(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730891
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】鼓動シミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
G09B 23/28 20060101AFI20150521BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
G09B23/28
G09B9/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-538337(P2012-538337)
(86)(22)【出願日】2010年11月11日
(65)【公表番号】特表2013-511058(P2013-511058A)
(43)【公表日】2013年3月28日
(86)【国際出願番号】EP2010067294
(87)【国際公開番号】WO2011058103
(87)【国際公開日】20110519
【審査請求日】2013年11月6日
(31)【優先権主張番号】20093322
(32)【優先日】2009年11月12日
(33)【優先権主張国】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】507154664
【氏名又は名称】レルダル メディカル アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100082924
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 修一
(72)【発明者】
【氏名】ヘトラン,エイリク
【審査官】
坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−133878(JP,A)
【文献】
特開2009−037059(JP,A)
【文献】
特開2007−058076(JP,A)
【文献】
特開平08−220593(JP,A)
【文献】
特開2001−041346(JP,A)
【文献】
特開平08−226376(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/086904(WO,A1)
【文献】
特開2000−019952(JP,A)
【文献】
特表平11−512188(JP,A)
【文献】
特開昭63−038978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00− 9/56
G09B 19/00−19/26
G09B 23/00−25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者シミュレータ用パルス鼓動シミュレーション装置であって、
本体と、
前記本体に対して第1の距離に位置するアクチュエータ部と、
一対のレバー部であって、互いの端部が前記本体の長手方向の端部にそれぞれ設けられ、各々の下部が回転可能に前記本体に設けられ、上部が回転可能に前記アクチュエータ部に設けられた一対のレバー部と、
前記レバー部の各々の下部と前記本体に連結された少なくとも1つの形状記憶合金ワイヤと、を有し、
前記形状記憶合金ワイヤは、電流が流れて収縮した時に前記レバー部の下部が前記本体に向けて移動し、それにより前記アクチュエータ部が前記本体に対して離れるように移動し、前記本体に対して第2の距離(>前記第1の距離)となるように構成されている、装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置であって、
前記本体と前記レバー部、および前記レバー部と前記アクチュエータ部は狭橋部によって互いに接続され、1つの連続相互接続構造を形成している、装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置であって、
前記狭橋部の少なくとも1つは厚さが0.1〜1.0mmの範囲である、装置。
【請求項4】
請求項2記載の装置であって、前記連続相互接続構造は樹脂で形成される、装置。
【請求項5】
請求項2に記載の装置であって、前記連続相互接続構造の樹脂材料はポリオキシメチレン、ポリアセタール、ナイロン(PA6またはPA6.6)、ポリプロピレン、ポリオレフィンのいずれか1種を含む材料で形成されている、装置。
【請求項6】
請求項2に記載の装置であって、前記連続相互接続構造は射出成型された樹脂で形成され、外形が、寸法が30×8×5mmの、長方形の平行6面体である、装置。
【請求項7】
請求項3記載の装置であって、
前記狭橋部の少なくとも1つは厚さが0.15mmである、装置。
【請求項8】
請求項3記載の装置であって、前記連続相互接続構造は樹脂で形成される、装置。
【請求項9】
請求項7記載の装置であって、前記連続相互接続構造は樹脂で形成される、装置。
【請求項10】
請求項1記載の装置であって、
前記本体は前記形状記憶合金ワイヤの少なくとも1つを収納するための溝を有する、装置。
【請求項11】
請求項1記載の装置であって、
前記形状記憶合金ワイヤの少なくとも1つは直径0.025〜0.508mmのニッケルーチタンである、装置。
【請求項12】
請求項1記載の装置であって、
前記形状記憶合金ワイヤの少なくとも1つの直径は0.076mmである、装置。
【請求項13】
請求項1記載の装置であって、
前記形状記憶合金ワイヤは5、6、7、8、9、10、11、12Vのいずれかの電位差を、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30msのいずれかの時間、印加されることにより駆動する、装置。
【請求項14】
請求項1記載の装置であって、
前記形状記憶合金ワイヤの少なくとも1つは電流が前記形状記憶合金ワイヤに流されたときに第1の長さとなり、電流が流れていない場合に第2の長さとなり、前記レバー部は前記形状記憶ワイヤが前記第2の長さから前記第1の長さになる時に第1の向きに回転し、それにより前記アクチュエータ部が前記本体に対して離れるように移動し、かつ、前記形状記憶合金ワイヤが前記第1の長さから前記第2の長さになる時に前記第1の向きとは逆向きに回転するように構成されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は患者シミュレータに用いるための鼓動シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルゲン大学外科研究科のアスガウト=ヴィステによれば、医療ミスはエイズ、交通事故、および乳癌よりも多くの死因となっている(非特許文献1)。ミスによりひきおこされる、患者とその親族に対する激しい苦痛および/または喪失は深刻な倫理的側面がある。他の側面としては、医療ミスを防止することにより生じる病院/医療機関の多大な経済的利益、救命可能性は、医療ミスにより由来する処置/ダメージに要するコストより大きい。
【0003】
航空機、船舶、製造工場等の危険性のある物を扱う個人に対しては、緊急事態/事故に対応するための安全訓練が以前から義務付けられている。このような場所の職場環境はしばしば技術的に複雑であり、事故が起こってから、深刻な結果を避けるための適切な対応をするまでに要求される時間の猶予が短い。事故に対応する作業者が強いストレスに置かれることにより生じる誤断によって引き起こされるリスクがあることも往々にして考えられる。潜在的な事故と、それに対応するための従業員の対応を訓練するシミュレーションは、このような状況に対しての誤判断とミスに対する反応のリスクを減少させる効果的なツールであることが知られている。
【0004】
医療サービスにおいて、患者シミュレータの使用は救急医療に従事する、救急技能を学ぶ必要がある個人の技能の維持、訓練、および教育に効果があることが判っている。患者シミュレータは、臨床機能の範囲内で臨床的介入に対する反応において、実物に近く、相互作用型の擬似人間訓練マネキンであり、指導者が制御するか、あらかじめプログラムされたシナリオに沿って動く。臨床機能の例としては、深さと速さが変化する自発呼吸パターン、音声、実物に近い、正常な、あるいは異常な心音、呼吸音と腸音、鼓動と同期する心調律、舌浮腫、咽頭の腫れ、および咽頭痙攣のような、状態を表すために変動可能な構造、調整可能な泉門、心調律と同期する血圧、出血を制御するための構造等である。
【0005】
患者シミュレータは可能な限り実際の生命の危機に近いシミュレーションを提供するために、可能な限り人間に近く見える(感じる)ように作られるべきである。他の側面において、この現実の模擬は、人間の鼓動のように感じられる鼓動の患者シミュレータに用いられる。患者シミュレータの鼓動は、起こりうる症状と、患者シミュレータの肌で現実の患者と同様に感じられるべき、これらの異なる心調律にするためにあらゆる正常な、あるいは異常な心調律を模擬可能であるべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Viste Asgaut, “Bruk av simulatorer og roboter i trening og opplaering innen medisin”, [online], 1/2006, Universitetet i Bergen,インターネット(URL: https://bora.uib.no/bitstream/1956/1088/1/Asgaut%20Viste%201.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主たる目的は、あらゆる正常な、あるいは異常な心調律を患者シミュレータにおいて模擬可能な患者シミュレータ用の鼓動シミュレータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、形状記憶合金のワイヤが通電時に収縮し、放電時に元の長さに戻るという現象に基づいており、また、この形状記憶合金ワイヤの収縮現象を、ワイヤの収縮運動を拡張力に変換可能な機械的構造に組み込むこと、また、この機械的構造を患者シミュレータまたはマネキンの人工皮膚の下に配置することにより、鼓動を模擬するために用いることができる。形状記憶合金のワイヤに供給された電気パルスの電位差とパルス幅の両方を制御することにより、あらゆる正常な、または異常な心調律を模擬することが可能になる。
【0009】
本発明の第1の態様は、患者シミュレータ用の鼓動シミュレーション装置に係るものであり、前記装置は以下の構成を有する。
【0010】
本体と、
前記本体の上方に平行に位置するアクチュエータ部と、
前記本体の長手方向の両端に設けられ、下部が前記本体に回転可能に保持され、上部が前記アクチュエータ部に回転可能に保持されたレバー部と、
それぞれの前記レバー部の前記本体に回転可能に保持された部分より下側の下部に一方の端部が連結され、他の端部が前記本体に連結された、少なくとも1つの形状記憶合金ワイヤと、を有し、前記形状記憶合金ワイヤは、電気パルスが印加されていないときに、前記レバー部が、前記本体に向かって折りたたまれ、前記アクチュエータ部が前記本体の上方で第1の距離となるような長さに保持可能であり、かつ、前記形状記憶合金ワイヤに電気パルスが印加されて収縮した時に前記レバー部が所定の角度回転し、それにより前記アクチュエータ部が拡張した位置に持ち上げられ、前記本体の上方で第2の距離(>前記第1の距離)となるような長さに保持可能である。
【0011】
適切な電位とパルス幅の電気パルスが形状記憶合金ワイヤに加えられると、ワイヤが加熱され、収縮を起こす。長さが収縮したワイヤはレバー部の下端を本体側に引っ張る。これにより、レバー部は本体の回転可能な取付部によって形成された軸を中心に所定の角度回転し、この回転力がアクチュエータ部を本体から離れ、上方に延びる向きに押圧する。
【0012】
制御された電流パルスのパターンを形状記憶合金ワイヤに供給してレバー部の動作を制御する手段を用い、供給されるパルスの電位差とパルス間隔に従って、アクチュエータ部が患者シミュレータマネキンの人工皮膚の下から拍動力を与えるように装置を配置することによって、アクチュエータ部の往復運動があらゆる正常な、あるいは異常な心調律を模擬できる。
【0013】
本発明の第1の態様に係る装置は、コスト面で有利な小型で単純な機構で消費電力が小さいという利点を有する。これは即ち、乳児または幼児の人間患者シミュレータマネキンに使用する場合に有利であり、また、装置に加える制御信号(パルス)を直接マネキンのCPUから装置に加えられるという点でも有利である。
【0014】
本発明の第1の実施形態に係る装置の動作原理を
図1に概略図で示す。この図は収縮された状態の装置の側面図を示している。剛性材料で構成された本体1にはレバー部2が両側面に設けられ、レバー部2は本体1の点4に回転可能に連結されている。個々のレバー部2はまた、形状記憶合金ワイヤ6によって本体1に連結されている。両方のレバー部2の上面にはアクチュエータ部3が、2つの回転アタッチメント5を用いて連結されている。電気パルスが形状記憶合金ワイヤ6に印加されると、形状記憶合金ワイヤ6は収縮し、それによりレバー部2の下端を本体1に向けて引っ張り、この力により、レバー部2が本体の点4によって形成される軸を中心に所定の角度だけ回転する。この回転運動は今度はアクチュエータ部3を本体から離れる向きに押圧し、本体の上の第2の位置(>第1の位置)となる上方の拡張位置に向けて押し上げる。制御された電流パルスのパターンを、レバー部2の動作を制御する形状記憶合金ワイヤ6に供給する手段(図示せず)を用い、供給されるパルスの電位差とパルス間隔の両方に従い、アクチュエータ部3が患者シミュレータマネキンの人工皮膚の下から拍動力を与えるように装置を配置することによって、本体1の往復運動が、あらゆる正常な、あるいは異常な心調律を模擬できる。
【0015】
鼓動シミュレート装置は、好ましくは患者シミュレータの人工皮膚直下の空間内で直立位置に設けられる。すなわち、鼓動シミュレーション装置はアクチュエータ部3が収縮位置で患者シミュレータマネキンの人工皮膚の下面に接触している時、空間の底に本体が置かれるように空間内に設けられる。これにより、アクチュエータ部3が上方拡張位置に上昇するように装置が動作した時に、人工皮膚の、鼓動に類似した動作を感じることが可能となる。
【0016】
本発明の支持構造(本体1、レバー部2、およびアクチュエータ部3)の材料としては、鼓動を模擬した力をシミュレータマネキンの人工皮膚に伝えることが可能な剛性を充足する任意の材料を用いることができ、すなわち、種々のポリマー材料や金属等、好適な例としては、ポリオキシメチレン、ポリアセタール、ナイロン(PA6またはPA6.6)、ポリプロピレン、ポリオレフィンのうちの1種のポリマー材料を含む材料を用いることができる。
【0017】
本発明では、電流を流すと数%収縮可能な任意の形状記憶合金ワイヤを用いることができる。好適なワイヤの例としては、電流を流してワイヤを室温から70〜90℃に加熱すると、長さが2〜5%収縮するニッケル−チタンアクチュエータワイヤが挙げられる。このワイヤはDynalloy社(14762 Bentley Circle Tustin, CA 92780, USA)で購入可能であり、直径は0.025mmから0.508mmの範囲のものがあり、それぞれ、最大牽引力は7〜3562gになる。試験の結果からは、直径0.076mmのワイヤが本発明に好適であったが、他の直径のワイヤも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る装置の側面を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施例の患者シミュレータ内における、可能な配置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施例を
図2に示す側面斜視図を参照して、より詳細に説明する。
【0020】
実施例の装置100は樹脂成型体と2つの形状記憶合金ワイヤ60の2種類の部材で構成されている。樹脂成型体は外形が30×5×8mmの長方形の平行6面体であり、その一部が2つのレバー部20に狭橋部40によって回転可能に連結された本体10を構成し、個々のレバー部20は狭橋部50によってアクチュエータ部30に回転可能に連結されている。このように、本体10、レバー部20、アクチュエータ部30は1つの樹脂体で一体に成型され、形状記憶合金ワイヤ60の収縮によるアクチュエータ部30の拡張の動作で変形可能に相互に連結された構成となっている。樹脂成型体は射出成型のようなモールド成型等により形成することができ、ポリオキシメチレンで構成することができる。
【0021】
狭橋部40、50は形状記憶合金ワイヤ60等の収縮によって生じた機械力が加えられた時に曲げられるような柔軟性を有するのに十分に薄い樹脂構造である。厚さは0.1から1.0mmの範囲であることが望ましい。実施例における狭橋部の厚さは0.15mmである。
【0022】
樹脂成型体には、形状記憶合金ワイヤ60を保持し、かつ救急技術等の訓練のために患者シミュレータマネキンを使用する人間によって加えられる圧縮力から保護するための溝11を設けても良い。樹脂成型体はまた、望ましくは、圧縮される樹脂成型体が形状記憶合金ワイヤ60が折れる/破断する位置まで伸縮する状態になるのを防ぐための端部ストッパ領域31を設けることができる。
【0023】
形状記憶合金ワイヤ60が0.076mmのニッケル−チタンの場合、電位が5、6、7、8、9、10、11、12Vの範囲のパルスで、パルス幅が5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30msの範囲で駆動する。このワイヤは、電位差9V、電流600mAのパルスの場合、20msの間印加するのが望ましく、一方、電位差12V、電流800mAのパルスの場合、15msの間印加するのが望ましい。シミュレートする心調律の特性によっては、他の組み合わせもまた、適用可能である。このような2つの形状記憶合金ワイヤ60を有する装置のエネルギー消費量は、典型的には毎分100パルスで0.5Wである。
【0024】
図3は患者シミュレータマネキン102の人工皮膚103内部の空間101内に設けられた実施例の装置100の可能な構成を示している(同図はマネキンの一部のみを図示している)。
図3は装置100を略垂直方向から図示しており、同図が1つのレバー部120とアクチュエータ部130の端部を図示するようになっている。装置は圧縮された状態で、アクチュエータ部130が本体(図示せず)の上方の第1の距離にある。電気パルスが形状記憶合金ワイヤ60に印加された時、ワイヤは収縮し、その動作が皮膚を下側から押圧するような、アクチュエータ部130の外側方向の動作へ伝達される。この動作は患者シミュレータマネキン102を用いて訓練する人間の指104によって感知され、鼓動のように感じられる。