特許第5731023号(P5731023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731023
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20150521BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   G02F1/1337 520
   G02F1/1339 505
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-2103(P2014-2103)
(22)【出願日】2014年1月9日
(62)【分割の表示】特願2010-217063(P2010-217063)の分割
【原出願日】2010年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-95921(P2014-95921A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2014年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(73)【特許権者】
【識別番号】506087819
【氏名又は名称】パナソニック液晶ディスプレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】園田 英博
(72)【発明者】
【氏名】國松 登
(72)【発明者】
【氏名】松井 慶枝
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴史
【審査官】 鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−156752(JP,A)
【文献】 特開2007−248743(JP,A)
【文献】 特開2001−235749(JP,A)
【文献】 特開2008−008965(JP,A)
【文献】 特許第5457321(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/1339 − 1/1341
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機絶縁膜と第1の配向膜とが形成されたTFT基板と、
オーバーコート膜と第2の配向膜とが形成された対向基板とを有し、
前記TFT基板と前記対向基板とがシール材によって接着している液晶表示装置であって、
前記第1の配向膜と前記第2の配向膜は有機膜であって、光配向処理を受けており、
前記オーバーコート膜は、前記第2の配向膜よりも前記対向基板に近い側に配置されており、
前記液晶表示装置の所定の断面において、前記第2の配向膜は、前記シール材の中心よりも前記対向基板の端部側に設けられる第1の部分と、前記シール材の中心よりも前記対向基板の中心側に設けられ、前記第1の部分と離間した第2の部分とを有し、
前記第1の部分は、前記シール材と重畳している箇所と、前記シール材と重畳していない箇所とを有しており、
前記第1の部分と前記第2の部分とが離間した箇所において、前記シール材は前記オーバーコート膜と重畳していることを特徴とする液晶表示パネル。
【請求項2】
前記第2の部分は、前記シール材と重畳している箇所と、前記シール材と重畳していない箇所とを有していることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記オーバーコート膜と前記対向基板との間に、ブラックマトリクスが形成されていることを特徴とする請求項1又2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記所定の断面において、前記第1の配向膜と前記シール材とは重畳していないことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記所定の断面において、前記第1の配向膜は、前記シール材の中心よりも前記TFT基板の端部側に設けられる第3の部分と、前記シール材の中心よりも前記TFT基板の中心側に設けられ、前記第3の部分と離間した第4の部分とを有し、
前記第3の部分は、前記シール材と重畳している箇所と、前記シール材と重畳していない箇所とを有していることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第4の部分は、前記シール材と重畳している箇所と、前記シール材と重畳していない箇所とを有していることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1の配向膜と前記第2の配向膜とは、同一のパターンで形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、特に、シール部の信頼性を改善した、IPS方式の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板が設置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置はフラットで軽量であることから、TV等の大型表示装置から、携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等、色々な分野で用途が広がっている。一方、液晶表示装置では視野角特性が問題である。視野角特性は、画面を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合に、輝度が変化したり、色度が変化したりする現象である。視野角特性は、液晶分子を水平方向の電界によって動作させるIPS(In Plane Switching)方式が優れた特性を有している。
【0004】
IPS方式では、配向膜付近の液晶分子に対してプレティルト角を形成しないほうが特性が良い。したがって、配向膜に対する配向軸の形成を、ラビング方式によらず、光配向方式によって行うことが有利である。光配向は、ラビング方式に比べて、静電気の発生が無い等の利点も有している。
【0005】
光配向は、配向膜に偏光した紫外線を照射することによって、配向膜に対し所定の方向に液晶分子を配向させるような異方性をもたせるものである。このような光配向に関する技術を記載したものとして、「特許文献1」が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−351924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光配向は、ポリマーで形成された配向膜に対して特定の方向に偏光した紫外線を照射することによって行われる。例えば、網目状に形成されたポリマーに対して、偏光した紫外線を照射すると、紫外線の偏光方向に対する特定の方向のポリマーが破壊される。これによって、配向膜に液晶分子を配向させるための異方性が形成される。光配向させる偏光紫外線が配向膜のみに照射されるのであれば、問題は無いが、配向膜以外の部分に照射されると、照射された部分が紫外線によって劣化し、問題を生ずる。このような問題は、紫外線を照射される材料が有機材料である場合に特に問題になる。
【0008】
図8は、従来構造の液晶表示パネルにおいて、配向膜113に対して光配向を行った場合の問題点を示すシール部の断面図である。以後、図8の構成を比較例1ともいう。図8において、TFT等が形成されたTFT基板100とカラーフィルタ201等が形成された対向基板200との間に液晶層300が挟持され、液晶層300は、シール材150によってシールされている。詳細断面構造は後述するが、シール部において、TFT基板100には、ゲート絶縁膜102、無機パッシベーション膜106、層間絶縁膜109が形成されている。対向基板200には、ブラックマトリクス202、オーバーコート膜203が形成されている。シール材150はTFT基板100の層間絶縁膜109とオーバーコート膜203との間に形成されている。液晶を配向させる配向膜113はシール材150の部分には形成されていない。
【0009】
図9は、対向基板200の配向膜113に対する光配向を行う場合の模式図である。図9において、配向膜113が形成された対向基板200に対して偏光した紫外線を照射することによって配向膜113に対して光配向を行う。シール部150には配向膜113は形成されていないので、オーバーコート膜203に直接紫外線が照射される。そうすると、紫外線によってオーバーコート膜203が劣化し、オーバーコート膜203の表面にオーバーコート膜劣化部2031が生ずる。このオーバーコート膜劣化部2031は、水分を透過しやすい。
【0010】
一方、TFT基板100側においては、配向膜113が形成されていない部分には層間絶縁膜109が露出している。層間絶縁膜109はSiNで形成され、紫外線によって劣化することはない。したがって、紫外線によって光配向を行っても、TFT基板100側においては、図9で示したような問題は生じない。
【0011】
このようにして形成された対向基板200とTFT基板100を用いて液晶表示パネルを形成すると、図8に示すように、対向基板200のシール部において、オーバーコート膜劣化部2031が存在しているために、この部分から水分が浸透することになり、液晶表示パネルの寿命特性を劣化させる。具体的な問題としては、液晶表示パネル内に侵入した水分が膨張し、シール部の剥離が生ずる。
【0012】
図10は、図8で示すような、対向基板200におけるオーバーコート膜劣化部2031を生じないようにさせるために、TFT基板100と対向基板200に対してシール部にまで配向膜113を形成した例である。以後図10の構成を比較例2ともいう。図10に示すような対向基板200において光配向を行った場合、配向膜113がシール部まで形成されているので、オーバーコート膜203が紫外線によって劣化することは無い。
【0013】
しかし、図10の構成は、TFT基板100において、図11に示すような、配向膜113と層間絶縁膜109との接着力の問題を生ずる。液晶表示パネルは、使用中に種々の振動や衝撃を受ける。したがって、各膜間の接着力が弱いと振動等が加わった場合に膜間の剥離を生ずる。
【0014】
図10あるいは図11において、配向膜113はポリイミド等の有機膜であり、層間絶縁膜109はSiN等の無機膜である。一般には、有機膜と無機膜の接着力は弱い。一方、シール材150は接着材なので、シール材150と配向膜113の接着力は強い。また、対向基板200において、オーバーコート膜203も配向膜113も有機膜である。有機膜と有機膜の接着力も強い。
【0015】
このような構成の液晶表示パネルに対して振動等が加わると、その応力はシール部に生ずるので、TFT基板100側のシール部において、配向膜113と層間絶縁膜109との間に剥離が生ずる。配向膜113は有機膜であり、層間絶縁膜109はSiN等で形成された無機膜であり、この間の接着力が弱いからである。
【0016】
このように、水分の浸透を防止する構成と、振動、衝撃に耐える構成とを両立させることは容易ではない。本発明の課題は、水分の浸透の防止と、振動等に対しても十分な機械的裕度を有する液晶表示パネルを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、以上のような課題を解決するものであり、具体的な構成は次のとおりである。すなわち、
(1)無機絶縁膜の上に第1の配向膜が形成されたTFT基板とブラックマトリクスの上にオーバーコート膜が形成され、前記オーバーコート膜の上に第2の配向膜が形成された対向基板とがシール部において、シール材によって接着している液晶表示パネルであって、TFT基板側の前記シール部では前記第1の配向膜は存在せずに、シール材は前記無機絶縁膜と接着し、対向基板側の前記シール部では、前記シール材と前記第2の配向膜が接着しており、前記シール材と前記オーバーコート膜は接着していないことを特徴とする。
【0018】
(2)無機絶縁膜の上に第1の配向膜が形成されたTFT基板とブラックマトリクスの上にオーバーコート膜が形成され、前記オーバーコート膜の上に第2の配向膜が形成された対向基板とがシール部において、シール材によって接着している液晶表示パネルであって、前記TFT基板側の前記シール部では前記第1の配向膜は存在せずに、シール材は前記無機絶縁膜と接着し、前記対向基板側の前記シール部では、前記シール部の中心よりも前記対向基板の端部側において前記シール材は前記第2の配向膜に接着し、他の部分においては、前記シール材は前記オーバーコート膜と接着していることを特徴とする。
【0019】
この場合、他の手段として、前記対向基板側の前記シール部では、前記シール部の中心よりも前記対向基板の端部側である第1の部分において前記シール材は前記第2の配向膜に接着し、前記シール部の中心よりも前記対向基板の中心側である第2の部分において前記シール材は前記第2の配向膜に接着し、かつ、前記第1の部分および前記第2の部分以外において、前記シール材は前記オーバーコート膜と接着していることを特徴としてもよい。
【0020】
(3)無機絶縁膜の上に第1の配向膜が形成されたTFT基板とブラックマトリクスの上にオーバーコート膜が形成され、前記オーバーコート膜の上に第2の配向膜が形成された対向基板とがシール部において、シール材によって接着している液晶表示パネルであって、前記TFT基板側の前記シール部では、前記シール部の中心よりも前記TFT基板の端部側において前記シール材は前記第1の配向膜に接着し、他の部分においては、前記シール材は前記無機絶縁膜と接着しており、前記対向基板側の前記シール部では、前記シール部の中心よりも前記対向基板の端部側において前記シール材は前記第2の配向膜に接着し、他の部分においては、前記シール材は前記オーバーコート膜と接着していることを特徴とする。すなわち、第3の手段においては、TFT基板における第1の配向膜のパターンと第2の配向膜のパターンは同一になっている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の手段によれば、紫外線によって光配向処理を行ったときに、紫外線がオーバーコート膜に直接照射されないので、オーバーコート膜の劣化が無く、オーバーコート膜の劣化部からの水分の浸入を防止することが出来る。
【0022】
本発明の第2の手段によれば、対向基板におけるシール部において、シール材は一部において、配向膜と接着し、他の部分において、オーバーコート膜と接着している。シール材がオーバーコート膜と直接接触する部分では、オーバーコート膜は光配向した際に劣化しているが、水分はシール材が配向膜と接着している部分で阻止されるために、水分の浸入を防止することが出来る。一方、シール材はオーバーコート膜と接着する部分も存在するので、シール材の接着強度も十分確保することが出来る。
【0023】
本発明の第3の手段によれば、TFT基板側においても、シール材の一部を配向膜と接触させ、他の部分を無機絶縁膜と接触させるので、水分の浸入防止とシール部の信頼性を同時に確保することが出来るとともに、配向膜印刷を行う場合の印刷版を対向基板とTFT基板とで同一とすることが出来るので、液晶表示パネルの製造コストを低減させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】液晶表示装置の表示領域の断面図である。
図2】実施例1の液晶表示装置のシール部の断面図である。
図3】実施例2の第1の形態におけるシール部の断面図である。
図4】実施例2の第2の形態におけるシール部の断面図である。
図5】実施例3の第1の形態におけるシール部の断面図である。
図6】実施例3の第2の形態におけるシール部の断面図である。
図7】本発明の効果を示す表である。
図8】比較例1のシール部の断面図である。
図9】対向基板の光配向処理を示す断面図である。
図10】比較例2のシール部の断面図である。
図11】比較例2の問題点を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施例を説明するまえに、本発明が適用されるIPS方式の液晶表示パネルの構成について説明する。図1はIPS方式の液晶表示装置の表示領域における構造を示す断面図である。IPS方式の液晶表示装置の電極構造は種々のものが提案され、実用化されている。図1の構造は、現在広く使用されている構造であって、簡単に言えば、平面ベタで形成された対向電極108の上に絶縁膜を挟んで櫛歯状の画素電極110が形成されている。そして、画素電極110と対向電極108の間の電圧によって液晶分子301を回転させることによって画素毎に液晶層300の光の透過率を制御することにより画像を形成するものである。以下に図1の構造を詳しく説明する。なお、本発明は、図1の構成を例にとって説明するが、図1以外のIPSタイプの液晶表示装置にも適用することが出来る。
【0026】
図1において、ガラスで形成されるTFT基板100の上に、ゲート電極101が形成されている。ゲート電極101は走査線と同層で形成されている。ゲート電極101はAlNd合金の上にMoCr合金が積層されている。
【0027】
ゲート電極101を覆ってゲート絶縁膜102がSiNによって形成されている。ゲート絶縁膜102の上に、ゲート電極101と対向する位置に半導体層103がa−Si膜によって形成されている。a−Si膜はプラズマCVDによって形成される。a−Si膜はTFTのチャネル部を形成するが、チャネル部を挟んでa−Si膜上にソース電極104とドレイン電極105が形成される。なお、a−Si膜とソース電極104あるいはドレイン電極105との間には図示しないn+Si層が形成される。半導体層とソース電極104あるいはドレイン電極105とのオーミックコンタクトを取るためである。
【0028】
ソース電極104は映像信号線が兼用し、ドレイン電極105は画素電極110と接続される。ソース電極104もドレイン電極105も同層で同時に形成される。TFTを覆って無機パッシベーション膜106がSiNによって形成される。無機パッシベーション膜106はTFTの、特にチャネル部を不純物から保護する。無機パッシベーション膜106の上には有機パッシベーション膜107が形成される。有機パッシベーション膜107はTFTの保護と同時に表面を平坦化する役割も有するので、厚く形成される。厚さは1μmから4μmである。有機パッシベーション膜にはスルーホールが形成される。
【0029】
有機パッシベーション膜107の上には対向電極108が透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)によって形成される。対向電極108を覆って層間絶縁膜109がSiNによって形成される。層間絶縁膜109および無機パッシベーション膜106をエッチングすることによってスルーホール111を形成する。その後、層間絶縁膜109およびスルーホール111を覆って画素電極110となるITOを被着し、パターニングを行う。
【0030】
画素電極110はいわゆる櫛歯状の電極となっている。櫛歯状の電極と櫛歯状の電極の間はスリット112となっている。対向電極108には一定電圧が印加され、画素電極110には映像信号による電圧が印加される。画素電極110に電圧が印加されると図1に示すように、電気力線が発生して液晶分子301を電気力線の方向に回転させてバックライトからの光の透過を制御する。画素毎にバックライトからの透過が制御されるので、画像が形成されることになる。画素電極110の上には液晶分子301を配向させるためのTFT基板側配向膜113が形成されている。配向膜113に対する配向処理は偏光紫外線による光配向である。
【0031】
図1の例では、有機パッシベーション膜107の上に、面状に形成された対向電極108が配置され、層間絶縁膜109の上に櫛歯電極110が配置されている。しかしこれとは逆に、有機パッシベーション膜107の上に面状に形成された画素電極110を配置し、層間絶縁膜109の上に櫛歯状の対向電極108が配置される場合もある。
【0032】
図1において、液晶層300を挟んで対向基板200が設置されている。対向基板200の内側には、カラーフィルタが形成されている。ブラックマトリクス202は、画像のコントラストを向上させるとともに、TFTの遮光膜としての役割を有し、TFTに光電流が流れることを防止している。
【0033】
カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202の表面は凹凸となっているために、オーバーコート膜203によって表面を平らにしている。オーバーコート膜203の上には、液晶分子301の初期配向を決めるための配向膜113が形成されている。配向膜113は光配向処理されている。
【0034】
対向基板200の外側には、外部導電膜210がITOをスパッタリングすることによって形成されている。外部導電膜210は液晶表示パネルの内部の電界を安定化させるために形成されている。
【実施例1】
【0035】
図2は、本実施例における液晶表示パネルのシール部の断面図であり、図1で説明したIPS方式の液晶表示パネルのシール部の断面図である。図2では、対向基板200の上に形成されている外部導電膜は省略されている。
【0036】
図2において、TFT基板100には、ゲート絶縁膜102、無機パッシベーション膜106、有機パッシベーション膜107、層間絶縁膜109、配向膜113が積層されて形成されている。有機パッシベーション膜107は表示領域を平坦化するものであり、シール部までは延在していない。有機パッシベーション膜107の上に形成された層間絶縁膜109はTFT基板100の端部にまで延在している。層間絶縁膜109を覆って配向膜113が形成されている。
【0037】
図2の対向基板200側には、カラーフィルタ201、ブラックマトリクス202、が形成され、これらを覆ってオーバーコート膜203が形成されている。オーバーコート膜203の上には、TFT基板100と対向基板200の間隔を規定するための柱状スペーサ160が形成されている。オーバーコート膜203および柱状スペーサ160を覆って配向膜113が形成されている。TFT基板100と対向基板200とはシール材150によってシールされ、内部に液晶が充填されている。シール材150には例えば、エポキシ樹脂が使用される。
【0038】
TFT基板100側も対向基板200側も配向膜113は光配向によって配向処理されている。本実施例の特徴は、対向基板200側の配向膜113は対向基板200端部にまで形成されているが、TFT基板100側の配向膜113はシール材150の下部にまでは形成されていないことである。図2において、対向基板200側の配向膜113を紫外線によって光配向する際は、オーバーコート膜203は配向膜113によって全面覆われているために、オーバーコート膜203は劣化することは無い。したがって、オーバーコート膜203の劣化部から水分が浸入して、液晶表示パネルの信頼性を損なうという問題は生じない。
【0039】
一方、TFT基板100側においては、配向膜113は表示領域に形成されているが、シール部までには形成されていない。この場合、配向膜113で覆われていない、シール部における層間絶縁膜109は、光配向時紫外線の照射を受ける。しかし、層間絶縁膜109はSiN等の無機膜で形成されているので、紫外線によって劣化することは無い。
【0040】
図2の構造によれば、TFT基板100側も対向基板200側も光配向の紫外線によって劣化する部分は無いので、シール部からの水分の浸入を防止することが出来る。また、図2の構造では、機械的な振動等によるシール部における膜剥がれの問題は生じない。すなわち、TFT基板100側では、シール部における絶縁層は全て無機膜であり、互いの接着力は強い。また対向基板200側では、シール部における層構造は全て有機膜であり、互いの接着力は強い。また、シール材150は接着材であり、対向基板200側の配向膜113とも、TFT基板100側のSiN膜とも接着強度は強い。
【0041】
このように、実施例1によれば、オーバーコート膜203の劣化による水分侵入を防止でき、また、機械的な振動等による膜剥がれも生ずることは無い。
【実施例2】
【0042】
図3は本発明による第2の実施例を示す断面図である。図3において、図2と同様な構成は説明を省略する。図3の対向基板200には、配向膜113が表示領域と対向基板200端部に形成されているが、シール材150が形成されている部分は対向基板200の端部側を除いて配向膜113は形成されていない。
【0043】
このような対向基板200に対して、光配向処理を行うと、配向膜113によって覆われていない部分のオーバーコート膜203は紫外線によって劣化することになる。しかし、シール材150が形成された部分とオーバーラップして配向膜113が形成されている部分Aが存在しているので、この部分においては、オーバーコート膜203の劣化は生じない。したがって、外部からの水分はA部においてブロックされるので、液晶表示パネルの内部は水分の侵入から保護される。
【0044】
シール材150と配向膜113との接着力は、シール材150とオーバーコート膜203との接着力に比べて弱い。本実施例では、シール材150とオーバーコート膜203とが広い範囲にわたって接触しているので、実施例1に比較して、振動等に対する機械的な強度は強い。
【0045】
図4は、実施例2の他の形態を示す断面図である。図4図3と異なる点は、対向基板200のシール部における構成である。図4において、配向膜113は、シール材150の内側と外側において、オーバーラップしている。図4に示す対向基板200を光配向すると、配向膜113に覆われていない部分のオーバーコート膜203が紫外線によって劣化する。
【0046】
しかし、シール材150の内側と外側において、シール材150と配向膜113がオーバーラップしている部分AおよびBが存在し、この部分においては、配向膜113は劣化しておらず、この部分AおよびBにおいて、外部からの水分の浸入を防止することが出来る。また、配向膜113がシール材150をオーバーラップしていない部分では、シール材150とオーバーコート膜203が直接接触しているので、シール材150との接着力は強い。
【0047】
このように、本実施形態においても、外部からの水分の浸入を防止し、かつ、振動等に対する機械的な強度の強い液晶表示パネルを実現することが出来る。本実施形態は本実施例の第1の実施形態に比べて、水分の浸入に対するブロック能力は高いが、機械的な振動等に対する強度は第1の実施形態に対して劣る。しかし、いずれの実施形態も実用範囲である。
【実施例3】
【0048】
図5は本発明による第3の実施例を示す断面図である。図5図3と異なる点は、シール部におけるTFT基板100の構成である。図5のTFT基板100には、配向膜113が表示領域と対向基板200端部に形成されているが、シール材150が形成されている部分は外側を除いて配向膜113は形成されていない。すなわち、図5においては、配向膜113の形成範囲はTFT基板100と対向基板200とで同じ範囲である。
【0049】
配向膜113は一般には、フレキソ印刷によって形成される。対向基板200とTFT基板100とで配向膜113の形成範囲が同じであれば、印刷版が一枚ですむ。これに対して、実施例1および実施例2では、フレキソ印刷版がTFT基板100用と対向基板200用の2枚必要となる。この点において、本実施例は実施例1および実施例2に対して量産性に優れている。
【0050】
図5において、対向基板200側における機能は実施例2で説明したのと同様である。TFT基板100側において、外側はシール材150と配向膜113がオーバーラップしている部分が存在している一方、他の部分では、シール材150とSiNで形成された層間絶縁膜109とが直接接触している。したがって、シール材150とTFT基板100との接着力も十分に強い。
【0051】
図6は、本実施例の第2の実施形態を示す断面図である。図6において、対向基板200側は、実施例2の第2の実施形態である図4と同様である。したがって、対向基板200側における機能は実施例2の第2の実施形態で述べたと同様である。一方、図6におけるTFT基板100側の配向膜113の形成範囲は対向基板200側の配向膜113の形成範囲と同様である。
【0052】
図6の対向基板200側において、外部からの水分の浸入は、シール部において、配向膜113とオーバーコート膜203がオーバーラップしている部分、すなわち、A部およびB部においてブロックされる。また、対向基板200とシール材150との接着力は、シール材150とオーバーコート膜203が直接接触している部分において確保される。図6のTFT基板100において、接着力はシール材150とSiNで形成された層間絶縁膜109が直接接触している部分において確保されている。
【0053】
このように、本実施例のいずれの実施形態においても、液晶表示パネルへの水分の浸入、及び機械的な振動等に対する強度を確保することが出来る。
【0054】
図7は以上で述べた本発明の各実施例と「発明が解決しようとする課題」の項で述べた比較例の構成との比較を示す表である。「発明が解決しようとする課題」で説明した図8を比較例1とし、図10を比較例2としている。図7における実施例2は、図3に示す構成であり、実施例3は図5に示す構成である。
【0055】
図7において、水分に対する耐性を評価する試験としてPCT(Pressure Cooker Test)を行い、機械的な強度を評価する試験として振動試験を行っている。PCT試験は温度120℃、2気圧、湿度100%の環境下で、何時間経過したときに不良が発生するかを評価するものである。振動試験は、振動試験機において、振動を加え、重力の何倍の衝撃を加えた場合に膜剥がれを生ずるかを評価するものである。図7において、PCT試験は20時間を、機械的強度は1.5Gを目安に合否を判断している。判定において、○は合格、×は不合格であることを表している。
【0056】
図7において、比較例1では、機械的な強度は2.5Gを確保しているが、PCT耐性は10時間であり、十分ではない。すなわち、紫外線照射によって劣化したオーバーコート膜203の部分から水分が浸入したものと考えられる。比較例2では、PCT耐性は50時間を確保しているものの、機械的な強度は1.5Gであり、合否の境界であり、十分ではないと判断した。これは、シール部において、配向膜113とTFT基板側の層間絶縁膜109との接着力が十分ではないためと考えられる。
【0057】
実施例1は、PCT耐性は50時間を確保しており、合格範囲である。実施例1の構成では、オーバーコート膜203の劣化は無いからであると考えられる。機械的強度は2Gを確保しており、合格範囲である。しかし、機械的強度は他の実施例に比較して劣る。これは、対向基板200側において、シール材150は配向膜113とのみ接しているからと考えられる。
【0058】
実施例2は、PCT耐性は50時間を確保しており、機械的強度は2.5Gを確保しており、いずれも合格範囲である。実施例2における図3では、オーバーコート膜203と配向膜113とシール材150がオーバーラップしているA部において、外部からの水分が十分にブロックされることを示している。また、シール材150とオーバーコート膜203が直接接触しているために、シール材150の接着強度が十分確保されていることを示している。
【0059】
実施例3も、PCT耐性は50時間を確保しており、機械的強度は2.5Gを確保しており、いずれも合格範囲である。実施例3における図5では、オーバーコート膜203と配向膜113とシール材150がオーバーラップしているA部において、外部からの水分が十分にブロックされることを示している。実施例3では、TFT基板100側において、シール材150と配向膜113が一部オーバーラップしているが、この影響は、機械的強度に対してはほとんど影響を与えないことを示している。
【0060】
以上のように、実施例1〜3のいずれの構成においても、PCT耐性、機械的強度等については合格範囲となり、液晶表示パネルの信頼性を確保することが出来る。
【符号の説明】
【0061】
100…TFT基板、 101…ゲート電極、 102…ゲート絶縁膜、 103…半導体層、 104…ソース電極、 105…ドレイン電極、 106…無機パッシベーション膜、 107…有機パッシベーション膜、 108…対向電極、 109…層間絶縁膜、 110…画素電極、 111…スルーホール、 112…スリット、 113…配向膜、 150…シール材、 160…柱状スペーサ、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 210…外部導電膜、 300…液晶層、 301…液晶分子、 2031…オーバーコート膜の劣化部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11