【実施例】
【0040】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)錠剤
(1)成分
本錠剤の成分を下記表1に示す。
【0042】
(表1)
1錠中 (mg) (mg)
――――――――――――――――――――――――――――――
リモネン、又は、シトラール 30 −
シトロネリルオキシアセトアルデヒド − 20
タルク 30 30
ステアリン酸マグネシウム 10 10
ヒドロキシプロピルセルロース 5 5
結晶セルロース 250 250
トウモロコシ澱粉 150 150
乳糖 適量 適量
――――――――――――――――――――――――――――――
【0043】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造する。
【0044】
(実施例2)顆粒剤
(1)成分
本顆粒剤の成分を下記表2に示す。
【0045】
(表2)
1包中 (mg) (mg)
――――――――――――――――――――――――――――――
リモネン、又は、シトラール 30 −
シトロネリルオキシアセトアルデヒド − 20
トウモロコシ澱粉 350 350
ヒドロキシプロピルセルロース 50 50
乳糖 適量 適量
――――――――――――――――――――――――――――――
【0046】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造する。
【0047】
(実施例3)カプセル剤
(1)成分
本カプセル剤の成分を下記表3に示す。
【0048】
(表3)
1〜2カプセル中 (mg) (mg)
――――――――――――――――――――――――――――――
リモネン、又は、シトラール 30 −
シトロネリルオキシアセトアルデヒド − 20
トウモロコシ澱粉 350 350
ヒドロキシプロピルセルロース 50 50
乳糖 適量 適量
――――――――――――――――――――――――――――――
【0049】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造した後、カプセルに充てんして硬カプセル剤を製造する。
【0050】
(実施例4)液剤
(1)成分
本液剤の成分を下記表4に示す。
【0051】
(表4)
100mL中 (mg) (mg)
――――――――――――――――――――――――――――――
リモネン、又は、シトラール 30 −
シトロネリルオキシアセトアルデヒド − 20
安息香酸ナトリウム 70 70
ポリビニルアルコール 60 60
白糖 900 900
精製水 残部 残部
――――――――――――――――――――――――――――――
【0052】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「液剤」の項に準じて液剤を製造する。
【0053】
(試験例1)防虫効果試験1
以下に、被験物質についての、防虫効果試験を示す。
【0054】
(1)被験物質
リナロール、シトロネラール、リモネン及びゲラニオールはシグマ−アルドリッチ社製のものを購入して使用した。被験物質は、これらを各7.5μgずつ等量含むアロマミックスを作製して投与した。投与液量はいずれの場合も0.2mL/Kgとなるようにした。
【0055】
(2)動物
BALB/c雄性マウスの6週齢を日本チャールズリバー(株)から購入し、温度20〜26℃、湿度30〜70%、照明時間7時〜19時に制御されたラット飼育室内でラット用ブラケットテーパーケージに5匹ずつ入れ、飼料(マウス・ラット飼育用F−2、船橋農場製)および水フイルターを通した水道水を自由に摂取させて約1週間予備飼育した。試験開始日に肉眼で動物の健康状態を観察し良好なことを確認して体重を測定し無作為に1群5匹に群分けして用いた。
【0056】
本発明者らは動物の年齢と体臭の関係につき長年にわたり研究を続け、その中で、動物の体臭は尿臭で評価でき、尿中の特定の揮発成分が年齢によって変化することを突き止めた。
本結果をもとに本発明者らは、動物に防虫成分を経口投与して尿中に当該成分が代謝されずに排泄されるならば、防虫効果を有する体臭が実現できることに気付いた。
更に、本発明者らは、防虫・虫よけ効果のある物質を経口摂取して、ヒト体表面から当該物質が代謝されずに放出されるならば、人体にとって無害な経口防虫剤が実現できることに気付いた。
【0057】
本アイデアの検証は特許法第32条にも抵触するおそれがあるため、動物試験で検証する必要がある。そこで、本発明者らは、被験物質を試験動物に経口摂取させて、その尿中の被験物質量を測定することにより、防虫・虫よけ効果を有する体臭の有無が評価できることに辿り着くに至った。
【0058】
すなわち本発明は、被験物質を試験動物に経口摂取させて、その尿中の被験物質量を測定することによる経口投与虫よけ剤(成分)の新規スクリーニング方法にも関するものである。本スクリーニング方法においては、尿中の被験物質、すなわち尿の中に溶解している被験物質及び/又は尿から揮散する被験物質を測定する。なお、本実施例においては、尿から揮散する被験物質を測定した。
【0059】
尿から発散される被験物質の測定方法は特に限定されるものではなく、先ず、サンプルの抽出法としては、従来から用いられている溶媒抽出法や固相抽出法によるサンプル調整法のほか、固相マイクロ抽出法(Solid Phase Micro Extraction: SPME)が有利に使用でき、中でもSPMEをヘッドスペースで用いる方法(HS−SPME)は揮発性物質のサンプリングに特に好適である。
【0060】
SPMEは、シリンジの針に該当する部分に吸着剤がコーティングされており、ヘッドスペースガスを吸着させた後、ガスクロマトグラフ等測定機器で直接熱脱着させることができ、簡便でかつ再現性も高い。このように、SPMEはサンプリング、抽出、濃縮、そしてサンプル注入機能をたった一つの小器具に集約したものであり、溶媒を使うことなく行えるという特徴を有する。サンプル中の被験物質は抽出用ファイバーで直接抽出、濃縮することができ、非常に有用な器具であって、市販品が適宜使用可能である。
【0061】
上記したようにサンプルの抽出を行った後、成分の測定を行う。測定方法としては、ガスクロマトグラフィー(GC)、GC/マススペクトロメトリー(GC−MS)、水素イオン炎検出器−GC、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、キャピラリ電気泳動等常法が適宜使用される。SPME、HS−SPMEは、GCやGC/MS等GCとのコンビネーションで日常的に使用することができる。
【0062】
本実施例においては、マウス尿の分析は、HS−SPMEによって抽出したサンプルを水素イオン炎検出器−ガスクロマトグラフィーにて測定した。
【0063】
試験は次のようにして行った。先ず、 試験開始日の午後4時から5時に被験物質を経口投与した。2日目以降は午後5時前後に1日1回経口投与した。
【0064】
体臭物質として尿を採取した。ヘッドスペース固相マイクロ抽出法により検体を採取し、水素イオン炎検出器−ガスクロマトグラフィーによる化学分析法にて分析した。
【0065】
HS−SPME法は、20mlのヘッドスペース用バイアル瓶にサンプル10mlをとり、内部標準物質として0.1%シクロヘキサノール5μlを添加して35℃、10分間ヘッドスペース中の香気成分をSPMEファイバーに吸着させ、揮発成分量を測定した。詳細条件は次の通りである。
SPMEファイバー:スペルコ社 DVB/Carboxen/PDMS
分析装置:Hewlett Packard 5890(Restek Stabilwax column 装着)
分析条件:キャリアガス:ヘリウム; 流速:2.4ml/min; 気化室温度:230℃;
カラム温度:40℃で5分、その後、毎分5℃ずつ240℃まで上昇
【0066】
尿中の各成分は投与前値と投与後のピーク値を差し引くことによりピーク強度を求めた。
【0067】
(4)試験結果
得られた結果を
図1に示す。なお、値は1群5匹の平均値である。
図1より、リモネン、シトロネラール及びリナロールの摂取で防虫効果を有する体臭が実現できると認められた。しかし、同じ非芳香族モノテルペン化合物であっても、ゲラニオールの摂取では防虫効果を有する体臭が実現できるとは認められなかった。
【0068】
(試験例2)防虫効果試験2
(1)被験物質
リモネン、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シトラール、リナロール及びシトロネラールはシグマ−アルドリッチ社製のものを購入して使用した。これらの原液を精製水で50ppm、500ppm及び5000ppmの濃度に希釈したものを被験物質として使用した。投与液量はいずれの場合も0.2mL/被験動物となるようにした。
【0069】
(2)被験動物
吸血害虫として未吸血の雌蚊(ヒトスジシマカ)成虫を用い、被吸血動物としては皮膚が露出している動物(ヘアレスマウス雄性)を用いた。
【0070】
(3)試験方法
被験薬経口投与1時間後のヘアレスマウスを、ヒトスジシマカ未吸血雌成虫20匹が入った、ナイロンゴーズ袖付き透明アクリル製容器(300mm×300mm×300mm)に入れ、吸血飛来してマウスにとまった蚊の数を30秒ごとに5分間測定した[のべ降着数(被験薬投与)]。また、5分間に実際に吸血した蚊の数[のべ吸血数(被験薬投与)]を測定した。
なお、被験薬の効果比較のために被験薬を投与していない場合の[のべ降着数(非投与)]と実際の[のべ吸血数(非投与)]は被験薬ごとに測定した。
試験は24.2±1℃、55±3%RH(Relative Humidity:相対湿度)の条件下で行った。降着忌避率および吸血忌避率は以下の式で算出した。
【0071】
降着忌避率(%)=[1−のべ降着数(被験薬投与)/のべ降着数(非投与)]×100
吸血忌避率(%)=[1−のべ吸血数(被験薬投与)/のべ吸血数(非投与)]×100
【0072】
(4)試験結果
各被験薬の降着忌避率および吸血忌避率を表5及び表6に示す。数値は3回行った試験結果の平均値である。
表5より、シトラール及びリモネンはどの投与量(濃度)においても、蚊の延べ降着数、吸血数ともに忌避効果が認められ、特に、シトラールには優れた虫よけ作用が発現した。また、シトラール及びシトロネリルオキシアセトアルデヒドについては負の用量依存性が認められ、低用量であるほど優れた防虫効果を発現していることが認められた。一方、表6より、リナロール及びシトロネラールについては正の用量依存性が認められ、低用量(例えば、0.5mg/Kg程度)では逆に虫の誘引作用が認められた。
【0073】
(表5)
被験物質 濃度ppm 降着忌避率% 吸血忌避率%
―――――――――――――――――――――――――――――――
50 25.4 25.4
リモネン 500 25.9 20.1
5000 20.4 20.6
―――――――――――――――――――――――――――――――
シトロネリル 50 40.2 71.0
オキシアセト 500 −36.7 −1.3
アルデヒド 5000 −65.1 −32.8
―――――――――――――――――――――――――――――――
50 73.5 82.1
シトラール 500 61.0 69.6
5000 41.5 22.6
―――――――――――――――――――――――――――――――
【0074】
(表6)
被験物質 濃度ppm 降着忌避率% 吸血忌避率%
―――――――――――――――――――――――――――――――
50 −39.0 −9.4
リナロール 500 34.8 42.4
5000 20.6 35.7
―――――――――――――――――――――――――――――――
50 −20.8 6.3
シトロネラール 500 6.2 14.9
5000 28.9 31.6
―――――――――――――――――――――――――――――――