特許第5730989号(P5730989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5730989超臨界二酸化炭素の抽出を利用した植物からのオメガ脂肪酸含有抽出物の製造方法
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  • 特許5730989-超臨界二酸化炭素の抽出を利用した植物からのオメガ脂肪酸含有抽出物の製造方法 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730989
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】超臨界二酸化炭素の抽出を利用した植物からのオメガ脂肪酸含有抽出物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/00 20060101AFI20150521BHJP
   A61K 36/18 20060101ALI20150521BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20150521BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20150521BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20150521BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20150521BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20150521BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20150521BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20150521BHJP
   C11B 1/10 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   A61K35/78 X
   A61K35/78 C
   A61K35/78 Q
   A61K35/78 Y
   A61K31/202
   A61P25/28
   A61P7/02
   A61P9/10
   A61P9/10 101
   A61P9/12
   A61P3/06
   C11B1/10
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-508988(P2013-508988)
(86)(22)【出願日】2011年5月3日
(65)【公表番号】特表2013-527852(P2013-527852A)
(43)【公表日】2013年7月4日
(86)【国際出願番号】KR2011003294
(87)【国際公開番号】WO2011139067
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2012年11月5日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0041688
(32)【優先日】2010年5月4日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505448855
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF BIOSCIENCE AND BIOTECHNOLOGY
(73)【特許権者】
【識別番号】512286233
【氏名又は名称】エムエヌエフ コリア カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォ,チョル グ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ドク ソン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョ ナム
(72)【発明者】
【氏名】イ,ゾン スーン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ファン ヨン
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−229996(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/015284(WO,A1)
【文献】 特表2008−538917(JP,A)
【文献】 特開平02−243622(JP,A)
【文献】 特開昭63−116643(JP,A)
【文献】 特開平09−202891(JP,A)
【文献】 特開平06−009985(JP,A)
【文献】 特表2010−510208(JP,A)
【文献】 Supercritical-CO2 fluid extraction of fatty oils from perilla frutescens seeds,Zhongguo Yiyao Gongye Zazhi,1996年,vol.27,No.2,p.51-53
【文献】 Omara-Alwala, Thomas R. et al,Omega-three fatty acids in purslane (Portulaca oleracea) tissues,Journal of the American Oil Chemists' Society,1991年,vol.68,No3,p.198-199
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00 −36/9068
A61K 31/202
A61P 3/06
A61P 7/02
A61P 9/10
A61P 9/12
A61P 25/28
C11B 1/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)スベリヒユ又はエゴマを凍結乾燥させて粉末として製造する工程と、
b)前記製造されたスベリヒユ又はエゴマ粉末から超臨界二酸化炭素を溶媒として使用し、20〜70℃の温度及び150〜350barの圧力でオメガ脂肪酸を抽出する工程を含むスベリヒユ又はエゴマからのオメガ−脂肪酸含有の抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記b)工程で、40〜60℃の温度及び200〜300barの圧力でオメガ脂肪酸を抽出することを特徴とする請求項1に記載のオメガ−脂肪酸含有の抽出物の製造方法。
【請求項3】
前記b)工程で、50〜60℃の温度及び230〜270barの圧力でオメガ脂肪酸を抽出することを特徴とする請求項2に記載のオメガ−脂肪酸含有の抽出物の製造方法。
【請求項4】
前記オメガ脂肪酸は、オメガ−3脂肪酸、オメガ−6脂肪酸及びオメガ−9脂肪酸からなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載のオメガ−脂肪酸含有の抽出物の製造方法。
【請求項5】
前記オメガ−3脂肪酸は、DHA(docosahexaenoic acid)、EPA(eicosapentaenoic acid)、DPA(docosapentaenoic acid)、リノレン酸(linolenic acid)、SDA(stearidonic acid)及びETA(eicosatetraenoic acid)からなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項4に記載のオメガ−脂肪酸含有の抽出物の製造方法。
【請求項6】
前記b)工程で、補助溶媒をさらに使用し、補助溶媒は、エタノール、イソプロパノール、エチルアセテートまたはテトラヒドロフランであることを特徴とする請求項1に記載のオメガ−脂肪酸含有の抽出物の製造方法。
【請求項7】
a)スベリヒユ又はエゴマを凍結乾燥させて粉末として製造する工程と、
b)前記製造されたスベリヒユ又はエゴマ粉末から超臨界二酸化炭素を溶媒として使用し、40〜50℃の温度及び220〜280barの圧力でDHAを抽出する工程と、を含むスベリヒユ又はエゴマからのDHA含有抽出物の製造方法。
【請求項8】
a)スベリヒユ又はエゴマを凍結乾燥させて粉末として製造する工程と、
b)前記製造されたスベリヒユ又はエゴマ粉末から超臨界二酸化炭素を溶媒として使用し、15〜25℃の温度及び120〜160barの圧力でリノレン酸を抽出する工程と、を含むことを特徴とするスベリヒユ又はエゴマからのリノレン酸含有抽出物の製造方法。
【請求項9】
a)スベリヒユを凍結乾燥させて粉末として製造する工程と、
b)前記製造されたスベリヒユ粉末から超臨界二酸化炭素を溶媒として使用し、50〜60℃の温度及び230〜270barの圧力でオメガ−3脂肪酸を抽出する工程と、を含むことを特徴とするスベリヒユからのオメガ−3脂肪酸含有の抽出物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オメガ脂肪酸を含む植物を乾燥させて粉末として製造する工程と、前記製造された植物粉末から超臨界二酸化炭素を溶媒として使用し、最適の温度及び最適の圧力でオメガ脂肪酸を抽出する工程とを含むオメガ脂肪酸含有の植物からのオメガ脂肪酸含有の抽出物の製造方法、前記方法によって抽出された植物由来のオメガ脂肪酸を含む健康機能食品及びコレステロール低下用薬学組成物、及び一定量以上のオメガ−3脂肪酸を含むオメガ脂肪酸含有の植物抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
スベリヒユ(Portulaca oleracea L.)は、一年生植物であって、五行草、長命菜、馬歯菜などとも呼ばれ、主に道の端、野菜畑、空地でよく見られる食用可能な多肉質の植物である。スベリヒユは、全世界的に分布するが、韓国では、柔らかい部分を夏に煮え湯でゆでて乾燥させて、冬季に和え物として食べる。民間療法では、解毒剤、防腐剤、抗壊血病製剤、鎮痙剤、利尿剤、駆虫剤、皮膚鎮静剤としても使用され、その外の筋弛緩活性、抗菌、抗癌及び抗酸化効果についても報告されている。スベリヒユの成分としては、L−ノルアドレナリン、ドーパミン、ドーパと、多様な種類の有機酸、アミノ酸、テルペン配糖体(portuloside A)が知られており、リノレン酸(linolenic acid)のようなオメガ−3脂肪酸の含量が高いことが報告されている。
【0003】
エゴマは、韓国、中国、日本などのアジア諸国で栽培されている一年生草本植物であって、多様な有効成分が含まれており、医薬作物、油脂作物及び葉菜として使用されている。すなわち、エゴマの種実には、オメガ−3系の脂肪酸であるα−リノレン酸が多量含まれており、頭脳活動及び高血圧、アレルギー性の疾患などの成人病を引き起こすエイコサノイド合成を抑制し、学習能力の向上及び寿命延長効果などの生体調節機能を有するものとして知られている。種実は、丸のままではエゴマのお茶や製菓用として利用されており、種実から抽出したオイルは、食用、薬剤添加用、工業用として利用されている。
【0004】
このような成分及び効能を有するエゴマやスベリヒユを活用して高付加価値を創出することができる方法がいまだになく、エゴマ及びスベリヒユ資源を大量で活用可能な技術への開発が非常に必要な実情にある。
【0005】
オメガ−3脂肪酸とは、主に青物に多量含まれている不飽和脂肪酸であって、EPA(eicosapentaenoic acid)、DHA(docosahexaenoic acid)、リノレン酸などがこれに属する。オメガ−3脂肪酸は、体内では合成されないため、食べ物から取らなければならない。DHAは、脳細胞の主要な成分であって、脳細胞膜の脂質の約10%を占めている脳細胞活動に必ず必要な情報伝達、エネルギー代謝、タンパク質の合成、記憶、学習能力を助け、脳障害を予防する重要な役割を行う。また、血小板の凝集を抑制し、血液凝固時間を延ばして血栓の生成を防止することで、脳卒中、心臓病、動脈硬化、高血圧などの循環系疾病の予防に効果的である。また、すべてのDHAは、血中のコレステロール及び中性脂肪の数値を低めて血栓を防止し、血管を健康にして血液循環を円滑にし、高血圧、動脈硬化などの心血管疾患を予防することが報告されている。また、オメガ−3は、悪玉コレステロールであるLDL(low−density lipoproteins)の数値を低め、善玉コレステロールであるHDL(high−density lipoproteins)の数値を高めるのに寄与することが知られている。
【0006】
従来の抽出・精製法は、その濃縮物の抽出量は多いが、抽出物内にその他の不要な成分が同時に抽出され、人体に有害な各種の有機溶媒を使用することから、目的とする抽出物に残留溶媒が残る確率が高い。また、使用される有機溶媒の量が多すぎることから、コスト及び環境公害の側面から多くの問題点を有する。
【0007】
超臨界流体抽出技術(Supercritical fluid extraction technology)は、臨界温度及び臨界圧力以上の流体を使用する技術であって、医薬品、食品加工及び石油化学物質の精製などの抽出・精製関連の分野で従来の工程を取り替え可能な環境にやさしい新しい清浄技術として注目を集めている。特に、近来、エネルギー資源のコスト上昇、伝統的な分離工程が有する環境弊害、気体や液体工程で製造できない特殊な目的を有する新素材に対する需要の伸張などの理由により、各先進国では過去約30年間、伝統的な工程で気体や液体を使用する概念から外れて、超臨界流体技術を工程流体として使用する新工程流体技術の開発に心血を注いできている。その結果、工程流体として超臨界流体を使用する技術は、精密化学、エネルギー、環境、新素材などの諸般の産業に急速に波及して、伝統的な多様な分離技術が超臨界流体工程を利用する新技術に置き換えられている。
【0008】
初期の超臨界流体技術が天然物の抽出・精製に主に適用された分野は、香辛料、化粧品、脂肪のように非極性物質、安価な食品や香料成分に限られていた。しかし、最近、この技術に関連する多様な現象学的特性及び付加的技術が発展するにつれ、極性、少量、高価な天然医薬品の抽出・精製に応用されるに至った。超臨界流体には非常に多様な種類があるが、そのうち二酸化炭素を最も多く使用する。二酸化炭素は、自然に無限量が存在するだけでなく、製鉄産業や石油化学産業において多量に発生する物質である。また、二酸化炭素は、無色無臭の気体であり、人体に無害であり、また、化学的に非常に安定した物質である。さらに、二酸化炭素は、他のいかなる流体より低い臨界温度(31.1℃)と臨界圧力(7.4MPa)を示すため、超臨界条件で容易に調整することが可能であり、環境にやさしい特性だけでなく、効率的なエネルギー使用の側面からも大きな利点を有する。しかも、この技術が、天然生理活性物質の分離、精製分野に適用される場合には、従来の工程が有する問題点、すなわち、最終産物内に残留する有機溶媒による人体毒性、高コスト、廃棄溶媒による環境公害、目的成分の変性及び低い抽出選択性などをかなり解決または補完することができる。
【0009】
このような二酸化炭素を用いた超臨界流体技術を、スベリヒユの生理活性成分、特に、オメガ−3脂肪酸成分の抽出に適用した技術は未だにない。
【0010】
特許文献1には、超臨界流体抽出法を利用したイチョウの葉の抽出物の製造方法が開示されているが、本発明の超臨界二酸化炭素の抽出を利用して植物からオメガ脂肪酸含有の抽出物を製造する方法とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国登録特許第10−0558382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述のような要求に応じてなされたものであって、植物の有効成分のうちオメガ脂肪酸を抽出するに当って、従来の有機溶媒抽出法の問題点である人体有害、環境毒性、高コスト、低い選択性などを解決し、新しい抽出・精製技術として脚光を浴びている超臨界流体技術を利用して、オメガ脂肪酸含有の植物からオメガ脂肪酸を高収率で抽出する方法を提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明によるオメガ脂肪酸含有の植物からのオメガ脂肪酸含有の抽出物の製造方法は、a)オメガ脂肪酸を含む植物を乾燥させて粉末として製造する工程と、b)前記製造された植物粉末から超臨界二酸化炭素を溶媒として使用し、最適の温度及び最適の圧力でオメガ脂肪酸を抽出する工程とを含む、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明による健康機能食品は、前記方法によって抽出された植物由来のオメガ脂肪酸を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明によるオメガ脂肪酸含有の植物抽出物は、オメガ脂肪酸を含む植物を超臨界二酸化炭素で抽出して製造されたことを特徴とする。
【0016】
そして、本発明によるコレステロール低下用薬学組成物は、前記方法によって抽出された植物由来のオメガ−3脂肪酸を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オメガ脂肪酸含有の植物から超臨界二酸化炭素抽出を利用して、オメガ脂肪酸を2〜3%の高収率で抽出することで、オメガ脂肪酸の供給量を増大させるとともに、関連する研究にも大いに寄与することができる。
【0018】
また、本発明は、安価であり、かつ確保しやすいスベリヒユからオメガ脂肪酸を抽出することで、低コストでオメガ脂肪酸を抽出することができる。
【0019】
また、本発明の最大の利点は、人体に無害な二酸化炭素を溶媒として使用して抽出することで、従来の有機溶媒による抽出方法に比べて、環境にやさしく、工程が簡単であり、かつ抽出時間を短縮させることができる。
【0020】
また、温度及び圧力のみを調節することによって、選択的物質(DHA及びリノレン酸などのオメガ−3脂肪酸)の抽出が可能であり、高純度の物質を得ることができるため、健康食品、医薬品、化粧品関連の産業に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】抽出温度及び抽出圧力によるスベリヒユ抽出物のオメガ−3脂肪酸の含量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記目的を達成するための本発明によるオメガ脂肪酸含有の植物からのオメガ脂肪酸含有の抽出物の製造方法は、a)オメガ脂肪酸を含む植物を乾燥させて粉末として製造する工程と、b)前記製造された植物粉末から超臨界二酸化炭素を溶媒として使用して、20〜70℃の温度及び150〜350barの圧力でオメガ脂肪酸を抽出する工程とを含む、ことを特徴とする。
【0023】
本発明の方法において、前記オメガ脂肪酸を含む植物は、オメガ脂肪酸を含む植物であればいずれのものを使用してもよく、好ましくは、スベリヒユまたはエゴマを使用することができる。
【0024】
また、本発明の方法において、前記a)工程の植物粉末は、好ましくは、凍結乾燥した植物粉末であってもよいが、一般的に乾燥した植物粉末に比べて、凍結乾燥した植物粉末がオメガ脂肪酸の抽出効率を高めることができる。
【0025】
また、本発明の方法において、オメガ脂肪酸の最適の抽出条件は、好ましくは、前記b)工程で40〜60℃の温度及び200〜300barの圧力であってもよく、さらに好ましくは、50〜60℃の温度及び230〜270barの圧力であってもよく、最も好ましくは、54.69℃の温度及び249.76barの圧力であってもよい。前記条件で抽出することがオメガ脂肪酸を最高の収率で抽出することができる。
【0026】
また、本発明の方法において、前記オメガ脂肪酸は、オメガ−3脂肪酸、オメガ−6脂肪酸及びオメガ−9脂肪酸からなる群から選択される一つ以上であってもよく、前記オメガ−3脂肪酸は、DHA、EPA、DPA(docosapentaenoic acid)、リノレン酸、SDA(stearidonic acid)及びETA(eicosatetraenoic acid)からなる群から選択される一つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。前記オメガ−6脂肪酸は、リノール酸(linoleic acid)、ガンマ−リノレン酸(gamma−linolenic acid)及びアラキドン酸(arachidonic acid)からなる群から選択される一つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。前記オメガ−9脂肪酸は、オレイン酸(oleicacid)などであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0027】
また、本発明の方法において、前記b)工程で、オメガ脂肪酸の溶解度を増大させるために補助溶媒を使用することができるが、補助溶媒は、エタノール、イソプロパノール、エチルアセテートまたはテトラヒドロフランであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0028】
また、本発明の方法において、オメガ−3脂肪酸、DHA及びリノレン酸を高収率で抽出する条件がやや異なってもよいが、オメガ−3脂肪酸のうちDHAの最適の抽出条件は、好ましくは40〜50℃の温度及び220〜280barの圧力であってもよく、より好ましくは、40〜50℃の温度及び235〜255barの圧力であってもよく、さらに好ましくは、43〜47℃の温度及び240〜250barの圧力であってもよく、最も好ましくは、44.29℃の温度及び244.55barの圧力であってもよい。前記条件でDHAを最高の収率で抽出することができる。
【0029】
また、オメガ−3脂肪酸のうちリノレン酸の最適の抽出条件は、好ましくは、15〜25℃の温度及び120〜160barの圧力であってもよく、より好ましくは、15〜25℃の温度及び130〜150barの圧力であってもよく、さらに好ましくは、19〜23℃の温度及び135〜145barの圧力であってもよく、最も好ましくは、21.25℃の温度及び138.78barの圧力であってもよい。前記条件でリノレン酸を最高の収率で抽出することができる。
【0030】
また、本発明は、スベリヒユからのオメガ−3脂肪酸含有の抽出物の製造方法を提供するが、具体的には、a)スベリヒユを凍結乾燥させて粉末として製造する工程と、b)前記製造されたスベリヒユ粉末から、超臨界二酸化炭素を溶媒として使用して、50〜60℃の温度及び230〜270barの圧力でオメガ−3脂肪酸を抽出する工程とを含むスベリヒユからのオメガ−3脂肪酸含有の抽出物の製造方法を提供する。
【0031】
上述のスベリヒユからのオメガ−3脂肪酸含有の抽出物の製造方法は、好ましくは、a)スベリヒユを凍結乾燥させて粉末として製造する工程と、b)前記製造されたスベリヒユ粉末から、超臨界二酸化炭素を溶媒として使用して、54.69℃の温度及び249.76barの圧力でオメガ−3脂肪酸を抽出する工程とを含むことができる。
【0032】
また、本発明は、上記方法によって抽出された植物由来のオメガ脂肪酸含有の抽出物を含む健康機能食品を提供する。
【0033】
本発明の健康機能食品において、植物由来のオメガ脂肪酸の抽出方法は前述のとおりである。
【0034】
上述の植物由来のオメガ脂肪酸を添加可能な食品としては、例えば、各種の食品類、飲料、ガム、お茶、ビタミン複合剤、健康機能性食品類などがある。
【0035】
食品または飲料中の前記植物由来のオメガ脂肪酸の含量は、全体の食品重量の0.01ないし15重量%であってもよく、健康飲料組成物は、100mlを基準として0.02ないし5g、好ましくは0.3ないし1gの割合で加えることができる。
【0036】
本発明の健康機能性飲料組成物は、指示された割合で、必須成分として前記植物由来のオメガ脂肪酸を含む以外は、他の成分は特別に制限されず、通常の飲料のように、多様な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。上述のような天然炭水化物の例は、単糖類、例えば、葡萄糖、果糖など;二糖類、例えば、マルトース、スクロースなど;及び多糖類、例えば、デキストリン、シクロデキストリンのような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。前述のもの以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物、例えば、レバウジオシドA(rebaudioside A )、グリシルリジンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mlに対し、一般的に約1ないし20g、好ましくは、約5ないし12gである。
【0037】
上述のもの以外に、本発明の植物由来のオメガ脂肪酸は、多様な営養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含むことができる。その他、本発明の植物由来のオメガ脂肪酸は、天然果物ジュース及び果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含むことができる。このような成分は、単独または組み合わせて使用することができ、このような添加剤の割合は、それほど重要ではないが、本発明の抽出物100重量部に対し、0ないし約20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【0038】
また、本発明は、上記抽出された植物由来のオメガ−3脂肪酸を含む抽出物を含むコレステロール低下用薬学組成物を提供する。
【0039】
本発明の植物由来のオメガ−3脂肪酸を含む薬学組成物は、通常、薬学的組成物の製造に使用して、適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。
【0040】
本発明の植物由来のオメガ−3脂肪酸の薬学的投与形態は、これらの薬学的に許容可能な塩の形態としても使用されることができ、単独または他の薬学的活性化合物と組み合わせて使用されるか、または適当な集合として使用されることができる。
【0041】
本発明による植物由来のオメガ−3脂肪酸を含む薬学組成物は、通常の方法によって、それぞれ散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用されることができる。植物由来のオメガ−3脂肪酸を含む組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油などを含む多様な化合物または混合物が挙げられる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記醗酵液に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混合して調剤される。また、単純な賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、流動パラフィンの他に多様な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれることができる。非経口投与のための製剤には、滅菌した水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステールなどが使用されることができる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、トゥイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用されることができる。
【0042】
本発明の植物由来のオメガ−3脂肪酸の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物タイプ、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選択されることができる。しかし、好ましい効果を奏するために、本発明の植物由来のオメガ−3脂肪酸は、1日に0.0001ないし100mg/kgで、好ましくは、0.001ないし100mg/kgで投与する。投与は、一日に一回投与してもよく、数回にわたって投与してもよい。上記投与量はいずれの側面からも本発明の範囲を制限するものではない。
【0043】
本発明の植物由来のオメガ−3脂肪酸は、鼠、ハツカネズミ、家畜、人間などの哺乳動物に多様な方法を利用して投与されることができる。すべての投与方法は予想できるが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内(intracerebroventricular)注射によって投与されることができる。
【0044】
本発明は、また、オメガ脂肪酸を含む植物を超臨界二酸化炭素で抽出して製造された、オメガ−3脂肪酸の含量が抽出物の総重量を基準として2重量%以上のオメガ脂肪酸含有の植物抽出物を提供する。前記抽出物において、オメガ−3脂肪酸の含量は、抽出物の総重量を基準として、好ましくは、2.5重量%以上、さらに好ましくは、2.6重量%以上であってもよい。
【0045】
また、本発明は、オメガ脂肪酸を含む植物を超臨界二酸化炭素で抽出して製造された、オメガ−3脂肪酸の含量が抽出物の脂肪酸の総重量を基準として55重量%以上のオメガ脂肪酸含有の植物抽出物を提供する。前記抽出物において、オメガ−3脂肪酸の含量は、抽出物の脂肪酸の総重量を基準として、好ましくは、60重量%以上であってもよい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例を挙げて詳細に説明する。ただし、下記の実施例は単に本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0047】
〔1.原料〕
本実験に使用された原料のうち乾燥したエゴマは、韓国生命工学研究院から提供されたものを使用し、一般乾燥及び凍結乾燥したスベリヒユ粉末は、山清郡に位置した株式会社ソングジン食品から提供されたものを使用した。
【0048】
〔2.超臨界二酸化炭素の抽出方法〕
試料の抽出実験のために、バッチ式超臨界二酸化炭素抽出装置(KBNE−01、02 SYSTEM)が利用された。抽出方法は、飽和圧力状態の二酸化炭素(純度99.9%)を冷却器(−10℃)に通過させて気泡を除去し、液状の定圧ポンプ(PU−2088−CO2PLUS、Jasco)を利用して設定圧力まで加圧した。ポンプから反応器に流れ込む前の抽出溶媒である二酸化炭素は、設定された抽出温度によって恒温槽で予熱され、反応器内の抽出温度は、熱電対によって感知されて抽出温度を調節し、内部温度は一定に維持した。抽出装置内の全体の圧力は、圧力調節ポンプ及び一つの圧力調節器を取り付けることによって、瞬間的な圧力の変化による抽出装置内の条件の変化を防止した。反応器から抽出された油脂成分は、絞り弁(metering valve)を通過した後、‘T’字状のガラス管を介して回収し、流体の流量は乾式流量計(DC−2、Shinagawa seik)によって測定した。
【0049】
〔3.脂肪酸の分析〕
超臨界二酸化炭素から抽出された油脂は、AOAC法によってメチル化(methylation)した後、GC−FID(Hewlett Packard 5890II)を利用して分析された。前処理法は、抽出物0.05gを、還流冷却管の取り付けられた丸いフラスコに秤量した後、メタノール中の0.5N NaOH 3mlを加えて、75℃で30分間湯煎した。湯煎が終了すれば、10分間放冷した後、メタノール中のBF3(Supelcotm)3mlを加えて75℃で25分間湯煎し、10分間放冷した。放冷後、ヘキサン3mlと10%のNaCl溶液1mlを加えて30秒間振とう(shaking)した。GC−FIDによって分析された脂肪酸の組成は、標準物質(FAME MIX.,DHA,EPA standard)のピークと比較して定量した。
【0050】
〔4.統計分析〕
抽出条件に対する実験は、中心複合計画を実施して、抽出工程に重要な独立変数(Xi)として考慮される因子、すなわち、抽出温度(X1)と抽出圧力(X2)に対する実験範囲を設定して、5つのステップでそれぞれ符号化し(表1)、中心複合計画によって10区として設定して抽出実験を行った。また、これらの独立変数によって影響される従属変数(Yn)、すなわち、オメガ−3抽出量などを測定してその値を回帰分析に使用した。
【0051】
【表1】
【0052】
回帰式による予測は、SAS(statistical analysis system)プログラムを利用して最適の抽出条件をオメガ−3脂肪酸の抽出量で予測した。
【0053】
〔実施例1:エゴマ超臨界抽出物の脂肪酸の分析〕
超臨界二酸化炭素を利用して、下記表2に示すような温度及び圧力条件でエゴマの脂肪酸を抽出し、脂肪酸を分析した結果を下記表2に示す。下記表2から分かるように、オメガ−3脂肪酸であるリノレン酸の含量は、抽出物の脂肪酸の総重量を基準として約60%であることが分かる。
【0054】
【表2】
【0055】
〔実施例2:スベリヒユ抽出物からのオメガ−3脂肪酸類の抽出効率〕
スベリヒユの乾燥方法及び抽出方法による抽出物からオメガ−3脂肪酸類の抽出効率を分析するために、一般乾燥スベリヒユのソックスレー(soxhlet)抽出物、一般乾燥スベリヒユの超臨界抽出物及び凍結乾燥スベリヒユの超臨界抽出物の抽出効率を分析した。
【0056】
【表3】
【0057】
抽出物のGC−MS分析の結果、リノレン酸、EPA及びDHAのようなオメガ−3脂肪酸類の抽出効率は、ソックスレー抽出に比べて、超臨界抽出がさらに高く、乾燥方法においては、一般乾燥に比べて凍結乾燥がさらに高かった。表3で、リノレン酸、EPA及びDHAそれぞれを比較すれば、リノレン酸及びEPAは、一般乾燥試料の超臨界が凍結乾燥試料の超臨界より抽出効率がやや高いが、DHAは、凍結乾燥試料の超臨界が一般乾燥試料の超臨界より著しく高い。また、リノレン酸、EPA及びDHAを混合したオメガ−3脂肪酸の抽出収率は、一般乾燥に比べて凍結乾燥がさらに高かった。
【0058】
〔実施例3:DHA抽出量による最適の条件の設定〕
スベリヒユから最適の抽出条件を設定するために、抽出温度及び抽出圧力を独立変数として、中心複合計画によって設計された10区の抽出条件で得られた抽出物のDHAの含量は表4に示す通りであり、反応表面分析法で導出される回帰式(表5)によって予測された最適の抽出条件は表6に示す通りである。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
その結果、スベリヒユからのDHAの効率的な抽出方法は、44.286℃の温度及び244.545barの圧力で超臨界二酸化炭素を抽出することが最適の抽出条件であった。
【0063】
〔実施例4:リノレン酸抽出量による最適の条件の設定〕
スベリヒユから最適の抽出条件を設定するために、抽出温度及び抽出圧力を独立変数として、中心複合計画によって設計された10区の抽出条件で得られた抽出物のリノレン酸の含量は表7に示す通りであり、反応表面分析法で導出される回帰式(表8)によって予測された最適の抽出条件は表9に示す通りである。
【0064】
【表7】
【0065】
【表8】
【0066】
【表9】
【0067】
その結果、スベリヒユからのリノレン酸の効率的な抽出方法は、21.250℃の温度及び138.778barの圧力で超臨界二酸化炭素を抽出することが最適の抽出条件であった。
【0068】
〔実施例5:オメガ−3脂肪酸の抽出量による最適の条件の設定〕
スベリヒユから最適の抽出条件を設定するために、抽出温度及び抽出圧力を独立変数として、中心複合計画によって設計された10区の抽出条件で得られた抽出物のオメガ−3脂肪酸の含量は表10に示す通りであり、反応表面分析法で導出される回帰式(表11)によって予測された最適の抽出条件は図1及び表12に示す通りである。
【0069】
【表10】
【0070】
【表11】
【0071】
【表12】
【0072】
その結果、スベリヒユからのオメガ−3脂肪酸の効率的な抽出方法は、54.693℃の温度及び249.761barの圧力で超臨界二酸化炭素を抽出することが最適の抽出条件であった。
【0073】
本発明の抽出物は、下記のような製造例に利用されることができ、下記製造実施例は、単に本発明を例示するものであり、これによって本発明の内容が制限されるものではない。
【0074】
〔製造例1:オメガ脂肪酸含有の抽出物を含む健康機能食品〕
本発明の方法によって製造されたオメガ脂肪酸含有の抽出物を、消費者が取りやすい食品である健康飲料として製造するために、本発明のオメガ脂肪酸含有の抽出物1重量部、クエン酸1重量部、オリゴ糖5重量部、及びタウリン5重量部を混合し、水を加えて100mLにした後、瓶に充填して滅菌させて、オメガ脂肪酸含有の抽出物を含む健康飲料を製造した。
【0075】
〔製造例2:オメガ−3脂肪酸含有の抽出物を含む薬学組成物〕
本発明のオメガ−3脂肪酸含有の抽出物を含むコレステロール低下用薬学組成物は、例えば、下記のような製剤例によって剤形化した。
【0076】
〔製剤例1.錠剤の製造〕
【0077】
本発明のオメガ−3脂肪酸を含む抽出物 200mg
【0078】
乳糖 100mg
【0079】
澱粉 100mg
【0080】
ステアリン酸マグネシウム 適量
【0081】
通常の錠剤の製造方法によって上記成分を混合し、打錠して錠剤を製造した。
【0082】
〔製剤例2.カプセル剤の製造〕
【0083】
本発明のオメガ−3脂肪酸含有の抽出物 100mg
【0084】
乳糖 50mg
【0085】
澱粉 50mg
【0086】
タルク 2mg
【0087】
ステアリン酸マグネシウム 適量
【0088】
通常のカプセル剤の製造方法によって上記成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
図1