【実施例】
【0026】
(実施例1)
本実施例は、組織移植用の厚い発泡体の調製について説明する。熱可逆性ポリマー溶液を調製した。1,4−ジオキサン/(35/65ポリカプロラクトン/ポリグリコリド)(PCL/PGA)90/10重量比の溶液(Ethicon,Inc.,Somerville,NJ)を、フラスコの中に量り入れた。フラスコを水浴に入れ、70℃で5〜6時間撹拌した。次に、この溶液を、円筒濾紙(特に粗い孔のASTM 170−220タイプ(EC))を使用して濾過し、フラスコに室温で保存した。
【0027】
Kinetics熱システム(FTS Dura Freeze Dryer)(型番TD3B2T5100):Stone Ridge,NY)を用いて実験を行った。棚を12℃の温度に予め冷却した。上で調製したポリマー溶液を、11.4cm(4.5インチ)×11.4cm(4.5インチ)×6.4cm(2.5インチ)成形型に注入した(2.5cmの発泡体に対して溶液30mLを使用した)。成形型は、アルミニウムで作られてテフロンがコーティングされている矩形トラフであった。溶液で充填した成形型を、予め冷却された棚の上に置いた。表1に記載の条件を用いてサイクルを行った。
【表1】
【0028】
ゲル化工程では、棚は1440分の間12℃の温度に維持され、この間に溶液をゲル化させた。棚の温度は、冷凍工程では、冷却速度0.1℃/分で15分間−17℃に設定した。この工程の最後に、ゲル化した溶液が完全に凍結するのを確実にするために、温度を250分間−17℃に維持した。凍結サイクルの最後に、1,4−ジオキサンを昇華させるための乾燥工程を開始した。第1工程では、棚の温度を−17℃に維持したまま、133.3Pa(1000mTorr)で真空を適用した。これらの条件は600分に設定された。第4工程で二次乾燥を実施して、あらゆる残留ジオキサンを除去した。まず、2.5℃/分の加熱速度で温度を−7℃まで上昇させて300分間保持し、真空を13.3Pa(100mTorr)に設定した。次に、温度を5℃まで上昇させ、13.3Pa(100mTorr)の真空レベルで300分間保持した。第三段階では、温度を20℃まで上昇させ、100の真空レベルで150分間保持した。二次乾燥工程の最終段階では、凍結乾燥機を室温にし、13.3Pa(100mTorr)で150分間保持した。この工程の最後に、サイクルを停止し、真空状態を解除した。厚い発泡体を成形型から取り出し、試料を走査電子顕微鏡(SEM)用に提供した。
図1、
図2、及び
図3は、厚い発泡体試料の底部断面、中央断面、及び上部断面を示している。SEM画像は、スキャフォールドの断面全体にわたって均一な多孔性が実現されたことを示した。凍結乾燥後に得られた最終厚さは約2.2cmであった。細孔構造は、その形態及び孔径の観点から見て、発泡体構造の厚さ全体にわたって均一であった。
【0029】
(実施例2)
熱可逆性ポリマー溶液を、実施例1に記載の通りに、35/65 PCL/PGA及び1,4−ジオキサンから調製した。11.4cm(4.5インチ)×11.4cm(4.5インチ)×6.4cm(2.5インチ)の成形型(テフロンでコーティングされたアルミニウム成形型)に330mLのポリマー溶液を充填して厚さ約2.5cmの発泡体を調製し、この成形型を12℃の温度まで予め冷却された冷凍乾燥棚(FTS Dura Freeze Dryer)の上に置いた。表2は凍結乾燥工程について説明している。この実験では、乾燥工程の第1工程において、棚の温度を0.1℃/分の遅い勾配速度で−17℃まで低下させた。
【表2】
【0030】
厚い乾燥した発泡体を成形型から取り外した。細孔を評価するために、この発泡体からSEM分析用の試料を切断した。上部、中央、及び底部表面のSEM画像を撮像した。この場合もやはり、SEM画像は、実施例1で調製された厚い発泡体と同様の均一な細孔形態を示した。
【0031】
(実施例3)
熱可逆性ポリマー溶液を、95/5ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLA/PGA)及び1,4−ジオキサンを使用して、実施例1の方法に従って調製した。11.4cm(4.5インチ)×11.4cm(4.5インチ)×6.4cm(2.5インチ)の成形型(テフロンでコーティングされたアルミニウム成形型)に330mLのポリマー溶液を充填して厚さ約2.5cmの発泡体を調製し、この成形型を12℃の温度まで予め冷却された冷凍乾燥棚(FTS Dura Freeze Dryer)の上に置いた。表4は凍結乾燥サイクルについて説明している。この実験では、凍結サイクルの第2工程において、棚の温度を0.1℃/分の遅い勾配速度で−17℃まで低下させた。
【表3】
【0032】
厚い乾燥した発泡体を成形型から取り外した。細孔を評価するために、SEM特性解析用の試料をこの発泡体から切断した。上部、中央、及び底部断面のSEM画像をスキャフォールド用に撮像した。この場合もやはり、発泡体形態は実施例1で調製された発泡体と同様であった。
【0033】
(実施例4)
熱可逆性ポリマー溶液を、実施例1に記載の通りに、35/65 PCL/PGA及び1,4−ジオキサンから調製した。5.1cm(2インチ)×5.1cm(2インチ)×1.9cm(3/4インチ)の成形型(テフロンでコーティングされたアルミニウム成形型)に330mLのポリマー溶液で充填して厚さ約1cmの発泡体を調製し、テフロンでコーティングされた直径1ミリメートルのピンを、アルミニウム成形型の上部に規則正しい配列(3×5)で挿入した。ピンの間のスペースは2mmであった。
【0034】
溶液で充填した成形型を、12℃の温度まで予め冷却された冷凍乾燥棚(FTS Dura Freeze Dryer)の上に置いた。表5は凍結乾燥工程サイクルについて説明している。この実験では、凍結サイクルの第2工程において、棚の温度を0.1℃/分の遅い勾配速度で−17℃まで低下させた。
【表4】
【0035】
厚くて乾燥した発泡体を成形型から取り外した。
図4、
図5及び
図6はそれぞれ、厚い発泡体の平面図及び底面図を示している。同様に、様々な発泡体形状及び輪郭、並びに溝等を含む二次発泡体構造を形成するための成形型インサートを使用して、厚さ1cmを超える発泡体を調製してもよい。
【0036】
本発明はその詳細な実施例に関して図示及び説明が行われたが、当業者には、当該形態及び詳細における様々な変更は、本請求発明の主旨及び範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるであろう。
【0037】
〔実施の態様〕
(1) 厚いポリマー発泡体の製造方法であって、
生体適合性生分解性ポリマーと溶媒とを含む熱可逆性ポリマー溶液を提供する工程と、
前記溶液がゲル化するまで前記溶液を冷却する工程と、
凍結乾燥により前記溶媒を除去して、相互接続した細孔を有する厚い発泡体部材を得る工程と、を含む方法。
(2) 前記生体適合性生分解性ポリマーが、ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチラート、ヒドロキシバレラート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、及びこれらのポリマー混合物のホモポリマー及びコポリマーからなる群から選択される脂肪族ポリエステルからなる群から選択されるポリマーを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記溶媒が1,4−ジオキサンである、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記溶液が、冷却の前に成形型に入れられる、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記凍結乾燥が、第1の冷凍工程と、第1の乾燥工程と、少なくとも1つの後続の追加乾燥工程とを含む、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記溶液が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコース、フルクトース、デキストロース、マルトース、ラクトース、スクロース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される浸出性固体を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記溶液が、抗感染薬、ホルモン、鎮痛薬、抗炎症薬、成長因子、化学療法薬、拒絶反応抑制薬、プロスタグランジン、RDGペプチド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される治療薬(thereapeutic agent)を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記発泡体部材が、約1cmを超える厚さを有する、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記細孔が均一形態を有する、実施態様1に記載の方法。
(10) 発泡体部材であって、該発泡体部材が、
相互接続した細孔を有する発泡体部材を含み、該発泡体部材が約1cmを超える厚さを有し、該発泡体部材が、
生体適合性生分解性ポリマーと溶媒とを含む熱可逆性ポリマー溶液を提供する工程と、
前記溶液がゲル化するまで前記溶液を冷却する工程と、
凍結乾燥により前記溶媒を除去して、相互接続した細孔を有する厚い発泡体部材を得る工程と、を含むプロセスにより製造される、発泡体部材。
【0038】
(11) 前記生体適合性生分解性ポリマーが、ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチラート、ヒドロキシバレラート、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオン)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、及びこれらのポリマー混合物のホモポリマー及びコポリマーからなる群から選択される脂肪族ポリエステルからなる群から選択されるポリマーを含む、実施態様10に記載の発泡体部材。
(12) 前記溶媒が1,4−ジオキサンである、実施態様10に記載の発泡体部材。
(13) 前記溶液が、冷却の前に成形型に入れられる、実施態様10に記載の発泡体部材。
(14) 前記凍結乾燥が、第1の冷凍工程と、第1の乾燥工程と、少なくとも1つの後続の追加乾燥工程とを含む、実施態様10に記載の発泡体部材。
(15) 前記溶液が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコース、フルクトース、デキストロース、マルトース、ラクトース、スクロース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される浸出性固体を更に含む、実施態様10に記載の発泡体部材。
(16) 前記溶液が、抗感染薬、ホルモン、鎮痛薬、抗炎症薬、成長因子、化学療法薬、拒絶反応抑制薬、プロスタグランジン、RDGペプチド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される治療薬を更に含む、実施態様10に記載の発泡体部材。
(17) 前記細孔が均一形態を有する、実施態様10に記載の発泡体部材。
(18) 医療機器の製造方法であって、
実施態様10に記載の発泡体部材を提供する工程と、
前記発泡体部材を医療機器に切断する工程と、を含む方法。