(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
電気化学セルは、現在、広範な消費者向け装置のための費用効果の高い携帯用電源を提供する好ましい方法である。消費者向け装置の市場には、僅かに一握りの標準セルサイズ(例えば、AA又はAAA)及び特定の公称電圧(典型的には1.5V)を提供することが要求される。更に、デジタルスチルカメラのような益々多くの消費者向け電子装置が、比較的高い電力作動要件で設計されている。市場での慣例であるが、消費者は、多くの場合、現在利用可能な再充電可能(すなわち、2次)バッテリと比較すると、1次バッテリをその利便性、信頼性、持続的な在庫保存期間、及び単位価格当たりの経済性のために使用することを好みかつ選択する。
【0004】
この状況の中で、1次(すなわち、再充電不能)バッテリの製造業者のための設計選択が非常に制限されることは容易に明らかである。例えば、指定した公称電圧を使用する必要性により、可能な電気化学材料の選択が大幅に制限され、標準化されたセルサイズの使用により、このような消費者向け製品において一般的に予想される活物質、安全装置、及び他の要素のために利用することができる全体的な利用可能内部容積は制限される。更に、様々な消費者向け装置及びこれらの装置の作動電圧の範囲は、より小さな公称電圧のセル(これらは、個別に又は連続して提供することができ、それによって装置製造業者により多くの設計選択肢を与える)を一般的に2次バッテリに関連のより高い電圧の電気化学的ペアリングと比較してより多様にする。従って、アルカリ又はリチウム−二硫化鉄システムのような1.5Vシステムは、3.0V及びそれより高いリチウム−二酸化マンガンのような他のものよりも遥かに有望である。
【0005】
1.5Vシステムの範囲で、リチウム−二硫化鉄バッテリ(LiFeS
2、リチウムパイライト、又はリチウム黄鉄鉱とも呼ばれる)は、アルカリ、炭化亜鉛、又は他のシステムと比較する時に、特に高いドレイン率でより高いエネルギ密度を示している。しかし、リチウム(アノードにおいて好ましい電気化学的に活性な材料)の量に対する現在の法的な制限は、FR03(AAAのLiFeS
2セル)及びFR6(AAのLiFeS
2セル)のサイズを消費者市場内のこの化学的性質に対して最も重要なセルサイズにする。
【0006】
1.5V電気化学システム(例えば、アルカリ対リチウム−二硫化鉄、その他)に関する設計考慮事項は、有意に異なっている。例えば、アルカリ及びオキシ水酸化ニッケルシステムは、気体膨脹及び/又は漏出傾向がある水性で高苛性の電解質に依存し、内部材料の選択及び/又は容器及び閉鎖部との適合性を考慮する時に非常に異なる手法をもたらす。再充電可能な1.5Vシステム(リチウム−二硫化鉄システムは、現在、消費者ベースの再充電可能システムに適するとは考えられていない点に注意されたい)において、様々な高度に指定した電気化学的及び/又は電解質の組成物を使用して、リチウムイオン充電/放電サイクルに最も良く適合することができる。ここで、このような高額な構成要素は、2次システムが典型的にはこれらの1次バッテリの均等物よりも高い小売価格で販売されるために主要な設計問題ではない。更に、放電機構、セルの設計、及び安全性の考慮事項は、全体的に1次システムには重要でなく、及び/又は適用できない。
【0007】
容量の改善は、基本的に良好なバッテリ設計を表している。すなわち、より大きい容量を供給するためには、放電中のリチウム−二硫化鉄バッテリにおいて働く半径方向膨張力及び他の力学について慎重に考慮すべきである。例えば、設計によりアノード又はカソード集電体の厚みが不十分である場合には、放電中の半径方向の力は、一方又は両方の電極が切断されるほどまでゼリーロールを圧縮する可能性があり、この切断が起こった状態で、バッテリは、活物質が全て放電されたか否かに関わらず、容量の供給を停止する可能性がある。同様の状況は、空隙容積(カソードコーティングにおける及び全体としてセルの内部における)、バッテリ全体の電気接続、セパレータ、バッテリの閉鎖/通気機構などに対して生じる。従って、LiFeS
2セルの容量は、特に、セルの設計者が標準サイズの消費者向けバッテリ(例えば、AA又はFR6、AAA又はFR03、その他)の使用に制限される時に、セルの設計の全体的な実行可能性及び堅牢性に対する重要な測定基準になる。
【0008】
バッテリ設計に対する事実上の測定基準として作用する容量の当然の結果として、当業者は、バッテリ全体を考慮して設計選択及び特に特定の構成要素の選択をする必要があることを認めるであろう。特定の組成物は、セル内の他の構成要素及び組成物に対して驚くべき予期しない又は意図しない影響を与える場合がある。同様に、標準サイズのバッテリにおいては、特定的な要素の選択は、そうでなければ他の要素に利用可能であると考えられる容器内の容積を占有する。従って、設計選択のこの相互依存性は、容量のいずれの増加も、特に、他の点ではバッテリの安全性又は性能に悪影響を与えない増加も、より多くの活物質を加える簡単な行為を遥かに超えたものであることを必然的に意味する。
【0009】
LiFeS
2システムのセルの設計に関する更に別の重要な考慮事項は、セルの内部抵抗を最小にすることに関する。一般的には、内部抵抗は、セルを作るのに使用する構成要素によって生じ、以下のように表すことができる:
【0010】
R
セル=R
容器+R
電極アセンブリ
【0011】
容器構成要素からの抵抗(R
容器)は、缶(外部接触端子を含む)、内部電気接続(例えば、溶接又は圧力接触)、内部安全装置(例えば、PTC)などによって生じる抵抗を含む。典型的には、これらの容器構成要素からの抵抗は、比較的予想可能で制御しやすい方式で挙動することになり、それによって比較的簡単にこの寄与を最小にする。
【0012】
しかし、電極アセンブリによって生じた抵抗(R
電極アセンブリ)は、この抵抗が予想して制御することが遥かに困難であるので、設計の全体の品質のインジケータとすることができる。更に、アノードが本質的に高導電性リチウム又はリチウムベースの合金から構成されるリチウムセルにおいて、電極アセンブリの抵抗は、セパレータ及びカソードの選択に依存し、殆ど完全に変わることになる。従って、適切なセパレータの選択と共に、カソード集電体上に被覆する方法及び被覆するものは、セルの全体の抵抗に対する直接測定可能な効果があると見なすことができる。容器及びセパレータの構成要素が本質的に同一である一連のセルにおいて、この概念を1段階更に拡張する時に、セルの全体の抵抗は、これらのセルに対するカソードの望ましさに関して比較の優れた代用として機能することになる。
【0013】
高電力装置に対してリチウム−二硫化鉄セルの固有の利点があっても(1次アルカリセルと比較した時)、LiFeS
2セルの設計は、使用する材料の費用、必要な安全装置の組込み、全体的な信頼性、設計されたセルの供給容量、及び意図する用途の間の均衡を取る必要がある。通常、低電力設計は、活物質の量を重要視するが、高電力設計は、放電効率を高めるように構成により焦点をあてる。例えば、ゼリーロール型設計は、電極間の表面積を最大にし、より大きい放電効率を可能にするが、その際に、セパレータ及び集電体(両方とも内部容積を占有し、それによってセルの設計から活物質を除去する必要がある)のようなより多くの不活物質を使用するので、低電力及び低率放電に対して容量を犠牲にする可能性がある。
【0014】
容量の改善に加えて、セルの設計者はまた、安全性及び信頼性のような他の重要な特性を考慮すべきである。安全装置は、通常、通気機構及び正の熱回路(PTC)のような熱作動式「遮断」要素を含む。信頼性の改善は、主として、内部短絡を防ぐことに焦点をあてる。いずれの場合も、これらの特性は、内部容積を占有する要素及び/又はセルの内部抵抗、効率、及び放電容量には通常逆効果である設計考慮事項を最後に必要とする。更に、輸送規制によりリチウムバッテリが熱サイクル中に損失する可能性がある重量のパーセント量が制限されるために付加的な課題があり、AA及びAAAのようなより小さい容器サイズのセルの設計は、総セル重量のうちの数ミリグラムを損失する可能性(典型的には、電解質の蒸発による)があるに過ぎないことを意味する。更に、非水性有機電解質の反応性及び揮発性により、他の電気化学システムと比べて利用可能な潜在的材料の領域が大幅に制限される(特に、電解質とセル閉鎖部の間の相互作用、セル内に設けるセパレータ及び/又は集電体に関して)。
【0015】
最後に、特にカソードに対して最適な特性を維持しながらリチウム−二硫化鉄バッテリの活物質の量を最大にすることは、最も困難な課題である可能性がある。上述のように、ゼリーロール型電極アセンブリは、LiFeS
2システムにおいて好ましい構成である。最も効率的に二硫化鉄に適合するように、二硫化鉄は、導体及び結合剤と共にスラリに混合され、次に、金属箔集電体上に被覆されるが、リチウムは、集電体なしに最も有効に提供される。最後に、セパレータは、好ましくはセル内への不活性インプットを低減するためにその厚みを最小にした薄い高分子膜である。
【0016】
反応最終生成物は、インプットよりも多くの容積を占有し、従って、電極アセンブリは、バッテリが放電するのに伴って膨張する。次に、膨張は、セル容器に望ましくない隆起を発生させる可能性がある半径方向の力、並びにセパレータが損なわれた場合に短絡をもたらす。問題に対処するための従来の手段は、セルのハウジングに対して強力な(多くの場合、より厚い)材料とセル内に不活性成分とを使用する段階を含む。しかし、不活物質をより厚くすることにより、利用可能な内部容積が制限され、電極をより厚く、より丈夫にすることは、以前は必ずしも望ましくないと考えられ、その理由は、これらは、ゼリーロールにおいて可能な巻き数を少なくし、結果として電極間の表面積が減り、より高いドレイン率で比較的低い性能の予想をもたらすからである。
【0017】
最適な内部容積の利用と許容可能なLiFeS
2セルの容量/性能との間の適切な均衡を取るために、いくつかの他の手法が取られている。例えば、米国特許第4,379,815号明細書に開示された膨張により生じる問題に対する可能な解決法は、1つ又はそれよりも多くの他の活物質(CuO、Bi
2O
3、Pb
2Bi
2O
5、P
3O
4、CoS
2など)をパイライトと混合することによりカソードの膨張とアノードの収縮との均衡を取ることであるが、これらの付加的な材料は、セルの放電特性に悪影響を与える恐れがあり、セル全体の容量及び効率も悪影響を被る場合がある。
【0018】
LiFeS
2セルの放電容量を改善する他の手段は、米国特許公開第2005/0112462号明細書及び米国特許公開第2005/0233214号明細書にそれぞれ開示されているように、より薄いセパレータ及び/又は特定のカソードコーティング技術及びパイライト粒子サイズの使用を考えるものである。
【0019】
米国特許第6,849,360号明細書及び米国特許第7,157,185号明細書は、特定のカソードコーティング調製及びアノード集電体の必要性をなくすために、純リチウム(又はリチウム−アルミニウム合金)として提供されたアノードの使用を開示している。次に、アノード及びカソードの量は、LiFeS
2セル高率性能を高めるために、アノード対カソードの界面活物質の指定した比率(すなわち、理論的な界面インプット容量比)で提供される。
【0020】
米国特許公開第2009/0070989号明細書及び米国特許公開第2008/0050654号明細書及び中国特許公開第1845364号明細書は、LiFeS
2セルにおける電極のためのカソードコーティングに関連する場合がある95重量パーセント又はそれ未満のFeS
2を有するカソード調製を開示している。米国特許公開第2007/0202409号明細書及び中国特許公開第1790781号明細書は、LiFeS
2セルにおける電極のためのカソードコーティングにも関連する場合がある少なくとも3重量パーセントの結合剤を有するカソード調製を開示している。中国特許公開第1564370号明細書は、一般的に、LiFeS
2セルに関連する場合があるパイライト、結合剤、及び導体の混合物を開示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
別に定めない限り、本明細書で使用される場合に以下に列挙する用語は、本発明の開示全体にわたって以下のように定めて使用される。
【0024】
周囲温度又は室温−約20℃から約25℃であり、別に定めない限り、全ての例、データ、及び他の性能、並びに製造情報は周囲温度において行われたものである。
【0025】
アノード−負極、より具体的には、リチウム−二硫化鉄セルにおいて、本質的に1次電気化学活物質としてリチウム又はリチウムベースの合金(すなわち、重量で少なくとも90%のリチウムを含有する合金)から構成される。
【0026】
容量−典型的にミリアンペア時(mAh)又はミリワット時(mWh)で又はデジタルスチルカメラ試験で撮影される記録又は画像の数により表される指定した組の条件(例えば、ドレイン率、温度、その他)において放電中に単一の電極又はセル全体によって送出される容量。
【0027】
カソード−正極、より具体的には、リチウム−二硫化鉄セルにおいて、金属の集電体上に被覆された1つ又はそれよりも多くの流動性、ポリマー性、及び/又は導電性添加剤と共に1次電気化学活物質として二硫化鉄を含む。
【0028】
「デジタルスチルカメラ試験」(「ANSIデジタルスチルカメラ試験」とも呼ばれる)−「携帯用リチウム1次セル及びバッテリのための米国基準−一般及び仕様」から「バッテリ仕様15LF(AAリチウム−二硫化鉄セル)、デジタルカメラ試験」という名称で発行された「ANSI C18.3M、Part1−2005」に概説される試験手順に従ってバッテリ寿命がなくなるまでカメラで毎分2枚の写真(画像)を撮影する。この試験は、AAサイズのリチウム−二硫化鉄バッテリを1500mWで2秒間放電した後、650mWで28秒間放電し、この30秒間のサイクルを5分の総サイクル(10サイクル)にわたって繰返し、この後に55分間の休止期間(すなわち、0mW)を続けることから構成される。全1時間当たりのサイクルを1日につき24時間、最後に1.05ボルト未満の電圧が記録されるまで繰り返す。各30秒間のサイクルは、1つのデジタルスチルカメラ画像を表すことを意図したものである。この試験は、より小さな電極に使用するために規模を調節してAAバッテリの性能を模擬することができる。
【0029】
電気化学的活物質−セルの放電反応の一部であり、セルの放電容量に寄与し、不純物及び存在する少量の他の成分を含む1つ又はそれよりも多くの化合物である。
【0030】
FR6セル−2000年11月以降の「国際電気標準会議」により発行された「国際規格IEC−60086−1」を参照して、約50.5mmの最大外部高さ及び約14.5mmの最大外径を有する円筒形セルサイズのリチウム−二硫化鉄バッテリ。
【0031】
FR03セル−2000年11月以降の「国際電気標準会議」により発行された「国際規格IEC−60086−1」を参照して、約44.5mmの最大外部高さ及び約10.5mmの最大外径を有する円筒形セルサイズのリチウム−二硫化鉄バッテリ。
【0032】
「ゼリーロール型」(又は「螺旋巻き型」)電極アセンブリ−アノード及びカソードのストリップを適切なポリマーのセパレータと共にその長さ又は幅に沿って例えばマンドレル又は中央コアの周りに巻き付けることにより組み合わせてアセンブリにしたものである。
【0033】
装填量−箔集電体に被覆された最終乾燥及び高密度化カソード混合物に関して、典型的に界面に整列された集電体の1平方センチメートル部分の片側又は両側上の活物質容量のミリアンペア時間又は総カソード混合物(すなわち、パイライト、結合剤、導体、添加剤、その他を含む)のミリグラムとして表される集電体の指定した区域の片面又は両面に見出される指定した材料の量。
【0034】
公称−その特徴又は特性に何を予想することができるかを表す典型的に製造業者により識別された値。
【0035】
パイライト−不純物、他の成分、及び他の少量の潜在的に電気化学的に活性な材料を含む場合があるバッテリで使用する時に典型的に少なくとも95%の電気化学的に活性な二硫化鉄(ほぼFeS
2)を含有する二硫化鉄の鉱物形態。
【0036】
固体インプット比−集電体を除外したコーティングにおいて、典型的には百分率として表されるが、同じくコーティングの孔隙率又は空隙の逆数(すなわち、100%からコーティングのパーセント孔隙率を差し引いたもの)として表すことができるコーティングが乾燥して高密度化された後に測定したそのコーティングの全容積と比較する時の固体粒子(例えば、電気化学的に活性な材料、結合剤、導体、その他)によって占有されるコーティングにおける容積比。
【0037】
比エネルギ密度−ワット時/キログラム(Wh/kg)又はミリワット時/グラム(mWh/g)で一般的に表される指定の条件(例えば、200mAの連続ドレインでの放電、界面容量に対する総インプット、その他)による電極、セル、又はバッテリの容量をセル又はバッテリ全体の総重量で割ったもの。
【0038】
セル構成要素
本発明は、
図1を参照するとより良く理解されるであろう。
図1において、セル10は、FR6(AA)型円筒形Li/FeS
2バッテリセルの一実施形態であるが、本発明は、FR03(AAA)又は他の円筒形セルにも等しく適用可能性を有するべきである。一実施形態では、セル10は、閉鎖底部と、セルカバー14及びガスケット16により閉鎖された開放上部とを有する缶12の形態の容器を含むハウジングを有する。缶12は、上部の近くにビード又は直径を絞った段差を有し、ガスケット16及びカバー14を支持する。ガスケット16は、缶12とカバー14との間で圧縮され、アノード又は負極18、カソード又は正極20、及び電解質をセル10内に密封する。
【0039】
アノード18、カソード20、及びセパレータ26は、互いに電極アセンブリに螺旋状に巻き付けられる。カソード20は、電極アセンブリの上部から延び、接点バネ24によりカバー14の内面に接続される金属の集電体22を有する。アノード18は、金属のリード(又はタブ)36により缶12の内面に電気的に接続される。リード36は、アノード18に締結され、電極アセンブリの底部から延び、電極アセンブリの底部にわたって及び側部に沿って上方に折り曲げられる。リード36は、缶12の側壁の内面と圧力接触する。電極アセンブリが巻き付けられた後に、電極アセンブリは、製造工程において成形用具の挿入前に互いに保持することができ、又は材料の外端(例えば、セパレータ又はポリマーフィルム外包38)は、例えば、ヒートシール、のり付け、又はテーピングにより留めることができる。
【0040】
一実施形態では、絶縁コーン46を電極アセンブリの上部の周囲部分の周りに位置決めし、カソードの集電体22が缶12と接触するのを防止し、かつカソード20の底縁部と缶12の底部の間の接触を内向きに折り曲げられたセパレータ26の延長部及び缶12の底部に位置決めされた電気絶縁底部ディスク44により防止する。
【0041】
一実施形態では、セル10は、個別の正端子カバー40を有し、これは、内向きに当接された缶12の上縁及びガスケット16により所定位置に保持され、1つ又はそれよりも多くの通気開口(図示せず)を有する。缶12は、負極接触端子として機能する。粘着ラベル48のような絶縁ジャケットを缶12の側壁に付加することができる。
【0042】
一実施形態では、誤用電気条件下で電流の流れを実質的に制限する正温度係数(PTC)装置42が、端子カバー40の周囲フランジとセルカバー14の間に配置される。別の実施形態では、セル10はまた、圧力逃し口を含むことができる。セルカバー14は、ウェル28の底部に通気孔30を備えた内向きに突出する中央通気ウェル28を含む開口を有する。開口は、通気孔ボール32と、通気ウェル28の垂直壁と通気孔ボール32の周囲部分との間で圧縮された薄壁型熱可塑性ブッシュ34とによって密封される。セルの内圧が所定レベルを超える時に、通気孔ボール32又はボール32及びブッシュ34の両方は、開口の外に押し出され、セル10から加圧された気体を逃がす。他の実施形態では、圧力逃し口は、米国特許第7,687,189号明細書に開示するような破裂膜により閉鎖された開口とすることができ、又はシーリング板又は容器の壁のようなセルの一部分に通気開口を形成するために裂けるか又はそうでなければ破損することができる鋳造溝のような比較的薄い区域とすることができる。
【0043】
一実施形態では、電極アセンブリの側部と缶の側壁の間に配置された電極リード36の終端部分は、電極アセンブリを缶の中に挿入する前に、好ましくは、缶の側壁との電気接触を高めてバネ様の力を与えてリードを缶の側壁に対して押し付ける非平面を有する形状とすることができる。セルの製造中、成形されたリードの終端部分は、例えば、電極アセンブリの側部に向けて変形し、缶へのその挿入を容易にすることができ、その後、リードの終端部分は、部分的に元の非平面形状にバネで戻ることができるが、少なくとも部分的に圧縮されたままに留まって缶の側壁の内面に力を印加し、それによって缶と良好な物理的及び電気的な接触をもたらす。代替的に、この接続部及び/又はセル内の他のものも、溶接により維持することができる。
【0044】
セル容器は、多くの場合、
図1の缶のような底部が閉鎖された金属缶である。缶の材料及び容器壁の厚みは、セルに使用する活物質及び電解質の一部に依存することになる。一般的な材料のタイプは鋼である。例えば、缶は、冷間圧延鋼(CRS)で作ることができ、少なくとも外側をニッケルでメッキして缶の外側を腐食から保護することができる。典型的には、本発明によるCRS容器は、FR6セルに対して約7ミルから10ミル、又はFR03セルには6ミルから9ミルの壁厚を有することができる。メッキのタイプは、様々な程度の耐食性を与えるために、接触抵抗を改善するために、又は望ましい外観を与えるために変えることができる。鋼のタイプは、容器が形成される方式に部分的に依存することになる。引抜缶に対して、鋼は、ASTM9から11であり、僅かに細長い粒形と等軸にされた粒径を有する拡散焼鈍、低炭素、アルミニウムキルド、SAE 1006又は同等の鋼とすることができる。ステンレス鋼のような他の鋼は、特別の必要性を満たすために使用することができる。例えば、缶がカソードと電気接触する時に、カソード及び電解質による耐食性を改善するためにステンレス鋼を使用することができる。
【0045】
セルカバーは、金属とすることができる。ニッケルメッキ鋼を使用することができるが、多くの場合、特に閉鎖部及びカバーがカソードと電気接触している時にステンレス鋼が望ましい。カバー形状の複雑さはまた、材料選択における1つのファクタになる。セルカバーは、厚い平らなディスクのような簡単な形状を有してもよく、又はセルカバーは、
図1に示すカバーのようなより複雑な形状を有してもよい。カバーが
図1のカバーのように複雑な形状を有する時は、ASTM 8−9の粒径のタイプ304の軟性焼鈍ステンレス鋼を使用して、望ましい耐食性を与え、金属形成を容易にすることができる。形成されたカバーはまた、例えば、ニッケルでメッキしてもよく、又はステンレス鋼又は他の公知の金属及びこれらの合金から作ることができる。
【0046】
端子カバーは、大気環境中の水による腐食又は通常バッテリ製造及び使用中に一般的に遭遇する他の腐食に対する良好な抵抗を有するべきである。カバーはまた、良好な導電性及び消費者向けバッテリ上で目に見える時に魅力的な外観を有するべきである。端子カバーは、多くの場合、ニッケルメッキ冷間圧延鋼又はカバーが形成された後でニッケルメッキされた鋼から作られる。端子が圧力逃し口上に位置決めされる場合に、端子カバーは、一般的に、セルの通気を容易にするために1つ又はそれよりも多くの孔を有する。
【0047】
缶と閉鎖部/端子カバーとの間でシールを仕上げるのに使用するガスケットは、望ましいシール特性を与えるあらゆる好ましい熱可塑性材料から作ることができる。材料の選択は、部分的に、電解質の組成に基づいている。好ましい材料の例は、ポリプロピレン、硫化ポリフェニレン、四フッ化−ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、ポリブチレンテレフタレート、及びその組合せを含む。好ましいガスケット材料は、米国デラウェア州のウィルミントン所在の「Basell Polyolefins」又は米国テキサス州のザウッドランズ所在の「Chevron Phillips」からのポリプロピレンを含む。少量の他のポリマー、強化無機充填剤、及び/又は有機化合物も、ガスケットの基本樹脂に加えてもよい。好ましい材料の例は、米国特許公開第2008/0226982号明細書及び米国特許公開第2005/0079404号明細書に見出すことができる。
【0048】
ガスケットは、シーラントで被覆して最良のシールを設けることができる。エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)が好ましいシーラント材料であるが、他の好ましい材料を使用することができる。
【0049】
上述のセル構成要素及び設計特徴は例示に過ぎず、本発明の1つの可能な実施形態を示すことを意図している。他の構成要素及び設計特徴を利用することができる。
【0050】
カソード調製
リチウム−二硫化鉄バッテリは、米国特許第6,849,360号明細書に説明するように、それに関連のアノードの理論的な界面インプット容量と比較してカソードにおける過度の理論的な界面インプット容量を提供することによって利益を受けるとも判断されている。従って、一実施形態では、本発明のセルは、1.00未満の界面アノード対カソードインプット比を有する。
【0051】
小さい粒径のカソード材料を使用して、セパレータに穴を開ける危険を最小にすることも望ましい。例えば、FeS
2を少なくとも230メッシュ(62μm)スクリーン又はそれ未満のメッシュのスクリーンでフィルタリングすることができる。より好ましくは、FeS
2は、米国特許公開第2005/0233214号明細書で説明のように20μm未満の平均粒径を有するように媒体粉砕又は加工することができる。
【0052】
一般的には、パイライト及び特にFeS
2の量は、最大にすべきであるが、導体、結合剤、及び他の添加剤は、固体金属箔集電体上にカソード材料の十分なコーティング及び接着剤を可能にするほど十分な量のカソード乾燥混合物においてのみ使用すべきである。例えば、多くの従来技術の参考文献は、適切なコーティングを保証するために結合剤のうちの少なくとも3重量パーセントの使用を示唆している。更に、意図するコーティングは、多孔質で薄く可撓性であるべきであり、コーティングよりも実質的に厚くて非可撓性の傾向があるペレット型カソードを意図する他のカソード混合物は、薄いコーティングの要件に対して無関係である。更に、カソード孔隙率の重要性を見逃すことはできない。
【0053】
総パイライト混合物のうちの95重量パーセントを超えるFeS
2純度を有する電気化学セルに使用するのに適切なパイライトは、米国マサチューセッツ州のノースグラフトン所在の「Washington Mills」、オーストリア国のウィーン所在の「Chemetall GmbH」、及び米国バージニア州のディルウィン所在の「Kyanite Mining Corp.」から入手可能である。適切な結合剤は、米国テキサス州のヒューストン所在の「Kraton Polymers」からのG1651のようなスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、及び過塩基性スルホン酸カルシウム錯体、及び/又はヒュームドシリカのような任意的な加工助剤、例えば、独国のエッセン所在の「Evonik Industries AG」からのAEROSIL(登録商標)200を含む。
【0054】
孔隙率に関して、70%未満、好ましくは、65%未満、好ましくは、63%未満の固体充填百分率のカソードコーティングは、高速製造工程の容易さ、並びに固有の安全性及び性能特性を考慮すると(より多孔質の材料が空隙を提供し、セル反応生成物に必要なより大きな容積を補償するという点で)固有の利点を保有する。しかし、これらの充填百分率の減少において、本発明者は、カソード混合物に提供した導体の量及びタイプは、最適カソード及びセル性能に大いに関連していることを見出している。特に、結合剤の量は、従来のコーティング調製と比較して有意に減少する場合があるが、パイライトの量は、総乾燥混合物のうちの95重量パーセントよりも大きい可能性がある。しかし、このような高パイライト(すなわち、95重量パーセント〜98重量パーセント)及び低結合剤(すなわち、3重量パーセント未満)調製において、提供された炭素の量及びタイプは、非常に重要である。
【0055】
従って、一定のタイプの導体の選択は、特に、混合調製が活物質を最大にするのに最適である時に、リチウム−二硫化鉄セルの性能において重要な役割を果たす。特定の導体、並びに導体の組合せは、特定のリチウム−二硫化鉄セル設計に対して望ましい特性を与えることが見出されている。これらの特性は、導体が以下に説明するようにセル全体の他の際立った態様と共に提供される時に、例えば、カソードに対する固体充填の指定した範囲と共に提供する時に、又は導体中に存在する官能基を調節した時に更に高めることができる。
【0056】
リチウム−二硫化鉄電気化学セルにおいて導体として使用するのに適切な導体は、カーボンブラック、アセチレンブラック、及びグラファイトを含む。各タイプは、結晶構造、不純物(以下に限定されるものではないが、官能基、灰、硫黄、その他を含む)、炭素含有物、炭素源、及び処理技術を含む様々なファクタに基づいて区別及び選択することができる。次に、これらのパラメータは、導体が、通常螺旋巻きリチウム−二硫化鉄セルに使用するカソードコーティングと相互作用する方法に影響を与えることになる。
【0057】
カーボンブラックは、制御条件下で気体又は液体炭化水素の燃焼又は熱分解によって生成された元素炭素の広義のカテゴリである。その外見は、黒い微粉化ペレット又は粉末のものであり、最も一般的にはコロイド粒子の形態になる。意義深いことには、カーボンブラックは、炭素含有物質(例えば、油、燃料油、石炭、紙、廃棄物、その他)の不完全燃焼によって生じる比較的不純な炭素副産物を意味する両方の一般名称である煤煙又は「黒色炭素」と化学的及び物理的に明確に異なる。関連のカーボンブラックは、米国オハイオ州のウエストレーク所在のTimcalから両方とも販売されているSUPER−P又はTIMREX AB55である。以下に説明する測定基準及び考慮事項と矛盾しない特定的なタイプのカーボンブラックの選択は、カソード調製の重要な態様である。カーボンブラック、非結晶質炭素、グラファイト化炭素、及びアセチレンブラックの様々な等級は、本明細書で識別した供給業者のいずれからも入手可能である。
【0058】
アセチレンブラック(AB)は、特にカーボンブラックの純粋な形態である。アセチレンブラックは、制御雰囲気におけるアセチレンの発熱分解又は制御燃焼によって作られる。アセチレンブラックは、カーボンブラックの全ての他の供給源と比較して最高度の凝集及び結晶配向によって特徴付けられる。リチウム−二硫化鉄セルに使用するのに適切な様々なアセチレンブラック粉末は、米国テキサス州のヒューストン所在の「Soltex Corporation」によってSoltex ACE BLACKという名称の販売されている。アセチレンブラックは、電気化学セルに使用するために開示されているが、Li/FeS
2セルに対してカソードコーティング混合物の一部として含まれる時に、AB:グラファイトの約1:1から1:7の比率でアセチレンブラックを提供するグラファイトとの混合物の一部として提供すべきである。
【0059】
カーボンブラックを更に処理し、カーボンブラックをアセチレンブラックと区別する物理的又は化学特性を与えることができる。例えば、カーボンブラックを熱処理し、粒径及び形態を制限するように浮遊させ、粉砕し、ふるい分けし、配合するか又は機械的処理し、及び/又は炭素に付加することができる官能基に影響を与えるように化学処理してカーボンブラックの結晶構造を変更することができる。好ましい官能基に関する付加的な情報は、以下でより詳細に説明する。従って、異なる導電性炭素の殆ど無限の選択が、電気化学セル設計者には利用可能である。典型的には、これらの様々な導電性炭素を特徴付け、かつ識別するための最も重要な態様は、純度、結晶構造の構造(いくらかでもある場合)、テクスチャ/孔隙率、及び粒径である。
【0060】
高パイライト、低結合剤調製において特定的な有用性を示す1つのタイプのカーボンブラックは、「グラファイト化炭素」として公知である。グラファイト化炭素は、部分的に燃焼し、水で直接急冷し、次に、連続高温浄化を受け入れて不純物及び官能基を除去する炭化水素である。1つのグラファイト化炭素は、米国イリノイ州のシカゴ所在の「Superior Graphite」によりPureBlack(登録商標)205−110として販売されている。グラファイト化炭素が、比較的広範な形態学的特性及びグラファイト化を考慮したアセチレン以外の炭化水素材料から作られることを除いて、グラファイト化炭素は、他のカーボンブラックと比較して高秩序シリーズのグラファイト層を有し、アセチレンブラックと類似している。他のカーボンブラックと比較する時に、X線回折又は透過電子顕微鏡技術を使用してグラファイト化炭素の「部分グラファイト化」を検出することができる。
【0061】
グラファイトは、元素(すなわち、本質的に純粋な)炭素の同素体のうちの1つである。ダイヤモンド(別の公知の炭素同素体)と異なり、グラファイトは導体であり、多くの場合、電気化学セルの電極に使用される。上述のように、Li/FeS
2セルに対してカソードコーティング混合物に使用する時に、主要成分(すなわち、乾燥混合物中に存在する総導体のうちの約45重量パーセント又はそれよりも多い)又は単独成分としてグラファイトを組み込むのが定説であった。これらの供給源に応じて見出された3つの主なタイプの天然グラファイトがある。
【0062】
(1)結晶片状グラファイト(又は略して片状グラファイト)は、壊れていない場合六角形の縁部、壊れていると不規則又は角度縁部を有する孤立した平坦なプレート様粒子として生じ、
【0063】
(2)非結晶グラファイトは、微粒子として生じ、
【0064】
(3)塊状グラファイト(鱗状グラファイトとも呼ばれる)は、鉱床に生じて巨大プレート様繊維状又は関節の結晶性凝塊として現れる。
【0065】
グラファイトはまた、結晶構造、テクスチャ(キシレン密度、BET比表面積、体積密度、タップ密度、その他によって特徴付けられるような)、粒径、形態、純度などのような一定の望ましい特徴又は特性を与えるように処理又は合成することができる。グラファイトは、化学物質又は機械力で更に処理することができ、例えば、膨張グラファイトは、クロム酸及び濃硫酸の浴中でグラファイトを連続して浸漬することによって及び/又は熱処理によって作られる。いずれの場合にも、これらの作用により、結晶格子の平面を強制的に離し、従って、グラファイトを「膨張させる」。1つのタイプの合成の機械的に膨張可能なグラファイトは、米国オハイオ州のウエストレーク所在のTimcalによりTIMREX MX15として販売されている。関連の別のグラファイトは、同様にTimcalによって販売されているTIMREX KS6である。1つのタイプの天然グラファイトは、米国イリノイ州のシカゴ所在の「Superior Graphite」によりSL20として販売されている。更に別の等級の合成及び天然グラファイトは、本明細書で識別した供給業者のいずれからも入手可能である。
【0066】
グラフェンは、ハニカム結晶格子に密に詰められたSP
2結合炭素原子の1原子厚の平面シートである。グラフェンは、本質的に互いに積み重ねられた一連のグラフェンシートから構成されるグラファイト中で自然に生じる。様々なタイプのグラフェンは、米国メリーランド州のジェサップ所在の「Vorbeck Materials」により販売されている。
【0067】
熱分解炭素は、グラファイトと類似しているが、その生成における欠陥の結果としてそのグラフェンシート間に何らかの共有結合を有する材料である。「高秩序の熱分解グラファイト」は、1°未満のグラファイトシートの間の角拡散を有するグラファイトを意味し、一般的に、熱分解炭素の最高品質の合成形態であると考えられる。
【0068】
これらの導体の全ては炭素を含むが、熟練技術者が、以下に限定されるものではないが、粒子/粉末の寸法(サイズ、長さ、直径、アスペクト比、その他)、形態、密度、及び表面積を含む上述の様々な導体と区別して選択することを可能にする多数の測定基準がある。リチウム−二硫化鉄バッテリにおける特定的な導体の利用に影響を与える付加的な考慮事項は、パイライト粒径、総混合物(すなわち、パイライト、結合剤、及び導体を含む全カソードコーティング)の意図する厚み、全コーティングに対する圧密の意図するレベル、コーティング(例えば、スラリ、粉末、その他)を加えるための送出システム、コーティングの導電性又は抵抗率、コーティング処理のタイプ(例えば、スロットダイ、3つのスリーロールリバース、その他)、コーティングの送出システム/タイプに関連の溶剤及び/又は環境、コーティング処理から溶剤を吸収、保持又は放出するコーティングの機能、及び電解質を吸収又は保持するコーティングの機能を含む。
【0069】
導体の材料特性は、いくつかの方法で判断することができる。限定するのではなくて一例として純度は、灰含有量、水分又は炭素含有量、X線回折による結晶構造、実際の密度(例えば、キシレン密度、ヘリウム密度、その他)、レーザ回折による粒径分布、空気類別、ふるい分け、タップ密度又は油吸収、気体吸着による孔隙率/テクスチャ、BET比表面積、顕微鏡又は水銀ポロシメータ、及び気体吸着による表面形態、「ラマン」分光解析又は活性表面積測定によって測定することができる。導体中に存在する官能基に関して、「ベーム」滴定、熱重量解析、「フーリエ」変換赤外線分光法、X線光電子分光法、温度プログラム熱脱着、又は2次質量分光解析を含む様々な技術を使用することができる。
【0070】
適切な粒子対粒子接触を維持することは、望ましいカソード調製の1つの鍵である。すなわち、二硫化鉄カソードの製造中に通常使用するカレンダ加工/圧密作動、及び放電中に膨張するこれらの傾向を考慮する時に、十分な導電性経路は、コーティングの粒子に存在し、電子の有効流れを許容すべきである。
【0071】
コーティング調製中のグラファイト薄片単独は、十分な導体を維持するのに必要な薄片の容積がグラファイトのアスペクト比のためにイオン移動度に対して高い捩れを生成し、従って、必要な導電性を欠く傾向があり、それによって全体としてセルに対してより高い電荷移動値をもたらす。更に、一定の全てのカーボンブラック調製は、炭素の高表面積が溶剤の高吸収を生成するので溶剤ベースコーティング作動と不適合である傾向があり、それによって泥状割れ及び他の処理の難しさをもたらす。
【0072】
本発明は、ここで、グラファイト化炭素及び/又はアセチレンブラックの比較的高い比率の使用がi)大量のパイライト、すなわち、総乾燥混合物のうちの95重量パーセントよりも多く、ii)低レベルの導体、すなわち、総乾燥混合物のうちの3重量パーセント未満、及びiii)比較的最小圧密、すなわち、65%又はこれよりも少ない固体充填のコーティングを有するコーティングにおいて可能であることを見出した。このような最小圧密コーティングには、より堅牢なセル設計の製造及び組み込みの容易さの両方を考慮すると(圧密のレベルによって与えられるより大きな空隙空間による)、Li/FeS
2セルにおいて多くの利点がある。上述を考慮する時に、好ましい手法は、グラファイト及びグラファイト化炭素又は代替のアセチレンブラックの組合せである。いずれの場合も、グラファイト対グラファイト化炭素又はアセチレンブラックの比率は、乾燥混合物中に存在する総導体のうちの55重量パーセントよりも大きいか又はこれに等しい。しかし、圧密が60%未満の固体充填まで低下する時に、付加的な炭素が必要になる場合がある。
【0073】
この手法により、得られるカソードコーティングは、少なくとも58%、少なくとも60%、又は少なくとも61%の固体充填を有することになるが、カソードコーティングはまた、65%以下、64%以下、63%以下、又は62%以下の固体充填を有することになる。同様に、カソード乾燥混合物は、3重量パーセント以下又は2重量パーセント以下の導体を有しながら、少なくとも95重量パーセント、少なくとも96重量パーセント、又は約97重量パーセントのパイライトを有することになる。乾燥混合物の残りは、結合剤及び加工助剤であり、従って、混合物は、2重量パーセント以下、1%以下、又は1重量パーセント未満の結合剤及び加工助剤を有することを意味する。言い換えれば、コーティングの孔隙率は、アセチレンブラックを含む調製中に58%から65%、グラファイト化炭素を含む調製中に58%から70%とすることができるが、いずれの場合も、より狭い範囲が付加的な恩典を呈する。好ましい調製は、いずれの場合にも、95重量パーセントから98重量パーセントのパイライト、1重量パーセントから3重量パーセントの導体、及び2重量パーセント未満の結合剤又は他の加工助剤を含む。導体は、アセチレンブラック又はグラファイト化炭素又はこれらの組合せのいずれかを含む必要がある。グラファイトも含まれる場合、グラファイトは、全ての場合に(すなわち、アセチレンブラック又はグラファイト化炭素又は両方が存在するか否かに関係なく)、導体の総量のうちの50重量パーセント未満を構成する必要があり、45重量パーセント未満の量が好ましい。同様に、機械的に膨張可能なグラファイトは、他のタイプのグラファイトよりも好ましい場合がある。これらの特性(固体充填、パイライト量、導体量及び結合剤量)の各々の組合せは、本明細書で考えているカソードの優れた性能に協働して寄与する。
【0074】
更に、導体は、グラファイト化炭素を含むことが好ましい。より好ましくは、導体は、上記で識別したリストとは明確に異なる2つのクラスの導体を含み、これらの2つのクラスのうちの1つは、アセチレンブラック又はグラファイト化炭素のいずれかである。グラファイトは、アセチレンブラック又はグラファイト化炭素と混合することができるが、グラファイト化炭素、アセチレンブラック、又は2つのうちのいずれかの組合せよりも重量パーセントに基づいてより少ないグラファイトを使用すべきである。すなわち、導体の総量の重量パーセントは、アセチレンブラック又はグラファイト化炭素(又は2つの組合せ)のうちの55重量パーセントよりも大きくすべきであり、残りは、他の導体、好ましくは、1つ又はそれよりも多くのタイプのグラファイトである。より好ましくは、膨張可能なグラファイトは、単独微量成分として使用すべきである。機械的に膨張可能なグラファイトを好ましいとすることができる。他の実施形態では、アセチレンブラック、グラファイト化炭素、及びこれらの混合物は、単独タイプの導体として使用することができる。このような場合に、アセチレンブラック対グラファイト化炭素の1:1の比率は、好ましいとすることができる。導体の好ましい量及び相対比率に関する更なる詳細は、本明細書に添付した図から集めることができる。図は、付加的な好ましい値及び比率がそれから判断することができるように正確な縮尺で描かれていることを理解されるであろう。
【0075】
上述の本発明の実施形態により作られたカソードは、必要なカレンダ加工又は他の圧縮力の量を減少することにより、高度に圧密されたコーティングと比較して比較的製造することが容易になると考えられる。次に、それによってより薄いセパレータ及び/又は容器の使用を可能にすることができ、その結果、セルの全体のエネルギ密度を改善し、これらの材料に関連の可能なコスト低減を可能にする。更に、結合剤及び他の加工助剤の最小量にも関わらず、本明細書に開示した混合物は、十分な接着性を示し、同様に、導電性、抵抗、及び面積比抵抗率は、少量の導体にも関わらず改善される。これらのカソードから構成される完全セルは、部分的に、本明細書で企図した固体充填、導体及びパイライト重量パーセントの均衡を取ることによって与えられた活物質のセル設計最適化により、デジタルスチルカメラ試験で比較的良好な10kHzインピーダンス及びフラッシュアンペア数、並びに優れた性能を保有することができる。
【0076】
炭素の反応性が与えられると、様々な官能基も導電性炭素に付加することができる。可能性は、カルボキシル、カルボニル、フェノール、ヒドロキシル/アルコール、ラクトン、エポキシド/エーテル及びケトン基を含み、カルボキシル、フェノール及びラクトン基が最も可能性がある。酸性基は、導体、及び恐らくカソード調製に対して対応する効果がある。更に、これらの基は、調製の親水性又は疎水性に影響を与える可能性があり、従って、望ましい分散特性を与えるのに使用することができる。従って、官能基を除去又は選択できる限りでは、導体及び特にグラファイトは、特定の用途に調節することができる。複数の異なる官能基は、単一導体粒子に付加することができる。
【0077】
しかし、官能基が意図的に加えられ又は選択される限り、このような基の存在は、リチウム−二硫化鉄バッテリの開回路電圧(OCV)に悪影響を与える傾向がある。従って、官能基の使用は、特に低い総導体レベル(乾燥重量に基づく)において、OCVを制御し、カソード調製及びコーティングを更に改善する有効手段とすることができる。導体における官能基の意識及び選択はまた、上述の泥状割れの問題を制御及び緩和するのを補助する可能性がある総導体のための最適化表面積をもたらす場合がある。
【0078】
官能基を導入するための特定の手段は、酸素の存在下の熱処理、オゾン処理、及び/又は酸化溶液の使用を含む。同様に、官能基は、熱又は化学手段により選択的に又は完全に除去することができる。
【0079】
上述の様々な解析を使用して、所定のタイプの導体における特定的な官能基の量は、その導体の表面積に沿って判断することができる(例えば、BET法)。
図2は、膨張可能なグラファイト、グラファイト化炭素及びカーボンブラック(下の実験1においても同様に考察する)を含む異なる導体のスペクトルにわたって官能基の「ベーム」滴定解析の収集結果を示している。最も上の線は、官能基の総濃度を表し、プロットは、炭素表面と官能基の総濃度の間のかなり良好な相関(R=0.83)を示している。中心線は、フェノール官能基と炭素表面積の間の相関(R=0.92)と共に様々な試料において見出されたフェノール官能基のみを表している。最後に、下の線は、表面積に対するラクトン官能基及びその相関(R=0.88)の寄与を示している。従って、これら及び場合によっては他の官能基の制御により、導体の表面積を決めることができ、1つ又はそれよりも多くの非官能性導体(例えば、グラファイト化炭素)の処理により又は異なる表面積を有する導体の選択的配合により、導体の表面積を選択的に調節することは可能である場合がある。
【0080】
従来の研究は、リチウム−二硫化鉄セルの開回路電圧(OCV)とカソードに使用する導体の表面積との間で高い相関関係を示しているが、表面積は、セルの実性能に十分に相関するようには思えない。更に、無数の他のファクタ(例えば、予備放電様式、添加剤の使用及び/又は電解質中の共溶媒、パイライトの純度レベルの処理及び/又は意図的調節、その他)は、導体単独の表面積よりもより決定的にOCVに影響を与える場合がある。それにも関わらず、OCVの制御は、Li/FeS
2セルが、場合によっては、電子構成要素を損傷するか又は一部の装置の作動を損なう可能性がある従来のアルカリバッテリと比較して比較的高い初期OCV(例えば、1.850Vを超えて)を有する傾向がある限りにおいて、一定の装置製造に対しては問題であり、それが、セル保管後の低OCV(例えば、1.800V未満及び1.750V未満)、セル容量の減少、及び/又はセル性能の劣化を示す場合がある。従って、表面積の調節が導体の機能化を考慮することによって可能であることを本発明者が見出した範囲で、カソード調製(すなわち、乾燥混合物中の全ての構成要素の含有量及び重量パーセント)及びコーティング自体(すなわち、所定の固体充填に対して圧縮した調製)を更に立案し、最適なカソード特性を達成することができる。特に、
図4によって立証したように、本明細書で企図した高パイライトの導体、低導体調製の約65μg/g未満又は約50μg/g未満を保有する導体の選択に有利な場合がある。
【0081】
電極構成
アノードは、時にリチウム箔と呼ばれるリチウム金属のストリップを含む。リチウムの組成は様々である可能性があるが、バッテリ等級のリチウムについては、純度は常に高い。リチウムは、アルミニウムのような他の金属と合金し、望ましいセルの電気性能を与え又は取り扱いを容易にすることができるが、あらゆる合金のリチウム量をそれでもなお最大にすべきであり、高温(すなわち、純リチウムの融点を超える)用途のように設計された合金を考えていない。0.5重量パーセントのアルミニウムを含有する適切なバッテリ等級のリチウム−アルミニウム箔は、米国ノースカロライナ州のキングスマウンテン所在の「Chemetall Foote Corp.」から入手可能である。本質的に、リチウム又はリチウム合金(例えば、0.5重量パーセントのアルミニウム及び99+重量パーセントのリチウム)から構成されるアノードが好ましく、いずれのかかる合金においても活物質(すなわち、リチウム)の量を最大にすることに重点が置かれる。
【0082】
図1のセルにおけるように、リチウムは高い導電性を有し、従って、アノードには個別の集電体(すなわち、アノードが溶接又は被覆されるセルの他の内部構成要素に露出された時に安定である銅及び/又は他の高導電性の金属の金属箔のような導電性部材、又はコレクターがゼリーロール内で螺旋状に巻き付けられるように、アノードの長さの大部分に沿って作動する導電性ストリップ)は必要ない。このような集電体を利用しないことにより、活物質のような他の構成要素に対してより多くの空間が容器内で利用可能になる。
【0083】
電気接続は、電極の各々と、ハウジングに近接するか又はハウジングと一体の対向する外部バッテリ端子との間で維持される。電気リード36は、アノードすなわち、負極をセル端子の一方(
図1に示すFR6セルの場合の缶)に接続する薄い金属ストリップから作ることができる。これは、アノードの一部分の中にリードの端部を埋め込むことにより、又はリードの端部のような一部分を単にリチウム箔の表面上に押しあてることによって達成することができる。リチウム又はリチウム合金は、粘着特性を有し、一般的に、リードと電極の間の少なくとも僅かな十分な圧力又は接触により、構成要素を互いに溶接することになる。負極には、ゼリーロール構成に巻き付けられる前にリードを備えることができる。セル設計にわたって他の電気接続と共にリードはまた、適切な溶接により接続することができる。
【0084】
リード36を含む金属ストリップは、多くの場合、リードを通して十分な電流の伝達を可能にするために、十分に低い抵抗のニッケル又はニッケルメッキ鋼から作られる。好ましい負極リード材料の例は、以下に限定されるわけではないが、銅、銅合金、例えば、銅合金7025(約3%のニッケル、約0.65%のシリコン、及び約0.15%のマグネシウムを含む銅とニッケルの合金で、残りは、銅及び微量の不純物である)、及び銅合金110、並びにステンレス鋼を含む。リード材料は、組成物が非水性電解質を含む電気化学セル内で安定であるように選択すべきである。
【0085】
カソードは、集電体と、通常は微粒子の形態の1つ又はそれよりも多くの電気化学的活物質を含む混合物とを含むストリップの形態である。二硫化鉄(FeS
2)は1次活物質であるが、FeS
2の参照はまた、一般的に、電気化学的にも活性であるその僅かな変形(例えば、Fe
(1-x)M
x-S
(2-2x)、その他)を参照することを意図している。カソードは、望ましいセルの電気特性及び放電特性に応じて、少量の1つ又はそれよりも多くの付加的な活物質を含有する場合がある。付加的な活性カソード材料は、少量のドーパントが自然に又は意図的に導入され、材料の性能を改善する材料を含むあらゆる好ましい活性カソード材料とすることができる。その例には、金属酸化物であるBi
2O
3、C
2F、CFx、(CF)n、CoS
2、CuO、CuS、FeS、FeCuS
2、MnO
2、Pb
2Bi
2O
5及びSが含まれる。好ましくは、Li/FeS
2セルのカソードの活物質は、少なくとも約50重量パーセント、少なくとも約80重量パーセント、及び少なくとも約95重量パーセントのパイライト又はFeS
2を含み、最も好ましくは、パイライト又はFeS
2は単独活性カソード材料である。少なくとも95重量パーセントのFeS
2の純度レベルを有するパイライトは、米国マサチューセッツ州のノースグラフトン所在の「Washington Mills」、オーストリア国のウィーン所在の「Chemetall GmbH」、及び米国バージニア州のディルウィン所在の「Kyanite Mining Corp.」から入手可能である。パイライト又はFeS
2の「純度」に関する説明は、パイライトが、多くの場合、低いレベルの不純物(典型的には酸化珪素)を有するFeS
2の特定の及び好ましい鉱物形態であることを認めることに注意すべきである。FeS
2(及びその僅かな変形)だけがパイライトにおいて電気化学的に活性であるために、パイライト試料中のFeS
2のパーセント純度の参照は、パイライトの総量に関して、通常は重量パーセントに基づいてして行われる。従って、パイライト及びFeS
2は、適切な状況で読むと、時に同義語であるのみである。全体にわたって使用するように、「パイライト」のあらゆる参照は、FeS
2が、主要な活性成分であるが必ずしも単独の活性成分ではないあらゆるカソード活物質を意味する。
【0086】
上述のように調合したカソード混合物は、カソード集電体として機能する薄い金属ストリップの片側又は両側上に被覆される。アルミニウムは、一般的に使用する材料であるが、チタン、銅、鋼、他の金属箔及びこれらの合金も可能である。集電体は、カソード混合物を含有するカソードの部分を超えて延びることができる。集電体のこの拡張部分は、正端子に、好ましくは、リード及び/又は溶接接触の必要性をなくすバネ又は圧力接触を通じて接続した電気リードと接触するのに有利な区域を提供することができる。セルの内部容積の多くを活物質及び電解質に利用可能にするために、集電体の拡張部分の容積を最小に保つことが望ましい。カソードに対する典型的なコーティング構成の例は、引用により組み込まれる米国特許公開第2008/0026293号明細書に見出すことができる。
【0087】
カソードは、セルの正端子に電気的に接続される。これは、
図1に示すように、多くの場合に薄い金属ストリップ又はバネの形態の電気リードによって達成することができるが、溶接による接続も可能である。使用する場合、このリードは、ニッケルメッキステンレス鋼又は他の適切な材料から作ることができる。その場合には、標準PTCのような任意的な減流装置が安全機構として利用され、セルの迷走放電/加熱を防ぎ、好ましいPTCは、米国カリフォルニア州のメンローパーク所在の「Tyco Electronics」により販売されている。一般的には、より低い抵抗のPTCが好ましい。代替の減流装置は、引用により組み込まれる米国特許公開第2007/0275298号明細書及び米国特許公開第2008/0254343号明細書に見出すことができる。
【0088】
カソードに関して、カソードは、金属箔集電体、典型的には約16μmから20μmの厚みのアルミニウム箔の上に被覆される。カソードは、上述のように、コーティングの加工性、導電性及び全体的な効率の均衡を取るように慎重に選択する必要があるいくつかの材料を含有する混合物として形成される。これらの構成要素は、トリクロロエチレンのような溶剤の存在下でスラリ中に混合され、次に、集電体上に被覆される。得られるコーティングは、好ましくは、コーティング後に乾燥して高密度化され、コーティングは、主として、二硫化鉄(及びその不純物)、粒子状物質を互いに保持し、混合物を集電体に接着する結合剤、混合物に改善された導電性を提供する金属、グラファイト及びカーボンブラック粉末のような1つ又はそれよりも多くの導電性材料、並びにヒュームドシリカ及び/又は過塩基性スルホン酸カルシウム錯体のような任意的な加工/流動助剤から構成される。
【0089】
カソード混合物はまた、スリーロールリバース、コンマコーティング、又はスロットダイコーティングのようなあらゆる数の好ましい処理を使用して箔コレクターに付加される。あらゆる不要な溶剤を除去するために乾燥後又は乾燥と同時に、得られるカソードストリップは、カレンダ加工などにより高密度化され、正極全体を更に圧密する。このストリップは、次に、セパレータなどのサイズに類似の(必ずしも同一である必要はないが)アノードストリップで螺旋状に巻き付けられ、ゼリーロール型電極アセンブリを形成することになるという事実に照らし合わせて、この高密度化は、同様にコーティング自体の電気的及び場合によっては接着特性を改善しながら、ゼリーロール型電極アセンブリにおける電気化学材料の負荷を最適化する。
【0090】
しかし、一部の内部カソード空隙は、放電中の二硫化鉄の膨張及び有機電解質による二硫化鉄の湿潤化を可能にするのに必要であるので、カソードを過度に高密度化することはできない。より実際的には、コーティングを高密度に圧密するために印加することができる力の量のように作動的な限界もあり、かかる力によって生成される集電体上の応力は、コーティングの不用な延伸及び/又は実層間剥離をもたらす可能性がある。従って、最終高密度化カソードにおける固体充填百分率は、電気化学反応が進行するのを可能にするのに十分であることが好ましいが、調製は、活物質及び他の材料の接着を維持するのに十分な結合剤を含むように最適にすべきである。本発明による緻密化のための好ましい範囲は、上述されている。
【0091】
セパレータ
セパレータは、イオン透過性及び非導電性の薄い微小孔性膜である。それは、セパレータの孔隙の中に少なくとも何らかの電解質を保持することができる。セパレータは、アノードとカソードの隣接する面の間に配置され電極を互いに電気的に分離する。セパレータの部分はまた、セル端子と電気的に接触した他の構成要素を絶縁して内部短絡を防止することができる。セパレータの縁部は、多くの場合、少なくとも1つの電極の縁部を超えて延び、アノード及びカソードが互いに完全に整列されていない場合であっても電気的に接触しないことを保証する。しかし、電極を超えて延びるセパレータの量を最小にすることが望ましい。
【0092】
良好な高電力放電性能を提供するために、セパレータは、本明細書において引用により組み込まれている1994年3月1日に付与された米国特許第5,290,414号明細書に開示された特徴(少なくとも約0.005μmの最小寸法と、約5μm四方未満の最大寸法の孔隙、約30パーセントから70パーセントの範囲の孔隙率、2から15ohm−cm
2までの面積比抵抗及び2.5未満の捩れ)を有することが望ましい。他の望ましいセパレータの特性は、本明細書において引用により組み込まれている米国特許公開第2008/0076022号明細書に説明されている。
【0093】
セパレータは、多くの場合、ポリプロピレン、ポリエチレン、又は両方で作られる。セパレータは、二軸配向微小孔性膜の単層とすることができ、又は2つ又はそれよりも多くの層を互いに積層し、直交する方向に望ましい引張強度を与えることができる。費用を最小にするには単層が好ましい。膜は、本明細書に開示するカソード調製及び容器強度に関する制約に応じて16ミクロンから25ミクロンの厚みを有するべきである。好ましいセパレータは、「Tonen Chemical Corp.」、米国ニューヨーク州のマケドニア所在の「EXXON Mobile Chemical Co.」及び米国オレゴン州のレバノン所在の「Entek Membranes」から入手可能である。
【0094】
電解質
非常に少量(例えば、使用される電解質塩に応じて、重量で約2000ppmから500ppm以下)の水のみを含有する非水性電解質は、本発明のバッテリセルに使用される。電解質は、1つ又はそれよりも多くの有機溶剤中に解離した1つ又はそれよりも多くのリチウムベースの電解質塩を含有する。好ましい塩は、臭化リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、及びヨウ化リチウムのうちの1つ又はそれよりも多くを含むが、塩は、好ましくは、I
-(例えば、溶剤混合物中のLiI及び/又は他の添加剤の解離又は分解による)を含む。好ましい有機溶剤は、以下のギ酸メチル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、3,5−ジメチルイソキサゾール、n,n−ジメチルホルムアミド、及びエーテルのうちの1つ又はそれよりも多くを含むが、全溶剤のうちの少なくとも50体積パーセントは、エーテルの低い粘性及び湿潤機能が以下に説明する極太電極構造に良い影響を与えると考えられるのでエーテルでなければならない。好ましいエーテルは、非環式(例えば、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジ(メトキシエチル)エーテル、トリグリム、テトラグリム及びジエチル)、及び/又は環式(例えば、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン及び3−メチル−2−オキサゾリジノン)とすることができる。1,3−ジオキソラン及び1,2−ジメトキシエタンが好ましい溶剤であり、ヨウ化リチウムは好ましい塩であるが、ヨウ化リチウムは、リチウムトリフレート、リチウムイミド、又は過塩素酸リチウムと共に使用することができる。溶剤混合物中に解離したI
-の生成をもたらす添加剤を使用することができる。
【0095】
セルアセンブリ
アノード、カソード、及びセパレータのストリップは、電極アセンブリにおいて互いに組み合わされる。電極アセンブリは、カソード、セパレータ、アノード、及びマンドレルの周りのセパレータのストリップを交互に巻き付けることによって作られた
図1に示すような螺旋巻き設計とすることができ、これは、巻き付けが完了した時に電極アセンブリから取り出される。セパレータの少なくとも1つの層及び/又は電気絶縁フィルムの少なくとも1つの層(例えば、ポリプロピレン)は、一般的に、電極アセンブリの外側の周りに巻かれる。これは、アセンブリを互いに保持する助けになり、アセンブリの幅又は直径を望ましい寸法に調節するのに使用することができるなどのいくつかの目的を果たす。セパレータの最外端又は他の外側フィルム層は、1枚の粘着テープ又はヒートシールで保持することができる。
図1に示すように、アノードを最外電極としてもよく、又はカソードを最外電極とすることができる。いずれの電極もセル容器と電気接触状態にすることができるが、最外電極と容器の側壁の間の内部短絡は、電極アセンブリの最外巻線の極性を缶の極性に適合させることによって回避することができる。
【0096】
セルは、あらゆる好ましい処理を使用して閉鎖して密封することができる。かかる処理は、以下に限定されるわけではないが、圧着、リドロー、収集、及びこれらの組合せを含むことができる。例えば、
図1のセルについては、電極及び絶縁コーンが挿入された後、缶の中にビードが形成され、ガスケット及びカバーアセンブリ(セルカバー、接触バネ、及び通気孔ブッシュを含む)が缶の開放端に備えられる。セルは、ガスケット及びカバーアセンブリがビードに対して押し下げられる間、ビードにおいて支持される。ビードの上の缶の上部の直径は、セグメント化されたコレットを使用して絞られ、ガスケット及びカバーアセンブリをセル内の所定位置に保持する。電解質が、通気孔ブッシュ及びカバーの開口を通してセル内に分配された後で、通気孔ボールをブッシュの中に挿入し、セルカバーの開口を密封する。PTC装置及び端子カバーが、セルカバー上のセルの上に備えられ、缶の上縁に圧着ダイで内向きに曲げられ、ガスケット、カバーアセンブリ、PTC装置、及び端子カバーを保持及び維持し、ガスケットによって缶の開放端のシールが完成する。
【0097】
電気化学セルの改良は、様々な異なる高率試験の下で電気化学セルの性能に基づいて測定することができる。最後に、本発明者に公知の最高性能の従来技術のFR6セルは、約330分のDSC性能を有した。この従来技術のセルはまた、両面のカソード集電体のうちの片面上のcm
2当たり92重量パーセントのパイライトと、電極間の220cm
2の総界面表面積とを含む約22mgのカソード混合物を有し、DSC試験で約18mWh/cm
2の界面表面積をもたらした。他の公知のFR6セルは、カソードの片面の混合物/cm
2のうちの約18mgから25mgと界面表面積の200cm
2から220cm
2との間で変化したが、これらのセルは、DSC試験で有意に悪化し、典型的には、約260分から285分及び約15mWh/cm
2から17mWh/cm
2をもたらしたに過ぎない。場合によっては、セルは、混合物の28mg又はそれよりも多く/cm
2の負荷を有することが観察されたが、これらのセルは、電解質、固体充填、及び/又は比較的低重量パーセントのパイライトのこれらの選択肢によって説明することが可能なDSC試験(例えば、通常は250分未満、時にサービスなし)で全ての公知の従来技術のうちの最悪の性能を示した。いかなる場合も、全ての公知の従来技術のFR6セルは、約165ミクロン未満の厚みの少なくとも99.5重量パーセントのリチウムから構成されるアノードと、93重量パーセント未満のパイライトを有するカソードコーティングとを有した。
【0098】
カソードコーティング中のFeS
2の量は、バッテリの製作前に混合物を解析することによるか、又は調製後の鉄含有量を判断して鉄の検出レベルをカソード中のパイライトの重量パーセントに関連付けることによるかのいずれかで判断することができる。製作後の鉄含有量を試験する方法は、公知の量(質量及び容積/面積を単位として)のカソードを酸に溶解することにより行うことができ、次に、誘導結合プラズマ原子発光解析又は原子吸光解析法のような一般的な定量解析技術を使用してその溶解試料中の鉄の総量について試験される。本方法による公知のコーティングカソード調製を試験することで、鉄の総量がセル中のFeS
2を表すことが検証された(特に、カソードコーティングにおけるFeS
2の純度を最大にすることが望ましい限りは)。ピクノメータを使用してカソード密度を判断することができる場合があるが、一定の結合剤は、リチウム−二硫化鉄セルの内部環境に露出される時に容積変化を受け入れることがあるために、かかる方法により確立された密度は、カソードの乾燥混合密度に達するように更に調節することが必要になる。
【0099】
注意すべき点は、試料中のアルミニウム量の試験は、同様の方式(例えば、ICP−AES又はAA分光法)で集電体(コレクターがアルミニウムである時)の厚みの計算を可能にすることになる。他の同様の解析技術は、これらの構成要素の原子及び/又は分子組成に応じて結合剤、加工助剤などの試験に使用することができ、かつアノード及び/又はセパレータの解析は、同様の解析及び定量/定性技術を使用して可能である。
【0100】
カソードの単位面積当たりの重量、孔隙率/充填、又は他のカソード特性が製作後に判断される限り、カソードは、あらゆる電解質又は他の汚染物質を除去するためにすすいで溶剤が測定重量に寄与しないことを保証するように完全に乾燥させるべきである。次に、集電体からの重量寄与は、上述のコレクターの適切な経験的解析によるこの測定値から差し引くことができる。同様に、空隙空間/固体充填を判断するために、集電体に対して異なる調節を含む相対密度測定を行うことができる。
【0101】
電極の抵抗、抵抗性、及び導電性は、特にカソードコーティングに対して様々な方法によって実施することができる。「2プローブ」方法は、リードとプローブの間の接触抵抗を排除するように設定された2ポンド及び4ワイヤ構成の負荷を有する「Solartron Battery Tester 1462」モデルのような器具を使用して直流を試料(プローブと試料の間の接触抵抗を排除するように金で被覆した)に印加する段階及び電圧を測定する段階を含む。個別の「4プローブ」方法も有用な場合があり、「Mitsubishi Loresta IP MCP−T250」抵抗メータ及び「Mitsubishi Loresta ESP」の4点プローブが使用される。インピーダンスは、当業技術で公知のどのような数の従来の方法によっても測定することができる。
【0102】
他の解析又は測定も製作後のセルから取り出された特定の構成要素に対して実施することができる。このような状況において、解析/測定に影響を与える可能性があるあらゆる不要な変動(例えば、電解質塩の上昇)を取り除くのに注意を要する。更に、当業者は、間接的観察に基づく一定の特性を推測することができる。
【0103】
上記説明の全体は、特にFR6及びFR03セルに関する。しかし、本発明はまた、側壁の高さが容器の直径を超える他の円筒形セルサイズ、他のカソードコーティング手法、及び/又はシール及び/又は圧力逃し口の設計を有するセルに適応させることができる。
【0104】
本発明の特徴及びその利点は、本発明を実施する人により更に認められるであろう。更に、上述のように組み立てられたセルの構成要素及び性能の一定の実施形態が達成されるであろう。開示した概念の教示から逸脱することなく本発明に様々な変更及び改良を加えることができることは、本発明を実施する人及び当業者により理解されるであろう。与えられる保護の範囲は、特許請求の範囲及び法律によって許される解釈の幅により判断すべきである。
【0105】
ここで、以下の限定されない例を参照して本発明を説明する。
【実施例1】
【0106】
一連のセルは、以下の表1で識別した異なる導体タイプを使用して作られた。セルの構成の前に、各導体タイプの表面積が判断され、導体中に存在する官能基の量を判断するために滴定が行われた。これらの結果はまた、表1に示されている。
図2は、試験する官能基のタイプに関係なく官能基の量と導体の表面積と間の良好な相関関係(個々に及び全体で)を明らかにする。
【0107】
(表1)
【0108】
セル設計及び構成されたセルのためのカソードコーティング調製は、使用されている94.4重量パーセントのパイライト、及び2.6重量パーセントの加工助剤及び結合剤と同一であった。残りの3重量パーセントは、導体タイプによって異なる。更に、1シリーズのセルの電解質は、DIOX、DME、及びLiI中に<1体積パーセントの共溶媒DMIを含む。仕上げも様々であり、一方のセットは予備放電され、他方は予備放電なしであった。次に、セルは2年間エージングさせた。
【0109】
潜在的な相関(R=0.79)が、
図3で認めるように、予備放電されてDMIを含有するこれらのセルに対してフラッシュアンペア数と炭素表面との間で観察された。一般的に、セル中のフラッシュアンペア数はまた、導体タイプ又は機能化に関係なく、予備放電したセルを有意に改善した。従って、官能基、特にラクトン基及び/又はフェノール基を含有する導体の選択は、導体表面積及び拡大解釈すれば一定のセルのフラッシュアンペア数性能の上方修正を考慮することができる。
【0110】
更に、マイナスの数値が、上の表1から一定の官能基に対して除外される(すなわち、ゼロとして処理される)と、2年保管後のOCVと選択された導体の表面積との間で非常に良好な相関が観察された。従って、この場合も一定の官能基を含有する導体の選択は、得られるセルOCVのより良好な制御を特にごく少量の導体(すなわち、3重量パーセント未満)を含有するカソード調製において考慮することができる。
【実施例2】
【0111】
少なくとも5つのセルのロットは、表2に示すように、様々な導体のタイプ、導体の重量パーセント(混合物の総乾燥重量と比較して)、及びカソード固体充填で構成された。表において、PBは、グラファイト化炭素を表し、GPは、膨張可能なグラファイトを表している。全ての調製は、同じアノード、電解質、及び原料源を使用した(上述のように)。最後に、同一のアノード対カソードの理論的なインプット比が、全てのロットに対して使用された。
【0112】
DSCは、「米国規格協会」によって定められたような「デジタルスチルカメラ」試験を意味する。表2の全ての報告されたDSC値の標準偏差は、13分未満であった。固体充填がカソードの厚みの変化を必要とする限り、このようなセルのためのカソード及びアノードの長さは、これに応じて調節された。ロット2057〜ロット2060及びロット2061〜ロット2064の全ては、これらをグループ分け内で直接比較できないように僅かに異なる構成パラメータを使用したが、ロット2057はロット2061と、ロット2058はロット2062となどで比較することができる。
【0113】
(表2)
【0114】
上述の結果が明らかにするように、低重量パーセント(すなわち、<3%)のグラファイト化炭素を有するセルは、膨張可能なグラファイトと同様か又はそれよりも良好な性能を示したが、これは、部分的に、グラファイト化炭素セルに提供された僅かに大量のパイライトによると考えられる。それにも関わらず、データは、グラファイト化炭素によって提供された最大の利益は、低固体充填(すなわち、≦64%)において達成することができるに過ぎないことを示唆している。
【実施例3】
【0115】
交差d−最適混合物計画実験は、固体充填を含む独特のカソードコーティング調製を有するがそれ以外は上記説明による標準成分及び設計特徴を含む一連のFR6セルに対して行われた。実験の設計は、4つの混合成分と1つの処理変数を含み、成分変数は、パイライト含有量(ローエンドとして94.2重量パーセント、ハイエンドとして97.2重量パーセント)、アセチレンブラック含有量(ローエンドとして0重量パーセント、ハイエンドとして4.0重量パーセント)、グラファイト化炭素(ローエンドとして0重量パーセント、ハイエンドとして4.0重量パーセント)、及びグラファイト(ローエンドとして0重量パーセント、ハイエンドとして3.0重量パーセント)であり、データを解析する時に、最終混合物中のアセチレンブラック、グラファイト化炭素、及びグラファイトの合計量は、試験した全てのロットの乾燥混合物中の結合剤及び他の加工助剤のうちの少なくとも1.8重量パーセントを実質的に考慮した1重量パーセントから4重量パーセントであった。処理変数は、ローエンド60%のターゲット及びハイエンド72%のターゲットを有する固体充填であったが、実際には、実構成カソードは、約58%から72%の実充填を保有した。必要に応じて、データは、両面カソードの40mAh/cm
2のカソード容量負荷を占めるように正規化された。固体充填がカソード厚みの変化を必要とする限り、このようなセルのためのカソード及びアノードは、これに応じて調節された。
【0116】
次に、この計画実験の下で作り出されたカソードは、一連の性能測定基準に準拠させ、場合によっては、完全FR6セルが構成された。次に、得られる数組のデータは、米国ミネソタ州のミネアポリス所在の「Stat−Ease,Inc.」によって公開されたDesign−Expert(登録商標)ソフトウエアを使用して解析された。特に、スケール表面応答曲線を生成し、上述のカソード調製の利益を検証した。表面応答曲線を個々の固体充填レベルで生成し、確実に意味のある比較を行うことができる。
【0117】
図5A及び
図5Bにおいて、カソードコーティングの4プローブの抵抗は、低固体充填(すなわち、60%)及び2つの個別のレベルの高パイライト含有量(95.2重量パーセント及び96.2重量パーセント)で示されている。過去の経験は、これらのカソードコーティングがセル内に組み込まれる時に、少なくとも3mΩ及び少なくとも5Ωの抵抗がセル性能への影響によく相関することを示している。従って、アセチレンブラック及びグラファイトの混合物に対するプリファレンスは、これらの低充填、高パイライト条件下で明らかにされる。グラファイト及びアセチレンブラックの混合物に対するプリファレンスも、
図5C及び
図5Dで認めるように62%の固体充填において明らかにされたが、総抵抗は、かなり弱い。実際に、63%を超える固体充填では、炭素の選択は、カソードコーティング自体の抵抗への対応する影響を考慮すると相対的には重要ではない。
【0118】
図5Eにおいて、2プローブ面積比抵抗測定値は、95.2重量パーセントのパイライト及び62%の充填におけるアセチレンブラックに対するプリファレンス(グラファイト又はグラファイト化炭素に対して)を示している。しかし、この方法においては、できる限り低い面積比抵抗(Ω−cm
2)が好ましいが、測定値は、4プローブ抵抗測定値と直接比較できない。2プローブ抵抗に対する同様の応答挙動は、研究した高パイライト含有物調製(すなわち、95重量パーセント〜98重量パーセント)のスペクトルにわたってより低い充填(すなわち、60%)で見られた。
【0119】
図6Aから
図6Dは、完全に構成されたFR6セルにおける10kHzインピーダンスへの影響を示し、できる限り低いインピーダンス(例えば、<130mΩ)が好ましい。上述のように、プリファレンスは、主要成分としてアセチレンブラックを含有する低い総導体重量混合物に対して明らかにされる。上述のように、このプリファレンスは、固体充填が増加する時に低下すると思われ、63%の固体充填の上のコーティングは、もはや互いの間でそれ以上の差を明らかにするものではない。
【0120】
最後に、デジタルカメラ試験における完全セル性能に関して、
図7Aから
図7Fは、固体充填に関係なくこの高率試験に対して高パイライト含有量のカソード混合物におけるグラファイト化炭素の望ましさを明らかにしている。実際に、導体の重量の残りの部分がグラファイトであるグラファイト化炭素の少なくとも50重量パーセント、少なくとも55重量パーセント、少なくとも66重量パーセント、又は少なくとも75重量パーセントを含有する混合物は、総導体(すなわち、1.5重量パーセントから3.0重量パーセント)、パイライト含有量(すなわち、95.2重量パーセントから96.7重量パーセント)、及び固体充填(60%から72%)の全範囲に対して好ましいと思われる。以上の説明と矛盾せずに、65%未満の固体充填は、加工性及び反応性生物に対応する機能を考慮すると特定的な利点を保有すると考えられる。
【0121】
以上の実施例における特定の特徴は、導体、カソード調製、セル設計、及び/又は他の品目の特定的な態様に関する情報を含むが、実施例は、参照によって組み込まれた品目を含むこの全開示に照らして読む必要があることを理解されるであろう。従って、付加的な試験は、上記に含まれる情報を補足することができる。例えば、他の安全性又は性能試験は、本明細書に開示する本発明の態様から逸脱することなく実施例に開示する品目に対して反復することができる。