(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記油路の開口面積を変更する弁体を備えたバルブ機構として、油路の延長方向に対して略直交方向に移動自在な弁体を設けると共に、この弁体の移動をガイドするバルブハウジングを油路に固定しておく構成が考えられる。この場合、バルブハウジングの側面には油路に連通する開口が形成され、このバルブハウジングの内部で弁体を進退移動させることにより、前記開口の開放と閉鎖とが切り換えられることになる。例えば、電磁ソレノイドの励磁および非励磁を切り換えることによって、バルブハウジングの内部で弁体を前進移動させて前記開口を閉鎖して油路を遮断する状態(閉弁状態)と、弁体を後退移動させて前記開口を開放して油路を連通させる状態(開弁状態)とを切り換える構成が挙げられる。この場合、バルブハウジングは、圧入やネジ締結等の手段によって油路に固定されることになる。
【0006】
しかしながら、この構成にあっては、バルブハウジングの加工誤差や取り付け誤差等が原因で、バルブハウジングの先端面と油路の内壁面との間に隙間が生じてしまって、この隙間からオイルジェットノズル側にオイルが漏れ出してしまう可能性がある。つまり、弁体を前進移動させた前記閉弁状態であっても(弁体によって前記開口を閉鎖した状態であっても)、オイルジェットノズル側にオイルが漏れ出してしまう可能性がある。
図7(b)は、バルブハウジングaの先端面a1と油路bの内壁面b1との間に隙間cが生じている場合における閉弁状態を示す断面図である。このようにバルブハウジングaの先端面a1と油路bの内壁面b1との間に隙間cが生じてしまっている場合には、弁体dによってバルブハウジングaの開口a2を閉鎖しても、前記隙間cからオイルジェットノズル側にオイルが漏れ出してしまうことになる(図中に破線で示す矢印を参照)。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、閉弁状態におけるオイルジェットノズル側へのオイルの漏れを防止することができる内燃機関のオイルジェット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
−発明の解決原理−
前記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、油路の延長方向に対して略直交方向に移動自在にバルブハウジングを備えさせ、このバルブハウジングにスプリングによる油路閉鎖方向の付勢力を付与することにより、閉弁状態にあってはバルブハウジングの先端部分と油路の内壁面との間に隙間を生じさせないようにしている。
【0009】
−解決手段−
具体的に、本発明は、オイルジェット機構に連通する油路を開閉するオイルジェット切り換えバルブを有する内燃機関のオイルジェット装置を前提とする。この内燃機関のオイルジェット装置に対し、前記オイルジェット切り換えバルブに、前記油路の延長方向に対して略直交する方向に延びる挿入孔に挿入され且つこの挿入孔の延長方向に沿って移動自在とされたバルブハウジングを備えさせる。そして、前記オイルジェット切り換えバルブの閉弁時、付勢手段からの付勢力を受けることによって前記バルブハウジングの先端部が前記油路の内壁面に向けて押圧される構成としている。
【0010】
この特定事項により、前記オイルジェット切り換えバルブの閉弁時にあっては、バルブハウジングが付勢手段からの付勢力を受け、このバルブハウジングの先端部が前記油路の内壁面に向けて押圧される。つまり、本解決手段は、バルブハウジングを移動不能に固定するものではなく、このバルブハウジングを移動自在とし、付勢手段からの付勢力によってバルブハウジングの先端部を油路の内壁面に向けて押圧するものとしている。このため、オイルジェット切り換えバルブの閉弁時には、バルブハウジングの先端部と油路の内壁面との間に隙間を生じさせることなく、この両者間のシール性を良好に確保することが可能になってオイルジェット機構側へのオイルの漏れを防止することができる。
【0011】
より具体的な構成として、前記油路に、前記バルブハウジングの先端部が嵌り込む凹陥部を形成している。
【0012】
この構成によれば、付勢手段からの付勢力を受けてバルブハウジングの先端部が前記油路の内壁面に向けて押圧された状態にあっては、このバルブハウジングの先端部が油路の凹陥部に嵌り込むことになる。このため、バルブハウジングの先端部と油路の内壁面との間のシール性をいっそう高く得ることが可能になる。
【0013】
前記付勢手段からの付勢力をバルブハウジングに付与する構成としては以下のものが挙げられる。つまり、前記バルブハウジングの内部に、バルブ本体を進退移動自在に挿入させ、このバルブ本体が前進移動することによって、前記バルブハウジングに形成されている開口を閉鎖して油路を遮断する一方、前記バルブ本体が後退移動することによって、前記開口を開放して油路を連通させる構成とする。そして、前記バルブ本体に、前記付勢手段によって前進移動方向への付勢力を付与し、このバルブ本体が前進移動した際に、このバルブ本体が前記バルブハウジングの内面の一部に当接することにより、前記付勢手段からの付勢力をバルブハウジングに付与する構成としている。
【0014】
この構成によれば、バルブ本体が前進移動することによるオイルジェット切り換えバルブの閉弁時にのみ付勢手段からの付勢力をバルブハウジングに付与して、このバルブハウジングの先端部を油路の内壁面に向けて押圧することになる。つまり、オイルジェット切り換えバルブの閉弁動作に連動してバルブハウジングの先端部を油路の内壁面に向けて押圧することになる。このため、バルブハウジングに付勢力を付与する期間を必要期間のみに設定することが可能になると共に、オイルジェット切り換えバルブの閉弁時に、バルブハウジングの先端部を油路の内壁面に向けて確実に押圧することが可能になる。
【0015】
また、前記バルブハウジングを移動自在とする構成として具体的には、前記挿入孔の内壁面に、この挿入孔の軸心に沿う方向に所定長さ寸法を有する凹部を形成する一方、前記バルブハウジングの外壁面に、前記凹部内に位置し且つこの凹部の内面との間に前記軸心に沿う方向のクリアランスを有する突起を設ける。これにより、前記クリアランスの寸法だけ前記バルブハウジングを前記挿入孔の内部において前記軸心に沿って移動自在としている。
【0016】
この構成によれば、前記挿入孔からバルブハウジングが抜け落ちてしまうことを防止できるだけでなく、このバルブハウジングの移動範囲を制限することができる。このため、バルブハウジングが必要以上に移動してしまって油路でのオイル流れが阻害されてしまうといったことが回避できる。
【0017】
前記オイルジェット切り換えバルブを開閉作動させるための具体構成としては以下のものが挙げられる。つまり、前記バルブハウジングの内部に挿入されたバルブ本体を進退移動させるための油圧を切り換える制御バルブを設ける。また、この制御バルブに第1ポートおよび第2ポートを備えさせる。第1ポートは、オイルポンプから吐出されたオイルをオイルジェット機構に向けて供給するメインオイル通路に連通している。第2ポートは、前記バルブ本体の背圧空間に連通している。そして、前記制御バルブが第1ポートと第2ポートとを連通させる切り換え状態にある場合には、前記背圧空間にメインオイル通路からの油圧が作用することによって前記バルブ本体が前進移動して前記バルブハウジングに形成されている開口を閉鎖することにより油路を遮断する一方、前記制御バルブが第1ポートと第2ポートとを遮断する切り換え状態にある場合には、前記背圧空間に作用する油圧が解除されることによって前記バルブ本体が後退移動して前記開口を開放することにより油路を連通させる構成としている。
【0018】
この構成により、制御バルブの第1ポートと第2ポートとが連通すると、メインオイル通路の油圧が、第1ポートおよび第2ポートを経てバルブ本体の背圧空間に導入される。この背圧空間に導入された油圧および前記付勢手段の付勢力の作用によりバルブ本体が前進移動して油路を閉鎖することになる。その結果、オイルジェット機構に向けてのオイルの供給は停止される。一方、制御バルブの第1ポートと第2ポートとが遮断されると、メインオイル通路の油圧はバルブ本体の背圧空間に導入されず、バルブ本体が後退移動して油路を開放することになる(例えばバルブ本体の先端部に作用する油圧によってバルブ本体が後退移動して油路を開放することになる)。その結果、オイルジェット機構に向けてオイルが供給されることになる。このように制御バルブの切り換え動作に連動してバルブ本体に作用する油圧を切り換えてバルブ本体の進退移動が行われるため、制御バルブの機能としては油路の切り換え機能のみを備えておればよく、比較的小型なものとして実現できる。このため、オイル消費量の比較的多いオイルジェット装置であっても、その小型化を図ることが可能である。
【0019】
また、前記制御バルブに、前記第1ポートと第2ポートとを遮断する切り換え状態にある場合に、前記第2ポートに連通して前記背圧空間のオイルを排出するドレンポートを設けている。
【0020】
これによれば、第1ポートと第2ポートとを遮断させてバルブ本体を後退移動させる際に、このバルブ本体の背圧空間の油圧を下降させることが可能となり、第1ポートと第2ポートとを遮断させるのと略同時にバルブ本体の後退移動が開始されることになり、制御性が良好になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、オイルジェット切り換えバルブの閉弁時、バルブハウジングの先端部を油路の内壁面に向けて押圧するようにしている。このため、バルブハウジングの先端部と油路の内壁面との間のシール性を良好に確保することが可能になってオイルジェット機構側へのオイルの漏れを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、自動車用の多気筒(例えば直列4気筒)ガソリンエンジンに本発明を適用した場合について説明する。
【0024】
−エンジンのオイル供給系統−
図1は、本実施形態に係るエンジン(内燃機関)1のオイル供給系統の概略構成を示す図である。この
図1に示すように、エンジン1は、エンジン本体を構成するシリンダヘッド11およびシリンダブロック12と、このシリンダブロック12の下端部に取り付けられたオイルパン13と、エンジン1の内部潤滑や内部冷却等のためのエンジンオイル(以下、単に「オイル」という場合もある)をエンジン1内で循環させるオイル供給系統2とを備えている。
【0025】
前記エンジン1の内部には、ピストン14、クランクシャフト15、カムシャフト16等の複数の被潤滑部材や被冷却部材が収容されている。
【0026】
前記シリンダブロック12には、4つのシリンダが形成されている。これらシリンダは、気筒配列方向(図中左右方向)に亘って配置されており、その内部に前記ピストン14が図中上下方向に往復移動可能に収容されている。
【0027】
オイル供給系統2は、オイルパン13に貯留されているオイルが、このオイルパン13から吸い出されて前記各被潤滑部材や被冷却部材へ供給され、これら被潤滑部材や被冷却部材からオイルパン13内に還流し得るように構成されている。
【0028】
オイルパン13内の底部近傍には、このオイルパン13の内部に貯留されているオイルを吸い込むための吸込口31aを有するオイルストレーナ31が配置されている。このオイルストレーナ31は、シリンダブロック12に設けられたオイルポンプ32に対し、ストレーナ流路31bを介して接続されている。
【0029】
前記オイルポンプ32は、周知のロータリポンプから構成されており、そのロータ32aは、クランクシャフト15と共に回転するように、このクランクシャフト15と機械的に結合されている。このオイルポンプ32は、シリンダブロック12の外部に設けられたオイルフィルタ33のオイル入口に対し、オイル輸送路34を介して接続されている。また、オイルフィルタ33のオイル出口は、被潤滑部材や被冷却部材に向かうオイル流路として設けられたオイル供給路35と接続されている。なお、オイルポンプ32としては電動オイルポンプであってもよい。
【0030】
前記オイル供給路35を経てオイルが供給されるオイル供給系統2の具体構成について以下に説明する。
【0031】
このオイル供給系統2は、オイルパン13からオイルストレーナ31を介して汲み上げたオイルを、オイルポンプ32によって各被潤滑部材に供給して潤滑油として利用したり、ピストン14等の被冷却部材に供給して冷却油として利用したり、油圧作動機器に供給して作動油として利用したりするようになっている。
【0032】
具体的に、オイルポンプ32から圧送されたオイルは、オイルフィルタ33を経た後、気筒列方向に沿って延びるメインオイルホール(メインギャラリ;メインオイル通路)21に送り出される。このメインオイルホール21の一端側および他端側には、シリンダブロック12からシリンダヘッド11に亘って上方に延びるオイル通路22,23が連通されている。
【0033】
メインオイルホール21の一端側(
図1における左側)に連通されているオイル通路22は、さらに、チェーンテンショナ側通路24と、VVT(Variable Valve Timing)側通路25とに分岐されている。
【0034】
チェーンテンショナ側通路24に供給されたオイルは、タイミングチェーンの張力を調整するためのチェーンテンショナ41の作動油として利用される。一方、VVT側通路25に供給されたオイルは、OCV(Oil Control Valve)用オイルフィルタ42aを経て、VVT用OCV42bおよび可変バルブタイミング機構42,43の作動油として利用される。
【0035】
一方、メインオイルホール21の他端側(
図1における右側)に連通されているオイル通路23は、ラッシュアジャスタ側通路26とシャワーパイプ側通路27とに分岐されている。
【0036】
ラッシュアジャスタ側通路26は、吸気側通路26aと排気側通路26bとに更に分岐されている。吸気側通路26aにあっては、各気筒の吸気バルブに対応して配設されたラッシュアジャスタ44,44,…の給油路に連通され、この給油路を経たオイルがラッシュアジャスタ44の作動油として利用されるようになっている。同様に、排気側通路26bにあっては、各気筒の排気バルブに対応して配設されたラッシュアジャスタ45,45,…の給油路に連通され、この給油路を経たオイルがラッシュアジャスタ45の作動油として利用されるようになっている。
【0037】
なお、このラッシュアジャスタ側通路26は、各カムシャフト16のジャーナル部にもオイルを分岐供給し、この各カムシャフト16とシリンダヘッド11のジャーナル軸受け部との間、および、各カムシャフト16と図示しないカムキャップのジャーナル軸受け部との間の潤滑が行われるようになっている。
【0038】
シャワーパイプ側通路27も、吸気側通路27aと排気側通路27bとに分岐されている。吸気側通路27aにあっては、吸気カムシャフトのカムロブに対応して図示しないオイル散布孔が形成されており、この吸気側通路27aを流れるオイルがオイル散布孔から吸気カムシャフトのカムロブとロッカアームのローラ部との接触部分に向けて散布されることで、この両者の潤滑に寄与するようになっている。同様に、排気側通路27bにあっても、排気カムシャフトのカムロブに対応して図示しないオイル散布孔が形成されており、この排気側通路27bを流れるオイルがオイル散布孔から排気カムシャフトのカムロブに散布されることで、この両者の潤滑に寄与するようになっている。
【0039】
−オイルジェット装置−
前記オイル供給系統2には、ピストン14を冷却するためのオイルジェット装置5が備えられている。以下、このオイルジェット装置5について説明する。
【0040】
図2は、オイルジェット装置5およびその周辺の断面図である。この
図2は、後述するオイルジェット切り換えバルブ8が閉鎖されている状態を示している(オイルジェット切り換えバルブ8が開放されている状態については
図3を参照)。なお、便宜上、
図2および
図3では、後述するOSV7を水平方向(軸線方向を水平方向)に配置させ、油圧センサ105を鉛直方向(軸線方向を鉛直方向)に配置させている。
【0041】
図2に示すようにオイルジェット装置5は、オイルジェット機構51と、このオイルジェット機構51の上流側に設けられたオイルジェット切り換え機構52とを備えている。
【0042】
前記オイルジェット機構51は、各気筒それぞれに対応して配設された複数(本実施形態では4個)のピストンジェットノズル(オイルジェットノズル)6,6,…、および、前記オイルジェット切り換え機構52のオイルジェット切り換えバルブ8が開放状態にある際に、前記メインオイルホール21から流入したオイルをピストンジェットノズル6に向けて供給するオイルジェットギャラリ(油路)53を備えている。
【0043】
一方、オイルジェット切り換え機構52は、前記メインオイルホール21に連通するオイルジェット流路54、このオイルジェット流路54に接続されたOSV(Oil Switching Valve;制御バルブ)7、および、オイルジェット切り換えバルブ8を備えている。
【0044】
以下、オイルジェット機構51およびオイルジェット切り換え機構52それぞれの具体構成について説明する。
【0045】
(オイルジェット機構)
前記オイルジェットギャラリ53は、前記シリンダブロック12の内部に形成されており、上流端が前記オイルジェット切り換え機構52を介してメインオイルホール21に連通可能となっている。また、このオイルジェットギャラリ53の下流側は各気筒に対応して分岐しており、この分岐された油路それぞれの下流端近傍には前記ピストンジェットノズル6が配設されている。これにより、前記オイルジェット切り換え機構52のオイルジェット切り換えバルブ8が開放状態にある際(
図3を参照)には、前記メインオイルホール21からオイルジェット切り換え機構52を経てオイルジェットギャラリ53に向けてオイルが供給されるようになっている(オイルジェット切り換え機構52におけるオイルジェット切り換えバルブ8の開閉動作については後述する)。
【0046】
ピストンジェットノズル6は、本体部61と、この本体部61に取り付けられた管状のノズル62とを備えている。
【0047】
前記本体部61の内部にはチェックボール機構(チェック弁機構)63が収容されている。このチェックボール機構63の構成として具体的には、前記本体部61の内部に、上下方向に貫通する貫通孔61aが形成されている。この貫通孔61aは、その上端開口が前記オイルジェットギャラリ53に連通している。また、この貫通孔61aの内径寸法としては、上側部分が小径(以下、小径部分という)とされ、下側部分が大径(以下、大径部分という)とされている。そして、この小径部分の下端が弁座61bとなっている。
【0048】
この貫通孔61aの内部には、前記弁座61bに当接可能なチェックボール63aと、このチェックボール63aを弁座61bに向けて押圧する圧縮コイルバネで成るスプリング63bとが収容されている。チェックボール63aの外径寸法は、前記貫通孔61aの小径部分の内径寸法よりも大きく、且つ大径部分の内径寸法よりも小さく設定されている。さらに、本体部61の下端には、前記貫通孔61aの下端開口を閉鎖すると共に、スプリング63bの下端が当接するプラグ63cが装着されている。これにより、スプリング63bは、前記弁座61bとプラグ63cとの間で圧縮されている。
【0049】
一方、前記ノズル62は、その内部空間が前記本体部61の貫通孔61aの大径部分に連通していると共に、前記本体部61から略水平方向に延びた後、略鉛直上方に延び、その上端部に、前記ピストン14の裏面に向かう噴射孔が形成されている。
【0050】
この構成により、前記オイルジェットギャラリ53から前記貫通孔61aの上端開口に作用する油圧が所定圧未満である場合には、前記スプリング63bの付勢力によってチェックボール63aが前記弁座61bに当接することで前記貫通孔61aは閉鎖される(チェックボール機構63の閉鎖状態;
図2を参照)。この場合、ノズル62の噴射孔からのオイルジェットは実行されない。
【0051】
一方、前記オイルジェットギャラリ53から前記貫通孔61aの上端開口に作用する油圧が所定圧以上に達すると、前記スプリング63bの付勢力に抗してチェックボール63aが前記弁座61bから離脱して貫通孔61aを開放し(チェックボール機構63の開放状態;
図3を参照)、オイルジェットギャラリ53から貫通孔61aに流入したオイルがノズル62に流れ込む。これにより、ノズル62に流れ込んだオイルがピストン14の裏面に向けて噴射されることになる。このオイルジェットによりピストン14が冷却され、例えば筒内温度の過上昇を抑制してノッキングの発生を防止できるようになっている。なお、チェックボール機構63が開放する油圧の値は、前記スプリング63bのバネ定数が適宜設定されることによって調整される。
【0052】
(オイルジェット切り換え機構)
前記オイルジェット切り換え機構52のオイルジェット流路54は、前記シリンダブロック12の内部に形成されており、上流端が前記メインオイルホール21に連通している。また、このオイルジェット流路54の下流側は、下流端がOSV7に繋がるパイロット流路54aと、前記オイルジェットギャラリ53と略同軸上に配設されたオイルジェット導入油路54bとに分岐されている。
【0053】
前記オイルジェット切り換えバルブ8は、前記シリンダブロック12の内部に形成されたバルブ挿入孔81に収容されている。このバルブ挿入孔81は、前記オイルジェットギャラリ53およびオイルジェット導入油路54bの延長方向に対して略直交する方向に延びており、一端側(図中の上端側)が前記OSV7の内部空間に連通し、他端側(図中の下端側)が前記オイルジェットギャラリ53およびオイルジェット導入油路54bに連通している。
【0054】
このバルブ挿入孔81に収容されているオイルジェット切り換えバルブ8は、
図4(オイルジェット切り換えバルブ8の分解斜視図)にも示すように、バルブハウジング82、バルブ本体83、カラー84、スプリング85を備えている。以下、それぞれについて説明する。
【0055】
<バルブハウジング>
バルブハウジング82は、前記バルブ挿入孔81に挿入された略円筒形状の部材であって、その外径寸法がバルブ挿入孔81の内径寸法に略一致している。このため、このバルブハウジング82はバルブ挿入孔81の内部において、その軸心に沿う方向(
図2における上下方向)に移動自在となっている。また、このバルブハウジング82の長さ寸法(軸心に沿う方向の長さ寸法)は、前記バルブ挿入孔81の長さ寸法(軸心に沿う方向の長さ寸法)と前記オイルジェット導入油路54bの内径寸法との和よりも僅かに短く設定されている。
【0056】
また、このバルブハウジング82の先端部近傍の側面には、このバルブハウジング82の軸心を挟んで対向するオイル導入口82aおよびオイル導出口82bが形成されている。オイル導入口82aは前記オイルジェット導入油路54bに向けて開口している。また、このオイル導入口82aの軸心はバルブハウジング82の軸心に対して直交している。一方、オイル導出口82bは前記オイルジェットギャラリ53に向けて開口している。また、このオイル導出口82bの軸心もバルブハウジング82の軸心に対して直交している。また、このオイル導出口82bの開口面積は、前記オイル導入口82aの開口面積よりも僅かに小さく設定されているとともに、このオイル導出口82bの軸心は、前記オイル導入口82aの軸心よりも僅かに上側に位置している(
図7(a)を参照)。
【0057】
また、前記バルブ挿入孔81の内面における図中の上端近傍位置には円環状の凹部81aが形成されている。この凹部81aの形成位置、高さ寸法および外径寸法は適宜設定されている。
【0058】
一方、前記バルブハウジング82の外周面には、この凹部81aに挿入される円環状の突起82cが形成されている。この突起82cの厚さ寸法(
図2における上下方向の寸法)は、前記凹部81aの高さ寸法(図中の上下方向の寸法)よりも僅かに短くなっている。つまり、これら突起82cと凹部81aとの間には、図中の上下方向にクリアランスCを有しており、バルブハウジング82は、バルブ挿入孔81の内部において、このクリアランスCの寸法だけ軸心に沿う方向(図中の上下方向)に移動自在となっている。
【0059】
また、前記オイルジェット導入油路54bと前記オイルジェットギャラリ53との境界部分の油路の底部には、前記バルブハウジング82の先端部分(下端部分)の形状に略合致する形状の凹陥部55が形成されている。この凹陥部55は略円柱形状であって、その内径寸法は、前記バルブハウジング82の先端部分の外径寸法に略一致しているか、または、この外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。このため、前述した如く上下方向に移動自在となっているバルブハウジング82が下側に向かって移動する場合には、このバルブハウジング82の先端部分が凹陥部55に嵌り込むようになっている。また、この凹陥部55にバルブハウジング82の先端部分が嵌り込んだ状態では、前記バルブハウジング82の突起82cの下面が前記バルブ挿入孔81の凹部81aの底面に当接しているか、または、この両者の間に僅かな隙間が存在するように構成されている。つまり、前記突起82cおよび凹部81aは、バルブハウジング82が下側に向かって移動する際に、このバルブハウジング82の先端部分が凹陥部55に嵌り込む位置までバルブハウジング82の移動を許容する前記クリアランスCを有するように形成されている。
【0060】
さらに、
図7(a)にも示すように、バルブハウジング82の先端部には開口82dが形成されている。この開口82dの内周縁には、内周側に向かって突出する突部86,87が設けられている。前記オイル導出口82b側に設けられている突部87の高さ寸法(図中のt1)は、前記オイル導入口82a側に設けられている突部86の高さ寸法(図中のt2)よりも僅かに長く設定されている。また、このオイル導出口82b側に設けられている突部87の内縁上端部にはテーパ面87aが形成されており、後述するバルブ本体83の閉鎖状態では、このテーパ面87aにバルブ本体83の先端部が当接するようになっている。なお、前記オイル導出口82b側の突部87の形成範囲としては、バルブハウジング82の全周囲に対して1/3〜1/4程度の範囲に設定されている。この範囲はこれに限定されるものではなく、後述するように、スプリング85の付勢力がバルブ本体83を介してバルブハウジング82に確実に伝達される面積(前記テーパ面87aの面積)が確保される範囲であればよい。
【0061】
<バルブ本体>
バルブ本体83は、前記バルブハウジング82の内部に挿入される部材であって、
図7(a)に示すように、円筒形状の胴部83aと、この胴部83aの下端に一体形成された弁部83bとを有した有底円筒形状となっている。胴部83aの外径寸法は前記バルブハウジング82の内径寸法に略一致している。このため、このバルブ本体83はバルブハウジング82の内部において、その軸心に沿う方向(図中の上下方向)に移動自在となっている。また、前記弁部83bの構成としては、前記胴部83aの外径寸法に一致する外径を有する基部83cと、この基部83cの下端に連続し、この基部83cよりも小径の先端部83dとを備えている。また、この先端部83dの外径寸法は、前記バルブハウジング82の先端部に形成されている前記開口82dの内径寸法よりも大径となっており、前述した如く、バルブ本体83の閉鎖状態では、この弁部83bの先端部83dが、前記バルブハウジング82におけるオイル導出口82b側に設けられている突部87のテーパ面87aに当接する構成となっている。また、この弁部83bの先端部83dが前記オイル導出口82b側の突部87のテーパ面87aに当接した状態にあっては、弁部83bの先端部83dと前記オイル導入口82a側の突部86との間に隙間が生じており、この弁部83bの先端部83dに前記メインオイルホール21およびオイルジェット導入油路54bの油圧が作用する構成となっている。この油圧は、弁部83bの先端部83dに対して垂直方向に作用して、前記バルブ本体83を後退移動(図中の上方へ移動)させる力として作用することになる。
【0062】
<カラー>
カラー84は、前記バルブハウジング82の内部に挿入される円筒形状の部材であって、その外径寸法はバルブハウジング82の内径寸法に略一致している。また、このカラー84の下端部には、前記スプリング85の上端縁が当接するスプリング座84aが形成されている。また、このカラー84の上端面は、前記バルブ挿入孔81の上端面に当接されている。
【0063】
<スプリング>
スプリング85は、圧縮コイルバネで成り、前記バルブ本体83の弁部83bの上面とカラー84のスプリング座84aとの間に圧縮された状態で収容されている。このため、バルブ本体83には、図中下向きの付勢力が付与されている。つまり、このバルブ本体83を前記オイルジェット導入油路54bとオイルジェットギャラリ53との境界部分に向かって前進する方向の付勢力が付与されている。このため、バルブ本体83の背圧とオイルジェット導入油路54bの内圧(弁部83bの先端部83dに作用する油圧)とが略同一になった場合には、このスプリング85の付勢力によってバルブ本体83がオイルジェット導入油路54b側へ前進移動し、バルブハウジング82のオイル導出口82bを閉鎖することによって、オイルジェット導入油路54bとオイルジェットギャラリ53との間が遮断されることになる(オイルジェット切り換えバルブ8の閉鎖状態;
図2の状態を参照)。一方、オイルジェット導入油路54bの内圧(弁部83bの先端部83dに作用する油圧)が、バルブ本体83の背圧とスプリング85の付勢力との和よりも高くなった場合には、このスプリング85の付勢力に抗してバルブ本体83がオイルジェット導入油路54bから後退する方向に移動し(バルブ挿入孔81の内部に引き込まれ)、バルブハウジング82のオイル導出口82bを開放することによって、オイルジェット導入油路54bとオイルジェットギャラリ53との間が連通されることになる(オイルジェット切り換えバルブ8の開放状態;
図3の状態を参照)。
【0064】
<OSV>
前記OSV7は、ケーシング71内にプランジャ72が往復移動可能に収容されており、電磁ソレノイド77の通電/非通電に伴うプランジャ72の往復移動によってオイルの流路を切り換えるようになっている。
【0065】
具体的に、前記ケーシング71には、油圧導入ポート(第1ポート)71a、バルブ圧力ポート(第2ポート)71b、および、ドレンポート71cが形成されている。前記油圧導入ポート71aは、ケーシング71の先端面に設けられ、前記パイロット流路54aに連通している。バルブ圧力ポート71bは、ケーシング71の側面(
図2における下面)に設けられ、前記バルブ挿入孔81に連通している。ドレンポート71cは、前記バルブ圧力ポート71bの形成位置よりも基端側(電磁ソレノイド77側)におけるケーシング71の側面に設けられ、図示しないクランクケースに繋がるドレン油路12aに連通している。
【0066】
また、このケーシング71内における前記油圧導入ポート71aおよびバルブ圧力ポート71bに対応する位置には、チェックボール73が収容されている。このチェックボール73は、その位置によって、前記油圧導入ポート71aとバルブ圧力ポート71bとを連通させ、且つこれら油圧導入ポート71aおよびバルブ圧力ポート71bをドレンポート71cから遮断するバルブ閉位置(
図2の状態を参照)と、前記バルブ圧力ポート71bとドレンポート71cとを連通させ、且つこれらバルブ圧力ポート71bおよびドレンポート71cを油圧導入ポート71aから遮断するバルブ開位置(
図3の状態を参照)との間で移動可能となっている。
【0067】
具体的に、チェックボール73の収容位置に対して油圧導入ポート71a側にはストッパ74が固定されている。このストッパ74は、前記油圧導入ポート71aとケーシング71の内部(チェックボール73の収容空間)とを連通する油圧導入孔74aを有している。この油圧導入孔74aの内径寸法は前記チェックボール73の外径寸法よりも小さく設定されている。このため、チェックボール73がストッパ74から後退した位置にある場合には、
図2に示すように、前記油圧導入孔74aが開放されることになり、前記油圧導入ポート71aとバルブ圧力ポート71bとが連通することになる。一方、チェックボール73がストッパ74に向けて移動してストッパ74に当接した場合には、
図3に示すように、前記油圧導入孔74aが閉鎖されることになり、前記油圧導入ポート71aとバルブ圧力ポート71bとが遮断されることになる。
【0068】
また、チェックボール73の収容位置に対してドレンポート71c側にはバルブシート75が固定されている。このバルブシート75は、前記ドレンポート71cとケーシング71の内部(チェックボール73の収容空間)とを連通するドレン孔75aを有している。このドレン孔75aの内径寸法は前記チェックボール73の外径寸法よりも小さく設定されている。このため、チェックボール73がバルブシート75から後退した位置にある場合には、
図3に示すように、前記ドレン孔75aが開放されることになり、前記バルブ圧力ポート71bとドレンポート71cとが連通することになる。一方、チェックボール73がバルブシート75に向けて移動してバルブシート75に当接した場合には、
図2に示すように、前記ドレン孔75aが閉鎖されることになり、前記バルブ圧力ポート71bとドレンポート71cとが遮断されることになる。
【0069】
また、前記プランジャ72は、圧縮コイルバネで成るスプリング76によって前記チェックボール73側に向かう付勢力が付与されていると共に、電磁ソレノイド77によって駆動するようになっている。つまり、電磁ソレノイド77に電圧が印加されていないときには、
図3に示すように、前記スプリング76の付勢力によってプランジャ72がケーシング71内において図中左側に前進移動している。この状態がOSV7のOFF状態である。一方、電磁ソレノイド77に電圧が印加されたときには、
図2に示すように、前記スプリング76の付勢力に抗してプランジャ72がケーシング71内において図中右側に後退移動している。この状態がOSV7のON状態である。電磁ソレノイド77への電圧の印加および非印加はECU100(
図5を参照)によって制御される。
【0070】
前記OSV7のON状態では、
図2に示すように、プランジャ72がチェックボール73を押圧することなく、このチェックボール73が前記パイロット流路54aからの油圧を受けることによりストッパ74から後退してバルブシート75に当接した位置となり、前記油圧導入ポート71aとバルブ圧力ポート71bとが連通する。これにより、バルブ挿入孔81に前記メインオイルホール21からパイロット流路54aを経た油圧が導入されることになる。この場合、オイルジェット切り換えバルブ8のバルブ本体83の先端面および背面それぞれにメインオイルホール21からの油圧が作用しているため、このバルブ本体83は、その背面側に設けられたスプリング85の付勢力によってオイルジェット導入油路54b側に向けて移動する(図中の下側に移動する)。このバルブ本体83の移動に伴い、このバルブ本体83がバルブハウジング82のオイル導出口82bを閉鎖すると共に、このバルブ本体83の先端部83dの外縁部が、バルブハウジング82におけるオイル導出口82b側の突部87のテーパ面87aに当接する。この当接により、バルブハウジング82も前記スプリング85からの付勢力を受けることになり、バルブハウジング82は前記凹陥部55に向かって前進移動して、
図7(a)に示すように、バルブハウジング82の先端部が凹陥部55に嵌り込むことになる。これにより、オイルジェット導入油路54bの下流端はオイルジェット切り換えバルブ8によって閉鎖された状態となり、オイルジェット機構51のオイルジェットギャラリ53にはオイルが供給されず、オイルジェットが停止される。
【0071】
一方、前記OSV7がOFF状態になると、
図3に示すように、前記スプリング76の付勢力を受けてプランジャ72が前進移動してチェックボール73を押圧する。これにより、チェックボール73がバルブシート75から後退してストッパ74に当接した位置となり、前記バルブ圧力ポート71bとドレンポート71cとが連通する。これにより、バルブ挿入孔81のオイルがバルブ圧力ポート71bおよびドレンポート71cからドレン油路12aを経てクランクケース内にドレンされる。これによりバルブ挿入孔81の油圧が急速に下降する。また、オイルジェット切り換えバルブ8のバルブ本体83の先端面にはメインオイルホール21からの油圧が作用しているため、このオイルジェット切り換えバルブ8は、その背面側に設けられたスプリング85の付勢力に抗してバルブ挿入孔81の内部に向けて移動する(図中の上側に移動する)。このバルブ本体83の移動に伴い、このバルブ本体83がバルブハウジング82のオイル導出口82bを開放することになり、前記オイルジェット導入油路54bとオイルジェットギャラリ53とが連通されてオイルジェット機構51のオイルジェットギャラリ53にオイルが供給される。そして、エンジン回転数の上昇などに伴って、このオイルジェットギャラリ53に供給されるオイルの油圧が所定値に達すると前記ピストンジェットノズル6のチェックボール機構63が開放し、オイルジェットが実行されてピストン14が冷却されることになる。
【0072】
このようにオイルジェット切り換え機構52では、OSV7の切り換え動作に連動してバルブ挿入孔81内部の油圧を切り換えてオイルジェット切り換えバルブ8の開閉が行われるため、このOSV7は、給油路の切り換え機能のみを備えておればよく、比較的小型なものとして実現できる。これによりオイルジェット切り換え機構52の小型化が図られている。また、オイルジェット切り換えバルブ8を後退移動させる際に、バルブ挿入孔81の油圧を下降させるようになっているため、OSV7の切り換えと略同時にオイルジェット切り換えバルブ8の後退移動が開始されることになり、制御性が良好になっている。
【0073】
このピストン14の冷却は、エンジン1の燃焼行程におけるノッキングの発生を防止することを主な目的としている。このため、基本的には、エンジン1の暖機中などにあってはピストン14を冷却する要求は低く、エンジン1の暖機完了後(特に、暖機完了後の高負荷運転域や高回転域)にはピストン14を冷却する要求が高くなる。このため、例えば、エンジン1の冷間始動の初期時には、冷却水温度が比較的低いため、ピストン14を冷却する要求は低く、前記OSV7がON状態となって、オイルジェットは停止される。また、エンジン1の暖機完了後の所定運転域(高負荷運転域や高回転域)においては、前記OSV7がOFF状態となって、オイルジェットギャラリ53にエンジンオイルが供給され、各ピストンジェットノズル6,6,…からピストン14,14,…の裏面側に向けてエンジンオイルが噴射される。
【0074】
−OSVの制御系−
図5は、前記OSV7に係る制御系を示すブロック図である。ECU100は、エンジン1の運転制御などを実行する電子制御装置であって、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびバックアップRAMなどを備えている。
【0075】
ROMには、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMはCPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMはエンジン1の停止時などにおいて保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0076】
前記OSV7に係る制御系にあっては、ECU100に複数のセンサが接続されている。具体的には、エンジン1の出力軸であるクランクシャフト15が所定角度だけ回転する度にパルス信号を発信するクランクポジションセンサ101、吸入空気量を検出するエアフロメータ102、アクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度を検出するアクセル開度センサ103、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ104、および、前記メインオイルホール21の内部の油圧を検出する油圧センサ105などが接続されており、これらセンサ101〜105からの信号がECU100に入力されるようになっている。前記油圧センサ105は
図1および
図2にも示すように前記メインオイルホール21に取り付けられ、このメインオイルホール21内部の油圧を検出する。
【0077】
なお、このECU100は、前記各センサ以外に、周知のセンサとして、油温センサ、スロットル開度センサ、車輪速センサ、シフトポジションセンサ、ブレーキペダルセンサ、吸気温センサ、A/Fセンサ、O
2センサ、カムポジションセンサ等(何れも図示省略)が接続されており、これらセンサからの信号も入力されるようになっている。
【0078】
そして、ECU100は、各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1の各種アクチュエータ(スロットルモータ、インジェクタ、イグナイタ等)の制御のほか、前記OSV7の開閉制御(オイルジェット制御)を行うようになっている。
【0079】
そして、前記オイルジェット装置5によるオイルジェットの切り換え制御としては、所定のオイルジェット停止条件が成立している期間中にあっては、前記OSV7がONとされてオイルジェットを停止するようにしている。このオイルジェット停止条件は、例えばエンジン回転速度が所定速度以下であり且つエンジン負荷が所定値以下である場合に成立する。
【0080】
図6は、前記ECU100のROMに記憶されたオイルジェット実行マップを示している。このオイルジェット実行マップでは、エンジン回転速度およびエンジン負荷をパラメータとして、オイルジェット実行領域とオイルジェット停止領域とが設定されている。つまり、エンジン回転速度が図中のNe1以下であり且つエンジン負荷が図中のKL1以下である場合には、エンジン運転領域がオイルジェット停止領域にあるとして、ECU100からオイルジェット停止信号が出力され、前記OSV7がONとされてオイルジェットを停止する。これに対し、エンジン回転速度が図中のNe1を超えている場合や、エンジン負荷が図中のKL1を超えている場合には、エンジン運転領域がオイルジェット実行領域にあるとして、ECU100からオイルジェット実行信号が出力され、前記OSV7がOFFとされてオイルジェットを実行する。
【0081】
なお、前記エンジン回転速度Ne1およびエンジン負荷KL1の値としては実験またはシミュレーションによって設定されている。例えば、エンジン1の燃焼行程においてノッキングが発生しない範囲であって且つピストン14の温度が適切に維持されるように(ピストン14を冷却し過ぎないように)各値は設定されている。
【0082】
そして、所定のオイルジェット停止条件が成立して、ECU100からオイルジェット停止信号が出力されている場合、前述した如く、前記OSV7がONとされ、
図7(a)に示すように、バルブ本体83はスプリング85の付勢力によってオイルジェット導入油路54b側に向けて移動する(図中の下側に移動する)。このバルブ本体83の移動に伴い、このバルブ本体83がバルブハウジング82のオイル導出口82bを閉鎖すると共に、このバルブ本体83の先端部83dの外縁部が、バルブハウジング82におけるオイル導出口82b側の突部87のテーパ面87aに当接する。この当接により、バルブハウジング82も前記スプリング85からの付勢力を受けることになり、バルブハウジング82は前記凹陥部55に向かって前進移動して、バルブハウジング82の先端部が凹陥部55の底面に向けて押圧されることになる。このため、このバルブハウジング82の先端面と凹陥部55の底面との間のシール性が良好に確保され、このバルブハウジング82の先端面と凹陥部55の底面との間からピストンジェットノズル6側にオイルが漏れ出してしまうことが防止される。
【0083】
このように、オイルジェット切り換えバルブ8の閉弁状態にあっては、ピストンジェットノズル6側へのオイル漏れが防止され、オイル消費量の削減を図ることができる。また、ピストンジェットノズル6からの無駄なオイルジェットが禁止されることにより、オイルによる燃料希釈を抑制できると共に、ピストン14を必要以上に冷却してしまうことが抑制されてPN(Particle Number;スモーク)の低減を図ることもできる。
【0084】
また、本実施形態では、バルブ本体83が前進移動した際に、このバルブ本体83を介してスプリング85の付勢力がバルブハウジング82に付与される構成となっているため、バルブハウジング82に付勢力を付与する期間を必要期間のみに設定することが可能になると共に、オイルジェット切り換えバルブ8の閉弁時に、バルブハウジング82の先端部を凹陥部55の底面に向けて確実に押圧することが可能になる。
【0085】
さらに、バルブハウジング82は、前記クリアランスC(突起82cと凹部81aとの間のクリアランスC)だけ軸心に沿う方向に移動自在となっているため、このバルブハウジング82の抜け止めが図れるだけでなく、このバルブハウジング82の移動範囲を制限することができる。このため、バルブハウジング82が必要以上に移動してしまって油路でのオイル流れが阻害されてしまうといったことが回避できる。
【0086】
−変形例−
次に、変形例について説明する。この変形例は、バルブハウジング82の構成が前記実施形態のものと異なっている。他の構成および動作は前記実施形態のものと同様であるので、ここではバルブハウジング82の構成についてのみ説明する。
【0087】
図8に示すように、本変形例に係るオイルジェット切り換えバルブ8にあっては、前記バルブハウジング82の先端面にシール材88が装着された構成となっている。このシール材88は、バルブハウジング82の先端面から、このバルブハウジング82の先端部分の側面に亘って接着などの手段によって装着されている。なお、このシール材88は、ゴム製または樹脂製であって、弾性を有する部材であれば特に材質は限定されない。
【0088】
このようにシール材88が装着されたことにより、前記スプリング85の付勢力を受けてバルブハウジング82が下方へ移動した状態では、このバルブハウジング82の先端面と前記凹陥部55との間にシール材88が介在されることになり、このバルブハウジング82の先端面と凹陥部55との間が確実にシールされてピストンジェットノズル6側へのオイル漏れが防止されることになる。
【0089】
−他の実施形態−
以上説明した実施形態および変形例では直列4気筒ガソリンエンジンに本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、気筒数やエンジンの形式(V型や水平対向型等)は特に限定されるものではない。また、ディーゼルエンジンに対しても本発明は適用が可能である。
【0090】
また、前記実施形態および変形例では、オイルジェット切り換え機構52にOSV7を設けていた。本発明はこれに限らず、開度調整可能なOCV(Oil Control Valve)を設けるようにしてもよい。
【0091】
また、前記実施形態および変形例ではコンベンショナル車両(駆動力源としてエンジン1のみを搭載した車両)に本発明を適用した場合について説明したが、ハイブリッド車両(駆動力源としてエンジンおよび電動モータを搭載した車両)に対しても本発明は適用可能である。
【0092】
また、前記実施形態および各変形例では、ピストン14を冷却するためのオイルジェット装置5に本発明を適用した場合について説明したが、シリンダ内壁面を冷却するためのオイルジェット装置に対しても本発明は適用が可能である。
【0093】
また、前記実施形態では、エンジンオイルの供給と非供給とが切り換えられる機器としてオイルジェット装置5を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、カムシャワーやタイミングチェーンジェットに対してエンジンオイルの供給と非供給とを切り換えるものに対しても適用が可能である。つまり、前記シャワーパイプ側通路27に対するエンジンオイルの供給と非供給とを切り換える場合や、図示しないタイミングチェーンジェットに対するエンジンオイルの供給と非供給とを切り換える場合に適用するものである。これらの機器はエンジン回転数が所定回転数以下となり、エンジンオイルの飛散による潤滑が行えなくなる状況においてOSVをOFFにしてオイルジェット切り換えバルブを開放し、これによりエンジンオイルを供給するようにしたものである。