特許第5730995号(P5730995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5730995
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】基本姿勢を推定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 13/00 20060101AFI20150521BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   G02C13/00
   G02C7/02
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-515853(P2013-515853)
(86)(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公表番号】特表2013-529792(P2013-529792A)
(43)【公表日】2013年7月22日
(86)【国際出願番号】EP2011060304
(87)【国際公開番号】WO2011161087
(87)【国際公開日】20111229
【審査請求日】2013年11月20日
(31)【優先権主張番号】1056873
(32)【優先日】2010年8月30日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1002603
(32)【優先日】2010年6月21日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512330271
【氏名又は名称】アンテラクティフ・ビジュアル・システーム(イ ヴェ エス)
【氏名又は名称原語表記】INTERACTIF VISUEL SYSTEME (I V S)
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】アンカウア、デイヴィット
(72)【発明者】
【氏名】トーメ、パスカル
【審査官】 吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−047481(JP,A)
【文献】 特表2008−513070(JP,A)
【文献】 特表2011−513798(JP,A)
【文献】 特表2012−524293(JP,A)
【文献】 特開2011−138064(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/038511(WO,A1)
【文献】 特表2009−512470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/00−7/08,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視力矯正デバイスの製造用のパラメーターを決定するために測定を行う目的で、被検者の基本姿勢を推定するためのプロセスであって、少なくとも1つの逸脱した姿勢から遠見姿勢又は近見姿勢への頭部の複数回の到達に対して、
カメラ(12)により前記被検者の複数の姿勢を記録し、前記被験者が前記被験者の頭部を前記逸脱した姿勢から前記遠見姿勢又は近見姿勢に戻した際の前記被験者の実際の基本姿勢を測定して、実際の基本姿勢の幾つかの組のデータを得るとともに前記複数組のデータを記憶するステップと、
デジタル処理ユニットによって、前記実際の基本姿勢の幾つかの組のデータを処理して、最適な基本姿勢を生成するステップと
を含み、
前記実際の基本姿勢を測定することは、前記カメラ(12)により記録された前記被検者の複数の姿勢における、前記被検者の頭部に固定して装用され得る付属器具上に設けられた複数のビジュアルマーカー(21)又は前記被検者の顔の特徴点の位置を特定すること含む、
プロセス。
【請求項2】
前記実際の基本姿勢は、前記頭部が前記遠見姿勢又は近見姿勢に到達する間に測定される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
少なくとも2つの実際の基本姿勢が測定され、該少なくとも2つの実際の基本姿勢は反対位置に逸脱した2つの姿勢に対応し、前記最適な基本姿勢は、反対位置に逸脱したこれらの2つの姿勢の間に測定された前記実際の基本姿勢の平均を取ることによって得られる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記最適な基本姿勢に関する信頼区間を求めることも含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記姿勢データは前記被検者の前記頭部の装用時前傾角値及び前記被検者の前記頭部の左右方向への回転角度であるキャップ角値を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記最適な基本姿勢を評価するために、前記データのそれぞれの妥当性、及び関連する逸脱のタイプに応じて、該データに重みを適用することを更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記被検者のフランクフルト平面を特定するためのステップを更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
記録されたデータから前記被検者によって取られなかった基本姿勢に対する補足データを外挿することも含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセスにおいて実施されるように構成される、被検者の基本姿勢を推定するためのシステムであって、
前記遠見姿勢又は近見姿勢にそれぞれ到達する間に前記実際の基本姿勢を測定して、実際の基本姿勢の幾つかの組のデータを得る、測定する手段(12、12’)と、
前記幾つかの組のデータを記憶する手段と、
前記実際の基本姿勢の幾つかの組のデータを処理して、最適な基本姿勢を生成するように構成されるデジタル処理ユニット(11)と
を備える、システム。
【請求項10】
前記デジタル処理ユニットは前記最適な基本姿勢に関する信頼区間を生成するようにも構成されることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、前記被検者によって装用されるように構成されるポータブル式の表示デバイス(30)も備えることを特徴とし、前記測定する手段は、前記ポータブル表示デバイス(30)に対して固定された画像取込デバイス(12)を備えることを特徴とする、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記表示デバイス(30)は視標(32)も備えることを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
プログラムがコンピュータによって実行されるときに、請求項1〜8のいずれか一項に記載の前記プロセスの前記ステップを実行するためのプログラムコード命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者が装用しなければならない矯正レンズ又は眼科用レンズの光学的特性、及びそれらのレンズのフレームへの取付けを個人ごとに調整し最適化するために、被検者の視覚挙動を解析することに関する。
【0002】
より厳密には、本発明は、被検者の目に対する矯正レンズの全体的な移植構成(implantation configuration)を決定するために必要なデータの収集を進める眼鏡技師によって実行される、被検者の頭部の全体姿勢の解析、及び測定の実施に関する。
【背景技術】
【0003】
被検者の目の瞳孔及びフレームの相対的な位置に対するフレーム内のレンズの位置を最適化することを目的とする数多くのシステムが既に知られている。このために、フレームを装用した顔の静止画又は動画がカメラによって撮影され、フレームの配置の検出とともに、目の位置の検出が実行される。
【0004】
詳細には、本出願人名義による特許文献1は、目及びフレームの相対的な位置を最も良く規定できるように、顔がカメラに最も良好に合焦された基準画像を固定カメラの正面において動いている被検者の顔の一連の動画から特定するシステムを開示している。
【0005】
同時に、最近では、眼科レンズの製造業者は、被検者が視線をシフトさせたときの被検者の挙動を調べることによって、特にいわゆるプログレッシブレンズ技術において、眼科レンズの設計を最適化しようと努めている。例えば、本出願人名義による特許文献2は、
−カメラと、
−カメラによって撮影される画像を表示するための画面と、
−被検者の頭部に固定して装用され、複数のビジュアルマーカー21を有することができる付属器具20と、
−カメラに対する少なくとも2つの決められた位置を覆う可能性が高いように視標(複数の場合もある)を形成する手段と、
−カメラによって撮影された画像内のビジュアルマーカーの位置を解析できる画像解析手段と
を備えるシステムを開示している。
視標(複数の場合もある)を形成する手段の異なる領域を被検者が観察するときに、画像解析手段は、空間内における付属器具20の、それゆえ、被検者の頭部の位置及び向きを推定し、そこから特に、視標間で視線を動かす間の頭部の動きの相対的な重要性、及び目の動きの相対的な重要性に関する情報を推定する。
【0006】
通常、付属器具20は、図1に示される付属器具と一致することができ、フレームの向きを更に良くするために特に選択される幾何学的インジケータ21を形成する手段を備えることができる。付属器具は、フレームのブランチに沿って、及び/又はフレームの直立した上側前面に配置される、一連のビジュアルマーカー21を有する縦長の支持体を備えることができる。
【0007】
厳密に測定するために、被検者の頭部は、測定を行うのに適合した基本姿勢にあり、定められた位置を見ている必要がある。
【0008】
基本姿勢は特に、装用者が自然な位置にあり、水平面内の自分の真正面の無限遠の点を注視する遠見姿勢(distant vision posture)とすることができる。変形形態によれば、基本姿勢は、読書位置、すなわち、被検者が目から約40センチメートルの点を注視し、水平面に対して30度だけ視線を下げる位置のような、近見姿勢に対応することができる。
【0009】
この説明全体を通して、基本姿勢は遠見姿勢に対応することになる。しかしながら、これは限定ではなく、一例としてのみ与えられる。眼鏡技師がフレームに対する瞳孔の相対的な位置を測定するとき、装用者がこの基本姿勢に近い姿勢にあるのを確実にすることが不可欠である。
【0010】
現時点で既知であるシステムは、被検者の姿勢が基本姿勢に近いか否かを正確かつ自動的に判断しない。それゆえ、一般的には、これは測定が行われる時点で被検者の姿勢を単に観察することによって眼鏡技師自身によって手動で行われる。このために、フレームに固定された付属器具の傾角の値を与えることによって、上記のシステムによって眼鏡技師を特に支援することができる。
【0011】
被検者の姿勢は、例えば、既知の視線方向に対して2つの角度を用いて表すことができる(限定はしない)。第1の角度は、頭部のキャップ(cap)、すなわち、被検者が真正面に置かれた物体を見るときに、多かれ少なかれ自分の頭部を左又は右に向ける傾向があることを反映する方向角に対応する。
【0012】
第2の角度は、頭部の傾角、すなわち、被検者が真正面に置かれた物体を見るときに、多かれ少なかれ自分の頭部を上又は下に向ける傾向があることを反映する方向角に対応する。所与のフレームの場合に、この第2の角度は装用時前傾角(pantoscopic angle)を示すことができ、すなわち、垂直線に対する矯正レンズの中央面の傾角を示すことができる。
【0013】
被検者の瞳孔間距離(矯正デバイスを製造するためのパラメーターのうちの1つ)を特定するために、眼鏡技師は一般的に瞳孔計を使用する。この場合、瞳孔計は被検者の正面に対して支持されるので、キャップは恣意的に(arbitrarily)0であると仮定される。しかしながら、このデバイスは、別々に測定されなければならない装用時前傾角、又は、必要な場合には、被検者が頭部を横に向けている可能性(被検者が基本姿勢において多少左又は右を見る傾向)があることを考慮に入れない。
【0014】
しかしながら、この手法は、被検者によって取られる位置が自然な基本姿勢に対応し、特に眼鏡技師の存在、部屋内の特定の物体、又は被検者の直近の心理状態(被検者を威圧する可能性があるショップ効果(shop effect)、眼鏡技師による要求に関連付けられるストレス等)によって影響を及ぼされないことを保証しない。例えば、測定を行っている最中に装用者が頭部を過度に下げる場合には、結果として、過大な高さ測定値が生じることになる。(矯正力が高さによって異なる)プログレッシブレンズの場合、被検者は矯正ゾーンに対して厳密に目を向けることができるのに対して、被検者が見ている物体は遠く離れている。
【0015】
しかしながら、自然な基本姿勢は、装用者が最も快適な位置において眼鏡のレンズに視線を投じることになる態様を決定するので、非常に重要である。それゆえ、姿勢が悪いと、レンズのセンタリング測定が劣化する。それゆえ、眼鏡レンズ上に視線を投じることに関する計算のために正確な画像姿勢を選択すること、それゆえ、測定中に装用者の姿勢の品質を評価することが最重要である。
【0016】
デジタル表示によれば、頭部の向きに1度の誤差がある結果として、約0.4ミリメートルのセンタリング誤差が生じるが、好ましい精度は0.5ミリメートル未満でなければならない。
【0017】
遠見時の基本姿勢における傾角の近似は、フランクフルト平面を基準にすることによって実現することもできる。フランクフルト平面は、トラギオン、及び眼窩の底部によって規定することができる。
フランクフルト平面を測定する第1の手法は、目の2つの回転中心を用いて、定義により、フランクフルト平面に対して平行であり、かつフランクフルト平面から約22ミリメートルの既知の距離にある第1の軸を特定することである。
次に、少なくとも1つのトラギオンの位置が、上記で規定されたような付属器具20を装用する被検者の顔の少なくとも2つの画像上に、手動で、自動で、又は部分的に補助して配置される。トラギオンの点は(目に見える)基準点であるとともに、トラギオンは付属器具20のマーカー内で不動であるので、3次元において、トラギオン及びカメラの光学中心を通り抜ける2つの観測線の交点であるように位置決めすることができる。フランクフルト平面は、トラギオンを含み、円柱に対する接面である平面として容易に計算することができる。
【0018】
この平面は、被検者が遠見姿勢にあるときに水平とみなされる。この測定は形態学的であり、測定中の被検者の姿勢とは無関係である。しかしながら、この手法は、遠見時の自然な姿勢が水平なフランクフルト平面と完全に一致することを保証しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2860887号
【特許文献2】仏国特許出願公開第2892529号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
それゆえ、本発明は、完全に又は部分的に自動で、被検者の自然な基本姿勢を精密に特定するためのプロセスを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そのために、本発明は、視力矯正デバイスの製造用のパラメーターを決定するために測定を行う目的で、被検者の基本姿勢を推定するためのプロセスであって、頭部が少なくとも1つの逸脱した姿勢から目標基本姿勢への複数回の到達に対して、
目標基本姿勢にそれぞれ到達する間に実際の基本姿勢を測定して、実際の基本姿勢の幾つかの組のデータを得るとともに、前記複数組のデータを記憶するステップと、
デジタル処理ユニットによって、前記実際の基本姿勢の幾つかの組のデータを処理して、最適な基本姿勢を生成するステップと
を含む、プロセスを提案する。
【0022】
これらのステップの連鎖が最適な基本姿勢を生成し、ばらつき、それゆえ、頭部の保たれ方の変動性を各逸脱が大きくするという事実にかかわらず、これを生成する。それゆえ、繰り返される逸脱を用いることは、専門家であれば避けることを望んでいたことであった。
【0023】
本発明によるプロセスの、限定はしないが、好ましい幾つかの態様は以下の通りである。
−前記実際の基本姿勢は、前記頭部が前記目標基本姿勢に到達する間に測定される。
−反対位置に逸脱した2つの姿勢に対応して少なくとも2つの実際の基本姿勢が測定され、前記最適な基本姿勢は、反対位置に逸脱したこれらの2つの姿勢の間に測定された前記基本姿勢の平均を取ることによって得られる。
−本プロセスは、前記最適な基本姿勢に関する信頼区間(confidence interval)を得ることも含む。
−前記目標基本姿勢は、前記被検者が所定の目標物を自然に見ている姿勢に対応する。
−前記基本姿勢は前記被検者の遠見姿勢又は近見姿勢に対応する。
−前記姿勢データは前記被検者の前記頭部の装用時前傾角値及びキャップ値を含む。
−前記装用時前傾角値及び前記キャップ値は、実際の基本姿勢の以前の複数組のデータ及び/又は以前の逸脱した姿勢のタイプに応じて条件付き確率によって求められる。
−本プロセスは、前記最適な基本姿勢及び前記信頼区間を評価するために、前記データのそれぞれの妥当性に応じて、該データに重みを適用することも含む。
−本プロセスは、前記被検者のフランクフルト平面を特定するためのステップも含む。
−前記フランクフルト平面のデータも前記データに統合され、前記最適な基本姿勢及び前記信頼区間を特定するために考慮に入れられる。
−本プロセスは、記録されたデータから前記被検者によって取られなかった基本姿勢に対する補足データを外挿することも含む。
−前記実際の基本姿勢を測定することは、前記被検者の少なくとも1つの画像上の特異点の位置を含む。
−前記特異点は前記被検者によって装用される眼鏡フレーム上に固定された付属器具によって支持される。
−本プロセスは、
−実際の基本姿勢の1組のデータの、又は複数組の実際のデータから外挿される、前記信頼区間及び前記最適な基本姿勢と、
−この姿勢における前記被検者の画像、及び/又は前記矯正デバイスの前記製造パラメーターに及ぼすこの姿勢の選択の影響の提示と、
から、前記矯正デバイスの前記製造パラメーターを計算するために用いられる姿勢データを編集することも含む。
【0024】
第2の態様によれば、本発明は、本発明によるプロセスにおいて実施されるように構成される、被検者の基本姿勢を推定するためのシステムであって、
前記目標基本姿勢にそれぞれ到達する間に前記実際の基本姿勢を測定して、実際の基本姿勢の幾つかの組のデータを得る、測定する手段と、
前記幾つかの組のデータを記憶する手段と、
前記実際の基本姿勢の幾つかの組のデータを処理して、最適な基本姿勢を生成するように構成されるデジタル処理ユニットと
を備える、システムを提案する。
【0025】
上記システムの、限定はしないが、好ましい幾つかの態様は以下の通りである。
−デジタル処理ユニットは上記最適な基本姿勢に関する信頼区間も得る。
−上記システムは、被検者によって装用されるように構成されるポータブル表示デバイスも備え、測定する手段は、ポータブル表示デバイスに対して固定された画像取込デバイスを備える。
−表示デバイスは視標も備える。最後の態様によれば、本発明は、上記プログラムがコンピュータによって実行されるときに、本明細書において上記で説明されたプロセスのステップを実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品を提案する。
【0026】
本発明の他の特徴、目的及び利点は、以下の詳細な説明、及び例示として与えられる添付の図面から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明によるシステム及びプロセスを実行する際に用いることができる付属器具の一例の斜視図である。
図2】本発明のシステムの種々の構成要素のブロック図である。
図3】本発明の一実施形態による種々のステップのグラフ表現である。
図4】本発明によるシステム及びプロセスを実行する際に用いることができるポータブルシステムの一例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図2に示されるように、本発明によるシステムは、例えば、フレームを備えており、その上側領域内にはカメラのような画像取込デバイス12が収容される。画像取込デバイスは、カメラの正面に配置されるマジックミラーのような、被検者が基本姿勢において注視することになる目標物を得るためのデバイス付近に配置される。カメラ12は、ビデオ画像を収集するための中央ユニット11に取り付けられる。キーボード16、並びにマウス及び画面14等の任意の他の入力及び出力デバイスがシステムを制御する。
【0029】
例えば、本発明は、本出願人によりActivisu Expert 3の名称で市販されるデバイス内に組み込むことができる。そのようなデバイスは、垂直に配置されたマジックミラーを備える。カメラは、ミラーに対する主光学軸の位置がわかるようにミラーの背後に配置される。通常、カメラは、その主光学軸が実質的にミラーに対して垂直に延在するように配置される。
【0030】
また、付属器具20はクリップの形を有し、フレーム上に配置される。
【0031】
そのシステムについての更なる詳細に関して、例えば、上記で引用された特許文献1又は特許文献2を参照することができる。
【0032】
変形形態によれば、姿勢測定ごとに画像(又はセンタリングを測定するために有用な任意の他の情報)から開始する必要はない。例えば、写真装置にリンクされた、頭部の位置をリアルタイムに追跡する(又は遅れて計算する)ためのシステムを利用することができる。センタリングのために撮影される写真は1枚のみ(又は数枚)であるが、その後、姿勢に関する数多くの測定値を用いて姿勢が調査されることになる。
【0033】
頭部の位置を追跡するためのシステムの例は、限定はしないが、以下のものとすることができる。
−頭部に対して固定して配置される加速度計。適切に較正した後に、加速度を連続して収集することによって、頭部の位置が追跡される。
−Ipseoレンズを個人ごとに調整するために眼球−頭部係数(eye-head coefficient)を測定するための、エシロール(Essilor)社から市販されるビジョンプリントシステム(Vision Print System)のような超音波システム。
−例えば、被検者の頭部上、例えば、上記のタイプの付属器具20上に、又は頭部に対して固定された任意の同等の物体上に配置され、赤外線カメラにリンクされる赤外線送信機。そのシステムは、Activisu Expert 3 システムに類似であるが、可視スペクトルにのみ感度を有するカメラの代わりに赤外線カメラを使用し、決まった色(Activisu Expert 3 システムでは緑色)のビジュアルマーカーを使用する代わりに、赤外線スペクトルにおいて送信するマーカーを使用する。
−調査するのに十分に正確な姿勢パラメーターを得るための顔の3次元再構成の任意のシステム。このパラメーターは垂直軸(キャップ)を中心にした、又は右/左に向けられる水平軸(装用時前傾角と関連する)を中心にした頭部の回転とすることができる。これは、2つのカメラを用いる立体視(又は写真測量)による顔の特徴点(salient points)の3次元再構成(又は調査するのに十分に正確なスケーリング手段にリンクされた単一のカメラによる再構成)とすることができる(スケーリング手段は、例えば、画像上で識別された特徴点のうちの2点間の既知の距離とすることができる)。
【0034】
姿勢を追跡するためにこれらのデバイスのうちの1つによって測定中に、最適な姿勢を計算するために、これらの測定値と被検者の画像との間のリンクも行われる。
【0035】
被検者の自然な姿勢を特定するために、本発明によるプロセスは、特に、写真(pictures)(又は位置を追跡するための同等のデバイス)、及びこれらの写真からの最適な姿勢の計算によって行われるステップの反復を含む。
【0036】
一実施形態によれば、上記プロセスは、カメラ12によって被検者の複数の姿勢を最初に記録すること(110)、及び各記録するステップにおいて、装用者に少なくとも1つの決まった動きを実行させ、その後、所与の基本姿勢に戻すこと(110)からなるステップを含む。
【0037】
例えば、記録される姿勢は、被検者がミラーの中の自分を見ているときの、被検者の所与の瞬間における姿勢に対応することができる。その後、自発的な位置変更を引き起こす手段(例えば、口頭による指示、画面上に表示されるメッセージ、被検者の視線を引き付けるための室内の所与の場所にあるライトを点灯すること、又はより一般的には、患者に自分の姿勢を変更させる任意の手段等)によって、被検者の移動又は少なくともその頭部の回転が引き起こされ(110)、その後、被検者をミラーの中の自分を見ている初期の基本位置に戻す。
【0038】
通常、被検者に、頭部を右又は左に回すように、床又は天井を見るように、文書を読むように、又は目を閉じるように指示することができる。基本的な着想は、環境及び心理状態にかかわらず、一時的に被検者の気を散らして、姿勢を「再初期化」し、自然な姿勢に戻すことである。このようにして、被検者は、反復する度に全体としてより自然に自分の視線を真正面に向けるように促される。しかしながら、例えば、被検者が疲れを見せる可能性があり、その疲れによって自分の基本姿勢を変更することになる限り、反復する度に改善は保証されない。
【0039】
これが、種々の姿勢に基づいて実施される統計的推定を使用することが、最後に測定された姿勢を選択するよりも好ましい理由である。
【0040】
基本姿勢が読書位置における近見に対応する場合、被検者は目標物を注視し、測定が行われ、目標物と被検者によって装用されるフレームとの間の距離、キャップ、及び被検者が目標物を注視するときの被検者の視線の方向を含む、垂直面に対する矯正レンズの中心面の傾角によって形成される角度を評価する(装用時前傾角は遠見に特有である)。
【0041】
このため、目標物はタブレット30上とすることができ、フレームの位置はフレーム上に固定される付属器具20によって決定される。
【0042】
ここで、タブレット30は、液晶画面のような表示デバイス31が取り付けられポータブルシステムであり、その上にカメラのような画像を撮影するデバイス12’が取り付けられる。
【0043】
画面は例えば、約幅40cm、高さ25cmの寸法を有することができる。
【0044】
都合の良いことに、このタブレット30はタブレットによって被検者を位置決めする。それゆえ、人はタブレット30に面し、それゆえ、カメラ12’に面して位置決めされることができ、タブレット30はミラー又は任意の他の位置決めを支援するデバイスに都合良く取って代わることができる。
【0045】
被検者は、画面31によって表示される要素上を快適に注視することができるように、本又は新聞を持つようにタブレット30を手持ちすることができる。
【0046】
例えば、画面上で固定されるか又は移動する1つ又は複数の文字、画像、広告を表示することができる。
【0047】
通常、画面31は、レンズ及び既存のレンズ上に情報を表示することができる。また、画面は、例えば、センタリングを改善するために、カメラによって撮影された画像を被検者に送ることもできる。
【0048】
作業者は、画面31上に表示される要素を見るとともに、その後室内において作業者が選択した場所等を見るように被検者に指示することによって、画面31上に取り付けられたカメラ12’及び/又はカメラ12によって被検者の読書位置にある基本姿勢を特定できるように、測定を行うことができる。
【0049】
別の実施形態によれば、タブレット30自体が、被検者の気を散らし、その自然な基本姿勢に戻すための手段を備える。
【0050】
通常、タブレット30は、ちょうど画面31の幅にわたって広がる文字を表示することができる。このようにして、被検者が表示される文字を読むとき、被検者の視線は画面にわたって移動し、頭部が左/右及び上/下に回転運動する。その際、文字を読むことによって引き起こされた頭部の運動が、読書位置にある被検者の姿勢を再初期化するほど十分に気を散らす範囲で、被検者の基本姿勢を特定することができる。実際には、被検者が、その後、中心に置かれた画像、又は画面31に対して固定された発光ダイオードのような、タブレット30上の目標物要素を注視するとき、被検者の位置は読む前よりも自然である。
【0051】
読書位置にある基本姿勢は、画面31上の文字の極端な読書姿勢間の平均として近似的に特定することができる。画面31によって文字を表示するので、カメラを用いて被検者の頭部の角度間隔を求めることによって、眼球−頭部係数(すなわち、被検者の目の回転角と頭部の回転角との間の平均比)を測定することもできる。被検者の頭部と画面の幅との間の距離はわかっているので、この距離から、被検者の目によって動かされる角度間隔、及び眼球−頭部係数が読書中に推定される。
【0052】
変形形態によれば、画面の種々の点に及び/又は種々のサイズで文字が表示され、目標物要素に戻る前に被検者が画面上の種々の点を見るようされる。画面31が処理ユニット11によって制御され、目標物が、概ね正確なままであるとともに(例えば、非常に短い文字)、様々な読書位置(上、下、右又は左)に入る場合には、徹底的な挙動調査も可能である。目標物による位置変更に応じて頭部の保たれ方が如何に変化していくかを任意の時点において知ることができる。
【0053】
更に別の変形形態によれば、画面31によって表示される視標とは別に、タブレット30は、画面に対して固定された発光ダイオード(LED)のような視標32を含むことができる。視標のオン/オフの切替に音響信号が伴うことができる。
【0054】
例えば、被検者のための3組の視標32を作り出すために、タブレット30の側面から放射状に延在するアームに2組のLEDを取り付けることができる。
【0055】
この場合、各アームは4つのLEDを含み、各LEDは約0.5cm〜約5cm、好ましくは約2cmの距離だけ互いに離隔されている。都合の良いことに、各アーム上に複数の隣接するLEDを使用することは、タブレット30と付属器具20との間の距離に応じて、付属器具(それゆえ、被検者の頭部)と横方向の視標(すなわち、ここでは、測定中に点灯されるLED)との間の角度広がりを適合させる。
【0056】
変形形態によれば(図示せず)、タブレット30には画面はなく、中央に1つ、横に2つの3組のLEDを含む。
【0057】
眼球−頭部係数及びキャップの測定を行うことができるとともに、被検者の自然な姿勢を特定することができるように、視標32は単に連続的に、好ましくはランダムに点灯されなくてはならない。
【0058】
これらのステップ中に、記録されたデータの収集及び自動解析が実行され、もはや眼鏡技師の専門技術のみを参照する必要はない。
【0059】
「最適な」基本位置の計算130は観察及び記録から実行される。ここで、或る位置は、観測された位置とは異なる可能性があり、中間の位置又は外挿された位置に対応する可能性がある。
【0060】
このプロセスは、姿勢の測定値を解釈するためにデバイスによって視認される人間挙動のモデルの使用に基づく。
【0061】
上記モデルは特に、条件付き確率の形をとることができる。例えば、i回の反復後に測定された一連の姿勢piが存在することがわかり、かつ各姿勢piに先行して用いられる逸脱のタイプ(上を見る、左を見る、文書を読む等)がわかるときの、最適な基本姿勢を有する確率pの形をとることができる。
例えば、頭部が右に向けられ、その後、左に向けられると、これらの運動の前よりも頭部のキャップが良好である確率が高くなることが、調査によりわかっている。それゆえ、これらの運動後に得られたキャップの測定値は、この値の計算において、より大きな重みを有することになる。天井を見上げた後の装用時前傾角の場合にも同様のことを都合良く考慮することができる。
【0062】
デバイスによって視認される人間挙動のモデルは特に従来技術の統計学の数学的手段の範囲を用いることができ、特に以下のものを用いることができる。
−条件付き確率、例えば、一連の姿勢piが存在することがわかっており、かつ各姿勢piに先行して用いられる逸脱のタイプ(上を見る、左を見る、文書を読む等)に依存するときに、姿勢pを有する確率。これらの条件付き特性はマルコフ連鎖において編成することができる。
−値が「一貫しているか」又は「異常(aberrant)であるか」を検出し、それに応じて異常値を指摘するための高度な解析。
−ベイジアンネットワーク(Bayesian networks)を用いて、例えば、以前に観察された姿勢、及び以前に与えられた逸脱指示に応じて与えられることになる逸脱の指示シーケンスを決定することができる。
−ベイズ(Bayesian)の確率(又は任意の他の適合した統計的手段)は、例えば、姿勢又は外部姿勢パラメーターと基本姿勢のパラメーターとの間の相関をモデル化することができる。この外部姿勢又はこの外部姿勢パラメーターは、例えば、遠見姿勢の測定を試みている最中の読書姿勢とすることができる。本出願人によって開発されたActivisu Expert 3、又はエシロール社によって開発されたビジョンプリントシステムのようなシステムによって測定される眼球−頭部係数は、具体的には、頭部の横方向40度に配置される物体を見るときの目の回転に対する頭部の回転のパーセンテージである。
【0063】
得られた結果は、「最適な」値及び取り得る値の間隔の形をとる。
【0064】
ここで、姿勢値は特に、所与の姿勢の場合の装用時前傾角及びキャップの値を意味する。
【0065】
デバイスによって視認される人間挙動のモデルは、被検者の自然な基本姿勢を特定するために必要なサンプルの数を削減するために、「先験的」モデル、詳細には、キャップを測定するための先験的モデルによって完成させることもできる。例えば、そのような「先験的」モデルは、統計解析を利用することによって、他の何よりも基本姿勢を期待するときに、詳細には、被検者によって取られた姿勢が極めて不安定であるときに、ベイズの推論によって最大尤度の計算を改善するために用いることができる。
【0066】
例えば、人のキャップは一般的に3度よりも0度に近いことがわかっている。結果として、先験的モデルを使用することは、測定が不安定である場合に、3度よりも0度に近い基本姿勢を選択することを伴う。
【0067】
一実施形態によれば、そのような先験的モデルを使用することは漸進的である。このように、被検者に関して行われる測定が安定しているほど、先験的モデルは使用されなくなる。これに反して、行われる測定が不安定になるほど、ばらつきに起因して測定値の平均が十分に妥当でないので、先験的モデルが好ましい。
【0068】
自然な「最適な」基本姿勢を特定することは、より信頼性が高い。
【0069】
先験的モデルを使用することは、装用時前傾角を測定することにも適応することができる。しかしながら、これは、キャップの場合の0度〜3度の代わりに、装用時前傾角は2度から18度まで変化する可能性があること、及び装用時前傾角がとりわけフレーム、及び被検者の頭部の保たれ方に依存することを考えると、キャップを測定する場合よりも難しい。通常、プログレッシブレンズに対する測定が行われるとき、先験的モデルは、頭部が持ち上げられた後の(読書位置から遠見位置に位置変更されたときの)姿勢を考慮に入れて、被検者の遠見を解除するために、装用時前傾角のために高い値を選ぶことができる。
【0070】
眼鏡技師は自分の見解(expertise)を用いることができるか、又は提案された取り得る値からの最良の姿勢を選択することができ、システムは、測定の結果に及ぼす姿勢値の選択の影響をリアルタイムに表示し、眼鏡技師が判断する際に支援することができる。
【0071】
変形形態によれば、表示は、例えば一連の姿勢piの記録の完了時等に、遅らされる。
【0072】
また、眼鏡技師によって選択された取り得る姿勢値に対応する装用者の姿勢を表す画像を表示して、この値が、眼鏡技師が装用者に関して観察する姿勢、又は眼鏡技師がセンタリングのために使用することを望む姿勢に対応することを検証するのを助けることもできる。
【0073】
この画像は測定(姿勢の測定及びセンタリング測定)中に記録された画像の中の最も代表的な画像とすることができる。変形形態によれば、表示される画像は、実際の画像から三次元再構成を作成して反復中に記録された画像を補間する際に、姿勢の合成画像を生成することから生じることができる。
【0074】
例えば、「最適」値として平均(統計的手段を用いて得られた条件付き確率基準によって重み付けすることができる)を取ることができ、広がりのタイプを用いて、取り得る値の間隔として信頼区間を計算することができる。
【0075】
オプションによれば、装用時前傾角(高/低傾角)のばらつきが過大である場合には、例えば、目及びトラギオンの位置を特定する等によってフランクフルト平面を測定して、それらを用いて取り得る値及び最適値を改善することを使用者に対して提案することができる。
【0076】
初期設定によれば、フランクフルト平面の値は、例えば、最適値として取ることができるか、又は異常な測定値を検出し、ばらつきを指摘して低減するために用いることができる。妥当性が低いとみなされる値よりも大きな重みを有する場合に特に、フランクフルト平面の精度を推定し、オプションで統計計算において考慮に入れることもできる。
【0077】
例えば、遠見時の自然な姿勢を測定することに関して、本発明は以下のステップを含むことができる。
【0078】
眼鏡技師がミラーの正面に被検者を配置する。
【0079】
被検者は、幾何学的インジケータ21を形成する手段によって形成される付属器具20を装用することが好ましい。
【0080】
被検者に「逸脱」の表示が与えられる(ステップ100):例えば、それらの表示が画面上に表示され、眼鏡技師によって繰返し言われるか又はスピーカによって告知され、眼鏡技師は、それらの表示が実行されることを確実にする。
それらの指示は、例えば、
ミラー内のフレームのブリッジ(又は遠見のための任意の他の目標物)を見るように指示して、第1の基本姿勢を特定すること、
その後、逸脱の表示に従うように指示して、被検者に逸脱した姿勢を取らせること(頭部を右又は左に自由に回す、頭部を自由に上げる又は下げる、(被検者の背後に立っていることができる)眼鏡技師の方を向く、目を閉じる、動いて別の場所に向かって進み、その後、再びミラーに面する等)
からなる。
【0081】
その後、被検者は、例えば、ミラー内のフレームのブリッジを再び注視することによって、再び自分の基本姿勢を取るように指示され、新たな基本姿勢が記録される(ステップ110)。
【0082】
この作業(逸脱し、その後、基本姿勢に戻り、この最後の基本姿勢を記録する)が少なくとも一度、好ましくは数回、繰り返される。
【0083】
変形形態によれば、記録される基本姿勢は、被検者の逸脱した姿勢、すなわち、被検者が所与の目標物(例えば、右又は上)を注視する姿勢に対応する。作業者は、この場合、反対方向(例えば、それぞれ左又は下)にある第2の目標物を注視するように被検者に指示する。(「最適な」自然な姿勢を特定するために考慮に入れられる)被検者の基本姿勢は、これら2つの逸脱姿勢の(重み付けすることができる)平均に対応する。
【0084】
当然、カメラによって行われる画像の連続撮影によって、姿勢を連続して記録することができ、測定が実行される逸脱した姿勢は必ずしも極端な逸脱位置に対応しない。
したがって、例えば、被検者に頭部を連続して右/左に回転運動するように指示し、2つの逸脱姿勢(一方は右の逸脱姿勢、他方は左の逸脱姿勢)を記録することができる。それらの姿勢は回転運動の極端な姿勢に対応しない。
このようにして、例えば、(0度の姿勢に対して例えば±6度だけ)右及び左にわずかに位置がずれた目標物を注視することに対応する姿勢を選択することができ、自然な基本姿勢の「最適」値を計算するために考慮に入れられる基本姿勢piを得るために、その平均を取ることができる。測定を改善するために、右及び左の逸脱姿勢の2つの端点間で数回の測定を行い、その後、これらの測定値の積分平均を計算し、基本姿勢piを特定することもできる。
【0085】
これらの変形形態は、被検者が各逸脱後にもはや自分の頭部を中心に位置決めし直す必要がないので、被検者にとって唐突性が低く、信頼性が高いという利点を有する。また、被検者の快適な間隔内にとどまるように、動きの小さな逸脱姿勢が好ましい。
【0086】
都合の良いことに、逸脱動作は反復する度に異なる。例えば、頭部を自由に右に向け、その後、左に向け、その後、天井、床を見て、文書を読むように連続して被検者に指示することができ、その目的は基本姿勢(ここでは、遠見に対応する姿勢)を再初期化し、被検者の自然な姿勢を特定することである。
【0087】
また、逸脱の選択及び計算の調整は、被検者のフレームのために形成されることになるレンズのタイプ、及び被検者の姿勢の安定性に依存する。例えば、プログレッシブレンズの場合、装用時前傾角を特定するために行われる測定は、キャップのために行われる測定よりも好ましい可能性がある。実際には、一般的に、装用時前傾角の場合よりもキャップの場合に、そのばらつきが小さくなるように、値が集中する。
【0088】
この選択は、記録された姿勢に応じて、測定の開始時又は測定プロセス中に、予め行うことができる。したがって、被検者が頭部を上げる又は下げるときに姿勢が不安定であることが示される場合には、他の測定には不利益になるが、装用時前傾角の測定を確認するために、極端な上下への逸脱が好ましい。
【0089】
各逸脱i後に姿勢値piを記録し、既に観察された、頭部の保たれ方に応じて逸脱表示を選択することによって、リアルタイムに収集が実行される。例えば、被検者の装用時前傾角が非常に不安定である場合には、被検者に頭部を右左に何度か回すように指示することが好都合である。変形形態によれば、被検者のキャップの測定から被検者が不安定であることがわかる場合には、被検者に頭部を上下に動かすように指示することもできる。本発明者らは、実際には、キャップを測定する場合に、被検者が、頭部を何回か右/左に動かした後よりも、上/下又は下/上に動かした後に頭部を元に戻す傾向が最も高いことに気がついている。実際には、頭部の右/左の回転運動中に、被検者は基本姿勢に戻るときに、その運動に抵抗するか、又はそれとは反対にその運動を増幅し、自然な姿勢を越えて停止して、事実上結果を歪める傾向を有する場合があるのに対して、右/左の回転運動後に上/下(又は下/上)運動が行われるとき、キャップは自然な姿勢のキャップに実質的に対応する。
【0090】
本発明者らは、右/左の逸脱がキャップの快適なゾーンの安定性及び広さの表示を与えるのに対して、上/下の逸脱は装用時前傾角の快適なゾーンの安定性及び広さに関する表示を与え、上/下の逸脱は被検者のキャップを再センタリングする傾向があるのに対して、右/左の逸脱は被検者の装用時前傾角を再センタリングする傾向があることにも気がついている。
【0091】
被検者のキャップ及び装用時前傾角が安定したことがわかると、被検者の基本姿勢を最も良好に特定するために被検者に指示される逸脱の回数及び逸脱のタイプを適応させることができる。その後、種々の記録された姿勢pi、及び取り得る値(ステップ120及び130)、例えば、信頼区間に含まれる値に基づいて、自然な姿勢の最適値が計算される。
【0092】
測定プロセス中に、上記システムは、装用者が基本姿勢に近づく瞬間(装用者が「逸脱」指示に対応するのに忙しいために、基本姿勢から遠ざかっているときとは対照的)を自動的に検出することができる。この検出は2つの指標に特に基づくことができる。
a.その姿勢が基本姿勢に十分に近い(キャップ角及び装用時前傾角、画定された空間内の位置:ミラーからの距離、上下及び左右の位置に限定される)。
b.その位置が安定する:決められた時間経過中の動きが弱い。
【0093】
この検出は、統計値の計算において考慮に入れられることになる姿勢の値を自動的に総計し、自動化されたプロセスを可能にする。
【0094】
姿勢ごとに、ビデオ画像に関する広がりの平均及びタイプをとり、平均が変化していく傾向を抽出すること等が可能である。
【0095】
自然な姿勢の最適値から、センタリング測定及び個人調整測定(2つの瞳孔間距離、レンズと目との間の距離等を測定する)の結果が求められる。
【0096】
一実施形態によれば、上記システムは取り得る値の中で姿勢値を編集することができる。
【0097】
この編集中に、眼鏡技師は、
センタリング測定の新たな値、選択されたパラメーター(キャップ及び装用時前傾角)の品質、及び必要とされる場合には装用者の姿勢を表す画像をインタラクティブに確認し、
それらのパラメーターが、眼鏡技師が装用者に関して観察した姿勢、又はセンタリングのために眼鏡技師が使用したい姿勢に対応することを検証することができる。
姿勢ごとに、ビデオ画像に関する広がりの平均及びタイプをとり、平均が変化していく傾向を抽出すること等ができる。
【0098】
その後、所与の挙動モデルに応じて値に重みが適用される。例えば、0付近のキャップは高い値よりも妥当であり、顔の左/右の回転運動後に上/下運動が行われた後に記録されたキャップは、左/右の回転運動直後に測定されたキャップ値よりも妥当性があり、上/下逸脱は被検者のキャップを再センタリングする傾向がある。
【0099】
同じようにして、装用時前傾角は、装用者が頭部を自由に上又は下に向けた後に、より自然になり、装用者がこれらの2つの運動を行った後に、より静止する。行われた逸脱のタイプ、及び挙動(安定性)に応じて、各値に重みを適用することもできる。したがって、キャップを評価する場合、上/下逸脱後に行われた測定は、右/左逸脱直後に行われた測定よりも大きな重みを有することができる。なぜなら、これらの最初の測定は自然なキャップに近い結果を与えることが明らかなためである。
【0100】
得られた結果は、例えば、システム画面上に表示される。
【0101】
また、基本的な頭部の保たれ方を1組の許容値から編集する可能性を眼鏡技師に提供すること、及びセンタリング測定に及ぼすその影響を理解することも好都合であることがわかることができる。
選択された頭部の保たれ方の妥当性を定性的に評価するために、
上記システムは、
解析段階中に記録され、(画像間の動きが連続的であるように)目の位置に再調整され、2つ(又は3つ以上)の記録された写真間の位置をシミュレートするために補間された画像の中から、基本的な頭部の保たれ方を表す画像
を表示する。
ワーピング又は三角測量及びテクスチャマッピングに関連付けられるオプティカルフロー又は視差マップのような技法を用いることができる。
【0102】
姿勢の画像を外挿して、記録することができなかった位置(ミラーの正面において全く自然でない頭部の保たれ方をしている被検者)をシミュレートすることができる。
【0103】
この外挿は特に先験的モデルから実現することができる。先験的モデルは、より良好に視認するために3次元立体視において表示することもできる。
図1
図2
図3
図4