特許第5730810号(P5730810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5730810法定外公共物の処分案作成支援装置及び法定外公共物の処分案作成支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730810
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】法定外公共物の処分案作成支援装置及び法定外公共物の処分案作成支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20150521BHJP
   G06Q 50/16 20120101ALI20150521BHJP
【FI】
   G06Q50/26
   G06Q50/16 100
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-94410(P2012-94410)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-222363(P2013-222363A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】西川 和孝
(72)【発明者】
【氏名】烏谷 恭一
(72)【発明者】
【氏名】武田 幸司
【審査官】 佐藤 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−087259(JP,A)
【文献】 特開2004−191466(JP,A)
【文献】 特開2006−106966(JP,A)
【文献】 特開2006−119322(JP,A)
【文献】 特開2001−357177(JP,A)
【文献】 特開2010−182232(JP,A)
【文献】 特開2006−154046(JP,A)
【文献】 特開2002−162898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法定外公共物を含む対象地域の土地の情報である対象地域情報を取得する対象地域情報取得手段と、
前記対象地域情報に基づき対象地域内の土地の属性を抽出する属性抽出手段と、
前記属性に基づき、予め定めた基準に従って法定外公共物に分割線を生成する分割線生成手段と、
前記分割線により分割された法定外公共物の分割領域毎、及び各所有界で分割された土地毎に評価情報を生成する評価手段と、
前記評価情報を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする法定外公共物の処分案作成支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の法定外公共物の処分案作成支援装置において、前記分割線生成手段は、前記法定外公共物を挟む土地の所有権の状況が、それぞれ異なる者の私有地か、同一人の私有地か、一方が私有地で他方が公有地かに基づいて分割線を生成することを特徴とする法定外公共物の処分案作成支援装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の法定外公共物の処分案作成支援装置において、前記評価情報は、単位面積あたりの価額である評価額単価であることを特徴とする法定外公共物の処分案作成支援装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の法定外公共物の処分案作成支援装置において、前記出力手段は、前記対象地域の土地の所有権の境界を表す所有界または筆界と、前記評価情報とを画面に表示し、表示された前記所有界または筆界を指定された場合に、対応する土地の評価情報を、当該土地に隣接する分割領域の評価情報とともに表示することを特徴とする法定外公共物の処分案作成支援装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の法定外公共物の処分案作成支援装置において、前記出力手段は、前記法定外公共物の処分の要否、処分の順序のうち少なくとも1つとともに前記評価情報を表示することを特徴とする法定外公共物の処分案作成支援装置。
【請求項6】
コンピュータを、
法定外公共物を含む対象地域の土地の情報である対象地域情報を取得する対象地域情報取得手段、
前記対象地域情報に基づき対象地域内の土地の属性を抽出する属性抽出手段、
前記属性に基づき、予め定めた基準に従って法定外公共物に分割線を生成する分割線生成手段、
前記分割線により分割された法定外公共物の分割領域毎、及び各所有界で分割された土地毎に評価情報を生成する評価手段、
前記評価情報を出力する出力手段、
として機能させることを特徴とする法定外公共物の処分案作成支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法定外公共物の処分案作成支援装置及び法定外公共物の処分案作成支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路法、河川法、下水道法、海岸法等の法令の適用または準用のない公共物である法定外公共物には、例えば普通河川(水路)や里道、海岸線付近の土地等が含まれ、国又は地方公共団体が管理している。これらの法定外公共物のうち、本来の用途として使用されなくなった水路や里道などは用途廃止された上で私人に有償で譲渡する等、適切に処分し、固定資産税等の課税対象とすることが望まれる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、法定公共物又は法定外公共物を国から実際の管理者である地方公共団体に譲与する際の譲与申請に係る書面データを電子的に生成する法定公共物・法定外公共物譲与申請支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−357177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の技術では、法定外公共物の私人への譲渡等の処分を行う際に、いずれの法定外公共物から処分してゆくべきかを簡易に判断することができなかった。
【0006】
本発明の目的は、法定外公共物の処分の要否、順序を簡易に決定することができる法定外公共物の処分案作成支援装置及び法定外公共物の処分案作成支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、法定外公共物の処分案作成支援装置であって、法定外公共物を含む対象地域の土地の情報である対象地域情報を取得する対象地域情報取得手段と、前記対象地域情報に基づき対象地域内の土地の属性を抽出する属性抽出手段と、前記属性に基づき、予め定めた基準に従って法定外公共物に分割線を生成する分割線生成手段と、前記分割線により分割された法定外公共物の分割領域毎、及び各所有界で分割された土地毎に評価情報を生成する評価手段と、前記評価情報を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、他の実施形態は、上記実施形態において、前記分割線生成手段が、前記法定外公共物を挟む土地の所有権の状況が、それぞれ異なる者の私有地か、同一人の私有地か、一方が私有地で他方が公有地かに基づいて分割線を生成することを特徴とする。
【0009】
また、さらに他の実施形態は、上記実施形態において、前記評価情報が、単位面積あたりの価額である評価額単価であることを特徴とする。
【0010】
また、さらに他の実施形態は、上記実施形態において、前記出力手段が、前記対象地域の土地の所有権の境界を表す所有界または筆界と、前記評価情報とを画面に表示し、表示された前記所有界または筆界を指定された場合に、対応する土地の評価情報を、当該土地に隣接する分割領域の評価情報とともに表示することを特徴とする。
【0011】
また、さらに他の実施形態は、上記実施形態において、前記出力手段が、前記法定外公共物の処分の要否、処分の順序のうち少なくとも1つとともに前記評価情報を表示することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、法定外公共物の処分案作成支援プログラムであって、コンピュータを、法定外公共物を含む対象地域の土地の情報である対象地域情報を取得する対象地域情報取得手段、前記対象地域情報に基づき対象地域内の土地の属性を抽出する属性抽出手段、前記属性に基づき、予め定めた基準に従って法定外公共物に分割線を生成する分割線生成手段、前記分割線により分割された法定外公共物の分割領域毎、及び各所有界で分割された土地毎に評価情報を生成する評価手段、前記評価情報を出力する出力手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、法定外公共物の処分の要否、順序を簡易に決定することができる
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態にかかる法定外公共物の処分案作成支援装置を構成するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図2】実施形態にかかる法定外公共物の処分案作成支援装置の機能ブロック図である。
図3】実施形態にかかる分割線生成部が分割線を生成する基準の例を示す図である。
図4】法定外公共物を含む対象地域の土地の所有権の状況を表す地番図の例を示す図である。
図5】実施形態にかかる属性抽出部が抽出した属性に基づき、分割線生成部が法定外公共物に分割線を生成する場合の説明図である。
図6図5において破線で囲まれたVIの領域の拡大図である。
図7】実施形態にかかる法定外公共物の処分案作成支援装置の動作例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0016】
図1には、実施形態にかかる法定外公共物の処分案作成支援装置を構成するコンピュータのハードウェア構成例が示される。図1において、法定外公共物の処分案作成支援装置は、中央処理装置(例えばマイクロプロセッサ等のCPUを使用することができる)10、ランダムアクセスメモリ(RAM)12、読み出し専用メモリ(ROM)14、入力装置16、表示装置18、通信装置20及び記憶装置22を含んで構成されており、これらの構成要素は、バス24により互いに接続されている。
【0017】
CPU10は、RAM12またはROM14に格納されている制御プログラムに基づいて、後述する各部の動作を制御する。RAM12は主としてCPU10の作業領域として機能し、ROM14にはBIOS等の制御プログラムその他のCPU10が使用するデータが格納されている。
【0018】
また、入力装置16は、キーボード、ポインティングデバイス等により構成され、使用者が動作指示等を入力するために使用する。
【0019】
また、表示装置18は、液晶ディスプレイ等により構成され、各種図面、法定外公共物の評価情報等を表示する。
【0020】
また、通信装置20は、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポートその他の適宜なインターフェースにより構成され、CPU10がネットワーク等の通信手段を介して外部の装置とデータをやり取りするために使用する。
【0021】
また、記憶装置22は、ハードディスク等の磁気記憶装置であり、後述する処理に必要となる種々のデータを記憶する。なお、記憶装置22としては、ハードディスクの代わりに、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書換可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。
【0022】
図2には、本実施形態にかかる法定外公共物の処分案作成支援装置の機能ブロック図が示される。図2において、法定外公共物の処分案作成支援装置は、対象地域情報取得部26、属性抽出部28、分割線生成部30、評価部32及び出力部34を含んで構成されており、これらの機能は、例えばCPU10とCPU10の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0023】
対象地域情報取得部26は、法定外公共物を含む対象地域の土地の情報(以後、対象地域情報という)を取得する。この情報は、コンピュータが読み取り可能な形式(デジタルデータ)で与えられ、適宜な記憶手段(ディスク、USBメモリ等)またはネットワーク等の通信手段を介して法定外公共物の処分案作成支援装置を構成するコンピュータに入力される。また、対象地域情報には、対象地域の地図情報と、所有権毎の境界である所有界、法定外公共物等の情報が含まれており、地図情報としては、例えば地番図等を使用するのが好適である。以下、本実施形態では、法定外公共物のうち所有権が確定している土地に挟まれている水路や道路(里道)等を対象として説明する。この法定外公共物に関する情報には、水路または道路(里道)の中心線のデータが含まれていてもよい。所有権が確定している土地とは、私人の所有地(私有地)又は国若しくは地方公共団体の所有地(公有地)であることをいい、例えば所有界等で分割されている。
【0024】
属性抽出部28は、上記対象地域情報に基づき対象地域内の土地の属性を抽出する。ここで、属性とは、所有権の境界である所有界、所有界内に含まれる土地の筆(土地登記簿上で一個の土地とされる範囲)の境界である筆界(一部または全部が所有界と一致する場合もある)、所有界で分割された土地が誰の所有となっているかに関する情報、私有地と公有地と法定外公共物の区別、周辺の路線価、路線価に基づいて決定された各所有界内の土地の評価額単価、後述する角点等がある。なお、私有地と公有地と法定外公共物の区別とは、対象地域内の土地の所有界等の分割線で分割された各領域が、私有地、公有地、法定外公共物のいずれに該当するかの情報である。また、属性抽出部28は、所有界で分割された私有地、公有地及び法定外公共物の形状を表すポリゴンデータを発生させてもよい。また、上記法定外公共物に関する情報に水路または道路(里道)の中心線のデータが含まれていない場合には、属性抽出部28が中心線データを生成する構成が好適である。
【0025】
分割線生成部30は、上記属性に基づき、予め定めた基準に従って法定外公共物に分割線を生成する。この場合、予め定めた基準の例としては、法定外公共物を挟む土地の所有権の状況が、それぞれ異なる者の私有地か、同一人の私有地か、一方が私有地で他方が公有地かに基づいて分割線を生成することが挙げられる。分割線の生成方法の詳細は後述するが、例えば法定外公共物を挟む土地がそれぞれ異なる者の私有地の場合には、各私有地の境界(所有界)の角となる点(以後、角点という)から、法定外公共物を挟んでいる相手側の角点のうち最も近い角点に線分を発生させ、この線分を法定外公共物の分割線とする等の方法がある。また、同一人の私有地が法定外公共物を挟む場合には、当該私有地の法定外公共物を挟む角点のうち、最も近い角点同士を結ぶ線分を法定外公共物の分割線とする等の方法がある。また、一方が私有地で他方が公有地の場合には、私有地の角点から公有地の角点のうち最も近い角点に線分を発生させ、この線分を法定外公共物の分割線とする等の方法がある。なお、表示装置18に対象地域情報を構成する地図情報を表示させ、利用者が入力装置16から入力した適宜な指示情報に基づいて分割線を生成してもよい。上記指示情報は、例えば、キーボードから入力した座標情報、あるいはポインティングデバイスによる、分割線を生成する一対の角点の指定等とすることができる。
【0026】
評価部32は、上記分割線により分割された法定外公共物の分割領域毎、及び各所有界で分割された土地毎に評価情報を生成する。なお、両側を私有地で挟まれている場合には、上記分割線と法定外公共物の中心線とで囲まれた領域毎に評価情報を生成する。評価情報は、例えば単位面積あたりの価額すなわち評価額単価とすることができ、予め設定された路線価等に基づいて評価額単価を求める。路線価から評価額単価を求める方法は、従来より行われている実務に従う。また、評価部32は、法定外公共物の分割領域毎に処分経費を算出する。この処分経費の算出は、法定外公共物とこれに境界を接する私有地との境界確定(既明示)の有無、境界確認のための立ち会い人数、測量費用等に基づいて行う。なお、既明示の有無については利用者が入力装置16から入力する。さらに、評価部32は、算出した処分経費と、法定外公共物の譲渡益、租税収入等に基づき、費用回収の早さ(何年で費用回収できるか)等に基づいて、各法定外公共物の処分の要否、処分の順序を決定し、出力する。
【0027】
出力部34は、上記評価部32が出力した評価情報及び処分の要否、処分の順序を、法定外公共物の処分案作成支援のための情報として出力する。この際、上記情報を、予め定めた優先順位に基づいて出力してもよい。出力方法としては、例えば表示装置18の画面表示、印刷装置からの印刷出力、通信装置20を介しての外部装置への送信等がある。また、出力部34は、対象地域の土地の所有権の境界を表す所有界または筆界と、上記評価情報とを画面に表示し、表示された所有界または筆界が入力装置16から指定された場合に、対応する土地の評価情報等を、当該土地に隣接する法定外公共物の分割領域の評価情報とともに表示してもよい。この場合、当該土地と隣接する法定外公共物の分割領域とを、当該土地と同一人の所有とした場合の評価情報を優先的に表示するのが好適である。
【0028】
図3(a)、(b)、(c)、(d)には、分割線生成部30が分割線を生成する基準の例が示される。図3(a)は、法定外公共物を挟む土地(ここでいう土地は、例えば所有界で分割された土地である)がそれぞれ異なる者の私有地の場合である。図3(a)に示されるように、法定外公共物Gを挟む土地AG1、AG2には、法定外公共物Gを挟む角点a1、a2(AG1側)及びa3、a4(AG2側)が存在する。なお、この角点は、属性抽出部28が発生したポリゴンデータにおいて、土地の外郭を形成する線分が交わる角度のうち小さい角度が0度より大きく180度より小さい点(すなわち、上記線分が一直線上で接続されている点を除いた交点)である。この角点も属性抽出部28が求める。また、法定外公共物Gには、中心線gが設定されている。この中心線gは、対象地域情報に予め設定されていてもよいし、属性抽出部28が設定してもよい。分割線生成部30は、例えば角点a1、a2から、法定外公共物Gを挟んで位置している相手側の角点a3、a4のうち最も近い角点(角点a1に対して角点a3、角点a2に対して角点a4)まで線分を発生させ、この線分を法定外公共物Gの分割線とする。この分割線により分割された法定外公共物Gは、中心線gにより二つの領域(私有地との境界線と分割線と中心線gとにより囲まれた二つの領域)に分けられている。この場合、それぞれの領域は、境界を接する側の私有地と同一人の所有とするのが、土地の利用価値の点で望ましい。そこで、評価部32は、上記中心線gにより分けられた二つの領域が、それぞれ境界を接する側の私有地AG1、AG2と同一人の所有となる(同じ所有界内の一部の土地となる)ことを前提として評価情報を生成する。
【0029】
また、図3(b)は、法定外公共物を挟む土地が同一人の所有地(私有地)の場合である。図3(b)に示されるように、法定外公共物Gを挟む土地BG1、BG2には、法定外公共物Gを挟む角点b1、b2(BG1側)及びb3、b4(BG2側)が存在する。分割線生成部30は、角点b1、b2から、法定外公共物Gを挟んで位置している相手側の角点b3、b4のうち最も近い角点(角点b1に対して角点b3、角点b2に対して角点b4)まで線分を発生させ、この線分を法定外公共物Gの分割線とする。この場合には、法定外公共物Gが同一人に所有される私有地に挟まれており、全て同一人の所有になることが予定されるので、法定外公共物Gの中心線は不要であり、中心線データが存在しても、図3(b)にかかる処理には使用しない。また評価部32も、法定外公共物Gが、これを挟む私有地と同一人の所有となる(同じ所有界内の一部の土地となる)ことを前提として評価情報を生成する。
【0030】
また、図3(c)は、法定外公共物を挟む土地の一方が私有地で他方が公有地の場合である。図3(c)の例では、土地CG1が私有地であり、土地CG2が公有地である。図3(c)に示されるように、法定外公共物Gを挟む土地CG1、CG2には、法定外公共物Gを挟む角点c1、c2(CG1側)及びc3、c4(CG2側)が存在する。分割線生成部30は、角点c1、c2から、法定外公共物Gを挟んで位置している相手側の角点c3、c4のうち最も近い角点(角点c1に対して角点c3、角点c2に対して角点c4)まで線分を発生させ、この線分を法定外公共物Gの分割線とする。この場合には、法定外公共物Gが私有地CG1と公有地CG2とに挟まれており、全て私有地CG1の所有者の所有になる方が、土地の利用価値の点で望ましい(将来の課税額、評価額が高くなるため)。このため、法定外公共物Gの中心線は不要であり、中心線データが存在しても、図3(c)にかかる処理には使用しない。また、評価部32も、法定外公共物Gが、公有地との間でこれを挟む私有地と同一人の所有となる(同じ所有界内の一部の土地となる)ことを前提として評価情報を生成する。
【0031】
また、図3(d)は、図3(a)の場合の変形例であり、法定外公共物を挟む土地のいずれか片方側が、複数(図3(d)の例では二つ)に分割されている場合である。すなわち、図3(d)では、法定外公共物Gを挟む土地の一方側が一つの土地DG1となっており、他方側が二つの土地DG2とDG3とに分割されている。この場合には、土地DG1側にd1とd2の二つの角点があり、土地DG2、DG3側にd3、d4、d5の三つの角点がある。したがって、結ぶべき角点が奇数(図3(d)の場合には五つ)存在し、最も近い角点同士を結ぶだけでは法定外公共物Gの分割処理を適切に行えず、例えば角点d4と結ぶべき角点を決定できないという問題がある。このため、分割線生成部30は、土地DG2、DG3側の三つの角点の内、二つに挟まれた角点d4を抽出し、この角点d4から相手側の土地DG1と法定外公共物Gとの境界線または法定外公共物Gの中心線gに対して所定の角度(例えば90度)で交わる線分を発生させ、この線分を法定外公共物Gの分割線とする。図3(d)の場合、土地DG1には角点d4に対応する角点が無い(土地DG2、DG3と同様の分割がされていない)ので、角点d4から発生した分割線は、上記中心線gと交わった点で終了し、土地DG1と法定外公共物Gとの境界線までは延長されない。一方、土地DG1に角点d4に対応する角点が存在する場合には、土地DG1と法定外公共物Gとの境界線まで延長されることになる。なお、他の角点d1、d2、d3、d5については、図3(a)と同じ処理を行う。この場合にも、それぞれの私有地との境界線と分割線と中心線gとにより囲まれた各領域は、境界を接する側の私有地と同一人の所有とするのが、土地の利用価値の点で望ましい。そこで、評価部32は、上記各領域が、それぞれ境界を接する側の私有地と同一人の所有となる(同じ所有界内の一部の土地となる)ことを前提として評価情報を生成する。なお、土地DG1、DG2、DG3のいずれかが公有地の場合には、全てその反対側の私有地の所有者の所有になることを前提として評価情報を生成する。
【0032】
図4には、法定外公共物を含む対象地域の土地の所有権の状況を表す地番図の例が示される。図4において、対象地域Iには、所有界で分割された土地A,B,C,D,E,Fが含まれている。これらの内、A,B,C,D,Eが私有地(所有者をそれぞれα,β,γ,δ,εとする)であり、Fが公有地となっている。また、対象地域Iには、法定外公共物として、里道Gが含まれている。また、図4では、地番図上に、路線価及び各私有地の評価額単価も示されている。
【0033】
本実施形態では、対象地域情報取得部26が図4に示された地番図の情報(以後、地番図情報という)を対象地域情報として取得すると、属性抽出部28が、当該地番図情報から、私有地A,B,C,D,Eとその所有者α,β,γ,δ,ε、公有地F及び里道Gが存在すること等を、対象地域内の土地の属性として抽出する。また、属性抽出部28は、上記地番図情報から、所有界で分割された私有地A,B,C,D,E,公有地F及び里道Gの形状を表すポリゴンデータを発生させてもよい。なお、このポリゴンデータは、地番図情報に予め含ませておき、対象地域情報取得部26がこれを取得する構成としてもよい。
【0034】
図5には、属性抽出部28が抽出した属性に基づき、分割線生成部30が法定外公共物に分割線を生成する場合の説明図が示され、図4と同一要素には同一符号を付している。分割線生成部30は、図3(a)、(b)、(c)、(d)に示された基準に従って法定外公共物に分割線を生成する。
【0035】
図5において、法定外公共物(里道)Gの内、異なる者(αとδとε)の私有地A、私有地D、私有地Eで挟まれた領域は、図3(a)及び図3(d)に示された基準に従って分割線生成部30が法定外公共物Gに分割線を生成する。この結果、私有地Dと私有地Eとの間の角点(二つの角点により挟まれている角点)からは、私有地Aと法定外公共物Gとの境界線または法定外公共物Gの中心線gに対して所定角度の分割線が生成されている。この分割線は、私有地Dと私有地Eとの間の角点から法定外公共物Gの中心線gまで生成される。また、私有地Dの法定外公共物G側の角点の内、図の左側の角点は、法定外公共物Gを挟んでいる相手側の角点の内最も近い角点、すなわち私有地Aの角点の内、図の左側の角点との間で線分が発生され、法定外公共物Gの分割線とされている。この結果、評価部32は、法定外公共物Gの中心線g、私有地Dと私有地Eとの間の角点から法定外公共物Gの中心線gに生成した分割線、私有地Dの法定外公共物G側の角点の内、図の左側の角点から法定外公共物Gを挟んでいる私有地Aの角点の内、図の左側の角点とを結ぶ分割線、及び法定外公共物Gと私有地Dとの境界線の4線分で囲まれた法定外公共物G内の領域を、私有地Dと同一所有者δの所有として評価情報の生成処理を行う。
【0036】
一方、図5に破線で囲まれたVIの領域、すなわち私有地Eの法定外公共物G側の角点と、私有地Aの角点の内、図の右側の角点の処理については、以下に説明する例外処理が適用されてもよい。
【0037】
図6には、図5において破線で囲まれたVIの領域の拡大図が示される。図6を使用して、分割線生成部30が法定外公共物に分割線を生成する場合の例外処理を説明する。
【0038】
図6では、法定外公共物Gが私有地Aの角部(法定外公共物G側で図の右側の角点の近傍領域)において鉤形に曲がっている。この場合、法定外公共物Gの両側が私有地で挟まれているなら(図5では、私有地Aと私有地Eとに挟まれている)、図3(a)及び図3(d)に示された基準に従って分割線を生成すればよい。すなわち、私有地Eの法定外公共物G側かつ図の右側の角点と、私有地Aの角点の内、最も近い角点である法定外公共物G側かつ図の右側の角点とを結ぶ線分y1を分割線とすればよい。ただし、以下に述べる例外処理を行ってもよい。
【0039】
図6に示されるように、法定外公共物Gは、私有地A、D、Eの他に、私有地B及び道路R等にも接している(挟まれている)。従って、破線で囲まれたVIの領域では、法定外公共物Gの鉤形に曲がった部分(以後、鉤形部Kという)を挟む角点は、上述した私有地A、Eの角点の他、私有地B及び道路Rの角点もある。そこで、分割線生成部30は、私有地Aと同一所有者の所有となる法定外公共物Gの範囲を最大化するように分割線を生成する。すなわち、分割線生成部30は、私有地Bの角点のうち私有地Aとの境界線上にあるものと、これに最も近い道路Rの角点とを結んで分割線y2を生成する。次に、分割線生成部30は、上記分割線y1と分割線y2とを比較し、いずれの分割線を用いた場合に私有地Aと同一所有者の所有となる法定外公共物Gの範囲、すなわち上記いずれかの分割線、法定外公共物Gの中心線g、私有地Aの境界線(所有界)と私有地Aの角点から発生した他の分割線(図5において、私有地Aの左側かつ法定外公共物G側の角点から発生した分割線)からなる4線分で囲まれた領域の面積が大きくなるかを判定し、上記面積が大きくなる方の分割線を選択する。この場合、どの私有地について同一所有者の所有となる法定外公共物Gの範囲を最大化するかは、予め利用者が入力装置16から入力する。あるいは、二つの分割線y1、y2を表示装置18に表示させ、利用者に入力装置16を介して選択させる構成としてもよい。
【0040】
また、上記分割線y2が生成された場合には、私有地Eと同一所有者の所有となる法定外公共物Gの範囲には鉤形部Kまで含まれる。すなわち、法定外公共物Gの中心線gと私有地Eの境界線(所有界)との間の領域に法定外公共物Gの中心線gと道路Rの境界線との間の領域を加えた範囲が私有地Eと同一所有者の所有となる。一方、上記分割線y1が生成された場合には、私有地Eと同一所有者の所有となる法定外公共物Gの範囲には鉤形部Kは含まれない。
【0041】
以上の結果、評価部32は、法定外公共物Gの中心線g、私有地Dと私有地Eとの間の角点から法定外公共物Gの中心線gに生成した分割線、上記分割線y1または分割線y2、及び法定外公共物Gと私有地Eとの境界線の4線分で囲まれた法定外公共物G内の領域を、私有地Eと同一所有者εの所有として評価情報の生成処理を行う。なお、分割線y1を採用する場合には、道路Rと法定外公共物Gとの境界も上記法定外公共物G内の領域を決定する処理に使用される。また、上記中心線gに対して私有地D及び私有地Eの反対側にある法定外公共物G内の領域は、私有地Aと同一所有者αの所有として評価情報の生成処理を行う。
【0042】
図5に戻り、法定外公共物Gの内、同一人(β)の私有地Bに挟まれた領域は、図3(b)に示された基準に従って分割線生成部30が法定外公共物Gに分割線を生成する。この結果、私有地Bの角点のうち、法定外公共物Gを挟んでいる四つの角点から、それぞれ最も近い角点同士を結ぶ線分を生成し、この線分を法定外公共物Gの分割線とする。この場合、図6における分割線y2で法定外公共物Gが分割されている。これは、図5に示された二つの私有地Bのうち、図の下側の私有地Bの左側の角点が、道路Rの角点と一致しているからである。また、法定外公共物Gは中心線gで分割しない。この結果、評価部32は、発生された分割線で分割された法定外公共物Gを私有地Bと同一所有者βの所有として評価情報の生成処理を行う。
【0043】
なお、この場合の分割線は、分割線y2には限定されない。例えば、分割線y2の起点となっている図の下側の私有地Bの左側の角点(道路Rの角点)と、これに最も近い私有地Aの角点(分割線y1の起点となっている)とを結んで分割線を生成してもよい。また、上記分割線y1により法定外公共物Gを分割してもよい。この場合には、上記鉤形部Kは、中心線gで分割せず、全て私有地Bと同一所有者βの所有としてもよいし、中心線gで分割したいずれか一方の領域のみβの所有としてもよい。
【0044】
また、法定外公共物Gの内、私有地Cと公有地Fとで挟まれた領域は、図3(c)に示された基準に従って分割線生成部30が法定外公共物Gに分割線を生成する。この結果、私有地Cと公有地Fの間の角点の内、それぞれ図の左側の角点同士、及び図の右側の角点同士が、法定外公共物Gを挟んでいる角点の内最も近い角点同士の関係となるので、これらの角点の間で線分を生成し、この線分を法定外公共物Gの分割線とする。この結果、評価部32は、法定外公共物Gを中心線gで分割せず、分割線で分割された領域全てを私有地Cと同一所有者γの所有として評価情報の生成処理を行う。
【0045】
以上の処理の結果、図5に示される法定外公共物Gが、分割線生成部30により生成された分割線により分割される。
【0046】
次に、評価部32は、上記分割線により分割された法定外公共物Gと、分割後の法定外公共物Gが境界を接する私有地とを合わせた土地について評価情報を生成する。具体的には、評価部32は、図4図5に示された路線価に基づいて、各土地の評価額単価を算出し、評価情報とする。この場合、評価部32は、上記分割後の法定外公共物Gと私有地とを合わせた土地の形状が整形地(例えば矩形の土地)となるか不整形地(例えば三角形の土地や旗竿地等)となるか、あるいは道路に沿接する土地となるか否かを判定して評価額単価を算出するのが好適である。上記土地の形状は、属性抽出部28が発生したポリゴンデータにより判定することができる。なお、評価部32が評価額単価を算出する際には、属性抽出部28が発生したポリゴンデータにより、私有地及び分割された法定外公共物Gの面積を求め、例えば法定外公共物Gの譲渡価額を決定する構成としてもよい。上記私有地及び分割された法定外公共物Gの面積、形状、道路沿接の有無等は、対象地域情報取得部26が取得する対象地域情報に予め含ませていてもよい。
【0047】
また、出力部34は、上述したように、評価部32が生成した評価情報等を表示装置18等に出力し、利用者に提示する。この場合、予め定めた優先順位に基づいて出力してもよい。優先順位の例としては、私有地と法定外公共物Gとが同一の所有者の所有となったときの評価額単価が高くなる図3(b)の場合を第一優先とし、図3の他の場合は私有地と法定外公共物Gとが同一の所有者の所有となったときの評価額単価が高い順、または私有地と法定外公共物Gとが同一の所有者の所有となったときの私有地評価額単価の上昇額の大きい順等を挙げることができる。
【0048】
図7には、実施形態にかかる法定外公共物の処分案作成支援装置の動作例のフロー図が示される。図7において、対象地域情報取得部26が、ディスク、USBメモリ等の適宜な記憶手段またはネットワーク等の通信手段を介して法定外公共物を含む対象地域の土地の情報(対象地域情報)を取得すると(S1)、属性抽出部28が、上記対象地域情報に基づいて上述した対象地域内の土地の属性を抽出する(S2)。この際、所有界で分割された私有地、公有地及び法定外公共物の形状を表すポリゴンデータを発生させてもよい。
【0049】
次に、分割線生成部30は、上記属性に基づいて、予め定めた基準に従って法定外公共物に分割線を生成する(S3)。どの法定外公共物について分割線の生成処理を実行するかについては、表示装置18に対象地域情報を構成する地図情報(地番図等)を表示させ、利用者が入力装置16から入力した選択指示に基づいて、選択された法定外公共物について分割線の生成処理を実行する。なお、上記選択指示は、例えば予め対象地域情報に含まれていた、または属性抽出部28が生成した法定外公共物の中心線データに基づいて中心線を表示装置18に表示し、この中心線を入力装置16のポインティングデバイス等により選択(クリック動作)することにより入力するのが好適である。分割線生成部30は、上記選択された法定外公共物について、図3(a)、(b)、(c)、(d)及び図6等に示した基準に基づいて分割線を生成する。なお、選択される法定外公共物は一つに限らず、一度に複数選択することもできる。
【0050】
次に、評価部32は、上記分割線で分割された法定外公共物の分割領域毎、及び各所有界で分割された土地毎に評価情報として評価額単価を生成する。また、評価部32は、評価情報として法定外公共物の分割領域毎に処分経費を算出する(S4)。さらに、評価部32は、算出した処分経費と、法定外公共物の譲渡益、租税収入等に基づき、費用回収の早さ(何年で費用回収できるか)等に基づいて、各法定外公共物の処分の要否、処分の順序を決定する。
【0051】
出力部34は、評価部32が出力した評価情報及び処分の要否、処分の順序を、法定外公共物の処分案作成支援のための情報として出力する(S5)。
【0052】
上述した、図7の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。
【符号の説明】
【0053】
10 CPU、12 RAM、14 ROM、16 入力装置、18 表示装置、20 通信装置、22 記憶装置、24 バス、26 対象地域情報取得部、28 属性抽出部、30 分割線生成部、32 評価部、34 出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7