【実施例】
【0043】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるだけであって、実施例によって本発明の内容が限定されることではない。
【0044】
[実施例1]
製造例1.有機シリケートマトリックスの合成
多孔性の超低誘電薄膜のマトリックスとして、メチルトリメトキシシラン(MTMS)とビス(トリエトキシシリル)エタン(BTESE)とをそれぞれ75%と25%とのモル比で共重合した共重合体を下記の反応式1に従って合成して使用した。前記合成において、触媒としてHClと水とを使用し、THFを溶媒として使用した。反応条件は、r
1(HClmol/総単量体mol)は0.03と、r
2(H
2Omol/総単量体mol)は10.0とした。反応後の触媒は、抽出過程を通じて除去し、溶媒除去後の白い固体状態の前記共重合体合成物を得ることができた。
【0045】
【化1】
【0046】
二つのSi原子の間がエチレンブリッジで連結された構造であるBTESEを共重合させることで、MTMSのようにケージ(cage)構造を容易に形成する3−作用性シラン(tri-functional silane)をネットワーク形成が可能な反応性ケージの構造で作った。 結果的に、独立した(isolated)ケージまたは完全な(perfect)ケージ構造の形成を抑制し、優れた機械的物性のマトリックスの合成を可能にした。BTESE25モール%含んだ共重合体は、MTMSのホモ重合体であるポリメチルシルセスキ オキサン(MSSQ)(k=2.7)より誘電率は2.9で多少高いが、弾性係数が11GPa以上で(MSSQ=3〜5GPa)非常に優れていることが分かった。また、前記共重合体は、末端に新水性である−OHグループを多く有しており、本願で利用した細孔形成樹脂とゾル−ゲル縮合反応を起こしやすい構造となっている。
【0047】
製造例2.反応性ポロゲンの合成
反応性ポロゲンとして、還元糖系列の物質であるキシリトールを基本にアリル化(allylation)とヒドロシリル化(hydrosilylation)の反応を経て末端がトリメトキシシリル[Si−(OCH
3)
3]グループに置換されたトリメトキシシリルキシリトール(TMSXT)を使用した。前記置換された末端は、前記製造例1で製造されたマトリックスとポロゲンとの二つの物質間の化学結合を可能にして相分離を最小化し、TMSXTを利用して超低誘電薄膜を製造する場合、優れた物性を有することと確認された(k=2.12、E=9.1GPa)。
【0048】
TMSXTの製造過程は、下記の通りである。
【0049】
先ず、NaOH水溶液(33体積%)100mlにキシリトールを44mol溶解させた後、界面活性剤であるテトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)12.4molを溶解させた。その後、40℃の温度条件で当量に合わせたアリルブロマイドを一定の時間間隔をおいて積荷方式(dropwise)で積荷し、24時間アリル化反応を進行させた後、余分のアリルブロマイドを除去することで、アリル基を含む物質を製造した。こうして製造された物質に再度トリメトキシシランを当量に合わせて溶解させた後、酸化白金(platinum oxide)触媒を入れて90℃でヒドロシリル化反応を進行させた後、溶媒及び触媒除去を通じて最終的にトリメトキシシリル基を有する反応型ポロゲンを製造した。製造された反応型ポロゲンの合成結果は、
1H−NMRスペクトルを通じて確認することができた。前記製造過程の反応式は、下記の通りである。
【0050】
【化2】
【0051】
実施例1.高温でオゾン処理されたナノ細孔の超低誘電薄膜の製造及び特性分析
【0052】
1.高温でオゾン処理されたナノ細孔の超低誘電薄膜の製造
前記製造例1で製造されたマトリックスであるBTESE25モール%共重合体と前記製造例2で製造されたMSXTポロゲンとを使用してナノ細孔を含有した超低誘電薄膜を製造する過程は、下記の通りである。
【0053】
前記マトリックスを1−メトキシ−2−プロパノールアセテート(PMA)溶媒を使用して20重量%溶液に製造した後、同じ重量%でポロゲン溶液を製造して、前記マトリックス溶液に対してポロゲン溶液含量が0、20、40、60体積%である混合溶液を製造し、この溶液を基材上にスピンコーティングして薄膜を製造した。この際、前記スピンコーティング時の回転速度は2500rpm、時間は30秒に固定した。こうして製造された薄膜に対して、下記するような硬化過程を含む熱処理過程を行った。
【0054】
<熱処理過程>
前記製造された薄膜を3℃/分の速度で250℃まで温度を上げた後、250℃で2時間硬化をさせることで溶媒除去及びマトリックスの縮合反応を誘導した。次いで、同じ速度で300℃まで加熱した後、300℃で2時間硬化をさせることでマトリックスとポロゲンとの反応とポロゲンの自発的な化学的再配列とを通じて細孔導入と共に、マトリックスの硬化密度の増加を誘導した。最終的に、430℃まで加熱した後、430℃の温度で1時間熱処理過程を経てナノ細孔型の超低誘電薄膜を製造した。
【0055】
前記熱処理過程の途中、110℃、130℃、150℃、250℃、430℃の各温度を固定してオゾン処理を1、2、10分間それぞれ行った。この際、供給されるオゾンの流速(flowrate)は5LPMであり、濃度は100%に固定した。
【0056】
2.高温オゾン処理されたナノ細孔の超低誘電薄膜の特性分析
(1)屈折率(n)及び孔隙率(P)
前記ナノ細孔型の超低誘電薄膜の屈折率(R.I.)は、632.8nm波長の光源を有したFilmetrics(F−20、Filmetrics、Inc.)で測定し、屈折率は、各試料当たり20個以上の地点をスキャンして平均値を求めた。そして、下記のLorentz−Lorentz式を利用して屈折率値から孔隙率(P)を計算した。
【数1】
n
o:マトリックスフィルムの屈折率
n:細孔形成フィルムの屈折率
P:孔隙率
【0057】
(2)誘電定数
前記屈折率から得た孔隙率から下記のMaxwell−Garnett式を利用して光学的周波数における理論的な誘電定数(expected k)を計算した。
【数2】
k
o:マトリックスフィルムの誘電定数
k:細孔形成フィルムの屈折率
P:孔隙率
【0058】
実際、ナノ細孔薄膜の誘電定数は金属絶縁膜半導体(metal−insulator−semiconductor=MIS)素子を製作して測定した。MIS素子は、高度にドーピングされたSi−ウェハ(highly doped Si−wafer)を下部電極とし、その上に超低誘電物質をスピンコーティングして薄膜を形成した。硬化された超低誘電薄膜上に直径1mmサイズのアルミニウム点(dot)9個を真空蒸着して電極として利用し、ウェハ上にインジウム(In)を付着して電極として利用した。この時、ウェハとInとの界面における抵抗接触(ohmic contact)のために、導電性塗料P−100(Silver paste)を利用して接着した。最後に、こうして製作された素子からLCRメータ器(Agilent、4284A)を利用して、常温で1MHzの周波数で誘電率を測定した。
【0059】
(3)機械的強度
製造された前記ナノ細孔薄膜は、ナノ押込(nanoindentation)(MTS XP、MTS System Corp.)試験を通じて弾性係数(elastic modulus、E)と表面硬度(surface hardness、H)を測定した。ナノ押込試験は、尖った圧子(indenter)を非常に小さな荷重で押込んで1um以下の深さに変形させ、薄膜の弾性係数と硬度とを測定する方法であって、薄膜の機械的物性を得るのに一番有利な方法として知られている。また、連続剛性測定法(Continuous Stiffness Measurement)の機能を利用すると、押込深さの制御過程に震動を添加して薄膜材料の押込初期から最大押込深さまでの連続的な物性を得ることができる。この時の振幅は、元の押込過程が影響を受けないように小さく(1nmあるいは0.3μN)しなければならない。押込深さによる測定結果分布は、基板材料の物性の影響を受け、増加するか減少する傾向を示す。薄膜の下層の影響のため、押込深さによって物性が変化する様相をみせる場合、押込深さによって一定の傾向をみせる部分の値を薄膜固有の物性として取るのが一般的である
【0060】
(4)固体(Solid−State)NMR/FT−IR
前記オゾン処理の温度によるマトリックスとポロゲンとの分子構造に対する影響を分析するために、solid−state NMR(unity INOVA、Varinan)とFT−IR(Nicolet、Thermo Fisher Scientific)を使用した。特に、シリコーン原子を基本として合成されたマトリックスとポロゲンとの分子構造の変化は、
29Si−NMRを通じてなされた。シリコーン化合物の構造は、その周辺の元素種類によって分類され、シリコーン原子を中心としてSiC
xO
4−xでx値によって(x=0、1、2、3、4)それぞれQ
n、T
n、D
n、M
nの構造と区分することができる。
29Si−NMRの以外にも、さらに正確な分子構造の分析のために、
13C−NMRと
1H−NMRを使用した。
【0061】
また、FT−IRを利用して温度によるオゾンの影響を把握し、波数(wavenumber)950〜1250cm
−1の範囲で現れるSi−O−Siピークの面積変化を分析することで、オゾン処理による機械的強度の向上を分析した。FT−IRは、solid−state NMRに比べて正確度は劣っているが、薄膜形態で測定が可能であるため、容易に分子構造の変化を確認することができるという長所を有する。
【0062】
Si−O−Si結合構造は、置換された元素と立体的構造によってサブオキサイド(Suboxide)、ネットワーク(network)、ケージ(cage)の三つの構造で分けられる。ケージ構造は、その構造的特性によって低い機械的強度と屈折率とを有する。一方、サブオキサイドとネットワークの構造は、相対的に分子構造が稠密であり、高い屈折率と機械的物性とを有する。FT−IRスペクトルを各構造による三つのピークでデコンボリューション(deconvolution)し、各面積の変化を利用して機械的強度の向上を解釈することができた。
【0063】
(5)薄膜のC/Si含量
X−線光電子分光法(X−ray photoelectron spectroscopy)を利用して、前記薄膜の炭素とシリコーン原子との定量分析を実施した。一定のエネルギーを持つ光子(X−線)を試料に照射すると、試料から光電子が放出されるが、この光電子の運動エネルギーを測定すると、光電子を試料から放出するために必要な結合エネルギー(binding energy)が分かる。この結合エネルギーは、原子固有の性質であるため、これを通じて元素分析及び元素の表面濃度の測定が可能であった。これから定量分析された炭素とシリコーン原子との量からC/Si含量を計算した。
【0064】
3.特性分析結果
(1)温度別のオゾン処理効果
<FT−IR分析>
温度別のオゾン処理効果を確認するために、前記製造されたナノ細孔を含有した低誘電薄膜を各温度(110℃、130℃、150℃、250℃、430℃)で10分間オゾン処理した。
図3(a)は、各温度でオゾン処理し、一連の硬化過程を終えた低誘電薄膜のFT−IRの分析結果である。250℃と430℃との温度で処理された低誘電薄膜は、オゾンとの反応によって−OHグループが生成され、3700〜3200cm
−1付近の広い範囲で−OHピークと、955〜830cm
−1でSi−OHピークが現れた。このような−OHグループの生成は、オゾンとの反応でSi−CH
3がSi−OHに置換されたためである。これは、1273cm
−1で現れるCH
3ピークの減少とでも説明することができ、また、Si−C(890〜740cm
−1)とSi−CH
3(2950cm
−1)とのピークが温度の増加によって無くなるか弱くなることを確認することができた。
【0065】
1250〜950cm
−1の間で現れるSi−O−Siピークの変化をみると、ピークの頂点が温度の増加によって移動することがみられる。これは、Si−CH
3の減少によって1023cm
−1で現れるサブオキサイドピークが弱くなり、相対的にネットワーク構造が増加されるためである。
図3(b)は、950〜1280cm
−1の間で現れるSi−O−SiピークとSi−CH
3ピークとのデコンボリューション(deconvolution)の結果である。サブオキサイドの面積は減少し、相対的にケージとネットワークとの面積が増加した。よって、250℃以上の温度でオゾン処理は薄膜をSiO
2化することが分かった。
【0066】
<−OH残基>
前述したように、250℃以上の高い温度でオゾン処理すると、オゾンの反応性が増加してSi−CH
3グループが影響を受け、Si−OHグループに転換されるという事実を確認した。しかし、熱処理過程の以後にFT−IRスペクトル(
図3(a))で現れる−OH残基は、薄膜の屈折率を上昇させる原因となる。
図4(a)は、各温度でオゾン処理された低誘電薄膜の屈折率である。
図3(a)と
図4(a)から硬化過程後に残った−OHグループによって屈折率が上昇されることを確認した。一般的に、超低誘電薄膜内に−OHグループが存在するようになると、水分の吸湿性が増加して誘電定数を増加させる。これによって、430℃でオゾン処理した低誘電薄膜に追加的な熱硬化過程を導入し、−OHグループの縮合反応を誘導した。
【0067】
図4(b)は、430℃のオゾン処理の以後にそれぞれ2時間、6時間430℃で追加的な熱処理過程を経た低誘電薄膜のFT−IRスペクトルである。追加的な熱処理によってわずかな−OHピークの減少をみせるが、オゾン処理していない薄膜のピークと比較すると、薄膜内に依然として−OHが残っていることとみえる。これは、430℃の温度でオゾン処理するようになると、硬化が完了したマトリックスのSi−CH
3グループがSi−OHに置換されるため、置換された−OHグループが堅固な(rigid)マトリックス内で互いに縮合反応を進行することができず、立体障害によって−OHグループを残すためである。
【0068】
結果的に、250℃以上の温度でオゾン処理はマトリックスのSi−CH
3に影響を与え、多孔性(porous)SiO
2形態の薄膜を形成するようになる。しかし、本願で、マトリックスとして使用されたMSQ系物質は、SiO
2(k〜4)の一方の反応基をメチル基に置換して誘電率を2.7に低めた物質であって、オゾン処理によってメチル基が減少するようになると誘電率を上昇させる。これに加えて、反応せずに残る−OHグループも誘電率を上昇させるという問題点を有する。
【0069】
(2)オゾン処理温度の最適化
<マトリックスのオゾン処理>
最適のオゾン処理温度を探すために、マトリックスのSi−CH
3グループには影響がない250℃以下の温度でオゾン処理した。マトリックスをスピンコーティングして製造された薄膜は、それぞれ常温と150℃とでオゾン処理し、温度によるオゾン効果のみを比較するために、オゾン未処理薄膜と常温におけるオゾン処理薄膜とをそれぞれ150℃までベーク(bake)した。
【0070】
図5は、マトリックスとして使用されたpoly(MTMS−co−BTESE)の構造である。その末端は、MTMSから生成されたSi−CH
3及びSi−OCH
3と、BTESEから生成されるSi−OEt、ゾル−ゲル反応から生成されるSi−OHの四つである。FT−IRから150℃と常温とでオゾン処理した薄膜とオゾン未処理薄膜との構造変化を観察した(
図6(a))。その結果、150℃のオゾン処理でSi−OCH
3(2955〜2925cm
−1)とSi−OEt(650〜750cm
−1)とのピークが減少することを確認することができ、Si−OH(955〜830cm
−1)ピークは反って減少することが確認された。これは、温度上昇でオゾンの反応性が向上し、Si−OCH
3とSi−OEtグループとがSi−OHに転換されて直ちに縮合反応が進行され、これによってSi−O−Si構造を形成したためである。これは、Si−O−Siピークの頂点が150℃のオゾン処理でネットワーク構造(1063cm
−1)に移動することとでも確認可能であった。
【0071】
250℃以上では、マトリックスのSi−CH
3グループから転換されたSi−OHの反応によってSi−O−Si構造が形成されることとは違って、150℃以下におけるオゾン処理は、Si−OCH
3とSi−OEtグループとから転換されたSi−OHの反応によってSi−O−Siが形成された。
図6(b)をみると、それぞれの温度別のオゾン処理によって、Si周辺の構造的変化は現れなかった。仮に、Si−CH
3グループがオゾンによってSi−OHグループに転換されたならば、
29Si−NMR上にQピークが現れたはずである。即ち、
29Si−NMR上の変化がないことは、Si−CH
3グループが影響を受けなかったという意味であり、FT−IR上のピークの変化から−OCH
3グループが−OHグループに置換されたこととみえる。
【0072】
<ポロゲンのオゾン処理>
合成されたポロゲンの熱分解温度は、200〜300℃であるので、250℃以下におけるオゾン処理は、マトリックスだけでなくポロゲンにも影響を与えるようになる。ポロゲン自体に及ぶ影響を確認するために、ポロゲン溶液自体を利用してスピンコーティング後のそれぞれの温度でオゾン処理した。製造された薄膜は、マトリックスと同様に、温度によるオゾン効果のみを比較するために、各温度でオゾン処理後に150℃までベーク(bake)した。
【0073】
図7は、合成された反応型ポロゲンの構造であり、トリメトキシシラン基に置換された部分(反応性部分)とキシリトールと連結されている部分(有機部分)とで区分することができる。マトリックス内に導入されたポロゲンは、末端のSi−OCH
3によってマトリックス内で分散され、ナノハイブリッド化する。以後、熱硬化過程でオゾン処理すると、ポロゲンの末端がSi−OHグループに置換され、マトリックスとの相容性を増加させる。しかし、マトリックスが硬化される以前に、オゾンによって先にキシリトールと連結された部分が影響を受けるようになると、細孔形成の以前にポロゲンが除去されるので、完璧な細孔が形成されないという問題点が発生する。
【0074】
図8(a)は、オゾンによるポロゲンの化学的・構造的変化をFT−IRを通じて分析した結果である。常温、100℃、150℃でオゾン処理した結果、100℃以上で−OHピーク(3200〜3600cm
−1)とSi−OHピーク(830〜955cm
−1)が現れ、Si−OCH
3(2880〜2815cm
−1)が無くなった。また、反応が進行されながらSi−O−Si構造が形成された。正確な構造的変化を観察するために、
29Si−NMRを利用して末端の変化を分析した(
図8(b))。
図7の構造から分かるように、ポロゲンの末端はT構造を基本とし、これに
29Si−NMRの結果、−40〜−60ppmで三つのT
0〜T
2のピークが現れた。110℃以上の温度でオゾン処理すると、−OHグループが生成されてポロゲン同士の反応が進行され、T
3構造が現れるようになり、130℃以上ではQピークが生成された。Qピークの生成は、前述したポロゲンの末端とキシリトールとの連結部分がオゾンによって影響を受けたということを意味するので、110℃でオゾン処理すると、ポロゲンのSi−OCH
3の末端のみがSi−OHに置換され、マトリックスとの相容性を増加させることと確認された。
【0075】
(3)超低誘電薄膜の物性
<屈折率と孔隙率>
図9は、110℃でそれぞれ1、2、10分間オゾン処理したナノ細孔の超低誘電薄膜の屈折率と孔隙率である。オゾン処理する場合、追加的なSi−O−Si構造の形成によって孔隙率が減少し、屈折率が増加しており、このような現象は、0、20、40、60体積%でポロゲン含量が増加するにつれ、明らかに現れた。これは、マトリックスの場合、オゾン処理によって形成されるSi−O−Si構造による細孔率の減少と、マトリックス内のメトキシ(−OMe)基とエトキシ(−OEt)基とがオゾン処理によって無くなることで現れる屈折率減少の効果が共に現れるためである。また、処理時間が長くなるほど屈折率の上昇が大きく現れたが、2分以上の処理では大きな変化が表われなかった。即ち、オゾンの高い反応性によって2分以内の時間の間にヒドロキシルグループへの転換が完全に行われたことを示す。
【0076】
<機械的強度>
オゾン処理の時間による機械的強度の変化を観察するために、0、1、10分間オゾン処理した超低誘電薄膜の弾性率と硬度とを測定した。
図10からオゾン処理の時間が増加するにつれ、機械的強度が急激に向上することが分かった。機械的強度も、オゾン処理によって追加的に生成されたSi−O−Si結合によるものである。即ち、オゾン処理は、ポロゲンの末端をSi−OHに変えることで、マトリックスとポロゲンとの間の反応性を高めると共に、反応の結果、生成されたSi−O−Si構造によって高い機械的強度を示す。
【0077】
<FT−IRピークのデコンボリューション(deconvolution)>
FT−IRの950〜1250cm
−1で現れるSi−O−Si構造のピークをデコンボリューションして各含量別のオゾン処理の時間による構造的変化を分析した。
図11は、サブオキサイド(suboxide)、ネットワーク、ケージ構造でそれぞれデコンボリューションして得た面積比をサブオキサイドの面積で割ってネットワークとケージ構造との面積比として示したものである。これは、110℃におけるオゾン処理は、Si−OCH
3とSi−OEtとにのみ影響を与えるため、T構造、即ちサブオキサイド構造には、変化が現れないことをマトリックスとポロゲンのFT−IRと
29Si−NMRとの結果から確認したためである。その結果、SiO
2の化学構造を基本とするネットワークとケージの構造は、両方増加した。即ち、Si−OHグループの追加的な生成によってSi−O−Si構造が増加された。
【0078】
図12は、
図11から得たネットワークとケージ構造の変化をそれぞれネットワークとケージとの和で分けて各構造の相対的な割合を示したものである。全体的にみると、Si−O−Si構造を有するネットワークとケージ構造の両方増加されたが(
図11)、相対的には、ネットワーク構造が増加することに対し、ケージ構造は減少することをみせた(
図12)。即ち、オゾン処理を通じる機械的強度の向上は、ネットワーク構造の割合の増加と解釈が可能であった。
【0079】
<誘電定数>
110℃で0、1、10分ずつオゾン処理された薄膜の誘電定数を
図13に示した。細孔率の増加によって各含量別の誘電定数は、オゾン処理の時間が長くなることにつれて増加し、ポロゲン含量が増加するほど誘電定数はさらに大きい増加幅を示した。これは、ポロゲンがマトリックスより末端にSi−OCH
3基を多く有しているため、さらに多いSi−O−Si構造を生成するので、細孔率の減少が現れたためである。結果的に、オゾン未処理の低誘電薄膜の場合、誘電定数2.9でポロゲン60体積%含量時に誘電定数が2.11まで減少したことに対し、10分間オゾン処理した低誘電薄膜の場合、60体積%含量時に誘電定数2.51をみせ、1分間オゾン処理した低誘電薄膜の場合、2.30の誘電定数を有した。
【0080】
以上のように、多様な温度におけるオゾン処理を通じて250℃以上の温度でオゾン処理によって前記低誘電薄膜がSiO
2化され、反応できなかった−OHグループが残存することを確認した。このような−OHグループは、屈折率と誘電率とを増加させるので、マトリックスとポロゲンとのそれぞれのオゾン処理効果を分析することで、マトリックスとポロゲンガンとの反応性のみを最大化することができる最適の温度(110℃)を見出した。特に、110℃の温度は、ポロゲン末端のメトキシグループを−OHグループに置換させ、ゾル−ゲル反応を通じるSi−O−Si構造を増加させた。その結果、わずかな誘電定数の増加と共に、高い機械的強度を有する超低誘電薄膜を製造することができ、ポロゲン含量60体積%で弾性率11.25GPa、硬度1.36GPaと誘電率2.30の物性を示した。
【0081】
結果的に、本願では、熱処理の過程中に高温でオゾン処理を通じて、高い機械的強度と低い誘電率とを有する超低誘電物質の開発が可能であり、多様な分析装置を利用してその原因を究明した。下記表1に上記したようなオゾン処理を利用して製造されたナノ細孔型の超低誘電物質の物性を示した。本願を通じて、誘電率が2.3以下で、弾性率が10GPa以上であり、硬度が1.2GPa以上の超低誘電物質の開発が可能であり、このような超低誘電物質の物性は、36nm級以上の次世代半導体の適用が可能な世界的水準の物性である。
【0082】
【表1】
【0083】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を持った者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解することができるであろう。よって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないことと理解しなければならない。例えば、単一型として説明されている各構成要素は、分散して実施することもでき、同様に分散したものと説明されている構成要素も、結合した形態で実施されることができる。
【0084】
本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれることと解釈しなければならない。