特許第5730859号(P5730859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730859
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】昇華転写用インク及び昇華転写印刷方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/00 20140101AFI20150521BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20150521BHJP
   B41M 5/382 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   C09D11/00
   B41M5/00 A
   B41M5/00 E
   B41M5/26 101
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-511680(P2012-511680)
(86)(22)【出願日】2011年4月20日
(86)【国際出願番号】JP2011059684
(87)【国際公開番号】WO2011132695
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2012年10月11日
【審判番号】不服2013-24281(P2013-24281/J1)
【審判請求日】2013年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2010-100050(P2010-100050)
(32)【優先日】2010年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100077621
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100146075
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100092819
【弁理士】
【氏名又は名称】堀米 和春
(74)【代理人】
【識別番号】100141634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 善博
(74)【代理人】
【識別番号】100141461
【弁理士】
【氏名又は名称】傳田 正彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜二
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 武之
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆昭
【合議体】
【審判長】 藤原 敬士
【審判官】 大瀧 真理
【審判官】 清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−21133(JP,A)
【文献】 特開2010−84066(JP,A)
【文献】 特開平11−228897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M5/00-5/52
C09D11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの全量に対して、プロピレングリコール又はエチレングリコールよりなるジオール30質量%とジグリセリン5質量%とからなる保湿剤と、水と、昇華性染料とを含有することを特徴とする昇華転写用インク。
【請求項2】
転写媒体に請求項1記載の昇華転写用インクを塗布する塗布工程と、
前記昇華転写用インクを塗布した前記転写媒体を加熱して、被転写物に前記転写媒体に塗布した前記昇華転写用インクを転写する昇華転写工程と、を備えることを特徴とする昇華転写印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華転写用インク及び昇華転写印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇華転写印刷では、通常、プリンターで昇華転写用インクを転写紙にプリントした後、転写紙と被転写物とを重ねて高温の転写機に通すことにより、昇華転写用インクに含まれる昇華性染料が被転写物に転写される。
【0003】
昇華転写用インクに対する要求特性として、保湿性がある。昇華転写用インクは、通常、溶剤として水を含有しているため、保湿性が十分でないと、保管中に溶剤である水が揮発して昇華転写用インクの濃度変化が生じてしまう等の問題が生じる。
【0004】
そのため、従来、昇華転写用インクとしては、水、保湿剤、昇華性染料及び分散剤を含有するインクが用いられており、当該保湿剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール等の高沸点有機溶剤が用いられている。
【0005】
しかしながら、保湿剤として上記高沸点有機溶剤を用いた場合、転写機に通した際に発煙が生じてしまい作業環境が悪化するという問題があった。この問題を解決するため、特許文献1には、保湿剤として4個以上のOH基を有する糖アルコールを含有する昇華転写用インクジェット記録用インクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−107647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような昇華転写印刷では、インク転写紙と布とを重ねたときににじみが生じることを防ぐため、転写紙にプリントした昇華転写用インクを十分に乾燥させる必要がある。このような観点から、昇華転写用インクは乾燥性が良好であることが好ましい。特に、近年の印刷技術の高速化に伴って、昇華転写用インクの乾燥にかかる時間を短縮することが必要となり、昇華転写性インクの乾燥性向上が求められている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の昇華転写用インクジェット記録用インクは、発煙量の低減に関しては一定の効果を奏するものの、乾燥性が非常に悪く、転写紙上で長時間の乾燥が必要であったり、十分に乾燥することが困難であったりするという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、乾燥性に優れ、十分な保湿性を有し、且つ発煙量が少ない昇華転写用インクと、当該昇華転写用インクを用いた昇華転写印刷方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討を行い、特定のジオールとジグリセリンとを所定量含有する昇華転写用インクが、優れた乾燥性と十分な保湿性を両立し、且つ、昇華転写時の発煙を抑制できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、インクの全量に対して、プロピレングリコール又はエチレングリコールよりなるジオール30質量%とジグリセリン5質量%とからなる保湿剤と、水と、昇華性染料とを含有することを特徴とする昇華転写用インクを提供する。
【0012】
本発明に係る昇華転写用インクは、上記ジオールとジグリセリンとを上記所定量含有することにより、乾燥性に優れ、十分な保湿性を有し、且つ加熱による昇華転写時に生じる発煙が少ないという特徴を有する。また、本発明に係る昇華転写用インクは、インクジェット方式に適用した場合の吐出安定性にも優れるものである。
【0014】
本発明はまた、転写媒体に上記昇華転写用インクを塗布する塗布工程と、上記昇華転写用インクを塗布した上記転写媒体を加熱して、被転写物に上記転写媒体に塗布した上記昇華転写用インクを転写する昇華転写工程と、を備えることを特徴とする昇華転写印刷方法を提供する。
【0015】
本発明に係る昇華転写印刷方法によれば、本発明に係る昇華転写用インクを用いているため、昇華転写工程において生じる発煙量を十分少なくすることができる。また、本発明に係る昇華転写用インクは乾燥性に優れるため、上記塗布工程の後、短時間で上記昇華転写工程を実施することができる。そのため、本発明に係る昇華転写印刷方法によれば、良好な作業環境の下、短時間で昇華転写印刷を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、乾燥性に優れ、十分な保湿性を有し、且つ発煙量が少ない昇華転写用インクと、当該昇華転写用インクを用いた昇華転写印刷方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る昇華転写用インク及び昇華転写印刷方法の好適な実施形態について以下に説明する。
【0018】
(昇華転写用インク)
本実施形態に係る昇華転写用インクは、インクの全量に対して、プロピレングリコール又はエチレングリコールよりなるジオール30質量%とジグリセリン5質量%とからなる保湿剤と、水と、昇華性染料とを含有することを特徴とする。
【0019】
本実施形態に係る昇華転写用インクは、上記ジオールとジグリセリンとを上記所定量含有するため、優れた乾燥性と十分な保湿性とを両立することができる。また、本実施形態に係る昇華転写用インクによれば、昇華転写時に生じる発煙の量が少なく、良好な作業環境を維持することができる。
【0020】
上記ジオールにかえて、上記以外のアルコール化合物を用いた場合、昇華転写時の発煙量が増加する。例えば、グリセリン、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等を、上記ジオールにかえて用いた場合、昇華転写時の発煙量が多く、作業環境が悪化してしまう。
【0028】
本実施形態に係る昇華転写用インクにおける水の含有量は、昇華転写用インクの全量基準で5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量であることがより好ましい。
【0029】
昇華性染料としては、昇華性を有する分散染料、昇華性を有する油溶性染料等が挙げられ、これらのうち分散染料が特に好ましい。
【0030】
昇華性染料としては、大気圧下、70〜260℃で昇華又は蒸発する染料が好ましい。また、昇華性染料としては、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、スチリル系染料、ジフェニルメタン系染料、トリフェニルメタン系染料、オキサジン系染料、トリアジン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料、アゾメチン系染料、アクリジン系染料、ジアジン系染料等が挙げられる。
【0031】
分散染料としては、例えば、C.I.Disperse Yellow:3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232、
C.I.Disperse Orange:1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142、
C.I.Disperse Red:1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328、
C.I.Disperse Violet:1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77、
C.I.Disperse Green:9、
C.I.Disperse Brown:1、2、4、9、13、19、
C.I.Disperse Blue:3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、359、
C.I.Disperse Black:1、3、10、24、
等が挙げられる。
【0032】
昇華性染料の含有量は、昇華転写性インクの全量基準で0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。昇華性染料の含有量が上記範囲内であることで、昇華転写性インク中での昇華性染料の分散が生じ難くなり、保存安定性に優れるようになる。また、乾燥性、保湿性及びインクジェット方式に用いた場合の吐出安定性がいずれも優れるようになる観点から、2〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0033】
本実施形態に係る昇華転写性インクは、昇華性染料の分散安定性を向上させる目的で、分散剤を含有していてもよい。分散剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、高分子分散剤等を、単独あるいは混合して使用することができる。
【0034】
アニオン性界面活性剤としては、リグニンスルホン酸塩類;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類;ナフタレンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、クレゾールスルホン酸塩、2−ナフトール−6−スルホン酸塩、クレゾールスルホン酸塩、クレオソート油スルホン酸塩等のスルホン酸塩のホルマリン縮合物;等が挙げられる。
【0035】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアセチレングリコール、ポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
【0036】
高分子分散剤としては、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等を含有する分散剤、具体的には、アジスパーPB−821、アジスパーPB822、アジスパーPB880(以上、商品名、味の素ファインテクノ株式会社製)、ソルスパース20000、ソルスパース27000、ソルスパース41000、ソルスパース43000、ソルスパース44000、ソルスパース46000、ソルスパース54000(以上、商品名、ルーブリゾール社製)、DISPERBYK、DISPERBYK−180、DISPERBYK−183、DISPERBYK−184、DISPERBYK−185、DISPERBYK−187、DISPERBYK−190、DISPERBYK−191、DISPERBYK−192、DISPERBYK−193、DISPERBYK−194、DISPERBYK−2010、DISPERBYK−2090、DISPERBYK−2091、DISPERBYK−2095、DISPERBYK−2096、BYK−154(以上、商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0037】
分散剤の含有量は、昇華転写性インクの全量基準で、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。分散剤の含有量が上記範囲内であることで、昇華転写性インクの保存安定性が一層向上する。
【0038】
本実施形態に係る昇華転写性インクは、その他各種添加剤を本発明の目的の達成を妨げない範囲において添加することができる。添加剤としては、例えば、表面調整剤、ヒドロトロープ剤、pH調整剤、粘度調整剤、防腐剤、防かび剤、光安定化剤、キレート化剤、消泡剤等が挙げられる。
【0039】
(昇華転写印刷方法)
本実施形態に係る昇華転写印刷方法は、本実施形態に係る昇華転写用インクを転写媒体に塗布する塗布工程と、上記昇華転写用インクを塗布した上記転写媒体を加熱して、被転写物に上記転写媒体に塗布された上記昇華転写用インクを転写する昇華転写工程と、を備えることを特徴とする。
【0040】
本実施形態に係る昇華転写印刷方法によれば、本実施形態に係る昇華転写用インクを用いているため、昇華転写工程において生じる発煙の量が少ない。また、本実施形態に係る昇華転写用インクは乾燥性に優れるため、上記塗布工程の後、短時間で上記昇華転写工程を実施することができる。そのため、本実施形態に係る昇華転写印刷方法によれば、良好な作業環境の下、短時間で昇華転写印刷を行うことができる。また、本実施形態に係る昇華転写用インクは、乾燥性に優れるため、印刷後のべとつきが少なくなる。
【0041】
転写媒体としては、例えば、公知の転写紙を使用することができる。より具体的には、例えば、ミマキエンジニリアリング社製の転写紙N51、転写紙N63、転写紙73、転写紙92g及び転写紙135JT、Coldenhove社製のJetcol HTR1000、Jetcol HTR2000、Jetcol HTR3000、Jetcol HTR4000、Jetcol High Speed、Jetcol OS及びJetcol TA、Qualimage社製のTRANSJET Classic、TRANSJET Express、TRANSJET Spotsline、TRANSJET PRO及びTRANSJET Sapphireが挙げられる。転写紙としては、コックリングが起こり難い、乾燥が速い、転写効率が良い、インクが裏抜けしない等の性能を有しているものが好ましい。
【0042】
塗布工程における昇華転写用インクの塗布は、製版の必要がなく、多品種の製造に迅速に対応できる観点から、インクジェット方式により行うことが好ましい。インクジェット方式としては、サーマル方式、コンティニュアス方式、ピエゾ方式等のインクジェット方式を用いることができる。本実施形態に係る昇華転写用インクは、乾燥性と保湿性とを両立できるため、インクジェット方式により塗布を行う際に、インクジェットヘッドのクリーニング性が良好となる。
【0043】
昇華転写工程においては、転写媒体を、70〜260℃で加熱することが好ましく、150〜230℃で加熱することがより好ましい。加熱時間は、10〜300秒であることが好ましく、30〜120秒であることがより好ましい。
【0044】
昇華転写工程は、例えば、昇華転写インクを塗布した転写媒体と被転写物とを、昇華転写用インクを介して対向配置して、熱プレス機等により加熱加圧することにより、被転写物に昇華転写用インクを転写する。
【0045】
被転写物としては、昇華転写により染色可能な素材を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等の樹脂フィルム;ポリエステル、ポリエステル/綿、アセテート、ナイロン等からなる布;等が挙げられる。これらの被転写物は、昇華転写用インクのにじみを防止する等の目的で、種々の前処理が施されていても良い。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
プロピレングリコール、ジグリセリン、染料(Disperse Yellow54)、分散剤(ナフタレンスルホン酸塩)、界面活性剤(サーフィノール465)、防腐剤(プロキセルXL2、Arch Chemicals社製)及び水を、表1に記載の配合比(質量比)で混合して、昇華転写用インクを調製した。調製した昇華転写用インクについて、下記の試験方法により、発煙性、保湿性、乾燥性及び吐出性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0049】
[発煙性の評価]
インクジェットプリンタ(TX400−1800D、ミマキエンジニアリング社製)で昇華転写用インクを転写紙(Jetcol OS)にプリントし、プリント後の転写紙とポリエステルの被転写物(ポリエステル布帛ポンジ)とを熱プレス機(HASHIMA社製)で200℃、60秒間プレスして昇華転写用インクを転写した。このときの発煙量を観察し、ほとんど発煙がない場合をA、少し発煙があった場合をB、発煙量が多かった場合をCとして、評価した。
【0050】
[保湿性の評価]
昇華転写用インク10gを面積30cmのシャーレにいれ、30℃、湿度50%の環境下で1時間放置した。放置後の昇華転写用インクの質量を測定し、質量変化量が20%未満であった場合をA、20%以上40%未満であった場合をB、40%以上であった場合をCとして、評価した。
なお、質量変化量は、下記式によって計算される。
質量変化量(%)=(放置前の質量−放置後の質量)×100/(放置前の質量)
【0051】
[乾燥性の評価]
インクジェットプリンタ(TX400−1800D、ミマキエンジニアリング社製)で昇華転写用インクを転写紙(Jetcol OS)に、単位面積1mあたり8mgの吐出量でプリントした。プリントから5分後に、インクが乾燥していた場合をA、少し乾燥しているが、完全に乾燥しているとはいえなかった場合をB、乾燥していなかった場合をCとして、評価した。
【0052】
[吐出性の評価]
インクジェットプリンタ(TX400−1800D、ミマキエンジニアリング社製)で昇華転写用インクを転写紙(Jetcol OS)に、単位面積1mあたり8mgの吐出量でプリントした。5mの範囲にプリントを行い、安定に昇華転写用インクが吐出されているか観測した。吐出異常が見られたノズルが0本であった場合をA、1〜3本であった場合をB、4本以上であった場合をCとして、評価した。
【0053】
(実施例2)
エチレングリコール及びジグリセリンと、実施例1と同様の染料、分散剤、界面活性剤及び防腐剤と、水とを、表1に記載の配合比(質量比)で混合して、昇華転写用インクを調製した。調製した昇華転写用インクについて、実施例1と同様の試験方法により、発煙性、保湿性、乾燥性及び吐出性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0054】
(比較例1)
プロピレングリコール及びジグリセリンと、実施例1と同様の染料、分散剤、界面活性剤及び防腐剤と、水とを、表1に記載の配合比(質量比)で混合して、昇華転写用インクを調製した。調製した昇華転写用インクについて、実施例1と同様の試験方法により、発煙性、保湿性、乾燥性及び吐出性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0055】
(比較例2)
エチレングリコール及びジグリセリンと、実施例1と同様の染料、分散剤、界面活性剤及び防腐剤と、水とを、表1に記載の配合比(質量比)で混合して、昇華転写用インクを調製した。調製した昇華転写用インクについて、実施例1と同様の試験方法により、発煙性、保湿性、乾燥性及び吐出性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0056】
(比較例3〜10)
表1に記載のジオールと、実施例1と同様の染料、分散剤、界面活性剤及び防腐剤と、水とを、表1に記載の配合比(質量比)で混合して、昇華転写用インクを調製した。調製した昇華転写用インクについて、実施例1と同様の試験方法により、発煙性、保湿性、乾燥性及び吐出性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0057】
(比較例11〜14)
表1に記載のジオールと、グリセリンと、実施例1と同様の染料、分散剤、界面活性剤及び防腐剤と、水とを、表1に記載の配合比(質量比)で混合して、昇華転写用インクを調製した。調製した昇華転写用インクについて、実施例1と同様の試験方法により、発煙性、保湿性、乾燥性及び吐出性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】