固定部71bを動かす動作を「固定部71を閉じる」といい、第1固定部71aから第2固定部71bが離間するように第2固定部71bを動かす動作を「固定部71を開く」という。第1固定部71aと第2固定部71bの各々には、対向して形成された凹部が設けられており、これらの凹部は、固定部71を閉じた時に、スパークプラグ形成部材110の取付ネジ部52を嵌め込むための空間を形成する。固定部71は、上記凹部によって、スパークプラグ形成部材110を挟んで押さえ付けて固定する。固定部71が閉じた状態で第2固定部71bを固定するためには、図示しない留め付け治具を用いる。
【0057】
図7は、保持治具70上にスパークプラグ形成部材110を配置した様子を表わす平面図である。なお、
図7では、第2固定部71bおよび蝶番71cの記載は省略している。スパークプラグ形成部材110を保持治具70に固定する際には、固定部71が開いた状態で、第1固定部71a上にスパークプラグ形成部材110を載置するが、このとき、スパークプラグ形成部材110の主体金具50の先端面57が、ストッパ72の後端側の側面に当接するように載置する。これにより、保持治具70におけるスパークプラグ形成部材110の軸線Ax方向の位置を、先端面57を基準として規定することができる。また、このとき、スパークプラグ形成部材110は、第1固定部71aの既述した凹部に嵌るように配置される。上記した保持治具70上にスパークプラグ形成部材110を載置する動作は、既述したポジション(I)で行なわれる。
【0058】
さらに、このときスパークプラグ形成部材110は、接地電極形成部材31が台座部73に最も近接する向き、すなわち、接地電極形成部材31における電極チップ32を溶接すべき溶接面が上面となるように、台座部73上に載置される。スパークプラグ形成部材110を載置する際には、例えば、スパークプラグ形成部材110の接地電極形成部材31を上方から緩やかに押さえ付ければよく、これにより、上記した向きになるようにスパークプラグ形成部材110を回転させることができる。あるいは、スパークプラグ形成部材110の載置の際に、接地電極形成部材31について画像解析を行ない、上記した向きとなるように、解析結果に基づいてスパークプラグ形成部材110を回転させても良い。
【0059】
その後、固定部71を閉じ、図示しない留め付け治具を用いて、固定部71を閉じた状態で留め付ける。これにより、スパークプラグ形成部材110が保持治具70に固定される。上記した保持治具70上のスパークプラグ形成部材110の向きを調整する動作および上記した固定の動作は、既述したポジションP(II)で行なわれる。
【0060】
E.位置測定工程:
図8は、ステップS200の位置測定工程で、中心電極20の先端部の位置測定を行なう際の位置測定装置63の動作を表わす模式図である。位置測定装置63は、先端にカメラ86が設けられたアーム85を有している。カメラ86は、例えばCCDカメラによって構成される撮像装置である。アーム85は、カメラ86が取り付けられた先端部が、上面視で円盤部67の外周近傍部と重なる位置にまで延出している。このアーム85は、鉛直方向に往復移動可能であり、保持治具70がポジションP(III)に固定されると、鉛直方向下方に移動する。
図8では、カメラ86が設けられたアーム85の先端部が鉛直方向下方に移動する様子を、矢印にて表わしている。アーム85が鉛直方向下方に移動して、円盤部67の表面近傍の所定の位置で停止することにより、カメラ86は、所定の撮像位置に配置され、ポジションP(III)で停止しているスパークプラグ形成部材110の先端近傍の特定領域を撮像可能になる。具体的には、カメラ86は、中心電極20の先端部および接地電極形成部材31を含む領域を、側面から撮像可能になる。カメラ86において位置測定のための撮像が終了すると、アーム85は鉛直方向上方に移動する。すなわち、アーム85に取り付けたカメラ86は、スパークプラグ形成部材110のその後の回転移動に干渉しない位置に移動する。
【0061】
図9は、上記撮像位置に停止されたカメラ86が撮像する画像を表わす説明図である。位置測定装置63は、撮像した上記画像を解析して位置情報を導出する画像処理部を備えている。位置測定装置63では、カメラ86が撮像する撮像領域の範囲内において、基準点Oが予め設定されている。そして、画像処理部は、中心電極20の先端の既述した点Aの位置を、上記基準点Oを基準として測定する。
【0062】
中心電極20の先端の点Aの位置は、位置測定装置63に対して、3次元的な座標として特定可能である。
図5では、ポジションP(III)における3次元的な位置を特定するための座標軸であるX軸、Y軸、Z軸を示している。X軸は、円盤部67上面および軸線Axに平行であり、Y軸は、円盤部67上面に平行であって、X軸に対して垂直である。Z軸は、円盤部67上面に対して垂直である。カメラ86が撮像した画像を解析することにより、点Aの位置として、予め設定した基準点Oを原点として、
図9に示したX−Z平面における2次元的な座標を求めることができる。本実施形態では、ポジションP(III)に保持治具70が固定されたときには、保持治具70に固定されたスパークプラグ形成部材110のY軸方向の位置を、一定の位置に固定することができる。そのため、撮像された画像を基に画像処理することにより、位置測定装置63に対する点Aの3次元的な座標を特定することができる。本実施態様では、基準点Oを原点とする点AのX−Z平面における座標(x、z)を、位置情報として導出している。
【0063】
また、本実施態様では、ターンテーブル61に取り付けた8つの保持治具70の各々の所定の箇所に、1〜8の番号PNを付している。そして、カメラ86が撮像する画像内に番号PNが収まるように、撮像範囲および番号PNの位置が設定されている。
図9では、スパークプラグ形成部材110の先端部と共に番号PNが撮像される様子を表わしている。画像処理部は、カメラ86が撮像した画像を解析することにより、位置情報を導出すると共に、位置測定の対象となっているスパークプラグ形成部材110が固定されている保持治具70を識別する。位置測定装置63は、位置情報と共に、この位置情報に対応付けて、いずれの保持治具70であるかを示す治具識別情報を、制御部66に出力する。そして制御部66では、取得した位置情報と共に、位置情報に対応付けられた治具識別情報を記憶する。なお、番号PNを撮像するための撮像装置は、スパークプラグ形成部材110の先端部近傍を撮像するためのカメラ86とは別体で設けても良い。
【0064】
なお、保持治具70を識別するために、数字以外の治具識別マークを各々の保持治具70に付しても良い。位置測定装置63が読み取り可能であり、個々の保持治具70を識別できれば良い。あるいは、保持治具70には特別な治具識別マークを付することなく、個々の保持治具70を識別しても良い。例えば、位置測定装置63において、位置測定の動作を行なった回数をカウントして(動作を行なう毎にインクリメントし)、カウントした数を治具識別情報として用いればよい。この場合には、カウント数が8に達した時に、カウント数を0に戻す(リセットする)処理を行なえばよい。
【0065】
また、画像処理部は、位置測定装置63ではなく制御部66に設けることとしても良い。この場合には、位置測定装置63から制御部66に対して、撮像した画像データを位置情報として出力すればよい。
【0066】
F.溶接工程:
図10は、
図3のステップS210の溶接工程において、溶接装置64が、電極チップ32を溶接すべき溶接箇所Dを決定する動作の一例を表わす説明図である。溶接箇所Dは、中心電極20の先端面から接地電極形成部材31へと、軸線Ax方向に垂直な方向に延ばした直線と接地電極形成部材31との交点Eから、接地電極形成部材31の先端側へと、所定の距離Fだけ離間した点である。溶接箇所Dを決定する際には、まず、点Aから接地電極形成部材31に向かって、中心電極20の先端面から所定の角度θを成す仮想線ILを延ばす。角度θは、例えば45°とすることができる。そして、この仮想線ILと、接地電極形成部材31の表面との交点である点Bを求める。その後、点Bから接地電極形成部材31の先端側に向かって距離Cだけ離間した点を、溶接箇所Dとして設定する。ここで、距離Cは、製造すべきスパークプラグ100の種類(例えば、形成すべき接地電極30や電極チップ32の形状)に応じて、予め設定された値である。
【0067】
溶接装置64は、点Aの位置情報に基づいて、
図10に示すように溶接箇所Dを導出する演算処理を行なう溶接箇所導出処理部を備えている。この溶出箇所導出処理部は、ステップS210において、点Aの座標である位置情報と治具識別情報とを、互いに対応付けて制御部66から取得する。さらに、溶接装置64は、溶接箇所Dの設定の動作に先立って、位置測定装置63と同様にして、溶接の対象となるスパークプラグ形成部材110を固定している保持治具70を識別する。具体的には、溶接装置64は、台座部73に付した番号PNを識別するための、位置測定装置63と同様の撮像装置および画像処理装置を備えており、画像解析結果から、保持治具70を識別する。ただし、溶接装置64では、中心電極20の先端部の位置測定のための画像解析は行なわれない。そして、溶接箇所導出処理部において、識別した保持治具70を表わす治具識別情報に対応付けられた位置情報に基づいて、溶接箇所Dを導出する。
【0068】
このような溶接装置64では、位置測定装置63との間で、
図9に示す基準点O(点Aの位置を認識するための座標の原点)の共通化が行なわれている。具体的には、位置測定装置63において位置測定するために予め決められた原点(基準点O)と、溶接装置64において溶接箇所Dを決定するために予め決められた原点の、保持治具70に対する相対的な位置関係が、予め決められている。スパークプラグ形成部材110と保持治具70の間、保持治具70と円盤部67の間、所定のポジションで停止した円盤部67と各装置の間は、精度良く位置関係が固定されるため、上記した相対的な位置関係を、予め決めることができる。そのため、溶接装置64は、位置測定のための構成を有していなくても、位置測定装置63で取得した位置情報を用いることで、点Aの位置を精度良く認識可能となる。その結果、溶接箇所Dを精度良く決定し、所望の箇所に精度良く電極チップ32を溶接することができる。
【0069】
溶接装置64では、接地電極形成部材31上に設定された溶接箇所D上に電極チップ32を載置し、例えば、抵抗溶接やレーザ溶接、あるいはこれらの組合せによって、電極チップ32を溶接する。抵抗溶接は、接地電極形成部材31上の溶接箇所Dに電極チップ32を載置した後に、電極チップ32を溶接電極で押さえ、溶接電極と接地電極形成部材31との間に電流を流して、接触抵抗による発熱を利用して行なう。レーザ溶接を行なう場合には、接地電極形成部材31上の溶接箇所Dに電極チップ32を載置した後に、電極チップ32よりも径が細いピン(図示せず)で電極チップ32の端面を押さえながら、接地電極形成部材31と電極チップ32の界面に対して、レーザ照射を行なう。
【0070】
図10に示すように、溶接装置64では、
図9と同様のX−Z平面における座標として、溶接箇所Dを設定する。
図5では、ポジションP(III)と同様に、ポジションP(IV)においても、X軸、Y軸、Z軸を示している。ここで、本実施形態では、ポジションP(IV)において、溶接の対象となるスパークプラグ形成部材110が順次置き換わっても、Y軸方向およびZ軸方向についての接地電極形成部材31の位置はほぼ一定となる。溶接装置64は、電極チップ32を搬送して、保持治具70の鉛直方向上方から接地電極形成部材31上に電極チップ32を載置する図示しない搬送・載置部と、電極チップ32を接地電極形成部材31に溶接する図示しない溶接部とを備える。これらの搬送・載置部、および溶接部は、軸線Axに沿ってX軸方向に移動可能であり、これにより、決定された溶接箇所D上に電極チップ32を設けることができる。本実施形態では、X−Z平面上の座標として溶接箇所Dを決定すると、溶接箇所DのX座標を指令値として、上記搬送・載置部および溶接部を駆動する。なお、位置測定装置63で予め決められた原点と、溶接装置64で予め決められた原点の、保持治具70に対する相対的な位置関係を予め決めた場合であっても、保持治具70やターンテーブル60の成形の精度等に起因して、保持治具70毎に、ずれが生じる場合がある。本実施形態では、このようなずれが無視できるものとしているが、上記ずれを補正する構成については、後述する第2の実施形態において説明する。
【0071】
なお、溶接箇所導出処理部は、溶接装置64はではなく制御部66に設けることとしても良い。この場合には、溶接装置64は、制御部66から、互いに関連づけられた位置情報および治具識別情報に代えて、制御部66で設定された溶接箇所Dの位置を表わす情報を取得すればよい。
【0072】
G.切断工程:
ステップS220の切断工程は、既述したように、ポジションP(V)において切断装置65によって行なわれる。切断装置65は、
図10に基づいて説明した溶接箇所Dの設定方法と同様の方法により設定した切断箇所で、接地電極形成部材31を切断する。ただし、切断箇所は、既述した仮想線ILと接地電極形成部材31の交点である点Bから、接地電極形成部材31の先端側に向かって、距離Cよりも長い距離として予め定めた所定の距離だけ離間した点として設定される。点Bと切断箇所との間の距離は、製造すべきスパークプラグ100の種類に応じて定まるギャップ寸法αの大きさ等に基づいて予め設定されている。
【0073】
ここで、切断装置65は、制御部66から取得した位置情報に基づいて、上記した切断箇所を導出する演算処理を行なう切断箇所導出処理部を備えている。この切断箇所導出処理部は、ステップS220において、点Aの座標である位置情報と治具識別情報とを、互いに対応付けて制御部66から取得する。さらに、切断装置65は、切断箇所の設定の動作に先立って、溶接装置64と同様にして、溶接の対象となるスパークプラグ形成部材110を固定している保持治具70を識別する。そして、切断箇所導出処理部において、識別した保持治具70を表わす治具識別情報に対応付けられた位置情報に基づいて、切断箇所を導出する。
【0074】
このような切断装置65では、溶接装置64と同様にして、位置測定装置63との間で、基準点O(点Aの位置を認識するための座標の原点)の共通化が行なわれている。すなわち、位置測定装置63において位置測定するために予め決められた原点と、切断装置65において切断箇所を決定するために予め決められた原点の、保持治具70に対する相対的な位置関係が、予め決められている。そのため、切断装置65は、位置測定のための構成を有していなくても、位置測定装置63で取得した位置情報を用いることで、点Aの位置を精度良く認識可能となる。その結果、切断箇所を精度良く決定し、所望の箇所で精度良く接地電極形成部材31を切断することができる。
【0075】
切断装置65では、溶接箇所Dを決定する場合と同様に、X−Z平面における座標として、切断箇所を設定する。
図5では、ポジションP(V)において、X軸、Y軸、Z軸を示している。本実施形態では、ポジションP(V)において、ポジションP(IV)と同様に、切断の対象となるスパークプラグ形成部材110が順次置き換わっても、Y軸方向およびZ軸方向についての接地電極形成部材31の位置はほぼ一定となる。切断装置65は、接地電極形成部材31を切断するためのカッターを備える図示しない切断部を備える。この切断部は、軸線Axに沿ってX軸方向に移動可能であり、これにより、決定された切断箇所にて接地電極形成部材31を切断することができる。本実施形態では、X−Z平面上の座標として切断箇所を決定すると、切断箇所のX座標を指令値として、上記切断部を駆動する。
【0076】
なお、切断箇所導出処理部は、切断装置65ではなく制御部66に設けることとしても良い。この場合には、切断装置65は、制御部66から、互いに関連づけられた位置情報および治具識別情報に代えて、制御部66で設定された切断箇所の位置を表わす情報を取得すればよい。
【0077】
上記のように、ポジションP(V)にてステップS220の切断工程が行なわれた後は、ターンテーブル61の回転により、スパークプラグ形成部材110はポジションP(VI)に移動し、固定部71が開かれる。その後、スパークプラグ形成部材110は、さらにポジションP(VII)に移動して、ターンテーブル61上から回収され、ステップS230のギャップ形成工程に供される。
【0078】
H.ギャップ形成工程:
以下、ギャップ形成工程の概要を説明する。ギャップ形成工程は、接地電極形成部材31を屈曲させて、接地電極30と成すための工程であり、仮曲げ工程と本曲げ工程を含む。仮曲げ工程とは、電極チップ32と電極チップ32の先端との間の距離が、所望のギャップ寸法αよりも大きい値となるように、棒状の接地電極形成部材31をある程度屈曲させる工程であり、接地電極30の湾曲部の位置を定めるための工程である。本曲げ工程とは、ギャップ寸法αが所望の値となるように、仮曲げ後の接地電極形成部材31をさらに屈曲させる工程である。
【0079】
図11は、仮曲げ工程の動作を示す説明図である。
図11では、スパークプラグ形成部材110に対する相対的な向きが
図5と同じになるように、X軸、Y軸、Z軸を示している。仮曲げ工程を行なう仮曲げ装置は、支持部80およびローラ81と、支持部80とローラ81の各々を駆動するための支持部駆動部およびローラ駆動部(図示せず)と、支持部駆動部およびローラ駆動部の駆動量を制御する第1の駆動制御部(図示せず)と、を備えている。支持部80は、仮曲げ前の棒状の接地電極形成部材31の近傍において、接地電極形成部材31の長手方向に垂直な方向(Z軸方向)が長手方向となるように配置される棒状部材であり、接地電極30に形成される湾曲部の位置を規定する。この支持部80は、支持部駆動部によって移動可能となっており、接地電極形成部材31の近傍であって中心電極20寄りの任意の位置に、配置することができる。ローラ81は、曲げ加工のための押圧力を加える押圧部として機能する。ローラ81を用いて押圧力を加えると、接地電極形成部材31は、支持部80を支点として曲げられる。
【0080】
図11(A)は、仮曲げのために支持部80を配置した様子を表わす。仮曲げ工程における支持部80の配置位置は、接地電極形成部材31を湾曲させることによって所望のギャップ寸法αを得るための位置であって、中心電極20の先端である既述した点Aの位置を基準とした座標として予め定められて、第1の駆動制御部に記憶されている。仮曲げ装置は、さらに、位置測定装置63と同様に撮像装置および画像処理部を備えており、仮曲げ装置にセットされた加工対象のスパークプラグ形成部材110について、点Aの位置を識別可能となっている。第1の駆動制御部は、識別した点Aの位置と、点Aを基準とする記憶した座標とに基づいて、支持部駆動部を駆動して、支持部80を所定の位置へと配置する。
【0081】
図11(B)は、仮曲げ工程において接地電極形成部材31をローラ81を用いて曲げる動作を表わす。ローラ81をZ軸方向に移動させることにより、支持部80を支点として接地電極形成部材31を屈曲させることができる。なお、仮曲げ工程において、ローラ81を移動させる範囲は常に同じとしても良いが、ローラ81を移動させる際のX軸方向の位置を、支持部80の配置箇所に応じて微調整しても良い。また、支持部80は、棒状以外の形状としても良く、接地電極形成部材31を屈曲させる際の支点となり得る形状であればよい。
【0082】
図12は、本曲げ工程の動作を示す説明図である。
図12では、スパークプラグ形成部材110に対する相対的な向きが
図5と同じになるように、X軸、Y軸、Z軸を示している。本曲げ工程を行なう本曲げ装置は、押圧ヘッド82と、押圧ヘッド82を駆動するための押圧ヘッド駆動部(図示せず)と、押圧ヘッド駆動部の駆動量を制御する第2の駆動制御部(図示せず)と、を備えている。押圧ヘッド82は、軸線Axに対して平行な方向(X軸方向)に移動可能な部材であって、スパークプラグ形成部材110の先端側から後端側に向かって移動することで、仮曲げ工程である程度湾曲した接地電極形成部材31をさらに押圧して屈曲させることができる。本曲げ工程では、押圧ヘッド82は、中心電極20の先端面から距離Gだけ離間した位置にまで移動して、接地電極形成部材31を押圧する。この距離Gは、所望のギャップ寸法αを得るための値であって、中心電極20の先端である既述した点Aの位置を基準として予め定められて、第2の駆動制御部に記憶されている。本曲げ装置は、さらに、位置測定装置63と同様に撮像装置および画像処理部を備えており、本曲げ装置にセットされた加工対象のスパークプラグ形成部材110について、点Aの位置を識別可能となっている。第2の駆動制御部は、識別した点Aの位置と、点Aを基準として記憶した距離Gとに基づいて、押圧ヘッド駆動部を駆動して、押圧ヘッド82を所定の位置へと移動させて、屈曲した接地電極30を完成する。
【0083】
上記のようにギャップ形成工程を行なうことで、点Aの位置に対して精度良く支持部80を配置して仮曲げ工程を行ない、点Aに対して精度良く押圧ヘッド82を移動させて本曲げ工程を行なうことができる。これにより、接地電極形成部材31の所定の位置に精度良く電極チップ32が溶接されていれば、ギャップ寸法αが所望の値となっている発火部を、精度良く形成することができる。
【0084】
以上のように構成された本実施形態のスパークプラグ100の製造方法によれば、スパークプラグ形成部材110を保持治具70に固定した状態を維持しつつ、中心電極20の先端部の位置を測定する工程と、電極チップ32を溶接する工程と、接地電極形成部材31の端部を切断する工程と、を行なっている。そして、位置測定装置63、溶接装置64、あるいは切断装置65と、保持治具70との間を位置合わせした上で、各工程を実行している。そのため、位置測定装置63で測定した結果に基づいて、溶接工程および切断工程を行なう際に、電極チップ32の溶接および接地電極形成部材31の切断の動作を、精度良く所望の位置で行なうことができる。これにより、位置測定装置63と、溶接装置64および切断装置65とが、別体で異なる位置に設けられていても、発火部形成の精度を確保することができる。すなわち、電極チップ32を精度良く配置できることにより、発火部におけるギャップ寸法αの精度を向上させることができる。また、接地電極形成部材31を所望の位置で精度良く切断できることにより、発火部における被り寸法βの精度を向上させることができる。また、位置測定装置63で取得した位置情報を、溶接装置64および切断装置65で共通して用いることにより、発火部を形成するためのシステム構成を簡素化することができる。
【0085】
ここで、各工程で中心電極20の先端部の位置を認識する際に生じるばらつきの主な原因としては、例えば、スパークプラグ形成部材110を各装置に対して着脱する動作に伴うばらつきが挙げられる。また、スパークプラグ形成部材110の組み立て時に生じるばらつき、具体的には、主体金具50と絶縁碍子10との位置関係や、絶縁碍子10と中心電極20との位置関係のばらつきに起因する、主体金具50からの中心電極20の突出量のばらつきが挙げられる。本実施形態によれば、位置測定に先立って保持治具70に対してスパークプラグ形成部材110が固定された後には、この固定状態が維持されるため、スパークプラグ形成部材110の各装置に対する着脱に起因するばらつきを抑制することができる。また、各装置では、各装置間で共通化された基準点に基づいて、中心電極20の先端部の位置を相対的に認識するため、スパークプラグ形成部材110の組み立て時に生じたばらつきの影響を抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態では、位置情報は、治具識別情報と関連づけて、生成され記憶され取得される。そのため、溶接装置64および切断装置65では、加工の対象となるスパークプラグ形成部材110について位置測定装置63で測定された位置情報を用いることができるため、溶接や切断の加工の精度を高めることができる。
【0087】
さらに、本実施形態では、溶接工程と切断工程を行なう際に、溶接工程を先に行なっている。そのため、溶接工程よりも切断工程を先に行なう場合に比べて、接地電極形成部材31における溶接箇所Dよりも先端側の長さ(溶接箇所Dよりも先端側の体積)を、より大きく確保することができる。溶接箇所Dよりも先端側の長さが短いと、溶接時に、接地電極形成部材31の先端側への熱の広がりが抑えられて先端側の方が高温になり、電極チップ32と接地電極形成部材31との間の接合部の溶融状態が、先端側と基端側とで不均一になり得る。このように電極チップ32の接合部の溶融状態が不均一になると、スパークプラグ100の使用に伴って発火部が熱膨張と収縮とを繰り返したときに、熱膨張率の違い等に起因して、上記接合部近傍の耐久性が低下する可能性がある。本実施形態では、溶融工程の際に、接地電極形成部材31における溶接箇所Dよりも先端側の長さをより長く確保できるため、電極チップ32の接合部をより均一に形成することが可能になり、接合部近傍の耐久性を向上させることができる。
【0088】
I.第2の実施形態:
第1の実施形態では、位置測定装置63と、各加工装置との間で、基準点O(点Aの位置を認識するための座標の原点)の共通化が行なわれている。すなわち、位置測定装置63において位置測定するために予め決められた原点と、各加工装置において加工箇所を決定するために予め決められた原点の、保持治具70に対する相対的な位置関係が、予め決められている。しかしながら、実際には、個々の保持治具70の形状や、円盤部67における個々の保持治具70との接合部の形状には、誤差が存在する。そのため、保持治具70ごとに、位置測定装置63との間の相対的な位置関係や、各加工装置との間の相対的な位置関係に、誤差が生じ得る。すなわち、位置測定装置63において位置測定するために予め決められた原点と、各加工装置において加工箇所を決定するために予め決められた原点の、保持治具70に対する相対的な位置関係が、保持治具70毎にずれている可能性がある。そのため、保持治具70ごとに、装置間で生じる位置ずれ量を予め求めておき、求めた位置ずれ量に基づいて、溶接箇所Dや切断箇所を補正することとしても良い。このような構成と第2の実施態様として以下に説明する。
【0089】
保持治具70ごとの位置ずれ量を求めるには、例えば、保持治具70ごとに、予め多数のスパークプラグ形成部材110を用意して、ステップS200〜S220の工程を実行する。そして、溶接工程および切断工程が終了した個々のスパークプラグ形成部材110について、電極チップ32の溶接位置および接地電極形成部材31の切断位置を測定し、目標位置との間のずれの平均値を求める。各々の保持治具70について、各工程に関して求めた上記ずれの平均値に基づいて、各工程におけるずれを解消可能になる補正値を設定すればよい。溶接工程あるいは切断工程では、上記補正値を用いて原点(基準点O)の位置を補正して、溶接箇所Dや切断箇所を設定すればよい。
【0090】
このような構成とすれば、保持治具70ごとに生じる各装置との間の位置ずれを補正できるため、いずれの保持治具70を用いる場合でも、電極チップ32の溶接および接地電極形成部材31の切断の動作を所望の位置で行なう精度を、より高めることができる。
【0091】
J.第3の実施形態:
第1および第2の実施形態の加工装置では、位置測定装置63で予め決められた原点と、各加工装置で予め決められた原点の、保持治具70に対する相対的な位置関係に基づいて、点Aの位置を認識したが、異なる構成としても良い。例えば、各保持治具70上に基準点Oを付しておき、位置測定装置63と溶接装置64と切断装置65のそれぞれにおいて、保持治具70上の基準点Oの位置を識別することとしても良い。このような構成を、第3実施例として以下に説明する。
【0092】
図13は、第3の実施形態で用いる保持治具170の概略構成を模式的に表わす斜視図である。保持治具170は、第1の実施形態の保持治具70と同様の構成を有すると共に、さらに、台座部73の表面に、位置識別マーク74を付した位置識別部75を備えている。
図13では、保持治具70と共通する部分には同じ参照番号を付しており、詳しい説明を省略する。
【0093】
位置識別部75は、保持治具170の略立方体形状の台座部73上面から垂直に突出するように設けられた、略立方体形状の構造である。位置識別部75は、台座部73の上面を構成する4辺のうちの、スパークプラグ形成部材110の軸線Ax方向に略平行となる2辺の一方の辺Hの近傍において、この辺Hに平行に設けられている(
図13参照)。より具体的には、台座部73上にスパークプラグ形成部材110が固定されたときに、発火部に対応する部分が配置される領域の近傍に設けられている。位置識別部75において、上記した辺Hに平行な面であって、辺Hから離間した側の面Iに、位置識別マーク74が設けられている。
【0094】
本実施形態では、位置測定装置63に加えて、溶接装置64および切断装置65も撮像装置および画像処理部を備えている。これらの各撮像装置は、保持治具170がポジションP(III)、P(IV)、あるいはP(V)に停止したときに、台座部73の上面を構成する4辺のうちの、辺Hに対向する辺Jの側から、位置識別部75の面Iに対向する向きで、中心電極20の先端部や接地電極形成部材31、および位置識別マーク74を含む領域を撮像する。
【0095】
図14は、位置測定装置63が備える撮像装置が撮像する画面の一例を示す説明図である。
図14では、スパークプラグ形成部材110の先端部と位置識別マーク74のみを示しており、他の構成は記載を省略している。撮像装置が撮像する画面では、中心電極20の先端部の近傍に、位置識別マーク74が配置される。
図14に示すように、位置識別マーク74は、直交する2本の線分によって構成されている。本実施形態の位置測定装置63が備える画像処理部は、撮像装置が撮像した発火部近傍の画像を解析するときに、中心電極20の先端の点Aに加えて、位置識別マーク74を構成する2本の線分の交点Kの位置を識別する。そして、第1の実施形態と同様に、交点Kを基準点Oとして点Aの座標を2次元的に導出し、位置情報として出力する。
【0096】
溶接装置64および切断装置65も、位置測定装置63と同様にして、撮像装置および画像処理部によって交点Kの位置を識別する。ただし、溶接装置64および切断装置65では、点Aの位置については識別しない。溶接装置64および切断装置65では、位置測定装置63が導出した位置情報を取得し、識別した交点Kの位置と位置情報とに基づいて、点Aの位置を認識し、溶接工程あるいは切断工程を実行する。
【0097】
上記した第3の実施形態では、位置測定装置63と溶接装置64と切断装置65のそれぞれにおいて、保持治具170表面に固定された位置識別マーク74の交点Kを基準にして、点Aの位置を認識する。そのため、保持治具170と各装置間の位置合わせにおいてぶれが生じる場合であっても、位置測定装置63が導出した位置情報に基づいて、交点Kに対する相対的な位置として、点Aの位置を正確に認識することが可能になり、溶接箇所Dや切断箇所を設定する精度を高めることができる。また、本実施形態によれば、溶接装置64および切断装置65では、画像処理の対象は交点Kのみであるため、画像処理部における処理負担の増加を抑制することができる。なお、位置識別部75および位置識別マーク74の形状は、種々の変形が可能である。位置識別マーク74は、点Aの位置を識別するための基準点として利用可能であればよい。
【0098】
K.第4の実施形態:
第1ないし第3の実施形態では、発火部形成システム60を用いて特定種類のスパークプラグを製造しているが、異なる構成としても良い。以下に、発火部の構成、具体的には電極チップの構成が異なる複数種類のスパークプラグを、共通の発火部形成システムを用いて製造する実施形態を、第4の実施形態として説明する。
【0099】
図15は、第4の実施形態の発火部形成システム160の概略構成を、
図5と同様にして模式的に表わす説明図である。以下の説明では、第1の実施形態と共通する部分には同じ参照番号を付して、詳しい説明を省略する。本実施形態の発火部形成システム160では、溶接装置64が、第1の溶接装置部68と、第2の溶接装置部69とを備えている。第1の溶接装置部68は、ポジションP(IV)に配置されており、第2の溶接装置部69は、ポジションP(V)に配置されている。第1の実施形態と同様の切断装置65は、ポジションP(VI)に配置されている。本実施形態では、ポジションP(V(VII)が、保持治具70に対するスパークプラグ形成部材110の固定を解除するためのポジションとなっており、ポジションP(VIII)が、保持治具70上からスパークプラグ形成部材110を回収するためのポジションとなっている。
【0100】
第1の溶接装置部68と第2の溶接装置部69とは、接地電極形成部材31上に設けることができる電極チップの種類が異なる。例えば、第1の溶接装置部68は、抵抗溶接により電極チップを溶接する装置とすることができる。そして、第2の溶接装置部69は、第1の溶接装置部68とは異なる形状の溶接チップを、第1の溶接装置部68とは異なる条件下での抵抗溶接により仮止めした後に、レーザ溶接する装置とすることができる。なお、発火部形成システム160を用いて形成可能な電極チップの種類の数、すなわち、発火部形成システム160が備える溶接装置部の数は、3以上としても良い。
【0101】
本実施形態では、製造すべきスパークプラグ100の種類に応じて、用いる保持治具70を予め定めている。そして、第1および第2の溶接装置部は、当該溶接装置部に対応するポジションで停止して当該溶接装置部に対して位置合わせされた保持治具70を識別して、当該溶接装置部において溶接工程を実行すべきか否かを判断する。このとき、第1および第2の溶接装置部は、溶接工程を実行すべきと判断したときのみ、対応するポジションで停止して位置合わせされているスパークプラグ形成部材110に対して溶接工程を実行する。なお、第1および第2の溶接装置部で上記判断を行なう制御部は、各々の溶接装置部に設けても良く、制御部66に設けても良い。
【0102】
このような構成とすれば、電極チップの構成が異なる複数種類のスパークプラグを製造する際に、発火部形成システム160を用いることで、位置測定装置63および切断装置65を共通して用いることができる。したがって、複数種類のスパークプラグを製造するために必要な装置全体の構成を、簡素化することができる。
【0103】
なお、上記した第4の実施形態では、各溶接装置部において、保持治具70の識別結果に基づいて、当該溶接装置部での溶接工程を行なうか否かを判断したが、異なる構成としても良い。例えば、特定の種類のスパークプラグを所定数まとめて製造する際には、製造するスパークプラグの種類を変更するごとに、製造するスパークプラグの種類を操作者が制御部66に入力することとしてもよい。そして、制御部66からは、用いるべき溶接装置部に対してのみ、位置情報および治具識別情報を出力し、用いない溶接装置部に対しては、位置合わせされたスパークプラグ形成部材に対する溶接工程を行なわない休止信号を出力すればよい。あるいは、製造すべきスパークプラグの数および順序を、制御部66において予めプログラムし、制御部66からは、プログラムされた内容に従って、位置情報と治具識別情報、あるいは休止信号を、各溶接装置部に対して出力してもよい。
【0104】
スパークプラグの種類が異なる場合には、電極チップの構成に加えて、あるいは電極チップの構成に代えて、ギャップ寸法αが異なる場合がある。ギャップ寸法αが異なると、溶接装置において溶接箇所Dを決定する際に参照する
図10に示す距離Cが異なる値となる。このような場合には、例えば、溶接工程を行なう溶接装置あるいは制御部66において、治具識別情報に基づいて距離Cの値を変更し、変更した距離Cの値を用いて溶接箇所Dの設定を行なえばよい。
【0105】
上記した構成において、治具識別情報に基づいて、溶接箇所Dの設定に用いる距離Cを変更する構成に代えて、距離Cに係る情報を、個々の保持治具70に付することとしても良い。すなわち、スパークプラグの種類ごとに用いる保持治具を定め、個々の保持治具において、製造すべきスパークプラグの種類に応じた距離Cの情報(スパークプラグの種類ごとに変更されるパラメータ)に係る情報を付しておけばよい。パラメータに係る情報を付する方法としては、例えば、当該情報を盛り込んだバーコードを保持治具70に貼り付け、各溶接装置には、当該バーコードの読み取り装置を設ければよい。あるいは、個々の保持治具70において、例えば磁気的手段によって情報を記憶するメモリを取り付け、位置測定装置63において、識別した治具に応じたパラメータ情報を上記メモリに書き込むこととしても良い。この場合には、溶接工程を行なう溶接装置において、上記メモリの読み取り手段を設け、上記メモリからのパラメータ情報の読み取りを行なえばよい。
【0106】
なお、スパークプラグの種類によって異なる距離Cに基づいて溶接箇所Dを決定する場合には、切断装置における切断箇所の設定も、上記した溶接箇所Dの設定変更と同様にして変更すればよい。
【0107】
L.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0108】
L1.変形例1:
第1ないし第4の実施形態では、位置測定装置63において保持治具70を識別し、位置情報と治具識別情報とを関連づけることによって、各加工装置における加工の精度を向上させているが、治具識別情報を用いないこととしても良い。例えば、位置測定装置63で位置情報を取得した後に、取得した位置情報を各加工装置に順次出力し、各加工装置において、上記出力された位置情報を順次記憶すればよい。そして、各加工装置では、記憶した中で最も古い位置情報を用いて、当該加工装置に対応するポジションで停止して位置合わせされたスパークプラグ形成部材110についての加工位置(溶接箇所Dや切断箇所)を算出し、算出した位置にて加工を行なえばよい。加工の後には、上記最も古い情報を消去すればよく、このような動作を繰り返すことで、保持治具70の識別を行なうことなく、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0109】
L2.変形例2:
第1ないし第4の実施形態では、位置測定工程、溶接工程、および切断工程で、保持治具70を共有し、共通の搬送装置であるターンテーブル61を用いたが、異なる構成としても良い。例えば、位置測定工程と溶接工程のみ、あるいは、位置測定工程と切断工程のみ、保持治具70を共有し、位置測定工程で取得した位置情報を、後の工程で利用することとしても良い。少なくともいずれかの加工工程において、位置測定工程との間で保持治具を共有し、保持治具と測定装置および加工装置との間で位置合わせを行なうならば、加工の精度を上げて、発火部形成の精度を向上させることができる
【0110】
L3.変形例3:
溶接工程および切断工程に加えて、さらにギャップ形成工程においても、保持治具70を共有し、スパークプラグ形成部材110が保持治具70に固定された状態を維持して、位置測定装置63で測定した位置情報を利用しても良い。以下に、このような構成を変形例3として説明する。
【0111】
図16は、変形例3の発火部形成システム260の概略構成を、
図5と同様に表わす説明図である。以下の説明では、第1の実施形態と共通する部分については同じ参照番号を付して、詳しい説明を省略する。ターンテーブル61には、8個の保持治具70が取り付け可能であり、各々の保持治具70は、ポジションP(I)からポジションP(VII)を取りうる。本変形例では、ポジションP(I)において、円盤部67への保持治具70の固定が行なわれる。そして、ポジションP(II)において、保持治具70に対してスパークプラグ形成部材110の供給が行なわれ、ポジションP(III)において、供給されたスパークプラグ形成部材110の保持治具70への固定が行なわれる。ポジションP(IV)では、位置測定装置63による位置測定工程が行なわれ、ポジションP(V)では、溶接装置64による溶接工程が行なわれ、ポジションP(VI)では、切断装置65による切断工程が行なわれる。そして、ポジションP(VII)では、スパークプラグ形成部材110が固定された保持治具70が、円盤部67から取り外される。なお、本実施形態では、第1ないし第4の実施形態に比べて、保持時部70の台座部73における軸線Ax方向の長さが短く形成されている。具体的には、接地電極形成部材31の大部分が、台座部73に対して、軸線Ax方向にはみ出す形状となっている。これは、保持治具70に固定された状態を維持するスパークプラグ形成部材110に対して、ギャップ形成工程を支障無く行なうことができるようにするためである。
【0112】
変形例3では、スパークプラグ形成部材110が保持治具70に固定された状態を位置測定工程から継続して維持して、ギャップ形成装置(仮曲げ装置および本曲げ装置)に対して保持治具70を位置合わせし、スパークプラグ形成部材110をギャップ形成工程に供給する。本実施形態では、位置測定装置63において位置測定するために予め決められた原点と、ギャップ形成装置においてギャップ形成するために予め決められた原点の、保持治具70に対する相対的な位置関係が、予め決められている。そのため、保持治具70をギャップ形成装置に対して位置合わせすることにより、位置測定工程で得られた位置情報を用いてギャップ形成工程を実行することができる。具体的には、上記位置情報を用いて、スパークプラグ形成部材110における点Aの位置を精度良く認識することができ、認識した点Aの位置に基づいて、仮曲げ工程において支持部80を所望の位置に配置することができる。また、本曲げ工程において、押圧ヘッド82を所望の距離だけ移動させることができる。なお、第3の実施形態のように、保持治具70において、位置識別マーク74を付した位置識別部75を設け、位置識別マーク74の位置を基準として点Aの位置を認識することとすれば、ギャップ形成加工の精度を、さらに向上させることができる。
【0113】
また、
図16において、円盤部67に保持治具70を固定した後に、保持治具70にスパークプラグ形成部材110を固定する代わりに、予めスパークプラグ形成部材110が固定された保持治具70を、円盤部67に取り付けることとしても良い。また、ギャップ形成工程も、位置測定工程、溶接工程、および切断工程と同様に、共通する搬送装置(ターンテーブル61)を利用して、保持治具70が円盤部67に固定された状態のまま行なうこととしても良い。
【0114】
さらに、保持治具70にスパークプラグ形成部材110が固定された状態を維持してギャップ形成工程を行ない、ギャップ形成工程においても位置情報を利用する場合に、ギャップ形成工程において、装置間の位置ずれを補正する処理を行なっても良い。すなわち、位置測定装置63において予め決められた原点と、ギャップ形成装置において予め決められた原点の、保持治具70に対する相対的な位置関係において生じる保持治具70ごとの位置ずれ量を、予め求めておけばよい。そして、このような装置間で生じる位置ずれ量に基づいて、ギャップ形成装置で予め設定された原点の位置を補正すれば良い。保持治具70ごとの位置ずれ量を求めるには、例えば、保持治具70ごとに、精度良く溶接工程および切断工程が行なわれたスパークプラグ形成部材110を予め多数用意して、ギャップ形成工程を実行する。そして、ギャップ形成工程(仮曲げ工程および本曲げ工程)が終了した個々のスパークプラグ100について、ギャップ寸法αを測定し、目標値との間のずれの平均値を求める。各々の保持治具70について、各工程に関して求めた上記ずれの平均値を、保持治具70ごとのギャップ形成工程における補正値とすればよい。すなわち、ギャップ形成工程では、上記補正値を用いてギャップ形成装置の原点の位置を補正して、支持部80を配置する位置や押圧ヘッド82の移動に係る距離Gの値を設定すればよい。
【0115】
L4.変形例4:
図3に示した各工程の順序は、種々の変形が可能である。例えば、溶接工程(ステップS210)を切断工程(ステップS220)よりも先に行なうのではなく、切断工程を先に行なっても良い。また、接地電極形成部材31の切断工程を、ギャップ形成工程(接地電極形成部材31を曲げる工程)の後に行なっても良い。スパークプラグ形成部材110を保持治具70に固定した状態を、位置測定工程から後の加工工程まで維持し、位置測定装置63で決められた原点と加工装置で決められた原点の、保持治具70に対する相対的な位置関係が予め決められていればよい。これにより、位置測定装置63で導出した位置情報を用いて、後の加工工程における加工の精度を確保することができる。
【0116】
L5.変形例5:
保持治具70を固定することにより、保持治具70に固定されたスパークプラグ形成部材110を、位置測定装置63から他の加工装置へと搬送する搬送装置としては、ターンテーブル61以外の搬送装置を用いても良い。例えば、位置測定装置63および加工装置を直線上に配置し、これらの装置へとスパークプラグ形成部材110を順次搬送可能となるように、直線運動を行なう台座部を備える搬送装置に保持治具70を固定することとしても良い。保持治具70を固定することができ、固定した保持治具70を、位置測定装置63および他の加工装置との間で十分な精度で位置合わせ可能であればよい。
【0117】
また、位置測定装置63および各加工装置と、保持治具70との間を、十分に精度良く位置合わせするならば、位置測定装置63から各加工装置への搬送は、ターンテーブル61等の搬送装置を用いることなく、手動で搬送することとしても良い。また、複数の保持治具70を用いるのではなく、単一の保持治具70を用いることとしても良い。この場合にも、スパークプラグ形成部材110が保持治具70に固定された状態を維持して、位置測定工程およびその後の加工工程を行なうならば、位置測定工程における測定結果を利用してその後の加工工程を行なうことで、発火部形成の精度を向上させる同様の効果が得られる。
【0118】
L6.変形例6:
第1ないし第4の実施形態では、個々のスパークプラグ形成部材110について位置測定工程を実行し、個々のスパークプラグ形成部材110の加工の工程では、そのスパークプラグ形成部材110について得られた位置情報を利用したが、異なる構成としても良い。例えば、個々の保持治具70を、十分に精度良く均一な形状に形成し、保持治具70に対する相対的な位置が、十分に均一になるように、個々のスパークプラグ形成部材110を保持治具70に固定する場合には、一つのスパークプラグ形成部材110についてのみ、位置測定工程を行なえばよい。そして、得られた位置情報を、位置測定を行なったスパークプラグ形成部材110および他の全てのスパークプラグ形成部材についての加工工程において、利用すればよい。このような構成としても、保持治具70に対してスパークプラグ形成部材110が固定される状態が維持されて、各々の加工工程に供する際のスパークプラグ形成部材110の位置ずれが抑制されているため、発火部形成の精度を高める効果が得られる。