(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
このようなプレス装置には、粒子部材形成体に形成された粒子部材の頂部をプレスヘッドの下端平坦面で押圧して平坦化するコイニング装置がある。
【0003】
従来のコイニング装置として、特許文献1や特許文献2に示すように、下治具(下プレスヘッド)と上治具(上プレスヘッド)とを用いて、基板の厚さ方向にバンプの頂部に押
圧力を加えるものがある。
【0004】
図21に示すように、下プレスヘッド1上に基板2を載置して、上プレスヘッド3を下降させて、基板2上のバンプの頂部を押圧することになる。このため、下プレスヘッド1の上面と、上プレスヘッド3の下面との平行度が重要である。
【0005】
すなわち、上プレスヘッド3が下降してバンプの頂部を加圧する際に、上プレスヘッド3の下面に対して下プレスヘッド1の上面が傾斜している状態であれば、正確なコイニングを行うことができない。
【0006】
このため、従来においては、下プレスヘッド1の平行度出しを行う必要があった。この場合の調整は、作業者が手動調整を行うのが一般的であった。
【0007】
従来には、圧着ヘッドにより電子部品を基板に押圧してボンディングする電子部品のボンディング装置において、チルト機構を備えた圧着ヘッドを用い平行度のばらつきを吸収する方法が種々提案されている(特許文献3)。この特許文献3に記載のチルト機構としては、円弧面状の回動面を介して当接する固定ブロックと可動ブロックとで圧着ヘッドを構成するものである。
【0008】
また、コイニングを施す基板の大きさ種類に応じて下プレスヘッドを交換できるように設定される場合がある。この場合、
図22に示すような構造とするのが一般的である。すなわち、加熱体のヒータホルダ5の上面に嵌合孔6を設けるとともに、下プレスヘッド1の下面から嵌合ピン7を垂下する。そして、ヒータホルダ5の嵌合孔6に下プレスヘッド1の嵌合ピン7を嵌合させた状態で、ヒータホルダ5にねじ部材8を螺着することによって、このねじ部材8の先端縁を嵌合ピン7に当接させて、下プレスヘッド1をヒータホルダ5に固定することになる。
【0009】
ところで、近年、発光素子(例えば、LEDチップ)を用いた発光装置が種々提案されている。そして、実装基板上にチップを実装する方法として、ワイヤを用いるワイヤ・ボンディング法がある。このワイヤ・ボンディングによる実装方法は、
図19に示すように、発光素子172の電極173、174を上側とした状態で、基板170上の接着剤S2を介して接着する。その後、ボンディングワイヤ171、171によって基板170上の電極175、176とチップ172の電極173、174とを接続するものである。
【0010】
また、実装基板上にチップを実装する方法として、フリップチップ実装法がある。この実装法は、チップ表面と基板を電気的に接続する際に、ワイヤ・ボンディング法のいうワイヤをよって接続するのではなく、アレイ状に並んだ突起状の端子によって接続するものである。
【0011】
近年、異方性導電接着剤を用いたフリップチップ実装も提案されている(特許文献4および特許文献5)。ここで、異方性導電接着剤とは、絶縁性の高い接着剤中に導電性粒子を均一分散させたものである。異方性導電接着剤を用いたフリップチップ実装は、
図20に示すように、発光素子180の電極181、182を配線基板183側に向けた状態で、これら電極181、182と、配線基板183の電極184、185上に設けたバンプ186、187とを、異方性導電接着剤S1中の導電性粒子188によって電気的に接続するとともに、異方性導電接着剤S1中の絶縁性接着剤樹脂によって発光素子180を配線基板183上に接着する。
【0012】
フリップチップ実装は、ワイヤ・ボンディング法に比べて実装面積を小さくできる。また、配線が短いために電気的特性が良いという特徴もある。このため、小型、薄型に対する要求の強い携帯機器の回路や、電気的特性が重視される高周波回路などに向く。また、チップの熱を基板に伝えやすいため、発熱が問題になる発光ダイオードの実装にも使われている。I/Oをチップ全面に持つため、チップ面積を小さくすることが可能である。従来一般的だったワイヤ・ボンディングの場合はI/Oがチップ周辺部にあるため、必要なI/O数をそろえるためにチップ面積を大きくしなければならなかった。これに対して、フリップチップ実装では、ワイヤによる配線スペースが不要になるので、パッケージも小さくでき、さらには、電源雑音や配線のインダクタンス、抵抗による損失も低減できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
平行度出しを作業者が手動調整を行う場合、作業者による平行度のばらつきや作業時間にばらつき等があり、安定した平行度出しを短時間で行うことができず、安定したコイニング作業を行えないとともに、生産性に劣ることになっていた。
【0015】
特許文献3に記載のものでは、この圧着ヘッドに圧着ツールに付設し、この圧着ツールによって、電子部品を押圧する際の平行度にばらつきがあっても、可動ブロックの固定ブロックに対する相対変位を許容されることによってこのばらつきを吸収するものである。このため、このような機構にものをコイニング装置に適用しても、プレス前において、下プレスヘッドの平行度出だすことができない。
【0016】
図21に示すような構造でもって、下プレスヘッドを交換できるように設定した場合、下プレスヘッドの交換作業において、ねじ部材8を螺進退させる必要があり、ねじ部材8を螺進退させる場合、六角レンチ等の工具が必要で、作業性に劣るものであった。
【0017】
また、異方性導電接着剤を用いたフリップチップ実装では、未硬化の異方性導電接着剤上に発光素子(LEDチップ)180を載置し、熱圧着ヘッド(図示省略)によって発光素子180の発光側の面、すなわち、電極181、182が設けられた側と反対側の面に対して所定の圧力及び温度で加圧・加熱を行う。
【0018】
これにより、未硬化の異方性導電接着剤S1の絶縁性接着剤樹脂が硬化し、その接着力によって発光素子が配線基板上に接着固定される。
【0019】
また、この熱圧着工程において、基板183の電極184、185の端子部(バンプ)186、187と、発光素子180の電極181、182とに複数の導電性粒子188がそれぞれ接触して加圧され、その結果、発光素子180の一方の電極181と基板183の一方の端子部186、並びに、発光素子180の他方の電極182と基板183の他方の端子部187が、それぞれ電気的に接続される。
【0020】
その一方で、基板183の一方の端子部186及び発光素子180の一方の電極181と、基板183の他方の端子部187及び発光素子180の他方の電極182とは、異方性導電接着剤S1中の絶縁性接着剤樹脂によって互いに絶縁された状態になる。
【0021】
しかしながら、導電性粒子188には、
図18に示すように、粒径dのバラツキ(たとえば、5μm程度)がある。このため、従来の一般的なプレス装置で加圧すれば、発光素子の電極181、182と基板183の端子部186、187を、電気的に接続することができない導電性粒子188が生じるそれがある。また、異方性導電接着剤S1中の絶縁性接着剤樹脂を一定温度の加熱できないおそれもある。
【0022】
このため、異方性導電接着剤を用いたフリップチップ実装では、従来のプレス装置を使用すれば、安定した接触状態および導通状態とを得ることができない場合もあった。
【0023】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、高精度にバンプの頂部の安定した平坦化を行うことができ、高荷重対応を損ねることなくプレスヘッドの交換作業に容易に行いことができるプレス装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上プレスヘッドと、下プレスヘッドと、下プレスヘッドにて受けられた粒子部材形成体に形成される粒子部材を押圧するプレス装置であって、
下プレスヘッドは、上面に凹球面を有する下部材と、下面に前記下部材の凹球面に嵌合する凸球面を有する上部材と、上部材の凸球面と下部材の凹球面との間にエアを供給するエア供給・吸引機構と、上部材の外側から押圧して、下部材に対する上部材の位置を固定する固定機構とを有する倣い手段を備え、下部材の凹球面に上部材の凸球面を嵌合させてこれらの間にエアを供給した状態で、上プレスヘッドを下降させて、上プレスヘッドの下端平坦面にて上部材の上面平坦面を押圧して上プレスヘッドと下プレスヘッドとの平行出しを行い、この平行出し状態で凹球面と凸球面との間のエアの排出・吸引により上部材の下部材に対する位置固定を行い
、前記エア供給・吸引機構は、前記下部材の少なくとも凹球面形成部位が多孔質材料で構成され、この多孔質材料を介して凹球面と凸球面との間にエアを供給するものである。
【0025】
本発明のプレス装置によれば、下部材の凹球面に上部材の凸球面を嵌合させて、この凹球面と凸球面との間にエアを供給する。これによって、凹球面と凸球面との相対的ななめらかな摺動が可能となる。この状態で、上プレスヘッドを下降させて、上プレスヘッドの下端平坦面にて上部材の上面平坦面を押圧すれば、凹球面と凸球面との相対的な摺動によって、上プレスヘッドの下端平坦面と上部材の上面平坦面とが密着した状態となる。すなわち、上プレスヘッドと下プレスヘッドとの平行出しが行われる。このように、平行出しが行われた後は、凹球面と凸球面の間のエアの排出後、吸引保持することで、上部材は平行出しが行われた状態での位置固定が自動で行われる。
【0026】
下部材の少なくとも凹球面形成部位が大きな垂直荷重に耐えうる受け面積と厚みを有した多孔質材料で構成され、多孔質材料を介してエア供給・吸引機構にて凹球面と凸球面との間にエアを供給・吸引するように構成できる。多孔質材料は小さい気孔が無数にあいている材料であって、金属、セラミックス等がある。
【0027】
固定機構は、下部材側の固定部に装着されて、螺進退によって上部材に対してその外側から接近・離間する耐偏荷重用のねじ構造体にて構成され、このねじ構造体は周方向に沿って複数本が等配するのが好ましい。このように、固定機構がねじ構造体にて構成されれば、ねじ構造体のねじ部を螺進退させることによって、上部材の位置固定及び位置固定解除を行うことができる。よって、前記(段落0015)したように垂直耐荷重を向上させることと、この固定機構による偏荷重に耐えるようにすることで、前記(段落0014)した耐偏荷重性を補い、高荷重対応の自動倣い機能が実現できる。
【0028】
上プレスヘッドと、下プレスヘッドと、下プレスヘッドを加熱する加熱体とを備えたぷプレス装置であって、下プレスヘッドが加熱体上に載置された状態で下プレスヘッドと加熱体とがロックされるロック機構を備え、このロック機構は、ピン部材と、下プレスヘッドの時計回り又は反時計回りの係合方向の回動でピン部材が係合し、反係合方向の回動でその係合が解除される係合部材とからなるものであってもよい。
【0029】
このようなロック機構を備えたものでは、下プレスヘッドが加熱体上に載置された状態で下プレスヘッドを係合方向へ回動させることによって、ピン部材が係合部材に係合する。これによって、下プレスヘッドが加熱体にロックされた状態となる。また、このロック状態から下プレスヘッドを反係合方向へ回動させれば、このロック状態が解除される。このため、下プレスヘッドの交換作業を短時間かつ簡単に行うことができる。
【0030】
ピン部材が下プレスヘッド側に設けられるとともに、係合部材が加熱体側に設けられ、係合部材は、下プレスヘッドの係合方向の回動でピン部材が嵌入し、下プレスヘッドの反係合方向の回動でピン部材の嵌入が解除されるコの字体にて構成されるものであってもよい。
【0031】
係合部材には、下プレスヘッドの位置ずれを規制する規制部材が付設されるものであってもよい。このような規制部材を設けることによって、安定したプレス加工が可能となる。また、規制部材は、ピン部材が嵌入するコの字体嵌合部に突入するボールを有するボールプランジャにて構成することができる。
【0032】
このプレス装置は、粒子部材形成体に形成された粒子部材の頂部を上プレスヘッドの下端平坦面で押圧して平坦化するコイニングに用いることができる。
【0033】
また、プレス装置は、発光素子の電極と基板側電極との間に介在される粒子部材にて導通した状態で異方性導電接着剤を介して発光素子と基板側電極とを接着するフリップチップ実装に用いるものであってもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、上部材は平行出しが行われた状態での位置固定が行われるので、バンプの頂部の平坦化を高精度且つ高荷重で行える。しかも、この平行出し作業は、上プレスヘッドを下降させて、上プレスヘッドの下端平坦面と下部材の上面平坦面とを密着した後、固定機構にて固定すればいいので、作業性に優れ、短時間に下プレスヘッドの交換作業が可能である。
【0035】
下部材の少なくとも凹球面形成部位が多孔質材料で構成されたものでは、凹球面と凸球面の間のエア(圧縮空気)供給・吸引をすばやく確実に行うことができる。また、多孔質材質に十分な受け面積と厚みを有することで垂直耐加重が向上する。
【0036】
固定機構をねじ構造体にて構成した場合、上部材が外方からの押圧力付与によって固定されるので、下プレスヘッドの耐偏荷重を大きくすることができる。(例えば、30kNまでの荷重に対応することができる。)しかも、高荷重対応と短時間での平行出し作業が両立し、固定作業としてねじ構造体のねじ部を螺進する作業は既に倣い機構で吸引保持された下プレスヘッドに接触させる短時間での作業のみである為、交換作業を阻害しない。
【0037】
ロック機構を備えたものでは、下プレスヘッドの交換作業を短時間かつ簡単に行うことができ、品対交換を必要とする機種に最適となる。また、ロック機構が、ピン部材とコの字体とで構成されたものでは、その構造が単純で、低コスト化を図ることができる。また、規制部材が付設されるものでは、上プレスヘッドと下プレスヘッド密着後の上プレスヘッド上昇時の吸引作用による下プレスヘッドの位置ずれが規制され、安定したプレス動作が可能である。
【0038】
また、粒子部材の頂部の平坦化を安定して行うことができたので、この粒子部材が、異方性導電接着剤の導電性粒子であれば、導電性粒子の安定した平坦化が可能となって、発光素子の電極と基板側電極との間に介在される粒子部材にて安定した導通状態を構成することができる。多数のチップを一度に実装でき、作業性に優れ、加熱時の熱を基板側へ逃し易いとともに、発光素子(LEDチップ)の下方から出た光を反射させることができ、発光素子(LEDチップ)の発光効率の低下を防止することができる工法のプレス機を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は本発明のプレス装置の要部を示し、
図2はこのプレス装置の上プレスヘッド22としたプレスヘッド23とを示している。このプレス装置は、例えば、粒子部材形成体20(ICチップ、チップコンデンサ、チップ抵抗、あるいはこれらを搭載する基板等)の粒子部材21の頂部を平坦化するコイニングに用いる装置である。この実施形態において、粒子部材21をバンプ21と呼び、粒子部材形成体20をバンプ形成体と呼ぶ場合がある。
【0041】
プレス装置は、前記上プレスヘッド22と下プレスヘット23とを備え、さらに、
図3に示すように、上プレスヘッド22を上下動させる上下動機構25を備える。上下動機構25によって上プレスヘッド22を下降させて、バンプ形成体20に形成されたバンプ21の頂部をこの上プレスヘッド22の下端平坦面22aで押圧して平坦化する。
【0042】
また、このプレス装置は、上プレスヘッド22による押圧力を検出する水晶圧電式センサ26と、この水晶圧電式センサ26にて検出した押圧力に基づいて前記上下動機構25を制御する圧力制御アンプである圧力制御手段27とを備え、前記上下動機構を、駆動源を高応答性のサーボモータとするサーボプレス28にて構成したものである。
【0043】
水晶圧電式センサ26とは、水晶に力が加わり、結晶構造に変異があると圧電効果により電荷が発生する原理を用いたセンサであって、電荷は加わった力に正比例するものであって、この電荷を測定することによって圧力を検出するセンサである。サーボプレス28はサーボモータを駆動源として採用したプレス機械である。
【0044】
サーボプレス28は、サーボモータが内装された本体28aと、この本体28aから下方へ突出されるロッド(ボールねじ)28bとを備え、サーボモータの駆動によって、ロッド28bが上下動する。この際、圧力制御手段27にてサーボモータの駆動が制御される。すなわち、このサーボプレス28によって上プレスヘッド22が荷重制御される。
【0045】
そして、このロッド28bに、水晶圧電式センサ26を介して、上プレスヘッド22を加熱する加熱体30が付設され、この加熱体30に上プレスヘッド22が付設される。このため、サーボプレス28のロッド28bの上下動によって、上プレスヘッド22が上下動する。また、この上下動の際には、ガイド機構31によってガイドされ、上プレスヘッド22は安定した上下動が可能となっている。下プレスヘッド23にもこの下プレスヘッド23を加熱する加熱体29が付設される。各加熱体29、30は、加熱ヒータHが内装さて、図示省略の制御手段にて、オンオフ制御等にて加熱温度が制御される。
【0046】
ガイド機構31は、固定基板32に配置される複数本のスライドロッド33を備える。スライドロッド33は、固定基板32に設けられたスライドブッシュ34に挿通されている。なお、ガイド機構31は、そのスライドロッド33がサーボプレス28の本体28aの周囲に4本配設されている。すなわち、前側に2本と後側に2本配設されている。また前側の2本は、連結板35にてその上部が連結され、後側の2本も、連結板35にてその上部が連結されている。この配置により、加圧中心に対して対称的なガイド構成となり、軽量かつ高剛性な上下駆動機構を実現する。
【0047】
ところで、このプレス装置は、上プレスヘッド22とサーボプレス28との間に停止時の衝撃緩和用のばね手段37が設けられている。ばね手段37としては、例えば、皿ばね等からなり、水晶圧電式センサ26と、加熱体30の連結部36との間に配設される。また、連結板35と固定基板32との間に自重吊り上げ機構38を設けている。この自重吊り下げ機構38は、連結板35を上方に押し上げる弾性力を有するばね機構からなる。このため、上プレスヘッド22乃至加熱体30を吊り上げることができる。
【0048】
そのプレス装置の下プレスヘッド23には、倣い手段Mが設けられている。すなわち、下プレスヘッド23は、
図1と
図2に示すように、上面に凹球面42を有する下部材41と、下面に前記下部材41の凹球面42に嵌合する凸球面43を有する上部材44と、上部材44の凸球面43と下部材41の凹球面42との間にエアを供給・吸引するエア供給・吸引機構45と、上部材44の外側から押圧して、下部材41に対する上部材44の位置を固定する固定機構46とを有する。
【0049】
この場合、すくなくとも凹球面42の構成部位が、多孔質材料を介してエア供給・吸引機構45にて凹球面42と凸球面43との間にエアを供給・吸引するように構成できる。多孔質材料は小さい気孔が無数にあいている材料であって、金属、セラミックス等の種々のものがある。
【0050】
エア供給・吸引機構45は、エア供給源47と、このエア供給源47からの圧縮空気を下部材41に供給する供給通路48とを備える。すなわち、エア供給源47からの圧縮空気が供給通路48に供給され、多孔質材料を介して凹球面42と凸球面43との間にエアが供給・吸引される。
【0051】
このように、凹球面42と凸球面43との間にエアが供給されれば、凹球面42と凸球面43との間にすきまが形成され、これによって、下部材41に対する上部材44のチルトが許容される。
【0052】
また、凹球面42と凸球面43との間のエアを排出して、この間を負圧状態とすれば、上部材44のチルトが規制される。そして、この状態で、固定機構46にて上部材44をその姿勢を維持するように固定される。
【0053】
固定機構46として、
図1に示すように、螺進退によって上部材44に対してその外側から接近・離間するねじ構造体40にて構成される。すなわち、下部材41に固着された固定部56に、ねじ構造体40が螺着される。この場合、固定部56には取付片56aが設けられ、この取付片56aにその軸心が水平方向に延びるねじ孔49を有し、このねじ構造体40のねじ部材40aが螺合される。
【0054】
ねじ部材40aをねじ孔49に対して螺進させていけば、ねじ部材40aの先端面が上部材44の外周縁の当接端面44bに当接することになる。すなわち、上部材44の外周縁の当接端面44bを外側方からねじ部材40aによって保持されることになる。このねじ構造体40及び固定部56としては、上部材44の周方向に沿って所定ピッチで4個が配設されている。なお、配設ピッチや配置数は、ねじ部材40aの先端面にて上部材44の外周縁の当接端面44bを保持して、上部材44の位置姿勢を維持できるものであれば、任意に設定できるが、等配置するのが好ましい。
【0055】
次に、下部材41と上部材44とを備えた下プレスヘッド23の配置方法を説明する。下部材41の凹球面42に上部材の凸球面43を嵌合させた状態で、凹球面42と凸球面43との間にエアを供給する。すなわち、凹球面42と凸球面43との間に僅かな隙間を設け、上部材44を下部材41に対してチルト許容状態とする。この際には、固定機構46の固定は行わない。
【0056】
そして、このチルト許容状態で、上プレスヘッド22を下降させて、上プレスヘッド22の下端平坦面22aにて上部材44の上面平坦面44aを押圧して上プレスヘッド22と下プレスヘッド23との平行出しを行う。すなわち、上部材44がチルト許容状であるので、上プレスヘッド22の下端平坦面22aと上部材44の上面平坦面44aが密着する平行出しが行われる。
【0057】
この状態で、凹球面42と凸球面43との間を負圧状態とするとともに、固定機構46による上部材44の固定を行って、上プレスヘッド22を上昇させる。これによって、このプレス装置による平行出し作業が可能となる。
【0058】
次に、前記のように構成されたプレス装置によって、バンプ形成体20のバンプ21の頂部を平坦化する方法を説明する。
図2に示すように、下プレスヘッド23に、バンプ21が形成されたバンプ形成体20を載置固定する。この状態で、上プレスヘッド22をサーボプレス28を駆動することによって下降させて、下プレスヘッド23の下端平坦面22aにてバンプ21の頂部を押圧する。
【0059】
この際、水晶圧電式センサ26にて押圧力が検出され、この押圧力に基づいて圧力制御手段27にて、サーボプレス28の押圧力を制御して、バンプ21に対して最適な押圧力を付与するようにする。この押圧時には、上プレスヘッド22は加熱体30にて加熱され、下プレスヘッド23は、加熱体29にて加熱される。
【0060】
バンプ21に対して最適な押圧力を付与した後は、上プレスヘッド22を上昇させて、バンプ21から上プレスヘッド22を離間させる。これによって、バンプ21の頂部が平坦化され、平坦化後は、このプレス装置からバンプ21の頂部が平坦化されたバンプ形成体20を取り出すことによって、コイニング作業が終了する。
【0061】
前記プレス装置では、下部材41の凹球面42に上部材44の凸球面43を嵌合させて、この凹球面42と凸球面43との間にエアを供給する。これによって、凹球面42と凸球面43との相対的ななめらかな摺動が可能となる。この状態で、上プレスヘッド22を下降させて、上プレスヘッド22の下端平坦面22aにて上部材44の上面平坦面44aを押圧すれば、凹球面42と凸球面43との相対的な摺動によって、上プレスヘッド22の下端平坦面22aと上部材44の上面平坦面44aとが密着した状態となる。すなわち、上プレスヘッド22と下プレスヘッド23との平行出しが行われる。このように、平行出しが行われた後は、凹球面42と凸球面43の間のエアの排出・吸引を行うとともに、固定機構による上部材44の下部材41に対する位置固定を行えば、上部材44は平行出しが行われた状態での位置固定が行われる。このため、上部材44は平行出しが行われた状態での位置固定が行われるので、バンプ21の頂部の平坦化を高精度且つ高荷重で行える。しかも、この平行出し作業は、下プレスヘッド23を下降させて、上プレスヘッド22の下端平坦面22aと上部材44の上面平坦面44aとを密着させて固定機構46にて固定すればいいので、作業性に優れ、短時間に下プレスヘッド23の交換作業が可能である。
【0062】
下部材41の少なくとも凹球面形成部位が多孔質材料で構成されているので、凹球面42と凸球面43の間のエア(圧縮空気)供給・吸引をすばやく確実に行うことができる。
【0063】
固定機構46をねじ構造体40にて構成しているので、上部材44が外方からの押圧力付与によって固定されるので、下プレスヘッド23の耐荷重を大きくすることができる。しかも、固定作業としてねじ構造体のねじ部を螺進すればよく、作業性に優れる。
【0064】
また、幅広い範囲で高精度な圧力測定が可能な水晶圧電式センサ26と、加工に最適な荷重制御が可能なサーボプレス28とを利用して、低圧から高圧までの広範囲(例えば、30kgf〜3000kg)のプレスを可能とでき、種々のバンプ形成体20に対応できる。しかも、荷重制御を高速かつ高精度に行うことができ、安定してバンプ21の頂部の平坦化を高い生産能力で達成できる。
【0065】
衝撃緩和用のばね手段37を配設することによって、上プレスヘッド22を下降させてバンプ形成体20にバンプ21を押圧する際、サーボプレス内部に持つギャップ分のイナーシャに起因する荷重オーバーシュートを防止でき、特に、低圧時の高精度加圧を可能とする。また、自重吊り上げ機構38によって、上下駆動機構の自重影響による荷重によるオーバーシュートの緩和が可能となり、精度のいい加圧を高速で行うことができる。
【0066】
ところで、
図4〜
図6に示すように、下プレスヘッド23が加熱体(ヒータホルダ)29上に載置された状態で下プレスヘッド23と加熱体29とがロックされるロック機構Rを備えものであってもよい。
【0067】
ロック機構Rは、下プレスヘッド23の相対向する側面からそれぞれ突出されたピン部材71a、71bと、下プレスヘッド23の時計回り又は反時計回りの係合方向の回動でピン部材71a、71bが係合し、反係合方向の回動でその係合が解除される係合部材72a、72bとを備える。この実施形態では、
図6に示すように、矢印C1方向である時計周り方向が係合方向であり、矢印C2方向である反時計周り方向が係合が解除される方向である。
【0068】
一方の係合部材72aは、
図4と
図5(a)に示すように、矢印A方向に開口したコの字体からなり、ヒータホルダ29側に固定され、他方の係合部材72bは、
図4と
図5(b)に示すように、矢印B方向に開口したコの字体からなり、ヒータホルダ29側に固定される。
【0069】
また、各係合部材72a、72bには、下プレスヘッド23の位置ずれを規制する規制部材73a、73bが付設されている。規制部材73a、73bとしては、ピン部材71a、71bが嵌入するコの字体嵌合部74、74に突入するボール75を有するボールプランジャ76にて構成することができる。
図7に示すように、ボールプランジャ76は、その外周面に雄ねじ部が形成された本体部76aと、この本体部76a内に収容されるスプリング(図示省略)と、この本体部76aの先端開口部に配置されるボール75とを備え、ボール75はスプリングの弾性力にて先端側へ押圧されて、自由状態で、先端開口部から所定量だけ突出した状態となっている。
【0070】
そして、係合部材72a、72bの上壁にねじ穴77が設けられ、このねじ穴77にボールプランジャ76の本体部76aの雄ねじ部が螺着される。このため、ピン部材71a、71bが係合部材72a、72bのコの字体嵌合部74、74に侵入してきた際には、ピン部材71a、71bの侵入によって、ボール75が本体部76a内へ引っ込み、このピン部材71a、71bの侵入を許容し、ピン部材71a、71bがこのボール75を超えてコの字体嵌合部74、74の奥側へ入った場合、ピン部材71a、71bによるボール75の押し込み力が解除され、ボール75が本体部の先端開口部から突出した状態となる。これによって、コの字体嵌合部74、74からのピン部材71a、71bの抜けを規制できる。
【0071】
次に、このロック機構Rによるとロックとロック解除の方法を説明する。この場合、例えば、
図8に示すように、ヒータホルダ29の上面中央部からピン80が突出され、下プレスヘッド23の下面中央部には、穴部81が設けられている。このため、ヒータホルダ29のピン80を下プレスヘッド23の穴部81に嵌合させる。この嵌合状態では、
図6(b)に示すように、一方のピン部材71aを、一方の係合部材72aの開口部に対向させるとともに、他方のピン部材71bを、他方の係合部材72bの開口部に対向させる。
【0072】
この状態で、下プレスヘッド23をピン80を中心に矢印C1方向に回動させる。この場合、ピン部材71aが係合部材72aの開口部の対向し、かつ、ピン部材71bが係合部材72bの開口部に対向しているので、ピン部材71aが係合部材72aのコの字体嵌合部74に嵌入するとともに、ピン部材71bが係合部材72bのコの字体嵌合部74に嵌入していく。そして、この嵌入によって、各ボールプランジャ76の各ボール75が各ピン部材71a、71bに押圧されて、本体部76aに押し込まれ、各ピン部材71a、71bのコの字体嵌合部74奥への嵌入が許容される。
【0073】
各ピン部材71a、71bが各ボール75を超えれば、ボール75への押圧力が解除され、ボール75がコの字体嵌合部74内に突入して、
図7に示す状態となる。これによって、下プレスヘッド23をピン80を中心に矢印C1方向とは逆方向の矢印C2への回動力を付与しない限り、各ピン部材71a、71bのコの字体嵌合部74からの抜けを規制する。しかしながら、下プレスヘッド23をピン80を中心に矢印C2への回動力を付与すれば、各ボールプランジャ76の各ボール75が各ピン部材71a、71bに押圧されて、本体部76aに押し込まれ、各ピン部材71a、71bのコの字体嵌合部74からの脱出が許容される。
【0074】
このようなロック機構Rを備えたものでは、下プレスヘッド23が加熱体29上に載置された状態で下プレスヘッド23を係合方向へ回動させることによって、ピン部材71a、71bが係合部材72a、72bに係合する。これによって、下プレスヘッド23が加熱体にロックされた状態となる。また、このロック状態から下プレスヘッド23を反係合方向へ回動させれば、このロック状態が解除される。このため、下プレスヘッド23の交換作業を短時間かつ簡単に行うことができ、品対交換を必要とする機種に最適となる。また、ロック機構Rが、ピン部材71a、71bと係合部材72a、72bとで構成されたものでは、その構造が単純で、低コスト化を図ることができる。また、規制部材73a、73bが付設されるものでは、上プレスヘッド22と下プレスヘッド23との密着後の上プレスヘッド22上昇時の吸引作用による下プレスヘッド23の位置ずれが規制され、安定したプレス動作が可能である。
【0075】
図9に示すプレス装置は、バンプ形成体20と前記上プレスヘッド22の下端平坦面22aとの間の位置関係を把握する位置把握手段59を備えている。位置把握手段59は、
図10に示すように、バンプ形成体20の厚さを検出するレーザ変位センサ57等を備える。
【0076】
レーザ変位センサ57は、三角測量を応用した方式で、発光素子と受光素子の組み合わせで構成される。発光素子からのレーザ光が測定対象物に照射され、対象物から反射された光線を受光素子上にスポットを結ぶ。この対象物が移動するごとにスポットも移動するので、そのスポットの位置を検出することで対象物までの変位量を知ることができる。
【0077】
この場合、
図10に示すように、バンプ形成体20の複数の点で厚さを図る多点高さ測定を行い、それらの測定値が制御部58に送信される。制御部58では、この測定値等を用いて、プレスヘッド22の下端平坦面22aとの間の位置関係を把握することができる。
【0078】
すなわち、
図11に示すように、バンプ形成体20の厚さ寸法をT1とし、プレスによって押し潰されるバンプ21の平坦面高さをT2とし、プレス前の上プレスヘッド22の下端平坦面22aから下プレスヘッド23の上面23aまでの高さをH1とし、上プレスヘッド22の下端平坦面22aからバンプ21に接触するまでの寸法H2とし、バンプ21に接触してからの上プレスヘット22の移動距離(押し潰し量)をH3としたときに、この押し潰し量H3は、[H1−(T1+T2)]−H2で表される。このため、バンプ21の押し潰し量H3を算出することができる。よって位置制御によるコイニングが可能となる。
【0079】
次に、前記のように構成されたプレス装置よって、バンプ形成体20のバンプ21の頂部を平坦化する方法を説明する。
図11に示すように、下プレスヘッド23に、バンプ21が形成されたバンプ形成体20を載置固定する。この状態で、上プレスヘッド22をサーボプレス28を駆動することによって下降させて、下プレスヘッド23の下端平坦面22aにてバンプ21の頂部を押圧する。
【0080】
この際、押圧力が検出され、この押圧力に基づいて圧力制御手段27にて、サーボプレス28の押圧力を制御して、バンプ21に対して最適な押圧力(荷重)を付与するようにすると共に、前記位置把握手段59を用いてバンプ21の押し潰し量H3を算出する。この押圧時には、上プレスヘッド22は加熱体30にて加熱され、下プレスヘッド23は、加熱体29にて加熱される。
【0081】
この際、プレス荷重(押圧力)と、上プレスヘッド22のバンプ押し込み量とを
図4に示すように、対比させることができる。すなわち、荷重(上プレスヘッド22の押圧力)と位置変位(上プレスヘッド22の下端平坦面の高さ位置)との相関関係の把握が可能となる。
【0082】
これによって、上プレスヘッド22の材質や温度影響によるコイニング時の上プレスヘッド22の押し込み量の変化把握が可能となる。このため、本発明では、
図12の実線で示すように、上プレスヘッド22の材質や温度影響に関係なく、実線で示すように、押し込み量が一定となるように設定できる。通常は、仮想線で示すように、同じプレス荷重であっても押し込み量がtだけ変位している。本発明では、このように、荷重制御であっても、位置の把握の数値的に可能となり、製品毎に適性な荷重と速度設定を可能とする。
【0083】
このプレスが終了すれば、上プレスヘッド22を上昇させて、バンプ21から上プレスヘッド22を離間させる。これによって、バンプ21の頂部が平坦化され、平坦化後は、このプレス装置からバンプ21の頂部が平坦化されたバンプ形成体20を取り出すことによって、コイニング作業が終了する。
【0084】
このプレス装置を用いれば、荷重と位置変位との相関関係の把握が可能となり、バンプ形成体プレス時の正確な情報に基づく適正な速度設定を可能とすることで、バンプ形成体20の頂部の高精度の平坦化が可能となる。また、位置の基準データを取得することによって、位置制御による平坦化が可能となる。
【0085】
また、位置把握手段の位置把握の基準データは、プレス前のバンプ形成体の厚さ寸法をレーザ変位センサ等を用いることで、位置制御による平坦化が可能となる。
【0086】
ところで、このプレス装置では、
図13と
図14に示すように、上プレスヘッド22と加熱体30とを連結手段Sにて連結されるものである。この場合の連結手段Sは、くさび部材90と、このくさび部材90を上プレスヘッド22側へ押圧して上プレスヘッド22を加熱体30側へ押し上げる押圧機構91とを備える。
【0087】
くさび部材90は、本体ブロック部90aと、この本体ブロック部90aの下部から連設されたくさび部90bとからなる。なお、このくさび部材90が断熱材92にて被覆されている。また、上プレスヘッド22は、下端平坦面22aを有する本体93と、この本体93を支持する基盤部94とからなり、この基盤部94をくさび部材90を介して、加熱体30に押し付けている。
【0088】
この場合、基盤部94には、
図14に示すようなくさび嵌合用の切欠部95が設けられ、この切欠部95にくさび部材90のくさび部90bが嵌入する。このくさび部90bは、その上面96が凹曲面乃至基端側から先端側に下端側へ傾斜するテーパ面となっており、押圧機構91にて矢印D方向に押し圧され、その上面96が切欠部95の外端縁95aに当接している。これによって、上プレスヘッド22が矢印Eのように、加熱体30側へ押し上げられ、加熱体30に上プレスヘッド22に密着する。なお、この連結手段S(くさび部材90と押圧機構91)は、例えば、周方向に沿って90度ピッチで配置される。
【0089】
押圧機構91は、この場合、シリンダ機構にて構成している。すなわち、加熱体30側に固定されるシリンダ本体91aと、このシリンダ本体91aから延びるロッド91bとからなり、ロッド91bがくさび部材90に連結されている。
【0090】
連結手段Sを備えたものでは、上プレスヘッド22の加熱体30への着脱作業において、ねじ部材の螺進退作業を行うことなく、いわゆるワンタッチに行うことができ、作業性に優れる。しかも、上プレスヘッド22の装着状態では、加熱体30に均等に配設されたヒータと、上プレスヘッドに比べて十分に大きなサイズの加熱体とすることで、上プレスヘッド22が均一に加熱され、熱膨張が均一に生じる。また、上プレスヘッド22が熱膨張した際も、このくさび形のホルダーによって上プレスヘッド22が加熱体30に常時密着し、熱伝導は妨げられない。結果として上プレスヘッド22が加熱体に押し上げられるものであり、上プレスヘッド22のプレス面である下端平坦面22aの平面度を維持でき、バンプ21の頭部の高精度の平坦化を行うことができる。
【0091】
くさび部材90と押圧機構91との間には断熱材92が配設されるので、加熱する必要のない連結手段Sを加熱を防止でき、連結手段Sの加熱による劣化損傷を防止できる。
【0092】
また、
図15に示すプレス装置では、バンプ形成体20に対して上方側からエアを吹き付けてこのバンプ形成体20を下プレスヘッド側に残すエアブロー手段50を備えている。
【0093】
エアブロー手段50は、エア供給源としての図示省略のコンプレッサと、このコンプレッサからの圧縮空気を供給されるエアブロー通路51とを備える。エアブロー通路51は、加熱体30等に付設されるブロック体52に形成される。すなわち、ブロック体52にコンプレッサから配管が接続される継手53が設けられ、エアブロー通路51に継手53を介してコンプレッサからの圧縮空気が供給される。また、エアブロー通路51には、バンプ形成体20の外縁部に対してエアを吹き付けるためのエア噴出口55が設けられている。
【0094】
このため、図示省略のコンプレッサからの圧縮空気がエアブロー通路51に供給され、このエアブロー通路51のエア噴出口55から噴射される。これによって、バンプ形成体20の外縁部に対して直接的にエアをブローすることができる。このようにエアブローされれば、プレス後において、上プレスヘッドを上昇させた際に、この上プレスヘッドの上昇にともなったバンプ形成体の上昇を有効に防止できる。
【0095】
これに対して、
図16(a)(b)に示すように、エアブローを用いないで、プレス後におけるバンプ形成体20の持ち上がりを規制する手段がある。この場合、バンプ形成体20を押圧する押圧子(ノックアウトピン)60と、この押圧子60を保持する保持体61と、この保持体61を下方へ押圧する押圧機構62とを備える。押圧機構62は加熱体30側の支持体63に設けられてガイドブッシュ64と、このガイドブッシュ64に挿通されて保持体61に連設されるガイドロッド65と、ガイドロッド65を下方へ弾性的に押圧する弾性部材66とを備える。
【0096】
このため、ノックアウトピン60にてバンプ形成体20を押圧することになって、バンプ形成体20を上プレスヘッド22から離間させることができる。しかしながら、この場合、ノックアウトピン60にてバンプ形成体20を押圧するので、バンプ形成体20に打痕が発生するおそれがある。また、このような機構では、図例のように、ノックアウトピン60の上下動をガイドするガイド機構等を別途の設ける場合、いわゆる品対交換が必要となる。さらに、近年のバンプ等のサイズ拡大化によるノックアウトピンの配置スペースの減少化、およびバンプ周囲の接触禁止エリアを有する基板に対応できない。
【0097】
これに対して、
図15に示すように、エアブロー手段50のエアは当たるものであって、部材が直接当たるものではないので、バンプ形成体の損傷等を有効に防止できる。
【0098】
ところで、
図17は、異方性導電接着剤を用いたフリップチップ実装方法で形成された発光装置を示している。この発光装置は、基板153上に異方性導電接着剤S1を介して発光素子150が接続されるものであって、発光素子150の電極151、152を基板153側に向けた状態で、これら電極151、152と、基板153の電極154とを、異方性導電接着剤S1中の粒子部材21としての導電性粒子158によって電気的に接続するものである。なお、発光素子150としては、例えば、LEDチップである。
【0099】
異方性導電接着剤S1の接着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等で構成できる。この場合、透明性、接着性、耐熱性、機械強度、電気絶縁性等の観点からエポキシ樹脂が好適である。また、導電性粒子158としては、金、銀、ニッケル、銅、パタジウム、これらの合金にて構成できる。さらに、合成樹脂からなる球状粒子の外周面に各種メッキ(ニッケルメッキや金フラッシュメッキ等)を施したものであってもよい。
【0100】
次に、前記
図3に示すプレス装置を用いて、
図17に示す発光装置の実装方法を説明する。基板153の電極154と、発光素子150の電極151、152とを、対向する方向に配置した状態で、基板153の電極154と発光素子150の電極151、152とを覆うように、未硬化のペースト状の異方性導電接着剤S1を配置する。すなわち、基板153上に異方性導電接着剤S1を介して発光素子150が載置されてなるワークを形成する。なお、ワークのチップ数としては、1個の場合もあるが、通常、多数個である。
【0101】
そして、そのワークを、プレス装置の下プレスヘッド23上に載置固定する。この状態で、上プレスヘッド22をサーボプレス28を駆動することによって下降させて、下プレスヘッド23の下端平坦面22aにて発光素子150を押圧する。
【0102】
この際、発光素子(LEDチップ)150と上プレスヘッド22との間に、緩衝材149(
図17参照)を介在させるのが好ましい。緩衝材149としては、耐熱性および衝撃緩和性等に優れた材質のシート体からなる。例えば、テフロン(登録商標)シート等にて構成できる。緩衝材149を用いれば、プレス時のLEDチップ150への衝撃を緩和できるとともに、LEDチップ150のバラツキを吸収でき、さらには、プレス後に、上プレスヘッド22を上昇させる際の上プレスヘッド22へのチップ150の付着を防止できる。
【0103】
この際、水晶圧電式センサ26にて押圧力が検出され、この押圧力に基づいて圧力制御手段27にて、サーボプレス28の押圧力を制御して、導電性粒子158に対して最適な押圧力を付与するようにする。この押圧時には、上プレスヘッド22は加熱体30にて加熱され、下プレスヘッド23は、加熱体29にて加熱される。
【0104】
このため、本発明のプレス装置を、異方性導電接着剤を用いたフリップチップ実装に用いれば、精密荷重制御が可能となって、基板153の電極154と、発光素子(LEDチップ)150の電極151、152とを導電性粒子158を介して安定した接続状態を構成できる。これによって、過剰な加圧を防止でき、LEDチップ150の損傷等を有効に防止できる。特に、前記したように、緩衝材149を用いると、LEDチップ150の損傷等の防止により効果的である。
【0105】
また、
図1に示すような倣い手段Mを備えたものでは、上部材44は平行出しが行われた状態での位置固定が行われるので、導電性粒子158の頂部の平坦化を高精度且つ高荷重で行える。
【0106】
しかも、一定温度の付与が可能となって、異方性導電接着剤の均一の硬化が可能となり、接着性および作業性に優れることになる。また、多数のチップを一度に実装でき、作業性に優れ、加熱時の熱を基板側へ逃し易いとともに、LEDチップ150の下方から出た光L(
図17参照)を反射させることができ、LEDチップ150の発光効率の低下を防止することができる工法のプレス機を提供できる。さらに、前記
図4から
図16に示すプレス装置も使用できるので、これらの装置の作用効果が発揮される。なお、
図9に示すプレス装置を使用する場合、前記位置把握手段26は、発光素子(LEDチップ)150の肉厚を考慮した位置把握となる。
【0107】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、プレス装置として、前記実施形態では、上プレスヘッド22と下プレスヘッド23とを一対備えたものであったが、上プレスヘッド22と下プレスヘッド23とを複数対備えたものであってもよい。この場合、各上プレスヘッド22に対応してサーボプレス28等が配置される。
【0108】
前記実施形態では、多孔質材料を介して凹球面42と凸球面43との間にエアが供給・吸引されるものであり、凹球面42を構成部位のみを多孔質材料としたが、下部材全体を多孔質材料としてもよい。また、多孔質材料を介することなく、凹球面42と凸球面43との間に開口するエアブロー通路を下部材に設け、このエアブロー通路を介してエアを供給するようにしてもよい。また、固定機構46のねじ構造体40の数としても、上部材44の平行出しを行った後、この状態を維持しつつプレス動作が可能な範囲で任意に設定できる。
【0109】
図8等において、ヒータホルダ29の上面中央部からピン80が突出され、下プレスヘッド23の下面中央部には、穴部81が設けられていたが、逆に、下プレスヘッド23の下面中央部にピンが垂下され、ヒータホルダ29の上面中央部にこのピンが嵌合する穴部が設けられたものであってもよい。ロック機構Rとして、前記実施形態では、係合方向の回転として時計廻りであったが、係合方向の回転として反時計廻りであってもよい。すなわち、一方の係合部材72aの開口部を矢印Aと反対の方向に開口するともに、他方の係合部材72bの開口部を矢印Bと反対の方向に開口するようにすればよい。
【0110】
エアブロー手段50のエア噴出口55の数、口径、配設ピッチ等は、上プレスヘッド22を上昇させた際に、この上プレスヘッド22の上昇にともなったバンプ形成体20の上昇を有効に防止できる範囲で、任意に設定できる。
【0111】
ところで、プレス加工するものとして精密加圧加熱装置がある。この精密加圧加熱装置(精密ホットプレス)は、上下の定盤の間にシート状のワークをセットして、加熱した定盤をサーボモータ駆動のリニアアクチュエータ等により所定のプロファイルで押付けてワークを熱圧着させたり、板状の金型を一緒に挟んで熱転写成型したりするものである。これに対して、
図3に示すプレス装置は、近年提案されている精密加圧加熱装置(精密ホットプレス)以上の能力(高速性及び高精度性)を有しているので、先端ツール等を変更することによって、この種の精密加圧加熱装置や他の装置に使用可能である。
【0112】
また、フリップチップ実装に用いる異方性導電接着剤S1の粒子部材21としての導電性粒子158の粒径および配設数等は、実装される発光素子150に応じて種々のものを用いることができ、異方性導電接着剤S1の絶縁性接着剤樹脂としても、実装される発光素子に応じて種々のものを用いることができる。