【文献】
渦電流を用いた亜鉛被覆鋼撚り線の腐食劣化診断技術,電力中央研究所報告,日本,[online],2011年 8月,インターネット<http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/leaflet/N08078.pdf>、本願出願日前に頒布された特開2012−130208号公報の段落【0006】【非特許文献3】に記載されている電子的技術情報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
===劣化判定装置===
以下、
図1を参照して、本実施形態における劣化判定装置について説明する。
図1は、本実施形態における劣化判定装置を示す図である。尚、操作棒14の一部は、説明の便宜上、省略されている。センサ装置2、車輪17、表示部131、制御装置3、付勢装置4、電池5は見えない状態となっているが、説明の便宜上、点線で示されている。
【0011】
劣化判定装置100(電線劣化判定装置)は、電線7(
図2)の劣化を検出するための装置である。尚、電線7の劣化については、後述する。本実施形態において、Z軸は操作棒14の長手方向に沿う軸であり、筐体11が固定されている操作棒14の一端に向かう方向(上側)を+Zとし、筐体11が固定されていない操作棒14の他端に向かう方向(下側)を−Zとする。Y軸は筐体11の一方の側面12及び他方の側面13に対して直交する軸であり、一方の側面12から他方の側面13に向かう方向を+Yとし、他方の側面13から一方の側面12に向かう方向を−Yとする。X軸は劣化判定装置100が移動する方向に沿う軸であり一方から他方に向かう方向を−Xとし、他方から一方に向かう方向を−Xとする。
【0012】
劣化判定装置100は、操作棒14、筐体11(移動体)、センサ装置2、例えば2個の車輪16、17、表示部121、131(報知装置、発光装置)、スピーカ122(報知装置、警報装置)、制御装置3、付勢装置4、電池5を有する。劣化判定装置100は、電源スイッチ123、設定釦124、125、表示部126を更に有することとしてもよい。
【0013】
筐体11は、例えば、センサ装置2の一部、制御装置3、付勢装置4、電池5等を収容する略矩形柱形状を呈する筐体である。
【0014】
操作棒14は、筐体11を支持するための例えば絶縁性の棒である。操作棒14の長さは、電線7の劣化を検出する作業を行う作業者(以下、「作業者」とも称する)が劣化判定装置100を用いて当該作業を行える程度の長さである。操作棒14の長さは、例えば、垂直方向(Z軸)における地面705(
図2)に対する電線7の高さに応じて定められる。操作棒14の長さは、例えば、3メートル〜6メートル程度としてもよい。操作棒14は、筐体11における一方の側面12に対して取付部材15によって取り付けられる。つまり、操作棒14の先端(+Z)には、筐体11が取り付けられた状態となる。
【0015】
車輪16、17は、電線7に沿って筐体11を移動させるための例えば絶縁性の車輪である。尚、例えば、劣化判定装置100に設けられる車輪の個数は、2個に限られず、例えば、1個であっても、3個以上であってもよい。車輪16、17については、後述する。
【0016】
センサ装置2は、電線7の劣化を検出するためのセンサ装置である。センサ装置2は、筐体11における下部(−Z)に設けられる。センサ装置2は、筐体11から下側(−Z)に向かって突出するように設けられる。センサ2は、筐体11に対して上下(+Z、−Z)に移動できるように、筐体11に取り付けられる。尚、センサ装置2については、後述する。
【0017】
付勢装置4は、上側(+Z)から下側に向かう付勢力F1をセンサ装置2に伝達するための例えばバネ等の弾性体を有する装置である。
【0018】
表示部121、131は、電線7の劣化が検出されたことを報知するための例えば赤色の光を発光する一対の表示灯である。表示部121、131は夫々、表示部121、131の発光を確実に視認できるように、例えば、筐体11の一方の側面12、他方の側面13に設けられる。尚、表示部121、131が発光する光は、赤色に限られず、例えば黄色、青色等の赤色以外の色の光であってもよい。
【0019】
スピーカ122は、電線7の劣化が検出されたことを報知するための警報音を出力する装置である。スピーカ122は、例えば、筐体11の一方の側面12に設けられる。
【0020】
制御装置3は、劣化判定装置100の動作を制御するための装置である。尚、制御装置3については、後述する。
【0021】
電池5は、劣化判定装置100を動作させる電力を供給するための電源である。
電源スイッチ123は、劣化判定装置100の電源を入切するためのスイッチである。
設定釦124、125は、例えば、劣化判定装置100に対して検出閾値(所定の厚み)を設定するための釦である。尚、検出閾値については、後述する。
表示部126は、設定釦124、125によって設定された検出閾値に応じた情報を表示するための例えば液晶ディスプレイである。
【0022】
===電線===
以下、
図2及び
図3を参照して、本実施形態における電線について説明する。
図2は、本実施形態における劣化判定装置が適用される電線を示す図である。
図3は、本実施形態における劣化判定装置を示す正面図である。尚、カバー21の一部、センサ部22、制御装置3、付勢装置4、電池5は見えない状態となっているが、説明の便宜上、点線で示されている。電線7は、説明の便宜上、電線7の長手方向(X軸)と直交するYZ平面における断面が示されている。
【0023】
=電線=
電線7は、例えば家庭又は工場等の需要家に電力を供給するための変圧器から、当該需要家に対して電力を供給するための例えば引込み線である。電線7は、例えば、三相の交流電力を供給できるように、例えば3本の電線(第1電線71、第2電線72、第3電線73)が予め決められた順序で互いにより合わされて形成されるより線である。電線7は、地面705に立設されている電柱701に支持される。電線7は、例えば電柱701の腕金702における支持具703によって支持される。電線7は、垂直方向(Z軸)における地面705に対する高さが例えば4メートル〜5メートル程度となるように支持されている。電線7は、互いにより合わされる3本の電線である第1電線71、第2電線72、第3電線73を有する。
【0024】
第1電線71は、例えばU相の電力を供給するための電線である。第1電線71は、導体部71A(導線)、被覆部71B(被覆体)を有する。導体部71Aは、電力を供給するための例えば銅又はアルミニウム等の金属の導電線である。被覆部71Bは、導体部71Aを外部から電気的に絶縁するために導体部71Aの周囲を覆う絶縁性の被覆である。
【0025】
第2電線72は、例えばV相の電力を供給するための電線である。第2電線72は、導体部72A(導線)、被覆部72B(被覆体)を有する。導体部72A、被覆部72Bの構成は夫々、導体部71A、被覆部71Bの構成と同様であるので、その説明については省略する。
【0026】
第3電線73は、例えばW相の電力を供給するための電線である。第3電線73は、導体部73A(導線)、被覆部73B(被覆体)を有する。導体部73A、被覆部73Bの構成は夫々、導体部71A、被覆部71Bの構成と同様であるので、その説明については省略する。
【0027】
=電線の劣化=
電線7は、屋外に設けられているために、例えば紫外線、風雨等に曝されて劣化することになる。電線7における第1電線71の被覆部71B、第2電線72の被覆部72B、第3電線73の被覆部73Bは、例えば、電線7が設けられる地域(位置)、当該地域の気候、電線7が設けられてからの経過時間等に応じて劣化して、厚さが薄くなる。つまり、電線7の劣化とは、例えば電線7に照射される紫外線等に基づいて、被覆部71B、72B、73Bの厚さが薄くなることである。
【0028】
=劣化の度合い=
ここで、第1電線71の被覆部71B、第2電線72の被覆部72B、第3電線73の被覆部73Bの外周面は、第1電線71、第2電線72、第3電線73が相互に識別されるように、例えば、相互に異なる色とされる。被覆部71B、72B、73Bの劣化の度合いは、例えば被覆部71B、72B、73Bの外周面の色に応じて定まることがある。つまり、被覆部71B、72B、73Bにおいては、外周面の色に応じて劣化の度合い(厚さ)が異なることがある。
【0029】
=電線の交換=
例えば、第1電線71の被覆部71B、第2電線72の被覆部72B、第3電線73の被覆部73Bのうち、少なくとも何れか一つにおいて、検出閾値よりも厚さが薄い被覆部がある場合、電線7における電線7の外部に対する電気的な絶縁が不十分となる虞がある。このため、第1電線71の被覆部71Bの厚さ、第2電線72の被覆部72Bの厚さ、第3電線73の被覆部73Bの厚さのうちの、少なくとも何れか一つが検出閾値よりも薄い場合、電線7を新たな電線と交換する必要がある。
【0030】
尚、検出閾値とは、電線7の種類、定格等に基づいて予め定められる、被覆部71B、72B、73Bの厚さ(厚み)である。検出閾値は、電線7が劣化していることを検出するのに用いられる。検出閾値は、導体部71A、72A、73Aが電線7外に対して電気的に絶縁されるような、被覆部71B、72B、73Bの厚さである。
【0031】
例えば、被覆部71B、72B、73Bの厚さが検出閾値よりも厚い場合、導体部71A、72A、73Aは、電線7外に対して電気的に絶縁される。一方、例えば、被覆部71B、72B、73Bの厚さが検出閾値よりも薄い場合、導体部71A、72A、73Aの電線7外に対する電気的な絶縁が不十分となる可能性が発生することになる。
【0032】
以上より、電線7における電線7の外部に対する電気的な絶縁を確実に維持するために、被覆部71B、72B、73Bの厚さが検出閾値よりも薄くなるような電線7の劣化を検出する必要がある。
【0033】
===劣化判定装置の車輪===
以下、
図1、
図3及び
図4を参照して、本実施形態における劣化判定装置の車輪について説明する。
図4は、本実施形態における劣化判定装置を示す側面図である。尚、センサ部22は見えない状態となっているが、説明の便宜上、点線で示されている。操作棒14は、説明の便宜上、一部が省略された状態で、点線で示されている。
【0034】
車輪16、17は、電線7に沿って筐体11を移動させるための例えば絶縁性の車輪である。車輪16、17は、電線7(
図4)の長手方向(X軸)におけるセンサ装置2の両側に設けられる。車輪16、17は夫々、電線7と交差する方向(Y軸)に沿った回転軸161、171を中心に回転するように、設けられる。尚、回転軸161、171は、回転軸161、171を中心に車輪16、17が回転するように、取付部材18によって筐体11に取り付けられる。
【0035】
車輪16は、回転軸161の長手方向(Y軸)における車輪16の略中央寄りの位置に近づくにつれて径が小さくなるような形状を呈する。よって、車輪16は、電線7上を車輪16が移動できるように、回転軸161の長手方向(Y軸)における車輪16の略中央寄りの位置が抉られている。つまり、車輪16には、電線7が内部に設けられる凹部16A(
図6)と、凹部16A内の電線7を回転軸161の長手方向において当該電線7の両側に設けられる側壁部16B、16Cが形成されることになる。尚、側壁部16B、16Cは、劣化判定装置100を電線7に沿って移動させるときに、車輪16が電線7から外れるのを防止するための防止部材として機能する。つまり、側壁部16B、16Cは、劣化判定装置100を電線7に沿って移動させるためのガイドとして機能する。
【0036】
尚、車輪17の構成は、車輪16の構成と同様であるので、その説明については、省略する。
【0037】
===センサ装置===
以下、
図3及び
図4を参照して、本実施形態におけるセンサ装置について説明する。
センサ装置2は、電線7の劣化を検出するためのセンサ装置である。センサ装置2は、カバー21(ケース)、センサ部22を有する。
【0038】
センサ部22は、例えば銅、アルミニウム等の金属に対する距離が一定距離以下になったことを検出するための例えば誘導形近接センサの検出コイルである。センサ部22は、例えば、電池5からの電力に基づいて交流磁界を発生させる。センサ部22を含む回路(不図示)のインピーダンスは、センサ部22から上述の金属までの距離に応じて変動することになる。従って、センサ部22を含む回路のインピーダンスに基づいて、センサ部22の金属に対する距離が一定距離以下になったことを検出できることとなる。
【0039】
尚、センサ部22の金属に対する距離が一定距離以下になったことの検出は、検出部33(
図8)によって行われることとする。検出部33は、例えば、カバー21における電線7と当接(圧接)する当接面211(圧接面)(
図3)から、当接面211の下側(−Z)において当接面211と対向する上述の金属までの距離が一定距離以下となったことを検出することとする。尚、検出部33については、後述する。
【0040】
カバー21は、センサ部22が電線7と接触しないように、センサ部22の周囲を覆う樹脂製のカバーである。つまり、カバー21は、センサ部22を収容する絶縁性のカバーである。カバー21は、例えば、略矩形柱形状を呈する。尚、カバー21における下側の縁及び角は、電線7に対するカバー21の接触に基づく電線7の損傷を防止するために、例えば面取りされていることとしてもよい。
【0041】
カバー21は、筐体11の下部(−Z)に設けられる。カバー21は、カバー21の当接面211が電線7と当接するように、筐体11から下側(−Z)に向かって突出している。カバー21は、筐体11に対して相対的に、垂直方向(Z軸)における上側(+Z)及び下側に移動できるように、筐体11に取り付けられる。カバー21は、付勢装置4から出力される付勢力F1に基づいて、上側から下側に向かって付勢されている。尚、付勢力F1は、上側(+Z)から下側に向かう力である。カバー21は、付勢力F1に基づいて筐体11の下側の所定位置よりも下側に移動しないように、ストッパ(不図示)によって移動が停止されることとする。尚、筐体11の下側の所定位置は、例えば、カバー21の当接面211が車輪16の凹部16Aよりも距離D1(
図5)だけ下側に設けられる、筺体11に対する相対的な位置とする。
【0042】
===カバーの移動===
以下、
図3、
図5及び
図6を参照して、本実施形態におけるカバーの移動について説明する。
図5は、本実施形態における電線から取り外された状態の劣化判定装置の一部を示す正面図である。
図6は、本実施形態における電線に取り付けられた状態の劣化判定装置の一部を示す正面図である。尚、
図5及び
図6においては、カバー21の一部、センサ部22、制御装置3、付勢装置4、電池5は見えない状態となっているが、説明の便宜上、点線で示されている。電線7は、説明の便宜上、電線7の長手方向(X軸)と直交するYZ平面における断面が示されている。操作棒14は、説明の便宜上、省略される。
【0043】
=劣化判定装置が電線から取り外された場合=
劣化判定装置100が電線7から取り外された場合、カバー21の当接面211は、電線7から離れることになる。カバー21は、付勢装置4から伝達される付勢力F1に基づいて、筐体11に対して相対的に、上側(+Z)から下側(−Z)に向かって移動する。カバー21が筐体11の下側の所定位置に移動したときに、カバー21は、ストッパによって移動が停止されることになる(
図5)。
【0044】
=劣化判定装置が電線に取り付けられる場合=
劣化判定装置100が電線7に取り付けられる場合、カバー21の当接面211は、電線7と当接することになる。カバー21には、電線7から外力が伝達される。尚、電線7からカバー21に伝達される外力は、カバー21に対して相対的に下側から上側に向かう力である。カバー21は、電線7からの外力に基づいて、付勢力F1に抗して電線7と共に、筐体11に対して相対的に、下側から上側に移動することになる(
図3)。
【0045】
この後、電線7が車輪16、17と当接したときに、筐体11に対するカバー21の相対的な移動は停止することになる。このとき、カバー21は、当接面211が電線7に対して付勢力F1に応じた力で、押し付けられた状態となる。
【0046】
又、このとき、リセット装置(不図示)からリセット信号が出力されることになる。尚、リセット装置は、例えば、カバー21が筐体11に対して相対的に下側から上側に移動することを検出し、当該移動が検出された際にリセット信号を出力する装置であり、例えば筐体11内に設けられている。リセット信号は、表示部121、131の発光を停止(消灯)させたり、スピーカ122からの警報音の出力を停止させたりするための信号である。
【0047】
===制御装置===
以下、
図7及び
図8を参照して、本実施形態における制御装置について説明する。
図7は、本実施形態における制御装置の機能を示すブロック図である。
図8は、本実施形態における閾値情報を示す図である。
【0048】
制御装置3は、劣化判定装置100の動作を制御するための装置である。制御装置3は、記憶部31、設定部32(厚み設定装置)、検出部33、報知部34、制御部35を有する。尚、検出部33、カバー21、センサ部22がセンサ装置に相当する。検出部33、センサ部21がセンサ素子に相当する。報知部34、表示部121、131、スピーカ122が報知装置に相当する。
【0049】
記憶部31は、例えば、第1の領域311、第2の領域312を有する。第1の領域311には、例えば、制御装置3を動作させるプログラムが記憶される。第2の領域312には、例えば、閾値情報T1を示すデータが記憶されている。
【0050】
閾値情報T1は、劣化判定装置100において電線7の劣化を検出するための情報である。閾値情報T1は、例えば、電線7の種類を示す情報に対して、劣化していない状態の電線7の被覆部71B、72B、73Bの厚さを示す情報及び、検出閾値を示す情報が予め対応付けられている。尚、電線7の種類は、例えば、電線7における定格電流に基づいて分類されるものであっても、電線7における外径に基づいて分類されるものであっても、第1電線71の外径に基づいて分類されるものであってもよい。劣化していない状態の電線の被覆部71B、72B、73Bの厚さとは、例えば、電線7の仕様に基づく厚さであってもよい。検出閾値は、劣化していない状態の電線の被覆部71B、72B、73Bの厚さよりも薄い(短い)値に設定される。つまり、検出閾値Dt1、Dt2、Dt3は夫々、被覆部の厚さD11、D21、D31よりも薄い値とされる。検出閾値は、例えば、電線7における電線7の外部に対する電気的な絶縁等に基づいて実験的に予め定められることとしてもよい。
【0051】
検出部33は、カバー21における電線7と当接する当接面211(
図3)から、当接面211の下側(−Z)において当接面211と対向する金属までの距離が一定距離以下となったことを検出することとする。検出部33は、カバー21の当接面211が第1電線71の被覆部71Bに当接しているとき、当接面211から第1電線71の導体部71Aまでの距離が一定距離以下となったことを検出する。つまり、検出部33は、カバー21の当接面211が第1電線71の被覆部71Bに当接しているとき、被覆部71Bの厚さが一定距離(一定厚さ)以下となったことを、電線7の劣化として検出する(電線7の劣化を検出する)。又、検出部33は、カバー21の当接面211が第2電線72の被覆部72Bに当接しているとき、被覆部72Bの厚さが一定距離(一定厚さ)以下となったことを、電線7の劣化として検出する(電線7の劣化を検出する)。検出部33は、カバー21の当接面211が第3電線73の被覆部73Bに当接しているとき、被覆部73Bの厚さが一定距離(一定厚さ)以下となったことを、電線7の劣化として検出する(電線7の劣化を検出する)。尚、検出部33については、後述する。
【0052】
設定部32は、検出部33による電線7の劣化の検出のための閾値となる一定距離(一定厚さ)を、例えば設定釦124、125(
図1)の操作、閾値情報T1等に基づいて設定する。設定釦124、125の操作に基づいて、劣化判定装置100が用いられる電線7の種類が選択されることとする。設定部32は、選択された電線7の種類及び閾値情報T1に基づいて、選択された電線7の種類に対応する検出閾値を、検出部33による電線7の劣化の検出のための閾値となる一定厚さとする。つまり、設定部32は、電線7の劣化の検出のための閾値となる一定厚さを、電線7の種類に応じて段階的に設定する。
【0053】
例えば、設定釦124、125によって電線7の種類X1、X2、X3(
図8)が選択された場合夫々、設定部32は、検出閾値Dt1、Dt2、Dt3を、検出部33による電線7の劣化の検出のための閾値となる一定厚さとする。
【0054】
報知部34は、検出部33の検出結果等に基づいて、表示部121、131を発光(点灯)させたり、スピーカ122から警報音を出力させたりする。検出部33が電線7の劣化を検出したとき、報知部34は、表示部121、131を発光させる。報知部34は、例えば、劣化判定装置100の電源が切とされるか、又は、リセット信号が出力されるまで、表示部121、131の発光を継続させる。検出部33が電線7の劣化を検出したとき、報知部34は、更に、スピーカ122から警報音を出力させる。つまり、報知部34、表示部121、131、スピーカ122は、検出部33の検出結果を報知している。尚、例えば、スピーカ122からの警報の出力は、10秒等の所定時間継続されることとしてもよい。又、例えば、スピーカ122からの警報の出力は、劣化判定装置100の電源が切とされるまで継続することとしてもよい。例えば、リセット信号が出力されたとき、報知部34は、表示部121、131の発光を停止(消灯)させ、スピーカ122からの警報音の出力も停止させることとする。つまり、リセット信号が出力されたとき、劣化判定装置100は、再度、電線7の劣化を検出することができる状態となる。
【0055】
制御部35は、第1の領域311に記憶されているプログラムに基づいて制御装置3を制御する。
【0056】
===検出部===
以下、
図9を参照して、本実施形態における制御装置について説明する。
図9は、本実施形態におけるセンサ装置と第1電線とを示す図である。尚、
図9では、第1電線71における略中央及び第1電線71の長手方向を含むZX平面による第1電線71の一部の断面と、劣化判定装置100におけるセンサ装置2とが示されている。又、
図9では、第1電線71の被覆部71Bに当接されている状態のセンサ装置2が示されている。第1電線71における上側(+Z)の被覆部71Bは、電線7の外周面として例えば紫外線、風雨等に曝される側の被覆部であることとする。第1電線71における下側(+Z)の被覆部71Bは、電線7における第2電線72、第3電線73に覆われて例えば紫外線、風雨等に曝されない側の被覆部であることとする。
【0057】
例えば、検出部33による電線7の劣化の検出のための閾値となる一定厚さが、検出閾値Dt1に設定されている場合について説明する。尚、検出閾値Dt1は、例えば、第1電線71の第2位置712における被覆部71Bの厚さD3よりも厚く、且つ、第1電線71の第1位置711における被覆部71Bの厚さD2よりも薄いものとする。
【0058】
被覆部71Bは、紫外線の照射等により劣化し、厚さが薄くなる。被覆部71Bの第1位置711は、例えば、物陰に位置し紫外線の照射量が比較的少ない部分であることとする。被覆部71Bの第2位置712は、第1位置711よりも紫外線の照射量が多い位置であることとする。このため、例えば、第2位置712における被覆部71Bの厚さD3は、第1位置711における被覆部71Bの厚さD2よりも薄くっていることとする。
【0059】
センサ装置2は、当接面211が被覆部71Bの上面(+Z)に当接された状態で、第1位置711から第2位置712に移動されることとする。
【0060】
例えば、センサ装置2が第1位置711上に設けられている場合、検出部33は、電線7の劣化を検出しない。これは、被覆部71Bの厚さD2が、検出閾値Dt1よりも厚いためである。又、例えば、センサ装置2が第2位置712上に設けられている場合、検出部33は、電線7の劣化を検出する。これは、被覆部71Bの厚さD3が、検出閾値Dt1よりも薄いためである。
【0061】
===劣化判定装置を用いた電線における劣化の検出===
以下、
図1及び
図2を参照して、本実施形態における劣化判定装置を用いた電線における劣化の検出について説明する。
【0062】
作業者による電源スイッチ123の操作によって、劣化判定装置100の電源が入とされる。このとき、第1の領域311に記憶されているプログラムの起動が開始されて、制御部35による制御装置3の制御動作が開始される。
【0063】
作業者による設定釦124、125の操作によって、電線7の種類が選択される。尚、電線の種類X1が選択されることとする。このとき、設定部32は、検出閾値Dt1を、検出部33による電線7の劣化の検出のための閾値となる一定厚さとする。
【0064】
劣化判定装置100は、例えば、作業者による操作棒14の操作よって、電線7に取り付けられる。劣化判定装置100における筐体11が電線7の上側(+Z)において電線7に沿って移動できるように、劣化判定装置100は取り付けられる。筐体11は、垂直方向(Z軸)における電線7よりも上側において、電線7と対向した位置(
図5)から下側(−Z)に向かって移動される。このとき、カバー21の当接面211は、電線7と当接(圧接)することになる。相対的に下側から上側に向かう外力が、電線7からカバー21に伝達される。カバー21は、電線7からの外力に基づいて、付勢力F1に抗して電線7と共に、筐体11に対して相対的に、下側から上側に移動することになる(
図3)。この後、電線7が車輪16、17と当接したときに、筐体11に対するカバー21の相対的な移動は停止することになる。尚、このとき、カバー21は、当接面211が電線7に対して付勢力F1に応じた力で、押し付けられた状態となる。又、このとき、リセット装置からリセット信号が出力される。
【0065】
劣化判定装置100は、例えば、作業者による操作棒14の操作よって、電線7に沿って所定距離以上移動される。劣化判定装置100の筐体11は、センサ装置2の当接面211が電線7に当接された状態で移動される。つまり、センサ装置2は、本体11の移動に従って電線7の表面を圧接しながら移動することになる。尚、所定距離は、例えば、電線7のよりピッチに対応した距離である。電線7のよりピッチとは、電線7のセンサ装置2が圧接される側(+Z)に第1電線71、第2電線72、第3電線73が連続して順次現れる長さL1(
図4)を示している。つまり、センサ装置2が電線7のよりピッチに対応する距離だけ移動した場合、センサ装置2は、第1電線71、第2電線72、第3電線73を圧接した後、再度第1電線73を圧接することになる。従って、劣化判定装置100の所定距離以上の移動により、第1電線71、第2電線72、第3電線73夫々における劣化を検出することが可能となる。尚、例えば、所定距離は、電線7のピッチに対応する距離であり、センサ装置2が第1電線71を圧接する位置から、筐体11の移動によりセンサ装置2が第1電線71を再度圧接する位置までの距離であることとしてもよい。
【0066】
例えば、電線7における劣化判定装置100が移動される区間において、被覆部の厚さが検出閾値Dt1よりも薄い位置があった場合、劣化判定装置100は、スピーカ122から警報音を出力させると共に表示部121、131を発光させる。この後、作業者による操作棒14の操作により劣化判定装置100が電線7から取り外された後、作業者による電源スイッチ123の操作によって、劣化判定装置100の電源が切とさたとき、スピーカ122からの警報音の出力及び表示部121、131の発光が停止することになる。
【0067】
又、例えば、スピーカ122から警報音が出力されると共に表示部121、131が発光しているときに、劣化判定装置100が電線7から取り外された後、再度、劣化判定装置100が電線7に取り付けられた場合、リセット装置からリセット信号が出力される。このとき、スピーカ122からの警報音の出力及び表示部121、131の発光が停止し、劣化判定装置100は、再度、電線7の劣化を検出できる状態となる。
【0068】
前述のように、劣化判定装置100は、筐体11、検出部33、報知部34、カバー21、センサ部22、表示部121、131、スピーカ122を有する。筐体11は、電線7に沿って移動する。電線7は、第1電線71、第2電線72、第3電線73を有する。第1電線71においては、導体部71Aの周囲が絶縁性の被覆部71Bで覆われている。第2電線72においては、導体部72Aの周囲が絶縁性の被覆部72Bで覆われている。第3電線73においては、導体部73Aの周囲が絶縁性の被覆部73Bで覆われている。カバー21は、筐体11の移動に従って電線7の表面を圧接しながら移動する。検出部33は、センサ部22を含む回路のインピーダンスに基づいて、カバー21における電線7と圧接する当接面211(圧接面)から、当接面211の下側(−Z)において当接面211と対向する金属までの距離が一距離以下となったことを検出する。つまり、例えば、当接面211が第1電線71の表面に圧接されている場合、検出部33は、被覆部71Bの厚みが例えば検出閾値Dt1以下となったことを検出する。報知部34は、検出部33の検出結果に基づいて、表示部121、131を発光させる。又、報知部34は、検出部33の検出結果に基づいて、スピーカ122から警報音を出力させる。これらの構成により、劣化判定装置100は、被覆部71B、72B、73Bが例えば検出閾値Dt1よりも薄くなっていることに基づいて、電線7の被覆部71B、72B、73Bの劣化を確実に検出することができる。
【0069】
又、劣化判定装置100は、操作棒14を更に有する。操作棒14は、筐体11を移動させるべく筐体11に取り付けられている。この構成により、電線7から離れた位置で筐体11を操作することができる。つまり、電線7の劣化を検出する作業を安全に行うことが可能な劣化判定装置100を提供することができる。
【0070】
又、劣化判定装置100は、上述のように、検出部33、カバー21、センサ部22を有する。カバー21は、被覆部71B、被覆部72B、被覆部73Bに圧接される絶縁性のケースである。センサ部22は、カバー21に収容される。検出部33は、前述したように、センサ部22を含む回路のインピーダンスに基づいて、カバー21における電線7と当接する当接面211から、当接面211の下側(−Z)において当接面211と対向する金属までの距離が一距離以下となったことを検出する。つまり、検出部33は、例えば、被覆部71Bに圧接される当接面211から導体部71Aに至るまでの被覆部71Bの厚みが検出閾値Dt1以下となったことを検出する。これらの構成により、例えば被覆部71Bの厚みが検出閾値Dt1以下となったことを確実に検出することができる。よって、電線7の被覆部71B、72B、73Bの劣化を確実に検出することが可能な劣化判定装置100を提供することができる。又、電線7に対する筐体11の移動の際に、センサ部22が電線7の表面に接触して損傷するのを防止することができる。よって、劣化判定装置100の耐久性を向上させることができる。
【0071】
又、劣化判定装置100は、設定部32を更に有する。設定部32は、設定部32は、検出部33による電線7の劣化の検出のための閾値となる一定距離(一定厚さ)を、例えば設定釦124、125(
図1)の操作、閾値情報T1等に基づいて設定する。尚、閾値情報T1には、前述したように電線7の外径と検出閾値とが対応付けられている。つまり、設定部32は、検出部33による電線7の劣化の検出のための閾値となる一定距離(一定厚さ)として、電線7の外径に応じて異なる厚みを設定する。この構成により、検出部33による電線7の劣化の検出のための閾値となる一定厚さを、電線7の外径に応じて異なる厚さに段階的に設定することができる。よって、例えば、所定の外径の電線7において、一定厚さの設定値のずれが発生するのを防止することができる。従って、劣化判定装置100は、電線7の被覆部71B、72B、73Bの劣化を確実に検出することができる。
【0072】
又、劣化判定装置100は、前述したように、報知部34、表示部121、131を有する。例えば、被覆部71Bの厚みが検出閾値Dt1以下となったことが検出されたとき、報知部34は、表示部121、131を発光させる。つまり、被覆部71Bの厚みが検出閾値Dt1以下となったことが検出されたことを発光で報知できる使い勝手の良い劣化判定装置100を提供することができる。
【0073】
又、劣化判定装置100は、前述したように、報知部34、スピーカ12を有する。例えば、被覆部71Bの厚みが検出閾値Dt1以下となったことが検出されたとき、報知部34は、スピーカ122から警報音を出力させる。つまり、被覆部71Bの厚みが検出閾値Dt1以下となったことが検出されたことを警報音の出力で報知できる使い勝手の良い劣化判定装置100を提供することができる。
【0074】
又、電線7は、第1電線71、第2電線72、第3電線73が予め決められた順序で縒り合わされた引込み線である。第1電線71、第2電線72、第3電線73は夫々、互いに異なる導体部71A、導体部72A、導体部73Aの周囲が互い異なる被覆部71B、被覆部72B、被覆部73Bで覆われた電線である。筐体11は、少なくとも第1電線71、第2電線72、第3電線73のうち例えば第1電線71をセンサ装置2が圧接する位置から、第1電線71をセンサ装置2が再度圧接する位置まで移動する。これらの構成により、劣化判定装置100は、被覆部71B、72B、73B夫々の劣化を検出することができる。よって、劣化判定装置100は、上述のように例えば被覆部71B、72B、73Bの外面の色の違いに応じて劣化の度合いが異なる電線7においても、被覆部の劣化を確実に検出することができる。
【0075】
尚、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0076】
上記実施形態においては、電線7の劣化の検出のための閾値となる一定厚さを、電線7の種類に応じて段階的に設定することについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電線7の劣化の検出のための閾値となる一定厚さを連続的に設定するための回転式のダイヤル部が、筐体11に設けられることとしてもよい。尚、設定部32は、ダイヤル部の回転量に応じて、電線7の劣化の検出のための閾値となる一定厚さを連続的に設定することとする。この場合、電線7の劣化の検出のための閾値となる一定厚さを連続的に設定することができるために、劣化判定装置100の汎用性を向上させることができる。
【0077】
又、上記実施形態においては、車輪16、17及びセンサ装置2が筐体11の下部(−Z)に設けられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、車輪16、17及びセンサ装置2が筐体11の上部(+Z)に設けられることとしてもよい。電線7の下側からセンサ装置2が電線7に当接されることになる。この場合、操作棒14を用いて、筐体11を電線7の上側に取り付ける必要がなくなる。従って、筐体11を電線7の下側から電線7の上側に移動させるためのスペースを確保する必要がないために、電線7が一定の領域に比較的多く設けられている密集地域においても電線7の劣化を検出できる使い勝手のよい劣化判定装置100を提供することができる。
【0078】
又、上記実施形態においては、劣化判定装置100によって劣化の検出が行われる電線7が、3本の電線のより線である場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、劣化判定装置100によって劣化の検出が行われる電線は、2本のより線であっても、4本以上のより線であってもよい。又、例えば、劣化判定装置100によって劣化の検出が行われる電線は、1本の電線であってもよい。
【0079】
又、上記実施形態においては、検出部33が、制御装置3に設けられることについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、センサ部22が検出部33の機能についても更に有することとしてもよい。この場合、検出部33の機能を更に有するセンサ部22がカバー21に収容されることになる。
【0080】
又、上記実施形態においては、筐体11が操作棒14の操作によって移動することについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電線7に沿って筐体11を移動させる滑車及び当該滑車を駆動させるためのモータ及び制御装置等を筐体11に設けて、操作棒14による操作を行うこと無く筐体11が移動することとしてもよい。