(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730977
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】釣り方法及び該釣り方法に用いるウキ飛翔時係止具
(51)【国際特許分類】
A01K 91/06 20060101AFI20150521BHJP
A01K 93/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
A01K91/06 B
A01K93/00 H
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-225970(P2013-225970)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-84713(P2015-84713A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2015年1月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513274060
【氏名又は名称】岸本 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】岸本 弘
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−220100(JP,A)
【文献】
特開2005−27650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 83/00 − 85/18
91/00 − 95/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿に取り付けられて先端側に少なくとも錘、仕掛け、ウキストッパー、ウキ、ウキ止めを具備する道糸の前記ウキとウキ止めの間にキャスティングによるウキの飛翔中は道糸に係合されたまま道糸と共に飛翔するが着水後には道糸との係合が解除される係止手段を介在させる魚釣り方法。
【請求項2】
前記係止手段が柔軟性のある湾曲した筒状パイプからなるウキ飛翔時係止具であることを特徴とする請求項1記載の魚釣り方法。
【請求項3】
前記柔軟性のある湾曲した筒状パイプが合成樹脂であることにことを特徴とする請求項1又は2に記載の魚釣り方法。
【請求項4】
請求項1の魚釣り方法で使用する柔軟性のある湾曲した筒状パイプからなるウキ飛翔時係止具。
【請求項5】
前記柔軟性のある湾曲した筒状パイプが合成樹脂である請求項4に記載のウキ飛翔時係止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はポイントへ正確にキャスティングできる釣り方法及び該釣り方法に用いるウキ飛翔時係止具に関する。
【背景技術】
【0002】
海釣りなどで遠投ウキ仕掛けを準備する場合には、
図7に示すように、竿1にリール2を固定してから道糸3を引き出してガイド4を直して出た先端からシモリ玉5、ウキ6、ウキストッパー7の順に通し、道糸3の先端にスイベル8を取り付けて、このスイベル8に仕掛け9のスナップ10をセットし、タナ取りの位置にウキ止め11を固定して、釣り具16´の準備をしている。
【0003】
仕掛け9は狙う魚種によって異なるが、狙う魚種に応じた針12を付けてその先に錘13を付けたものを用いる。又、スイベル8にマキエカゴ14がスナップ10で取付けられている。そして準備が整うとポイント方向にキャスティングすると、錘13の飛ぶ方向に引張られてリール2から道糸3が引き出されてポイントに仕掛け9が着水する。
【0004】
この着水時においては、
図8の左上方に示すように錘13が最も遠方へ着水して、仕掛け9、ウキストッパ7、ウキ6、シモリ玉5、ウキ止め11の順となるが、着水後は矢印イに示すようにウキ6の真下方向へ錘13が沈んでゆき、ほぼウキ6着水地点の真下に仕掛け9が位置する。これは、キャスティングによりウキ6がシモリ玉5と共に道糸3を伝ってウキ止め11に引掛かるまで移動してから着水するためである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】かんたん海釣り入門 株式会社主婦の友社(著)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術によると、キャスティングによる道糸3の飛翔中にウキ6がシモリ玉5と共にウキ止め11まで移動するので、ポイントへ錘13の付いた仕掛け9を投げるつもりのキャスティングをしても、タナ取りの位置に合わせてウキ止め11を固定していることからその分だけ手前に戻った位置に仕掛け9をしたことになる。従って、キャスティングはその分を見込んでより遠方に仕掛け9が飛ぶようにしなければならないので、キャスティングに要する労力が余分に必要となる問題点がある。又、タナが深い仕掛け9の場合にはこの傾向はより大きくなる問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、キャスティングによる仕掛けの着水時はウキは仕掛けに隣接して着水するが、着水後はウキの位置はそのままで錘によって道糸がリールから引き出されて仕掛けがタナ取りの深さまで沈んでゆくことができるようにしたものであって、その手段とするところは、請求項1の発明においては、竿に取り付けられて先端側に少なくとも錘、仕掛け、ウキストッパー、ウキ、ウキ止めを具備する道糸の前記ウキとウキ止めの間にキャスティングによるウキの飛翔中は道糸に係合されたまま道糸と共に飛翔するが着水後には道糸との係合が解除される係止手段を介在させる魚釣り方法としたことにある。
【0008】
請求項2の発明においては、前記係止手段が柔軟性のある湾曲した筒状パイプからなるウキ飛翔時係止具であることにある。
【0009】
請求項3の発明においては、前記柔軟性のある湾曲した筒状パイプが合成樹脂であることにことにある。
【0010】
請求項4の発明においては、前記請求項1の魚釣り方法で使用する柔軟性のある湾曲した筒状パイプからなるウキ飛翔時係止具であることにある。
【0011】
請求項5の発明においては、前記請求項4の発明の前記柔軟性のある湾曲した筒状パイプが合成樹脂であることにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によると、キャスティングにより道糸と共にウキは飛翔するが、飛翔中は係止手段によってウキ止め方向への移動は阻止されるので、ウキはウキ止めとの間隔を空けたままで着水し、その結果、仕掛けの近くにウキが着水する。しかし、着水後はウキはその着水位置でほぼ静止するが、錘と共に仕掛けが沈んで行くときに伸びる道糸は、ウキの道糸通し穴を通過して道糸通し穴にウキ止めが達するまでリールから送り出される。このリールから送り出される道糸の長さが、係止手段を設けた位置とウキ止めを設けた位置の長さであり、この分の長さに相当する距離つまりタナの深さ分の距離を従来の釣り方法と比較して多く距離を飛ばせることになる。これによって、少ない労力で遠方まで仕掛けを投げることができる。
【0013】
請求項2の発明によると、係止手段が柔軟性のある湾曲した筒状パイプからなるウキ飛翔時係止具の筒状パイプの中に道糸が通っているので、キャスティングによって錘に引張られている張力を有する道糸の外周と柔軟性のある湾曲した筒状パイプの湾曲内面との摩擦抵抗が大となり、ウキにウキ止め方向への力が作用してもこの摩擦力によって柔軟性のある筒状パイプたるウキ飛翔時係止具がウキの移動を阻止することができる。道糸の先端からウキとウキ止めの間の位置に通しておくだけでよいので、安価でかつ手数も仕掛けをセットする時に同時にできるのでほとんどかからない。
【0014】
請求項3の発明によると、柔軟性のある湾曲した筒状パイプは合成樹脂からなるのであるから、その表面は適度な摩擦抵抗を有しているので、好ましく利用できる。又、成型加工が容易で大量生産できる結果安価である。又、硬度や摩擦力を合成樹脂の種類を選択することにより適度に調節できる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1の釣り方法において用いる湾曲した柔軟性のある筒状パイプからなるウキ飛翔時係止具の発明であるから、釣りを楽にできる道具として有効に利用できる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項4の発明の湾曲した柔軟性のある筒状パイプを合成樹脂としたので、成型加工が容易で大量生産でき安価となる利点がある。又、硬度や摩擦力を合成樹脂の種類を変えることにより適度に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の釣り方法に使用する釣り具の説明図。
【
図8】従来の釣り方法の釣り具を使用した着水時の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態について、まず、
図1を参照しつつ説明する。この発明の釣り方法は、先端側に少なくとも錘13、仕掛け9、ウキストッパー7、ウキ6、ウキ止め11を具備する道糸3の前記ウキ6とウキ止め11の間にキャスティング後の飛翔時にはウキ6とウキ止め11の間隔が狭まることを阻止するがウキ6が着水後にはこれを解除する係止手段15を介在させる釣り方法である。
【0019】
図1に示すこの発明の釣り方法に用いる釣り具16が、
図7に示す従来の釣り具16′と異なるところは、ウキ6とウキ止め11の間に係止手段としてのウキ飛翔時係止具15を道糸3に設けたことである。その他の構成は
図7の従来の釣り具16′と同じであるので、同符号を用いて説明を省略する。。
【0020】
ウキ飛翔時係止具15は、
図2に示すように、キャスティング後の道糸3の先端部分が錘13の飛翔速力に引張られて飛翔している時には、図外の道糸通し穴に通されて道糸3に対しては移動自在なウキ6がこのウキ飛翔時係止具15によってウキ止め11方向へ移動することを阻止され、且つ、ウキ6の着水後は道糸3に固定しているウキ止め11が、リール2から送り出される道糸3により水面に浮かぶウキ6に接近するのを許容できる係止具である。
【0021】
このような係止手段であるウキ飛翔時係止具15の具体的実施形態としては、
図3に示す合成樹脂からなる柔軟性のある湾曲筒状パイプ15があげられる。湾曲形状は半円形、三日月などの円弧形状、S字形状、くの字型状など種々の形状のものを含む。このように湾曲するのはパイプの内部を挿通する道糸3が飛翔中の錘13で引張られて張力を生じた際に湾曲部分の内周面と道糸3の外周面との間に摩擦力を生じさせて、道糸3に係合させるためである。これによってウキ6が道糸3に導かれてウキ止め11方向に移動するのをこのウキ飛翔時係止具15によって阻止でき、ウキ6とウキ止め11の間隔すなわちタナの深さの距離を空けた状態でウキ6を着水できる。このことはつまりそれだけ遠くへウキ6を飛ばせることが出来るのである。この場合において、ウキ6とウキ飛翔時係止具15はあらかじめ金具や糸などを使って連結しておいてもよい。湾曲円筒パイプ15の材質として好ましくは合成樹脂、更に好ましくはウレタン樹脂が挙げられる。又、その内径は道糸3が通過できる以上のものでウキ止め11が通過出来ないものであれば特に限定されるものではない。パイプの肉厚は湾曲形状を維持できる程度であればよい。
【0022】
着水後は、
図4、
図5に示すように錘13によって仕掛け9が着水して水面に浮かぶウキ6の下方に沈んでゆく。この時の沈む速度は緩やかであるので飛翔時のように道糸3には大きな張力が生じていないから、錘13の重さによってゆっくりとリール2から引き出された道糸3が柔軟性のある湾曲した筒状パイプ15の中を移動して伸びてゆく。これは移動速度が緩やかなために道糸3の外周面と湾曲した筒状パイプ15の湾曲部分の内面との摩擦力は極めて小さいからである。そして、錘13が海底に達するまで道糸3の錘13による通過を許容し、しかも、リール2はわずかな錘13による引張力によっても回転して道糸3を竿先から送り出すので、ウキ6の位置は戻されることなく着水した位置を保持し得る。
【0023】
このように、キャスティングが行われた時には、ウキ6は仕掛け9に接近した位置で道糸3に係止された最初のままの状態で着水し、この着水した位置の下方に仕掛け9が位置することになるために、ポイントを目がけてキャスティングしてもポイントの位置とのズレを最下限に抑えることが可能となる。すなわち、従来の釣り方法であると、ウキ6が飛翔中にウキ止め11まで釣人の方向へ戻り移動するので、ウキ6が水面に着水した時は仕掛け9はポイントよりもタナの深さ距離分だけ手前に着水していることになり、その分を見越して遠くへ投げなければならなかったが、本発明の釣り方法においては、ポイント位置にキャスティングすれば仕掛け9の位置もほぼその同じ場所に達していることになるので、その分労力が少なく楽に釣りを楽しむことができる。
【0024】
前記釣り方法の係止手段として、柔軟性のある湾曲した円筒状パイプのウキ飛翔時係止具15の実施形態を挙げて説明したが、これに代えて、ウキ6とウキ止め11間の道糸3に水溶性のウキ止めを固着するものであってもよい。例えば、水溶性の土粘土や紙粘土である。更には、ウキ6とウキ止め11の間の道糸3を束ねて急冷凍したものや水溶性袋で包んだものなどがあるが、いずれにしてもキャスティングする毎に付け変える手数がかかると共に釣り場を汚す問題点がある。
【0025】
尚、再キャスティングする時には、ウキ6、ウキ飛翔時係止具15のそれぞれの位置を元に戻す必要がある。又、シモリ玉5は必要に応じて取付ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
ウキを用いて投げ釣りする全ての釣りに応用できるので、利用用途は広く、又、ウキ飛翔時係止具の需要も大量に見込めるためこれの製造販売に従事する産業が栄えることが見込まれる。
【符号の説明】
【0027】
1 竿
2 リール
3 道糸
6 ウキ
7 ウキストッパー
9 仕掛け
13 錘
15 係止手段(ウキ飛翔時係止具、湾曲筒状パイプ)
16 釣り具
16′ 従来の釣り具