特許第5730811号(P5730811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ IDEC株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5730811-電気機器の取付構造 図000002
  • 特許5730811-電気機器の取付構造 図000003
  • 特許5730811-電気機器の取付構造 図000004
  • 特許5730811-電気機器の取付構造 図000005
  • 特許5730811-電気機器の取付構造 図000006
  • 特許5730811-電気機器の取付構造 図000007
  • 特許5730811-電気機器の取付構造 図000008
  • 特許5730811-電気機器の取付構造 図000009
  • 特許5730811-電気機器の取付構造 図000010
  • 特許5730811-電気機器の取付構造 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730811
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】電気機器の取付構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
   H05K5/02 E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-103236(P2012-103236)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-232493(P2013-232493A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2014年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】新内 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健広
【審査官】 遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−137589(JP,U)
【文献】 実開平01−176984(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/12
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の取付構造であって、
電気機器が支持または収容される取付本体と、
前記取付本体の底面に設けられる案内部により前記底面に沿うスライド方向に移動可能であるスライド部と、
を備え、
前記スライド部が、
本体と、
取付ねじ挿入用の貫通孔と、
前記貫通孔が前記取付本体の側面よりも外側に位置する突出位置に前記スライド部が配置される場合に、前記底面に形成された溝である突出位置係止部と係合するスライド係合部と、
を備え、
前記スライド部において、前記スライド係合部が、前記本体よりも前記底面側に突出する凸状であり、
前記スライド部が前記突出位置に配置されて前記取付本体が取付面に直接取り付けられた状態において、前記底面に垂直な方向における前記スライド係合部の両側が前記突出位置係止部と前記取付面とに直接的に当接することを特徴とする電気機器の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器の取付構造であって、
前記スライド係合部が、片持ち状態にて支持される部位の自由端近傍に形成されることを特徴とする電気機器の取付構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気機器の取付構造であって、
前記底面に設けられるもう1つの案内部により前記底面に沿うとともに前記スライド部の前記スライド方向と相違するスライド方向に移動可能であるもう1つのスライド部をさらに備え、
前記スライド部のスライド方向が、直線方向であり、前記もう1つのスライド部のスライド方向が、前記底面に垂直な軸を中心とする回転方向であり、
前記もう1つのスライド部が、
本体と、
取付ねじ挿入用の貫通孔と、
前記貫通孔が前記取付本体の側面よりも外側に位置する突出位置に前記もう1つのスライド部が配置される場合に、前記底面に形成された溝である突出位置係止部と係合するスライド係合部と、
を備え、
前記もう1つのスライド部において、前記スライド係合部が、前記本体よりも前記底面側に突出する凸状であり、
前記もう1つのスライド部が前記突出位置に配置されて前記取付本体が前記取付面に直接取り付けられた状態において、前記底面に垂直な方向における前記スライド係合部の両側が前記突出位置係止部と前記取付面とに直接的に当接することを特徴とする電気機器の取付構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電気機器の取付構造であって、
前記スライド部が、
前記突出位置に前記スライド部が配置される場合に、前記底面に形成された溝であるもう1つの突出位置係止部と係合するもう1つのスライド係合部をさらに備え、
前記スライド部において、前記もう1つのスライド係合部が、前記本体よりも前記底面側に突出する凸状であり、
前記スライド部が前記突出位置に配置されて前記取付本体が前記取付面に直接取り付けられた状態において、前記底面に垂直な方向における前記もう1つのスライド係合部の両側が前記もう1つの突出位置係止部と前記取付面とに直接的に当接することを特徴とする電気機器の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プログラマブルコントローラ(PLC)や、リレー、タイマー、あるいは、ブレーカー等の電気機器を支持レールや壁面等の取付面に取り付けることが行われている。例えば、特許文献1では、電子機器本体の基台の背面において、同じスライド方向にスライド自在な第1の留め具および第2の留め具が設けられ、支持レールへの取付の際に、第1の留め具の先端が支持レールに係合する位置にロックされる。第1および第2の留め具のそれぞれはねじ孔を有し、ねじ孔が基台から突出する位置にスライドされたとき、その位置でもロックされる。これにより、支持板等への取付も可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−298252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の取付構造において、スライド部である第1および第2の留め具では、片持ち支持するように突設された円弧状の弾性係止片が設けられ、取付本体である基台の背面に形成された係止孔に当該係止片が係止されてスライド部がロックされるが、このようなロック機構では、電気機器に対して大きな外力が作用すると、係止片が係止孔から外れてスライド部のロックが解除されてしまう虞がある。したがって、2つのスライド部に設けられるねじ孔を利用して電気機器を取付面に取り付けた場合に(すなわち、直接取付の場合に)、スライド部のロックが解除されると、電気機器が取付本体と共に取付面から外れる可能性がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、直接取付の場合に、スライド部を取付本体に対して強固に固定することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、電気機器の取付構造であって、電気機器が支持または収容される取付本体と、前記取付本体の底面に設けられる案内部により前記底面に沿うスライド方向に移動可能であるスライド部とを備え、前記スライド部が、本体と、取付ねじ挿入用の貫通孔と、前記貫通孔が前記取付本体の側面よりも外側に位置する突出位置に前記スライド部が配置される場合に、前記底面に形成された溝である突出位置係止部と係合するスライド係合部とを備え、前記スライド部において、前記スライド係合部が、前記本体よりも前記底面側に突出する凸状であり、前記スライド部が前記突出位置に配置されて前記取付本体が取付面に直接取り付けられた状態において、前記底面に垂直な方向における前記スライド係合部の両側が前記突出位置係止部と前記取付面とに直接的に当接する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気機器の取付構造であって、前記スライド係合部が、片持ち状態にて支持される部位の自由端近傍に形成される。
【0007】
請求項に記載の発明は、請求項1または2に記載の電気機器の取付構造であって、前記底面に設けられるもう1つの案内部により前記底面に沿うとともに前記スライド部の前記スライド方向と相違するスライド方向に移動可能であるもう1つのスライド部をさらに備え、前記スライド部のスライド方向が、直線方向であり、前記もう1つのスライド部のスライド方向が、前記底面に垂直な軸を中心とする回転方向であり、前記もう1つのスライド部が、本体と、取付ねじ挿入用の貫通孔と、前記貫通孔が前記取付本体の側面よりも外側に位置する突出位置に前記もう1つのスライド部が配置される場合に、前記底面に形成された溝である突出位置係止部と係合するスライド係合部とを備え、前記もう1つのスライド部において、前記スライド係合部が、前記本体よりも前記底面側に突出する凸状であり、前記もう1つのスライド部が前記突出位置に配置されて前記取付本体が前記取付面に直接取り付けられた状態において、前記底面に垂直な方向における前記スライド係合部の両側が前記突出位置係止部と前記取付面とに直接的に当接する。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の電気機器の取付構造であって、前記スライド部が、前記突出位置に前記スライド部が配置される場合に、前記底面に形成された溝であるもう1つの突出位置係止部と係合するもう1つのスライド係合部をさらに備え、前記スライド部において、前記もう1つのスライド係合部が、前記本体よりも前記底面側に突出する凸状であり、前記スライド部が前記突出位置に配置されて前記取付本体が前記取付面に直接取り付けられた状態において、前記底面に垂直な方向における前記もう1つのスライド係合部の両側が前記もう1つの突出位置係止部と前記取付面とに直接的に当接する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、取付面への直接取付の場合に、スライド部を取付本体に対して強固に固定することができる。
【0011】
請求項の発明では、直接取付の場合に、もう1つのスライド部を取付本体に対して強固に固定することができる。請求項4の発明では、スライド部を取付本体に対してより強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電気機器の取付構造を示す斜視図である。
図2】取付構造の分解図である。
図3】取付構造の斜視図である。
図4】取付構造の底面図である。
図5】取付構造の断面図である。
図6】取付構造の底面図である。
図7】取付構造の断面図である。
図8】比較例の取付構造の底面図である。
図9】比較例の取付構造の断面図である。
図10】取付構造の他の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の一の実施の形態に係る電気機器9の取付構造1を示す斜視図である。電気機器9は、例えばプログラマブルコントローラ(PLC)や、リレー、タイマー、あるいは、ブレーカー等である。取付構造1は、電気機器9が収容される箱状の取付本体2を備え、取付本体2の一の面21(図1中の(−Y)側の面)には、第1スライド部3および第2スライド部4が設けられる。取付本体2、第1スライド部3および第2スライド部4は、例えば樹脂にて形成される。取付構造1の後述の支持レールや取付面への取付では、当該面21が直立するように取り付けられることが多いが(もちろん、他の姿勢にて取り付けられてもよい。)、取付前の取付構造1は、当該面21を鉛直方向の下方に向けて取り扱われることが多いため、以下の説明では、取付本体2の面21を「底面21」と呼ぶ。図1では、底面21におよそ沿うとともに互いに直交する2方向をX方向およびZ方向として示し、底面21におよそ垂直な方向をY方向として示している(以下同様)。図1の取付構造1では、底面21は、X方向およびZ方向に平行な辺を有する矩形の外形を有する。
【0014】
図2は、取付構造1の分解図であり、取付本体2、第1スライド部3および第2スライド部4を分離して、図1の(−Y)側から(+Y)方向を向いて見た様子を示している。取付本体2の底面21には、図2の横方向(X方向)に伸びる溝211(以下、「レール溝211」という。)が形成される。後述するように、取付本体2が長尺の支持レール81(例えば、DINレールであり、図2中にて二点鎖線にて示す。)に取り付けられる際には、当該支持レール81はレール溝211内に嵌め込まれる。図1に示すように、第1スライド部3および第2スライド部4は、レール溝211の(−Z)側および(+Z)側にそれぞれ配置される。すなわち、レール溝211は、第1スライド部3と第2スライド部4との間に形成される。
【0015】
図2に示すように、レール溝211の(+Z)側の縁には(−Z)側に突出する2つのレール係合部22が形成される。当該2つのレール係合部22は、X方向におけるレール溝211の両端部に配置され、取付本体2の支持レール81への取付の際には、レール係合部22とレール溝211の底面(Y方向に垂直な面)との間にて支持レール81の長手方向に沿う一方の縁811が挟持される。すなわち、レール係合部22は、支持レール81の一方の縁811と係合する。
【0016】
取付本体2の底面21には、X方向におけるレール溝211の中央から(−Z)方向に伸びる溝212(第1スライド部3の移動に用いる溝であり、以下、「スライド溝212」という。)が形成される。また、スライド溝212の(−X)側の縁には(+X)側に突出する突起部231が形成され、スライド溝212の(+X)側の縁には(−X)側に突出する突起部231が形成される。第1スライド部3における矩形の薄板状の本体31では、X方向における両端部310が他の部位よりも薄くなっており、両端部310は、スライド溝212の底面(Y方向に垂直な面)と両突起部231との間にて挟持される(図1参照)。このように、2つの突起部231を含む第1案内部23により、取付本体2の底面21に沿うとともにスライド溝212が伸びる方向(すなわち、Z方向であり、以下、「第1スライド方向」という。)に第1スライド部3が移動可能に支持される。なお、第1案内部23にて支持された状態の第1スライド部3の(−Y)側の面は、底面21における溝211,212および後述の凹部213を除く領域とほぼ同一平面上に位置する。
【0017】
図2に示す第1スライド部3の両端部310近傍には、(+Y)側に僅かに突出した部位311が形成され、スライド溝212の底面には、部位311が摺動するための2つの補助溝251が形成される。2つの補助溝251の間には、第1スライド部3を取付本体2に取り付ける際に利用される他の2つの補助溝252が形成され、各補助溝252の(−Z)側には2つの溝253,254がZ方向に並んで形成される。
【0018】
第1スライド部3の本体31はおよそ中央に開口32を有し、開口32の外形は略矩形である。開口32の(−X)側の縁には(+X)側に突出する長尺部材33が形成され、当該長尺部材33の先端は開口32の(+X)側の縁の近傍に配置される。また、開口32の(+X)側の縁には(−X)側に突出する長尺部材33が形成され、当該長尺部材33の先端は開口32の(−X)側の縁の近傍に配置される。このように、第1スライド部3の開口32には、X方向におよそ沿って伸びるとともに、片持ち状態にて支持される板バネ状の2つの長尺部材33がZ方向に並んで形成される。各長尺部材33の自由端近傍にはスライド係合部34が形成され、スライド係合部34は本体31および長尺部材33よりも(+Y)側に僅かに突出する。
【0019】
第1スライド部3を取付本体2に取り付ける際には、図2中にて二点鎖線にて示すように第1案内部23の(+Z)側に第1スライド部3が配置され、第1スライド部3を(−Z)方向に移動することにより、両端部310がスライド溝212の底面と両突起部231との間に挿入される。このとき、各端部310の部位311は補助溝251内を摺動し、各スライド係合部34は補助溝252内を摺動する。スライド係合部34が補助溝252の(−Z)側の端部まで到達すると、第1スライド部3が(−Z)方向に押し込まれることにより、各スライド係合部34が溝253内に配置されて両者が係合し、第1スライド部3の移動が係止される(すなわち、第1スライド部3の位置がロックされる。)。これにより、第1スライド部3が図1に示す位置(以下、「レール係合位置」という。)に配置される。レール係合位置では、第1スライド部3の大部分がY方向において底面21と重なる。以下の説明では、図2に示す溝253を「係合位置係止部253」という。
【0020】
また、第1スライド部3が(−Z)方向にさらに押し込まれると、各スライド係合部34が溝254内に配置されて両者が係合し、第1スライド部3の移動が係止される。これにより、第1スライド部3が図3に示す位置(以下、「第1突出位置」という。)に配置される。第1突出位置では、第1スライド部3の(−Z)側の端部に形成された貫通孔39(以下、「第1貫通孔39」という。)が取付本体2の(−Z)側の側面よりも外側に位置する。第1貫通孔39は後述の取付ねじ挿入用の孔である。以下の説明では、図2に示す溝254を「突出位置係止部254」という。
【0021】
取付本体2の底面21においてレール溝211の(+Z)側には、凹部213が形成され、凹部213内には第2案内部24が設けられる。詳細には、第2案内部24は、凹部213の底面(Y方向に垂直な面)に形成される略円環状の本体241を有する。Y方向に平行な本体241の中心軸240は、底面21におけるZ方向に平行な中心線C1上に配置される。本体241の(−Y)側の端部には、中心軸240に向かって突出する薄板状の2つの突起部242が形成され、2つの突起部242は中心軸240の(+Z)側および(−Z)側に配置される。
【0022】
第2スライド部4は、略円板状の本体41、および、本体41に連続する本体突出部45を有し、本体41の中央には中心孔411が形成される。本体41の(+Y)側の面上において、中心孔411の周囲には円筒部42が形成され、円筒部42の(+Y)側の端部には(+X)方向および(−X)方向に突出する薄板状の2つの突起部43が形成される。Y方向に沿って見た場合において、2つの突起部43は円筒部42の外縁に沿う円弧状である。また、第2案内部24において、本体241の内縁、および、当該内縁に沿う円弧状の2つの突起部242の縁により形成される開口は、上記円筒部42および2つの突起部43の外形に倣った形状である。したがって、当該2つの突起部43および円筒部42は当該開口を介して第2案内部24の本体241の内部に挿入可能である。図2では、2つの突起部43および円筒部42を第2案内部24内に挿入した状態の第2スライド部4の一部を二点鎖線にて示している。
【0023】
また、第2スライド部4は、図2の二点鎖線の位置から中心軸240を中心として反時計回りに回転可能であり、第2スライド部4を回転した状態では、第2スライド部4の突起部43の一部が、第2案内部24の突起部242の(+Y)側に配置される。このように、第2スライド部4は、中心軸240を中心とする回転方向(以下、「第2スライド方向」という。)に移動可能(回転可能)に第2案内部24により支持される。なお、第2案内部24にて支持された状態の第2スライド部4の(−Y)側の面は、底面21における溝211,212および凹部213を除く領域とほぼ同一平面上に位置する。
【0024】
第2スライド部4の本体41の(+Y)側の面において外縁近傍(後述する円弧状の部位412の先端近傍)には、(+Y)側に僅かに突出した部位(図2中にて細い破線にて示す部位)が形成され、当該部位および当該部位とY方向におよそ重なる本体41の部位によりスライド係合部44が構成される。すなわち、後述の円弧状の部位412の先端近傍がスライド係合部44である。第2スライド部4は、2つのスライド係合部44を有し、2つのスライド係合部44は本体41の中心(中心孔411)に対して互いに点対称となる位置に配置される。また、第2案内部24の本体241において(−Y)側の面上には、突起部43および円筒部42を第2案内部24内に挿入した状態の第2スライド部4(図2中にて二点鎖線にて示す第2スライド部4)の2つのスライド係合部44が配置される2つの溝261が形成される(図2では、1つの溝のみに符号261を付している。後述の溝262において同様。)。本体241の当該面上には、中心軸240を中心とする図2の反時計回りにおいて、各溝261に隣接して溝263、溝262および溝264が順に形成される。なお、溝262は、他の溝261,263,264よりも浅い。
【0025】
第2スライド部4を取付本体2に取り付ける際には、既述のように第2スライド部4の突起部43および円筒部42が第2案内部24内に挿入される。このとき、各スライド係合部44(正確には、スライド係合部44の(+Y)側の部位)が溝261内に配置される。そして、第2スライド部4を中心軸240を中心として図2の反時計回りに僅かな角度だけ回転させることにより、スライド係合部44が溝263内に配置されて両者が係合し、第2スライド部4の移動が係止される(すなわち、第2スライド部4の位置がロックされる。)。これにより、第2スライド部4が図1に示す位置(以下、「後退位置」という。)に配置される。後退位置では、第2スライド部4の全体がY方向において底面21と重なる。以下の説明では、図2に示す溝263を「後退位置係止部263」という。
【0026】
第2スライド部4の本体41では、中心孔411を中心とする周方向に沿う円弧状の2つの部位412が形成されており、各部位412は片持ち状態にて本体41に支持される。スライド係合部44は、板バネ状の当該部位412の先端(自由端)に形成され、スライド係合部44が溝261から溝263へと移動する際には、当該部位412が撓むことにより、比較的小さい力にて第2スライド部4を移動(回動)することが可能である(後述する溝263から溝262を介する溝264への移動において同様)。
【0027】
また、第2スライド部4を反時計回りにさらに回転させると、各スライド係合部44が、比較的浅い溝262内を摺動し、溝262の端部まで到達する。第2スライド部4を反時計回りに僅かな角度だけさらに回転させると、スライド係合部44が溝264内に配置されて両者が係合し、第2スライド部4の移動が係止される。これにより、第2スライド部4が図3に示す位置(以下、「第2突出位置」という。)に配置される。以下の説明では、図2に示す溝264を「突出位置係止部264」という。第2突出位置では、第2スライド部4の本体突出部45に形成された貫通孔49(以下、「第2貫通孔49」という。)が取付本体2の(+Z)側の側面よりも外側に位置する。第2貫通孔49は後述の取付ねじ挿入用の孔である。
【0028】
図4は、取付構造1の底面図であり、第1スライド部3および第2スライド部4をそれぞれレール係合位置および後退位置に配置した状態を示している。図5は、図4中の矢印A−Aの位置における断面図であり、第1スライド部3および取付本体2の底面21近傍のみを示している。なお、図5では、Y方向の厚さを実際よりも大きくして各部材を図示している(後述の図7において同様)。
【0029】
取付本体2が支持レール81に取り付けられる際には、第1スライド部3がレール係合位置に配置される。そして、支持レール81の長手方向に沿う一方の縁811をレール係合部22とレール溝211の底面(Y方向に垂直な面)との間に挟みつつ、支持レール81の他方の縁812が第1スライド部3の(+Z)側の端部35に押し当てられる。図5に示すように、第1スライド部3の当該端部35において(−Y)側の面には、(+Z)方向に向かうに従って本体31のY方向の厚さが漸次減少する傾斜面351が形成される。また、既述のように、図4に示す係合位置係止部253内にて係止されたスライド係合部34は、X方向に長い長尺部材33の自由端近傍に設けられる。したがって、支持レール81の縁812を傾斜面351に当てて(+Y)方向に押し込むに従って、長尺部材33が弾性変形しつつ、第1スライド部3の本体31が支持レール81の長手方向に垂直な第1スライド方向(正確には、(−Z)方向)に移動する。
【0030】
そして、支持レール81の縁812が第1スライド部3の端部35の(+Z)側を通過し、レール溝211の底面へと到達すると、第1スライド部3が元の位置(長尺部材33が変形していない位置であり、図4中に示す位置)へと戻り、支持レール81の縁812が第1スライド部3の端部35とレール溝211の底面との間にて挟持される。すなわち、レール係合位置において、第1スライド部3が支持レール81の縁812と係合する。なお、取付本体2の支持レール81への取付では、第2スライド部4は利用されないため、第2貫通孔49が底面21上に位置する後退位置に第2スライド部4が配置され、第2スライド部4の全体が底面21と重なる。したがって、取付本体2の支持レール81への取付の際に、第2スライド部4が取付作業や他の部材の配置の邪魔になることはない。
【0031】
図6は、取付構造1の底面図であり、第1スライド部3および第2スライド部4をそれぞれ第1突出位置および第2突出位置に配置した状態を示している。図7は、図6中の矢印B−Bの位置における断面図であり、第1スライド部3および取付本体2の底面21近傍のみを示している。
【0032】
取付本体2が取付面に直接取り付けられる際には、第1スライド部3が第1突出位置へと引き出され、第2スライド部4が第2突出位置へと引き出される。これにより、第1スライド部3の第1貫通孔39および第2スライド部4の第2貫通孔49が取付本体2の側面よりも外側に位置する。そして、各貫通孔39,49に取付ねじを挿入して当該ねじを取付面に締結することにより、取付本体2が取付面に直接取り付けられる。このとき、図7に示すように、底面21に垂直なY方向における各スライド係合部34の両側が突出位置係止部254と取付面80とに当接する、すなわち、スライド係合部34が突出位置係止部254と取付面80とに挟まれる。これにより、第1スライド部3が取付本体2に対して強固に固定される。同様に、図6の第2スライド部4において、Y方向におけるスライド係合部44の両側が突出位置係止部264と取付面80とに当接することにより、第2スライド部4が取付本体2に対して強固に固定される。
【0033】
また、図1および図2に示すように、第2案内部24の本体241の(+Z)側の部位には板状の補助突起部243が形成され、第2スライド部4の本体突出部45は、第2突出位置に配置された際に、補助突起部243が挿入されるように形成された係合溝451を有する。したがって、第2スライド部4が第2突出位置(図3に示す位置)に配置された状態において、仮に、本体突出部45に対して取付本体2の底面21に垂直な方向の力が作用した場合でも、係合溝451の内面と第2案内部24の補助突起部243(図1参照)とが当接することにより、第2スライド部4の移動を支持する突起部43および第2案内部24の突起部242(図2参照)が破損することが防止される。
【0034】
図8は、比較例の取付構造90を示す底面図であり、図9は、図8中の矢印C−Cの位置における断面図である。比較例の取付構造90では、第1スライド部91および第2スライド部92が共に同じスライド方向(図8中のZ方向)に移動可能である。取付本体93が支持レール81に取り付けられる場合には、第1スライド部91および第2スライド部92が図8中に二点鎖線にて示す位置に配置され、支持レール81の双方の縁812,811とそれぞれ係合する。また、取付本体93が取付面に直接取り付けられる場合には、第1スライド部91および第2スライド部92が図8中に実線にて示す位置に配置され、貫通孔911,921を利用して取付本体93が取付面80に取り付けられる。この場合に、第1スライド部91では、図9に示すように、片持ち状態にて支持される部材の先端に設けられる係合部912が、取付本体93の底面に形成された係止孔932に係合して第1スライド部91が取付本体93に対して固定(ロック)される。また、第2スライド部92も同様の機構にて取付本体93に対して固定される。
【0035】
しかしながら、図9のロック機構では、取付面80と係合部912との間に比較的大きな隙間があるため、取付本体93に対して大きな外力が作用した場合に、図9中に二点鎖線にて示すように、係合部912が係止孔932から外れて第1スライド部91のロックが解除されてしまう虞がある(第2スライド部92において同様)。第1スライド部91および第2スライド部92の双方においてロックが解除されると、取付本体93がスライド方向(Z方向)に大きく移動してしまう。
【0036】
これに対し、取付構造1では、第1スライド部3が第1突出位置に配置されて取付本体2が取付面80に直接取り付けられた状態において、取付本体2の底面21に垂直な方向におけるスライド係合部34の両側が突出位置係止部254と取付面80とにそれぞれ当接する。これにより、取付面80への直接取付の場合に、スライド係合部34が突出位置係止部254から外れることを防止して、第1スライド部3を取付本体2に対して強固に固定することができる。また、第2スライド部4が第2突出位置に配置されて取付本体2が取付面80に直接取り付けられた状態において、取付本体2の底面21に垂直な方向におけるスライド係合部44の両側が突出位置係止部264と取付面80とにそれぞれ当接することにより、第2スライド部4を取付本体2に対して強固に固定することができる。
【0037】
取付面80への直接取付の場合に、それぞれが突出位置係止部254と取付面80とに当接する複数のスライド係合部34を第1スライド部3が有することにより、第1スライド部3を取付本体2に対してより強固に固定することができる。また、それぞれが突出位置係止部264と取付面80とに当接する複数のスライド係合部44を第2スライド部4が有することにより、第2スライド部4を取付本体2に対してより強固に固定することができる。
【0038】
取付構造1では、第1スライド部3における第1スライド方向と、第2スライド部4における第2スライド方向とが相違する。これにより、2つのスライド部3,4の移動により、取付面80への直接取付、および、支持レール81への取付が選択可能な取付構造1において、直接取付の際に、仮に、第1スライド部3および第2スライド部4の双方においてロックが解除された場合でも、取付本体2がいずれかの方向に大きく移動することを防止することができる。換言すると、取付構造1では、取付面80に直接取り付けられた取付本体2がいずれかの方向に大きく移動することが第1案内部23および第2案内部24により防止されるため、スライド係合部34,44と突出位置係止部254,264との係合が解除されることをより確実に防止することができる。
【0039】
また、第2スライド部4における第2スライド方向が、取付本体2の底面21に垂直な中心軸240を中心とする回転方向であることにより、第2スライド部4が第2突出位置に配置された状態において、取付本体2の側面から突出した第2スライド部4の部位近傍に、当該部位へのY方向の力に抵抗する部材(上記の例では、第2スライド部4の係合溝451および第2案内部24の補助突起部243)を設けることが容易に可能となる。
【0040】
取付構造1では、様々な変形が可能である。
【0041】
第1スライド方向および第2スライド方向は、取付本体2の底面21に沿う様々な方向であってよく、例えば、第1スライド部3における第1スライド方向が底面21に垂直な軸を中心とする回転方向とされてもよい。この場合、第1スライド部3において、レール係合位置に配置された状態にてレール溝211側に突出する部位が設けられ、取付本体2の支持レール81への取付の際に、支持レール81の縁812に当該部位が係合する。また、取付本体2の底面21に設けられる第1案内部23および第2案内部24は、上記以外の様々な構造を採用することが可能である。
【0042】
上記実施の形態では、取付本体2の底面21に凹状の係合位置係止部253、突出位置係止部254,264、後退位置係止部263が形成され、凸状の部位を有するスライド係合部34,44がこれらの係止部と係合するが、取付本体2の底面21に凸状の係合位置係止部253、突出位置係止部254,264、後退位置係止部263が形成され、凹状の部位を有するスライド係合部34,44がこれらの係止部と係合してもよい。また、比較例の係合部912において、図10に示すように(−Y)側に突出する部位99が付加され、Y方向における係合部912(スライド係合部)の一端が係止孔932に(直接的に)当接した状態で、係合部912の他端である当該部位99が取付面80に当接することにより、スライド部が取付本体に対して強固に固定されてもよい。この場合に、係止孔932に当接する部位と、取付面80に当接する部位とが、取付本体の底面に沿う方向に僅かにずれた位置に配置されてもよい。また、部位99が、係合部912や取付面80とは別部材として設けられてもよく、この場合、独立した部材を介して、係合部912が取付面80に対して間接的に当接する。以上のように、取付面80への直接取付の場合に、第1スライド部および第2スライド部を取付本体に対して強固に固定するには、スライド係合部の両側が、突出位置係止部と取付面とに直接的または間接的に当接することが重要である。
【0043】
例えば、図2の(−X)側の係合位置係止部253および(+X)側の突出位置係止部254が省略され、第1スライド部3がレール係合位置に配置される際に一方のスライド係合部34のみが係合位置係止部253と係合し、第1スライド部3が第1突出位置に配置される際に他方のスライド係合部34のみが突出位置係止部254と係合してもよい。すなわち、第1スライド部3をレール係合位置および第1突出位置にてロックするスライド係合部34は、異なる部材であってもよい。
【0044】
図1の取付構造1では、第2スライド部4は取付本体2の支持レール81への取付に寄与しないため、取付本体2の支持レール81への取付の際における第2スライド部4の位置は任意に決定されてよい。また、第2スライド部4において、後退位置に配置された状態にてレール溝211側に突出する部位を設け、取付本体2の支持レール81への取付の際に、支持レール81の一方の縁811に当該部位が係合してもよい。この場合、取付本体2の底面21に設けられる図1のレール係合部22は省略可能である。換言すると、取付本体2が支持レール81に取り付けられる際に支持レール81の一方の縁811と係合するレール係合部は、後退位置に配置される第2スライド部4により実現されてもよい。
【0045】
取付構造1において第2スライド部4が省略され、例えば取付本体2の(+Z)側の側面に、貫通孔を有する部位が予め形成されてもよい。ただし、取付構造1の支持レール81への取付の際における取付構造1の占有面積を小さくするという観点では、全体が取付本体2の底面21と重なることが可能な第2スライド部4が設けられることが好ましい。
【0046】
取付構造1における取付本体2は、電気機器9を内部に収容するもの以外に、例えば、電気機器9の一の面が固定されて電気機器9を支持する部材であってもよい。
【0047】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0048】
1 取付構造
2 取付本体
3 第1スライド部
4 第2スライド部
9 電気機器
21 底面
23 第1案内部
24 第2案内部
34,44 スライド係合部
39 第1貫通孔
49 第2貫通孔
80 取付面
254,264 突出位置係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10