特許第5730911号(P5730911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5730911人工木材およびそれを製造するための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730911
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】人工木材およびそれを製造するための組成物
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/02 20060101AFI20150521BHJP
   C08L 97/02 20060101ALI20150521BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20150521BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   B27N3/02 AZAB
   C08L97/02
   C08L27/06
   C08K3/22
【請求項の数】17
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-553186(P2012-553186)
(86)(22)【出願日】2010年2月19日
(65)【公表番号】特表2013-519544(P2013-519544A)
(43)【公表日】2013年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2010001064
(87)【国際公開番号】WO2011100995
(87)【国際公開日】20110825
【審査請求日】2013年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】512216285
【氏名又は名称】パテンタ アジア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PATENTA ASIA LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ドゥナ、ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】シウ パク タク、アントニオ
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−89578(JP,A)
【文献】 特開2001−88224(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/003403(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 1/00 − 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工木材を製造するための組成物であって、30〜40重量%のPVC樹脂と、30〜40重量%の粒径0.42〜0.25mm(40〜60メッシュ)の籾殻粉末およびピーナッツ殻粉末の少なくともいずれか一方との混合物を含む組成物。
【請求項2】
PVC樹脂と籾殻粉末およびピーナッツ殻粉末の少なくともいずれか一方とは50:50の割合で混合される、請求項1に記載の人工木材を製造するための組成物。
【請求項3】
1つ以上の下記の添加剤:熱可塑性材料系化学的結合剤、着色顔料、潤滑剤、炭酸カルシウムおよびPVC加工助剤が、PVC樹脂、籾殻粉末、およびピーナッツ殻粉末のうちの少なくともいずれか1つの混合物に混合される、請求項1または2に記載の人工木材を製造するための組成物。
【請求項4】
30〜40重量%のPVC樹脂、30〜40重量%の粒径0.42〜0.25mm(40〜60メッシュ)の籾殻粉末およびピーナッツ殻粉末の少なくともいずれか一方、8〜12重量%の熱可塑性材料系化学的結合剤、0.5〜1重量%の着色顔料、2〜4重量%の潤滑剤、12〜18重量%の炭酸カルシウム、および8〜12重量%のPVC加工助剤を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工木材を製造するための組成物。
【請求項5】
31〜37重量%のPVC樹脂を含有する請求項4に記載の人工木材を製造するための組成物。
【請求項6】
33〜36重量%の籾殻粉末およびピーナッツ殻粉末の少なくともいずれか一方を含有する請求項4または5に記載の人工木材を製造するための組成物。
【請求項7】
7〜9重量%の熱可塑性材料系化学的結合剤を含有する請求項4〜6のいずれか一項に記載の人工木材を製造するための組成物。
【請求項8】
11〜15重量%の炭酸カルシウムを含有する請求項4〜7のいずれか一項に記載の人工木材を製造するための組成物。
【請求項9】
PVC樹脂粒子および籾殻粉末またはピーナッツ殻粉末が同じ粒径である請求項1〜8のいずれか一項に記載の人工木材を製造するための組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の人工木材を製造するための組成物を押出加工することによって得られる人工木材。
【請求項11】
押出加工することによって得られる製品が板状または輪郭部である請求項10に記載の人工木材。
【請求項12】
押出製品の表面に形成されたプラスチック膜が押出後に除去される、請求項10または11に記載の人工木材。
【請求項13】
プラスチック膜が研磨により除去される請求項12に記載の人工木材。
【請求項14】
研磨が24〜60のグレイン値を有する研磨材料によって実施される、請求項13に記載の人工木材。
【請求項15】
表面がニス塗りまたは艶出し加工されている、請求項10〜14のいずれか一項に記載の人工木材。
【請求項16】
建築材、床板材、壁材、天井材として、あるいは枕木、ベニヤ、開き窓、柵、家具、車両、または電化製品のケーシングに請求項10〜15のいずれか一項に記載の人工木材を使用する方法。
【請求項17】
人工木材を製造する方法であって、
a)PVC樹脂を、高速ミキサー内で粒径0.42〜0.25mm(40〜60メッシュ)の籾殻粉末および任意の充填材と125〜140℃で5分間混合する工程、
b)顔料、安定剤、加工助剤、及び潤滑剤から選択される1つ以上の任意の添加剤を小さいミキサー/ブレンダー内で10分間混合し、この混合物を工程a)の高速ミキサー内の混合物に加え、全混合物を更に10分間均一に混合する工程、
c)工程b)の混合物を冷却タンク内で30分間冷却する工程、および
d)工程c)の混合物を二重スクリューまたは二軸スクリュー押出機で、150〜210℃の範囲に制御された温度で押出加工する工程
からなり、
工程b)における前記全混合物が、30〜40重量%のPVC樹脂と、30〜40重量%の前記籾殻粉末を含有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観および質感が木材に非常に近い建設資材、特に人工木材の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のプラスチック系木材製品(「WPC」=木材プラスチック複合材(Wood Plastic Composites)と呼ばれるもの)は、木材とPE/PP(ポリエチレン/ポリプロピレン)との混合物から製造される。これらの材料は多くの場合、最終表面処理を行うことなく、例えば屋外領域用の床板の製造に使用される。周知のプラスチック系木材製品は色塗りすることができないか、あるいは相当な努力をした場合に限り色塗りすることができる。さらに、それらの質感はPEの割合のために非常にプラスチックの様であるという欠点がある。これらの理由から、周知のプラスチック系木材製品は家具の製造用には適さず、頑丈な家具の製造には全く適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の欠点を回避し、また原則の問題として、環境保全、特に森林の保全の理由から、主に木材の使用を避けるための木材の様な材料を提案するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従う目的は、請求項1に規定されるような人工木材の製造のための組成物によって達成される。
本発明は更に、請求項10に規定されるような、本発明による組成物を押出加工することによって製造される人工木材に関する。
【0005】
更に、本発明は請求項16に規定されるような、本発明による人工木材の使用方法を提供する。
本発明の利点および/または好ましい実施形態は、従属請求項の内容である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明による人工木材の製造のための組成物は、30〜40重量%のPVC樹脂(PVC=ポリ塩化ビニル)と、30〜40重量%の粒径0.42〜0.25mm(40〜60メッシュ)の籾殻および/またはピーナッツ殻の粉末との混合物を含有する。「メッシュ」という用語は、篩の網目の幅を特徴付けており、従って粒子のサイズを示す尺度となる。メッシュ値が小さくなるほど、後述するバルク材料の粒径は大きくなる。格子幅のメッシュ値をmmに変換するために、例えば米国の規格基準局(US Bureau of Standards)による表がある。
【0007】
使用されるPVC材料は特に限定されない。特に、PVC再生材料を使用することもできる。例えば、K値60〜70のPVC樹脂懸濁液が適切である。K値は、ポリマーの希釈溶液の粘度の測定値から計算される数値として理解され、重合度または分子の大きさの尺度である。K値は樹脂を詳述するために用いられる。
【0008】
使用される籾殻またはピーナッツ殻は、どちらも特定の制限、特に特定のコメ品種またはピーナッツ品種に関する制限を受けない。籾殻はより良い結果をもたらすため好ましい。これらは容易に粉砕することができ、PVC樹脂と最適に混合することができる。更に、これらはリグニンをあまり含有せず(僅か5%程度)、天候(日光、雨)の影響下でも色褪せが少ないか、または全くない。
【0009】
本発明による人工木材の製造のための組成物の一実施形態では、PVC樹脂と籾殻および/またはピーナッツ殻の粉末とが、例えば50:50の割合で混合される。混合の順序は一般にランダムである。
【0010】
本発明による人工木材の製造のための組成物の更なる実施形態では、1つ以上の下記の添加剤:熱可塑性物質系化学的結合剤(例えばポリ(メタ)アクリラート)、着色顔料(例えば胡粉、二酸化チタン、カーボンブラック、赤色酸化鉄、黄土)、潤滑剤(例えばステアリン酸カルシウム等の脂肪酸塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、微結晶パラフィン)、炭酸カルシウムおよびPVC加工助剤(例えば熱および耐候安定剤、抗酸化剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤)が、PVC樹脂および/または、籾殻および/またはピーナッツ殻の粉末の混合物に追加される。上記の添加剤は専門の販売業者から入手可能である。PVC樹脂および籾殻またはピーナッツ殻粉末と同時にあるいはいくつかの段階に分けて、追加の成分を混合してもよい。
【0011】
本発明による人工木材の製造のための組成物の更なる実施形態は、30〜40重量%、例えば31〜37重量%のPVC樹脂、30〜40重量%、例えば33〜36重量%の粒径0.42〜0.25mm(40〜60メッシュ)の籾殻および/またはピーナッツ殻粉末、8〜12重量%、例えば7〜9重量%の熱可塑性材料系化学的結合剤、0.5〜1重量%の着色顔料、2〜4重量%の潤滑剤、12〜18重量%、例えば11〜15重量%の炭酸カルシウム、および8〜12重量%のPVC加工助剤を含有する。
【0012】
熱可塑性物質系化学的結合剤は、例えば天然繊維から湿気または溶媒を除去し、天然繊維の不織布または網状織物と強固に結合または架橋する働きをする。PVC加工助剤は融合を促進し、溶融強度すなわち溶融物の引張り強さを高め、表面欠陥を無くし、「脱落(place out)」を低減することができる。更に、これらの助剤は製造工程中の金属の剥離特性を高めることができる。適切な結合剤および加工助剤は、PVC加工の分野における当業者には周知であり、様々な種類が市販されている。
【0013】
本発明による人工木材の製造のための組成物の更なる実施形態では、PVC樹脂粒子と籾殻および/またはピーナッツ殻粉末とはほぼ同じ粒径である。
本発明による人工木材は、本発明による組成物を押出加工することにより製造される。押出加工により得られる製品は、例えば板状または例えば輪郭部である。
【0014】
使用される押出法は特に制限されない。任意の従来の押出機を使用することができる。これの操作は製造業者の取扱説明書に従う。本発明による組成物が押出機のノズルを通して押し出されることができるように、組成物が押出条件下(例えば温度と圧力)で十分に均一化および液体化されなければならないことは、当業者には明らかである。適切な押出条件は、製造業者によって規定されているか、または簡単な日常的な試験によって当業者が決定することができる。周知のように、使用される押出ダイの形状は得られる押出製品の形状または輪郭部を決定する。押出加工により得られる製品は、例えば板状または輪郭部である。
【0015】
例えば、PVC樹脂は高速ミキサー内で乾燥籾殻粉末(粒径40〜60メッシュ、水分含量は例えば0.5〜1.0%)と混合され、任意で充填材(例えば炭酸カルシウム)と125〜140℃で約5分間混合される。任意の添加剤、例えば着色顔料、安定剤、加工助剤、潤滑剤(例えばエポキシ大豆油、ワックス)が小さいミキサー/ブレンダー内で10分間混合された後、高速ミキサー内のPVC樹脂/籾殻粉末/充填材の混合物に加えられる。続いて全混合物は、更に10分間均一に混合される。最後に、混合物は約30分間冷却タンク内で冷却され、その後、最終製品としての本発明による人工木材となるように、例えば150〜210℃または160〜175℃の範囲に制御された温度で二重スクリューまたは二軸スクリュー押出機を使用して押出加工される。
【0016】
好ましくは、押出製品の表面上に形成されるプラスチック膜は、押出後に除去される。これにより、本発明による人工木材の非常に木材に似た質感および光学特性が得られる。プラスチック膜の除去により、本発明による人工木材は優れた滑り抵抗性も有する。人工木材の色調は、その製造に使用される組成物に含まれる着色顔料によって調節することができる。実用上の理由から、強い色調ではなく、どちらかというと比較的薄い色調が用いられる。望まれる最終的な色調は、人工木材から製造された製品を色塗り/ニス塗りまたは艶出し加工することにより達成される。この手段により、様々な色調を持つ多数の人工木材の製造および貯蔵が提供される。
【0017】
例えば、プラスチック膜は研磨により除去されてもよい。研磨は、例えば24〜60の範囲のグレイン値を有するサンドペーパーや研磨紙のような研磨材料を用いて、例えば電動式のマニュアル研磨機を使用して行うことができる。グレイン値については、数字が小さいほど粗い粒子を意味し、数字が高いほど細かい粒子を表す。グレイン値24は粗い傾向が強く、例えば糊や塗料の層の除去に適している。一方、グレイン値60はより中間的な粒子であり、例えば原木表面の粗い予備研磨に用いられる。適切なグレイン値は当業者によって、実際の状況または達成されるべき効果に基づいて選択される。
【0018】
代替として、プラスチック膜は例えば平削りやサンドブラスト等の様々な手段によって除去されてもよい。
本発明による人工木材の更なる実施形態において、その表面は任意の適切な前処理後に(例えば下塗りを適用した後に)色塗り、艶出し加工、または油脂加工される。例えば色塗りには、水系単一成分塗料またはニスが適切である。極端な環境での使用には、二成分塗料またはニスが特に適切である。
【0019】
着色および表面色調次第で、様々な木材の光学特性および質感、例えばビルマチーク、シャムチーク、ジャワチークまたは老いたチーク等の異国風の木材の光学特性および質感が実現される。
【0020】
本発明による人工木材は、建築材、床板材、壁材、天井材として、あるいは枕木、ベニヤ、開き窓、柵、家具、車両、または電化製品のケーシングに使用することができる。
本発明による人工木材、すなわち本発明による木材の代替材料は、木材に非常に近い光学特性および質感を有し、多くの種類の木材よりも多くの面で向上した特性を提供する。
【0021】
使用されるPVCの極性の性質のために、本発明による人工木材の表面は問題なく油脂加工、ニス塗り、艶出し加工または色塗りされることができる。そのため、この新しい材料は、家具、柵、べニヤ、さらにはパラソルのスタンドの製造にも特に適している。この極性の性質は更に容易な接着接合を可能にし、帯電防止特性を提供する。従来の木材/PE複合材(WPC)は色塗りすることができないか、色塗りが非常に困難であり、接着接合できず、また、PEの非極性の性質のため帯電防止性ではない。
【0022】
その安定性、雨などの湿度の影響に対する形状保持力および絶対的な復元力のため、本発明による材料は従来の木材/PE複合材(WPC)および多くの種類の木材よりも遥かに優れる。本発明による人工木材から製造される輪郭部はほぼ完全に防水性である。使用されるPVCは吸湿性ではなく、水を吸収しないため、損傷した表面から水が浸透するのを防ぐ。そのため、適用された塗料層下での浸透は起こらず、塗料は剥離しない。従って、本発明による人工木材は寸法的に安定であり、天然の手段による(例えば膨張または収縮による)変形は不可能である。対照的に、従来の木材/PE複合材は湿度の影響下で膨張する。水の浸透によって塗料が損なわれるため、塗料はもはや接着していられず、剥離する。
【0023】
従って、本発明による人工木材は、臨海環境、海または湖の近く、または湿潤領域(例えばスイミングプール)で使用される家具、または屋外の床板あるいはボートの甲板に特に適している。菌や昆虫の侵入は起こらない。
【0024】
優れた強度のために、本発明による人工木材への釘打ちやねじの取り付けは従来の木材と同様に可能である。機械加工も問題ではなく、鋸で単純に切断することも可能であり、ドリル、圧延機を使用することも、研磨やサンドブラストも可能である。本発明による人工木材は破れたり裂けたりせず、任意の切断物は100%再利用可能である。
【0025】
籾殻および/またはピーナッツ殻は一種の「活性充填材」として作用し、本発明による人工木材に、ほとんどの適用分野で改善された加工特性を提供する。熱膨張は小さく、天然木材の一貫性および質感が得られる。そのため、本発明による人工木材は従来の「木材プラスチック複合材」または純粋なPVCよりも優れる。
【0026】
使用される木材の高いリグニン含量のため、従来の木材/PE複合材は、リグニンを分解する日光および雨の影響で灰色および黄色になりやすく、その結果、それらはすぐに魅力のないものになる。それに対し、本発明による人工木材は非常に少ないリグニンを含有するため黄色にならない。
【0027】
本発明による人工木材の遮音性や断熱性等の他の特性も、天然木材特有の性質に類似している。
本発明による人工木材を製造する時、PVC樹脂とピーナッツ殻および/または籾殻粉末との混合物に、特定量の再生された本発明による人工木材、例えば廃棄用に生じる切断物を加えてもよい。