特許第5731089号(P5731089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5731089高分子凝集剤混合溶解システム及び高分子凝集剤の混合溶解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5731089
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】高分子凝集剤混合溶解システム及び高分子凝集剤の混合溶解方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20150521BHJP
   B01F 1/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   B01D21/01 B
   B01F1/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-5439(P2015-5439)
(22)【出願日】2015年1月14日
【審査請求日】2015年1月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591162022
【氏名又は名称】巴工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226002
【氏名又は名称】株式会社ニクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100129539
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 康志
(72)【発明者】
【氏名】平松 達生
(72)【発明者】
【氏名】照屋 佳浩
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−283239(JP,A)
【文献】 実公昭40−007917(JP,Y1)
【文献】 特開2002−307100(JP,A)
【文献】 特開平06−086987(JP,A)
【文献】 特許第5037002(JP,B2)
【文献】 特許第3184729(JP,B2)
【文献】 特許第3184797(JP,B2)
【文献】 特開平10−176064(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/050416(WO,A1)
【文献】 特開2011−183314(JP,A)
【文献】 特開2013−215733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/01
B01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状の高分子凝集剤を、溶媒である水と混合するための混合槽と、
混合した高分子凝集剤を含んだ水溶液を、前記混合槽から送液する送液手段と、
前記送液手段から吐出される前記水溶液の流路の途中に配置されるケーシングと、外周に放射状の溝が全周に亘って形成された羽根車を有し、前記ケーシング内で前記羽根車を回転させて、該ケーシングの内周壁に沿う水溶液の渦流れを形成しながら加圧して、高分子凝集剤を混合溶解させるための渦流ミキサーと
前記渦流ミキサーを通過した前記水溶液の流路の途中に配置され、前記渦流ミキサーの吐出側の圧力を制御する圧力調節手段と、を備え
前記圧力調節手段は、高分子凝集剤の種類に対応付けて決めた圧力設定値の情報を有し、前記情報に基づいて、前記渦流ミキサーの吐出側の圧力が高分子凝集剤の種類に対応する圧力となるように、圧力制御することを特徴とする高分子凝集剤混合溶解システム。
【請求項2】
前記送液手段から吐出される前記水溶液の流路には、各段で水溶液を順次加圧する少なくとも2段以上の渦流ミキサーが直列配置されていることを特徴とする請求項に記載の高分子凝集剤混合溶解システム。
【請求項3】
各段の渦流ミキサーの動力を検知する動力検知手段と、
前記動力検知手段で検知される各段の渦流ミキサーの動力が均等になるように、各段の渦流ミキサーの羽根車の回転数を制御する動力調節手段と、をさらに備えていることを特徴とする請求項に記載の高分子凝集剤混合溶解システム。
【請求項4】
前記送液手段で送液する水溶液の流量設定値に対応付けられ、且つ、各段の渦流ミキサーの動力が均等になるように回転数の偏差をもたせた、各段の渦流ミキサーの動力設定値の情報を有し、前記送液手段で送液する水溶液の流量と前記情報に基づいて各段の渦流ミキサーの動力を制御する動力調節手段を、さらに備えていることを特徴とする請求項に記載の高分子凝集剤混合溶解システム。
【請求項5】
目標濃度になるように高分子凝集剤を溶解させたときの水溶液の粘度に対応付けられ、且つ、各段の渦流ミキサーの動力が均等になるように回転数の偏差をもたせた、各段の渦流ミキサーの動力設定値の情報を有し、前記送液手段で送液する水溶液の流量と前記情報に基づいて各段の渦流ミキサーの動力を制御する動力調節手段を、さらに備えていることを特徴とする請求項に記載の高分子凝集剤混合溶解システム。
【請求項6】
固体状の高分子凝集剤を、溶媒である水と混合する工程と、
混合した高分子凝集剤を含む水溶液を、渦流ミキサーに送り込む工程と、
前記渦流ミキサーにおいて、該渦流ミキサーのケーシングの内周壁に沿って水溶液の渦流れを形成しながら加圧して、高分子凝集剤を混合溶解させる工程と
前記渦流ミキサーを通過した前記水溶液の流路の途中に配置した圧力調節手段で前記渦流ミキサーの吐出側の圧力を制御する工程と、を含み、
前記圧力を制御する工程は、高分子凝集剤の種類に対応付けて決めた圧力設定値の情報に基づいて、前記渦流ミキサーの吐出側の圧力が高分子凝集剤の種類に対応する圧力となるように、圧力制御することを特徴とする高分子凝集剤の混合溶解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子凝集剤の溶解液を短時間で且つ低動力で生成することのできる高分子凝集剤混合溶解システム及び高分子凝集剤の混合溶解方法に関し、特に、固体状の高分子凝集剤を溶媒である水に溶かすための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥処理の分野においては、汚泥の濃縮処理や脱水処理が行われる。その際、汚泥の濃縮効率や脱水効率を向上させるために、凝集剤を添加して汚泥を凝集させる処理が行われる。また、水処理の分野においては、懸濁物の凝集沈殿処理が行われる。その際にも、凝集沈殿効率を向上させるために、凝集剤を被処理水に添加して懸濁物を凝集させる処理が行われる。
【0003】
前述の汚泥処理や水処理では、無機系凝集剤,カチオン系やアニオン系の高分子凝集剤など、種々の凝集剤が選択的に用いられる。その中で、固体状の高分子凝集剤は、架橋凝集による高い凝集効果が得られる一方で、液体に溶け難いという短所がある。そのため、固体状の高分子凝集剤を汚泥等に直接添加することはせず、予め水に溶解させて水溶液にしてから、所定の薬注率となるように汚泥等に添加する。
【0004】
但し、高分子凝集剤には、水溶液にしてから長時間が経過すると劣化して凝集効果が低下する別の問題がある為、水溶液を予め多量に調製してタンク等に貯留しておくことは好ましくない。高分子凝集剤本来の凝集効果を十分に得るためには、水に溶かしてからの経過時間が出来るだけ短い、フレッシュな水溶液を添加するのが好ましい。
【0005】
しかしながら、高分子凝集剤は、溶解時間が短いと未溶解のまま残存してしまう問題がある。未溶解の高分子凝集剤は、汚泥等に添加しても速やかに凝集作用を発揮しないので、従来においても未溶解の高分子凝集剤が出来るだけ残らないようにする溶解方法や、未溶解の高分子凝集剤を溶かすための装置を追加配置する検討がなされている(例えば、特許文献1−6参照)。
【0006】
特許文献1には、筒形メッシュ状フィルタと、フィルタ内を回動するローラを用いて、未溶解の高分子凝集剤を押し潰して水に溶解させる技術が開示されている。特許文献2,3も、未溶解の高分子凝集剤を押し潰して水に溶解させる技術である。また、特許文献4には、コロイドミルを用いて未溶解の高分子凝集剤を擦り潰して水に溶解させる技術が開示されている。特許文献5,6も、未溶解の高分子凝集剤を擦り潰して水に溶解させる技術である。未溶解の高分子凝集剤を擦り潰す技術としては、固定ディスクと回転ディスクを用いることも検討されている。特許文献1−6に開示されている技術を用いれば、高分子凝集剤を短時間で溶解可能と考えられるが、未溶解の高分子凝集剤を機械的に潰すために要する動力は決して小さくはない。さらに、高分子凝集剤を機械的に潰す作用が、高分子凝集剤の分子構造まで破壊して、凝集作用の劣化を招くことも懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3184797号公報
【特許文献2】特許第5037002号公報
【特許文献3】特許第5521272号公報
【特許文献4】特許第3184729号公報
【特許文献5】特開2001−026650号公報
【特許文献6】特開平10−176064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、一例として挙げた上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、高分子凝集剤の溶解液を短時間で且つ低動力で生成することのできる高分子凝集剤混合溶解システム及び高分子凝集剤の混合溶解方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、押し潰すや擦り潰す等の機械的な作用を加えることなく、速やかに未溶解の高分子凝集剤を溶解することのできる高分子凝集剤混合溶解システム及び高分子凝集剤の混合溶解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の高分子凝集剤混合溶解システムは、固体状の高分子凝集剤を、溶媒である水と混合するための混合槽と、混合した高分子凝集剤を含んだ水溶液を、前記混合槽から送液する送液手段と、前記送液手段から吐出される前記水溶液の流路の途中に配置されるケーシングと、外周に放射状の溝が全周に亘って形成された羽根車を有し、前記ケーシング内で前記羽根車を回転させて、該ケーシングの内周壁に沿う水溶液の渦流れを形成しながら加圧して、高分子凝集剤を混合溶解させるための渦流ミキサーと、前記渦流ミキサーを通過した前記水溶液の流路の途中に配置され、前記渦流ミキサーの吐出側の圧力を制御する圧力調節手段と、を備え、前記圧力調節手段は、高分子凝集剤の種類に対応付けて決めた圧力設定値の情報を有し、前記情報に基づいて、前記渦流ミキサーの吐出側の圧力が高分子凝集剤の種類に対応する圧力となるように、圧力制御することを特徴とする。
ここで、一般の渦流(かりゅう)ポンプであっても、膨潤した未溶解の高分子凝集剤を溶解する目的で使用されている場合は、本発明の作用・効果を得る目的で使用されているので、前記渦流ミキサーに含まれると解釈される。なお、渦流(かりゅう)ポンプは、カスケードポンプと称されることもある
)前記送液手段から前記圧力調節手段に至る水溶液の流路には、各段で水溶液を順次加圧する少なくとも2段以上の渦流ミキサーが直列配置された構成とすることもできる。
)各段の渦流ミキサーの動力を検知する動力検知手段と、前記動力検知手段で検知される各段の渦流ミキサーの動力が均等になるように、各段の渦流ミキサーの羽根車の回転数を制御する動力調節手段と、をさらに備えた構成とすることもできる。
)前記送液手段で送液する水溶液の流量設定値に対応付けられ、且つ、各段の渦流ミキサーの動力が均等になるように回転数の偏差をもたせた、各段の渦流ミキサーの動力設定値の情報を有し、前記送液手段で送液する水溶液の流量と前記情報に基づいて各段の渦流ミキサーの動力を制御する動力調節手段を、さらに備えた構成とすることもできる。
)目標濃度になるように高分子凝集剤を溶解させたときの水溶液の粘度に対応付けられ、且つ、各段の渦流ミキサーの動力が均等になるように回転数の偏差をもたせた、各段の渦流ミキサーの動力設定値の情報を有し、前記送液手段で送液する水溶液の流量と前記情報に基づいて各段の渦流ミキサーの動力を制御する動力調節手段を、さらに備えた構成とすることもできる。
なお、「各段の渦流ミキサーの動力が均等になるように」とは、不均等な状態が解消される方向に向けて均等化するという技術的意義であり、動力を完全に同じ値に揃えることを意味するのではない。従って、たとえ動力に差異(例えば、±10%程度)があったとしても均等化がされていれば「各段の渦流ミキサーの動力が均等になるように」に含まれる
【0011】
)本発明の高分子凝集剤の混合溶解方法は、固体状の高分子凝集剤を、溶媒である水と混合する工程と、混合した高分子凝集剤を含む水溶液を、渦流ミキサーに送り込む工程と、前記渦流ミキサーにおいて、該渦流ミキサーのケーシングの内周壁に沿って水溶液の渦流れを形成しながら加圧して、高分子凝集剤を混合溶解させる工程と、前記渦流ミキサーを通過した前記水溶液の流路の途中に配置した圧力調節手段で前記渦流ミキサーの吐出側の圧力を制御する工程と、を含み、前記圧力を制御する工程は、高分子凝集剤の種類に対応付けて決めた圧力設定値の情報に基づいて、前記渦流ミキサーの吐出側の圧力が高分子凝集剤の種類に対応する圧力となるように、圧力制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、固体状の高分子凝集剤を溶媒である水に混合し、混合により得られた水溶液を渦流ミキサーに送り込み、この渦流ミキサーにおいてケーシングの内周壁に沿う水溶液の渦流れを形成しながら加圧することによって、高分子凝集剤を混合溶解させる構成である。係る構成としたことにより、押し潰すや擦り潰すといった機械的作用を利用せずに、未溶解の高分子凝集剤を速やかに混合溶解させることが可能となる。その結果、短時間で且つ低動力で高分子凝集剤の溶解液を得ることができ、このフレッシュな高分子凝集剤の水溶液を用いることで良好な汚泥処理や水処理等を行うことができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、押し潰すや擦り潰すといった機械的作用を利用しないので、高分子凝集剤の分子構造が破壊されて劣化することの不安視、さらには汚泥処理工程や水処理工程に影響が及ぶ不安視を、従来に比べて軽減できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に従う高分子凝集剤混合溶解システムの構成を示す図である。
図2】上記システムの渦流ミキサーの構成を説明するための図である。
図3】上記システムによる混合溶解について説明する図である。
図4】上記システムの渦流ミキサーの動力変更について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態に従う高分子凝集剤混合溶解システムについて、添付図面を参照しながら説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0016】
図1は、本実施形態に従う高分子凝集剤混合溶解システム(以下、「混合溶解システム」と称す)の全体構成を示す概略図である。図1に示すように、混合溶解システム1は、固体状の高分子凝集剤を、溶媒である水と混合するための混合槽2を備えている。混合槽2は、溶媒である水を貯留することのできる密閉系又は開放系の槽である。溶媒である水は、例えば槽上部に接続した配管等の流路を通じて槽内に供給する。混合槽2は、槽内の水を撹拌して、高分子凝集剤を分散させるための撹拌手段をさらに備えることができる。撹拌手段の一例として、槽内に配置した撹拌羽根を駆動モータで回転させる撹拌機21を用いることができる。撹拌機以外の公知の撹拌手段を採用してもよい。
【0017】
混合槽2の容積は、調製する水溶液の量に応じて適宜設計することができる。一例として、槽内での混合時間(すなわち滞留時間)を5分〜15分、好ましくは10分に設定して運転するのに適した容積に設計することができる。この混合時間に設定する理由は、後段の工程で溶解し得る程度にまで高分子凝集剤を膨潤させるのに必要な時間を確保するためである。混合時間が短過ぎると、高分子凝集剤の膨潤が不十分となり後段の工程によっても十分に溶解することができない場合がある。また反対に長過ぎると、フレッシュな水溶液を得るという目的に反することとなる。また、混合槽2が大型化してしまうという欠点もある。溶媒である水は、連続的に槽内に供給する連続供給方式とすることができる。連続供給方式とすれば混合槽2を小型化できる利点もある。連続供給方式に代えて、一定量の水を槽内に張り込み、高分子凝集剤を添加した後、張り込んだ量の水(水溶液)を抜き出すバッチ方式としてもよい。
【0018】
粉状又は粒状にされた固体状の高分子凝集剤は、例えば混合槽2の上部に配置したホッパー22を用いて定量的に混合槽2に添加する。ホッパー22は、逆円錐や逆角錐等の錐状体に形成された本体部を有し、内部に高分子凝集剤を貯留すると共に、底部から定量的に高分子凝集剤を切り出して混合槽2に添加する構成となっている。ホッパー22は、貯留時に高分子凝集剤が吸湿しないように密閉系とし、さらに乾燥気体を吹き込むなどの防湿対策を行ってもよい。ホッパー22の底部には、高分子凝集剤をホッパーから定量に切り出すための排出手段22aが配置されている。排出手段22aの一例として、スクリューコンベア式の定量フィーダを用いることができる。なお、ホッパー22は、高分子凝集剤を定量的に混合槽2に添加する手段の好ましい一例であり、他の添加手段を採用してもよく、若しくは作業員が手作業で添加するようにしてもよい。
【0019】
混合槽2には、槽内の水溶液を連続的に抜き出して下流の工程に送液するための送液手段の一例である送液ポンプ3が接続されている。混合槽2から抜き出される水溶液は、既に溶解した高分子凝集剤と、膨潤した未溶解の高分子凝集剤を含んでいる。更には、高分子凝集剤の継粉(ままこ)を含む場合もある。水溶液は、高分子凝集剤が溶解した分において粘性が高くなっているので、送液ポンプ3を用いて下流の工程に送り込む構成となっている。さらに送液ポンプ3の一例として、粘性の高い液体を定量で送液するのに適した一軸ねじポンプを用いることができる。勿論、他の形式の定量ポンプであってもよく、流量調節バルブとポンプの組み合わせによって定量に送液する構成としてもよい。ポンプ以外の送液手段を採用してもよい。
【0020】
送液ポンプ3の吐出側に接続された配管等の流路には、第1渦流ミキサー4Aが接続されており、続いて第2渦流ミキサー4Bが接続されている。すなわち、高分子凝集剤を混合溶解させるための第1渦流ミキサー4Aと第2渦流ミキサー4Bが2段に直列に配置された構成になっている。送液ポンプ3から第1渦流ミキサー4Aまでの流路の途中、及び第1渦流ミキサー4Aから第2渦流ミキサー4Bまでの流路の途中には、バルブV(V1,V2,V3)や圧力計P(P1,P2,P3)などを設けるようにしてもよい。なお、第1渦流ミキサーの吸入側は、負圧になる場合があるので、圧力計P1の一例として連成計を用いることもできる。さらに、第1渦流ミキサー4A単独での運転を可能にするために、第2渦流ミキサー4Bを経由しないで下流に送るためのバイパス流路を設けるようにしてもよい。
【0021】
第1渦流ミキサー4Aと第2渦流ミキサー4Bは、処理能力が異なるスペックの渦流ミキサーを配置してもよいが、同じ構造で同じ処理能力のものを用いることが好ましい。このようにすれば、予備品等の点数を少なくできるなどメンテナンス面での利便性が高まる。渦流ミキサー4A,4Bの構成についてより詳しく説明すると、図2に示すように、水溶液の吸入口41aと吐出口41bを有するケーシング41と、ポンプでいうところのインペラに相当する羽根車42と、羽根車42を回動させる駆動機構としての駆動モータ43を備えている。作図の便宜上、駆動モータ43はブロック図で示している。
【0022】
ケーシング41は、水溶液の吸入口41a及び吐出口41bのそれぞれと連通すると共に、羽根車42を回転可能に収容する内部領域41cを有している。この内部領域41cは、羽根車42の外周縁に対して非接触に隙間を介して対向する内周面41dを有する。吸入口41aからケーシング41に吸入された水溶液は、回転する羽根車42によってケーシング内部領域41cを加圧されながら移送され、吐出口41bから排出される。吸入口41aと吐出口41bは、ケーシング41の上部寄りに配置することが好ましく、これによりケーシング41内での加圧距離を長く確保する。吐出口41bには、容積が拡大したバッファー領域44が形成されている。ケーシング41から吐出された水溶液は、渦流れを形成しているので、このバッファー領域44によって渦流れを消失させることができる。また、吸入口41aには、起動時に所謂「呼び水」をケーシング41内に注入するための注入口41eが設けられている。
【0023】
羽根車42は、概ね円盤状に形成されており、その円の中心から直角方向(紙面に対して鉛直方向)に延びる線を回転軸として回転可能なように、ケーシング41の内部領域41cに配置されている。羽根車42の外周縁には、ケーシング41の内周面41dに沿って細かい渦流れを形成するための多数の溝45が放射状に形成されている。この放射状の多数の溝45は、羽根車42の外周縁に全周に亘って形成されている。溝45の形状について詳しくは、図2(b)の部分拡大斜視図に示すように、回転方向に向かって平面が形成された第1の羽根の部位45aと、回転方向に対して直角方向に平面が形成された第2の羽根の部位45bによって構成されている。第1の羽根の部位45aは、第2の羽根の部位45bよりも上端が外方に突出するように形成されている。さらに、第2の羽根の部位45bは、その上端から下端に向かうにつれて厚みが増す断面三角形状に形成されている。従って、第1の羽根の部位45aと第2の羽根の部位45bの大きさを変えることによって、溝の大きさを変えることができる。溝45の大きさは適宜変更可能であるが、図2のような形状とすることにより、回転する羽根車42の溝45によって細かい渦流れをケーシング内周壁41dに沿って繰り返し形成し、これにより内部の水溶液を加圧することができる。特に、第2の羽根の部位45bを備えたことで、羽根車42の両面側(左右方向)に整った渦流れを形成することができ、高分子凝集剤の混合溶解を促進させることができる。但し、第2の羽根の部位45bを必ずしも備えなくともよい。
【0024】
羽根車42には、回転シャフト46が前記回転軸に沿って接続されている。回転シャフト46は、ケーシング41を貫通して、外部に配置されている駆動モータ43に連結されており、駆動モータ43を駆動させると羽根車42が回転するように構成されている。ケーシング41を貫通する部分は、メカニカルシール等のシール機構(不図示)によって封止することができる。渦流ミキサー4A,4Bは、更に、羽根車42の回転数を可変に設定可能にするための動力調節手段を備えている。動力調節手段の一例としては、インバータ47を用いることができる。従って、第1渦流ミキサー4Aと第2渦流ミキサー4Bは、羽根車42を同回転数,又は互いに異なる回転数で運転することが可能であり、回転数を変えることによって、その高分子凝集剤にとって最適な混合溶解を実現することができる。例えば、初期設定値を周波数60Hz(又は50Hz)とし、そこから適正な回転数となるように周波数を可変に調整してもよい。適正な回転数とするための指標として、インバータ47の電力(負荷率)を採用することができる。或いは、動力計等を用いて、駆動モータ43の動力[kW]を測定し、その測定結果を指標に用いてもよい。さらには、動力計を内蔵したインバータ47から測定した動力を指標にしてもよい。勿論、他の動力検知手段を用いてもよい。
【0025】
動力を変える状況としては、第1渦流ミキサー4Aと第2渦流ミキサー4Bが互いに均等に仕事をするように、言い換えると、一方に偏った仕事をしている状態が発生したときにそれを改善するときを挙げることができる。すなわち、2段の渦流ミキサー4A,4Bで加圧しているため、出来るだけ回転数を高くして運転した方が目標圧まで加圧しやすい。反面、一方に仕事が偏る不均等な状態が発生すると、偏った方の駆動モータ43に過負荷が生じやすい。従って、均等に仕事をするように改善することで、駆動モータ43の過負荷を防ぐのである。均等に仕事をするように改善できれば、消費電力を必要最小限に抑えることが可能となり、省電力の効果も得られる。
【0026】
動力を改善するタイミングの一例としては、通常運転時の他にも、(1)汚泥処理工程等の処理量に応じて水溶液の必要量が変化した際に、送液ポンプの流量の変化に合わせて動力を変えるとき、(2)高分子凝集剤の種類に適した加圧を実行するために動力を変えるときがある。この(1)と(2)の場合の動力を変える手順については、後で詳しく説明する。
【0027】
説明を図1に戻すと、第2渦流ミキサー4Bの吐出側に接続された配管等の流路には、第2渦流ミキサー4Bの吐出側の圧力が、所定の圧力となるように制御する圧力調節手段が設けられている。圧力調節手段の一例として、バルブ開度を変えて圧力を調節する圧力調節バルブ5と、圧力センサー51と、圧力センサー51の検出値が所定の圧力となるように圧力調節バルブ5の開度を制御する圧力制御部52の組み合わせを用いることができる。所定の圧力とは、例えば高分子凝集剤の種類に応じて予め決めた設定圧力値である。すなわち、本実施形態は、高分子凝集剤の溶解は、圧力が高いと溶媒への浸透が促進されて溶け易く、しかも種類によって圧力の程度が異なるという特性に着目し、その高分子凝集剤の溶解に適した圧力にまで加圧制御する構成を採用する。そのため、高分子凝集剤の種類に対応付けて予め決定した圧力設定値の情報を所持しておくか、若しくは、圧力制御部52のコンピュータのメモリ等に格納しておくのが好ましい。圧力設定値は、例えば高分子凝集剤の成分や分子量等に基づいて決定してもよく、実際に試験を行って決定してもよい。そして、高分子凝集剤の種類に応じて、オペレーターが圧力制御部52の圧力設定値を設定するか、若しくは、圧力制御部52がメモリ等から情報を読み出して圧力設定値を設定する。
【0028】
圧力調整バルブ5を通過した水溶液(すなわち、高分子凝集剤溶解液)は、そのまま汚泥処理工程の汚泥に添加してもよく、バッファー槽等を一旦経由してから汚泥に添加するようにしてもよい。水処理工程においても同様に被処理水に添加することができる。汚泥処理工程においては、所定の薬注率となるように高分子凝集剤溶解液を添加した汚泥を、例えばデカンタタイプの遠心濃縮機や遠心脱水機に供給して、濃縮や脱水の固液分離をする。水処理工程においても同様に、所定の薬注率となるように高分子凝集剤溶解液を添加した被処理水を、沈降槽や濾過機等に供給して固液分離をする。但し、本実施形態の混合溶解システム1で調製した高分子凝集剤溶解液は、固液分離装置の種類に制限されることはなく、公知の固液分離装置に使用可能である。なお、本実施形態では、好ましい形態として図2の構成の渦流ミキサー4A,4Bを示したが、代替として一般の渦流(かりゅう)ポンプを用いてもよい。図2の渦流ミキサー4A,4Bは、渦流ポンプの構造をベースとしてそのミキシング機能を強化した渦流式ターボミキサーである。従って、効果は劣るが一般の渦流ポンプでも未溶解の高分子凝集剤を溶解できる場合があるからである。なお、渦流ポンプは、カスケードポンプとも称されることもある。
【0029】
本実施形態の混合溶解システム1に適用される高分子凝集剤の種類は、特に制限されることはなく、被処理汚泥や被処理水等の種類や組成等に応じて適宜選択することができる。汚泥処理においては、カチオン系の高分子凝集剤が主流であるが、その他にもアニオン系や両性の高分子凝集剤を用いる場合もある。カチオン系の高分子凝集剤の一例としては、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステルを用いることができる。より具体的には、メタクリル酸ジメチルアミノエチルやアクリル酸ジメチルアミノエチルを用いることができる。カチオン系の高分子凝集剤の他の例としては、架橋系やアミジン系の高分子凝集剤を用いることもできる。これら高分子凝集剤の分子量は、150〜1600万であり、一般的に分子量が大きい程、その水溶液の粘性は高い。従って、分子量を目安として、その粘性を把握することもできる。
【0030】
(作用)
続いて、上述の混合溶解システム1を用いて、高分子凝集剤の溶解液を得る方法について説明する。なお、以下の説明では、カチオン系の高分子凝集剤の場合を主体にして説明するが、特筆しない限り、他の高分子凝集剤でも同様の作用・効果を奏する。混合溶解システム1が起動されると、まず、溶媒である水を混合槽2に所定の流量で供給すると共に、所定の濃度の水溶液となるように高分子凝集剤を所定の流量で添加する。濃度の一例としては、0.1〜0.3質量%、好ましくは0.2質量%に設定することができる。その一方で、送液ポンプ3、第1渦流ミキサー4A及び第2渦流ミキサー4Bを各々駆動させると共に、圧力制御部52による制御圧力の設定値を決定/変更する。ここでは、一例として圧力設定値を0.3MPaとする。
【0031】
水と混合された高分子凝集剤は、混合槽2内で水に溶解していくが、一部は未溶解で残存する。但し、混合槽2において水との混合時間を10分程度確保していることで、膨潤した状態になっている。高分子凝集剤が溶解することで粘度が増した水(水溶液)は、送液ポンプ3によって未溶解の高分子凝集剤を含んだ状態で第1渦流ミキサー4Aに送り込まれる。送液ポンプ3の流量は、例えば8〜25L/minに設定することができる。
【0032】
一方、図3に示すように、第1渦流ミキサー4A及び第2渦流ミキサー4Bは、例えばインバータ47で周波数60Hz(又は50Hz)に設定して駆動モータ43を駆動させる。高分子凝集剤の種類に応じた周波数の適正値を予め把握している場合は、その適正値に設定する。羽根車42は、例えば800〜3500min−1の範囲内で回転させる。送液ポンプ3によって第1渦流ミキサー4Aに送り込まれた水溶液は、回転する羽根車42によって細かい渦流れをケーシング41の内周面41dに沿って繰り返し形成し、これにより加圧されていく。一例として、吸入口付近で−0.05MPaであった水溶液を、吐出口付近で0.12MPaまで加圧する。このように、羽根車42によって細かい渦流れを繰り返し形成しながら加圧することによって、高分子凝集剤が十分に混合されて水に溶解していく。このとき、溶解が進むことで水溶液の粘度も増していくこととなる。既述のように、羽根車42は、他の部位に対して非接触で回転するので、機械的に高分子凝集剤を潰す作用や剪断応力は殆ど発現しない。放射状に形成した細かい溝45を通じて繰り返し形成される細かい渦流れと、その加圧作用によって、高分子凝集剤の混合溶解が促進されるのである。
【0033】
第1渦流ミキサー4Aを通過した水溶液は、続く第2渦流ミキサー4Bにおいても、回転する羽根車42によって細かい渦流れをケーシング41の内周面41dに沿って繰り返し形成し、これにより加圧されていく。一例として、吸入口付近で0.12MPaであった水溶液を、吐出口付近で目標圧力である0.3MPaまで加圧する。すなわち、直列の2段構成になっている渦流ミキサー4A,4Bによって、その高分子凝集剤が溶解するのに適した圧力まで順次加圧するのである。第2渦流ミキサー4Bにおいても、第1渦流ミキサー4Aと同様に、放射状に形成した細かい溝45を通じて繰り返し形成される細かい渦流れと、その加圧作用によって、高分子凝集剤の混合溶解が促進される。さらに、その高分子凝集剤が溶解するのに適した圧力にまで加圧することによって、高分子凝集剤を完全に溶解することができる。このとき、高分子凝集剤が完全に溶解したことで、第2水溶液の粘度は増加が収束する。
【0034】
ここで、既述した動力を変える手順について、図4(a)を参照しながら説明しておく。まず、(1)汚泥処理工程や水処理工程等の処理量に応じて水溶液の必要量が変化した際に、送液ポンプ3の流量の変化に合わせて動力を変える場合について説明する。例えば水溶液の必要流量をF1[L/min]とした場合、必要流量F1[L/min]に合わせて、送液ポンプ3の回転数a[min−1]が決まる。さらに、送液ポンプ3の回転数a[min−1]に合わせて、第1渦流ミキサー4Aの回転数b[min−1]と第2渦流ミキサー4Bの回転数c[min−1]が決まる。必要流量がF1[L/min]になることで圧力センサー51の指示値が変化するが、圧力調整バルブ5により適正な圧力(圧力設定値)に自動制御される。そしてさらに、第1渦流ミキサー4Aと第2渦流ミキサー4Bの動力(すなわち電力消費)を適正に保つように、第1渦流ミキサー4Aの回転数b[min−1]と第2渦流ミキサー4Bの回転数c[min−1]に偏差をもたすようにする。具体的には、第1渦流ミキサー4Aと第2渦流ミキサー4Bの各々のインバータ47の負荷率を検知し、両者の負荷率が均等になるように周波数に偏差をもたすようにする。すなわち動力が均等になるように回転数を制御する。図4(a)には、実際に試験を行った結果を示しており、インバータの負荷率%が46/62と偏りが生じていたため、第2渦流ミキサー4Bの周波数を52Hzに下げることによって、インバータの負荷率%が46/48に略均等した。或いは、動力計等を用いて、第1渦流ミキサー4Aと第2渦流ミキサー4Bの各々の駆動モータ43の動力[kW]を測定し、両者の動力が均等になるように周波数に偏差をもたすようにする。このように動力を変えることによって、より電力消費を抑えた低動力で高分子凝集剤を溶解させることができる。このような動力の制御は、コンピュータによる制御部で自動制御する構成とすることができる。或いはオペレーターが制御するようにしてもよい。以後、通常運転に移行した後も、適宜監視を行い、第1渦流ミキサー4Aと第2渦流ミキサー4Bが互いに均等に仕事をするように動力を調節するようにしてもよい。
【0035】
上述のフィードバックによる制御に代えて、フィードフォワードによる制御を行うこともできる。例えば図4(b)に模式的に示すように、第1渦流ミキサー4Aの回転数b[min−1]と第2渦流ミキサー4Bの回転数c[min−1]に例えば動力が均等になるように偏差をもたせた設定値を、水溶液の必要流量に対応付けて決めておき、この情報に基づいて制御することが一例として挙げられる。具体的には、流量F1から流量F2に流量を変える場合、流量F2に対応する第1渦流ミキサー4Aの回転数b[min−1]と第2渦流ミキサー4Bの回転数c[min−1]に回転数を変更するフィードフォワードによる制御を行う。第1渦流ミキサー4Aの回転数b[min−1]と第2渦流ミキサー4Bの回転数c[min−1]の偏差をどの位もたせるかは、例えば実際に試験を行う等して決定することができる。一例として、上述のフィードバックによる制御を行って、種々の流量に対して第1渦流ミキサー4Aと第2渦流ミキサー4Bの動力が均等になる回転数の偏差のデータを動力設定値の情報として取得し、このデータに基づいて決定することができる。
【0036】
次に、(2)高分子凝集剤の種類に適した加圧を実行するために動力を変える場合について説明する。既述したように、高分子凝集剤は、成分や分子量によって、水溶液の粘度が大きく異なる。さらに、本実施形態では、渦流ミキサー4A,4Bを直列配置して順次溶解を促進させているので、前段の第1渦流ミキサー4Aと後段の第2渦流ミキサー4Bとでは通水する水溶液の粘度が異なる。その分、第1渦流ミキサー4Aと第2渦流ミキサー4Bとで仕事が不均等になり易い。特に、水溶液の粘度が比較的低いものは、前段の第1渦流ミキサー4Aに比して後段の第2渦流ミキサー4Bの負荷が過多になることが多い。とりわけ、粘度が比較的低いものの中でも溶解し難い架橋系の高分子凝集剤の場合にその傾向が強い。そこで、例えば水溶液の粘度で高分子凝集剤を分類し、例えば0.2質量%純水溶解の粘度が100〜300mPa・s(B型粘度計で測定)よりも低い高分子凝集剤の場合は、第1渦流ミキサー4Aの回転数b[min−1]よりも第2渦流ミキサー4Bの回転数c[min−1]を下げて運転するようにする。一例として、第1渦流ミキサー4Aを周波数60Hzとし、第2渦流ミキサー4Bを周波数50Hzに設定する。すなわち動力が均等になるように回転数に偏差をもたせた設定にする。このように動力を変えることによって、第2渦流ミキサー4Bの駆動モータ43の過負荷を防止できる。そして、より電力消費を抑えた低動力で高分子凝集剤を溶解させることができる。
【0037】
より利便的には、例えば図4(c)に模式的に示すように、水溶液の必要流量[L/min]と渦流ミキサー4A,4Bの回転数[min−1](若しくは、周波数[Hz])の設定値の関係を、高分子凝集剤の粘度に対応付けて決めておき、この情報に基づいて、第1渦流ミキサー4Aの回転数b[min−1]と第2渦流ミキサー4Bの回転数c[min−1]を適正に設定することもできる。
【0038】
上述の実施形態の混合溶解システム1は、混合槽2で溶解することができなかった未溶解の高分子凝集剤を含んだ水溶液を、直列に配置した第1渦流ミキサー4Aと第2渦流ミキサー4Bに通水すると共に、後段の第2渦流ミキサー4Bの吐出側の圧力が、その高分子凝集剤の溶解に適した圧力になるように圧力調整する構成である。さらに、各渦流ミキサー4A,4Bは、外周に放射状の溝45が全周に亘って形成された羽根車42を備えたことで、この回転する羽根車42によって細かい渦流れをケーシング41の内周面41dに沿って繰り返し形成して、高い圧力まで水溶液を加圧することができる。その結果、高分子凝集剤の混合溶解を促進させることができ、膨潤した未溶解の高分子凝集剤を速やかに且つ完全に溶解させることが可能となる。更には、たとえ混合時に高分子凝集剤の継粉(ままこ)ができてしまった場合であっても、完全に溶解させることが可能である。
【0039】
このような混合溶解システム1によれば、短時間で且つ低動力で高分子凝集剤の水溶液(溶解液)を得ることができ、このフレッシュな高分子凝集剤の水溶液を用いて良好な汚泥処理や水処理等を行うことができる。従って、旧来の大型貯留槽と撹拌機による溶解方法と比較すれば、システム全体の省スペース化を実現でき、またシステムの運転荷重を小さくできる。さらには、短時間で溶解できるので、高分子凝集剤の計画的溶解作業が不要となる。渦流ミキサーは3段以上にしてもよい。
【0040】
さらに、本実施形態の混合溶解システム1によれば、羽根車42が他の部位に対して非接触で回転するので、機械的に高分子凝集剤を潰す作用や剪断応力は殆ど発現しない。その結果、高分子凝集剤の分子構造が破壊されて劣化することの不安視、さらには汚泥処理工程や水処理工程に影響が及ぶ不安視を、従来に比べて軽減できる利点もある。
【0041】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。従って、本発明の範囲は、前述の実施形態及び添付図面に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0042】
1 高分子凝集剤混合溶解システム
2 混合槽
3 送液ポンプ
4A 第1渦流ミキサー
4B 第2渦流ミキサー
45 溝
5 圧力調節バルブ
51 圧力センサー
52 圧力制御部
【要約】
【課題】高分子凝集剤の溶解液を短時間で且つ低動力で生成することのできる高分子凝集剤混合溶解システム及び高分子凝集剤の混合溶解方法を提供する。
【解決手段】固体状の高分子凝集剤を、溶媒である水と混合するための混合槽(2)と、混合した高分子凝集剤を含んだ水溶液を、前記混合槽から送液する送液手段(3)と、前記送液手段から吐出される前記水溶液の流路の途中に配置されるケーシングと、外周に放射状の溝が全周に亘って形成された羽根車を有し、前記ケーシング内で前記羽根車を回転させて、該ケーシングの内周壁に沿う水溶液の渦流れを形成しながら加圧して、高分子凝集剤を混合溶解させるための渦流ミキサー(4A,4B)を備えた構成とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4