【文献】
MARYSE LEMAIRE,INHIBITION OF CYTIDINE DEAMINASE BY ZEBULARINE ENHANCES THE ANTINEOPLASTIC ACTION 以下備考,CANCER CHEMOTHERAPY AND PHARMACOLOGY,ドイツ,SPRINGER,2008年 4月 9日,V63 N3,P411-416,OF 5-AZA-2'-DEOXYCYTIDINE
【文献】
LALIBERTE JOSEE,POTENT INHIBITORS FOR THE DEAMINATION OF CYTOSINE ARABINOSIDE 以下備考,CANCER CHEMOTHERAPY AND PHARMACOLOGY,SPRINGER VERLAG,1992年 1月 1日,V30 N1,P7-11,AND 5-AZA-2'-DEOXYCYTIDINE BY HUMAN CYTIDINE DEAMINASE
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
天然型のアミノプリンヌクレオシドおよびアミノピリミジンヌクレオシドを脱アミノ化する酵素は、人体中において活性抗がん薬を不活性化合物に変換することもできる。例えば、酵素シチジンデアミナーゼは、特定の薬物のアミノ基をヒドロキシル基に直ちに変換し、これらの化合物を不活性にすることができる。シチジンデアミナーゼの阻害剤が、この酵素によって他に脱アミノ化される(かつその結果として非活性化される)薬物とともに同時投与される場合、改善された抗腫瘍活性が達成される。
【0027】
シチジンデアミナーゼ阻害剤(Z)−3,4−ジヒドロ−1−((2R,3R,4S,5R)−テトラヒドロ−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)フラン−2−イル)−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン(本明細書において「ER−876400」;1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン;2H−1,3−ジアゼピン−2−オン,1,3,4,7−テトラヒドロ−1−β−D−リボフラノシル−としても言及される、または化学物質登録75421−11−3によって示されている)は、Liu、P.S.ら、J.Med.Chem.24:662〜666(1981);および米国特許第4,275,057号に記載されている(これらの両方を引用することにより本明細書の一部をなすものとする)。ER−876400を式IXによって示す。
【化2】
(本明細書および他所において、化合物の名称および化合物の構造の間で相違が存在する場合、該化学構造が支配する。)
【0028】
他のシチジンデアミナーゼ阻害剤は、2008年10月16日に出願された国際出願番号PCT/US2008/80163;2008年10月16日に出願された米国特許出願第12/252,961号;および2007年10月16日に出願された米国仮特許出願第60/980,397号において以前に記載されており、これらの全てを引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0029】
本明細書において提供されるのは、シチジンデアミナーゼ(「CDA」)の阻害剤の新規の種類である。本明細書に記載されている通り、これらの化合物は、他の公知化合物の半減期を改善してきた。一実施形態において、本発明の化合物は、ER−876400と比較して模擬胃液中において改善された半減期を有する。これらの化合物は、がん(例えば、脊髄形成異常性症候群、白血病、膵癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌または転移性乳癌)を治療する目的で、デシタビンと組み合わせて投与することができる。
【0030】
定義
以下の定義は、この明細書全体で使用される。
【0031】
本明細書および請求項において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、含有量が特に明記されていない限り、複数の言及を含める。したがって、例えば、「1種の化合物」を含む医薬組成物への言及は、2種以上の化合物を包含することができる。
【0032】
「DACOGEN(登録商標)」または「5−アザ−2’−デオキシシチジン」として知られているブランド薬物中の活性薬剤である「デシタビン」という用語は、下記式を有する化合物を指す。
【化3】
【0033】
「アルキル」または「アルキル基」は、本明細書で使用される場合、完全に飽和した直鎖(即ち、非分枝)、分枝または環式炭化水素鎖を意味する。例として、限定されることなく、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルおよびn−ヘキシルが挙げられる。一部の実施形態において、アルキル鎖は、C
1からC
6の分枝または非分枝炭素鎖である。一部の実施形態において、アルキル鎖は、C
2からC
5の分枝または非分枝炭素鎖である。一部の実施形態において、アルキル鎖は、C
1からC
4の分枝または非分枝炭素鎖である。一部の実施形態において、アルキル鎖は、C
2からC
4の分枝または非分枝炭素鎖である。一部の実施形態において、アルキル鎖は、C
3からC
5の分枝または非分枝炭素鎖である。一部の実施形態において、アルキル鎖は、C
1からC
2の炭素鎖である。一部の実施形態において、アルキル鎖は、C
2からC
3の分枝または非分枝炭素鎖である。「特定の実施形態において、「アルキル」または「アルキル基」という用語は、炭素環としても知られているシクロアルキル基を含める。例示的なC
1〜3アルキル基として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびシクロプロピルが挙げられる。
【0034】
「アルケニル」または「アルケニル基」は、本明細書で使用される場合、1個または複数の二重結合を有する直鎖(即ち、非分枝)、分枝または環式炭化水素鎖を指す。例として、限定されることなく、エテニル、プロペニル、イソ−プロペニル、ブテニル、イソ−ブテニル、tert−ブテニル、n−ペンテニルおよびn−ヘキセニルが挙げられる。一部の実施形態において、アルケニル鎖は、C
2からC
6の分枝または非分枝炭素鎖である。一部の実施形態において、アルケニル鎖は、C
2からC
5の分枝または非分枝炭素鎖である。一部の実施形態において、アルケニル鎖は、C
2からC
4の分枝または非分枝炭素鎖である。一部の実施形態において、アルケニル鎖は、C
3からC
5の分枝または非分枝炭素鎖である。別の態様によると、アルケニルという用語は、2個の二重結合を有する直鎖炭化水素を指し、「ジエン」とも称される。他の実施形態において、「アルケニル」または「アルケニル基」という用語は、シクロアルケニル基を指す。
【0035】
「C
1〜6アルキルエステル」は、各C
1〜6アルキル基が上記で定義した通りであるC
1〜6アルキルエステルを指す。すなわち、アルコール(−OH)のC
1〜6アルキルエステル基は、末端の酸素がアルコール性酸素の位置を占める式−C(=O)O(C
1〜6アルキル)を有する。
【0036】
「C
2〜6アルケニルエステル」は、各C
2〜6アルケニル基が上記で定義した通りであるC
2〜6アルケニルエステルを指す。したがって、アルコール(−OH)のC
2〜6アルケニルエステル基は、末端の酸素がアルコール性酸素の位置を占める式−C(=O)O(C
2〜6アルケニル)を有する。
【0037】
特別に記載がない限り、「−」によって表される2個の末端結合部分を含めて、二価の基がこの化学式によって記載されている場合、この付加は左から右に読まれると理解される。
【0038】
立体化学が描写されていないか、あるいは記述されていないか、または示されていない場合、本明細書において描写されている構造は、該構造の全てのエナンチオマー、ジアステレオマーおよび幾何(または立体配座)形態、例えば、各不斉中心のRおよびS配置、(Z)および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)および(E)立体配座異性体を含めることも意味する。したがって、本化合物の単一の立体化学異性体、ならびにエナンチオマー、ジアステレオマーおよび幾何(または立体配座)の混合物は、本発明の範囲内である。本発明の化合物の任意の互変異性形態は、本発明の範囲内である。
【0039】
追加として、特に記述のない限り、本明細書において描写されている構造は、1個または複数の同位体が濃縮された原子の存在下だけで異なる化合物を含めることも意味する。例えば、重水素またはトリチウムによる水素の置換または
13Cまたは
14C濃縮炭素による炭素の置換を除く本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。こうした化合物は、例えば、バイオアッセイにおける分析手段またはプローブとして有用である。
【0040】
「治療」、「治療する」および「治療すること」は、本明細書に記載されている通りの疾患または障害を回復させること、軽減すること、発病を遅延させること、または進行を阻害することを指す。一部の実施形態において、治療は、1つまたは複数の症状が発症した後に施行することができる。他の実施形態において、治療は、症状が存在しなくても施行することができる。例えば、治療は、症状の発病前に感受性個体に施行することができる(例えば、病状の経歴または遺伝因子もしくは他の感受性因子を考慮するか、または病状の経歴および遺伝因子もしくは他の感受性因子を考慮する)。治療は、症状が消散した後も続けて、それらの再発を軽減または遅延させることができる。疾患、障害または状態への言及における「治療すること」は、(i)疾患、障害もしくは状態を遅らせること、例えば、その発症を抑止すること、または(ii)疾患、障害もしくは状態を緩和し、例えば、臨床症状の後退を引き起こすこと、または(iii)疾患、障害もしくは状態を遅らせること、および疾患、障害または状態を緩和することも指す。
【0041】
疾患、障害または状態への言及における「予防すること」は、疾患、障害または状態を予防すること、例えば、疾患、障害または状態の臨床症状を発症させないことを指す。
【0042】
式I〜VIIIによって示される化合物(または本明細書に記載されているCDA阻害剤、この塩、アルキルエステルもしくはアルケニルエステルのいずれも限定されることなく含める)のいずれかへの言及における「阻害する」「阻害剤」および「阻害」は、CDAの能力を低減してデシタビンを結合させること、それによってCDAの能力を低減してデシタビンを酵素的に脱アミノ化することを指す。いかなる理論によっても束縛されることなく、CDAを阻害するための化合物の能力は、特定のCDAタンパク質の活性部位を結合するための化合物の能力によることがあり、それによって、特定のCDAタンパク質の能力がデシタビンを結合するのを低減する。この文脈における「阻害する」「阻害剤」および「阻害」は、全てのCDAタンパク質がデシタビンを結合するのを完全に防止することを指すわけではない。むしろ、この文脈において、「阻害する」「阻害剤」および「阻害」は、CDAによってデシタビンの酵素的脱アミノ化を低減するCDA阻害剤の能力に関わる。一態様において、本発明の方法は、有効量のCDA阻害剤化合物、即ち本発明の化合物と細胞を接触させ、それによってCDAの活性を阻害することを含む。
【0043】
「患者」または「対象」は、本明細書で使用される場合、動物の対象、好ましくは哺乳動物の対象(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、サルなど)、および特にヒトの対象(男性および女性両方の対象、ならびに新生児、幼児、若年、青年、成人および老人の対象を含める)を意味する。「対象」は、インビトロまたはインビボにおける動物またはヒトの細胞または組織も指すことができる。
【0044】
「組合せ」という用語によって、1つの投与単位形態における固定組合せ、あるいは本発明の化合物および組合せパートナーは、独立に、同時に、あるいは組合せパートナーが共同的、例えば、付加的もしくは相乗的効果、またはそれらの任意の組合せを示すのを特に可能にする時間間隔内で別々に投与することができる組合せ投与のための部分キットのいずれかを意味する。
【0045】
「製薬学的に許容可能な」は、薬理学的もしくは毒物学的な観点から患者に許容できるか、または組成、処方、安定性、患者許容性、生物学的利用能および他の成分との相容性に関する物理的もしくは化学的観点から製薬化学者に許容できる特性または物質を指す。
【0046】
「製薬学的に許容可能な賦形剤」は、担体、希釈剤、結合剤、もしくは治療剤を対象に送達するためのビヒクルとして使用されるか、あるいは取扱い特性もしくは貯蔵特性を改善するか、または化合物もしくは組成物を投与のための単位剤形に形成することを可能もしくは促進するために医薬組成物に添加される、それ自体治療剤ではない任意の物質を意味することができる。製薬学的に許容可能な賦形剤は、製薬技術においてよく知られており、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、Pa(例えば、第20版、2000年)、およびHandbook of Pharmaceutical Excipients、American Pharmaceutical Association、Washington、D.C.、(例えば、第1版、第2版および第3版、それぞれ1986年、1994年および2000年)に記載されている。賦形剤は様々な機能をもたらすことができ、湿潤剤、緩衝剤、懸濁剤、平滑剤、乳化剤、崩壊剤、吸収剤、保存料、界面活性剤、着色剤、香味料および甘味料として記載することができる。製薬学的に許容可能な賦形剤の例として、限定されることなく(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類、(2)コーンスターチおよびバレイショデンプンなどのデンプン、(3)セルロース、およびナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのその誘導体、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオ脂および坐剤ワックスなどの賦形剤、(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)ピロゲンフリー水、(17)等張生理食塩水、(18)リンゲル溶液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝溶液、(21)ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリ無水物、および(22)医薬製剤に用いられる他の無毒性の相容性物質が挙げられる。
【0047】
「製薬学的に許容可能な担体」は、本明細書で使用される場合、一緒に処方される化合物の薬理活性を破壊しない無毒性担体またはビヒクルを指す。本発明の組成物中に使用することができる製薬学的に許容可能な担体またはビヒクルとして、これらに限定されないが、イオン交換体、アルミナ、アルミニウムステアレート、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または硫酸プロタミンなどの電解質、リン酸水素二ナトリウム、カリウムリン酸水素、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0048】
「製薬学的に許容可能な塩」は、所望の薬理活性を保有し、生物学的であろうとなかろうと望ましい、本発明の化合物の酸性塩または塩基性塩を指す。該塩は、限定されることなく、酢酸塩、アジピン酸、アルギン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、重硫酸、酪酸、クエン酸、ショウノウ酸、樟脳スルホン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸、半硫酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、2−ヒドロキシエタン−スルホン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、チオシアン酸、トシル酸およびウンデカン酸を含める酸で形成することができる。塩基性塩の例として、限定されることなく、アンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩など有機塩基との塩、N−メチル−D−グルカミン、ならびにアルギニンおよびリシンなどアミノ酸との塩が挙げられる。一部の実施形態において、塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物などの低級ハロゲン化アルキル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミルなどの硫酸ジアルキル;デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物などの長鎖ハロゲン化物;および臭化フェネチルなどのアラルキルハロゲン化物を含めた薬剤で4級化することができる。
【0049】
「動物」は、感覚および随意運動力を有し、生存のために酸素および自然の食べ物を必要とする生物体を指す。
【0050】
「哺乳動物」は、毛または毛皮を持つ温血脊椎動物を指す。例として、限定されることなく、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ、マウス、イヌまたはネコの種のメンバーが挙げられる。
【0051】
「がん」は、制御されない方法で増殖し、一部の例において転移する(拡散する)傾向がある細胞の異常成長を指す。特異的がん腫として、限定されることなく、公開番号US2006/0014949において同定されているがんおよび以下のものが挙げられる。
−心臓:肉腫(例えば、血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫および脂肪肉腫など)、横紋筋腫および奇形腫、
−肺:気管支原性肺癌(例えば、扁平細胞、未分化小細胞、未分化大細胞および腺癌など)、肺胞性(例えば、細気管支などの)癌腫、肉腫、リンパ腫、非小細胞肺癌および中皮腫、
−胃腸:食道(例えば、扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫およびリンパ腫など)、胃(例えば、癌腫、リンパ腫および平滑筋肉腫など)、膵臓(例えば、管腺癌、インスリノーマ、カルチノイド腫瘍およびVIP産生腫瘍など)、小腸(例えば、腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、およびカポジ肉腫など)、大腸(例えば、腺癌など)、
−泌尿生殖器:腎臓(例えば、腺癌、リンパ腫および白血病など)、膀胱および尿道(例えば、扁平上皮癌、有棘細胞癌および腺癌など)、前立腺(例えば、腺癌、肉腫など)、精巣(例えば、精上皮腫、奇形腫、胚性癌腫、奇形癌腫、絨毛癌、肉腫および間質細胞癌など)、
−肝臓:肝細胞腫(例えば、肝細胞癌腫など)、胆管腺癌、肝芽腫および血管肉腫、
−骨:骨原性肉腫(例えば、骨肉腫など)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫など)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫(例えば、骨軟骨性外骨腫など)、軟骨芽細胞腫および巨細胞腫瘍、
−神経系:頭蓋骨、髄膜(例えば、髄膜肉腫および神経膠腫症など)、脳(例えば、星細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形神経膠芽腫、乏突起神経膠腫、網膜芽細胞腫および先天性腫瘍など)、脊髄(例えば、肉腫など)、
−乳癌、
−婦人科:子宮(例えば、子宮内膜癌など)、頸部(例えば、子宮頸癌など)、卵巣(例えば、卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類細胞腫]、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫および悪性奇形腫など)、外陰(例えば、扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫およびメラノーマなど)、膣(例えば、明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫[胎児性横紋筋肉腫]、および卵管(癌腫)など)、
−血液系:血液(例えば、骨髄球性白血病[急性および慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫および脊髄形成異常性症候群など)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、
−皮膚:悪性黒色腫、基底細胞腫瘍、扁平上皮癌およびカポジ肉腫など、かつ
−副腎:神経芽細胞腫。
【0052】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な量を指す。デシタビンの治療有効量は、例えば、本明細書に記載されている通りの疾患または障害を治療するのに十分な量である。式I〜VIIIによって示される化合物の治療有効量は、デシタビンのインビボ曝露を増加させるのに十分な量である。
【0053】
本明細書全体にわたって、指定化合物および示されている構造の間に相違が存在する場合、構造が支配する。任意の特定化合物に提供されている任意の指定同義語(例えば、略語、IUPAC名称、一般名もしくは他の化学名、または登録番号)が、異なる化合物に実際に関連する場合、本明細書は選択肢としてこれらの化合物を指すよう構築される。
【0054】
本発明の化合物
本発明は、CDAの活性を阻害する化合物を提供する。別の実施形態において、これらの化合物は、がん(例えば、脊髄形成異常性症候群、急性骨髄性白血病、慢性骨髄球性白血病、非小細胞肺癌、膵癌、卵巣癌および乳癌)を治療する目的においてデシタビンと組み合わせて投与することができる。
【0055】
本発明は、デシタビンおよび式Iの化合物またはその製薬学的に許容可能な塩、C
1〜6アルキルエステルもしくはC
2〜6アルケニルエステルを含む医薬組成物を対象とする。
【化4】
(式中、
R
1およびR
2の一方はFであり、他方はHおよびFから選択され、
R
3およびR
4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択され、
ここで、−−−−−は共有結合であるか、または存在せず、−−−−−が共有結合である場合、R
4は存在せず、R
3は平面上にある(flat)。)
【0056】
本明細書全体にわたって使用されている場合、「R
3は平面上にある」という表現は、R
3が、R
3が結合している炭素ならびにR
3が結合している炭素に直接隣接する2個の炭素原子を含有する平面と同じ平面に属することを意味する。
【0057】
式Iの一実施形態において、R
1およびR
2はそれぞれFである。
【0058】
別の実施形態において、本発明は、デシタビンおよび式IIの化合物またはその製薬学的に許容可能な塩、C
1〜6アルキルエステルもしくはC
2〜6アルケニルエステルを含む医薬組成物を対象とする。
【化5】
【0059】
別の態様において、本発明は、デシタビンおよびER−876437(または式VIIIとして示されている、2H−1,3−ジアゼピン−2−オン,1,3,4,7−テトラヒドロ−1−β−(D−2−デオキシ−2,2−ジフルオロリボフラノシル)−;または1−((2R,4R,5R)−3,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2(7H)−オン)を含む医薬組成物を対象とする。本明細書および他所において、化合物の化学名およびその構造描写の間に相違が存在する場合、構造描写が支配する。構造描写および
1H NMRデータの間に相違が存在する場合、
1H NMRデータが支配する。
【0060】
別の態様において、本発明は、デシタビンおよび式VIIIの化合物またはその製薬学的に許容可能な塩、C
1〜6アルキルエステルもしくはC
2〜6アルケニルエステルを含む医薬組成物を対象とする。
【化6】
【0061】
別の態様において、本発明は、デシタビンおよび式VIIIの化合物を含む医薬組成物を対象とする。
【化7】
【0062】
別の実施形態において、本発明は、デシタビンおよび式IIIの化合物またはその製薬学的に許容可能な塩、C
1〜6アルキルエステルもしくはC
2〜6アルケニルエステルを含む医薬組成物を対象とする。
【化8】
(式中、
R
3およびR
4の一方はHであり、他方はHおよびOHから選択される。)
【0063】
別の実施形態において、本発明は、デシタビンおよび式IVの化合物またはその製薬学的に許容可能な塩、C
1〜6アルキルエステルもしくはC
2〜6アルケニルエステルを含む医薬組成物を対象とする。
【化9】
【0064】
一実施形態において、本発明は、デシタビンおよび式Vの化合物またはその製薬学的に許容可能な塩、C
1〜6アルキルエステルもしくはC
2〜6アルケニルエステルを含む医薬組成物を対象とする。
【化10】
【0065】
別の実施形態において、本発明は、デシタビンおよび式VIの化合物またはその製薬学的に許容可能な塩、C
1〜6アルキルエステルもしくはC
2〜6アルケニルエステルを含む医薬組成物を対象とする。
【化11】
【0066】
別の実施形態において、本発明は、デシタビンおよび式VIIの化合物またはその製薬学的に許容可能な塩、C
1〜6アルキルエステルもしくはC
2〜6アルケニルエステルを含む医薬組成物を対象とする。
【化12】
【0067】
本発明の別の実施形態において、医薬組成物は、(a)式I〜VIIIのいずれか1種の化合物およびさらに(b)デシタビンを含むことができる。
【0068】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載されている医薬組成物を投与する方法を対象とする。したがって、本発明は、デシタビンを対象に投与すること、および式I〜VIIIのいずれか1種の化合物を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象のがんを治療する方法を対象とする。デシタビンおよび与えられる化合物は、式I〜VIIIのいずれか1種であってよく、逐次または同時に対象に投与することができる。逐次投与は、(a)最初にデシタビンを投与すること、続いて(b)式I〜VIIIのいずれか1種の化合物を含む医薬組成物を投与することを含む。代替の逐次投与は、(a)最初に式I〜VIIIのいずれか1種の化合物を含む医薬組成物を投与すること、続いて(b)デシタビンを投与することを含む。同時投与は、デシタビンおよび式I〜VIIIのいずれか1種の化合物を含む医薬組成物を同時に、または実質的に同時に投与することを含む。
【0069】
投与が、本明細書に記載されている通りの第1化合物(例えば、式Iの化合物)および第2化合物(例えば、デシタビン)の別々の投与(例えば、逐次投与)を伴う場合、該化合物は、所望の治療効果を有するのに十分な近い時間内に投与される。例えば、所望の治療効果をもたらすことができる各投与間の時間は、数分から数時間、数日までの範囲であってよく、効力、溶解性、生物学的利用能、血漿半減期および動力学的プロファイルなど各化合物の特性に基づいて決定することができる。例えば、該化合物は、任意の順番で互いの24〜72時間以内または互いの24時間未満の任意の時間以内に投与することができる。別法として、該化合物は、任意の順番で互いに1週間以内に投与することができる。
【0070】
デシタビンおよび式I〜VIIIのいずれか1種の化合物が逐次に投与される場合、それらは別々に処方され、任意の順番で供給することができる。デシタビンおよび式I〜VIIIのいずれか1種の化合物が同時に投与される場合、しかし、それらは別々に処方するか、または同じ処方において組み合わせるかのいずれかであってよい。同じ処方において組み合わせる場合、デシタビンおよび式I〜VIIIのいずれか1種の化合物は、同時にまたは異なる時に対象に放出するように処方することができる。デシタビンおよび式I〜VIIIのいずれか1種の化合物の両方を含む製剤の放出プロファイルは、以下のものを含める。
A)デシタビンの放出および生物学的利用能、続いて式I〜VIIIのいずれか1種の化合物の放出および生物学的利用能、
B)式I〜VIIIのいずれか1種の化合物の放出および生物学的利用能、続いてデシタビンの放出および生物学的利用能、
C)デシタビンの放出および生物学的利用能と同時の(または実質的に同時に)式I〜VIIIのいずれか1種の化合物の放出および生物学的利用能。
【0071】
したがって、本明細書において提供されるのは、その必要がある対象に、デシタビンを含む組成物および式I〜VIIIのいずれか1種の化合物を投与することを含む、がんを治療する方法である。治療されるがんは、慢性骨髄球性白血病、メラノーマ、脊髄形成異常症、再発白血病、大腸癌(直腸結腸癌を含める)、消化管癌、卵巣癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、リンパ性白血病、前立腺の癌腫、慢性骨髄性白血病、直腸結腸癌、非小細胞肺癌、前立腺腫瘍、腎細胞癌、精巣癌、乳癌、卵管癌、卵巣腫瘍、腹膜腫瘍、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、頭部および頸部の腫瘍、小腸癌、食道腫瘍、肺腫瘍(または、肺癌)、小細胞肺癌または中皮腫であり得る。特定の実施形態において、治療されるがんは、脊髄形成異常性症候群、急性骨髄性白血病または慢性骨髄球性白血病である。
【0072】
別の実施形態において、本明細書において提供されるのは、デシタビンおよびER−876437を含む組成物を対象に投与することを含む、その必要がある対象におけるがんを治療する方法である。さらに別の実施形態において、本明細書において提供されるのは、デシタビンおよびER−876437を含む組成物を対象に投与することを含む、その必要がある対象におけるがんを治療する方法であり、ここで、該がんは、脊髄形成異常性症候群、白血病、膵癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌および転移性乳癌からなる群から選択される。さらに別の実施形態において、本明細書において提供されるのは、デシタビンを含む組成物およびER−876437を対象に投与することを含む、その必要がある対象における急性骨髄性白血病、脊髄形成異常性症候群または慢性骨髄球性白血病を治療する方法である。
【0073】
さらに別の実施形態において、本明細書において提供されるのは、デシタビンおよびER−876437を含む組成物を対象に投与することを含む、その必要がある対象における鎌状赤血球貧血を治療する方法である。さらに別の実施形態において、本明細書において提供されるのは、デシタビンおよびER−876437を含む組成物を対象に投与することを含む、その必要がある対象における前駆細胞同種移植後再発を治療する方法である。
【0074】
本発明の別の実施形態において、デシタビンおよび式I〜VIIIのいずれか1種の化合物は、がんを治療される対象に通常投与される他の医薬品とともに逐次に(任意の順番で)または同時に投与することができる。こうした他の医薬品として、限定されることなく、制吐薬、食欲を増加させる薬剤、他の細胞毒治療剤または化学治療剤、および疼痛を緩和させる薬剤が挙げられる。デシタビンおよび式I〜VIIIのいずれか1種の化合物は、こうした他の医薬品と一緒にまたは別々に処方することができる。
【0075】
こうした他の医薬品との組合せは、抗がん活性における相乗的増加をもたらすことができるか、またはこうした増加は相加的でありうるかのいずれかである。本明細書に記載されている組成物には通常、より低い投与量の各化合物が組成物中に含まれ、それによって、化合物間の有害な相互作用、または同様の化合物に関して報告されたものなど有害な副作用を回避する。さらに、組み合わせて与えられる場合の各化合物の正常量は、単独で使用される場合に各化合物に対して無応答または最小限の応答のいずれかである対象において、より大きな効力を提供できる。
【0076】
相乗作用の効果は、Sigmoid−Emax方程式(Holford、N.H.G.およびScheiner、L.B.、Clin.Pharmacokinet.6:429〜453(1981))、Loewe相加性の方程式(Loewe、S.およびMuischnek、H.、Arch.Exp.Pathol Pharmacol.114:313〜326(1926))およびMedian−Effect方程式(Chou、T.C.およびTalalay、P.、Adv.Enzyme Regul.22:27〜55(1984))などの適当な方法を使用して算出することができる。上記に参照した各方程式は、実験データに適用して、薬剤組合せの効果を評価するのを補助する対応グラフを作成することができる。上記に参照した方程式に関連する対応グラフは、それぞれ濃度効果曲線、アイソボログラム曲線および組合せ指数曲線(combination index curve)である。
【0077】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の組成物のいずれかの医薬組成物を提供する。関連する実施形態において、本発明は、本発明の組成物のいずれかの医薬組成物、およびこれらの組成物のいずれかの製薬学的に許容可能な担体または賦形剤を提供する。特定の実施形態において、本発明は、該組成物を新規な化学実体として含める。
【0078】
一実施形態において、本発明は包括がん治療を含める。該包括治療は、使用目的のために有効量の本発明の組成物を使用するための指示とパッケージされた、本発明の組成物を含める。他の実施形態において、本発明は、対象におけるがん、感染症を治療するための薬物の製造のために本発明の組成物のいずれかを使用することを提供する。
【0079】
合成手順
この本文の範囲内において、本発明の化合物の特定の所望最終生成物の構成物質ではない容易に除去可能な基を「保護基」と命名する。こうした保護基による官能基の保護、保護基自体、およびそれらの開裂反応は、例えばScience of Synthesis:Houben−Weyl Methods of Molecular Transformation.Georg Thieme Verlag、Stuttgart、Germany.2005.41627ページ.(URL:http://www.science−of−synthesis.com(電子版、48巻));J.F.W.McOmie、「Protective Groups in Organic Chemistry」、Plenum Press、London and New York 1973において、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、Wiley、New York 1999において、「The Peptides」;3巻(編集:E.GrossおよびJ.Meienhofer)、Academic Press、London and New York 1981において、「Methoden der organischen Chemie」(Methods of Organic Chemistry)、Houben Weyl、第4版、15/I巻、Georg Thieme Verlag、Stuttgart 1974において、H.−D.JakubkeおよびH.Jeschkeit、「Aminosauren、Peptide、Proteine」(Amino acids、Peptides、Proteins)、Verlag Chemie、Weinheim、Deerfield Beach、およびBasel 1982において、ならびにJochen Lehmann、「Chemie der Kohlenhydrate:Monosaccharide und Derivate」(Chemistry of Carbohydrates:Monosaccharides and Derivatives)、Georg Thieme Verlag、Stuttgart 1974などの標準的参考文献において記載されている。保護基の特徴は、それらが、例えば加溶媒分解、還元、光分解によって、または別法として生理学的条件下で(例えば、酵素的開裂によって)、容易に(即ち、所望でない二次反応の発生なく)除去することができることである。
【0080】
本発明の化合物の酸付加塩は、製薬学的に許容可能な酸から最も適当に形成され、例えば、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸、および有機酸、例えばコハク酸、マレイン酸、酢酸またはフマル酸と形成されるものが挙げられる。他の非製薬学的に許容可能な塩、例えばシュウ酸塩は、例えば本発明の化合物の単離において、実験使用のために、または製薬学的に許容可能な酸付加塩への後続の変換のために使用することができる。本発明の範囲内にさらに含められるのは、本発明の溶媒和物および水和物である。
【0081】
所定の化合物塩を所望の化合物塩に変換することは、標準的技術を適用することによって達成され、ここでは、所定の塩の水溶液を塩基、例えば炭酸ナトリウムまたは水酸化カリウムの溶液で処理することで遊離塩基を遊離し、これを次いでエーテルなどの適切な溶媒中に抽出する。遊離塩基を次いで、水性部分から分離し、乾燥させ、必要な酸で処理することで、所望の塩を得る。
【0082】
本発明の特定化合物のインビボ加水分解性エステルまたはアミドは、塩化メチレンまたはクロロホルムなどの不活性溶媒中にて塩基の存在下で、遊離ヒドロキシまたは遊離アミノ官能基を有する化合物を所望のエステルの酸塩化物で処理することによって形成することができる。適当な塩基として、トリエチルアミンまたはピリジンが挙げられる。逆に、遊離カルボキシ基を有する本発明の化合物は、活性化すること、続いて適当な塩基の存在下にて所望のアルコールで処理することを含みうる標準条件を使用してエステル化することができる。
【0083】
本発明に従って得られる異性体の混合物は、それ自体知られている方法において個々の異性体に分離することができる。ジアステレオ異性体は、例えば多相性溶媒混合物間での分配、再結晶、もしくは例えばシリカゲル上でのクロマトグラフ分離によって、または例えば逆相カラム上の中圧液体クロマトグラフィーによって分離することができ、ラセミ体は、例えば光学的に純粋な塩形成試薬を用いる塩の形成、およびそうして得られるジアステレオ異性体の混合物の分離によって、例えば分別結晶の手段によって、または光学活性カラム材料上でのクロマトグラフィーによって分離することができる。
【0084】
中間体および最終生成物は、例えばクロマトグラフィー法、分配法、および(再)結晶化などを使用する標準的方法に従って後処理または精製することができる。
【0085】
デシタビンを調製する方法は当技術分野において知られている。
【0086】
別の実施形態において、本発明は、(i)反応溶媒中に1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オンを含む第1溶液を、(ii)還流条件下で反応溶媒中にC2置換テトラヒドロフラン環を含む第2溶液と混合することによって反応混合物を形成することを含む、イミダゾリジン−2−オン、テトラヒドロピリミジン−2(1H)−オン、1,3−ジアゼパン−2−オンまたは1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン(ER−878899)などの環式尿素化合物をC2置換テトラヒドロフラン環にカップリングする方法を対象とする。この実施形態において、還流条件は、第1溶液が第2溶液に添加される時の反応混合物の体積を保持することができる。別法として、還流条件は、反応混合物の体積が50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%または1%を超えて増加するのを防止することができる。この実施形態において、反応溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMA)またはジメチルスルホキシド(DMSO)など150℃を超える沸点を有する極性非プロトン性溶媒であってよい。この実施形態によると、第2溶液は150℃超に加熱され、第1溶液は、シリンジを介して第2溶液に添加することができる。この実施形態によると、第1溶液は、10時間未満、5時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満または30分未満に及ぶ時間周期にわたって第2溶液に添加することができる。この実施形態によると、第2溶液は、150℃から250℃、175℃から225℃、または200℃から220℃に加熱することができる。この実施形態によると、C2置換テトラヒドロフラン環はC3位に置換基を有することができ、C3位に1個のハロゲン、C3位に2個のハロゲン、またはC3位に2個のフッ素を含むことができる。この実施形態によると、テトラヒドロフラン環はER−878898であってよい。相互排他的な値を除いて、この段落に記載されている代替的特徴のいずれも一緒に使用することができる。
【0087】
別の実施形態において、本発明は、(i)混合物をクロマトグラフィー用物質と接触させるステップと、移動相としてトルエンおよびアセトニトリルを用いて該物質上の混合物を分離させるステップとを含む、ER−878617を含む混合物からER−879381を単離する方法を対象とする。この実施形態によると、クロマトグラフィー用物質はシリカゲルであってよい。この実施形態によると、移動相は、7:1比のトルエン:アセトニトリルであってよい。別法として、この実施形態によると、トルエン:アセトニトリルは、7:1超、または7:1未満の比率を有することができる。相互排他的な値を除いて、この段落に記載されている代替的特徴のいずれも一緒に使用することができる。
【0088】
剤形
特定の実施形態において、本発明の組成物(例えば、デシタビンと組み合わせた式Iの化合物、例えばデシタビンと組み合わせたER−876437)は、その全てが引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許第7,144,873号、米国特許第7,135,464号、米国特許第6,982,253号、米国特許第6,905,669号および米国特許第6,613,753号に記載されている処方および方法を使用して、その必要がある対象に投与することができる。
【0089】
一部の実施形態において、本発明の化合物(または組合せ)の医薬組成物は、経口投与、直腸投与または非経口注射による投与に適当な単位剤形であってよい。例えば、経口剤形に組成物を調製する際、懸濁液、シロップ、エリキシルおよび溶液などの経口液体調製物の場合として、例えば水、グリコール、油およびアルコールなど;または粉末、丸薬、カプセルおよび錠剤の場合デンプン、糖類、カオリン、滑沢剤、結合剤および崩壊剤などの固体担体など通常の医薬媒体を用いることができる。投与において容易であることから、錠剤およびカプセルは最も有利な経口投与単位形態であり、この場合、固体医薬品担体が利用される。非経口用組成物のために、担体は少なくとも大部分において滅菌水を一般に含むが、例えば溶解性を補助する他の成分を含むことができる。注射可能な溶液は、例えば、生理食塩水溶液、グルコース溶液、または生理食塩水とグルコース溶液との混合物を含む担体を使用して調製される。注射可能な懸濁液も調製することができ、この場合、適切な液体担体および懸濁剤などを用いてよい。経皮投与に適当な組成物の場合、担体は、少ない割合で任意の性質を持ち、皮膚に有意な有害作用を引き起こすことがない適当な添加剤と組み合わせることができる浸透促進剤または適当な湿潤剤を場合により含む。添加剤は皮膚への投与を促進することができるか、または所望の組成物を調製するのに有益であり得る。これらの組成物は、様々な方法、例えば経皮パッチ、スポットオン、軟膏として投与することができる。
【0090】
本明細書に記載されている医薬組成物を、投与の容易さおよび投与量の均一性のための投与単位形態に処方することは特に有利である。投与単位形態は、本明細書で使用される場合、単位投与量として適当な物理的個別単位を指し、各単位は、必要な医薬品担体と関係した所望の治療効果を生じさせるために算出される活性成分の所定含量を含有する。こうした投与単位形態の例は、錠剤(分割錠剤またはコーティング錠剤を含む)、カプセル、丸薬、粉末パケット、ウエハ、注射可能な溶液または懸濁液、茶さじ用剤および食さじ用剤など、ならびにそれらの分離された複数の剤である。
【0091】
一般に、第1または第2化合物の治療有効量は、0.0001mg/体重kgから0.001mg/体重kg、0.001mg/体重kgから10mg/体重kgまたは0.02mg/体重kgから5mg/体重kgであると企図される。一部の実施形態において、第1または第2化合物の治療有効量は、0.007mgから0.07mg、0.07mgから700mg、または1.4mgから350mgである。予防的または治癒的治療の方法は、1日当たり1回から5回の間の摂取投与計画において組成物を投与することも含むことができる。
【0092】
一部の実施形態において、第1化合物または第2化合物の治療有効量として、これらに限定されないが、0.01mg/用量未満、または0.5mg/用量未満、または1mg/用量未満、または2mg/用量未満、または5mg/用量未満、または10mg/用量未満、または20mg/用量未満、または25mg/用量未満、または50mg/用量未満、または100mg/用量未満、または500mg/用量未満の量が挙げられる。第1または第2化合物が対象に投与される1日における回数は、当技術において一般に使用されている各種基準、または本明細書に記載されている基準に基づいて決定することができる。
【0093】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、香料および芳香剤、保存料および抗酸化剤も、該組成物に存在することができる。
【0094】
製薬学的に許容可能な抗酸化剤の例として、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガレートおよびα−トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;ならびにクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸およびリン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
【0095】
本発明の製剤として、経口、経鼻、局所的、口腔内、舌下、直腸、膣内または非経口投与に適当なものが挙げられる。該製剤は、好都合には、単位剤形で提示することができ、製薬の技術分野においてよく知られている任意の方法によって調製することができる。単一剤形を生成するためのキャリア材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を生じる組成物の量である。一般に、100パーセントのうち、この量は約1パーセントから約99パーセントの活性成分、好ましくは約5パーセントから約70パーセント、最も好ましくは約10パーセントから約30パーセントの範囲である。
【0096】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の組成物を担体および任意選択的に、1種または複数の副成分と会合させるステップを含む。一般に、該製剤は、本発明の組成物を液体担体もしくは微粉化固体担体または両方と均一および密接に会合させること、および次いで必要であれば生成物を形作ることによって調製される。
【0097】
経口投与に適当な本発明の製剤は、カプセル、カシェ剤、丸薬、錠剤、ドロップ剤(風味ベース、通常スクロース、およびアカシアまたはトラガカントを使用する)、粉末、顆粒の形態、または水性もしくは非水性の液体中の溶液もしくは懸濁液としての形態、または水中油もしくは油中水型液体エマルジョンとしての形態、またはエリキシル剤もしくはシロップとしての形態、または芳香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性塩基を使用する)としての形態、または洗口液などとしての形態であってよく、それぞれは活性成分として本発明の組成物の所定量を含有する。本発明の組成物は、ボーラス、舐剤またはペーストとして投与することもできる。
【0098】
経口投与のための本発明の固体剤形(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末および顆粒など)において、活性成分は、クエン酸ナトリウムもしくは第二リン酸カルシウム、または以下のいずれかなど1種または複数の製薬学的に許容可能な担体と混合される。デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールまたはケイ酸などの充填剤または増量剤;例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースまたはアカシアなどの結合剤;グリセロールなどの保水剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケートおよび炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;パラフィンなどの溶解遅延剤;第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;例えばセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤;カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの滑沢剤;ならびに着色剤。カプセル、錠剤および丸薬の場合、該医薬組成物は緩衝剤も含むことができる。同様の種類の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用する軟および硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤としても用いることができる。
【0099】
錠剤は、任意選択的に、1種または複数の副成分と圧縮または成形することによって作製することができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、界面活性剤または分散剤を使用して調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末組成物の混合物を適当な機械で成形することによって作製することができる。
【0100】
本発明の医薬組成物の錠剤、および糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒などの他の固体剤形は、任意選択的に、刻み目付きにするか、または医薬製剤技術においてよく知られている腸溶コーティング剤および他のコーティング剤などのコーティング剤ならびに外殻で調製することができる。それらは、所望の放出プロファイル、他のポリマーマトリックス、リポソームまたは微小球を提供するために変動する割合で例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、その中の活性成分の遅延放出または制御放出をもたらすように処方することもできる。それらは、例えば細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用する直前に滅菌水または一部の他の滅菌注射可能媒体中に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。これらの組成物は任意選択的に、乳白剤を含有してよく、これらが活性成分(単数または複数)だけを放出するか、または任意選択的に、遅延方法で優先的に消化管の特定の部分に放出する組成物であってよい。使用することができる包埋組成物の例として、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。該活性成分は、適切な場合1種または複数の上述されている賦形剤を用いるマイクロカプセル化形態であってもよい。
【0101】
本発明の組成物の経口投与のための液体剤形として、製薬学的に許容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。活性成分に加えて、該液体剤形は、例えば水または他の溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実、ラッカセイ、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などの可溶化剤および乳化剤など当技術で通常使用される不活性希釈剤を含有することができる。
【0102】
不活性希釈剤の他に、該経口用組成物には、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香料、着色、芳香剤ならびに保存剤などのアジュバントも含めることができる。
【0103】
懸濁液は、該活性組成物に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、ならびにそれらの混合物としての懸濁剤を含有することができる。
【0104】
直腸または膣内投与のための本発明の医薬組成物の製剤は、本発明の1種または複数の組成物を、例えばカカオ脂、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスまたはサリチレートを含む1種または複数の適当な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製することができ、室温では固体であるが体温では液体であり、したがって直腸または膣腔中で融解し、活性組成物を放出する坐剤として提示することができる。
【0105】
膣内投与に適当である本発明の製剤として、適切である当技術分野において知られている担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト剤、フォームまたはスプレー製剤も挙げられる。
【0106】
本発明の組成物の局所または経皮投与のための剤形として、粉末、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤が挙げられる。活性組成物は、滅菌条件下において、製薬学的に許容可能な担体、および必要であり得る任意の保存料、緩衝剤または噴霧剤と混合することができる。
【0107】
該軟膏剤、ペースト剤、クリームおよびゲルは、本発明の活性組成物に加えて、動物および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクならびに酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含有することができる。
【0108】
粉末およびスプレー剤は、本発明の組成物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、カルシウムシリケートおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有することができる。スプレー剤は、クロロフルオロ炭化水素ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素などの通例の噴霧剤をさらに含有することができる。
【0109】
経皮パッチは、身体への本発明の組成物の制御送達を提供するという付加された利点を有する。こうした剤形は、適した媒体中に該組成物を溶解または分散することによって作製することができる。吸収増強剤は、皮膚を横切る該組成物の流出を増加するために使用することもできる。こうした流出の速度は、速度制御膜を供給するか、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に活性組成物を分散することのいずれかによって制御することができる。
【0110】
眼科用製剤、眼軟膏、粉末および溶液なども、本発明の範囲内であると企図される。
【0111】
非経口投与に適当な本発明の医薬組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、目的とされているレシピエントの血液と等張の該製剤を与える溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含有することができる、1種または複数の製薬学的に許容可能な滅菌等張水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョン、または使用の直前に滅菌注射可能溶液もしくは分散液に再構成することができる滅菌粉末と組み合わせた本発明の1種または複数の組成物を含む。
【0112】
本発明の医薬組成物中に用いることができる適当な水性および非水性担体の例として、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適当な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散液の場合は必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって保持することができる。
【0113】
これらの組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有することもできる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗かび剤、例えば、パラベン、クロロブタノールおよびフェノールソルビン酸などの包含によって確保され得る。糖類および塩化ナトリウムなどの等張剤を該組成物中に含めることが望ましいこともある。さらに、注射可能な医薬品形態の持続吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど吸収を遅延させる薬剤の包含によってもたらすことができる。
【0114】
一部の例において、薬物の効果を延長するため、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、難水溶性を有する結晶質または非晶質材料の液体懸濁液の使用によって達成することができる。薬物の吸収速度は次いで溶解速度に依存し、これは順じて結晶サイズおよび結晶形に依存し得る。別法として、非経口的に投与される薬物形態の遅延吸収は、油性媒体中に薬物を溶解または懸濁することによって達成される。
【0115】
注射可能なデポー形態は、ポリ乳酸−ポリグリコール酸などの生分解性ポリマー中に対象組成物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。薬物対ポリマーの比率および用いられる特定ポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度は制御することができる。他の生分解性ポリマーの例として、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射可能製剤は、体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に該薬物を取り込むことによっても調製される。
【0116】
本発明の調製物は、経口的、非経口的、局所的または直腸的に与えることができる。それらは当然、各投与経路に適当な形態によって与えられる。例えば、それらは錠剤またはカプセルの形態で、注射、吸入、目薬、軟膏、坐剤などによって、注射、注入または吸入による投与、ローションまたは軟膏による局所的投与、および坐剤による直腸投与によって投与される。経口またはIV投与が好ましい。
【0117】
「非経口投与」および「非経口的に投与される」という成句は、本明細書で使用される場合、腸内および局所投与以外の通常注射による投与方法を意味し、限定されることなく、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、角皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、髄腔内および胸骨内の注射および注入が挙げられる。
【0118】
「全身投与」、「全身的に投与される」、「末梢投与」および「末梢的に投与される」という成句は、本明細書で使用される場合、患者の系に入り、したがって代謝および例えば皮下投与のような他の方法を受けやすいように、中枢神経系中への直接投与以外での化合物、薬物または他の材料の投与を意味する。
【0119】
これらの化合物は、経口的、例えばスプレーによるなど経鼻的、直腸的、膣内、非経口的、大槽内、ならびに口腔および舌下を含めて粉末、軟膏剤または点滴剤によるなど局所的投与経路を含める任意の適当な投与経路による治療のためにヒトおよび他の動物に投与することができる。
【0120】
選択される投与経路にかかわらず、適当な水和物形態に使用され得る本発明の化合物、または本発明の医薬組成物は、従来の方法によって製薬学的に許容可能な剤形に処方される。
【0121】
本発明の医薬組成物における活性成分の実際の投与量は、患者に毒性であることなく、特定の患者、組成および投与方法に対する所望の治療反応を達成するのに有効である活性成分の量を得るために変動してよい。
【0122】
選択される投与量は、用いられる本発明の特定の化合物またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排出速度、治療の持続期間、用いられる特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物または材料、治療される患者の年齢、性別、重量、状態、全般的な健康および前病歴、ならびに医療技術においてよく知られているような因子を含めて、様々な因子に依存する。
【0123】
医師または獣医は、必要な医薬組成物の有効量を決定および処方することができる。例えば、医師または獣医は、医薬組成物に用いられる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされる濃度より低い濃度で開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができる。
【0124】
一般に、本発明の化合物の適当な日用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量である該化合物の量である。こうした有効量は一般に、上述されている因子に依存する。一般に、患者に対する本発明の化合物の静脈内および皮下用量は、示されている鎮痛効果のために使用される場合、1日当たり体重1キログラム当たりで約0.0001から約100mg、より好ましくは1日当たり1kg当たりで約0.01から約50mg、およびさらにより好ましくは1日当たり1kg当たりで約1.0から約100mgの範囲である。有効量はウイルス感染を治療する量である。
【0125】
所望であれば、活性化合物の有効な日用量は、任意選択的に、単位剤形で1日を通して適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6回またはそれ以上のサブ用量として投与することができる。
【0126】
本発明の化合物は単独で投与されることが可能であるが、該化合物を医薬組成物として投与することが好ましい。
【実施例】
【0127】
本発明の化合物を調製するための一般的方法および実験を下記で説明する。
[実施例I]
化学合成
特別に記述がない限り、実施例I.B.〜I.Cに関し、溶媒除去は、Buchiロータリーエバポレーターを使用して実施した。特別に記載がない限り、分析クロマトグラフィーはHewlett Packardシリーズ1100HPLCを使用して実施し、分取クロマトグラフィーは、Biotage SP4機器またはWaters4000機器のいずれかを使用し、中性条件下でChiralpak IAカラムを使用して実施した。質量スペクトルは、Waters Acquity UPLC/MSシステムを使用して記録した。残りの実施例には類似の装置を使用した。
【0128】
NMRスペクトルは、Varian400MHz分光計(実施例I.B.〜I.C.)を使用して、またはFluka400MHz分光計(実施例I.A.およびI.D.)を使用して記録した。
【0129】
(実施例I.A.)
ER−876437
I.A.1.:ER−878899(1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン)の調製
ER−878899を下記のスキームIで概略した通りに調製した。この調製は、J.Med.Chem.1981、24、662〜666;J.Org.Chem.1980、45、485〜489およびBull.Soc.Chim.Fr.1973、198〜292に記載されており、全て引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【化13】
【0130】
スキームIに従って作製するER−878899の形成には、機械的撹拌を必要とする。硫化カルボニルは、ガラスピペット(大きな直径)を使用し、反応中に形成される固体により詰まる傾向がある針を使用せず、反応フラスコ中に気泡にすることができる。反応の最後に、反応媒体中の不溶性物質を濾過し、ER−878899がフィルターケーキ中に存在し得る。
【0131】
I.A.2.:ER−876437の調製
I.A.1.に従って調製されたER−878899を、下に記載されている通りのスキームIIで使用した。
【化14】
【0132】
1−(3,3−ジフルオロ−4−ベンゾイル−5−ベンゾキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1,3,4,7−テトラヒドロ−[1,3]ジアゼピン−2−オン(ER−879381)。スキームIIにおいて上記に示されている市販のメシレートER−878898(3.8g、8.3mmol)および尿素ER−878899(900mg、8.0mmol)を、ジメチルアセトアミド(DMA)(400ml)に添加した。加熱すると(170℃)、反応成分は可溶化した。溶液を終夜(15時間)窒素雰囲気下で加熱した。
【0133】
DMAを次いで真空中で除去した。残渣をEtOAc(150ml)中に再懸濁し、次いで水(2×75ml)で洗浄した。合わせた有機層をMgSO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。該材料をSiO
2上のクロマトグラフィーにかけ、50%EtOAc/ヘキサンで溶出した。クロマトグラフィーの後に得られた材料は、未分割のα/βアノマーであった。該アノマーを次いで、順相分取用HPLC(50%EtOAc/ヘキサン均一濃度、10ml/分、Rt=25.7分);カラム:フェノメネクスルナ10μシリカ100A、250×21.20mm;屈折率検出器を使用して分離した。該βアノマーER−879381を>90%の純度に単離した(10%αアノマー、Rt.24分)。
1H NMR (CDCl
3) δ 8.05 (m, 4H), 7.59 (m, 2H), 7.43 (m, 4H), 5.99 (m, 1H), 5.72 (m, 2H), 5.54 (m, 1H), 4.77 (dd, J = 12.1, 3.4 Hz, 1H), 4.65 (br s, 1H), 4.56 (dd, J = 12.4, 4.0 Hz, 1H), 4.38 (m, 1H), 3.80 (m, 4H).
【0134】
1−(3,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1,3,4,7−テトラヒドロ−[1,3]ジアゼピン−2−オン(ER−876437)。ER−879381をMeOH(40ml)中のNH
3(7M)中に溶解した。溶液を終夜撹拌した。溶媒を除去し、残渣を、RP HPLC(10%アセトニトリル/H
2O、流量10ml/分、R
t=23分);カラム:フェノメネクスルナ5μC18(2)100A、250×21.2mm;屈折率検出器によって精製した。所望の化合物ER−876437が1.5%(62mg)の全収率で得られた。
1H NMR (D
2O) δ 5.86 (m, 2H), 5.69 (dd, J = 14.3 Hz, 6.2 Hz, 1H), 4.14 (m, 1H), 3. 86 (m 1H), 3.74 (m, 6H).
13C NMR (D
2O) δ 164.5, 127.3, 126.2, 122.1 (dd, J = 252, 261 Hz, 1C), 85.9 (dd, J = 41, 22 Hz, 1C), 77.4 (d, J = 8 Hz, 1C), 69.5 (dd, J = 22 Hz, 19 Hz, 1C), 58.9, 41.0, 40.7.
【0135】
分子式(C
10H
14N
2O
4F
2+0.5 H
2O)の炭素、水素および窒素成分を、C、43.96;H、5.53;およびN、10.25であると算出した。元素分析により、この材料がC、43.99;H、5.36;およびN、10.21を含有することが明らかになった。
【0136】
ER−878899とメシレートとのカップリング反応の収率に対するわずかな改善が、反応溶媒を替えることによって得ることができる。ジグリムが溶媒として使用される場合、15%の収率改善が認められ得る。
【0137】
(実施例I.B.)
ER−876437
I.B.1.:ER−878899(1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン)の調製
ER−878705(下記に示されている)を、Feigenbaum、A.およびLehn、J.M.、Bull.Soc.CMm.Fr.、1973、198〜202およびLiu、P.S.、Marquez、V.E.、Driscoll、J.S.およびFuller、R.W.、J.Med.Chem.、1981、24、662〜666に記載されている手順に従って調製した。
【化15】
【0138】
メカニカルスターラーを備えた二つ口2Lフラスコ中におけるER−878705(79.7g、230mmol)のエタノール(470mL)白色懸濁液に、ヒドラジン水和物(23.5mL、483mmol)を室温で添加した。生じた白色懸濁液を50℃に30分間加熱して、清澄な淡黄色溶液を得た。白色の沈殿物が現れ始め、混合物を60℃に3時間加熱し、撹拌するのが非常に難しくなった。混合物を室温に冷却させた後、濃縮塩化水素溶液(40.3mL、483mmol)を添加し、混合物が容易に撹拌されるようなった。30分間撹拌した後、混合物を濾過し、水5×200mLで洗浄した。濾液を乾燥固体に濃縮した。乾燥固体をエタノール200mL中に懸濁し、1時間撹拌して、適切な懸濁液を作製した。懸濁液を濾過し、3×100mLの純粋なエタノールで洗浄した。ケーキ(白色顆粒のような結晶)を回収し、乾燥させて、1,4−ジアミノ−2−ブテンジ−塩酸塩34.6(94%)gを得た。
1H NMRは5:1の比で少量不純物としてフタルヒドラジドを含有する生成物を示す。
1H NMR (400 MHz, CD
3OD) δ 5.85 (ddd, J=1.6, 1.8および4.4 Hz, 2H), 3.69 (d, J=4.4, 4H).
【化16】
【0139】
二つ口2Lフラスコ中の1,4−ジアミノ−2−ブテンジ−塩酸塩(22.7g、143mmol)のエタノール(1.2L)懸濁液に、1.0MのNaOH溶液(330mL、330mmol)を添加した。NaOHを懸濁液に添加すると、混合物が透明および無色の溶液になった。溶液を70℃に加熱し、硫化カルボニルを、加熱した混合物に通して気泡にした。その後、混合物を80℃に還流で加熱した。3時間後、泡立ちを停止し、混合物をさらに1.5時間加熱し、室温に冷却し、1.0NのHCl(50mmol)の添加によって中和した。混合物を乾燥灰色固体に濃縮した。固体をメタノール1L中に懸濁し、2時間撹拌し、濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を約200mLの体積に濃縮し、0℃に冷却し、濾過し、冷メタノールで洗浄した。固体を回収し、乾燥させて、5.05gの生成物を得た。
1H NMRは13:1の比で極少量の不純物フタルヒドラジドを含有する生成物を示す。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 5.91 (ddd, J=0.8, 1.2および1.6 Hz, 2H), 3.67 (d, J=4.0, 4H).母液は約30mLに濃縮され、−10℃に冷却され、濾過し、冷却MeOH(−10℃)で洗浄した。固体は収集され、1H NMRで決定された4:1の比で少量汚濁物のフタルヒドラジドでの生成物7.1gに乾燥した。
【0140】
I.B.2.:ER−878617の調製
【化17】
上記スキームVに描写した通り、ER−878898(1.33g、2.92mmol、WaterstoneまたはDepew Fine Chemicalから入手可能)およびER−878899(200.0mg、1.78mmol)の乾燥DMA(30mL)溶液を加熱し、180〜190℃(油浴温)で撹拌しながらDMAをゆっくり留去した。DMA(50mL)中の追加の共沸混合した1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン(800.0mg、7.13mmol)を、シリンジポンプで2時間かけてこのDMA蒸留中に添加した。全ての材料を添加した後、反応を還流で30分間保持し、冷ました。反応混合物を真空中で濃縮し、残渣をクロマトグラフィーで精製して、ER−878617(624.8mg、45%)を2つのエピマーの混合物として得た。
【0141】
I.B.3.:ER−876437の調製
【化18】
上記スキームVIに描写した通り、ER−878617(624.8mg、1.32mmol)の7Mアンモニア/メタノール(53mL)溶液を周囲温度で18時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、残渣を分取TLCで精製して、粗生成物(274.2mg、78%)を2つのエピマーの混合物として得た。2つのエピマーの混合物を、分取クロマトグラフィー上でキラルパックIAカラム(ダイセル化学工業株式会社、東京、日本)を用いて分離して、ER−876437(160.2mg)を得た。
【0142】
(実施例I.C.)
ER−876437
I.C.1.:ER−879381の調製
ER−879381を下記に示した通りのスキームVIIに従って作製した。ER−878899を実施例I.B.1.において上記した通りに調製した。
【化19】
【0143】
上記スキームVIIに描写した通り、ER−878898(8.0g、18mmol、WaterstoneまたはDepew Fine Chemicalから入手可能)およびER−878899(1.2g、10.7mmol)の乾燥DMA(100mL)溶液を加熱し、200〜220℃(油浴温)で撹拌しながらDMAをゆっくり留去した。DMA(350mL)中の追加の共沸混合した1,3,4,7−テトラヒドロ−2H−1,3−ジアゼピン−2−オン(4.8g、42.9mmol)を、シリンジポンプに通して2時間かけてこのDMA蒸留中に添加した。全ての材料を添加した後、反応を還流で30分間保持し、冷ました。反応混合物を真空中で濃縮し、残渣を、同じ規模で同じ手順を使用して行った別の実験からの残渣と合わせた。合わせた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相:50〜100%AcOEt/ヘプタン)で精製して、2つのエピマーの混合物を得た(9.38g)。2つのエピマーの混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相:トルエン:アセトニトリル=7:1)でさらに分離して、ER−879381を生成した(3.94g)。
【0144】
I.C.2.:ER−876437の調製
ER−876437をスキームVIIIにおいて下記に示した通りに調製した。
【化20】
【0145】
上記スキームVIIIに描写した通り、ER−879381(3.8g、8.0mmol)の7Mアンモニア/メタノール(100mL)溶液を周囲温度で17時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、残渣をクロマトグラフィー(移動相:50〜100%AcOEt/ヘプタン)で精製して、ER−876437を得た(1.89g、収率89%)。
【0146】
(実施例I.D.)
ER−878895
I.D.1.:ER−878890の調製
【化21】
上記スキームIXに描写した通り、ER−878889(Stimac、A.およびKobe、J.、Carbohydr.Res.、2000、329、317〜324に従って調製、4.3g、11.7mmol)およびジ−tert−ブチルジカーボネート(5.4g、24.6mmol)のTHF(125mL)溶液を、リンドラー触媒(1g)の存在下にて30psiで週末にかけて撹拌した。水素化した生成物を含有する反応懸濁液を、セライトに通して濾過し、濃縮した。残渣をラジアルクロマトグラフィーで精製して、ER−878890(2.8g)を得た。ER−878890をAcOEt/ヘキサンからの再結晶化によってさらに精製して、mp106〜108℃の白色針状晶を得た。
【0147】
I.D.2.:ER−878891の調製
【化22】
上記スキームXに描写した通り、ER−878890(1.6g、3.48mmol)のTHF/DMF(100mL/30mL)撹拌溶液に、トルエン(8.5mL、4.25mmol)中の0.5Mカリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)を滴下により約−78℃(ドライアイス/アセトン浴)で添加し、続いて臭化アリル(0.4mL、4.6mmol)を添加した。ドライアイス−アセトン浴を室温(−25℃)にゆっくり温めながら反応混合物を終夜撹拌した。反応物を飽和水性塩化アンモニウムでクエンチし、AcOEtで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。乾燥溶液を濾過し、蒸発させた。残渣をラジアルクロマトグラフィーで精製して、ER−878891を得た(0.64g)。
【0148】
I.D.3.:ER−878892の調製
【化23】
上記スキームXIに描写した通り、ER−878891(0.1g、0.2mmol)のジクロロメタン(DCM)(1mL)撹拌溶液に、窒素下で、トリフルオロ酢酸(TFA)(0.5mL)を室温で添加した。ER−878891が1時間内に消滅し、溶媒およびTFAを真空中で蒸発させた。DCM(2mL)中に再溶解させた生じた油に、アリルイソシアネート(0.2mL、2.2mmol)を室温で添加した。反応混合物を1時間後に蒸発させ、ラジアルクロマトグラフィーによって精製して、ER−878892(50%の収率)を2つのアノマーの混合物(ベータ/アルファ− 3/1)として得た。
【0149】
I.D.4.:ER−878893の調製
【化24】
上記スキームXIIに描写した通り、ER−878892(0.27g、0.56mmol)のTHF(10mL)撹拌溶液に、窒素下で、トルエン(1.5mL、0.75mmol)中の0.5MのKHMDSを約−78℃(ドライアイス/アセトン浴)で添加し、続いて塩化ベンゾイル(0.6mL、5.1mmol)を添加した。反応混合物を終夜撹拌し、室温にゆっくり温めた。反応物を飽和水性塩化アンモニウムでクエンチし、AcOEtで抽出した。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣をラジアルクロマトグラフィーで精製して、ER−878893(0.13g、50%の収率)をアノマーの混合物として得た。
【0150】
I.D.5.:ER−878894の調製
【化25】
上記スキームXIIIに描写した通り、ER−878893(0.13g、0.22mmol)のDCM(120mL)脱気溶液に、Grubb第2世代触媒(約30mg、Sigma−Aldrich、St.Louis、MOから入手可能)を窒素下で添加した。この触媒は、閉環メタセシス(RCM)を可能にする。反応混合物を40℃で1時間加熱し、続いて溶媒を蒸発させた。AcOEt(20mL)中に溶解した残渣にSilicycle Si−トリアミンPdスカベンジャー(Silicycle Inc.)を添加し、1時間激しく撹拌した。反応混合物を濾過し、濃縮した。生じた淡黄色の粘稠な油をラジアルクロマトグラフィーで精製し、極性の少ない化合物をER−878894(40mg)であると決定し、静置して結晶化した。
【0151】
I.D.6.:ER−878895の調製
【化26】
上記スキームXIVに描写した通り、ER−878894(65mg、0.14mmol)の0.1N NaOH/MeOH(3mL)溶液を、UV活性点の全てがTLCによって消滅するまで30分間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、粗製固体を水(2mL)中に溶解した。溶液をHClで中和し、溶媒を真空中で除去した。残渣を逆相分取用HPLCによって精製して、ER−878895(12mg、35%)を得た。
【0152】
表1は、本明細書に記載されている化合物の分析データを提供する。
【0153】
【表1-1】
【0154】
【表1-2】
【0155】
【表1-3】
【0156】
[実施例II]
シチジンデアミナーゼ(CDA)阻害のアッセイ
Cacciamani、T..ら.、Arch.Biochem.Biophys.1991、290、285〜92;Cohen R.ら、J.Biol.Chem.、1971、246、7566〜8;およびVincenzettiS.ら、Protein Expr.Purif.1996、8、247〜53によって記載されているシチジンデアミナーゼ(CDA)酵素アッセイを使用して、本明細書に記載されている化合物の阻害活性(IC
50)を決定した。このアッセイを使用し、これらの化合物のIC
50を、CDAによって触媒された脱アミノ化反応に起因する基質(シチジン)の減少を追うことによって決定した。時間の経過による基質(シチジン)の消滅を、反応物の280nmでの吸光度によって監視した。
【0157】
アッセイ反応は、96ウェルプレートフォーマットにおいて100μlの全体積のリン酸カリウム緩衝液(pH7.4、20mM、1mMのDTTを含有)中で実施した。最終反応混合物はシチジン(50μM)および精製ヒト組換えCDAを含有していた。精製酵素を希釈して、およそ2ミリの吸光度単位/分の吸光度変化を生じさせた。時間の経過による吸光度変化のベースライン測定を、基質(シチジン)添加の前に行った。基質添加後、吸光度変化を30分の間毎分、FlexStation(登録商標)3(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)で読み取った。各化合物に関して、8種の異なる濃度(10μM、3.33μM、1.11μM、0.37μM、0.12μM、0.041μM、および0.014μM、および0.0047μM)を使用して、反応を阻害した。各反応における時間の経過による吸光度変化の傾きを、SoftMax(登録商標)Pro5ソフトウェア(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)によって算出および使用して、IC
50値を得た。
【0158】
【表2】
【0159】
[実施例III]
IVおよびPO投与後のマウスにおけるER−876437およびER−876400の薬物動態
ER−876437およびER−876400を両方とも、尾静脈を介して静脈内に(IV)10mg/kg、および胃管栄養法を介して経口にて(PO、または経口的に)10mg/kgをマウスに投与した。全ての用量をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に調製し、5mL/kgの体積で投与した。1群当たり5匹のマウスをこれらの研究に使用した。血液試料を各マウスの尾静脈から所定の時点で連続して採取した。各群における全てのマウスからの血液試料を血漿の処理前に一緒に貯蔵した。貯蔵血液試料を回収後30〜60分以内に遠心沈殿させ、血漿を収集し、アッセイ用に凍結した。調製および抽出後、試料をLC/MS/MSでアッセイした。観察濃度(ng/mL)を下記表3で報告する。
【0160】
【表3】
【0161】
ER−876437およびER−876400の薬物動態学的(PK)パラメータを、Watson(登録商標)v.7.2を使用する非コンパートメント分析を介して算出した。生じたPKパラメータを下記表4および表5に提示する。
【0162】
【表4】
【0163】
【表5】
【0164】
本研究の結果は、雄性BALB−cマウスにおけるER−876437およびER−876400のPKプロファイルが同様であることを示唆している。10mg/kgのIVから、ER−876437およびER−876400のPKは、適度な分配(それぞれ、Vss=1.64L/kgおよび3.20L/kg)、緩徐なクリアランス(それぞれ、CL=0.77L/時間/kgおよび0.48L/時間/kg)、および緩徐な排出(それぞれ、t
1/2=6.1時間および16.1時間)を特徴とし得る。
【0165】
ER−876437およびER−876400をマウスにIV投与した後の全体的曝露(AUC
0〜∞)は、それぞれ13071ng/時間/mLおよび20999ng/時間/mLであり、それぞれ1307mL/gおよび2100mL/gの用量標準化曝露(AUC
0〜∞/D)をもたらした。10mg/kgのPOから、ER−876437およびER−876400のC
maxはそれぞれ8597ng/mLおよび7859ng/mLであり、それぞれ1.0時間および2.0時間のt
maxで観察された。10mg/kgのPO投与後のAUC
0〜tは、ER−876437およびER−876400が、それぞれ8579ng/時間/mLおよび13160ng/時間/mLであった。ER−876437のAUC
0〜∞は9499ng/時間/mLであり、t
1/2は16.3時間であった。末端排出相における不十分なデータのため、これらのパラメータはER−876400に関して決定することができなかった。さらに、PO投与後のER−876437に関するt
1/2は、IV投与後のt
1/2よりおよそ2.5倍高い。
【0166】
ER−876437およびER−876400の生物学的利用能(F%)はそれぞれ66.5および69.9%で同様だった。
【0167】
結論として、10mg/kgの単一のIVまたはPO用量後の雄性BALB−cマウスにおけるER−876437およびER−876400のPKプロファイルは同様である。しかし、正常の摂食条件下で、マウスは約5という高い胃のpHを有していることが留意される。引用することにより本明細書の一部をなすものとするSimpson、R.J.ら.「Forms of soluble iron in mouse stomach and duodenal lumen:significance for mucosal update」、British Journal of Nutrition.(63:79〜89(1990))を参照されたい。
【0168】
[実施例IV]
模擬胃液中での37℃におけるER−876400およびER−876437の安定性
この実施例は、室温(約25℃)および37℃で1.45のpHを有する模擬胃液におけるER−876400およびER−876437の安定性を記載する。ヒトに関して、絶食条件下で、胃のpHは1.4から2.1の範囲であると報告されている。引用することにより本明細書の一部をなすものとするKararli、T.T.Comparison of the GI anatomy, physiology, and biochemistry of humans and commonly used laboratory animals.BioPharm&DrugDispos.16:351〜380、1995を参照されたい。絶食させたサルにおける胃のpHは、1〜3の同様の範囲を有すると報告されている。引用することにより本明細書の一部をなすものとするKondo、H.ら、Characteristics of the gastric pH profiles of unfed and fed cynomolgus monkeys as pharmaceutical product development subjects.BioPharm&DrugDispos.24:45〜51、2003を参照されたい。
【0169】
材料:以下のものをHPLC用(または精製した)水100mL中に混合することによって模擬胃液(SGF)を調製した。塩化ナトリウム200mgおよび37.52%HCl原液1.87mL。
【0170】
試料調製:ER−876400またはER−876437をそれぞれ水中に希釈することによって初期(t=0)試料を調製した。分析物(ER−876400またはER−876437のいずれか)約2mgを模擬胃液約1.0mL中に37℃で溶解することによって全ての他の試料を調製した。
【0171】
Corona CAD検出を用いるWaters UPLC溶媒送達系を使用してHPLC分析を行った。HPLCカラム(Waters Atlantis HHS T32.1×100mm、1.8um)を40℃で保持し、98%水および2%アセトニトリルを含有する溶液で再平衡化した。温度制御オートサンプラーを37℃で保持した。水/MeCN移動相の流量は、試料注入(5μL)に続いて以下の通りのグラジエントで0.65mL/分であった。
グラジエント:時間(分) %水 %MeCN
0〜2 98 2
2〜2.5 (98%水/2%MeCN)から(60%水/40%MeCN)の直線グラジエント
2.5〜3.5 60 40
【0172】
以下、これらのHPLC−SGF分解研究において、5μLの分量をSGF/分析物溶液から何度も取り、上述されている特徴および条件を持つHPLCカラム上に充填した。水/MeCN移動相を上述されている流量およびグラジエントでカラムに適用し、HPLCクロマトグラムを回収した。3.5分後、カラムを98%水/2%MeCNで1.5分間再平衡化した。
【0173】
水中のER−876400またはER−876437のいずれかのHPLCクロマトグラムにより、ER−876400またはER−876437に起因するピークを同定した。ER−876400またはER−876437を用いないSGFのHPLCトレースにより、SGF関連ピークを同定しおよびそれらのピークを分析物のピークと識別するのに使用することができるブランク(またはバックグラウンド)クロマトグラムが提供された。クロマトグラムを表6および表7において同定されている時間に回収し、ER−876400またはER−876437のいずれかにそれぞれ起因する試料の対応する百分率を各サンプリング時間に与えた。これらの結果は、
図1および
図2においてもプロットとして描写されている。
【0174】
【表6-1】
【0175】
【表6-2】
【0176】
【表7-1】
【0177】
【表7-2】
【0178】
結論:模擬胃液中において37℃で、ER−876400は30秒未満内で50%分解することが判明し、一方ER−876437は、およそ4〜6時間の半減期を有する。
【0179】
[実施例V]
生存マウスのリンパ腫L1210モデルにおけるデシタビンに対するER−876437の効果
この研究の目的は、ER−876437がマウスのL1210生存モデルにおけるデシタビンの経口効力を増強するかどうかを決定することであった。
【0180】
L1210細胞の調製:マウス中のL1210細胞を少なくとも3回、以下の通りに通過させることにより、L1210腹水細胞を調製した。各CD2F1雌性マウスに約10
5個のL1210腹水細胞を腹腔内に(IP)注射した。1週間後、マウスを堵殺した(CO
2を介する窒息)。マウスを仰向けに置き、その腹部表面をアルコールで拭いて洗浄し、小さな切込みを腹膜腔に入れた。生理食塩水中の氷冷2.1%BSA2mlを該腔に注射し、次いで流体を取り除き、18G 3ccシリンジで清潔な滅菌チューブに移し、氷上で保持した。流体を生理食塩水中の2.1%BSA中に1:10で希釈し、1滴のZap oグロビンII溶解試薬(Beckman Coulter、Inc.から入手可能)を、希釈した腹水1mlに添加した。希釈した腹水(再度1:10に希釈)を血球計数器で計数し、1mL当たりの細胞数を算出した。約10
5個のL1210細胞を、別のマウス継代のための後続継代用に使用した。または、BSA溶液中のL1210腹水原液を、研究マウスに使用するため1×10
4細胞/0.1mlに希釈した。
【0181】
研究マウスの調製:35CD2F1の6〜7週齢雌性マウスを、表8において同定されている7つの群に無作為に分けた。投薬を開始する1日前に、(上記した通りに調製した)L1210腹水の静脈内(IV)注入でマウスを調製した。マウスに尾静脈を介して27G針で細胞溶液0.1mlを注射した。全マウスのIV注入は合計で約50分かかった。
【0182】
デシタビンを投薬する30分前に、ビヒクルまたはER−876437を経口で(PO、即ち、経口的に)マウスに投薬した。ER−876437をPBS中1mg/mlで調製し、次いで、より低い用量のためPBS中0.1mg/mlおよび0.01mg/mlに希釈した。
【0183】
デシタビンをPBS中1mg/ml原液で調製し、適当に希釈して、0.01mg/mlの投薬溶液に達した。投薬する各日の始めにER−876437を調製し、4℃で貯蔵した。投薬の直前に、デシタビンを1日2回新たに調製した。投薬の間、全ての溶液を氷上で貯蔵した。マウスに(腹腔内に(IP)または経口で(経口的に、PO))1日2回(8時間離す)連続4日間投薬した。最終投薬スキームならびにデシタビンおよびER−876437の総用量を表8に概略する。
【0184】
【表8】
【0185】
生存および検死解剖:研究(30日)の持続期間中、生存についてマウスを観察し、毎日(月曜〜金曜)体重を測定した。死亡マウスを検死解剖し、器官中の腫瘍の存在を観察した。Covey JMおよびZaharko DS、Eur J Cancer Clin Oncol、21巻109〜117ページ、1985年に従い、1.6gを超える肝臓重量および150mgを超える脾臓重量によって、腫瘍死を決定した。
【0186】
結果
デシタビンおよびデシタビン+ER−876437を投薬したマウスは、ビヒクル対照およびER−876437単独より長く生きた(表9および表10;p<0.05)。デシタビンと組み合わせたER−876437では用量応答が認められなかった。
【0187】
0.1mg/kgデシタビンPOは、0.1mg/kgデシタビンIPより僅かに有効でなかった(表9および表10;p=0.0047)。ER−876437と0.1mg/kgデシタビンとの同時投与は、ER−876437の用量にかかわらず、0.1mg/kgデシタビンPOまたはIPと比較して生存(日)を有意に増強した(表9および表10;p<0.05)が、ER−876437の用量間の用量応答はなかった。
【0188】
表9は、ビヒクル群と比較した各治療群の平均生存およびパーセントILS(寿命の増加)を列挙している。全ての治療群が、ビヒクル対照群およびCDA阻害剤単独群より有意に長く生きた(p<0.05)。
【0189】
表9に列挙されているのは、検死解剖におけるマウスの肝臓および脾臓の重量である。全てのマウスは、1.6グラムを超える肝臓重量および150mgを超える脾臓重量によって示されている通り(Coveyら、Eur J Cancer Oncol 1985)、「腫瘍負荷」関連死で死亡した。
【0190】
腹膜腔および胸腔の全体の外観に関する巨視的観察に留意したが、これらの観察の公式分析はなかった。
【0191】
【表9】
【0192】
【表10】
【0193】
結論
デシタビン+ER−876437は、デシタビンの経路投与(POまたはIP)にかかわらず、L1210のIV生存モデルにおいてデシタビン単独より有効であった。ER−876437+デシタビン群の0.1mg/kg、1mg/kgおよび10mg/kgの間では用量応答がなかった。この実験を実施例VIにおいて反復したが、より低い用量のER−876437を使用して、最小有効量を決定した。
【0194】
[実施例VI]
生存マウスのリンパ腫L1210モデルにおけるデシタビンに対するER−876437の効果
この実施例は、以下の変更を伴う、実施例Vの全ての方法およびプロトコールに従った。40CD2F1の6〜7週齢雌性マウスを、表11において同定されている8つの群に無作為に分けた。L1210腹水のIV注入による研究マウスの調製は約60分かかった。ER−876437をPBS中1mg/mlで調製し、次いでPBS中0.1mg/ml、0.01mg/mlおよび0.001mg/mlに希釈した。投薬する間、全ての溶液を氷上で貯蔵した。1日2回(7時間または8時間離す)連続4日間マウスに(IPまたはPO)投薬した。
【0195】
【表11】
【0196】
結果
デシタビンおよびデシタビン+ER−876437を投薬したマウスは、ビヒクル対照およびER−876437単独より長く生きた(表12および表13;p<0.05)。7時間または8時間離して投薬した場合、0.1mg/kgデシタビンPOを投薬したマウスの生存に差異がなかった(表12および表13)。
【0197】
0.1mg/kgデシタビンPOは、0.1mg/kgデシタビンIPより有効ではなかった(表12および表13;p=0.0086)。0.01mg/kgのER−876437と0.1mg/kgのデシタビンPOとの同時投与は、デシタビンPO単独と比較して、L1210白血病マウスの生存を延長することに効果がなかった。0.1mg/kgおよび1mg/kgのER−876437と0.1mg/kgのデシタビンPOとの同時投与は、0.1mg/kgのデシタビンPO単独と比較して生存(日)を有意に増強した。0.1mg/kgおよび1mg/kgと0.1mg/kgのデシタビンPO単独との同時投与は、IPを介して投与した0.1mg/kgデシタビンと統計的に異なっていなかった。ER−876437は、これらの低用量で僅かな用量応答があった。0.01mg/kgは、経口的に送達されたデシタビンの効果を増強するのに有効ではなかったが、0.1mg/kgおよび1mg/kgの両方は、生存を有意に増強した(それぞれp=0.04およびp=0.005;表13)。POデシタビンと組み合わせたER−876437の、より高い2つの用量は、僅かな用量応答があった(p=0.09;表13)。
【0198】
表12は、ビヒクル群と比較した各治療群の平均生存およびパーセントILS(寿命の増加)を列挙している。全ての治療群は、ER−876437のみを与えられたビヒクル対照および群より有意に長く生きる(p<0.05)。
【0199】
表12に列挙されているのは、検死解剖でのマウスの肝臓および脾臓の重量である。全てのマウスは、1.6グラムを超える肝臓重量および150mgを超える脾臓重量によって示されている通り、「腫瘍負荷」関連死で死亡した(Covey JMおよびZaharko DS、Eur J Cancer Clin Oncol、21巻109〜117ページ、1985年)。
【0200】
腹膜および胸腔の全体の外観に関して巨視的観察に留意したが、これらの観察の公式分析がなかった。
【0201】
【表12】
【0202】
【表13】
【0203】
結論
0.1mg/kgおよび1mg/kgの両方におけるER−876437と0.1mg/kgのデシタビンPOとの同時投与は、マウスのL1210生存モデルにおいて、PO単独で投与したデシタビンと比較して生存を増強したが、IPで投与したデシタビンでは増強しなかった。試験した最低用量(0.01mg/kg)は、POを介して投与した場合、0.1mg/kgのデシタビンで治療したマウスの生存を増強するのに効果がなかった。デシタビンと組み合わせたER−876437の、より高い2つの用量は、僅かな用量応答があった(p=0.09)。このモデルにおけるER−976437の最小有効量は0.1mg/kgであることが判明した。
【0204】
7時間または8時間離して0.1mg/kgのデシタビンPO2x/日 qd×4を投薬したマウスの生存に差異はなかった。
【0205】
本明細書に記載されている全ての文献または特許出願は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0206】
[実施例VII]
CDAの存在下トリス−HCl緩衝液中での37℃における半減期に対するER−876437の効果
この実施例は、シチジンデアミナーゼ(CDA)の存在下トリス−HCl緩衝液中での37℃におけるデシタビン(エーザイ)の半減期(T
1/2)に対するER−876437の効果を説明している。
【0207】
材料および装置
この実施例には、フェノメネクスルナC18(2)HPLCカラム(100Å4.6×250mm5μm)を用いた。溶媒送達系には、HPLCクォータナリポンプ低圧ミキシングを用いた。可変ループ、0.1μLから100μLの範囲および温度制御サーモスタットを有するオートサンプラーを使用した。UV検出器には、二波長検出器、ダイオードアレイ検出器、可変波長検出器または同等物を用いることができ、クロマトグラフィーソフトウェア(例えば、Waters Empower2 Build2154、HPLC用のAgilent ChemStationソフトウェアバージョンA.09.03以上、または同等物)を使用して記録することができる。用いた分析用天秤は、±0.1mgを秤量することが可能であった。脱気したHPLC用の水および脱気したHPLC用のアセトニトリルを移動相の溶媒として使用した。
【0208】
下記溶液を製作するために使用する希釈溶液は、トリス−HCl(37℃、pH7.4、Boston BioProducts)だった。希釈溶液は、UVスペクトル用のブランクとしても働く。
【0209】
デシタビン標準対照:10mL容量フラスコ中でデシタビン2.6mgを秤量することによって、0.2mMのデシタビン対照を調製した。フラスコを、37℃で貯蔵したトリス−HCl緩衝液で体積まで希釈し、反転によって混合した。該溶液をデシタビン原液として標識した。デシタビン原液1.0mLを5mL容量フラスコに移し、希釈溶液で体積まで希釈し、反転によって混合した。
【0210】
ER−876437標準対照:10mL容量フラスコ中に5.2mgのER−876437を秤量することによって、0.4mMのER−876437対照を調製した。フラスコを、37℃で貯蔵したトリス−HCl緩衝液で体積まで希釈し、反転によって混合した。溶液をER−876437原液として標識した。ER−876437原液1.0mLを5mL容量フラスコに移し、希釈溶液で体積まで希釈し、反転によって混合した。
【0211】
CDAとのデシタビン:デシタビン原液1.0mLを5mL容量フラスコに移した。希釈溶液およそ2〜3mLをフラスコに移した。CDA溶液0.125mLをフラスコに移し、希釈溶液で体積まで希釈した。試料を反転によって混合し、調製した直後にHPLCに注入した。
【0212】
CDAおよびER−876437とのデシタビン:ER−876437原液1.0mLを5mL容量フラスコに移した。希釈溶液およそ2mLをフラスコに移した。CDA溶液0.125mLをフラスコに移した。デシタビン原液1.0mLを同じフラスコに移し、希釈溶液で体積まで希釈した。試料を反転によって混合し、調製した直後にHPLCに注入した。
【0213】
HPLCパラメータ:表14に示すパラメータを使用し、上記の標準および試料をHPLCカラム上に流した。
【0214】
【表14】
【0215】
デシタビンのための保持時間はおよそ8分であると判明し、ER−876437の保持時間はおよそ21.8分であると判明した。
【0216】
結果および考察
【0217】
【表15】
【0218】
デシタビン濃度を、CDAの存在下および非存在下、ER−876437の有無において、トリス−HCl緩衝液中37℃で、UV検出を使用するHPLC分析によって測定した。安定性試料におけるデシタビンピークおよびER−876437ピークの領域を測定し、デシタビンおよびER−876437の標準対照の領域とそれぞれ比較した。結果を対照のパーセント残留として報告した。
【0219】
データを205nmのUVで回収したのは、デシタビンおよびER−876437が、このUV最大値を共有しているからであった。
図3を参照されたい。結果を35分毎に12時間、その後は分析方法の長さにより断続的に獲得した。特定の時点で重ね合わさったトレースを示すHPLCクロマトグラムを、
図4および
図5に示す。
【0220】
これらの図におけるHPLCクロマトグラムは、透明度のための一定の付加オフセットとともに示されている。時間=0.00分で出発する下部トレースが示されているが、それぞれの順次クロマトグラムは、ピークが重複するのを回避するために、前のクロマトグラムの右に(一定の時間で)任意にシフトされている。これらのクロマトグラムに示されているピークに関連する実際の時間は、クロマトグラムのトレース(左手側)の開始を、時間が0.00分に等しい縦軸の後方にシフトすることによって実現することができる。同様に、任意のピークの実際のUV吸収は、クロマトグラムのベースラインを、mAU=0.00である位置にシフトすることによって実現することができる。
【0221】
CDAの非存在において、デシタビン濃度の50%低減が9時間後に観察されたが、CDAの存在下、デシタビンの濃度は2時間後にほぼ0%対照まで低減され、T
1/2はおよそ23分であると推定された。ER−876437がインキュベーション混合物へ添加されることにより、9時間後に観察されたデシタビン濃度の50%低減とともに反応の阻害がもたらされた。デシタビンとともにCDAに12時間曝露した後、ER−876437の濃度は影響されなかった。全ての結果の概要を
図6に示す。
【0222】
CDAの存在下トリス−HCl緩衝液中での37℃におけるデシタビンの推定T
1/2は、23分であると判明した。ER−876437はこの効果をほぼ完全に阻害し、トリス−HCl緩衝液中での37℃(9時間)におけるデシタビン単独と同じT
1/2をもたらした。